(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121499
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスならびにメス型端子の生産方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/187 20060101AFI20240830BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20240830BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01R13/187 A
H01R13/11 H
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028639
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓十
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA02
5E063GA05
5E063XA20
(57)【要約】
【課題】オス型端子の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスならびにメス型端子の生産方法を提供する。
【解決手段】メス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで端子本体15が設けられ、基台部20は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子6のブレード7が挿入可能な挿入空間15Xを形成する一対の側壁21を有し、バネ部材30は、挿入空間15Xに挿入されたブレード7に当接するアームバネ31と、アームバネ31の向きを挿入空間15Xの複数の開口15u,15tのうちのいずれかから挿入されるブレード7の挿入方向に対応させて側壁21に取付可能とするアームバネ取付部32とを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に接続される基台部と、
前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、
前記基台部は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子が挿入可能な挿入空間を形成する一対の側壁を有し、
前記バネ部材は、前記挿入空間に挿入された前記オス型端子に当接するアームバネと、前記アームバネの向きを前記挿入空間の複数の開口のうちのいずれかから挿入される前記オス型端子の挿入方向に対応させて前記側壁に取付可能とするアームバネ取付部とを有している
メス型端子。
【請求項2】
前記アームバネ取付部は、前記側壁の内面に沿設される沿設板を備え、
前記沿設板には、前記側壁との溶接部が設けられた
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項3】
前記側壁と前記沿設板とを係合する係合片部が設けられた
請求項2に記載のメス型端子。
【請求項4】
前記側壁の二以上の端面が互いに対して交差する方向に形成され、
前記沿設板には、少なくとも一つの前記端面に対して係合する前記係合片部が設けられた
請求項3に記載のメス型端子。
【請求項5】
前記側壁の端面から離間した位置に少なくとも一つの係合穴部が設けられ、
前記沿設板には、前記係合穴部に挿入されて当該係合穴部の内周面に対して係合する前記係合片部が設けられた
請求項3に記載のメス型端子。
【請求項6】
一対の前記側壁は、一枚の金属板を折り曲げて形成されるものとされ、
前記金属板の折り曲げ部には、前記係合穴部が設けられた
請求項5に記載のメス型端子。
【請求項7】
前記折り曲げ部の内面には、曲げ線方向に沿って凹溝部が設けられた
請求項6に記載のメス型端子。
【請求項8】
前記アームバネ取付部は、前記側壁の内面に沿設される沿設板を備え、
前記側壁の内面には、前記沿設板と嵌合する嵌合部が設けられた
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項9】
前記アームバネは、前記アームバネ取付部から延伸された支持板とされ、当該アームバネの延伸方向が前記オス型端子の挿入方向に対して平行となるように配置された
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項10】
前記アームバネは、一対の前記側壁同士の対向方向及び前記オス型端子の挿入方向に対して垂直となる仮想線を中心に線対称となる二列で配置された
請求項9に記載のメス型端子。
【請求項11】
前記バネ部材は、一対の前記側壁のそれぞれに互いに対向して取り付けられた
請求項1に記載のメス型端子。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた
端子付き電線。
【請求項14】
請求項13に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ付き電線。
【請求項15】
請求項13に記載の端子付き電線が備えられた
ワイヤーハーネス。
【請求項16】
請求項14に記載のコネクタ付き電線が備えられた
ワイヤーハーネス。
【請求項17】
電線に接続される基台部と、
前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、
前記基台部は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子が挿入可能な挿入空間を形成する一対の側壁を有し、
前記バネ部材は、前記挿入空間に挿入された前記オス型端子に当接するアームバネと、前記アームバネの向きを前記挿入空間の複数の開口のうちのいずれかから挿入される前記オス型端子の挿入方向に対応させて前記側壁に取付可能とするアームバネ取付部とを有しているメス型端子の生産方法であって、
前記基台部の素材である金属板を所定形状に切り出す第一工程と、
前記所定形状に切り出された前記金属板の所定位置に前記オス型端子の挿入方向に対応させて前記バネ部材を取り付ける第二工程と、
前記バネ部材が取り付けられた前記金属板の所定部分を折り曲げて前記所定間隔を隔てた一対の前記側壁を形成する第三工程とを備えた
メス型端子の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流が流れる電気回路のメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスならびにメス型端子の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器は、電動装置や電源装置をワイヤーハーネスによって接続することで電気回路を構成している。ワイヤーハーネスと電動装置ならびにワイヤーハーネスと電源装置は、それぞれに装着されたコネクタを介して互いに接続されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すコネクタは、コネクタハウジングにメス型端子を収容したものである。かかるメス型端子は、電線に接続される基台部と、基台部に取り付けられるバネ部材とを有しており、バネ部材には、オス型端子(詳しくはオス型端子のブレード)に当接するアームバネが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなメス型端子は、電線の延出方向に対して垂直にオス型端子が挿入される垂直接続タイプと、電線の延出方向に対して平行にオス型端子が挿入される平行接続タイプとが存在する。しかし、オス型端子の挿入方向ごとにメス型端子の形状が異なる場合、それぞれの部品を別個に生産して組み立てなければならず、メス型端子の生産性ならびにメス型端子を用いたコネクタ等の生産性が悪化するという問題があった。
【0006】
この発明は、オス型端子の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスならびにメス型端子の生産方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、前記基台部は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子が挿入可能な挿入空間を形成する一対の側壁を有し、前記バネ部材は、前記挿入空間に挿入された前記オス型端子に当接するアームバネと、前記アームバネの向きを前記挿入空間の複数の開口のうちのいずれかから挿入される前記オス型端子の挿入方向に対応させて前記側壁に取付可能とするアームバネ取付部とを有しているメス型端子である。
【0008】
またこの発明は、前記メス型端子と、前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ、ならびに前記メス型端子と、前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた端子付き電線であることを特徴とする。
【0009】
さらにこの発明は、前記端子付き電線と、前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ付き電線、ならびに前記端子付き電線が備えられたワイヤーハーネス、ならびに前記コネクタ付き電線が備えられたワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0010】
加えてこの発明は、前記基台部の素材である金属板を所定形状に切り出す第一工程と、前記所定形状に切り出された前記金属板の所定位置に前記オス型端子の挿入方向に対応させて前記バネ部材を取り付ける第二工程と、前記バネ部材が取り付けられた前記金属板の所定部分を折り曲げて前記所定間隔を隔てた一対の前記側壁を形成する第三工程とを備えたメス型端子の生産方法である。
【0011】
この発明により、オス型端子の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上することが可能となる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子において、基台部は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子が挿入可能な挿入空間を形成する一対の側壁を有している。そして、バネ部材は、挿入空間に挿入されたオス型端子に当接するアームバネと、アームバネの向きを挿入空間の複数の開口のうちのいずれかから挿入されるオス型端子の挿入方向に対応させて側壁に取付可能とするアームバネ取付部とを有している。このような構成により、アームバネの向きを電線の延出方向に対して垂直となるオス型端子の挿入方向に対応させることが可能となる。また、アームバネの向きを電線の延出方向に対して平行となるオス型端子の挿入方向に対応させることも可能となる。したがって、本願発明に係るメス型端子は、オス型端子の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できる。
【0012】
この発明の態様として、前記アームバネ取付部は、前記側壁の内面に沿設される沿設板を備え、前記沿設板には、前記側壁との溶接部が設けられてもよい。
なお、本発明における溶接部は、あらゆる溶接態様を含むものとする。具体的には、実線状や点線状の溶接態様を含むものとする。また、直線状、曲線状及び折線状の溶接態様を含むものとする。さらに、円形等の細かなパターンを描きながら走査する、いわゆるウォブリング溶接やウィービング溶接等の溶接態様も含むものとする。
【0013】
この発明により、アームバネ取付部を構成する沿設板が側壁の内面に対して沿設されるため、沿設板の面外方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。また、かかる沿設板を側壁に対して溶接するため、バネ部材の脱落の防止と電気的接続性の向上をも実現できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記側壁と前記沿設板とを係合する係合片部が設けられてもよい。
なお、本発明における係合片部は、側壁から沿設板へ、あるいは沿設板から側壁へ向かって突出された突出部分を指す。ここで、係合とは、当接や係止、僅かな隙間を隔てた配置等を含む広い概念とする。
【0015】
この発明により、係合片部によって側壁と沿設板とが係合するため、沿設板の面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材を側壁上に配置する際に、アームバネの向きをオス型端子の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記側壁の二以上の端面が互いに対して交差する方向に形成され、前記沿設板には、少なくとも一つの前記端面に対して係合する前記係合片部が設けられてもよい。
なお、本発明における係合片部は、沿設板から少なくとも側壁の端面に対して沿うように突出された突出部分を指す。
【0017】
この発明により、沿設板に設けられた係合片部が側壁の端面に対して係合するため、沿設板の面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材を側壁上に配置する際に、アームバネの向きをオス型端子の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記側壁の端面から離間した位置に少なくとも一つの係合穴部が設けられ、前記沿設板には、前記係合穴部に挿入されて当該係合穴部の内周面に対して係合する前記係合片部が設けられてもよい。
なお、本発明における係合片部は、沿設板から少なくとも係合穴部の内周面に対して沿うように突出された突出部分を指す。
【0019】
この発明により、沿設板に設けられた係合片部が係合穴部の内周面に対して係合するため、沿設板の面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材を側壁上に配置する際に、アームバネの向きをオス型端子の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0020】
またこの発明の態様として、一対の前記側壁は、一枚の金属板を折り曲げて形成されるものとされ、前記金属板の折り曲げ部には、前記係合穴部が設けられてもよい。
この発明により、折り曲げ部の剛性を適宜に低下させることができる。そのため、金属板の曲げ加工が容易となる。また、元の形に戻ろうとするスプリングバックを弱めることもできる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記折り曲げ部の内面には、曲げ線方向に沿って凹溝部が設けられてもよい。
この発明により、凹溝部に沿って真っすぐに折り曲げることができる。そのため、金属板の曲げ加工がより容易となる。また、折り曲げ部の内面側における応力集中を抑えられるため、溶接熱等による応力緩和によって側壁が変位してしまうことを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記アームバネ取付部は、前記側壁の内面に沿設される沿設板を備え、前記側壁の内面には、前記沿設板と嵌合する嵌合部が設けられてもよい。
この発明により、アームバネ取付部を構成する沿設板が側壁の内面に設けられた嵌合部と嵌合するため、沿設板の面外方向、面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記アームバネは、前記アームバネ取付部から延伸された支持板とされ、当該アームバネの延伸方向が前記オス型端子の挿入方向に対して平行となるように配置されてもよい。
この発明により、アームバネの延伸方向に沿ってオス型端子が挿入されるため、アームバネの側面等にオス型端子の先端部分が引っ掛からず円滑に挿入することが可能となる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記アームバネは、一対の前記側壁同士の対向方向及び前記オス型端子の挿入方向に対して垂直となる仮想線を中心に線対称となる二列で配置されてもよい。
この発明により、アームバネとオス型端子の接触面積が増えるため、電気的接続性を向上させることが可能となる。また、アームバネがオス型端子の挿入方向に二列で配置されて付勢するため、例えば、オス型端子が振れたとしても当接状態を維持して確実に電気的接続性を確保することが可能となる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記バネ部材は、一対の前記側壁のそれぞれに互いに対向して取り付けられてもよい。
この発明により、アームバネとオス型端子の接触面積が増えるため、電気的接続性を向上させることが可能となる。また、アームバネがオス型端子の両側に配置されて付勢するため、例えば、オス型端子が振れたとしても当接状態を維持して確実に電気的接続性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
オス型端子の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスならびにメス型端子の生産方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図9】メス型端子の内側にブレードが挿入された状態のB-B断面図。
【
図10】基台部の素材である金属板を所定形状に切り出す第一工程を示す説明図。
【
図11】所定形状に切り出された金属板の所定位置にオス型端子の挿入方向に対応させてバネ部材を取り付ける第二工程を示す説明図。
【
図12】バネ部材が取り付けられた金属板の所定部分を折り曲げて所定間隔を隔てた一対の側壁を形成する第三工程を示す説明図。
【
図13】電線の延出方向に対して垂直にブレードが挿入されるメス型端子と電線の延出方向に対して平行にブレードが挿入されるメス型端子の斜視断面図。
【
図14】他の実施形態に係るメス型端子の分解斜視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1は各コネクタ1の全体斜視図である。
図1(a)は、いわゆる垂直接続タイプのメス型端子10を収容したものであり、
図1(b)は、いわゆる平行接続タイプのメス型端子10を収容したものであり、ともにコネクタハウジング2を透過状態で表している。
図2はメス型端子10の分解斜視図である。
【0029】
また、
図3はメス型端子10の斜視図である。
図4は
図3における矢印Xの方向から視た正面図であり、
図5は
図3における矢印Yの方向から視た側面図であり、
図6は
図3における矢印Zの方向から視た平面図である。
図7は
図6におけるA-A断面図であり、
図8は
図6におけるB-B断面図である。そして、
図9はメス型端子10の内側にブレード7が挿入された状態のB-B断面図である。
【0030】
さらに、
図10は基台部20の素材である金属板20Pを所定形状に切り出す第一工程を示す説明図である。
図11は所定形状に切り出された金属板20Pの所定位置にオス型端子6の挿入方向に対応させてバネ部材30を取り付ける第二工程を示す説明図である。
図12はバネ部材30が取り付けられた金属板20Pの所定部分を折り曲げて所定間隔を隔てた一対の側壁21を形成する第三工程を示す説明図である。そして、
図13は電線3の延出方向に対して垂直にブレード7が挿入されるメス型端子10と電線3の延出方向に対して平行にブレード7が挿入されるメス型端子10の斜視断面図である。
【0031】
図1に示すように、コネクタ1は、コネクタハウジング2の内部に二つのメス型端子10を収容したものである。以下に、
図1(a)に示すコネクタ1ならびに
図1(b)に示すコネクタ1を簡単に説明する。その後、メス型端子10について詳しく説明する。
【0032】
図1(a)に示すコネクタ1は、電線3の延出方向に対して垂直にオス型端子6のブレード7が挿入される垂直接続タイプのメス型端子10を収容したものである。かかるコネクタ1において、コネクタハウジング2は、筐体部2aと電線挿通部2bとを有している。
【0033】
筐体部2aには、二つのメス型端子10が収容されている。筐体部2aの側端面には、開口2apが設けられており、かかる開口2apからオス型端子6のブレード7が挿入される。そして、開口2apの奥側に配置されたメス型端子10に対してブレード7が挿入されることとなる。それぞれのメス型端子10から延びる電線3は、電線挿通部2bによって保持されている。
【0034】
他方で、
図1(b)に示すコネクタ1は、電線3の延出方向に対して平行にオス型端子6のブレード7が挿入される平行接続タイプのメス型端子10を収容したものである。かかるコネクタ1においても、コネクタハウジング2は、筐体部2aと電線挿通部2bとを有している。
【0035】
筐体部2aには、二つのメス型端子10が収容されている。筐体部2aの先端面には、開口2apが設けられており、かかる開口2apからオス型端子6のブレード7が挿入される。そして、開口2apの奥側に配置されたメス型端子10に対してブレード7が挿入されることとなる。それぞれのメス型端子10から延びる電線3は、電線挿通部2bによって保持されている。
【0036】
また、垂直接続タイプのメス型端子10と平行接続タイプのメス型端子10のいずれにも接続される電線3は、芯線4を絶縁被覆5で被覆した大電流用の丸電線である。芯線4は、銅又は銅合金で形成された素線を束ねて構成されている。但し、芯線4は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成された素線を束ねて構成されていてもよい。あるいは材質を問わず、いわゆる単線であってもよい。
【0037】
図2及び
図3に示すように、メス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とを有している。メス型端子10の機能区分としては、電線3が接続される電線接続部11と、オス型端子6のブレード7(
図9参照)が接続される端子接続部12とに分けることができる。そして、電線接続部11と端子接続部12とで端子本体15を構成している。
【0038】
なお、以下の説明においては、端子本体15における電線接続部11と端子接続部12とを直列配置した方向を長手方向Lとし、電線接続部11が設けられた側を基端側Lb、その逆側を先端側Ltと表している。また、長手方向Lに直交する方向を高さ方向Hとし、後述する挿入空間15Xが開口された側を上端側Hu、その逆側を下端側Hdと表している。さらに、長手方向Lと高さ方向Hに直交する方向を幅方向Wとし、電線接続部11に連接された側壁21の側を奥側Wb、その逆側を手前側Wfと表している。
【0039】
電線接続部11は、メス型端子10における電線3が接続される部位を指す。電線接続部11は、基台部20の奥側Wbの側壁21から基端側Lbに向かって延設されており、長手方向Lかつ高さ方向Hに広がった平板状に形成されている。電線接続部11と端子接続部12との境界部分には、下端側Hdの端縁から上端側Huに向かって切欠部11a(
図5及び
図7参照)が設けられている。基台部20の素材である金属板20P(
図10から
図12参照)に曲げ加工を施して一対の側壁21を形成する際に、電線接続部11に歪が生じないようにするためである。
【0040】
端子接続部12は、メス型端子10におけるオス型端子6のブレード7(
図9参照)が接続される部位を指す。端子接続部12は、互いに対して所定間隔を隔てた一対の側壁21を有しており、それぞれの側壁21は、長手方向Lかつ高さ方向Hに広がった平板状に形成されている。こうして、それぞれの側壁21と、これら側壁21をつなぐ折り曲げ部22との間には、ブレード7(
図9参照)が挿入可能な挿入空間15Xが形成されている。また、上端側Huと先端側Ltにブレード7(
図9参照)の挿入口となる開口15u,15tが形成されている。そして、それぞれの側壁21の内面には、バネ部材30が取り付けられている。
【0041】
図2から
図6に示すように、バネ部材30は、一対の側壁21の内面に取り付けられることにより、互いに対向して配置される。これらバネ部材30は、二つ一組で使用され、挿入空間15Xに挿入されたブレード7(
図9参照)を挟み込むように付勢力が作用する構成とされている(
図9における矢印F参照)。以下に、バネ部材30について詳しく説明する。
【0042】
バネ部材30は、金属板を打ち抜くことで略正方形状に形成されている。バネ部材30は、オス型端子6のブレード7(
図9参照)に当接するアームバネ31と、アームバネ31を側壁21に取付可能とするアームバネ取付部32とを有している。アームバネ取付部32は、側壁21の内面に沿設される沿設板32pを備えており、かかる沿設板32pには、側壁21との溶接部40(
図3及び
図7から
図9参照)が設けられている。
【0043】
また、バネ部材30は、沿設板32pから長手方向Lに延設された延設部分を垂直に折り曲げることによって形成した係合片部34を有している。そのため、バネ部材30を奥側Wbの側壁21に装着すると、かかる側壁21における先端側Ltの端面に係合片部34が当接することとなる。他方で、バネ部材30を反転させて手前側Wfの側壁21に装着すると、かかる側壁21における基端側Lbの端面に係合片部34が当接することとなる。このように、係合片部34は、側壁21の端面に当接(係合)することで、バネ部材30の位置決め用途に利用される。
【0044】
さらに、バネ部材30は、沿設板32pから高さ方向Hに延設された延設部分を垂直に折り曲げることによって形成した係合片部35を有している。そのため、バネ部材30を奥側Wbの側壁21に装着すると、かかる側壁21における上端側Huの端面に係合片部35が当接することとなる。他方で、バネ部材30を反転させて手前側Wfの側壁21に装着すると、かかる側壁21における上端側Huの端面に係合片部35が当接することとなる。このように、係合片部35も、側壁21の当接(係合)に係合することで、バネ部材30の位置決め用途に利用される。
【0045】
加えて、
図7から
図9に示すように、バネ部材30は、計12枚のアームバネ31を取り囲むように略正方形状の沿設板32pが形成されている。そして、高さ方向Hの中央部分よりも上端側Huにおいて、沿設板32pの端辺部分から下端側Hdに向かってアームバネ31が延伸されている。また、高さ方向Hの中央部分よりも下端側Hdにおいて、沿設板32pの端辺部分から上端側Huに向かってアームバネ31が延伸されている。以下では、上端側Huのアームバネ31をアームバネ31uとし、下端側Hdのアームバネ31をアームバネ31dとして説明する。
【0046】
アームバネ31uは、下端側Hdに向かうにつれて対向する側壁21に対して徐々に近接するアーム部311と、アーム部311の所定箇所から折り曲げられて徐々に離間するアーム先端部312とを有する片持ち支持板である。また、アームバネ31dは、上端側Huに向かうにつれて対向する側壁21に対して徐々に近接するアーム部311と、アーム部311の所定箇所から折り曲げられて徐々に離間するアーム先端部312とを有する片持ち支持板である。そして、アームバネ31uとアームバネ31dのいずれにおいても、アーム部311とアーム先端部312の折り曲げ部分が、挿入されたブレード7の側面に対して当接する(
図9参照)。
【0047】
なお、バネ部材30は、高さ方向Hの中央部分よりも上端側Huにアームバネ31uが設けられ、高さ方向Hの中央部分よりも下端側Hdにアームバネ31dが設けられている。これらのアームバネ31u,31dは、それぞれ6枚ずつ設けられ、高さ方向H及び幅方向Wに対して垂直となる仮想線Lv(
図7参照)を中心に線対称となっている。但し、それぞれの枚数が異なっていてもよいし、線対称である構成に限定するものではない。また、アームバネ31uとアームバネ31dのいずれにおいても、それぞれのアーム部311がアーム先端部312によって一つに連結されている。但し、一つに連結する構成に限定するものではない。さらに、アームバネ31uとアームバネ31dのいずれにおいても、アーム幅ならびにアーム長さが等しく形成されている。但し、アーム幅ならびにアーム長さが等しい構成に限定するものではない。
【0048】
例えば、それぞれのアームバネ31u,31dは、長手方向Lの両側Lb,Ltから中央に向かってアーム幅が徐々に広く又は狭くなっていてもよい。あるいは交互に広狭を繰り返してもよい。また、それぞれのアームバネ31u,31dは、長手方向Lの両側Lb,Ltから中央に向かってアーム長さが徐々に長く又は短くなっていてもよい。あるいは交互に長短を繰り返してもよい。このとき、アームバネ31uとアームバネ31dのアーム長さが互い違いになっていてもよい。つまり、上端側Huのアームバネ31uが長いときは、下端側Hdのアームバネ31uが短く、上端側Huのアームバネ31uが短いときは、下端側Hdのアームバネ31uが長くなっている構成としてもよい。これらの構成とすれば、アームバネ31u,31dの一群全体として、ブレード7に対して高い追従性を発揮させることができる。
【0049】
ところで、このようなメス型端子10は、以下の生産工程を経て完成される。すなわち、基台部20の素材である金属板20Pを所定形状に切り出す第一工程と、所定形状に切り出された金属板20Pの所定位置にブレード7の挿入方向に対応させてバネ部材30を取り付ける第二工程と、バネ部材30が取り付けられた金属板20Pの所定部分を折り曲げて所定間隔を隔てた一対の側壁21を形成する第三工程とを経て完成される。
【0050】
まず、
図10を用いて、第一工程について説明する。第一工程では、金属板20Pをプレスして所定形状とする(
図10(a)参照)。このとき、金属板20Pには、後に側壁21となる二つの平板部201,202と、後に折り曲げ部22となる連結部203とが形成される。その後、金属板20Pの端縁に沿ってバリやカエリを落とし、所定位置に面取20cを形成する(
図10(b)参照)。
【0051】
また、連結部203には、係合穴部22hが形成される。係合穴部22hは、長手方向Lに相当する方向Lpに長い略楕円形状の穴である。係合穴部22hは、一つのみ形成されているが、二つ以上が形成されていてもよい。さらに、連結部203には、凹溝部22gが形成される。凹溝部22gは、長手方向Lに相当する方向Lpに沿って係合穴部22hの中心を通る直線状の溝である。凹溝部22gは、一本のみ形成されているが、二本以上が形成されていてもよい。
【0052】
次に、
図11を用いて、第二工程について説明する。第二工程では、平板部201と平板部202にそれぞれバネ部材30を取り付ける(
図11(a)参照)。このとき、アームバネ31の延伸方向がブレード7の挿入方向に対して平行となるように取り付け方向が定められる。つまり、本実施形態に係るメス型端子10は、垂直接続タイプであるので、アームバネ31の延伸方向が高さ方向Hに相当する方向Hpに対して平行となるように取り付け方向が定められる。その後、沿設板32pの端縁に沿って側壁21との溶接を行う(
図11(b)参照)。
【0053】
また、かかる溶接は、ファイバレーザ溶接機Lwを用いて行われる(溶接部40参照)。溶接部40は、実線状かつ直線状の溶接線で形成されている。但し、少なくとも一部が実線状ではなく、点線状であってもよい。また、少なくとも一部が直線状ではなく、曲線状あるいは折線状であってもよい。さらに、少なくとも一部が円形等の細かなパターンを描きながら走査する、いわゆるウォブリング溶接やウィービング溶接等であってもよい。もちろん溶接部40は、沿設板32pの外縁に沿う略正方形状に描かれることに限定されない。すなわち、点群状、単純な線や円、あるいは複雑な幾何学模様等としてもよい。
【0054】
なお、側壁21と沿設板32pとの溶接部40を設けることにより、これらが一体化するので、側壁21と沿設板32pとの間に隙間が生じたことによる通電性の悪化を防止できる。その上で、溶接部40においては、金属結合によって電気抵抗が下がるので、むしろ通電性が向上することとなる。こうして、基台部20とバネ部材30との電気的接続性の向上を実現できる。
【0055】
次に、
図12を用いて、第三工程について説明する。第三工程では、平板部201と平板部202をつなぐ連結部203を折り曲げて所定間隔を隔てた一対の側壁21を形成する。このとき、連結部203には、前述した係合穴部22hが形成されているため、かかる連結部203の剛性が適宜に低下している。また、連結部203には、前述した凹溝部22gが形成されているため、かかる凹溝部22gに沿って真っすぐに折り曲げることができる。こうして、平板部201と平板部202が一対の側壁21となり、連結部203が折り曲げ部22となる。
【0056】
なお、
図13(a)に示すように、本実施形態に係るメス型端子10は、上端側Huの開口15uからオス型端子6のブレード7が挿入される、いわゆる垂直接続タイプである。そのため、第二工程においては、アームバネ31の延伸方向が高さ方向Hに相当する方向Hpに対して平行となるように取り付け方向が定められる(
図11(a)及び
図11(b)参照)。
【0057】
この点、
図13(b)に示すように、本実施形態に係るメス型端子10が、先端側Ltの開口15tからオス型端子6のブレード7が挿入される、いわゆる平行接続タイプである場合、第二工程においては、アームバネ31の延伸方向が長手方向Lに相当する方向Lpに対して平行となるように取り付け方向が定められる。このとき、係合穴部22hの内周面に係合片部34が当接することとなり、側壁21における先端側Ltの端面に係合片部35が当接することとなる。
【0058】
加えて、本実施形態に係るメス型端子10は、折り曲げ部22に係合穴部22hが設けられた構成であるが、側壁21における先端側Ltの端面から離間した位置に高さ方向Hに相当する方向Hpに長い係合穴部22iが設けられていてもよい(
図7における破線にて表した係合穴部22i参照)。このようにすれば、側壁21における上端側Huの端面に係合片部34が当接することとなり、係合穴部22iの内周面に係合片部35が当接することとなるようにもできる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係るメス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで端子本体15が設けられ、基台部20は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子6のブレード7が挿入可能な挿入空間15Xを形成する一対の側壁21を有し、バネ部材30は、挿入空間15Xに挿入されたブレード7に当接するアームバネ31と、アームバネ31の向きを挿入空間15Xの複数の開口15u,15tのうちのいずれかから挿入されるブレード7の挿入方向に対応させて側壁21に取付可能とするアームバネ取付部32とを有している。
【0060】
このようなメス型端子10によれば、オス型端子6のブレード7の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上することが可能となる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子10において、基台部20は、所定間隔を隔てて配置され、オス型端子6のブレード7が挿入可能な挿入空間15Xを形成する一対の側壁21を有している。そして、バネ部材30は、挿入空間15Xに挿入されたブレード7に当接するアームバネ31と、アームバネ31の向きを挿入空間15Xの複数の開口15u,15tのうちのいずれかから挿入されるブレード7の挿入方向に対応させて側壁21に取付可能とするアームバネ取付部32とを有している。このような構成により、アームバネ31の向きを電線3の延出方向に対して垂直となるブレード7の挿入方向に対応させることが可能となる。また、アームバネ31の向きを電線3の延出方向に対して平行となるブレード7の挿入方向に対応させることも可能となる。したがって、本願発明に係るメス型端子10は、オス型端子6のブレード7の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できる。
【0061】
また、本願発明に係るメス型端子10において、アームバネ取付部32は、側壁21の内面に沿設される沿設板32pを備え、沿設板32pには、側壁21との溶接部40が設けられている。
【0062】
このようなメス型端子10によれば、アームバネ取付部32を構成する沿設板32pが側壁21の内面に対して沿設されるため、沿設板32pの面外方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。また、かかる沿設板32pを側壁21に対して溶接するため、バネ部材30の脱落の防止と電気的接続性の向上をも実現できる。
【0063】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、側壁21と沿設板32pとを係合する係合片部34,35が設けられている。係合片部34,35は、沿設板32pから側壁21へ向かって突出された突出部分である。
【0064】
このようなメス型端子10によれば、係合片部34,35によって側壁21と沿設板32pとが係合するため、沿設板32pの面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材30を側壁21上に配置する際に、アームバネ31の向きをブレード7の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0065】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、側壁21の二以上の端面が互いに対して交差する方向に形成され、沿設板32pには、二つの端面に対して係合する係合片部34,35が設けられている。
【0066】
このようなメス型端子10によれば、沿設板32pに設けられた係合片部34,35が側壁21の端面に対して係合するため、沿設板32pの面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材30を側壁21上に配置する際に、アームバネ31の向きをブレード7の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0067】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、側壁21の端面から離間した位置に少なくとも一つの係合穴部22hが設けられ、沿設板32pには、係合穴部22hに挿入されて係合穴部22hの内周面に対して係合する係合片部34,35が設けられている。
【0068】
このようなメス型端子10によれば、沿設板32pに設けられた係合片部34,35が係合穴部22hの内周面に対して係合するため、沿設板32pの面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。そのため、バネ部材30を側壁21上に配置する際に、アームバネ31の向きをブレード7の挿入方向にズレなく対応させることが可能となる。もちろん溶接に際して、面内方向及び回転方向へのズレを防止できる。
【0069】
また、本願発明に係るメス型端子10において、一対の側壁21は、一枚の金属板20Pを折り曲げて形成されるものとされ、金属板20Pの折り曲げ部22には、係合穴部22hが設けられている。
このようなメス型端子10によれば、折り曲げ部22の剛性を適宜に低下させることができる。そのため、金属板20Pの曲げ加工が容易となる。また、元の形に戻ろうとするスプリングバックを弱めることもできる。
【0070】
また、本願発明に係るメス型端子10において、折り曲げ部22の内面には、曲げ線方向(長手方向L)に沿って凹溝部22gが設けられている。
このようなメス型端子10によれば、凹溝部22gに沿って真っすぐに折り曲げることができる。そのため、金属板20Pの曲げ加工がより容易となる。また、折り曲げ部22の内面側における応力集中を抑えられるため、溶接熱等による応力緩和によって側壁21が変位してしまうことを防止できる。
【0071】
また、本願発明に係るメス型端子10において、アームバネ31は、アームバネ取付部32から延伸された支持板とされ、アームバネ31の延伸方向がブレード7の挿入方向に対して平行となるように配置されている。
【0072】
このようなメス型端子10によれば、アームバネ31の延伸方向に沿ってブレード7が挿入されるため、アームバネ31の側面等にブレード7の先端部分が引っ掛からず円滑に挿入することが可能となる。
【0073】
また、本願発明に係るメス型端子10において、アームバネ31は、一対の側壁21同士の対向方向(幅方向W)及びブレード7の挿入方向(高さ方向H又は長手方向L)に対して垂直となる仮想線Lvを中心に線対称となる二列で配置されている。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ31とブレード7の接触面積が増えるため、電気的接続性を向上させることが可能となる。また、アームバネ31がブレード7の挿入方向に二列で配置されて付勢するため、例えば、ブレード7が振れたとしても当接状態を維持して確実に電気的接続性を確保することが可能となる。
【0074】
また、本願発明に係るメス型端子10において、バネ部材30は、一対の側壁21のそれぞれに互いに対向して取り付けられる。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ31とブレード7の接触面積が増えるため、電気的接続性を向上させることが可能となる。また、アームバネ31がブレード7の両側に配置されて付勢するため、例えば、ブレード7が振れたとしても当接状態を維持して確実に電気的接続性を確保することが可能となる。
【0075】
なお、前述したように、本実施形態に係るメス型端子10においては、側壁21の内面に沿設される沿設板32pの溶接(溶接部40)がファイバレーザ溶接機Lwを用いて施される。レーザの波長は、近赤外域のみならず、遠赤外域、可視域、その他の波長、あるいは多波長を組み合わせたものでもよい。レーザの発振形態は、CW、パルス、CWのパルス変調でもよい。
【0076】
また、スパッタを抑制するための回析光学素子ならびにそれに類する集光ビームパターン制御を用いてもよい。レーザの掃引には、ガルバノスキャナを用いた溶接、もしくは加工ヘッドを固定し、メス型端子10をステージングして溶接、あるいはガルバノスキャナとロボットを組み合わせたオンザフライ溶接でもよい。そして、レーザの代わりに電子ビームを用いて溶接を行うとしてもよいし、アーク溶接機等を用いて溶接を行うとしてもよい。ろう付けやはんだ付け等のろう接合も溶接の概念に含むものとする。
【0077】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
コネクタはコネクタ1に対応し、
コネクタハウジングはコネクタハウジング2に対応し、
電線は電線3に対応し、
オス型端子はオス型端子6に対応し、
メス型端子はメス型端子10に対応し、
端子本体は端子本体15に対応し、
挿入空間は挿入空間15Xに対応し、
開口は開口15u,15tに対応し、
基台部は基台部20に対応し、
側壁は側壁21に対応し、
折り曲げ部は折り曲げ部22に対応し、
係合穴部は係合穴部22hに対応し、
凹溝部は凹溝部22gに対応し、
バネ部材はバネ部材30に対応し、
アームバネはアームバネ31に対応し、
アームバネ取付部はアームバネ取付部32に対応し、
沿設板は沿設板32pに対応し、
係合片部は係合片部34,35に対応し、
溶接部は溶接部40に対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0078】
例えば、前述の実施形態に係るメス型端子10において、バネ部材30は、アームバネ取付部32を有しており、アームバネ取付部32は、側壁21の内面に沿設される沿設板32pを備え、沿設板32pには、側壁21との溶接部40が設けられている。しかしながら、側壁21の内面に沿設板32pと嵌合する嵌合部21fが設けられてもよい。
【0079】
図14に示すように、嵌合部21fは、沿設板32pが嵌合される略正方形状の凹部が考えられるが、これに限定するものではない。例えば、沿設板32pが嵌合される略正方形状の平面部分を取り囲むように枠体が形成されていてもよい。あるいは沿設板32pが嵌合される略正方形状の平面部分を取り囲むように所々に突起が形成されているだけでもよい。
【0080】
このように、本願発明に係るメス型端子10において、アームバネ取付部32は、側壁21の内面に沿設される沿設板32pを備え、側壁21の内面には、沿設板32pと嵌合する嵌合部21fが設けられてもよい。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ取付部32を構成する沿設板32pが側壁21の内面に設けられた嵌合部21fと嵌合するため、沿設板32pの面外方向、面内方向及び回転方向への位置決めならびに安定性の向上を図ることができる。
【0081】
また、本願発明に係るメス型端子10においては、沿設板32pから側壁21へ向かって突出された係合片部34,35を有している。しかしながら、側壁21から沿設板32pへ向かって突出された係合片部を有していてもよい。あるいは沿設板32pから側壁21へ向かって突出された係合片部34,35と側壁21から沿設板32pへ向かって突出された係合片部の両方を有していてもよい。
【0082】
さらに、本願発明に係るメス型端子10においては、互いに等しい二つのバネ部材30を対向して配置した構成である。しかしながら、一方がバネ部材30であり、他方がアームバネを有する別途の部材(図示せず)であってもよい。例えば、バネ部材30と比較してアームバネの形状や配置、枚数が異なっていてもよい。もちろんアームバネではない他の弾性構造を有していてもよい。
【0083】
加えて、一方がバネ部材30であり、他方がビード形状等を有する別途の部材(図示せず)であってもよい。ここで、ビード形状とは、対向する側壁21に向かって突出した直線状の凸部であり、かかる凸部がブレード7の挿入方向に対して平行となるように形成されていることが考えられる。また、このような部材を備えるのではなく、側壁21にビード形状が形成されていてもよい。
【0084】
なお、本願の発明には、メス型端子10と、メス型端子10を収容するコネクタハウジング2とが備えられたコネクタ1(
図1参照)、ならびにメス型端子10と、メス型端子10の基台部20に接続される電線3とが備えられた端子付き電線が含まれるものとする。さらには、端子付き電線と、端子付き電線を収容するコネクタハウジング2とが備えられたコネクタ付き電線、ならびに端子付き電線が備えられたワイヤーハーネス、ならびにコネクタ付き電線が備えられたワイヤーハーネスが含まれるものとする。
【0085】
これらにおいても、本願発明に係るメス型端子10と同様の効果を奏する。すなわち、オス型端子6のブレード7の挿入方向に関わらず共通する部品で構成され、ひいては生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0086】
1…コネクタ
2…コネクタハウジング
3…電線
6…オス型端子
10…メス型端子
15…端子本体
15X…挿入空間
15u…開口
15t…開口
20…基台部
21…側壁
22…折り曲げ部
22h…係合穴部
22g…凹溝部
30…バネ部材
31…アームバネ
32…アームバネ取付部
32p…沿設板
34…係合片部
35…係合片部
40…溶接部