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  • 特開-化合物及び有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121520
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】化合物及び有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/14 20060101AFI20240830BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240830BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
H10K50/12
H10K59/10
H10K71/12
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028666
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 司
(72)【発明者】
【氏名】松元 香樹
(72)【発明者】
【氏名】五郎丸 英貴
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一毅
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC22
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD68
3K107DD69
3K107DD70
3K107GG06
4C063AA03
4C063BB06
4C063CC43
4C063DD08
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶剤溶解性が高く、有機電界発光素子の発光層に用いた場合、長寿命である有機電界発光素子が得られる化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物、当該化合物と有機溶剤とを含む組成物、当該組成物を湿式成膜法により成膜する工程を含む薄膜形成方法、及び、有機層を所定の位置に有する有機電界発光素子の製造方法であって、有機層を、前記組成物を用いて湿式成膜法にて形成する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、
、W及びWは、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W、W及びWの内、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa、Ya、及びZaは、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya及びZaの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xaは、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya及びZaは、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
11は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)におけるYaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Zaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1)におけるXaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(1)におけるXa、Ya、Za、Xa、Ya及びZaがいずれも置換基を有しない、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
前記式(1)におけるR11がいずれも水素原子である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
基板上に、陽極及び陰極を有し、前記陽極と前記陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、
前記有機層が請求項1又は2に記載の化合物を含む、有機電界発光素子。
【請求項7】
前記有機層が発光層である、請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
少なくとも、請求項1又は2に記載の化合物と有機溶剤とを含む、組成物。
【請求項9】
さらに、発光材料と、前記式(1)で表される化合物と異なる電荷輸送材料とを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(1)で表される化合物と異なる前記電荷輸送材料として、下記式(240)で表される化合物、及び、下記式(260)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【化2】

(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【化3】

(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【請求項11】
前記式(240)におけるAr611及びAr612が、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記式(240)におけるR611及びR612が、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記式(240)におけるn611及びn612が、各々独立に0又は1である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、
Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである、請求項10に記載の組成物。
【化4】
【請求項15】
請求項8に記載の組成物を湿式成膜法により成膜する工程を含む、薄膜形成方法。
【請求項16】
基板上に、陽極及び陰極を有し、前記陽極と前記陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
前記有機層を、請求項8に記載の組成物を用いて湿式成膜法にて形成する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記有機層が発光層である、請求項16に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「OLED」又は「素子」と称す場合がある。)に用いることができる化合物に関する。本発明はまた、この化合物を有する有機電界発光素子、当該化合物及び有機溶剤を含有する組成物、当該組成物を用いる薄膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子の開発が行われるようになっている。有機電界発光素子(OLED)は、通常、陽極と陰極の間に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層などを有する。この各層に適した材料が開発されつつあり、発光色も赤、緑、青と、それぞれ開発が進んでいる。また、従来の蒸着型と比較して材料利用効率が高く、製造コストを下げることができる塗布型OLEDの研究が進められている。
【0003】
塗布型OLEDにおいては、素子の長寿命化やより低い消費電力での駆動が求められている。素子の寿命や消費電力改善に影響を及ぼす原因は様々な因子が考えられる。例えば寿命に関しては、素子を構成する材料の耐熱耐久性や、結晶性が大きな影響を及ぼすものと考えられている。
【0004】
有機電界発光素子を湿式成膜法で製造するためには、使用される材料はすべて有機溶剤に溶解してインクとして使用できるものである必要がある。使用材料が溶解性に劣ると、長時間加熱するなどの操作を要するため、使用前に材料が劣化してしまう可能性がある。溶液状態で長時間均一状態を保持することができないと、溶液から材料の析出が起こり、インクジェット装置などによる成膜が不可能となる。
湿式成膜法に使用される材料には、有機溶剤に速やかに溶解すること、溶解した後析出せず均一状態を保持すること、という2つの意味での溶解性が求められる。
【0005】
特許文献1~特許文献3には、発光層のホストである電荷輸送材料としてトリアジン系化合物を用いることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/043357号
【特許文献2】国際公開第2012/096263号
【特許文献3】特開2006-188493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機電界発光素子の技術分野では、常に素子性能のさらなる向上が求められている。
特許文献1~特許文献3では、トリアジン系化合物を含む発光層の上に接して電子輸送層を湿式成膜することに関する検討は行われていなかった。
特許文献2に記載のカルバゾリル基を2つ有するトリアジン系化合物は溶剤溶解性が低く、湿式成膜法による成膜性が悪い。
特許文献3に記載のカルバゾリル基を2つ有するトリアジン系化合物は溶剤溶解性が良いが、有機電界発光素子の性能が十分ではない。
【0008】
本発明は、溶剤溶解性が高く、有機電界発光素子の発光層に用いた場合、長寿命である有機電界発光素子が得られる化合物を提供することを課題とする。
更に、本発明は、当該化合物を有する有機電界発光素子、当該化合物及び有機溶剤を含有する組成物、この組成物を用いる薄膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定の構造を有する化合物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明の要旨は、次のとおりである。
【0011】
本発明の態様1は、
下記式(1)で表される化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)中、
、W及びWは、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W、W及びWの内、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa、Ya、及びZaは、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya及びZaの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xaは、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya及びZaは、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
11は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0014】
本発明の態様2は、態様1の化合物において、
前記式(1)におけるYaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Zaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、化合物である。
【0015】
本発明の態様3は、態様1又は2の化合物において、
前記式(1)におけるXaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、化合物である。
【0016】
本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つの化合物において、
前記式(1)におけるXa、Ya、Za、Xa、Ya及びZaがいずれも置換基を有しない、化合物である。
【0017】
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの化合物において、
前記式(1)におけるR11がいずれも水素原子である、化合物である。
【0018】
本発明の態様6は、
基板上に、陽極及び陰極を有し、前記陽極と前記陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、
前記有機層が態様1~5のいずれか1つの化合物を含む、有機電界発光素子である。
【0019】
本発明の態様7は、態様6の有機電界発光素子において、
前記有機層が発光層である、有機電界発光素子である。
【0020】
本発明の態様8は、
少なくとも、態様1~5のいずれか1つの化合物と有機溶剤とを含む、組成物である。
【0021】
本発明の態様9は、態様8の組成物において、
さらに、発光材料と、前記式(1)で表される化合物と異なる電荷輸送材料とを含む、組成物である。
【0022】
本発明の態様10は、態様9の組成物において、
前記式(1)で表される化合物と異なる前記電荷輸送材料として、下記式(240)で表される化合物、及び、下記式(260)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む、組成物である。
【0023】
【化2】
【0024】
(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0025】
【化3】
【0026】
(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【0027】
本発明の態様11は、態様10の組成物において、
前記式(240)におけるAr611及びAr612が、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である、組成物である。
【0028】
本発明の態様12は、態様10又は11の組成物において、
前記式(240)におけるR611及びR612が、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である、組成物である。
【0029】
本発明の態様13は、態様10~12のいずれか1つの組成物において、
前記式(240)におけるn611及びn612が、各々独立に0又は1である、組成物である。
【0030】
本発明の態様14は、態様10~13のいずれか1つの組成物において、
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、
Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである、組成物である。
【0031】
【化4】
【0032】
本発明の態様15は、
態様8~14のいずれか1つの組成物を湿式成膜法により成膜する工程を含む、薄膜形成方法である。
【0033】
本発明の態様16は、
基板上に、陽極及び陰極を有し、前記陽極と前記陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
前記有機層を、態様8~14のいずれか1つの組成物を用いて湿式成膜法にて形成する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法である。
【0034】
本発明の態様17は、態様16の有機電界発光素子の製造方法において、
前記有機層が発光層である、有機電界発光素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、溶剤溶解性が高く、有機電界発光素子の発光層に用いた場合、長寿命である有機電界発光素子が得られる化合物を提供することができる。
また、本発明の化合物は、特定の溶剤に対して不溶性であり耐溶剤性に優れる。このため、本発明の化合物を含む膜の上に、湿式成膜法により別の層を積層形成することも可能となる。
【0036】
本発明により、当該化合物を有する有機電界発光素子、当該化合物及び有機溶剤を含有する組成物、薄膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
【0039】
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1以上有していてもよいことを意味するものとする。
【0040】
〔本発明の化合物〕
本発明の化合物は、後掲の式(1)で表される化合物である。
以下において、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と称す場合がある。
また、化合物(1)を「本発明の化合物」と称す。
【0041】
本発明の化合物は電荷輸送材料として機能する。即ち、本発明の化合物は窒素原子を含む複素6員環を有するため、電子輸送性材料として機能させることができる。
従って、本発明の化合物は、電荷輸送化合物、即ち電荷輸送ホスト材料であることが好ましく、有機電界発光素子における発光層の電子輸送性のホスト材料として用いることが好ましい。
【0042】
後掲の式(1)における、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、フェニル基、N-カルバゾリル基が有してもよい置換基は、以下の置換基群Qから選択される。
【0043】
<置換基群Q>
置換基群Qは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0044】
置換基群Qとして、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールオキシ基が挙げられ、好ましくは、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルコキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
ジアルキルアミノ基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が挙げられる。
ジアリールアミノ基としては、炭素数が通常10以上であり、好ましくは12以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のジアリールアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基が挙げられる。
アリールアルキルアミノ基としては、炭素数が通常7であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールアルキルアミノ基が挙げられ、好ましくはフェニルメチルアミノ基が挙げられる。
アシル基としては、炭素数が通常2であり、通常24以下であり、好ましくは12のアシル基が挙げられ、好ましくはアセチル基、ベンゾイル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロアルキル基としては、炭素数が通常1以上であり、通常12以下であり、好ましくは6以下のハロアルキル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルキルチオ基が挙げられ、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールチオ基が挙げられ、好ましくはフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基が挙げられる。
シリル基としては、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のシリル基が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
シロキシ基としては、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のシロキシ基が挙げられ、好ましくはトリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基が挙げられる。
シアノ基は-CNである。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基、2-フェニルブチル-2-イル基、3-フェニルペンチル-3-イル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-ブチル基、5-フェニル-1-ペンチル基、6-フェニル-1-ヘキシル基、7-フェニル-1-ヘプチル基、8-フェニル-1-オクチル基等の、炭素数が通常7以上、好ましくは9以上であり、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下であるアラルキル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が通常6以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、炭素数が通常3以上であり、好ましくは4以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下の芳香族複素環基が挙げられ、好ましくはチエニル基、ピリジル基が挙げられる。
【0045】
上記の置換基群Qの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基としては芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基であり、置換基を有さないことがさらに好ましい。溶解性向上の観点からは、置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0046】
上記置換基群Qの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Q)と同じのものが挙げられる。上記置換基群Qの置換基がさらに有してもよい各置換基は、好ましくは、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、又はフェニル基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、又はフェニル基である。上記置換基群Qの各置換基は、電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0047】
後掲の式(1)におけるR11については、以下の通りである。
【0048】
<R11
式(1)におけるR11は各々独立に、水素原子又は置換基である。
水素原子以外の置換基であるR11としては、上記置換基群Qから選ばれる基が挙げられる。置換基群Qの中でも好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基である。耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。式(1)中に置換基である場合のR11が複数存在する場合、複数のR11は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0049】
上述した炭素数6~30の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基、炭素数3~30の芳香族複素環基が有していてもよい置換基、置換基であるR11が有していてもよい置換基としては、上記置換基群Qから選択することができる。
【0050】
電子輸送性の観点から、式(1)におけるR11はいずれも水素原子であることが好ましい。
【0051】
[化合物(1)]
化合物(1)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0052】
【化5】
【0053】
(式(1)中、
、W及びWは、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W、W及びWの内、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa、Ya、及びZaは、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya及びZaの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xaは、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya及びZaは、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
11は各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0054】
<W、W、W
式(1)におけるW、W及びWは、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W、W及びWの内、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともWは窒素原子であることが好ましく、少なくともW及びWは窒素原子であることが好ましく、W、W及びWのすべてが窒素原子であることがより好ましい。
即ち、電子輸送性を向上させる観点から、Wが窒素原子であることが好ましく、Wに加えてWまたはWの一方が窒素原子であるピリミジン構造が更に好ましく、W、W及びW全てが窒素原子であるトリアジン構造が最も好ましい。
【0055】
<-(Xag11-Xa
式(1)における-(Xag11-Xaは以下の構造から選ばれることが好ましい。
【0056】
【化6】
【0057】
これらの構造において、水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0058】
<-(Yah11-Ya
式(1)における-(Yah11-Yaは以下の構造から選ばれることが好ましい。
【0059】
【化7】
【0060】
これらの構造において、YaのN-カルバゾリル基のベンゼン環上の水素原子を含めて、すべてのベンゼン環上の水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0061】
<-(Zaj11-Za
式(1)における-(Zaj11-Zaは以下の構造から選ばれることが好ましい。
【0062】
【化8】
【0063】
これらの構造において、ZaのN-カルバゾリル基のベンゼン環上の水素原子を含めて、すべてのベンゼン環上の水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0064】
<化合物(1)の好ましい構造>
式(1)において、g11は2以上の整数であることが好ましく、4以下の整数であることが好ましい。
また、h11は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
また、j11は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
g11、h11、j11が上記下限以上であることで溶解性が良好となり、安定性も良好となる。
【0065】
式(1)において、Xaの少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Xaのすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Xaが1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
また、式(1)において、Yaの少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Yaのすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Yaが1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
さらに、式(1)において、Zaの少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Zaのすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Zaが1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
さらにまた、式(1)において、Yaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Zaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。
【0066】
電子輸送性の点から、式(1)において、Xa、Ya、Za、Xa、Ya及びZaがいずれも置換基を有しないことが好ましい。
【0067】
<化合物(1)の分子量>
化合物(1)の分子量は3000以下が好ましく、より好ましくは2500以下であり、特に好ましくは2000以下であり、最も好ましくは1800以下である。化合物(1)の分子量の下限は930以上が好ましく、より好ましくは1000以上であり、特に好ましくは1200以上である。
【0068】
<化合物(1)の具体例>
化合物(1)の具体的構造は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
【化11】
【0072】
【化12】
【0073】
【化13】
【0074】
【化14】
【0075】
<化合物(1)の製造方法>
化合物(1)は、例えば、後掲の実施例に記載する方法に準じて製造することができる。
【0076】
<化合物(1)が効果を奏する理由>
化合物(1)は、W、W及びWを含む含窒素6員環とそれに結合するフェニル基にLUMOが分布することで電子輸送性に優れる。またW、W及びWを含む含窒素6員環に結合するフェニル基にメタ位でさらにフェニレン基が結合することで、電子耐久性が向上し、化合物の安定性に優れる。
【0077】
化合物(1)の、W、W及びWを含む含窒素6員環において、W、W、Wのパラ位に結合する基は1,3-フェニレン基であるため共役していない。このため、化合物(1)は広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0078】
化合物(1)のYa及びZaのそれぞれ少なくとも一つは1,3-フェニレン基であるからN-カルバゾリル基であるYa又はZaと共役していない。このため、化合物(1)は広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0079】
さらに、-(Xag11-Xa、-(Yah11-Ya、-(Zaj11-Zaが前記好ましい構造であると、広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくい。
【0080】
また、化合物(1)は、W、W及びWを含む含窒素6員環とカルバゾリル基の間のフェニレン基が3つ以上であり、1,3-フェニレン基を適度に多く含むため、溶解性に優れている。
【0081】
加えて、化合物(1)は、Ya及びZaにN-カルバゾリル基を有することから、正孔に対しても高い安定性を有する。さらに、化合物(1)は、Ya及びZaにN-カルバゾリル基を有することから、分子間相互作用が強められ、化合物の安定性に優れる。
【0082】
〔組成物〕
本発明の組成物は少なくとも、本発明の化合物と有機溶剤とを含む。
【0083】
本発明の組成物には、化合物(1)の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
本発明の組成物はさらに、発光材料を含むことが好ましく、有機電界発光素子の発光層形成用組成物として好適に用いられる。また、本発明の組成物はさらに、発光材料と、化合物(1)と異なる電荷輸送材料とを含むことがより好ましい。化合物(1)と異なる電荷輸送材料として、後述の式(240)で表される化合物、及び、式(260)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。
【0084】
[有機溶剤]
本発明の組成物に含有される有機溶剤は、湿式成膜により本発明の化合物を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
【0085】
該有機溶剤は、溶質である本発明の化合物及び後述の発光材料が良好に溶解する有機溶剤であれば特に限定されない。
【0086】
好ましい有機溶剤としては、例えば、n-デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メシチレン、フェニルシクロヘキサン、テトラリン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル類;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
【0087】
これらの中でも、粘度と沸点の観点から、アルカン類、芳香族炭化水素類、芳香族エーテル類、芳香族エステル類が好ましく、芳香族炭化水素類、芳香族エーテル類及び芳香族エステル類がさらに好ましく、芳香族炭化水素類及び芳香族エステル類が特に好ましい。
【0088】
これらの有機溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0089】
用いる有機溶剤の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上で、通常380℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下である。有機溶剤の沸点がこの範囲を下回ると、湿式成膜時において、組成物からの溶剤蒸発により、成膜安定性が低下する可能性がある。有機溶剤の沸点がこの範囲を上回ると、湿式成膜時において、成膜後の溶剤残留により、成膜安定性が低下する可能性がある。
【0090】
特に、上記有機溶剤のうち、沸点が150℃以上の有機溶剤を2種以上と組み合わせることにより、均一な塗布膜を作製することができる。沸点150℃以上の有機溶剤が1つ以下であると、塗布時に均一な膜が形成されない場合があると考えられる。
【0091】
[発光材料]
本発明の組成物は発光層形成用組成物であることが好ましい。この場合、更に発光材料を含有することが好ましい。発光材料とは、本発明の組成物において、主として発光する成分を指し、有機電界発光デバイスにおけるドーパント成分に当たる。
【0092】
発光材料としては、公知材料を適用可能であり、蛍光発光材料或いは燐光発光材料を単独若しくは複数を混合して使用できる。内部量子効率の観点から、好ましくは、燐光発光材料である。
【0093】
<燐光発光材料>
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
【0094】
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、下記式(201)で表される化合物、又は後述の式(205)で表される化合物が好ましく、より好ましくは下記式(201)で表される化合物である。
【0095】
【化15】
【0096】
上記式(201)において、Mは、周期表第7~11族から選ばれる金属であり、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウムが挙げられる。
【0097】
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
【0098】
201、R202は各々独立に上記式(202)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよい。R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
式(202)において、Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0100】
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表す。これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0101】
式(201)、(202)において、i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表す。
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
jは、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
k1、k2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
mは1~3の整数である。
【0102】
環A1における芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
【0103】
環A1における芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましく、さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
【0104】
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環又はフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
【0105】
環A2における芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、
よりに好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
さらに好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
【0106】
環A1と環A2の好ましい組合せとしては、(環A1-環A2)で表記すると、(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)である。
【0107】
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは後述の置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基である。
【0108】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造である場合、芳香族炭化水素構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、
より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、
最も好ましくはベンゼン環である。
【0109】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位及び9’位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0110】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
【0111】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、
好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0112】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0113】
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、脂肪族炭化水素構造としては、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、好ましくは炭素数が1以上24以下の脂肪族炭化水素であり、より好ましくは炭素数が1以上12以下の脂肪族炭化水素であり、さらに好ましくは炭素数が1以上8以下の脂肪族炭化水素である。
【0114】
i1、i2はそれぞれ独立に、0~12の整数であり、好ましくは1~12の整数、より好ましくは1~8の整数、さらに好ましくは1~6の整数である。この範囲であることにより、溶解性向上、電荷輸送性向上が見込まれる。
【0115】
i3は好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1である。
【0116】
jは好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0117】
k1、k2はそれぞれ独立に、好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0118】
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは後述の置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基であり、最も好ましくは無置換(水素原子)である。
【0119】
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Sから選ばれる基が好ましい。
【0120】
<置換基群S>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基。
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えられていてもよい。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF
【0121】
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
【0122】
(置換基群Sの中の好ましい基)
これら置換基群Sのうち、
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、これらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は、-SFであり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、これらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は、-SFであり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0123】
これら置換基群Sは、さらに置換基群Sから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Sの中の好ましい基等と同様である。
【0124】
(式(201)の好ましい構造)
前記式(201)中の前記式(202)で表される構造のなかでも、
(i)ベンゼン環が連結した基を有する構造
(ii)環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造
(iii)環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造
が好ましい。
【0125】
(i)ベンゼン環が連結した基を有する構造においては、Ar201がベンゼン環構造であり、i1が1~6の整数であり、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合している。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0126】
(ii)環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造においては、Ar201が芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造であり、i1が1~6の整数であり、Ar202が脂肪族炭化水素構造であり、i2が1~12の整数であり、好ましくは3~8の整数であり、Ar203がベンゼン環構造であり、i3が0又は1である。
この構造の場合、好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0127】
(iii)環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造においては、Ar201、Ar202がベンゼン環構造であり、Ar203がビフェニル又はターフェニル構造であり、i1、i2が1~6の整数であり、i3が2であり、jが2である。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0128】
前記式(201)において、B201-L200-B202で表される構造のうち、下記式(203)又は(204)で表される構造が好ましい。
【0129】
【化16】
【0130】
上記式(203)中、R211、R212、R213は置換基を表す。
該置換基は特に限定されないが、好ましくは前記置換基群Sから選択される基である。
【0131】
【化17】
【0132】
上記式(204)中、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。環B3は好ましくはピリジン環である。
環B3が有してもよい置換基は特に限定されないが、好ましくは前記置換基群Sから選択される基である。
【0133】
前記式(201)で表される燐光発光材料としては特に限定はされないが、具体的には以下の構造が挙げられる。
以下において、Meはメチル基を意味し、Phはフェニル基を意味する。
【0134】
【化18】
【0135】
【化19】
【0136】
【化20】
【0137】
【化21】
【0138】
次に、下記式(205)で表される化合物について説明する。
【0139】
【化22】
【0140】
式(205)中、Mは金属を表す。Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は存在しない。
【0141】
式(205)中、Mは金属を表す。具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0142】
式(205)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0143】
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94又はR95は存在しない。
【0144】
92~R95は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、R92及びR93として挙げた前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0145】
(分子量)
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。燐光発光材料の分子量は、通常1000以上、好ましくは1100以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料同士が凝集せず本発明の化合物及び/又は他の電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
【0146】
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
【0147】
[電荷輸送材料]
本発明の組成物が発光層形成用組成物である場合、本発明の化合物に加え、さらなるホスト材料として本発明の化合物以外の電荷輸送材料を含有することが好ましい。
【0148】
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、電荷輸送性に優れる骨格を有する材料であり、電子輸送性材料、正孔輸送性材料及び電子と正孔の両方を輸送可能な両極性材料から選ばれることが好ましい。さらに、本発明において、電荷輸送材料とは電荷輸送性を調整する材料も含むものとする。
【0149】
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等が挙げられる。
【0150】
本発明の組成物において、本発明の化合物が電子輸送性材料として機能するため、さらに電荷輸送材料として正孔輸送性材料を含むことが好ましい。正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れる骨格の中でも、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造が正孔輸送性に優れた構造として好ましく、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造がさらに好ましい。特に好ましくは、後述する式(240)で表される化合物である。
【0151】
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、3環以上の縮合環構造を有する化合物であることが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物又は5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
【0152】
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。
【0153】
電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。電荷に対する耐久性の観点から、カルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
【0154】
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料の内、電荷輸送性を調整する材料としては、ベンゼン環が多数連結した構造を有する化合物である後述の式(260)で表される化合物が好ましい。この化合物をホスト材料として含むことで、発光層内で生成したエキシトンが効率よく再結合して発光効率が高くなると考えられ、また、発光層内の電荷の輸送性が適切に調整されて発光材料の劣化が抑制され、駆動寿命が長くなると考えられる。
【0155】
本発明の組成物が発光層形成用組成物である場合、電子輸送性に優れる本発明の化合物に加え、後述する式(240)で表される化合物、及び、後述する式(260)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。このような化合物をさらなるホスト材料として含むことが、発光層内での電荷バランス調整の観点及び、発光効率の観点から好ましい。
【0156】
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれるホスト材料として用いられる電荷輸送材料が高分子材料である場合、分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上、500,000以下、より好ましくは10,000以上100,000以下である。
【0157】
発光層のホスト材料として用いられる電荷輸送材料は、合成及び精製のしやすさ、電子輸送性能及び正孔輸送性能の設計のしやすさ、有機溶剤に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点から、低分子であることが好ましい。発光層に含まれるホスト材料として用いられる電荷輸送材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常800以上、好ましくは900以上である。発光層上に接して形成する層が湿式成膜法にて形成される場合は、電荷輸送材料の分子量は好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは1100以上であり、特に好ましくは1200以上である。
【0158】
<式(240)で表される化合物>
【0159】
【化23】
【0160】
(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0161】
(Ar611、Ar612
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~50、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは14以下である芳香族炭化水素構造の1価の基、又は、これらの構造から選択された複数の構造が鎖状に又は分岐して結合した構造の1価の基が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~8個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
【0162】
Ar611、Ar612は好ましくは、各々独立に
フェニル基、
複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのナフタレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのフェナントレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、又は、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのテトラフェニレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
であり、さらに好ましくは、複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である。いずれの場合も結合の順序は問わない。
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基であることが特に好ましく、各々独立に、複数のベンゼン環が複数鎖状又は分岐して結合した1価の基であることが最も好ましい。
【0163】
結合するベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環及びテトラフェニレン環の数は前記の通り、通常2~8であり、2~5が好ましい。中でも好ましくは、ベンゼン環が1~4個連結した1価の基、ベンゼン環が1~4個及びナフタレン環が連結した1価の基、ベンゼン環が1~4個及びフェナントレン環が連結した1価の基、又は、ベンゼン環が1~4個及びテトラフェニレン環が連結した1価の基である。
【0164】
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は下記置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は下記置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0165】
Ar611、Ar612の少なくとも一方は、化合物の溶解性及び耐久性の観点から、下記式(72-1)~(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有することが好ましい。
【0166】
【化24】
【0167】
上記式(72-1)~式(72-7)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合又は水素原子を表し、2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。以降の記載においても、特に断りの無い限り*の定義は同様である。
【0168】
より好ましくは、Ar611、Ar612の少なくとも一方は、式(72-1)~(72-4)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
さらに好ましくは、Ar611、Ar612がそれぞれ、式(72-1)~(72-3)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
特に好ましくは、Ar611、Ar612がそれぞれ、式(72-1)、式(72-2)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
【0169】
式(72-2)として好ましくは、下記式(72-2-2)である。
【0170】
【化25】
【0171】
式(72-2)としてより好ましくは、下記式(72-2-3)である。
【0172】
【化26】
【0173】
また、化合物の溶解性及び耐久性の観点からAr611、Ar612の少なくとも1つが有することが好ましい部分構造として、式(72-1)で表される部分構造及び式(72-2)で表される部分構造が挙げられる。
【0174】
(R611、R612
611、R612は、各々独立に、重水素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基である。
好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、さらに好ましくは炭素数6~30、より好ましくは6~18、特に好ましくは6~10である芳香族炭化水素環の1価の基が挙げられる。
1価の芳香族炭化水素基としては具体的には前記Ar611と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基も同様であり、特に好ましくはフェニル基である。
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は前述の通りであり、具体的には下記置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は下記置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0175】
(n611、n612
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。n611、n612は各々独立に、好ましくは0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1である。
【0176】
(置換基)
Ar611、Ar612、R611、R612が1価又は2価の芳香族炭化水素基である場合、有してよい置換基は下記置換基群Z2から選択される置換基が好ましい。
【0177】
<置換基群Z2>
置換基群Z2は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0178】
置換基群Z2として、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基;
例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の、炭素数が通常10以上であり、好ましくは12以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えば、フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアシル基;
例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下であり、好ましくは6以下であるハロアルキル基;
例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルキルチオ基;
例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるシリル基;
例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
例えば、チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上であり、好ましくは4以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
【0179】
上記の置換基群Z2の中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ジアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基としては芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基であり、置換基を有さないことがさらに好ましい。溶解性向上の観点からは、置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0180】
また、上記置換基群Z2の各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Z2)と同じのものが挙げられる。上記置換基群Z2が有してもよい各置換基は、好ましくは、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、又はフェニル基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、又はフェニル基であり、上記置換基群Z2の各置換基は、電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0181】
(G)
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
【0182】
Gの芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~50、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは14以下である芳香族炭化水素構造の2価の基、又は、これらの構造から選択された複数の構造が鎖状に又は分岐して結合した構造の2価の基が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~8個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
【0183】
Gは、好ましくは、
単結合、
フェニレン基、
複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのナフタレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのフェナントレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、又は、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのテトラフェニレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
であり、さらに好ましくは、複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基である。いずれの場合も結合の順序は問わない。
【0184】
結合するベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環及びテトラフェニレン環の数は前記の通り、通常2~8であり、2~5が好ましい。中でもさらに好ましくは、ベンゼン環が1~4個連結した2価の基、ベンゼン環が1~4個及びナフタレン環が連結した2価の基、ベンゼン環が1~4個及びフェナントレン環が連結した2価の基、又は、ベンゼン環が1~4個及びテトラフェニレン環が連結した2価の基である。
【0185】
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は前述の置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は前述の置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0186】
(分子量)
前記式(240)で表される化合物は低分子材料であり、その分子量は3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、さらに好ましくは2,000以下であり、特に好ましくは1,500以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0187】
(前記式(240)で表される化合物の具体例)
以下に、前記式(240)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0188】
【化27】
【0189】
本発明の組成物には、前記式(240)で表される化合物として1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0190】
<式(260)で表される化合物>
【0191】
【化28】
【0192】
(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【0193】
式(260)における、Ar21~Ar35が置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した構造である場合の該フェニル基が有してもよい置換基は、アルキル基であることが好ましい。
【0194】
(置換基としてのアルキル基)
置換基としてのアルキル基は、炭素数が通常1以上、12以下であり、好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下であり、より好ましくは4以下の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
【0195】
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は好ましくは水素原子である。また、Ar22~Ar24の少なくとも一つが、前記置換基を有してもよいフェニル基又は前記置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した1価の基であること、及び/又は、Ar22~Ar24の少なくとも一つ、及び、Ar27~Ar29の少なくとも一つが、前記置換基を有してもよいフェニル基又は前記置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した1価の基であることが好ましい。さらに好ましくは、Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34が、水素原子、フェニル基、及び、下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである。
特に好ましくは、前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、さらに、Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである。
これらの構造は、前記置換基を有してよく、例えば、前記置換基としてのアルキル基で置換されていてもよい。溶解性を向上させる観点ではアルキル基で置換されていることが好ましい。電荷輸送性、素子駆動時の耐久性の観点からは、置換基を有しないことが好ましい。
【0196】
【化29】
【0197】
前記式(260)で表される化合物がこのような構造を含むことで、発光層内の電荷の輸送性を適度に調整でき、発光効率が高くなると考えられる。また、このような構造を含むことで、溶解性及び、素子駆動時の耐久性に優れると考えられる。
【0198】
(分子量)
前記式(260)で表される化合物は低分子材料であり、その分子量は3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、さらに好ましくは2,000以下であり、特に好ましくは1,500以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0199】
(式(260)で表される化合物の具体例)
式(260)で表される化合物は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0200】
【化30】
【0201】
【化31】
【0202】
本発明の組成物には、前記式(260)で表される化合物として1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0203】
[その他の成分]
本発明の組成物は、前述した有機溶剤及び発光材料以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0204】
本発明の組成物は、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、2層以上の層を湿式成膜法により積層する際に、これらの層が相溶することを防ぐため、成膜後に硬化させて不溶化させる目的で、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
【0205】
[配合比]
本発明の組成物中の固形分濃度(本発明の化合物、発光材料、本発明の化合物以外のホスト材料及び必要に応じて添加可能な成分(レベリング剤など)などを含む全ての固形分の濃度)は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。
固形分濃度がこの範囲であると、所望の膜厚の薄膜を均一な厚みで形成しやすく、好ましい。
【0206】
本発明の組成物に含まれる全ホスト材料に対する本発明の化合物及び発光材料の好ましい配合比、即ち、本発明の組成物を用いて形成される発光層(以下、「本発明の発光層」と称す場合がある。)に含まれる全ホスト材料に対する発明の化合物及び発光材料の好ましい配合比は、以下の通りである。尚、全ホスト材料とは、本発明の化合物及び本発明の化合物以外の全てのホスト材料のことを指す。
【0207】
本発明の組成物及び本発明の発光層における、全ホスト材料の質量100に対する本発明の化合物の質量比は、通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上であり、通常99以下、好ましくは95以下、より好ましくは90以下であり、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは70以下である。
【0208】
本発明の組成物及び本発明の発光層における、全ホスト材料に対する本発明の化合物のモル比は通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは25モル%以上、特に好ましくは30モル%以上であり、通常90モル%以下、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、特に好ましくは60モル%以下である。
【0209】
本発明の組成物及び本発明の発光層における、全ホスト材料の質量100に対する発光材料の質量比は、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、特に好ましくは2以上であり、通常100以下、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは40以下である。この比が上記下限を下回ったり、上記上限を超えたりすると、著しく発光効率が低下する恐れがある。
【0210】
[組成物の調製方法]
本発明の組成物は、本発明の化合物、必要に応じて前述した発光材料及び本発明の化合物以外のホスト材料、更に必要に応じて添加可能なレベリング剤や消泡剤等の各種添加成分よりなる溶質を、前述した適当な有機溶剤に溶解させることにより調製される。
【0211】
この溶解工程に要する時間を短縮するため、及び本発明の組成物中の溶質濃度を均一に保つため、通常、液を撹拌しながら溶質を溶解させる。溶解工程は常温で行ってもよいが、溶解速度が遅い場合は加熱して溶解させることもできる。溶解工程終了後、必要に応じて、フィルタリング等の濾過工程を経由してもよい。
【0212】
[組成物の性状、物性等]
<水分濃度>
有機電界発光素子を、本発明の組成物を用いた湿式成膜法により層形成して製造する場合、組成物中に水分が存在すると、形成された膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれる。このため、本発明の組成物中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また一般に、有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中に水分が存在した場合、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
【0213】
具体的には、本発明の組成物中に含まれる水分量は、通常1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
【0214】
組成物中の水分濃度の測定方法としては、日本工業規格「化学製品の水分測定法」(JIS K0068:2001)に記載の方法が好ましい。例えば、カールフィッシャー試薬法(JIS K0211-1348)等により分析することができる。
【0215】
<均一性>
本発明の組成物は、湿式成膜プロセスでの安定性、例えば、インクジェット成膜法におけるノズルからの吐出安定性を高めるためには、常温で均一な液状であることが好ましい。常温で均一な液状とは、組成物が均一相からなる液体であり、かつ組成物中に粒径0.1μm以上の粒子成分を含有しないことをいう。
【0216】
<物性>
本発明の組成物の粘度が極端に低粘度の場合は、例えば成膜工程における過度の液膜流動による塗面不均一、インクジェット成膜におけるノズル吐出不良等が起こりやすくなる。本発明の組成物の粘度が極端に高粘度の場合は、インクジェット成膜におけるノズル目詰まり等が起こりやすくなる。
このため、本発明の組成物の25℃における粘度は、通常2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上であり、通常1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。
【0217】
本発明の組成物の表面張力が高い場合は、基板に対する濡れ性が低下する、液膜のレベリング性が悪く、乾燥時の成膜面乱れが起こりやすくなる等の問題が発生する場合がある。
このため、本発明の組成物の20℃における表面張力は、通常50mN/m未満、好ましくは40mN/m未満である。
【0218】
本発明の組成物の蒸気圧が高い場合は、有機溶剤の蒸発による溶質濃度の変化等の問題が起こりやすくなる場合がある。
このため、本発明の組成物の25℃における蒸気圧は、通常50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下である。
【0219】
〔薄膜形成方法〕
本発明の薄膜形成方法は、本発明の組成物を湿式成膜法により成膜する工程を含む。
湿式成膜法とは、組成物を塗布して液膜を形成し、乾燥して有機溶剤を除去し、膜を形成する方法である。本発明の組成物が発光材料を含む場合、この方法で発光層を形成することが出来る。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜させる方法を採用し、塗布膜を乾燥させて膜形成を行う方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が好ましい。
有機電界発光素子を備えた有機EL表示装置を製造する場合は、インクジェット法又はノズルプリンティング法が好ましく、インクジェット法が特に好ましい。
【0220】
乾燥方法は特に限定されないが、自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、又は、加熱しながらの減圧乾燥を適宜用いることができる。加熱乾燥は、自然乾燥又は減圧乾燥の後、更に残留有機溶剤を除去するために実施してもよい。
【0221】
減圧乾燥では、本発明の組成物に含まれる有機溶剤の蒸気圧以下に減圧することが好ましい。
【0222】
加熱乾燥する場合、加熱方法は特に限定されないが、ホットプレートによる加熱、オーブン内での加熱、赤外線加熱等を用いることができる。
加熱温度は通常80℃以上で、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
加熱時間は、通常1分以上であり、2分以上が好ましく、通常60分以下であり、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましい。
【0223】
後述するように、有機電界発光素子では、発光層上に電子輸送層を形成する。本発明においては、本発明の組成物を用いて湿式成膜法により発光層を形成し、該発光層上に接して電子輸送層等の層を湿式成膜法で形成することが好ましい。
【0224】
発光層に接して電子輸送層を湿式成膜法で形成する場合に用いる電子輸送層形成用組成物は、少なくとも電子輸送性材料及び有機溶剤を含む。この電子輸送層形成用組成物の有機溶剤としては、本発明の化合物が難溶で耐溶剤性に優れることからアルコール系溶剤(アルコール性水酸基を有する溶剤)が好ましい。また、電子輸送層形成用組成物の電子輸送性材料としては、このようなアルコール系溶剤に可溶である電子輸送性化合物が好ましい。
【0225】
アルコール系溶剤としては、炭素数3以上の脂肪族アルコールが好ましい。
電子輸送性材料を溶解しやすい点及び、適度に高い沸点を有し、平坦な膜を形成しやすい点から、炭素数6以上の脂肪族アルコールが更に好ましい。
【0226】
アルコール系溶剤として好ましい脂肪族アルコールとしては、1-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ヘキサノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-メチルー2-ペンタノール、4-メチルー3-ヘプタノール、3-メチルー2-ペンタノール、4-メチルー1-ペンタノール、4-ヘプタノール、1-メトキシー2-プロパノール、3-メチルー1-ペンタノール、4-オクタノール、3-(メチルアミノ)-1-プロパノール等が挙げられる。これらのアルコール系溶剤は2種以上混合して用いてもよい。
【0227】
湿式成膜法による電子輸送層の形成には、前述の湿式成膜法を用いることが好ましい。
【0228】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極を有し、陽極と陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、有機層が本発明の化合物を含む。前記有機層は、発光層であることが好ましい。
【0229】
本発明の有機電界発光素子の構造の一例として、図1に有機電界発光素子8の構造例の模式図(断面)を示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々表す。
【0230】
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものであり、通常、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。これらのうち、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。基板は、外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いことからガスバリア性の高い材質とするのが好ましい。このため、特に合成樹脂製の基板等のようにガスバリア性の低い材質を用いる場合は、基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を上げるのが好ましい。
【0231】
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層に正孔を注入する機能を担う。
【0232】
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック及びポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0233】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式法により行われることが多い。銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより形成することもできる。導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0234】
陽極2は、通常、単層構造であるが、適宜、積層構造としてもよい。陽極2が積層構造である場合、1層目の陽極上に異なる導電材料を積層してもよい。
【0235】
陽極2の厚みは、必要とされる透明性と材質等に応じて決めればよい。特に高い透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率が60%以上となる厚みが好ましく、可視光の透過率が80%以上となる厚みが更に好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。透明性が不要な場合は、陽極2の厚みは必要な強度等に応じて任意に厚みとすればよい。この場合、陽極2は基板と同一の厚みでもよい。
【0236】
陽極2の表面に他の層を成膜する場合は、成膜前に、紫外線/オゾン、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等の処理を施すことにより、陽極2上の不純物を除去すると共に、そのイオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させておくことが好ましい。
【0237】
[正孔注入層]
陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層は、通常、正孔注入輸送層又は正孔輸送層と呼ばれる。陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層が2層以上ある場合、より陽極2側に近い方の層を正孔注入層3と呼ぶことがある。正孔注入層3は、陽極2から発光層5側に正孔を輸送する機能を強化する点で、形成されることが好ましい。正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3は、陽極2上に形成される。
【0238】
正孔注入層3の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
【0239】
正孔注入層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0240】
以下に、一般的な正孔注入層の形成方法について説明する。
本発明の有機電界発光素子において、正孔注入層3は、以下の正孔注入層形成用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0241】
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層3となる正孔注入層用正孔輸送性化合物を含む。正孔注入層形成用組成物は、湿式成膜法の場合は、通常、更に有機溶剤も含む。正孔注入層形成用組成物は、正孔輸送性が高く、注入された正孔を効率よく輸送できるのが好ましい。このため、正孔移動度が大きく、トラップとなる不純物が製造時や使用時等に発生し難いことが好ましい。また、安定性に優れ、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高いことが好ましい。特に、正孔注入層が発光層と接する場合は、発光層からの発光を消光しないものや発光層とエキサイプレックスを形成して、発光効率を低下させないものが好ましい。
【0242】
正孔注入層用正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。このような正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
【0243】
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0244】
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いることが好ましい。
【0245】
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3となる材料を溶解できる有機溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製する。この正孔注入層形成用組成物を正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布して成膜し、乾燥させることにより正孔注入層3を形成する。
【0246】
正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点では、低い方が好ましく、一方、正孔注入層3に欠陥が生じ難い点では、高い方が好ましい。具体的には、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのが更に好ましく、0.5質量%以上であるのが特に好ましく、一方、70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのが更に好ましく、50質量%以下であるのが特に好ましい。
【0247】
有機溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる。
【0248】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル及び1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
【0249】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0250】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イソプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0251】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0252】
これらの他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
【0253】
正孔注入層3の湿式成膜法による形成は、通常、正孔注入層形成用組成物を調製後に、これを、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより行われる。
【0254】
正孔注入層3は、通常、成膜後に、加熱や減圧乾燥等により塗布膜を乾燥させる。
【0255】
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、通常、正孔注入層3の構成材料の1種類又は2種類以上を真空容器内に設置された坩堝に入れ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々を別々の坩堝に入れ)、真空容器内を真空ポンプで10-4Pa程度まで排気する。その後、坩堝を加熱して(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々の坩堝を加熱して)、坩堝内の材料の蒸発量を制御しながら蒸発させ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常それぞれ独立して蒸発量を制御しながら蒸発させ)、坩堝に向き合って置かれた基板1上の陽極2上に正孔注入層3を形成する。2種類以上の材料を用いる場合は、それらの混合物を坩堝に入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
【0256】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上、50℃以下である。
【0257】
正孔注入層3は、後述の正孔輸送層4と同様に架橋されていてもよい。
【0258】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層である。正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子では、必須の層では無いが、陽極2から発光層5に正孔を輸送する機能を強化する点では、この層を形成することが好ましい。正孔輸送層4を形成する場合、通常、正孔輸送層4は、陽極2と発光層5の間に形成される。上述の正孔注入層3がある場合は、正孔輸送層4は、正孔注入層3と発光層5の間に形成される。
【0259】
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0260】
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0261】
正孔輸送層4の材料としてはまた例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
【0262】
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体が好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体が好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ar又はArが異なっているものであってもよい。
【0263】
【化32】
【0264】
(式(II)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【0265】
ポリアリーレン誘導体としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
【0266】
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III-1)及び/又は下記式(III-2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
【0267】
【化33】
【0268】
(式(III-1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はカルボキシ基を表す。t及びsは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。t又はsが2以上の整数の場合、一分子中に含まれる複数のR又はRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。)
【0269】
【化34】
【0270】
(式(III-2)中、R及びRは、それぞれ独立に、上記式(III-1)におけるR、R、R又はRと同義である。r及びuは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。r又はuが2以上の整数の場合、一分子中に含まれる複数のR及びRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
【0271】
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子又はこれらが結合してなる基である。
【0272】
ポリアリーレン誘導体としては、上記式(III-1)及び/又は上記式(III-2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III-3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0273】
【化35】
【0274】
(式(III-3)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。v及びwは、それぞれ独立に0又は1を表す。)
【0275】
上記式(III-1)~(III-3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
【0276】
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
【0277】
正孔輸送層形成用組成物は、上述の正孔輸送性化合物の他、有機溶剤を含有する。用いる有機溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0278】
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合も、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0279】
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。従って、正孔輸送層形成用組成物は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
【0280】
正孔輸送層4は、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
【0281】
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
【0282】
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0283】
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
架橋性基を有する正孔輸送性化合物の正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、架橋性化合物としては、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III-1)~(III-3)で表される繰り返し単位に、架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【0284】
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を有機溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜法により成膜して架橋させる。
【0285】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0286】
[発光層]
発光層5は、一対の電極間に電界が与えられた時に、陽極2から注入される正孔と陰極7から注入される電子が再結合することにより励起され、発光する機能を担う層である。
発光層5は、陽極2と陰極7の間に形成される層である。発光層5は、陽極2の上に正孔注入層3がある場合は、正孔注入層3と陰極7の間に形成される。陽極2の上に正孔輸送層4がある場合は、発光層5は、正孔輸送層4と陰極7の間に形成される。
【0287】
発光層5は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、1つまたは複数のホスト材料を含有する。
本発明における有機電界発光素子の発光層5は、前記の通り、本発明の組成物により湿式成膜法により形成され、本発明の化合物及び発光材料を含むことが好ましい。
【0288】
発光層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜に欠陥が生じ難い点では厚い方が好ましく、一方、薄い方が低駆動電圧としやすい点で好ましい。
発光層5の膜厚は、3nm以上であるのが好ましく、5nm以上であるのがより好ましく、一方、200nm以下であるのが好ましく、100nm以下であるのがより好ましい。
【0289】
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子輸送層6との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層5の上に、発光層5の陰極7側の界面に接するように積層される層である。
【0290】
正孔阻止層は、陽極2から移動してくる正孔を陰極7に到達するのを阻止する役割と、陰極7から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T)が高いことが挙げられる。
【0291】
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)等が挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0292】
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
【0293】
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0294】
[電子輸送層]
電子輸送層6は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層5と陰極7との間に設けられる。
【0295】
電子輸送層6は、電界を与えられた電極間において陰極7から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物により形成される。電子輸送層6に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極7からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0296】
電子輸送層6に用いる電子輸送性化合物としては、具体的には、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-tert-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
【0297】
電子輸送層6は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられるが、本発明の化合物は耐溶剤性に優れることから、前述のように、本発明の化合物を含む発光層上に、湿式成膜法にて電子輸送層6を形成することが出来る。
【0298】
前述の通り、発光層に接して電子輸送層を湿式成膜法で形成する場合に用いる電子輸送層形成用組成物は、少なくとも電子輸送性材料及び有機溶剤を含む。この電子輸送層形成用組成物の有機溶剤としては、本発明の化合物が難溶で耐溶剤性に優れることからアルコール系溶剤(アルコール性水酸基を有する溶剤)が好ましい。また、電子輸送層形成用組成物の電子輸送性材料としては、このようなアルコール系溶剤に可溶である電子輸送性化合物が好ましい。
前述の通り、電子輸送層形成用組成物の溶剤として用いるアルコール系溶剤としては、電子輸送性材料を溶解しやすい点及び、適度に高い沸点を有し、平坦な膜を形成しやすい点から、炭素数6以上のアルキルアルコールが好ましい。
【0299】
電子輸送層6の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0300】
[電子注入層]
陰極7から注入された電子を効率よく、電子輸送層6又は発光層5へ注入するために、電子輸送層6と陰極7との間に電子注入層が設けられてもよい。
【0301】
電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等が用いられる。
電子注入層の膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0302】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体に代表される有機電子輸送性材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報等に記載)ことも、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
【0303】
電子注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0304】
電子注入層は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層5又はその上の正孔阻止層や電子輸送層6上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、前述の発光層の場合と同様である。
【0305】
正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層を電子輸送性材料とリチウム錯体共ドープの操作で一層にする場合にもある。
【0306】
[陰極]
陰極7は、発光層5側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。
【0307】
陰極7の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能である。効率良く電子注入を行なう上では、陰極7の材料としては、仕事関数の低い金属を用いることが好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金等が用いられる。具体例としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極等が挙げられる。
【0308】
有機電界発光素子の安定性の点では、陰極の上に、仕事関数が高く、大気に対して安定な金属層を積層して、低仕事関数の金属からなる陰極を保護することが好ましい。積層する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
【0309】
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
【0310】
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、本発明の効果を著しく損なわなければ、更に他の層を有していてもよい。すなわち、陽極と陰極との間に、上述の他の任意の層を有していてもよい。
【0311】
[その他の素子構成]
本発明の有機電界発光素子は、上述の説明とは逆の構造、即ち、例えば、基板上に陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能である。
【0312】
本発明の有機電界発光素子を有機電界発光装置に適用する場合は、単一の有機電界発光素子として用いても、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成にして用いても、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成にして用いてもよい。
【0313】
[有機電界発光素子の製造方法]
本発明による有機電界発光素子の製造方法は、基板上に、陽極及び陰極を有し、陽極と陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、有機層を、本発明の組成物を用いて湿式成膜法にて形成する工程を含む。前記有機層は、発光層であることが好ましい。
【0314】
〔表示装置〕
本発明の表示装置(有機電界発光素子表示装置:有機EL表示装置)は、本発明の有機電界発光素子を備える。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【0315】
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
【0316】
〔照明装置〕
本発明の照明装置(有機電界発光素子照明装置:有機EL照明装置)は、本発明の有機電界発光素子を備える。本発明の有機EL照明装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例0317】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値又は実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
【0318】
本明細書では、Acはアセチル基を意味し、Phはフェニル基を意味し、dppfは1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを意味し、DMSOはジメチルスルホキシドを意味し、Buはブチル基を意味し、THFはテトロヒドロフランを意味する。
【0319】
以下の実施例及び比較例では、以下の化合物1及び比較化合物1~3について評価を行った。
比較化合物2は、国際公開第2012/096263号に記載の方法に従って合成した。
中間体C3-1は、国際公開第2012/137958号に記載の方法に従って合成した。
【0320】
【化36】
【0321】
〔化合物の合成と評価〕
[実施例I-1:化合物1の合成]
<化合物1-bの合成>
【0322】
【化37】
【0323】
窒素雰囲気下、化合物1-a(19.6g、50.9mmol)に脱水THF(100mL)を加え、-75℃に冷却した。その後、n-BuLi(1.58mol/L、32.2mL)を滴下し、-75℃で3時間撹拌した。調製した溶液を、-100℃まで冷却した塩化シアヌル(18.8g、101.8mmol)の脱水THF(100mL)溶液に滴下した。室温に昇温後、飽和塩化ナトリウム水溶液と1Nの希塩酸を加え、酢酸エチルを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、化合物1-b(収量6.5g、収率28%)を得た。
【0324】
〈化合物1-eの合成〉
【0325】
【化38】
【0326】
化合物1-c(11.6g、40.5mmol)及び化合物1-d(14.5g、40.5mmol)に、窒素バブリングを行ったトルエン(100mL)、エタノール(50mL)、リン酸三カリウム水溶液(2.0mol/L、50mL)を順に加え、50℃に加熱した。その後、PdCl(PPh(0.29g、0.41mmol)を加え、65℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、トルエンを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、化合物1-e(収量15.7g、収率82%)を得た。
【0327】
〈化合物1-fの合成〉
【0328】
【化39】
【0329】
化合物1-e(11.6g、24.5mmol)、ビス(ピナコラトジボロン)(9.3g、36.7mmol)及び酢酸カリウム(7.2g、73.5mmol)に、脱水DMSO(100mL)を加え、50℃に加熱した。PdCl(dppf)CHCl(1.0g、1.2mmol)を加え、90℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、蒸留水を加え、吸引ろ過を行った。ろ取物をトルエンに溶解し、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、化合物1-f(収量8.0g、収率63%)を得た。
【0330】
<化合物1の合成>
【0331】
【化40】
【0332】
窒素雰囲気下、化合物1-b(4.86g、10.7mmol)及び化合物1-f(11.7g、22.5mmol)に、窒素バブリングを行ったTHF(100mL)、リン酸三カリウム水溶液(2.0mol/L、26.7mL)を順に加えた。その後、Pd(PPh(0.25g、0.21mmol)を加え、70℃で2時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、飽和塩化ナトリウム水溶液と1Nの希塩酸を加え、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、化合物1(収量9.2g、収率73%)を得た。
【0333】
[比較例I-1:比較化合物1の合成]
【0334】
【化41】
【0335】
2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(0.10g、0.48mmol)及び化合物1-f(0.50g、0.96mmol)に、窒素バブリングを行ったTHF(12mL)、リン酸三カリウム水溶液(2.0mol/L、4mL)を順に加えた。その後、Pd(PPh(11mg、0.0091mmol)を加え、70℃で6時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和塩化ナトリウム水溶液と1Nの希塩酸を加え、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、比較化合物1(収量0.3g、収率67%)を得た。
【0336】
[比較例I-3:比較化合物3の合成]
【0337】
【化42】
【0338】
中間体C3-1(1.26g、3.33mmol)及び中間体C2-2(2.42g、6.66mmol)に、窒素バブリングを行ったTHF(30mL)、リン酸三カリウム水溶液(2.0mol/L、10mL)を順に加えた。その後、Pd(PPh(77mg、0.066mmol)を加え、70℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和塩化ナトリウム水溶液と1Nの希塩酸を加え、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し、比較化合物3(収量1.2g、収率38%)を得た。
【0339】
[化合物1及び比較化合物1~3の溶剤溶解性評価]
各化合物のシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性を評価した。
シクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性は、1~2mL程度のシクロへキシルベンゼン溶液(各化合物の濃度:6.0質量%)を調製し、当該溶液に各化合物が溶解したか否かで判断した。
【0340】
結果を表1に示す。
表1中の列「6.0質量%CHB溶液」中の「〇」は当該溶液に化合物が溶解したことを意味し、「×」は当該溶液に化合物が溶解しなかったことを意味する。
表1中の列「6.0質量%CHB溶液の析出試験」中の「〇」は6.0質量%CHB溶液を調液して1日経過後に当該溶液から化合物が析出しなかったことを意味し、「×」は6.0質量%CHB溶液を調液して1日経過後に当該溶液から化合物が析出したことを意味する。
【0341】
【表1】
【0342】
表1より、本発明の化合物は溶剤溶解性、即ち、有機溶剤に速やかに溶解すること、溶解した後析出せず均一状態を保持すること、という2つの意味での溶剤溶解性に優れることが分かる。
【0343】
〔有機電界発光素子の作製と性能評価〕
[実施例II-1]
有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を50nmの厚さに堆積したもの(ジオマテック社製、スパッタ成膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。このようにITOをパターン形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0344】
正孔注入層形成用組成物として、下記式(P-1)の繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物3.0質量%と、電子受容性化合物(HI-1)0.6質量%とを、安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製した。
【0345】
【化43】
【0346】
この正孔注入層形成用組成物を、大気中で上記基板上にスピンコートし、大気中ホットプレートで240℃、30分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔注入層とした。
【0347】
次に、下記の式(HT-1)を有する電荷輸送性高分子化合物を1,3,5-トリメチルベンゼンに溶解させ、2.0質量%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔注入層を成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで230℃、30分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔輸送層とした。
【0348】
【化44】
【0349】
引続き、発光層の材料として、化合物1を2.5質量%、下記の化合物(H-1)を2.5質量%、下記の化合物(D-1)を1.5質量%の濃度でシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、発光層形成用組成物を調製した。
【0350】
【化45】
【0351】
発光層形成用組成物を、上記正孔輸送層を成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで120℃、20分間乾燥させ、膜厚70nmの均一な薄膜を形成し、発光層とした。
【0352】
発光層までを成膜した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内を2×10-4Pa以下になるまで排気した。
次に、下記の化合物(ET-1)および8-ヒドロキシキノリノラトリチウムを2:3の膜厚比で、発光層上に真空蒸着法にて共蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0353】
【化46】
【0354】
続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。
【0355】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子を得た。
【0356】
[比較例II-1]
発光層の材料として、化合物1の代わりに比較化合物1を用いた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0357】
[素子の評価]
実施例II-1及び比較例II-1で得られた有機電界発光素子を15mA/cmの電流密度で素子に通電し続けた際に、輝度が初期輝度の95%まで減少する時間(LT95)を測定した。この測定結果を表2に示す。表2中、実施例II-1の値は比較例II-1の値を1とした相対値を示す。
表2の結果から、本発明の化合物を用いた有機電界発光素子では、長寿命となることが判った。
【0358】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0359】
本発明の化合物は、溶剤溶解性が高く、有機電界発光素子の発光層に用いた場合、長寿命である有機電界発光素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0360】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
8 有機電界発光素子
図1