IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2024-121521有機電界発光素子の発光層形成用組成物、有機電界発光素子とその製造方法、及び表示装置
<>
  • 特開-有機電界発光素子の発光層形成用組成物、有機電界発光素子とその製造方法、及び表示装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121521
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】有機電界発光素子の発光層形成用組成物、有機電界発光素子とその製造方法、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/11 20230101AFI20240830BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240830BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240830BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20240830BHJP
【FI】
H10K50/11
H10K50/12
H10K59/10
H10K71/12
H10K85/60
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028667
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 司
(72)【発明者】
【氏名】五郎丸 英貴
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一毅
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD68
3K107DD69
3K107DD70
3K107GG06
3K107GG28
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れ、湿式成膜法によって有機電界発光素子の作製が可能であり、従来よりも発光効率が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子を作製するための発光層形成用組成物を提供すること。
【解決手段】有機電界発光素子の発光層形成用組成物であって、少なくとも、化合物Aと、化合物Bと、発光材料と、有機溶媒とを含んでなり、ただし、前記化合物Aと前記化合物Bとは同一ではない発光層形成用組成物、及び、当該発光層形成用組成物を用いて形成された発光層を有する有機電界発光素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界発光素子の発光層形成用組成物であって、少なくとも、式(1)で表される化合物Aと、式(2)で表される化合物Bと、発光材料と、有機溶媒とを含んでなり、
ただし、前記化合物Aと前記化合物Bとは同一ではない、発光層形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、
11、W12及びW13は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W11、W12及びW13のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa11、Ya11、及びZa11は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya11及びZa11の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa12は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Ya12及びZa12は、各々独立に、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f11は1又は2であり、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
f11+g11+h11+j11は6以上であり、
11は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【化2】

(式(2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の芳香族複素環基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の芳香族複素環基を表し、
g21、h21、及びj21は各々独立に0~6の整数を表し、
g21、h21、j21の少なくとも一つは1以上の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は水素原子又は置換基を表し、4個のR21は同一であっても異なっていてもよく、
但し、g21、h21、又はj21が0の場合、それぞれ対応するXa22、Ya22、Za22は水素原子ではない。)
【請求項2】
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-1)で表される、請求項1に記載の発光層形成用組成物。
【化3】

(式(2-1)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は1~5の整数であり、
j21は1~5の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【請求項3】
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-2)で表される、請求項1に記載の発光層形成用組成物。
【化4】

(式(2-2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22及びYa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Za22は、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は1~6の整数であり、
21は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項4】
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-3)で表される、請求項1に記載の発光層形成用組成物。
【化5】

(式(2-3)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya21及びZa21の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa22は、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya22及びZa22は、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は2~5の整数であり、
21は各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項5】
前記式(1)におけるYa11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Za11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光層形成用組成物。
【請求項6】
前記式(1)におけるXa11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光層形成用組成物。
【請求項7】
前記発光材料が下記式(3)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光層形成用組成物。
【化6】

[式(3)中、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は、各々独立に、式(b)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
なお、式(3)、(b)において、
i1、i2は、各々独立に、0以上12以下の整数を表し、
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
i4は、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
k1及びk2は、各々独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
zは1~3の整数を表す。
Mは周期表第7~11族から選ばれる金属原子を表す。]
【請求項8】
さらに、下記式(240)で表される化合物、及び、下記式(260)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項7に記載の発光層形成用組成物。
【化7】

(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【化8】

(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【請求項9】
前記式(240)におけるAr611及びAr612が、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である、請求項8に記載の発光層形成用組成物。
【請求項10】
前記式(240)におけるR611及びR612が、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である、請求項8に記載の発光層形成用組成物。
【請求項11】
前記式(240)におけるn611及びn612が、各々独立に、0又は1である、請求項8に記載の発光層形成用組成物。
【請求項12】
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、
Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである、請求項8に記載の発光層形成用組成物。
【化9】
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の発光層形成用組成物を用いて湿式成膜法にて発光層を形成する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の発光層形成用組成物を用いて形成された発光層を有する、有機電界発光素子。
【請求項15】
請求項14に記載の有機電界発光素子を有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「OLED」又は「素子」と称す場合がある。)に用いることができる化合物に関する。本発明はまた、この化合物を有する有機電界発光素子、当該化合物及び有機溶媒を含有する組成物、当該組成物を用いる薄膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子の開発が行われるようになっている。有機電界発光素子(OLED)は、通常、陽極と陰極の間に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層などを有する。この各層に適した材料が開発されつつあり、発光色も赤、緑、青と、それぞれ開発が進んでいる。また、従来の蒸着型と比較して材料利用効率が高く、製造コストを下げることができる塗布型OLEDの研究が進められている。
【0003】
塗布型OLEDにおいては、素子の長寿命化やより低い消費電力での駆動が求められている。素子の寿命や消費電力改善に影響を及ぼす原因は様々な因子が考えられる。例えば寿命に関しては、素子を構成する材料の耐熱耐久性や、結晶性が大きな影響を及ぼすものと考えられている。
【0004】
有機電界発光素子を湿式成膜法で製造するためには、使用される材料はすべて有機溶媒に溶解してインクとして使用できるものである必要がある。使用材料が溶解性に劣ると、長時間加熱するなどの操作を要するため、使用前に材料が劣化してしまう可能性がある。溶液状態で長時間均一状態を保持することができないと、溶液から材料の析出が起こり、インクジェット装置などによる成膜が不可能となる。
湿式成膜法に使用される材料には、有機溶媒に速やかに溶解すること、溶解した後析出せず均一状態を保持すること、という2つの意味での溶解性が求められる。
【0005】
特許文献1には、以下のようなトリアジン骨格を含む化合物を含む発光層を湿式成膜法で形成した有機電界発光素子が開示され、保存安定性が高く、有機溶媒への溶解性に優れた有機電界発光素子用の発光層形成用組成物を提供する試みがなされている。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/096263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前述の先行技術では、調整した組成物は溶液中における結晶析出を抑制することが十分ではなく、工業的使用の観点から保存安定性の改善が求められていた。またディスプレイ用途に対して、有機電界発光素子の性能の点でも十分とは言えず、発光層を湿式成膜法にて形成した有機電界発光素子のさらなる発光効率の向上、駆動寿命の改善が求められていた。
【0009】
本発明は、保存安定性に優れ、湿式成膜法によって有機電界発光素子の作製が可能であり、従来よりも発光効率が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子を作製するための発光層形成用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の構造の複素芳香環化合物Aと、化合物Aと同一でない特定の構造の複素芳香環化合物Bを含む組成物は、保存安定性が高く、工業的使用に適しており、また該組成物を用いて湿式成膜法により形成された発光層をもつ有機電界発光素子は、発光効率が高く、駆動寿命の長いものであることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
本発明の要旨は、次のとおりである。
【0012】
本発明の態様1は、
有機電界発光素子の発光層形成用組成物であって、少なくとも、式(1)で表される化合物Aと、式(2)で表される化合物Bと、発光材料と、有機溶媒とを含んでなり、
ただし、前記化合物Aと前記化合物Bとは同一ではない、発光層形成用組成物である。
【0013】
【化2】
【0014】
(式(1)中、
11、W12及びW13は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W11、W12及びW13のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa11、Ya11、及びZa11は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya11及びZa11の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa12は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Ya12及びZa12は、各々独立に、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f11は1又は2であり、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
f11+g11+h11+j11は6以上であり、
11は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0015】
【化3】
【0016】
(式(2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の芳香族複素環基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の芳香族複素環基を表し、
g21、h21、及びj21は各々独立に0~6の整数を表し、
g21、h21、j21の少なくとも一つは1以上の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は水素原子又は置換基を表し、4個のR21は同一であっても異なっていてもよく、
但し、g21、h21、又はj21が0の場合、それぞれ対応するXa22、Ya22、Za22は水素原子ではない。)
【0017】
本発明の態様2は、態様1の発光層形成用組成物において、
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-1)で表される、発光層形成用組成物である。
【0018】
【化4】
【0019】
(式(2-1)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は1~5の整数であり、
j21は1~5の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【0020】
本発明の態様3は、態様1の発光層形成用組成物において、
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-2)で表される、発光層形成用組成物である。
【0021】
【化5】
【0022】
(式(2-2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22及びYa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Za22は、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は1~6の整数であり、
21は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0023】
本発明の態様4は、態様1の発光層形成用組成物において、
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-3)で表される、発光層形成用組成物である。
【0024】
【化6】
【0025】
(式(2-3)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya21及びZa21の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa22は、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya22及びZa22は、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は2~5の整数であり、
21は各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0026】
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの発光層形成用組成物において、
前記式(1)におけるYa11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Za11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、発光層形成用組成物である。
【0027】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれか1つの発光層形成用組成物において、
前記式(1)におけるXa11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基である、発光層形成用組成物である。
【0028】
本発明の態様7は、態様1~6のいずれか1つの発光層形成用組成物において、
前記発光材料が下記式(3)で表される化合物である、発光層形成用組成物である。
【0029】
【化7】
【0030】
[式(3)中、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は、各々独立に、式(b)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0032】
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0033】
なお、式(3)、(b)において、
i1、i2は、各々独立に、0以上12以下の整数を表し、
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
i4は、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
k1及びk2は、各々独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
zは1~3の整数を表す。
Mは周期表第7~11族から選ばれる金属原子を表す。]
【0034】
本発明の態様8は、態様7の発光層形成用組成物において、
さらに、下記式(240)で表される化合物、及び、下記式(260)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、発光層形成用組成物である。
【0035】
【化8】
【0036】
(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0037】
【化9】
【0038】
(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【0039】
本発明の態様9は、態様8の発光層形成用組成物において、
前記式(240)におけるAr611及びAr612が、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である、発光層形成用組成物である。
【0040】
本発明の態様10は、態様8又は9の発光層形成用組成物において、
前記式(240)におけるR611及びR612が、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である、発光層形成用組成物である。
【0041】
本発明の態様11は、態様8~10のいずれか1つの発光層形成用組成物において、
前記式(240)におけるn611及びn612が、各々独立に、0又は1である、発光層形成用組成物である。
【0042】
本発明の態様12は、態様8~11のいずれか1つの発光層形成用組成物において、
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、
Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである、発光層形成用組成物である。
【0043】
【化10】
【0044】
本発明の態様13は、
請求項1~12のいずれか1つの発光層形成用組成物を用いて湿式成膜法にて発光層を形成する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法である。
【0045】
本発明の態様14は、
態様1~12のいずれか1つの発光層形成用組成物を用いて形成された発光層を有する、有機電界発光素子である。
【0046】
本発明の態様15は、
態様14の有機電界発光素子を有する、表示装置である。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、保存安定性に優れ、湿式成膜法によって有機電界発光素子の作製が可能であり、従来よりも発光効率が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子を作製するための発光層形成用組成物を提供することができる。
【0048】
本発明により、当該組成物を有する有機電界発光素子、当該組成物及び有機溶媒を含有する組成物、薄膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0051】
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1以上有していてもよいことを意味するものとする。
【0052】
なお、本明細書において、(ヘテロ)アラルキル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アリール基とは、それぞれヘテロ原子を含んでいてもよいアラルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリールオキシ基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、を表す。「ヘテロ原子を含んでいてもよい」とは、アラルキル基、アリールオキシ基又はアリール基の主骨格中のアリール骨格を形成する炭素原子のうち、1又は2以上の炭素原子がヘテロ原子に置換されていることを表す。ヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられ、中でも、耐久性の観点から窒素原子が好ましい。
また、本明細書において、(ヘテロ)アリール基とは、単環基、2~4環縮合環基、単環及び/又は2~4環縮合環基が複数個連結した基を含む意味で用いられる。
(ヘテロ)アリール基とは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、すなわち、アリール基又はヘテロアリール基を表し、アリール基とは芳香族炭化水素基であり、ヘテロアリール基とは芳香族複素環基である。
【0053】
[発光層形成用組成物]
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物は、有機電界発光素子の発光層形成用組成物であって、少なくとも、式(1)で表される化合物Aと、式(2)で表される化合物Bと、発光材料と、有機溶媒とを含んでなり、ただし、前記化合物Aと前記化合物Bとは同一ではない。本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物が効果を示す理由を以下に示す。
化合物Aは含窒素6員環にパラビフェニル構造が1つ結合した構造を有するため、分子間相互作用が強く、電子輸送能が高く、有機電界発光素子の発光効率が高く、駆動寿命が長い。化合物Bは含窒素6員環を有しているため、化合物Aとの相溶性が高く、化合物Aと混合することで化合物Aの結晶性を低下させ、アモルファス性を向上させることができる。また化合物Bは含窒素6員環を有することで電子輸送能を有し、化合物Aと混合した場合でも化合物Aの電子輸送能等に悪影響を及ぼさない。その結果、化合物Aと化合物Bの組成物はアモルファス性が強くなり、溶質の結晶析出が抑制される。さらに、アモルファス性の向上により、膜中での結晶化が阻害され、高効率、長寿命な有機電界発光素子が得られると考えている。
【0054】
化合物A、化合物B、発光材料及び有機溶媒、並びに、これらの好ましい態様は、後述するとおりである。
【0055】
〔化合物A〕
<式(1)で表される化合物>
【0056】
【化11】
【0057】
(式(1)中、
11、W12及びW13は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W11、W12及びW13のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa11、Ya11、及びZa11は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya11及びZa11の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa12は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Ya12及びZa12は、各々独立に、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f11は1又は2であり、
g11は1~5の整数であり、
h11は2~5の整数であり、
j11は2~5の整数であり、
f11+g11+h11+j11は6以上であり、
11は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0058】
上記式(1)で表される化合物は、好ましくは電荷輸送化合物、即ち、電荷輸送ホスト材料であることが好ましい。
【0059】
<W11、W12、W13
式(1)におけるW11、W12及びW13は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W11、W12及びW13のうち、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともW11は窒素原子であることが好ましく、少なくともW11及びW12は窒素原子であることが好ましく、W11、W12及びW13のすべてが窒素原子であることがより好ましい。
【0060】
即ち、電子輸送性を向上させる観点から、パラ位に結合する基がベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結して共役が広がる、W11が窒素原子であることが好ましく、W12に加えてW12またはW13の一方が窒素原子であるピリミジン構造が更に好ましく、W11、W12及びW13全てが窒素原子であるトリアジン構造が最も好ましい。
【0061】
<-(Xa11g11-Xa12
式(1)において、Xa11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Xa11g11-Xa12が下記式(Xa-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0062】
【化12】
【0063】
これらの構造において、水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0064】
<-(Ya11h11-Ya12
式(1)において、Ya11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Ya11h11-Ya12が下記式(Ya-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0065】
【化13】
【0066】
これらの構造において、Ya12のN-カルバゾリル基のベンゼン環上の水素原子を含めて、すべてのベンゼン環上の水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0067】
<-(Za11j11-Za12
式(1)において、Za11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Za11j11-Za12が下記式(Za-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0068】
【化14】
【0069】
これらの構造において、Za12のN-カルバゾリル基のベンゼン環上の水素原子を含めて、すべてのベンゼン環上の水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0070】
<化合物Aの好ましい構造>
式(1)において、h11は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
また、j11は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
h11、j11が上記下限以上であることで溶解性が良好となり、安定性も良好となる。
【0071】
式(1)において、Xa11の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Xa11のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Xa11が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、溶解性が高くなる。
また、式(1)において、Ya11の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Ya11のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Ya11が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、溶解性が高くなる。
また、式(1)において、Za11の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Za11のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Za11が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、溶解性が高くなる。
また、式(1)において、Ya11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であり、Za11の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。
【0072】
<化合物Aの分子量>
化合物Aの分子量は通常5,000以下であり、3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、特に好ましくは2,000以下であり、最も好ましくは1,800以下である。化合物Aの分子量の下限は350以上が好ましく、より好ましくは400以上であり、特に好ましくは500以上である。
【0073】
<化合物Aの具体例>
化合物Aの具体的構造は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0074】
【化15】
【0075】
【化16】
【0076】
【化17】
【0077】
【化18】
【0078】
【化19】
【0079】
【化20】
【0080】
【化21】
【0081】
【化22】
【0082】
<化合物Aが効果を奏する理由>
化合物Aは、W11のパラ位に結合する基が、ベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結した基であるため共役が広がっており、ここにLUMOが分布し、電子輸送性に優れていると考えられる。また、W11のパラ位に共役して連結するベンゼン環が3個以下であるため、共役が長すぎず、広いエネルギーギャップを有しており、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0083】
化合物Aの、W11、W12及びW13を含む含窒素6員環において、Wのパラ位に結合する基は1,3-フェニレン基であるため共役していない。このため、化合物Aは広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
化合物AのYa11及びZa11のそれぞれ少なくとも一つは1,3-フェニレン基であるからN-カルバゾリル基であるYa12又はZa12と共役していない。このため、化合物Aは広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0084】
さらに、-(Xa11g11-Xa12、-(Ya11h11-Ya12、-(Za11j11-Za12が前記好ましい構造であると、広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくい。
【0085】
また、化合物Aは、W11、W12及びW13を含む含窒素6員環とカルバゾリル基の間のフェニレン基が3つ以上であり、1,3-フェニレン基を適度に多く含み、かつ、ターフェニレン基より長い1,4-フェニレン連結構造を含まないため、溶解性に優れている。
【0086】
[化合物B]
<式(2)で表される化合物>
【0087】
【化23】
【0088】
(式(2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の芳香族複素環基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の芳香族複素環基を表し、
g21、h21、及びj21は各々独立に0~6の整数を表し、
g21、h21、j21の少なくとも一つは1以上の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は水素原子又は置換基を表し、4個のR21は同一であっても異なっていてもよく、
但し、g21、h21、又はj21が0の場合、それぞれ対応するXa22、Ya22、Za22は水素原子ではない。)
【0089】
上記式(2)で表される化合物は、好ましくは電荷輸送化合物、即ち、電荷輸送ホスト材料であることが好ましい。
【0090】
<W21、W22及びW23
式(2)におけるW21、W22及びW23は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともW21は窒素原子であることが好ましく、少なくともW21及びW22は窒素原子であることが好ましく、W21、W22及びW23のすべてが窒素原子であることがより好ましい。
【0091】
<Xa21、Ya21、Za21、Xa22、Ya22、Za22
式(2)における、Xa21、Ya21、Za21が置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基である場合、及び、Xa22、Ya22、Za22が置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基である場合の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素環としては、6員環の単環、又は2~5縮合環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、インデノフルオレン環等が挙げられる。中でも好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、又はフルオレン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はフルオレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環又はフルオレン環である。また、g11が2以上である場合の末端の部分構造である、-Xa21-Xa22、h11が2以上である場合の末端の部分構造である、-Ya21-Ya22、及びj11が2以上である場合の末端の部分構造である、-Za21-Za22は、スピロフルオレン構造であってもよい。
【0092】
式(2)で表される化合物は、g21が2以上の整数である場合の末端の部分構造である、-Xa21-Xa22、h21が2以上の整数である場合の末端の部分構造である、-Ya21-Ya22、及びj21が2以上の整数である場合の末端の部分構造である、-Za21-Za22の少なくとも一つがスピロフルオレン構造又はN-カルバゾリル基であることが好ましい。
【0093】
式(2)における、Xa21、Ya21、Za21が置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の芳香族複素環基である場合、及び、Xa22、Ya22、Za22が置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基である場合の、炭素数3~30の芳香族複素環基の芳香族複素環としては、5又は6員環の単環、又は2~5縮合環が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、インデノカルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環等が挙げられる。中でも好ましくはチオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドロカルバゾール環、フェナントロリン環、又はインデノカルバゾール環であり、より好ましくはピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、インデノカルバゾール環、ジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環であり、さらに好ましくはカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環である。
式(2)におけるXa21、Ya21、Za21、Xa22、Ya22、及びZa22において、特に好ましい芳香族炭化水素環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はフェナントレン環であり、特に好ましい芳香族複素環は、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環である。
【0094】
<g21、h21、j21>
g21、h21、及びj21は各々独立に0~6の整数を表し、g21、h21、j21の少なくとも一つは1以上の整数である。電荷輸送性及び耐久性の観点から、g21が2以上の整数又は、h21及びj21のうち、少なくとも一方が3以上の整数であることが好ましい。
また、式(2)で表される化合物は、中心のW21、W22及びW23を有する環も含めて、これらの環を合計で8~18個有することが、電荷輸送性、耐久性及び有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。
【0095】
<(Xa21g21、(Ya21h21、(Za21j21
(Xa21g21、(Ya21h21、及び(Za21j21から選択される少なくとも一つの基は、化合物の溶解性及び耐久性の観点から、各々独立に下記式(11)で表される部分構造、下記式(12)で表される部分構造、及び下記式(13)で表される部分構造から選択される部分構造を有することが好ましく、g21が1以上の整数である場合の(Xa21g21、h21が1以上の整数である場合の(Ya21h21、及びj21が1以上の整数である場合の(Za21j21が各々独立に、下記式(11)で表される部分構造、下記式(12)で表される部分構造、及び下記式(13)で表される部分構造から選択される部分構造を有することがさらに好ましい。
【0096】
【化24】
【0097】
上記式(11)~式(13)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合、又は、Xa22、Ya22、若しくはZa22が水素原子である場合の当該水素原子を表す。2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。以降の記載においても、特に断りの無い限り*の定義は同様である。
【0098】
より好ましくは、g21が1以上の整数である場合の(Xa21g21、h21が1以上の整数である場合の(Ya21h21、及びj21が1以上の整数である場合の(Za21j21は各々独立に、式(11)で表される部分構造又は式(12)で表される部分構造を有する。
さらに好ましくは、g21が1以上の整数である場合の(Xa21g21、h21が1以上の整数である場合の(Ya21h21、及びj21が1以上の整数である場合の(Za21j21は各々独立に、式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造を有する。
【0099】
式(12)で表される部分構造として好ましくは、下記式(12-2)で表される部分構造である。
【0100】
【化25】
【0101】
式(12)で表される部分構造としてよりさらに好ましくは、下記式(12-3)で表される部分構造である。
【0102】
【化26】
【0103】
式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造を有する部分構造としては、式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造から選択される構造を複数含む構造である、下記式(14)~下記式(17)から選択される部分構造が好ましい。すなわち、g21が1以上の整数である場合の(Xa21g11、h21が1以上の整数である場合の(Ya21h21、及びj21が1以上の整数である場合の(Za21j21は各々独立に、前記式(11)~前記式(13)及び下記式(14)~下記式(17)から選択される部分構造を有することが好ましい。
【0104】
【化27】
【0105】
式(11)で表される部分構造及び式(12)で表される部分構造から選択される構造を複数含む構造とは、例えば式(14)で表される部分構造は、下記式(14a)の様に、式(11)で表される部分構造を1つと、式(12)で表される部分構造を2つ有するとみなすことのできる部分構造である。
【0106】
【化28】
【0107】
さらに好ましくは、(Xa21g21、(Ya21h21、及び(Za21j21の少なくとも一つは、少なくとも式(14)で表される部分構造又は式(15)で表される部分構造を有する。より好ましくは、g21が1以上の整数である場合の(Xa21g21、h21が1以上の整数である場合の(Ya21h21、及びj21が1以上の整数である場合の(Za21j21が、式(14)で表される部分構造、又は式(15)で表される部分構造を有する。
【0108】
式(14)で表される部分構造として好ましくは、下記式(14-2)で表される部分構造である。
【0109】
【化29】
【0110】
式(14)で表される部分構造としてさらに好ましくは、下記式(14-3)で表される部分構造である。
【0111】
【化30】
【0112】
式(15)で表される部分構造として好ましくは、下記式(15-2)で表される部分構造である。
【0113】
【化31】
【0114】
式(15)で表される部分構造としてさらに好ましくは、下記式(15-3)で表される部分構造である。
【0115】
【化32】
【0116】
式(17)で表される部分構造として好ましくは、下記式(17-2)で表される部分構造である。
【0117】
【化33】
【0118】
(Xa21g21、(Ya21h21、及び(Za21j21の少なくとも一つは、式(13)で表される部分構造を含む部分構造として、下記式(19)で表される部分構造又は下記式(20)で表される部分構造を有することがより好ましい。
【0119】
【化34】
【0120】
上記式(14)~式(20)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合、又は、Xa22、Ya22、若しくはZa22が水素原子である場合の当該水素原子を表す。2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。
【0121】
式(14)~式(20)で表される部分構造の中で、式(14-3)で表される部分構造及び式(15-3)で表される部分構造が好ましく、式(14-3)がさらに好ましい。
【0122】
-(Xa21g21-(Xa22)、-(Ya21h21-(Ya22)、及び-(Za21j21-(Za22)は、各々独立に、式(11)で表される部分構造、式(12-3)で表される部分構造、式(14-3)で表される部分構造又は式(15-3)で表される部分構造を持つことが好ましい。
【0123】
また、-(Xa21g21-(Xa22)、-(Ya21h21-(Ya22)、及び-(Za21j21-(Za22)の少なくとも一つは、下記式(250-1)~下記式(250-10)で表される部分構造又は末端構造のいずれか一つを有することが好ましい。
【0124】
【化35】
【0125】
[上記構造中、*は結合位置を表す。Ar250は炭素数6~20の芳香族炭化水素基を表す。R32は置換基を表す。これらの構造はさらに置換基を有していてもよい。]
【0126】
これらの構造が有してよい置換基は、R32と同様である。
【0127】
Ar250は好ましくは炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基又はビフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
【0128】
32を2個有する構造において、2個のR32は同一であっても良く、異なるものであっても良い。
32は好ましくは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数7~40のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数6~20のアリールシリル基、炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~30のアリール基、又は炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3~30のヘテロアリール基であり、より好ましくは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数7~40のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~30のアリール基であり、さらに好ましくは、炭素数1~8のアルキル基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~14のアリールオキシ基、炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基である。
【0129】
<R21
式(2)におけるR21は各々独立に、水素原子又は置換基である。水素原子以外の置換基であるR21としては、後述の置換基群Qから選ばれる基が挙げられる。
置換基である場合のR21としては、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基である。耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。置換基である場合のR21が複数存在する場合は互いに異なっていてもよい。
【0130】
上述した炭素数6~30の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基、炭素数3~30の芳香族複素環基が有していてもよい置換基、置換基であるR21が有していてもよい置換基としては、後述の置換基群Qから選択することができる。
【0131】
<化合物Bの分子量>
化合物Bの分子量は通常5,000以下であり、3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、特に好ましくは2,000以下であり、最も好ましくは1,800以下である。化合物Bの分子量の下限は通常350以上が好ましく、より好ましくは400以上、特に好ましくは500以上である。
【0132】
<式(2)で表される化合物の具体例>
式(2)で表される化合物は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0133】
【化36】
【0134】
【化37】
【0135】
【化38】
【0136】
【化39】
【0137】
【化40】
【0138】
【化41】
【0139】
【化42】
【0140】
【化43】
【0141】
本発明の実施態様に係る発光層及び発光層形成用組成物には、前記式(2)で表される化合物として1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0142】
[式(2-1)で表される化合物、下記式(2-2)で表される化合物、及び下記式(2-3)で表される化合物]
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物において、式(2)で表される化合物(化合物B)は、式(2-1)、式(2-2)、又は式(2-3)で表されることが好ましい。
【0143】
<置換基>
後述の式(2-1)、式(2-2)、又は式(2-3)における、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、フェニル基、N-カルバゾリル基が有していてもよい置換基は、後述の置換基群Qから選択される。
後述の式(2-1)、式(2-2)、又は式(2-3)におけるR21については、以下のとおりである。
【0144】
<R21
式(2-1)、式(2-2)、又は式(2-3)におけるR21は各々独立に、水素原子又は置換基である。
水素原子以外の置換基であるR21としては、後述の置換基群Qから選ばれる基が挙げられる。置換基群Qの中でも好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基である。耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。式(2-1)、式(2-2)、又は式(2-3)中に置換基である場合のR21が複数存在する場合、複数のR11は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
上述した炭素数6~30の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基、炭素数3~30の芳香族複素環基が有していてもよい置換基、置換基であるR21が有していてもよい置換基としては、後述の置換基群Qから選択することができる。
【0145】
[式(2-1)で表される化合物]
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物において、式(2)で表される化合物は、下記式(2-1)で表されることが好ましい。
【0146】
【化44】
【0147】
(式(2-1)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22、Ya22及びZa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は1~5の整数であり、
j21は1~5の整数であり、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するXa21は同一であっても異なっていてもよく、
h21が2以上の整数の場合、複数存在するYa21は同一であっても異なっていてもよく、
g21が2以上の整数の場合、複数存在するZa21は同一であっても異なっていてもよく、
21は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【0148】
<W21、W22及びW23
式(2-1)におけるW21、W22及びW23は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともW21は窒素原子であることが好ましく、少なくともW21及びW22は窒素原子であることが好ましく、W21、W22及びW23のすべてが窒素原子であることがより好ましい。
即ち、電子輸送性を向上させる観点から、パラ位に結合する基がベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結して共役が広がる、W21が窒素原子であることが好ましく、W21に加えてW22またはW23の一方が窒素原子であるピリミジン構造が更に好ましく、W21、W22及びW23全てが窒素原子であるトリアジン構造が最も好ましい。
【0149】
<-(Xa21g21-Xa22
式(2-1)において、Xaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Xa21g21-Xa22が上述の(Xa-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0150】
<-(Ya21h21-Ya22
式(2-1)において、Ya21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Ya21h21-Ya22が下記式(Ya-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0151】
【化45】
【0152】
これらの構造において、水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
【0153】
<-(Za21j21-Za22
式(2-1)において、Za21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Za21j21-Za22が下記式(Za-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0154】
【化46】
【0155】
これらの構造において、水素原子は置換基群Qから選択される置換基で置換されていてもよい。好ましくは、水素原子が置換されていない構造である。
<式(2-1)で表される化合物の分子量>
式(2-1)で表される化合物の分子量は通常5,000以下であり、3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、特に好ましくは2,000以下であり、最も好ましくは1,800以下である。化合物(2-1)の分子量の下限は350以上が好ましく、より好ましくは400以上であり、特に好ましくは500以上である。
<式(2-1)で表される化合物の具体例>
式(2-1)で表される化合物の具体的構造は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0156】
【化47】
【0157】
【化48】
【0158】
【化49】
【0159】
【化50】
【0160】
【化51】
【0161】
【化52】
【0162】
【化53】
【0163】
【化54】
【0164】
【化55】
【0165】
【化56】
【0166】
【化57】
【0167】
【化58】
【0168】
【化59】
【0169】
<化合物(2-1)が効果を奏する理由>
式(2-1)で表される化合物は、W21、W23のパラ位に結合する基が、ベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結した基であるため共役が広がっており、ここにLUMOが分布し、電子輸送性に優れていると考えられる。また、W、Wのパラ位に共役して連結するベンゼン環が3個以下であるため、共役が長すぎず、広いエネルギーギャップを有しており、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0170】
さらに、-(Xa21g21-Xa22、-(Ya21h21-Ya22、-(Za21j21-Za22が前記好ましい構造であると、広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくい。
【0171】
[式(2-2)で表される化合物]
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物において、式(2)で表される化合物は、下記式(2-2)で表されることが好ましい。
【0172】
【化60】
【0173】
(式(2-2)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Xa22及びYa22は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、
Za22は、置換基を有していてもよいN-カルバゾリル基を表し、
f21は1又は2であり、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は1~6の整数であり、
21は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0174】
<W21、W22及びW23
式(2-2)におけるW21、W22及びW23は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともW21は窒素原子であることが好ましく、少なくともW21及びW22は窒素原子であることが好ましく、W21、W22及びW23のすべてが窒素原子であることがより好ましい。
即ち、電子輸送性を向上させる観点から、パラ位に結合する基がベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結して共役が広がる、W21が窒素原子であることが好ましく、W21に加えてW22またはW23の一方が窒素原子であるピリミジン構造が更に好ましく、W21、W22及びW23全てが窒素原子であるトリアジン構造が最も好ましい。
【0175】
<-(Xa21g21-Xa22
式(2-2)において、Xaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Xa21g21-Xa22が上述の(Xa-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0176】
<-(Ya21h21-Ya22
式(2-2)において、Ya21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Ya21h21-Ya22が上述の(Ya-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0177】
<-(Za21j21-Za22
式(2-2)において、Za21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Za21j21-Za22が下記式(Za-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0178】
<式(2-2)で表される化合物の分子量>
式(2-2)で表される化合物の分子量は通常5,000以下であり、3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、特に好ましくは2,000以下であり、最も好ましくは1,800以下である。式(2-2)で表される化合物の分子量の下限は350以上が好ましく、より好ましくは400以上であり、特に好ましくは500以上である。
【0179】
<式(2-2)で表される化合物の具体例>
式(2-2)で表される化合物の具体的構造は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0180】
【化61】
【0181】
【化62】
【0182】
【化63】
【0183】
【化64】
【0184】
【化65】
【0185】
【化66】
【0186】
【化67】
【0187】
<式(2-2)で表される化合物が効果を奏する理由>
式(2-2)で表される化合物は、Wのパラ位に結合する基がベンゼン環が2個又は3個パラ位で連結して共役が広がっており、ここにLUMOが分布し、電子輸送性に優れていると考えられる。また、Wのパラ位に共役して連結するベンゼン環が3個以下であるため、共役が長すぎず、広いエネルギーギャップを有しており、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0188】
式(2-2)で表される化合物の、W、W及びWを含む含窒素6員環において、Wのパラ位に結合する基は1,3-フェニレン基であるため共役していない。このため、式(2-2)で表される化合物は広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
化合物式(2-2)で表される化合物のZaの少なくとも一つは1,3-フェニレン基であるからカルバゾリル基であるZaと共役していない。このため、式(2-2)で表される化合物は広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0189】
さらに、-(Xa21g21-Xa22、-(Ya21h21-Ya22、-(Za21j21-Za22が前記好ましい構造であると、広いエネルギーギャップを有し、発光層のマトリクス材料として用いた場合、発光材料を消光させにくい。
【0190】
[式(2-3)で表される化合物]
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物において、式(2)で表される化合物は、下記式(2-3)で表されることが好ましい。
【0191】
【化68】
【0192】
(式(2-3)中、
21、W22及びW23は、各々独立に、CH又はNを表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子であり、
Xa21、Ya21、及びZa21は、各々独立に、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表し、
Ya21及びZa21の少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,3-フェニレン基であり、
Xa22は、置換基を有してもよいフェニル基を表し、
Ya22及びZa22は、各々独立に、置換基を有してもよいN-カルバゾリル基を表し、
g21は1~5の整数であり、
h21は2~5の整数であり、
j21は2~5の整数であり、
21は各々独立に、水素原子または置換基を表す。)
【0193】
<W21、W22及びW23
式(2-3)におけるW21、W22及びW23は、各々独立に、-CH又は窒素原子を表し、W21、W22及びW23のうち、少なくとも一つは窒素原子である。電子輸送性及び電子耐久性の観点から、少なくともW21は窒素原子であることが好ましく、少なくともW21及びW22は窒素原子であることが好ましく、W21、W22及びW23のすべてが窒素原子であることがより好ましい。
即ち、電子輸送性を向上させる観点から、W21が窒素原子であることが好ましく、W21に加えてW22またはW23の一方が窒素原子であるピリミジン構造が更に好ましく、W21、W22及びW23全てが窒素原子であるトリアジン構造が最も好ましい。
【0194】
<-(Xa21g21-Xa22
式(2-3)において、Xaの少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Xa21g21-Xa22が上述の(Xa-1)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0195】
<-(Ya21h21-Ya22
式(2-3)において、Ya21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Ya21h21-Ya22が上述の(Ya-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0196】
<-(Za21j21-Za22
式(2-3)において、Za21の少なくとも一つが1,3-フェニレン基であることが好ましい。中でも、-(Za21j21-Za22が下記式(Za-2)の構造群から選ばれることがさらに好ましい。
【0197】
<式(2-3)で表される化合物の好ましい構造>
式(2-3)において、h21は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
また、j21は2以上の整数であることが好ましく、2又は4であることが好ましい。
h21、j21が上記下限以上であることで溶解性が良好となり、安定性も良好となる。
【0198】
式(2-3)において、Xa21の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Xa21のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Xa21が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
また、式(2-3)において、Ya21の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Ya21のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Ya21が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
また、式(2-3)において、Za21の少なくとも一つは1,3-フェニレン基であることが好ましく、Za21のすべてが1,3-フェニレン基であることがより好ましい。Za21が1,3-フェニレン基であることにより、共役が切れ、エネルギーギャップが広くなる。さらに、溶解性も高くなる。
【0199】
<式(2-3)で表される化合物の分子量>
式(2-3)で表される化合物の分子量は3000以下が好ましく、より好ましくは2500以下であり、特に好ましくは2000以下であり、最も好ましくは1800以下である。式(2-3)で表される化合物の分子量の下限は930以上が好ましく、より好ましくは1000以上であり、特に好ましくは1200以上である。
【0200】
<式(2-3)で表される化合物の具体例>
式(2-3)で表される化合物の具体的構造は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0201】
【化69】
【0202】
【化70】
【0203】
【化71】
【0204】
【化72】
【0205】
【化73】
【0206】
【化74】
【0207】
<式(2-3)で表される化合物が効果を奏する理由>
式(2-3)で表される化合物は、W21、W22及びW23を含む含窒素6員環とそれに結合するフェニル基にLUMOが分布することで電子輸送性に優れる。またW21、W22及びW23を含む含窒素6員環に結合するフェニル基にメタ位でさらにフェニレン基が結合することで、電子耐久性が向上し、化合物の安定性に優れる。
【0208】
式(2-3)で表される化合物の、W21、W22及びW23を含む含窒素6員環において、W21、W22、W23のパラ位に結合する基は1,3-フェニレン基であるため共役していない。このため、式(2-3)で表される化合物は広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0209】
式(2-3)で表される化合物のYa21及びZa21のそれぞれ少なくとも一つは1,3-フェニレン基であるからN-カルバゾリル基であるYa22又はZa22と共役していない。このため、式(2-3)で表される化合物は広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくく好ましいと考えられる。
【0210】
さらに、-(Xa21g21-Xa22、-(Ya21h21-Ya22、-(Za21j21-Za22が前記好ましい構造であると、広いエネルギーギャップを有し、発光層のホスト材料として用いた場合、発光材料を消光させにくい。
【0211】
また、式(2-3)で表される化合物は、W21、W22及びW23を含む含窒素6員環とカルバゾリル基の間のフェニレン基が3つ以上であり、1,3-フェニレン基を適度に多く含むため、溶解性に優れている。
【0212】
加えて、式(2-3)で表される化合物は、Ya22及びZa22にN-カルバゾリル基を有することから、正孔に対しても高い安定性を有する。さらに、式(2-3)で表される化合物は、Ya22及びZa22にN-カルバゾリル基を有することから、分子間相互作用が強められ、化合物の安定性に優れる。
【0213】
<置換基群Q>
置換基群Qは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0214】
置換基群Qとして、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールオキシ基が挙げられ、好ましくは、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルコキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
ジアルキルアミノ基としては、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が挙げられる。
ジアリールアミノ基としては、炭素数が通常10以上であり、好ましくは12以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のジアリールアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基が挙げられる。
アリールアルキルアミノ基としては、炭素数が通常7であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールアルキルアミノ基が挙げられ、好ましくはフェニルメチルアミノ基が挙げられる。
アシル基としては、炭素数が通常2であり、通常24以下であり、好ましくは12のアシル基が挙げられ、好ましくはアセチル基、ベンゾイル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロアルキル基としては、炭素数が通常1以上であり、通常12以下であり、好ましくは6以下のハロアルキル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下のアルキルチオ基が挙げられ、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のアリールチオ基が挙げられ、好ましくはフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基が挙げられる。
シリル基としては、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のシリル基が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
シロキシ基としては、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のシロキシ基が挙げられ、好ましくはトリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基が挙げられる。
シアノ基は-CNである。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基、2-フェニルブチル-2-イル基、3-フェニルペンチル-3-イル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-ブチル基、5-フェニル-1-ペンチル基、6-フェニル-1-ヘキシル基、7-フェニル-1-ヘプチル基、8-フェニル-1-オクチル基等の、炭素数が通常7以上、好ましくは9以上であり、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下であるアラルキル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が通常6以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、炭素数が通常3以上であり、好ましくは4以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下の芳香族複素環基が挙げられ、好ましくはチエニル基、ピリジル基が挙げられる。
【0215】
上記の置換基群Qの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基としては芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基であり、置換基を有さないことがさらに好ましい。溶解性向上の観点からは、置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0216】
上記置換基群Qの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Q)と同じのものが挙げられる。上記置換基群Qの置換基がさらに有してもよい各置換基は、好ましくは、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、又はフェニル基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、又はフェニル基である。上記置換基群Qの各置換基は、電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0217】
[化合物(240)]
<式(240)で表される化合物>
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物は、さらに、下記式(240)で表される化合物を含んでもよい。
【0218】
化合物(240)は、下記式(240)で表される化合物である。
<式(240)で表される化合物>
【0219】
【化75】
【0220】
(式(240)中、
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
611、R612は、各々独立に、重水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0221】
(Ar611、Ar612
Ar611、Ar612は各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基を表す。
芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~50、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは14以下である芳香族炭化水素構造の1価の基、又は、これらの構造から選択された複数の構造が鎖状に又は分岐して結合した構造の1価の基が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~8個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
【0222】
Ar611、Ar612は好ましくは、各々独立に
フェニル基、
複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのナフタレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのフェナントレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、又は、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのテトラフェニレン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基、
であり、さらに好ましくは、複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基である。いずれの場合も結合の順序は問わない。
Ar611、Ar612は、各々独立に、置換基を有してもよい複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した1価の基であることが特に好ましく、各々独立に、複数のベンゼン環が複数鎖状又は分岐して結合した1価の基であることが最も好ましい。
【0223】
結合するベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環及びテトラフェニレン環の数は前記のとおり、通常2~8であり、2~5が好ましい。中でも好ましくは、ベンゼン環が1~4個連結した1価の基、ベンゼン環が1~4個及びナフタレン環が連結した1価の基、ベンゼン環が1~4個及びフェナントレン環が連結した1価の基、又は、ベンゼン環が1~4個及びテトラフェニレン環が連結した1価の基である。
【0224】
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は下記置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は下記置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0225】
Ar611、Ar612の少なくとも一方は、化合物の溶解性及び耐久性の観点から、下記式(72-1)~(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有することが好ましい。
【0226】
【化76】
【0227】
上記式(72-1)~式(72-7)それぞれにおいて、*は隣接する構造との結合又は水素原子を表し、2つ存在する*の少なくとも一方は隣接する構造との結合位置を表す。以降の記載においても、特に断りの無い限り*の定義は同様である。
【0228】
より好ましくは、Ar611、Ar612の少なくとも一方は、式(72-1)~(72-4)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
さらに好ましくは、Ar611、Ar612がそれぞれ、式(72-1)~(72-3)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
特に好ましくは、Ar611、Ar612がそれぞれ、式(72-1)、式(72-2)及び式(72-7)から選択される少なくとも1つの部分構造を有する。
【0229】
式(72-2)として好ましくは、下記式(72-2-2)である。
【0230】
【化77】
【0231】
式(72-2)としてより好ましくは、下記式(72-2-3)である。
【0232】
【化78】
【0233】
また、化合物の溶解性及び耐久性の観点からAr611、Ar612の少なくとも1つが有することが好ましい部分構造として、式(72-1)で表される部分構造及び式(72-2)で表される部分構造が挙げられる。
【0234】
(R611、R612
611、R612は、各々独立に、重水素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数6~50の1価の芳香族炭化水素基である。
好ましくは、R611及びR612は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~50、より好ましくは炭素数6~30、さらに好ましくは6~18、特に好ましくは6~10の1価の芳香族炭化水素基である。
1価の芳香族炭化水素基としては具体的には前記Ar611と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基も同様であり、特に好ましくはフェニル基である。
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は前述のとおりであり、具体的には下記置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は下記置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0235】
(n611、n612
611、n612は、各々独立に、0~4の整数である。n611、n612は、各々独立に、好ましくは0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1である。
【0236】
(置換基)
Ar611、Ar612、R611、R612が1価又は2価の芳香族炭化水素基である場合、有してよい置換基は下記置換基群Z2から選択される置換基が好ましい。
【0237】
<置換基群Z2>
置換基群Z2は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0238】
置換基群Z2として、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基;
例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の、炭素数が通常10以上であり、好ましくは12以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えば、フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアシル基;
例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下であり、好ましくは6以下であるハロアルキル基;
例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下であり、好ましくは12以下であるアルキルチオ基;
例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上であり、好ましくは5以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるシリル基;
例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上であり、好ましくは3以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
例えば、チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上であり、好ましくは4以上であり、通常36以下であり、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
【0239】
上記の置換基群Z2の中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ジアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基としては芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素基であり、置換基を有さないことがさらに好ましい。溶解性向上の観点からは、置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0240】
また、上記置換基群Z2の各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Z2)と同じのものが挙げられる。上記置換基群Z2が有してもよい各置換基は、好ましくは、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、又はフェニル基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、又はフェニル基であり、上記置換基群Z2の各置換基は、電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0241】
(G)
Gは、単結合、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~50の2価の芳香族炭化水素基を表す。
【0242】
Gの芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~50、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは14以下である芳香族炭化水素構造の2価の基、又は、これらの構造から選択された複数の構造が鎖状に又は分岐して結合した構造の2価の基が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~8個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
【0243】
Gは、好ましくは、
単結合、
フェニレン基、
複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのナフタレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのフェナントレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、又は、
1つ又は複数のベンゼン環及び少なくとも1つのテトラフェニレン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基、
であり、さらに好ましくは、複数のベンゼン環が鎖状又は分岐して結合した2価の基である。いずれの場合も結合の順序は問わない。
【0244】
結合するベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環及びテトラフェニレン環の数は前記のとおり、通常2~8であり、2~5が好ましい。中でもさらに好ましくは、ベンゼン環が1~4個連結した2価の基、ベンゼン環が1~4個及びナフタレン環が連結した2価の基、ベンゼン環が1~4個及びフェナントレン環が連結した2価の基、又は、ベンゼン環が1~4個及びテトラフェニレン環が連結した2価の基である。
【0245】
これら芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。芳香族炭化水素基が有してよい置換基は前述の置換基群Z2から選択することが出来る。好ましい置換基は前述の置換基群Z2の好ましい置換基である。
【0246】
(分子量)
前記式(240)で表される化合物は低分子材料であり、その分子量は3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、さらに好ましくは2,000以下であり、特に好ましくは1,500以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0247】
(前記式(240)で表される化合物の具体例)
以下に、前記式(240)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0248】
【化79】
【0249】
本発明の組成物には、前記式(240)で表される化合物として1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0250】
[化合物(260)]
<式(260)で表される化合物>
本発明の実施態様に係る発光層形成用組成物は、さらに、下記式(260)で表される化合物を含んでもよい。
【0251】
化合物(260)は、下記式(260)で表される化合物である。
【0252】
<式(260)で表される化合物>
【0253】
【化80】
【0254】
(式(260)中、Ar21~Ar35は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基の2~10個が非分岐又は分岐して連結した1価の基を表す。)
【0255】
式(260)における、Ar21~Ar35が置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した構造である場合の該フェニル基が有してもよい置換基は、アルキル基であることが好ましい。
【0256】
(置換基としてのアルキル基)
置換基としてのアルキル基は、炭素数が通常1以上、12以下であり、好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下であり、より好ましくは4以下の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
【0257】
前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は好ましくは水素原子である。また、Ar22~Ar24の少なくとも一つが、前記置換基を有してもよいフェニル基又は前記置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した1価の基であること、及び/又は、Ar22~Ar24の少なくとも一つ、及び、Ar27~Ar29の少なくとも一つが、前記置換基を有してもよいフェニル基又は前記置換基を有してもよいフェニル基が2~10個、非分岐又は分岐して連結した1価の基であることが好ましい。さらに好ましくは、Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34が、水素原子、フェニル基、及び、下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである。
特に好ましくは、前記式(260)において、Ar21、Ar25、Ar26、Ar30、Ar31及びAr35は水素原子であり、さらに、Ar22~Ar24、Ar27~Ar29、及びAr32~Ar34は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、及び、それぞれ置換基を有していてもよい下記式(261-1)~(261-9)から選択される構造のいずれかである。
これらの構造は、前記置換基を有してよく、例えば、前記置換基としてのアルキル基で置換されていてもよい。溶解性を向上させる観点ではアルキル基で置換されていることが好ましい。電荷輸送性、素子駆動時の耐久性の観点からは、置換基を有しないことが好ましい。
【0258】
【化81】
【0259】
前記式(260)で表される化合物がこのような構造を含むことで、発光層内の電荷の輸送性を適度に調整でき、発光効率が高くなると考えられる。また、このような構造を含むことで、溶解性及び、素子駆動時の耐久性に優れると考えられる。
【0260】
(分子量)
前記式(260)で表される化合物は低分子材料であり、その分子量は3,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以下であり、さらに好ましくは2,000以下であり、特に好ましくは1,500以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0261】
(式(260)で表される化合物の具体例)
式(260)で表される化合物は特に限定されないが、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0262】
【化82】
【0263】
【化83】
【0264】
本発明の組成物には、前記式(260)で表される化合物として1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0265】
[発光材料]
発光材料としては、通常、有機電界発光素子の発光材料として使用されている任意の公知の材料を適用することができ、特に制限はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。発光材料は、蛍光発光性化合物であってもよく、りん光発光性化合物であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくはりん光発光性化合物である。さらに好ましくは、赤発光材料と緑発光材料はりん光発光性化合物であり、青発光材料は蛍光発光性化合物である。
【0266】
(りん光発光性化合物)
りん光発光性化合物とは、励起三重項状態から発光を示す化合物をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このようなりん光発光性化合物としては、例えば、国際公開第2014/024889号、国際公開第2015/087961号、国際公開第2016/194784号、特開2014-074000号公報に記載のりん光発光性化合物が挙げられる。好ましくは、下記式(3)で表される化合物、又は下記式(205)で表される化合物が好ましく、より好ましくは下記式(3)で表される化合物である。すなわち、本発明の組成物において、発光材料が下記式(3)で表される化合物、又は下記式(205)で表される化合物であることが好ましく、下記式(3)で表される化合物であることがより好ましい。
また、本発明の組成物は、下記式(3)で表される化合物に加えて、さらに、前記式(240)で表される化合物、及び、前記式(260)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。
【0267】
【化84】
【0268】
[式(3)中、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は、各々独立に、式(b)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0269】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0270】
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0271】
なお、式(3)、(b)において、
i1、i2は、各々独立に、0以上12以下の整数を表し、
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
i4は、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
k1及びk2は、各々独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
zは1~3の整数を表す。
Mは周期表第7~11族から選ばれる金属原子を表す。]
【0272】
式(3)中、Mの具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属原子が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、イリジウム等の3価の金属が挙げられる。
【0273】
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Sから選ばれる基が好ましい。
置換基群S:
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
【0274】
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基。
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
【0275】
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素環であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
【0276】
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5。
【0277】
上記置換基群Sのうち、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0278】
これら置換基群Sにはさらに置換基群Sから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Sの中の好ましい基と同様である。
【0279】
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましい。さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
【0280】
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環又はフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
【0281】
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環である。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
【0282】
環A1と環A2の好ましい組み合せとしては、(環A1-環A2)と表記すると、(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ピロール環)、(ベンゼン環-ジアゾール環)、及び(ベンゼン環-チオフェン環)である。
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基である。
【0283】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
【0284】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造である場合、該芳香族炭化水素構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、最も好ましくはベンゼン環である。
【0285】
Ar201、Ar202のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
【0286】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位及び9’位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0287】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0288】
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、好ましくは炭素数が1以上24以下であり、さらに好ましくは炭素数が1以上12以下であり、より好ましくは炭素数が1以上8以下である。
【0289】
i1、i2はそれぞれ独立に、0~12の整数を表し、好ましくは1~12の整数、さらに好ましくは1~8の整数、より好ましくは1~6の整数である。この範囲であることにより、溶解性向上や電荷輸送性向上が見込まれる。
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
i4は好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0又は1である。
k1、k2はそれぞれ独立に、好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0290】
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基であり、好ましい基も前記置換基群Sのとおりであるが、より好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基であり、最も好ましくは無置換(水素原子)またはターシャリーブチル基であり、ターシャリーブチル基はAr203が存在する場合はAr203に、Ar203が存在しない場合はAr202に、Ar202とAr203が存在しない場合はAr201に置換していることが好ましい。
【0291】
前記式(3)で表される化合物は、下記(I)~(IV)のうちのいずれか1以上を満たす化合物であることが好ましい。
【0292】
(I)フェニレン連結式
式(b)で表される構造はベンゼン環が連結した基を有する構造、すなわち、ベンゼン環構造、i1が1~6の整数で、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましい。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0293】
(II)(フェニレン)-アラルキル(アルキル)
環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、すなわち、Ar201が芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造、i1が1~6の整数、Ar202が脂肪族炭化水素構造、i2が1~12の整数、好ましくは3~8の整数、Ar203がベンゼン環構造、i3が0又は1である構造、好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0294】
(III)デンドロン
環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造、例えば、Ar201、Ar202がベンゼン環構造、Ar203がビフェニル又はターフェニル構造、i1、i2が1~6の整数、i3が2、jが2である。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0295】
(IV)B201-L200-B202
201-L200-B202で表される構造は下記式(203)又は下記式(204)で表される構造であることが好ましい。
【0296】
【化85】
【0297】
式(203)中、R211、R212、R213はそれぞれ独立に置換基を表す。
式(204)中、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。環B3は好ましくはピリジン環である。
【0298】
前記式(201)で表されるりん光発光性化合物としては特に限定はされないが、好ましいものとして以下のものが挙げられる。
【0299】
【化86】
【0300】
【化87】
【0301】
【化88】
【0302】
また、下記式(205)で表されるりん光発光性化合物も好ましい。
【0303】
【化89】
【0304】
[式(205)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。]
【0305】
式(205)中、Mの具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0306】
また、式(205)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0307】
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94又はR95は存在しない。また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0308】
りん光発光性化合物の分子量は、好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、特に好ましくは3,000以下である。また、りん光発光性化合物の分子量は、好ましくは1,200以上、より好ましくは1,400以上、更に好ましくは1,600以上である。
この分子量範囲であることによって、りん光発光性化合物同士が凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
【0309】
りん光発光性化合物の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、りん光発光性化合物及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、りん光発光性化合物の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
【0310】
[有機溶媒]
本発明の組成物に含有される有機溶媒は、湿式成膜により本発明の実施態様に係る化合物を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
該有機溶媒は、溶質である本発明の実施態様に係る化合物及び後述の発光材料が良好に溶解する有機溶媒であれば特に限定されない。
【0311】
好ましい有機溶媒としては、例えば、n-デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メシチレン、フェニルシクロヘキサン(シクロヘキシルベンゼン)、テトラリン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル類;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
【0312】
これらの中でも、粘度と沸点の観点から、アルカン類、芳香族炭化水素類、芳香族エーテル類、芳香族エステル類が好ましく、芳香族炭化水素類、芳香族エーテル類及び芳香族エステル類がさらに好ましく、芳香族炭化水素類及び芳香族エステル類が特に好ましい。
これらの有機溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0313】
用いる有機溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上で、通常380℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下である。有機溶媒の沸点がこの範囲を下回ると、湿式成膜時において、組成物からの溶媒蒸発により、成膜安定性が低下する可能性がある。有機溶媒の沸点がこの範囲を上回ると、湿式成膜時において、成膜後の溶媒残留により、成膜安定性が低下する可能性がある。
【0314】
特に、上記有機溶媒のうち、沸点が150℃以上の有機溶媒を2種以上と組み合わせることにより、均一な塗布膜を作製することができる。沸点150℃以上の有機溶媒が1つ以下であると、塗布時に均一な膜が形成されない場合があると考えられる。
【0315】
[有機電界発光素子]
本実施形態に係る有機電界発光素子は、上記の本実施形態に係る発光層形成用組成物を用いて形成された発光層を有するものである。前記発光層は、湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0316】
有機電界発光素子は、好ましくは、基板上に少なくとも陽極、陰極及び陽極と陰極の間に少なくとも1層の有機層を有するものであって、前記有機層のうち少なくとも1層が本実施形態に係る発光層形成用組成物を用いて形成した層である。かかる層は湿式成膜法により形成されることがより好ましい。また、前記有機層は発光層を含むが、この発光層が、本実施形態に係る発光層形成用組成物を用いて形成された層であることが、より好ましい。
【0317】
本明細書において湿式成膜法とは、成膜方法、即ち、塗布方法として、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等、湿式で成膜される方法を採用し、これらの方法で成膜された膜を乾燥して膜形成を行う方法をいう。
【0318】
図1は本発明の実施態様に係る有機電界発光素子8として好適な構造例を示す断面の模式図である。
図1において、符号1は基板、符号2は陽極、符号3は正孔注入層、符号4は正孔輸送層、符号5は発光層、符号6は電子輸送層、符号7は陰極を各々表す。
【0319】
これらの構造に適用する材料は、公知の材料を適用することができ、特に制限はないが、各層に関しての代表的な材料や製法を一例として以下に記載する。以下において、公報や論文等を引用している場合、該当内容を当業者の常識の範囲で適宜、適用、応用することができるものとする。
【0320】
<基板1>
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものである。基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板;ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意するのが好ましい。基板のガスバリア性は、基板を通過した外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いので、大きいことが好ましい。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0321】
<陽極2>
陽極2は、発光層5側の層への正孔注入の役割を果たす電極である。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0322】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により行われることが多い。
銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、これらの微粒子などを適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより、陽極2を形成することもできる。
導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成することもできる。
基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0323】
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
【0324】
陽極2の厚みは、必要とする透明性などに応じて適宜選択すればよい。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は、陽極2の厚みは任意である。陽極2の機能を兼ね備えた基板1を用いてもよい。上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0325】
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
【0326】
<正孔注入層3>
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3を設ける場合は、正孔注入層3は、通常、陽極2上に形成される。
正孔注入層3の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。
正孔注入層3は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層を湿式成膜法にて形成する場合、正孔注入層形成用組成物を用いてこれを形成する。湿式成膜法により正孔注入層を形成する場合、塗布乾燥後、加熱することが好ましい。加熱温度は120℃以上が好ましく、150℃以上がさらに好ましく、180℃以上がより好ましく、また、300℃以下が好ましく、260℃以下がさらに好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0327】
(正孔輸送材料)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送材料及び有機溶媒を含有する。正孔注入層形成用組成物に含有される有機溶媒としては、本発明の組成物に含有される有機溶媒として挙げられたものが、同様に挙げられる。
正孔輸送材料は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層3に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
【0328】
正孔輸送材料としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送材料の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0329】
本発明において誘導体とは、例えば芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送材料は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送材料を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送材料1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
【0330】
正孔輸送材料としては、上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0331】
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(51)又は下記式(61)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0332】
【化90】
【0333】
(式(51)中、Arは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Arは、置換基を有していてもよい、二価の芳香族炭化水素基又は二価の芳香族複素環基、若しくは、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、直接又は連結基を介して、複数個連結した二価の基を表す。)
【0334】
前記式(51)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、連結基を介して複数個連結したものである場合の連結基は、二価の連結基であり、例えば-O-基、-C(=O)-基及び(置換基を有していてもよい)-CH-基から選ばれる基を任意の順番で1~30個、好ましくは1~5個、更に好ましくは1~3個連結してなる基が挙げられる。
【0335】
連結基の中では、発光層への正孔注入に優れる点で、式(51)中のArが、下記式(52)で表される連結基を介して複数個連結された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0336】
【化91】
【0337】
(式(52)中、dは1~10の整数を表し、R及びRは、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。
、Rが複数存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。)
【0338】
【化92】
【0339】
上記式(61)中、j、k、l、m、n、pは、各々独立に、0以上の整数を表す。但し、l+m≧1である。Ar11、Ar12、Ar14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数30以下の2価の芳香環基を表す。Ar13は、置換基を有していてもよい炭素数30以下の2価の芳香環基または下記式(62)で表される2価の基を表し、Q11、Q12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していてもよい炭素数6以下の炭化水素鎖を表し、S~Sは、各々独立に、下記式(63)で表される基で表される。
なお、ここでいう芳香環基とは、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基のことを言う。
【0340】
Ar11、Ar12、Ar14の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。単環又は2~6縮合環の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の2価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の2価の基またはビフェニル基が好ましい。
【0341】
Ar13の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
【0342】
【化93】
【0343】
上記式(62)中、R11は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる3価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R12は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar31は、1価の芳香環基、又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。qは1~4の整数を表す。qが2以上の場合、複数のR12は同一であっても異なっていてもよく、複数のAr31は同一であっても異なっていてもよい。アスタリスク(*)は式(61)の窒素原子との結合手を示す。
【0344】
11の芳香環基としては、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つであるか、又はそれらが2~6連結した基が好ましく、具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが2~6連結した基由来の3価の基が挙げられる。
【0345】
11のアルキル基としては、炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基が好ましく、具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の基等が挙げられる。
【0346】
11の炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる基としては、好ましくは炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基と、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つ又は2~6連結した基とが連結した基が挙げられる。
【0347】
12の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の2価の基が挙げられる。
【0348】
12のアルキル基の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の2価の基等が挙げられる。
【0349】
Ar31の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の1価の基が挙げられる。
【0350】
式(62)の好ましい構造の例としては以下の構造が挙げられ、R11の部分構造である下記構造における主鎖のベンゼン環またはフルオレン環はさらに置換基を有していてもよい。
【0351】
【化94】
【0352】
Ar31の架橋基の例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環またはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。化合物の安定性からベンゾシクロブテン環またはナフトシクロブテン環由来の基が好ましい。
【0353】
【化95】
【0354】
上記式(63)中、x、yは、0以上の整数を表す。Ar21、Ar23は、それぞれ独立に、2価の芳香環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar22は置換基を有していてもよい1価の芳香環基を表し、R13は、アルキル基、芳香環基、またはアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
Ar32は1価の芳香環基又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。アスタリスク(*)は式(61)の窒素原子との結合手を示す。
Ar21、Ar23の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
【0355】
Ar22、Ar32の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の1価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の1価の基またはビフェニル基が好ましい。
【0356】
13のアルキル基または芳香環基の例としては、R12と同様である。
【0357】
Ar32の架橋基は特に限定しないが、好ましい例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環もしくはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。
【0358】
上記Ar11~Ar14、R11~R13、Ar21~Ar23、Ar31~Ar32、Q11、Q12はいずれも、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、400以下が好ましく、中でも250以下がより好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0359】
置換基群W:
メチル基、エチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が2以上、好ましくは20以下、さらに好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が10以上、好ましくは12以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が6以上、さらに好ましくは7以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が2以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が6以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは18以下の芳香族炭化水素基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が3以上、好ましくは4以上、好ましくは28以下、さらに好ましくは17以下の芳香族複素環基。
【0360】
上記置換基群Wのうち、溶解性を向上させる観点からアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、電荷輸送性及び安定性の観点から芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0361】
特に、式(61)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の中でも、下記式(64)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が、正孔注入・輸送性が非常に高くなるので好ましい。
【0362】
【化96】
【0363】
上記式(64)中、Y’は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、R21~R25は各々独立に、任意の置換基を表す。R21~R25の置換基の具体例は、前述の[置換基群W]に記載されている置換基と同様である。
s、tは各々独立に、0以上、5以下の整数を表す。
u、v、wは各々独立に、0以上、4以下の整数を表す。
【0364】
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(65)及び/又は式(66)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【0365】
【化97】
【0366】
上記式(65)、式(66)中、Ar45、Ar47及びAr48は各々独立して、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。Ar44及びAr46は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
41~R43は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。
【0367】
Ar45、Ar47及びAr48の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar22と同様であり、Ar44及びAr46の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar11、Ar12及びAr14と同様である。R41~R43として好ましくは、水素原子又は前述の[置換基群W]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である。
【0368】
以下に、本発明において適用可能な、式(65)、式(66)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0369】
【化98】
【0370】
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は、正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送材料から1電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子受容性化合物としては、電子親和力が4.0eV以上である化合物が好ましく、5.0eV以上の化合物がさらに好ましい。
【0371】
このような電子受容性化合物としては、例えばトリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、電子受容性化合物としては、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号、国際公開第2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0372】
電子受容性化合物は、正孔輸送材料を酸化することにより正孔注入層3の導電率を向上させることができる。
【0373】
(その他の構成材料)
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送材料や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。
【0374】
<正孔輸送層4>
正孔輸送層4は、陽極2から発光層5へ輸送する層である。正孔輸送層4は、本発明の実施態様に係る有機電界発光素子に必須の層ではないが、正孔輸送層4を設ける場合は、通常、正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成する。
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。正孔輸送層4は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0375】
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、正孔輸送層4を形成する材料は、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0376】
正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層4の構成材料として用いられている材料であればよい。正孔輸送層4の材料としては、例えばアリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0377】
正孔輸送層4の材料としては、例えばポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
【0378】
中でも、正孔輸送層4の材料としては、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
ポリアリールアミン誘導体としては、前記芳香族三級アミン高分子化合物を用いることが好ましい。
【0379】
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして湿式成膜後、乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送材料の他、有機溶媒を含有する。用いる有機溶媒は、上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0380】
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0381】
正孔輸送層4の膜厚は、発光層中の低分子材料の浸み込みや正孔輸送材料の膨潤など要素を考慮し、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。
【0382】
<発光層5>
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極7から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層5は、通常、正孔輸送層4がある場合には正孔輸送層4の上に、正孔輸送層4が無く、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔輸送層4も正孔注入層3も無い場合は、陽極2の上に形成する。
【0383】
発光層5は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、1つまたは複数のホスト材料を含有する。
本発明の実施態様に係る有機電界発光素子の発光層5は、上述したとおり、本実施形態に係る発光層形成用組成物を用いて形成されることが好ましい。
【0384】
発光層5を形成する湿式成膜法としては、インクジェット法が好ましい。発光層5をインクジェット法により形成することにより、本発明の実施態様に係る層形成用組成物を用いて形成される有機層と連続してインクジェット法による膜の形成が可能となるため、好ましい。
【0385】
発光層5の膜厚は任意である。発光層5の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常100nm以下、好ましくは90nm以下である。
【0386】
<正孔阻止層>
発光層5と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、電子輸送層のうち、更に陽極2から移動してくる正孔を陰極7に到達するのを阻止する役割をも担う層である。正孔阻止層は、発光層5の上に、発光層5の陰極7側の界面に接するように積層される層である。
【0387】
正孔阻止層は、陽極2から移動してくる正孔を陰極7に到達するのを阻止する役割と、陰極7から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
【0388】
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項エネルギー準位(T1)が高いことなどが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0389】
正孔阻止層の膜厚は任意である。正孔阻止層の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0390】
<電子輸送層6>
電子輸送層6は、発光層5と陰極7の間に設けられた電子を輸送するための層である。
電子輸送層6の電子輸送性化合物としては、通常、陰極7又は陰極7側の隣接層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体やリチウム錯体などの金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、トリアジン化合物誘導体、ペリレンテトラカルボン酸イミド化合物誘導体などが挙げられる。
【0391】
本発明の実施態様に係る有機電界発光素子の製造方法において、上述の正孔阻止層が存在せず、発光層5の陰極7側に接する層が電子輸送層6であることが好ましい。
【0392】
電子輸送層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。電子輸送層6の膜厚は常1nm以上、好ましくは5nm以上で、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0393】
<電子注入層>
陰極7から注入された電子を効率良く発光層5に注入するために、電子輸送層6と後述の陰極7との間に電子注入層を設けてもよい。電子注入層は、無機塩などからなる。
電子注入層の材料としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウム(II)(CsCO)等が挙げられる(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70、pp.152;特開平10-74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
【0394】
電子注入層は、電荷輸送性を伴わない場合が多いため、電子注入を効率よく行なうには、極薄膜として用いることが好ましく、その膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは5nm以下である。
【0395】
<陰極7>
陰極7は、発光層5側の層に電子を注入する役割を果たす電極である。
【0396】
陰極7の材料としては、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。これらのうち、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えばスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金などが用いられる。具体例としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極などが挙げられる。
陰極7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0397】
陰極7の膜厚は、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陰極7の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陰極7の厚みは任意であり、陰極は基板と同一でもよい。
【0398】
陰極7の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
例えばナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等からなる低仕事関数の金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。
この目的のために、例えばアルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0399】
<その他の層>
本発明の実施態様に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えばその性能を損なわない限り、陽極2と陰極7との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、上記説明にある層のうち必須でない層が省略されていてもよい。
【0400】
以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
【0401】
本発明の実施態様に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
【0402】
上述した各層には、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0403】
[有機電界発光素子の製造方法]
本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法は、上述のような発光層形成用組成物を用いるものであれば特に制限がない。本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法としては、例えば、上述のような発光層形成用組成物を用いて湿式成膜法にて発光層を形成する工程を含む製造方法等、を挙げることができる。
【0404】
[表示装置]
本実施形態に係る表示装置は、上述のような有機電界発光素子を有するものである。表示装置の形式や構造については特に制限はなく、本実施形態に係る有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発刊、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本実施形態に係る表示装置を形成することができる。
【実施例0405】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値又は実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
【0406】
【化99】
【0407】
〔組成物の溶媒溶解性及び析出性評価〕
[実施例I-1]
化合物1と化合物2とを含む組成物のシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
シクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性は、1~2mL程度のシクロへキシルベンゼン溶液(化合物1の濃度:0.6質量%、化合物2の濃度:0.6質量%)を調製し、当該溶液に各組成物が溶解したか否かで判断した。CHBに対する析出性は、溶解性評価で調整した溶液を室温、大気下で保管し、33日経過後に固形分が析出するか否かで判断した。
【0408】
[実施例I-2]
化合物2の代わりに化合物3を用いた他は、実施例I-1と同様にしてシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
【0409】
[実施例I-3]
化合物2の代わりに化合物4を用いた他は、実施例I-1と同様にしてシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
【0410】
[実施例I-4]
化合物2の代わりに化合物5を用いた他は、実施例I-1と同様にしてシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
【0411】
[比較例I-1]
化合物1及び化合物2の代わりに化合物5及び化合物6をそれぞれ用いた他は、実施例I-1と同様にしてシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
【0412】
[比較例I-2]
化合物1の代わりに化合物7を用いた他は、実施例I-1と同様にしてシクロへキシルベンゼン(CHB)に対する溶解性及び析出性を評価した。
【0413】
結果を表1に示す。
表1中の列「1.2質量%CHB溶液」中の「〇」は当該溶液に組成物が溶解したことを意味し、「×」は当該溶液に組成物が溶解しなかったことを意味する。
表1中の列「1.2質量%CHB溶液の析出試験」中の「〇」は調液したCHB溶液が33日経過後に当該溶液から組成物が析出しなかったことを意味し、「×」は調液したCHB溶液が33日経過後に当該溶液から化合物が析出したことを意味する。
【0414】
【表1】
【0415】
表1より、本発明の組成物は溶媒溶解性、即ち、有機溶媒に速やかに溶解すること、溶解した後析出せず均一状態を保持すること、という2つの意味での溶媒溶解性に優れることが分かる。
【0416】
〔有機電界発光素子の作製と性能評価〕
[実施例II-1]
有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を50nmの厚さに堆積したもの(ジオマテック社製、スパッタ成膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。このようにITOをパターン形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0417】
正孔注入層形成用組成物として、下記式(P-1)の繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物3.0質量%と、電子受容性化合物(HI-1)0.6質量%とを、安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製した。
【0418】
【化100】
【0419】
この正孔注入層形成用組成物を、大気中で上記基板上にスピンコートし、大気中ホットプレートで240℃、30分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔注入層とした。
【0420】
次に、下記の式(HT-1)を有する電荷輸送性高分子化合物を1,3,5-トリメチルベンゼンに溶解させ、2.0質量%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔注入層を成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで230℃、30分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔輸送層とした。
【0421】
【化101】
【0422】
引続き、発光層の材料として、化合物1を1.25質量%、化合物2を1.25質量%、下記の化合物(H-1)を2.5質量%、下記の化合物(D-1)を1.5質量%の濃度でシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、発光層形成用組成物を調製した。
【0423】
【化102】
【0424】
発光層形成用組成物を、上記正孔輸送層を成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで120℃、20分間乾燥させ、膜厚70nmの均一な薄膜を形成し、発光層とした。
【0425】
発光層までを成膜した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内を2×10-4Pa以下になるまで排気した。
次に、下記の化合物(ET-1)および8-ヒドロキシキノリノラトリチウムを2:3の膜厚比で、発光層上に真空蒸着法にて共蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0426】
【化103】
【0427】
続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。
【0428】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子を得た。
【0429】
[実施例II-2]
発光層の材料として、化合物2の代わりに化合物3を用いた他は、実施例II-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0430】
[実施例II-3]
発光層の材料として、化合物2の代わりに化合物4を用いた他は、実施例II-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0431】
[実施例II-4]
発光層の材料として、化合物2の代わりに化合物5を用いた他は、実施例II-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0432】
[比較例II-5]
発光層の材料として、化合物1及び化合物2の代わりに化合物5及び化合物6をそれぞれ用いた他は、実施例II-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0433】
[比較例II-6]
発光層の材料として、化合物1の代わりに化合物7を用いた他は、実施例II-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0434】
[素子の評価]
実施例II-1~II-4および比較例II-1~II-2で得られた有機電界発光素子を15mA/cmの電流密度の際の電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を測定した。また、15mA/cmの電流密度で素子に通電し続けた際に、輝度が初期輝度の95%まで減少する時間(LT95)を測定した。これらの測定結果を表2に示す。表2中、実施例II-1~II-4の値は比較例II-1の値を1とした相対値を示す。
表2の結果から、本発明の組成物を用いた有機電界発光素子では、発光効率が高く、駆動寿命の長いことが判った。
【0435】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0436】
本発明の発光層形成用組成物は、保存安定性に優れ、湿式成膜法によって有機電界発光素子の作製が可能であり、従来よりも発光効率が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子を作製することができる。
【符号の説明】
【0437】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
8 有機電界発光素子
図1