(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121528
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】亀裂検出装置及びその診断方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240830BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240830BHJP
G01B 11/22 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01B11/00 C
H01L21/78 B
G01B11/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028675
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍太郎
【テーマコード(参考)】
2F065
5F063
【Fターム(参考)】
2F065AA07
2F065CC19
2F065FF04
2F065FF10
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL28
2F065QQ23
5F063AA48
5F063DD27
5F063DE14
5F063DE23
5F063DE32
(57)【要約】
【課題】 経時変化又は経年劣化等に起因する不具合の発生を容易に検出することが可能な亀裂検出装置及びその診断方法を提供する。
【解決手段】 亀裂検出装置(1)の診断方法は、主光軸(AX)に対して平行かつ主光軸に対して偏心した光源光軸に沿って光源部(10)から出射した検出光(L1)を、集光レンズ(20)により被加工物に集光させ、検出光の光束よりも径が大きい貫通孔を有する光検出マスク(62)を通して、集光レンズのレンズ瞳と共役な位置に配置されたカメラ(70)により、被加工物で反射された検出光の反射光(L2)を検出し、光源部を制御して検出光を移動させた場合に、カメラにより検出した反射光の受光強度に基づいて、亀裂検出装置の軸ズレ量の診断を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部に集光されて前記被加工物の裏面で反射された反射光を光検出器により検出して、前記被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置であって、
主光軸に対して平行かつ前記主光軸に対して偏心した光源光軸に沿って検出光を出射する光源部と、
前記主光軸と同軸のレンズ光軸を有し、前記検出光を集光させる集光レンズと、
前記集光レンズのレンズ瞳と共役な位置に配置され、前記被加工物の表面で反射された前記検出光の反射光を検出するカメラと、
前記カメラの上流に配置され、前記検出光の光束よりも径が大きい貫通孔を有する光検出マスクと、
前記光源部を制御して前記検出光を移動させた場合に、前記光検出マスクを通して前記カメラにより検出された反射光の受光強度に基づいて、前記亀裂検出装置の軸ズレ量の診断を行う制御部と、
を備える亀裂検出装置。
【請求項2】
前記光源部は、
前記検出光を出射する光源と、
前記主光軸から偏心した位置に形成された貫通孔を有し、前記主光軸とは別の回転軸周りに回転可能に取り付けられた光源マスクと、
前記光源マスクを回転させるモータとを備え、
前記制御部は、前記モータを制御して前記検出光を移動させる、請求項1に記載の亀裂検出装置。
【請求項3】
前記カメラは、亀裂検出時に前記光検出器が配置される位置に前記光検出器に替えて配置される、請求項1に記載の亀裂検出装置。
【請求項4】
前記亀裂検出装置の診断時に、前記集光レンズの集光点を前記被加工物の表面に合わせるフォーカス調整機構を備える、請求項1に記載の亀裂検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記集光レンズのレンズ瞳の中心から軸ズレの前後の前記光検出マスクの中心を見込む角度に基づいて、前記軸ズレ量の診断を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の亀裂検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出光を移動させた場合に前記カメラにより検出された反射光の透過比率と、前記軸ズレ量の関係に基づいて、前記軸ズレ量の診断を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の亀裂検出装置。
【請求項7】
被加工物の内部に集光されて前記被加工物の裏面で反射された反射光を光検出器により検出して、前記被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置の診断方法であって、
主光軸に対して平行かつ前記主光軸に対して偏心した光源光軸に沿って光源部から出射した検出光を、集光レンズにより前記被加工物に集光させるステップと、
前記検出光の光束よりも径が大きい貫通孔を有する光検出マスクを通して、前記集光レンズのレンズ瞳と共役な位置に配置されたカメラにより、前記被加工物で反射された前記検出光の反射光を検出するステップと、
前記光源部を制御して前記検出光を移動させた場合に、前記カメラにより検出した反射光の受光強度に基づいて、前記亀裂検出装置の軸ズレ量の診断を行うステップと、
を備える亀裂検出装置の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亀裂検出装置及びその診断方法に係り、被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置及びその診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物(例えば、シリコンウエハ又はガラスウエハ等の基板)の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置が知られている。レーザ加工装置により被加工物にレーザ加工領域を形成すると、そのレーザ加工領域を起点として被加工物の厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。被加工物の割断プロセス(例えば、エキスパンド又はブレーキング等)では、この亀裂を利用して切断予定ラインで被加工物を割断して個々のチップに分断する。
【0003】
特許文献1には、被加工物の内部に形成された亀裂を非破壊で検査する亀裂検出装置が記載されている。特許文献1では、被加工物の内部の亀裂を偏射照明して、亀裂が形成された領域において、亀裂に当たらずに被加工物の裏面で反射した光を検出し、亀裂により入射光が散乱されることに起因する検出光量の低下を利用して亀裂の検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の亀裂検出装置は、被加工物の内部にレーザ光を集光するための集光光学系(集光レンズ)等の亀裂検出機構を含んでいる。亀裂検出装置の亀裂検出機構には、経時変化又は経年劣化等により軸ズレが発生する場合がある。亀裂検出装置において軸ズレ等の不具合が発生すると、亀裂に関する測定値に誤差が生じてしまう。このため、亀裂検出装置に含まれるハードウェアの状態を診断し、軸ズレ等の不具合の発生を発見することが望まれる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、経時変化又は経年劣化等に起因する不具合の発生を容易に検出することが可能な亀裂検出装置及びその診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る亀裂検出装置は、被加工物の内部に集光されて被加工物の裏面で反射された反射光を光検出器により検出して、被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置であって、主光軸に対して平行かつ主光軸に対して偏心した光源光軸に沿って検出光を出射する光源部と、主光軸と同軸のレンズ光軸を有し、検出光を集光させる集光レンズと、集光レンズのレンズ瞳と共役な位置に配置され、被加工物の表面で反射された検出光の反射光を検出するカメラと、カメラの上流に配置され、検出光の光束よりも径が大きい貫通孔を有する光検出マスクと、光源部を制御して検出光を移動させた場合に、光検出マスクを通してカメラにより検出された反射光の受光強度に基づいて、亀裂検出装置の軸ズレ量の診断を行う制御部とを備える。
【0008】
本発明の第2の態様に係る亀裂検出装置は、第1の態様において、光源部は、検出光を出射する光源と、主光軸から偏心した位置に形成された貫通孔を有し、主光軸とは別の回転軸周りに回転可能に取り付けられた光源マスクと、光源マスクを回転させるモータとを備え、制御部は、モータを制御して検出光を移動させる。
【0009】
本発明の第3の態様に係る亀裂検出装置は、第1又は第2の態様において、カメラは、亀裂検出時に光検出器が配置される位置に光検出器に替えて配置される。
【0010】
本発明の第4の態様に係る亀裂検出装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、亀裂検出装置の診断時に、集光レンズの集光点を被加工物の表面に合わせるフォーカス調整機構を備える。
【0011】
本発明の第5の態様に係る亀裂検出装置は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、カメラの上流に配置された光検出マスクを備え、制御部は、集光レンズのレンズ瞳の中心から軸ズレの前後の光検出マスクの中心を見込む角度に基づいて、軸ズレ量の診断を行う。
【0012】
本発明の第6の態様に係る亀裂検出装置は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、制御部は、検出光を移動させた場合にカメラにより検出された反射光の透過比率と、軸ズレ量の関係に基づいて、軸ズレ量の診断を行う。
【0013】
本発明の第7の態様に係る亀裂検出装置の診断方法は、被加工物の内部に集光されて被加工物の裏面で反射された反射光を光検出器により検出して、被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置の診断方法であって、主光軸に対して平行かつ主光軸に対して偏心した光源光軸に沿って光源部から出射した検出光を、集光レンズにより被加工物に集光させるステップと、検出光の光束よりも径が大きい貫通孔を有する光検出マスクを通して、集光レンズのレンズ瞳と共役な位置に配置されたカメラにより、被加工物で反射された検出光の反射光を検出するステップと、光源部を制御して検出光を移動させた場合に、カメラにより検出した反射光の受光強度に基づいて、亀裂検出装置の軸ズレ量の診断を行うステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加工物に集光する検出光を移動させたときの(振ったときの)反射光を利用することにより軸ズレ量の診断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
【
図3】光源マスクの動作を説明するための図である。
【
図4】亀裂検出装置における光学系(照明光学系及び検出光学系)を説明するための図である。
【
図5】亀裂検出装置の診断機能を説明するための図である。
【
図6】亀裂検出装置の診断機能を説明するための図である。
【
図7】光検出マスクがX方向に軸ズレした状態を示す図である。
【
図8】X軸ズレ量の算出手順を説明するための図である。
【
図10】モータパルス数とX軸ズレ量との関係を示すグラフである。
【
図11】光検出マスクがY方向に軸ズレした状態を示す図である。
【
図12】Y軸ズレ量の算出手順を説明するための図である。
【
図13】モータパルス数とY軸ズレ量との関係を示すグラフである。
【
図14】光検出マスクがX方向に軸ズレした状態を示す図である。
【
図15】透過比率とX軸ズレ量の関係を示すグラフである。
【
図16】光検出マスクがY方向に軸ズレした状態を示す図である。
【
図17】透過比率とY軸ズレ量の関係を示すグラフである。
【
図18】本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置の診断方法を示すフローチャートである。
【
図19】実際のスキャン波形(測定波形)と軸ズレ量の計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る亀裂検出装置及びその診断方法の実施の形態について説明する。
【0017】
[亀裂検出装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。以下の説明では、Z方向が主光軸AXな方向とする3次元直交座標系を用いる。なお、θ方向はZ軸を回転軸とする回転方向である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1は、被加工物Wに対して検出光L1を照射し、被加工物Wからの反射光L2を検出することで、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの検出を行う装置である。
【0019】
なお、亀裂検出装置1は、被加工物Wの内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザダイシング装置ともいう。)と組み合わされたものであるが、
図1では、簡単のため、亀裂検出装置に係る構成要素のみを図示している。
【0020】
図1に示すように、亀裂検出装置1は、光源部10、集光レンズ20、照明光学系30、光検出器60及び制御部100を含んでいる。なお、被加工物Wは、図示しないステージに載置される。
【0021】
光源部10は、2本の第1光源光軸Q1及び第2光源光軸Q2のいずれかに沿って、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出するための検出光L1を選択的に出射可能となっており、擬似的に2個の光源を構成する。ここで、第1光源光軸Q1及び第2光源光軸Q2は、集光レンズ20のレンズ光軸と同軸である主光軸AXに対して平行であって、主光軸AXに対して偏心する光軸である。
【0022】
光源部10は、光源12及び光源マスク14を含んでいる。制御部100は、光源12の出射制御と、モータM1による光源光軸(第1光源光軸Q1及び第2光源光軸Q2)の切替制御(
図3参照)とを行う。
【0023】
光源12は、例えば、LED(Light-Emitting Diode)光源であり、被加工物Wがシリコンウエハの場合、検出光L1としては、例えば、波長1,000nm以上の赤外光が用いられる。
【0024】
図2は、光源マスク14を示す平面図である。
図3は、光源マスク14の動作を説明するための図である。
【0025】
図2に示すように、光源マスク14は、アーム部14Aと、アーム部14Aの一端に取り付けられたマスク部14Bとを含んでいる。アーム部14Aの他端の回転中心C
14にはモータM1の回転軸が取り付けられており、マスク部14Bは回転中心C
14の周りに回転可能となっている。
【0026】
マスク部14Bは、光源12からの検出光L1を遮蔽可能な板状の部材を含んでおり、主光軸AXに対して略垂直に配置される。マスク部14Bには、略同一のサイズ及び形状を有する2個の貫通孔H1及びH2が形成されている。
【0027】
図1において、光源マスク14(モータM1)のアーム部14Aは、その長手方向が
図1の上下方向(Y方向)に沿うように配置されており、光源マスク14(モータM1)の回転軸は主光軸AXに平行となっている。
【0028】
図3に示すように、第1光源光軸Q1に沿って検出光L1を出射する場合、モータM1によりマスク部14Bを図中左回り(反時計回り)に回転させ、貫通孔H1を第1光源光軸Q1の位置に移動させる(Q1出力時)。一方、第2光源光軸Q2に沿って検出光L1を出射する場合、モータM1によりマスク部14Bを図中右回り(時計回り)に回転させ、貫通孔H2が第2光源光軸Q2の位置に移動させる(Q2出力時)。ここで、光源12から出射される検出光L1の光束のサイズ及び形状並びにマスク部14Bのサイズ及び形状は、Q1出力時には貫通孔H1を照明し、かつマスク部14Bの周囲と貫通孔H2から検出光L1が漏れないように、Q2出力時には貫通孔H2を照明し、かつマスク部14Bの周囲と貫通孔H1から検出光L1が漏れないように調整されている。
【0029】
図3に示すように、Q1出力時には貫通孔H1と回転中心C
14とが
図3の左右方向(Y方向)に沿って並び、Q2出力時には貫通孔H2と回転中心C
14とがY方向に沿って並ぶようになっている。これにより、主光軸AXに対してそれぞれ±Y方向に偏心した第1光源光軸Q1及び第2光源光軸Q2のいずれかに沿う検出光L1を選択的に出射可能となっている。
【0030】
ここで、モータM1を回転させると貫通孔H1及びH2の位置が弧を描くように変化するが、モータM1の回転軸と貫通孔H1及びH2の位置とは十分離れているため、光源光軸の切り替え程度の回転では、
図3の左右方向に沿う貫通孔H1及びH2の位置の変化は無視することができ、片軸(
図3の上下方向)しか変化しない。
【0031】
なお、亀裂検出装置1の診断機能では、光源マスク14の位置を意図的に送ることで診断を行う。亀裂検出装置1の診断機能については後述する。
【0032】
本実施形態では、2つの穴が形成された光源マスク14と、光源マスク14に併せて光束が調整された光源12とを設けることで擬似的に光源を2個にしたが、これに限定されない。例えば、独立した2個の光源それぞれに自動ステージを取り付け、光源を切り替えるようにしてもよい。この場合、亀裂検出装置1の診断の際には、光源の位置を意図的に送ればよい。また、この場合、光源から出射される光束の太さを、絞り等を用いて後述の光検出マスク62の貫通孔よりも細くすればよい。
【0033】
図2に示す例では、光源12からの1本の光束を2本に分割するだけなので、2個の光源からの2本のビームが平行になるようにアライメントを行う必要がない。
【0034】
図1に示すように、照明光学系30は、一対のリレーレンズ32及び34並びに視野絞り36を含んでいる。一対のリレーレンズ32及び34はテレセントリックなアフォーカル光学系を構成し、検出光L1を集光レンズ20のレンズ瞳20aに投影する。視野絞り36は、集光レンズ20の集光点と光学的に共役な位置となるように配置されており、光源部10から被加工物Wに向けて照射される検出光L1の範囲を制限する。視野絞り36により、検出光L1を成形して被加工物Wの内部における集光レンズ20の像面(集光面)の1点に向かって集光する光スポットを形成することができ、不要な反射光や散乱光を低減することができる。なお、光源部10から出射された検出光L1がコリメート光(平行光)である場合には視野絞り36を省略してもよい。
【0035】
ハーフミラー40は、照明光学系30とダイクロイックミラー42との間に配置されており、入射光の一部を透過し一部を反射する。すなわち、ハーフミラー40は、光源部10から照明光学系30を経由して入射する検出光L1の一部を透過し、ダイクロイックミラー42を経由して集光レンズ20に導く一方、被加工物Wからの検出光L1の反射光L2の一部を反射して検出光学系50に導く。
【0036】
ダイクロイックミラー42は、主光軸AXを直角に折り曲げる。すなわち、ダイクロイックミラー42は、光源部10からの検出光L1を直角に反射して集光レンズ20に導き、被加工物Wからの反射光L2を直角に反射してハーフミラー40に導く。
【0037】
また、ダイクロイックミラー42は、レーザダイシング装置の加工光学系と、亀裂検出のための検出光学系50が集光レンズ20を共用する場合に、加工光と検出光L1とを分離する。なお、加工光を考慮しなくてもよい場合(集光レンズ20を共用しない場合)には、ダイクロイックミラー42の代わりに、全反射ミラーを配置してもよい。
【0038】
集光レンズ20は、被加工物Wに対向する位置に配置されており、光源部10から照明光学系30、ハーフミラー40及びダイクロイックミラー42を介して入射した検出光L1を被加工物Wの内部に集光する。集光レンズ20により被加工物Wの内部に検出光L1が集光された後、被加工物Wからの反射光L2は、集光レンズ20及びダイクロイックミラー42を経由してハーフミラー40で反射され、検出光学系50に導かれる。
【0039】
検出光学系50は、1対のリレーレンズ52及び54を含んでおり、ハーフミラー40により反射された反射光L2を光検出器60に導く。
【0040】
一対のリレーレンズ52及び54は、テレセントリックなアフォーカル光学系を構成し、集光レンズ20のレンズ瞳20aを光検出器60に投影する。
【0041】
検出光学系50と光検出器60との間には、光検出マスク62が配置されている。光検出マスク62は、被加工物Wからの反射光L2のうちの不要な反射光成分を除去する機能を有する。光検出マスク62は、反射光L2を遮蔽可能な板状(例えば、円板状)の部材を含んでおり、主光軸AXに対して略垂直に配置される。光検出マスク62には、光源マスク14の貫通孔H1及びH2よりも径が大きい貫通孔が形成されている。
【0042】
光検出器60は、集光レンズ20のレンズ瞳20a(
図4参照)と共役な位置に配置されており、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの有無に応じて変化する反射光L2を検出する。光検出器60は、2つに分割された受光面60a、60b(
図4参照)を有する2分割フォトディテクタからなり、被加工物Wからの反射光L2を各受光面60a、60bで受光し、各受光面60a、60bで受光した光量に応じた検出信号をそれぞれ制御部100に出力する。なお、光検出器60としては、複数に分割された受光面を有する分割型光検出器であればよく、例えば、2分割フォトディテクタに代えて、4分割フォトディテクタを用いてもよいし、2個のフォトディテクタを用いてもよい。また、光検出器60の代わりに、赤外線カメラで撮像し、画像処理を行ってもよい。
【0043】
フォーカス調整機構22は、集光レンズ20の集光点を主光軸AXに沿う方向(被加工物Wの厚さ方向、Z方向)に調整するものである。このフォーカス調整機構22は、集光レンズ20の集光点を主光軸AXに沿った方向に移動させる。フォーカス調整機構22は、制御部100に接続されており、制御部100により集光レンズ20の集光点の制御が行われる。なお、フォーカス調整機構22は、レンズ駆動部(例えば、ピエゾアクチュエータ)により集光レンズ20を主光軸AXに沿った方向に移動させることで集光レンズ20と被加工物Wとの間の距離を変化させることによって集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させるようにしてもよい。
【0044】
なお、集光レンズ20がレーザダイシング装置の加工ヘッド(不図示)とともにZ方向に移動可能な構成の場合には、フォーカス調整機構22は、加工ヘッドの駆動機構を含んでいてもよい。この場合、加工ヘッドの駆動機構による集光点の位置調整(粗調整)と、ピエゾアクチュエータによる集光点の位置調整(微調整)とを組み合わせて行うことが可能になる。
【0045】
なお、本明細書において、集光レンズ20の集光点とは、集光レンズ20により集光された検出光L1の集光点の位置をいう。また、集光レンズ20の集光点の深さ位置(Z方向位置)は、被加工物Wの裏面からの距離で示すものとする。
【0046】
アライメント機構24は、集光レンズ20と被加工物WとのXY方向における相対的な位置合わせ(アライメント)を行うものである。アライメント機構24は、例えば、モータ及びボールねじ等を含む機構、又はガイド軸とスライダーとの間に気体軸受を設けるエアガイド機構等の往復直線運動のための機構を含んでいる。また、アライメント機構24は、集光レンズ20をレンズ光軸に垂直な水平方向に微小移動させるレンズ駆動部を含んでいる。レンズ駆動部は、制御部100に接続されており、制御部100によりレンズ駆動部を制御することで、集光レンズ20と被加工物Wとの水平方向における相対的な位置合わせが行われる。なお、アライメント機構24に代えて、被加工物Wを載置するステージ(不図示)を集光レンズ20に対して相対的に移動させるようにしてもよい。
【0047】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージ及び入出力回路部を含んでおり、亀裂検出装置1の各部の動作を制御する。具体的には、制御部100は、フォーカス調整機構22により集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、光検出器60から出力された検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂上端位置又は亀裂下端位置)を検出する処理(亀裂検出処理)を行う。
【0048】
(光学系)
図4は、亀裂検出装置における光学系(照明光学系及び検出光学系)を説明するための図である。以下の説明では、検出光L1及び反射光L2の進行方向(主光軸AXに沿う方向)をZ方向とする。
【0049】
図4には、第1光源光軸Q1に沿って出射された検出光L1の光路を示している。なお、
図4では、簡単のため、一部の光学部材を省略している。
【0050】
図4に示すように、検出光L1は、照明光学系30のリレーレンズ32及び34を経由して、集光レンズ20により被加工物Wの内部の焦点位置FSに集光される。焦点位置FSに集光された検出光L1のうち、亀裂Kに当たらずに被加工物Wの裏面で反射した光の非反射光成分(反射光L2a)は、被加工物Wの裏面で反射された後、集光レンズ20を再び透過して、収束光束として検出光学系50に導かれる。反射光L2aは、検出光学系50のリレーレンズ52及び54を順次通過して光検出器60の受光面60bに導かれる。
【0051】
一方、焦点位置FSに集光された検出光L1のうち、亀裂Kに当たった光は、亀裂Kにより全反射される。亀裂Kにより全反射された光の反射光成分(反射光L2b)は、被加工物Wの裏面で反射された後、集光レンズ20を再び透過して、収束光束として検出光学系50に導かれる。反射光L2bは、リレーレンズ52及び54を順次通過して光検出器60の受光面60aに導かれる。
【0052】
本実施形態では、光検出器60により検出した被加工物Wからの反射光L2a及びL2bに基づいて亀裂検出を行う。
【0053】
集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1は、亀裂Kに当たらずに被加工物Wの裏面で反射された後、反射光L1aとして光検出器60の受光面60aにより検出される。この場合、受光面60aから検出される検出信号の信号レベルは最大になり、受光面60bから検出される検出信号の信号レベルはゼロになる。
【0054】
一方、集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は、亀裂Kで全反射された後、被加工物Wの裏面で反射され、反射光L1bとして光検出器60の受光面60bにより検出される。この場合、受光面60aから検出される検出信号の信号レベルはゼロになり、受光面60bから検出される検出信号の信号レベルは最大になる。
【0055】
また、集光レンズ20の集光点と亀裂Kの亀裂下端位置又は亀裂上端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂Kに当たらずに被加工物Wの裏面で反射される非反射光成分と、亀裂Kで全反射された後、被加工物Wの裏面で反射される反射光成分とに分割される。そして、検出光L1の非反射光成分及び反射光成分は、反射光L1a及びL1bと同様の経路に沿って受光面60a及び60bにそれぞれ入射する。
【0056】
制御部100は、フォーカス調整機構22を制御して集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、受光面60a及び60bから出力される検出信号を順次取得する。これにより、亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。具体的には、制御部100は、受光面60a及び60bから出力される検出信号の信号レベルが略等しくなる位置を亀裂下端位置又は亀裂上端位置として検出する。また、制御部100は、受光面60aから検出される検出信号の信号レベルがゼロになる区間を亀裂Kの位置として検出する。
【0057】
亀裂検出を行う際には、第1光源光軸Q1及び第2光源光軸Q2に沿う検出光L1のいずれか一方を用いて亀裂Kの位置を検出してもよいし、両方の検出結果(例えば、平均値)に基づいて亀裂Kの位置を検出してもよい。
【0058】
[亀裂検出装置の診断機能]
本実施形態に係る亀裂検出装置1は、光源12から光検出器60までの光路(
図4参照)上の光学系(亀裂検出機構)を診断対象とする診断機能(自己診断機能)を有する。
【0059】
光源マスク14を取り付けたモータM1を回転させるとビーム(検出光L1)の位置が変化し、検出光L1の位置が変化すると光検出マスク62へのビーム(反射光L2)の抜け方が変化する。本実施形態では、モータM1により光源マスク14を回転させたときの反射光L2の抜け方の変化に基づいて、亀裂検出装置1の亀裂検出機構の診断を行う。
【0060】
上記の亀裂検出機構の診断結果は、光源12から光検出器60までの光路上の全光学系の軸ズレを内包している。亀裂検出機構の診断において使用するパラメータ(定量的な指標)は、「光検出マスク62への検出光L2の抜け方が亀裂検出装置1の出荷時よりどれだけ軸ズレしているか」である。ここで、軸ズレとは、X方向の軸ズレ(X軸ズレ)とY方向の軸ズレ(Y軸ズレ)の2種である。モータM1により光源マスク14を回転させた際に、反射光L2の移動方向(貫通孔H1及びH2の移動方向に対応)と平行な成分がX軸であり、X軸に対して垂直な成分がY軸である。
【0061】
また、亀裂検出装置1の診断時には、集光レンズ20の集光位置を被加工物Wの表面Waに合わせる。
図4を参照して説明した通り、亀裂検出時には、被加工物Wの内部に検出光L1を透過させ、被加工物Wの裏面で反射された反射光(裏面反射光)を用いる。亀裂検出装置1の診断時にも裏面反射光を用いることが考えられる。しかしながら、裏面反射光を診断に使用すると、例えば、デバイスウエハ等の裏面にパターンが形成された被加工物Wの場合、反射率が部分的に異なるので反射光強度が乱れてしまい、診断結果に悪影響を及ぼす場合がある。また、亀裂Kが入ったウエハも同様に検出光L1が亀裂Kに当たって散乱すると結果に誤差が生じる場合がある。したがって、亀裂検出装置1の診断時には、一様な反射率が見込める表面反射光のみを利用することが好ましい。
【0062】
X軸ズレ及びY軸ズレの診断方法はそれぞれ2種類ある。第1の診断方法は、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C20の位置から反射光L2の変化前後の位置を見込む角度に基づいて、X軸ズレ及びY軸ズレのズレ量を算出するものである。第2の診断方法は、反射光L2の透過比率(=面積比率)に基づいて、X軸ズレ及びY軸ズレのズレ量を算出するものである。
【0063】
[第1の診断方法:レンズ瞳の中心からの角度に基づく診断]
図5及び
図6は、亀裂検出装置の診断機能を説明するための図である。
図5は、診断対象の光路を簡略化して示す模式図であり、
図6は、カメラ70により撮像した撮像画像の例を示している。
【0064】
図4に示すように、光源12から集光レンズ20に至るまでの光学系はアフォーカル系を構成しており、検出光L1は、光源12側と集光レンズ20の手前側で平行光となる。集光レンズ20から光検出器60(カメラ70)に至るまでの光学系も同様にアフォーカル系を構成しており、反射光L2は、被加工物Wから戻って集光レンズ20から出射した位置と、光検出器60に向かう位置で平行光となる。したがって、
図5に示すように、光学系を簡略化することができる。
【0065】
図5に示すように、光源12から出射された検出光L1は、破線の円で示す光源マスク14の貫通孔(H1又はH2)及び集光レンズ20を順次通過して、被加工物Wの表面Waに到達する。
図5の実線の円は、レンズ瞳20aを示している。被加工物Wの表面Waに集光されて反射された反射光L2は、集光レンズ20を通過した後、点線の円で示す光検出マスク62の貫通孔を通過する。
【0066】
亀裂検出装置1の診断時には、光検出器60に代えてカメラ70を配置して、反射光L2を検出する。
【0067】
カメラ70は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んでいる。カメラ70の撮像素子の受光面は、集光レンズ20のレンズ瞳20aと光学的に共役な位置に配置される。
【0068】
図6に示す例では、
図5と同様に、カメラ70により撮像した画像のうち、光源マスク14の貫通孔(H1又はH2)を通過して反射光L2の入射した白色の領域を破線の円で示し、集光レンズ20のレンズ瞳20aに対応する灰色の領域を実線の円で示す。また、光検出マスク62の貫通孔に対応する領域を点線の円で示す。
【0069】
図6に示すように、光検出マスク62の貫通孔は、光源マスク14の貫通孔H1及びH2よりも径が大きく、亀裂検出装置1の出荷時には、光検出マスク62の点線の円で示す領域の内側中央に反射光L2の破線の円が収まるようになっている。
【0070】
また、モータM1により光源マスク14を回転させた場合の反射光L2の移動方向を破線の矢印で示す。上記の通り、モータM1の回転軸の位置と光源マスク14の貫通孔H1及びH2の位置とは十分離れているため、モータM1により光源マスク14を回転させた際の反射光L2の移動方向(軌跡)は、破線の双頭矢印で示すように、X方向に沿う直線に近似することができる。
【0071】
(X軸ズレの診断)
図7は、光検出マスク62がX方向に軸ズレした状態を示す図である。
【0072】
図7の左図は、X軸ズレ前後の撮像画像を示している。同図では、出荷時とX軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域をそれぞれ点線と実線の円で示す。なお、各円に対応する点線と実線の双頭矢印は、反射光L2が光検出マスク62を通過する範囲(光検出マスク62の貫通孔に対応する領域)を示している。
【0073】
同図に示すように、反射光L2は、出荷時の点線の円の内側中央に収まるようになっている。これに対して、+X側にX軸ズレすると、反射光L2は、X軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する実線の円に対して-X側にずれる。
【0074】
図7の右図は撮像画像における受光強度を示すグラフである。同図に示すように、X軸ズレが発生すると、モータM1をパルス信号で制御して光源マスク14を回転させた際に、検出光L1の抜け方が変化して、受光強度を示すグラフが左右にシフトする。このシフト前後のグラフのピーク位置(=モータパルスを振った際の透過可能範囲の中間点)を比較することでX軸ズレ量を算出する。ここで、中間点は、例えば、カメラ70により撮像した撮像画像において、反射光L2の透過可能範囲として検出される略円形状の領域の中心又は重心である(
図8、
図12、
図14及び
図16参照)。
【0075】
図8は、X軸ズレ量の算出手順を説明するための図である。
図8において、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C
20と出荷時の透過可能範囲(破線の円)の中間点C
X0をまでの距離をdとし、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C
20、出荷時の透過可能範囲(破線の円)の中間点C
X0及びX軸ズレ後の透過可能範囲(実線の円)の中間点C
X1のなす角(中心C
20の位置からC
X0及びC
X1を見込む角、∠C
X0C
20C
X1)の角度をθとする。
図8において、検出光L1の移動量に対してdが十分大きいので、三角形C
X0C
20C
X1は直角三角形とみなす(近似する)ことができる。したがって、X軸ズレ量ΔXは、下記の式(1)で表される。
【0076】
ΔX=dtan(θ-θ0) (1)
なお、θ0は、装置出荷時の角度、すなわち、装置出荷時の線分CX0C20のY軸に対する傾きである。
【0077】
ここで、検出光L1を動作制御に実際に用いられるパラメータは、モータM1に加えられるパルス信号のモータパルス数である。このモータパルス数をθに変換する方法を2通り説明する。
【0078】
(1)第1の変換方法
図9は、光源部を拡大して示す図である。
図9に示すように、検出光L1が図中上方向へ移動したとする。モータM1の回転軸中心(光源マスク14の回転中心C
14)から移動前の検出光L1の位置までの距離をD、1パルス当たりの回転角度をm(deg(「度」又は「°」)/1パルス)、現在のモータパルス数をp、ビーム中心位置(主光軸AX及びレンズ瞳20aの中心C
20に対応)から移動前の検出光L1の位置までの距離をd、ビーム中心位置、移動前の検出光L1の位置及び移動後の検出光L1の位置のなす角度をθとする。
【0079】
図9において、光源マスク14の貫通孔(Q1またはQ2)の移動軌跡T1に沿う検出光L1の移動量に対してDが十分大きいので、三角形C
X0C
14C
X1は直角三角形とみなす(近似する)ことができる。したがって、モータM1側から見た検出光L1の移動量はDtan(mp)となる。また、ビーム中心位置側から見た検出光L1の移動量はdtan(θ)となる。
【0080】
図9からDtan(mp)=dtan(θ)となるので、θとpの関係式を求めると、下記の式(2)が得られる。
【0081】
θ=arctan{Dtan(mp)/d} (2)
図4に示すように、光源12と光検出器60(カメラ70)はアフォーカル系なので、式(2)で求めたθは、光検出器60(カメラ70)及びレンズ瞳20aの周りでも同じ角度になる。これにより、モータパルス数pからθへの変換が可能になる。
【0082】
(2)第2の変換方法
図5に示すように、光検出器60の位置にカメラ70を設置する。そして、モータM1を回転させたときのレンズ瞳20aの中心C
20からの角度を画像処理して事前に取得しておく。いわば光検出器60の周りでの回転角度を亀裂検出装置1ごとに取得しておき、モータパルス数にこの回転角度を乗じてθ変換する。
【0083】
図10は、モータパルス数とX軸ズレ量との関係を示すグラフであり、式(1)をグラフ化したものである。ただし、グラフの横軸はθ変換していないモータパルス数であり、亀裂検出装置1の出荷時(=基準時)のモータパルス数(基準パルス)を100、回転角度を0.72deg、d=500μmとする。
図10を見て分かるように、モータパルス数100を中心に右側では軸ズレ量の符号が+、左側では軸ズレ量の符号が-になるのでX軸ズレ量の診断では符号を伴った値を取得することができる。
【0084】
(Y軸ズレの診断)
図11は、光検出マスク62がY方向に軸ズレした状態を示す図である。
【0085】
図11の左図は、Y軸ズレ前後の撮像画像を示している。同図では、出荷時とY軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域をそれぞれ点線と実線の円で示す。なお、各円に対応する点線と実線の双頭矢印は、反射光L2が光検出マスク62を通過する範囲(光検出マスク62の貫通孔に対応する領域)を示している。
【0086】
同図に示すように、反射光L2は、出荷時の点線の円の内側中央に収まるようになっている。これに対して、+Y側にY軸ズレすると、反射光L2は、Y軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する実線の円に対して-Y側にずれる。
【0087】
図11の右図は撮像画像における受光強度を示すグラフである。同図に示すように、Y軸ズレが発生すると、モータM1をパルス信号で制御して光源マスク14を回転させた際に、検出光L1の抜け方が変化して、受光強度を示すグラフの幅が狭くなる。このY軸ズレ前後のグラフの幅(=モータパルスを振った際の透過可能範囲)を比較することでY軸ズレ量を算出する。
【0088】
なお、モータパルスを振った際の透過可能範囲を比較すると記述したが、実際は透過可能範囲の半分(片側)だけデータを取得すればY軸ズレの計算は可能であるため、反射光L2が光検出マスク62を抜けるギリギリのポイント、換言すれば、反射光L2の外縁部と光検出マスク62の縁が重なるポイントである「透過可能限界」を利用してY軸ズレ量の計算を行う。
【0089】
図12は、Y軸ズレ量の算出手順を説明するための図である。
図12において、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C
20と出荷時の透過可能範囲(破線の円)の中間点C
Y0をまでの距離をdとし、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C
20、出荷時の透過可能範囲(破線の円)の中間点C
Y0及び出荷時の透過可能限界の点T
lim0のなす角(中心C
20の位置からC
Y0及びT
lim0を見込む角、∠C
Y0C
20T
lim0)の角度をθ
lim0とする。また、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C
20、Y軸ズレ後の透過可能範囲(破線の円)の中間点C
Y1及び出荷時の透過可能限界の点T
lim1のなす角(中心C
20の位置からC
Y1及びT
lim1を見込む角、∠C
Y1C
20T
lim1)の角度をθ
lim1とする。
【0090】
図12に示す例でも、モータM1の回転軸の位置と光源マスク14の貫通孔H1及びH2の位置とは十分離れているため、モータM1により光源マスク14を回転させた際の反射光L2の移動方向(軌跡)は、X方向に沿う直線に近似することができる。このとき、Y軸ズレ量ΔYは、下記の式(3)により表される。
【0091】
【0092】
ここで、θ
lim0≧θ
lim1の関係が常に成り立つので、ΔYは正の値しか取らない。すなわち、Y軸ズレはX軸ズレとは異なり、どの方向にずれたか分からない特徴を持つ。これは
図11の右図のグラフを見ても明らかであり、Y軸ズレが発生した場合、出荷時よりもグラフの幅が狭くなるだけでどちらにずれたかは分からない。
【0093】
図13は、モータパルス数とY軸ズレ量との関係を示すグラフであり、式(3)をグラフ化したものである。ただし、グラフの横軸はθ変換していないモータパルス数であり、亀裂検出装置1の出荷時(=基準時)のモータパルス数(基準パルス)を100、回転角度を0.72deg、d=500μmとする。上記の通り、θ
lim0≧θ
lim1なので、絶対値でモータパルス数100を超える部分はズレ量を計算できない。また、グラフは1パルスずつのプロットだが、グラフを見て分かるように100パルスから99パルスに変わっただけでY軸ズレ量が約400μmも生じている。つまり、Y軸ズレ量の診断は小さなズレ量を検知できない。仮に回転角度やdを変更して小さなズレ量を検知しようとしても、今度は検知できる範囲が極端に狭くなってしまう(例えば、回転角度を0.072degにすると最小で10μm検知できるようになるが、測定可能範囲が60μm程度まで狭まってしまう)。Y軸ズレ量の診断は、上記のような特性を有しており、X軸ズレ量の診断と比較すると、診断可能な領域が限定的となる。
【0094】
[第2の診断方法:透過比率に基づく診断]
透過比率に基づく診断では、反射光L2を「計算位置」に移動させる。計算位置とは反射光L2の中心が光検出マスク62の貫通孔の縁と重なる位置であり、この位置での透過比率(=面積比率)を調べることで軸ズレ量の計算を行う。
【0095】
(X軸ズレの診断)
図14は、光検出マスク62がX方向に軸ズレした状態を示す図である。
【0096】
図14では、出荷時とX軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域をそれぞれ点線と実線の円で示し、これらの円の半径をRとし、点線と実線の円の中間点をそれぞれ点C
X0及び点C
X1とする。反射光L2の中心が出荷時の光検出マスク62の貫通孔の縁と重なる位置である計算位置における反射光L2の領域を破線の円で示し、この円の半径(レンズ瞳20a上における反射光L2の半径)をrとし、反射光L2の中間点を点Aとする。点B及び点Cは、計算位置における反射光L2の外周(破線の円)とX軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域(実線の円)の交点であり、∠BACと∠BC
X1Cの角度をそれぞれαとβとする。
【0097】
図14の網掛け領域OAは、実線の円と破線の円とが重なる領域であり、出荷時の光検出マスク62に対して計算位置にある反射光L2のうち、X軸ズレ後の光検出マスク62を透過する領域を示している。この網掛け領域OAの面積を求めて反射光L2の全体の面積と比較することにより、透過比率を算出する。
【0098】
網掛け領域OAの面積をSpartとすると、Spart={(扇形BAC)-(三角形BAC)}+{(扇形BCX1C)-(三角形BCX1C)}となるので、下記の式(4)が得られる。
【0099】
【0100】
余弦定理から、下記の式(5)及び式(6)が得られる。
【0101】
【0102】
式(5)及び式(6)を式(4)に代入して下記の通り変形すると、下記の式(7)が得られる。
【0103】
【数4】
反射光L2全体の面積(実線の円の面積)をS
Allとすると、透過比率γは、下記の式により表される。
【0104】
【数5】
これに式(7)を代入すると、下記の式(8)が得られる。
【0105】
【数6】
上記のように、設計値であるrとRのみで透過比率γとX軸ズレ量ΔXの関係式を導出することができる。
【0106】
図15は、透過比率γとX軸ズレ量ΔXの関係を示すグラフであり、式(8)をグラフ化したものである。
図15では、r=500μm、R=1,000μmとする。
【0107】
X軸ズレが発生していない場合、計算位置にある反射光L2の透過比率は約0.45である。そして、モータM1により光源マスク14を回転することで、反射光L2が計算位置から半径r分(500μm)移動すると、反射光L2は光検出マスク62により完全に遮られるため透過比率は0になる。つまり、X軸ズレ量の算出可能範囲は反射光L2の半径r(レンズ瞳20a上における半径)に依存している。反射光L2の半径rを大きくすればするほど、X軸ズレ量の算出可能範囲も広がるが、反射光L2の半径rは亀裂測定の最適条件として、亀裂検出装置1の出荷時に決められているので変更は困難である。すなわち、X軸ズレ量の診断における算出可能範囲は、反射光L2の半径rによって決まることになる。
【0108】
なお、光検出マスク62の貫通孔の半径を増減させた場合、X軸ズレが発生していない場合(
図15においてX軸ズレ量がゼロの場合)の透過比率は変化するが、X軸ズレ量の算出可能範囲は変化しない。
【0109】
また、X軸ズレ量が反対側(=マイナス側)に動くと透過比率は0.45を超える。これはX軸ズレ量の診断のみに現れる傾向である。
【0110】
(Y軸ズレの診断)
図16は、光検出マスク62がY方向に軸ズレした状態を示す図である。
【0111】
図16では、出荷時とY軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域をそれぞれ点線と実線の円で示し、これらの円の半径をRとし、点線と実線の円の中間点をそれぞれ点C
Y0及び点C
Y1とする。反射光L2の中心が出荷時の光検出マスク62の貫通孔の縁と重なる位置である計算位置における反射光L2の領域を破線の円で示し、この円の半径(レンズ瞳20a上における反射光L2の半径)をrとし、反射光L2の中間点を点Aとする。点B及び点Cは、計算位置における反射光L2の外周(破線の円)とX軸ズレ後の光検出マスク62の貫通孔に対応する領域(実線の円)の交点であり、∠BACと∠BC
Y1Cの角度をそれぞれαとβとする。
【0112】
図16の網掛け領域OAは、実線の円と破線の円とが重なる領域であり、出荷時の光検出マスク62に対して計算位置にある反射光L2のうち、Y軸ズレ後の光検出マスク62を透過する領域を示している。この網掛け領域OAの面積を求めて反射光L2の全体の面積と比較することにより、透過比率を算出する。
【0113】
網掛け領域OAの面積をSpartとすると、Spart={(扇形BAC)-(三角形BAC)}+{(扇形BCX1C)-(三角形BCX1C)}となり、上記の式(4)と同様となる。
【0114】
また、余弦定理から下記の式が得られる。
【0115】
【数7】
上記の式を式(4)に代入して変形して、透過比率γ=S
part/S
All(S
Allは、反射光L2全体、すなわち、実線の円の面積)に代入すると、下記の式(9)が得られる。
【0116】
【数8】
上記のように、設計値であるrとRのみで透過比率γとY軸ズレ量ΔYの関係式を導出することができる。
【0117】
図17は、透過比率γとY軸ズレ量ΔYの関係を示すグラフであり、式(9)をグラフ化したものである。
図17では、r=500μm、R=1,000μmとする。
【0118】
Y軸ズレが発生していない場合、計算位置にある検出光の透過比率は、X軸ズレの
図15の例と同様に、約0.45となる。さらに、反射光L2の半径rを大きくした場合に、算出可能範囲が広がる点で、X軸ズレの場合と同じ傾向を示す。
【0119】
一方、X軸ズレの場合と異なる点は、Y軸ズレは算出可能範囲が同条件でも2倍ほど広く、また、光検出マスク62の貫通孔の半径Rを増減させることでも算出可能範囲が変化する点である。
【0120】
上記の通り、Y軸ズレの算出可能範囲を拡張したい場合には、光検出マスク62の貫通孔の半径Rを大きくするのが好ましい。しかしながら、光検出マスク62は亀裂測定において余分な成分(外乱)を除去する役割も持っている。「外乱除去」と「Y軸ズレ算出可能範囲」はトレードオフの関係にあり、適切なポイントを調査してから光検出マスク62の貫通孔の半径Rを設定する必要がある。なお、リレーレンズ52と54との間に、「外乱除去」のための視野絞りを配置して、光検出マスク62の貫通孔の半径Rの自由度を高めることも可能である。
【0121】
(第1及び第2の診断方法の比較)
上記の通り、第1の診断方法は、集光レンズ20のレンズ瞳20aの中心C20からの見込み角度θに基づく診断方法であり、第2の診断方法は、カメラ70で検出した反射光L2の透過比率γに基づく診断方法である。上記の各診断方法の説明では、検出側の光検出マスク62の位置ズレのシミュレーションを行ったが、検出光L1側(例えば、光源マスク14又は集光レンズ20等の上流側の光学素子)がずれた場合でも、X軸ズレ量及びY軸ズレ量を同様に計算することができる。
【0122】
次に、上記の2種類の診断方法についてどちらを実際の運用に採用することが好ましいかについて検討する。
【0123】
まず、X軸ズレ量及びY軸ズレ量を高い分解能で測定するためには、透過比率γに基づく第2の診断方法の方が適している。レンズ瞳20aの中心C20からの見込み角度θに基づく第1の診断方法の場合、モータM1の1パルス当たりの回転角度m(deg/パルス)が分解能に直接影響するため相対的に分解能は劣る。
【0124】
一方、第1の診断方法では、X軸とY軸で診断パラメータがそれぞれ異なるので、1回の測定でX軸とY軸の両方のズレ量を分離して計算することができる。すなわち、X軸ズレ量の診断で用いられるパラメータは、
図7右図のグラフのシフト量であり、Y軸ズレ量の診断で用いられるパラメータは、
図11右図のグラフの幅の変化であるため、分離して計算することができる。
【0125】
これに対して、透過比率γに基づく第2の診断方法における診断パラメータはX軸Y軸ともに透過比率γのみである。このため、X軸とY軸の両方の軸についてズレが発生した場合、どちらの軸がずれたのかを分離するのことが困難である。
【0126】
第2の診断方法において、どちらの軸がずれたのかを分離するためには、両軸ともズレ量0のときには透過比率γが
図15及び
図17で約0.45付近となるが、X軸のみ透過比率γが0.45を超えることができる点に着目し、X軸は透過比率γが0.45を超えるか超えないかでずれた方向を判断することが考えられる。例えば、先にX軸ズレ量の診断を行い、X軸ズレ量の診断結果をY軸診断にフィードバックしてY軸診断結果の補正をすることなどが考えられる。
【0127】
上記のように、第1及び第2の診断方法でそれぞれ利点と欠点があるが、X軸とY軸のズレ量の診断の観点からは、第1の診断方法ではX軸診断の方が広範囲に分解能良く測定が可能で、第2の診断方法ではY軸診断の方が広範囲に測定が可能となっている。つまり、X軸診断を第1の診断方法により行い、第1の診断方法によるX軸診断の結果をフィードバックしながら、第2の診断方法によりY軸診断を行うのが最善の運用と考えられる。
【0128】
また、第1の診断方法による診断の後に、第2の診断方法による診断を行って結果の二重チェックを行う方法も実用的と考えられる。
【0129】
[診断フロー]
図18は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置1の診断方法を示すフローチャートである。
【0130】
まず、制御部100によりアライメント機構24を制御して、被加工物Wと集光レンズ20のXY方向のアライメントを行う。そして、制御部100によりフォーカス調整機構22を制御して、被加工物Wの表面Waに集光レンズ20の集光点を合わせる(ステップS10)。
【0131】
次に、カメラ70におけるサチュレーションの発生を防止するために、光源12の出力を調整する(ステップS12)。上記の通り、亀裂検出装置1の診断の際には、亀裂検出に用いる裏面反射光よりも出力が高い表面反射光を用いるため、ステップS12では、光源12の出力を亀裂検出時よりも下げる。
【0132】
次に、出荷時のモータパルス数を基準として、出荷時の基準位置(
図7及び
図11の点線の円)に光源マスク14を移動させる。そして、制御部100からモータM1にパルス信号を入力して、出荷時の基準位置を基準として光源マスク14を回転させてマスク部14Bの貫通孔の位置を振ってスキャンを行う(ステップS14)。光軸ズレが発生している場合、出荷時のモータパルス数を基準として光源マスク14を移動させると、光源マスク14は、基準位置(
図7及び
図11の出荷時(点線の円)の位置)ではなく、X軸ズレ後又はY軸ズレ後の実線の円の位置に移動する。
【0133】
次に、ステップS14でスキャンにより取得したスキャン波形を取得し(ステップS16)、このスキャン波形に基づいてX軸ズレ量とY軸ズレ量を算出する(ステップS18)。第1の診断方法により軸ズレ量を算出する場合には、ステップS16において、
図7及び
図11の右図に示したスキャン波形(横軸がパルス数で縦軸がカメラ70による受光強度)のグラフを作成し、X軸ズレ量及びY軸ズレ量を算出する。ここで、スキャン波形のグラフを作成せずに数値演算によりX軸ズレ量及びY軸ズレ量を算出するようにしてもよい。
【0134】
なお、第2の診断方法を用いる場合には、
図15及び
図17に示すX軸ズレ量及びY軸ズレ量と透過比率γとの関係と透過比率γから、X軸ズレ量及びY軸ズレ量を算出する。
【0135】
次に、制御部100は、ステップS18で算出したX軸ズレ量及びY軸ズレ量を、あらかじめ設定した閾値と比較して、各ズレ量の評価を行う(ステップS20)。ここで、診断のための閾値は、亀裂検出装置1ごとに個別に設定される。具体的には、亀裂検出装置1の光学系をずらして亀裂測定への影響を事前に確認し、その許容度合からX軸ズレ量及びY軸ズレ量の閾値を設定する。
【0136】
ステップS20において、X軸ズレ量及びY軸ズレ量が両方とも閾値未満の場合には(ステップS20のOK)、診断を終了する。ここで、診断の終了時には、診断結果に異常がない旨を表示部に出力してもよい。一方、X軸ズレ量及びY軸ズレ量のうちの少なくとも一方が閾値以上の場合には(ステップS20のNG)、エラーメッセージを表示部に出力して、ユーザに異常を報知する。
【0137】
本実施形態によれば、被加工物Wに集光する検出光L1を移動させたときの反射光L2を利用することにより軸ズレ量の診断を容易に行うことができる。亀裂検出装置1はレーザ加工装置に搭載されることがあるが、亀裂検出装置1の状態を検査する際には、亀裂検出装置1の検査対象のハードウェアをレーザ加工装置から取り外し、検査のための専用ベンチに移す必要がある。このような検査対象のハードウェアの取り外し、専用ベンチへの移動及び取り付け並びに亀裂検出装置への再セッティングには膨大な工数がかかる。これに対して、本実施形態によれば、亀裂検出装置1の運用中に容易に診断を行うことができる。
【0138】
亀裂検出装置1において、経時変化又は経年劣化等に起因する誤差が生じると、被加工物の加工が不十分であるにも関わらず、加工が十分である(例えば、亀裂が十分に伸展している)と判定されてしまう可能性がある。この場合、後続のプロセスにおいて、例えば、チッピング、破損又は発塵等の割断の不具合が発生する場合がある。これに対して、本実施形態によれば、亀裂検出装置1の運用中に定期的に、装置自身が自己診断を行う運用が可能となる。このような定期的な自己診断を行うことにより、亀裂検出装置1の亀裂検出機構の寿命、すなわち、亀裂検出装置1による測定結果の正確性が損なわれるまでの期間を予測することが可能になり、割断の不具合の発生を未然に防ぐことが可能になる。
【0139】
また、従来は、亀裂検出装置1の内部のハードウェアの不具合(軸ズレ量等)を表す定量的な指標がなく、軸ズレの定量的な評価が困難であった。これに対して、本実施形態によれば、第1の診断方法における式(1)から式(3)と、第2の診断方法における式(8)及び式(9)を、亀裂検出装置1の内部のハードウェアの不具合(軸ズレ量等)を表す定量的な指標として用いることができる。
【0140】
[計測プロファイル]
図19は、実際のスキャン波形(測定波形)と軸ズレ量の計算結果を示す図である。
図19に示す測定波形のグラフの横軸はモータパルス数であり、縦軸はカメラ70による受光強度である。
【0141】
図19の左側のX軸ズレ量のグラフでは、実線のグラフが軸ズレなしの基準状態の波形である。この基準状態からマイクロメータを用いて光検出マスク62をそれぞれX方向に±100μmだけ意図的に軸ズレさせた結果が点線及び破線の波形である。
【0142】
図19の右側のY軸ズレ量のグラフでは、実線のグラフが軸ズレなしの基準状態の波形であり、この基準状態からマイクロメータを用いて光検出マスク62をそれぞれY方向に+300μmだけ意図的に軸ズレさせた結果が点線の波形である。
【0143】
図19の下の欄には、マイクロメータを用いて意図的に軸ズレさせた軸ズレ量と、第1及び第2の診断方法により計算した軸ズレ量が記載されている。なお、第2の診断方法により計算した軸ズレ量は、グラフのピーク(約8)を基準として、あるモータパルス数に対する出力の低下量に基づいて算出した値である。
【0144】
図19に示すように、X軸ズレ量が±100μmであるのに対して、第1の診断方法による計算結果は+121μm及び-141μmであり、第2の診断方法による計算結果は+78μm及び-98μmである。
【0145】
また、Y軸ズレ量が300μmであるのに対して、第1の診断方法による計算結果は295μmであり、第2の診断方法による計算結果は315μmである。
【0146】
上記の各診断方法に基づく計算結果と、マイクロメータを用いて意図的に軸ズレさせた軸ズレ量との関係から、本実施形態に係る診断方法の有効性を確認することができる。
【0147】
なお、上記の実施形態に係る診断方法は、亀裂検出装置1以外の装置、例えば、アフォーカル光学系を含むレーザ加工装置等の装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0148】
1…亀裂検出装置、10…光源部、12…光源、14…光源マスク、20…集光レンズ、22…フォーカス調整機構、24…アライメント機構、30…照明光学系、32、34…リレーレンズ、36…視野絞り、40…ハーフミラー、42…ダイクロイックミラー、50…検出光学系、52、54…リレーレンズ、60…光検出器、62…光検出マスク、100…制御部