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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121563
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】保護素子の製造方法及び保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20240830BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 29/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L29/86 301D
H01L29/90 Z
H01L29/48 D
H01L29/48 P
H01L29/86 301P
H01L29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028721
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藏 直樹
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA10
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB07
4M104BB08
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB18
4M104DD34
4M104DD37
4M104GG03
(57)【要約】
【課題】 所望の電気的特性の保護素子を容易に製造することができる保護素子の製造方法及び保護素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 保護素子の製造方法は、基板上に、第1面と、基板と対向し第1面と反対側に位置する第2面と、を有するDLC膜を形成する工程と、第1面にプラズマを照射することで、DLC膜に、第1面側に位置しプラズマが照射された第1領域と、第2面側に位置しプラズマが照射されていない第2領域とを形成する工程と、第1面にプラズマを照射する工程の後、DLC膜に電気的に接続される第1導電部を第1面に形成する工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1面と、前記基板と対向し前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有するDLC膜を形成する工程と、
前記第1面にプラズマを照射することで、前記DLC膜に、前記第1面側に位置しプラズマが照射された第1領域と、前記第2面側に位置しプラズマが照射されていない第2領域とを形成する工程と、
前記第1面にプラズマを照射する工程の後、前記DLC膜に電気的に接続される第1導電部を前記第1面に形成する工程と、を備える保護素子の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、導電性を有し、前記DLC膜と電気的に接続される請求項1に記載の保護素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1面にプラズマを照射する工程の後、前記第1面側から前記DLC膜の一部を除去し、前記第2領域を前記第1領域から露出させる工程と、
前記第1領域から露出された前記第2領域に第2導電部を形成する工程と、をさらに備える請求項1に記載の保護素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1面にプラズマを照射する工程において、プラズマ粒子のエネルギが0.1keV以上3keV以下のプラズマを照射する請求項1に記載の保護素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1面にプラズマを照射する工程において、窒素原子、フッ素原子、及び、塩素原子の少なくとも1つを含む気体のプラズマを照射する請求項1に記載の保護素子の製造方法。
【請求項6】
前記DLC膜を形成する工程において、真空の放電空間にガスを導入しないアーク放電により発生させた炭素イオンを利用した蒸着法により、前記基板上に炭素を積層することで前記DLC膜を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の保護素子の製造方法。
【請求項7】
前記DLC膜を形成する工程において、前記蒸着法におけるバイアス電圧を-1500V以上-10V以下とする請求項6に記載の保護素子の製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に配置され、第1領域と、前記第1領域よりも前記基板側に位置し、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第2領域と、を備えるDLC膜と、
前記第1領域の上に配置され、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第1導電部と、を備える保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保護素子の製造方法及び保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマ雰囲気化で基板上に炭素質膜を形成するショットキーダイオード用半導体の製造方法が開示されている。このようなショットキーダイオードなどの保護素子を製造するにあたり、所望の電気的特性の保護素子を容易に製造することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-170397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、所望の電気的特性の保護素子を容易に製造することができる保護素子の製造方法及び保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の保護素子の製造方法は、基板上に、第1面と、前記基板と対向し前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有するDLC膜を形成する工程と、前記第1面にプラズマを照射することで、前記DLC膜に、前記第1面側に位置しプラズマが照射された第1領域と、前記第2面側に位置しプラズマが照射されていない第2領域とを形成する工程と、前記第1面にプラズマを照射する工程の後、前記DLC膜に電気的に接続される第1導電部を前記第1面に形成する工程と、を備える。
本開示の一態様の保護素子は、基板と、前記基板上に設けられ、第1領域と、前記第1領域よりも前記基板側に位置し、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第2領域と、を備えるDLC膜と、前記第1領域の上に配置され、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第1導電部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、所望の電気的特性の保護素子を容易に製造することができる保護素子の製造方法及び保護素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における保護素子の製造方法の一工程を説明するための模式的な断面図である。
図2】実施形態における保護素子の製造方法の一工程を説明するための模式的な断面図である。
図3】実施形態における保護素子の製造方法の一工程を説明するための模式的な断面図である。
図4】実施形態の変形例における保護素子の製造方法の一工程を説明するための模式的な断面図である。
図5】実施形態の変形例における保護素子の製造方法の一工程を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。実施形態に記載されている構成部の寸法、材料、形状、相対的配置などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係などは、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「上(又は下)」と表現する位置関係は、例えば、2つの部材があると仮定した場合に、2つの部材が接している場合と、2つの部材が接しておらず一方の部材が他方の部材の上方(又は下方)に位置している場合を含む。
【0010】
図3を参照して、実施形態における保護素子について説明する。図3に示すように、保護素子5は、基板1と、DLC膜2と、第1導電部3と、を少なくとも備える。
【0011】
基板1として、導電性の基板を用いることができ、例えば、シリコン基板、窒化ガリウム基板、ゲルマニウム基板、モリブデン基板、アルミニウム基板、銅―タングステン基板などを用いることができる。基板1を導電性の基板とすることで、基板1を保護素子5のカソード電極として用いることができる。
【0012】
DLC(Diamond Like Carbon)膜2は、基板1上に配置される。DLC膜2は、基板1と接していることが好ましい。DLC膜2は、例えば、基板1と電気的に接続する。DLC膜2は、sp3混成軌道の炭素とsp2混成軌道の炭素とを含むアモルファス構造を有する。DLC膜2は、sp3混成軌道の炭素に起因するダイヤモンドの特性と、sp2混成軌道の炭素に起因するグラファイトの特性とを有する。例えば、DLC膜2のsp2混成軌道の比率を40%以上とすることで、DLC膜2の導電性を高くすることができる。DLC膜2の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下とすることができる。後述する方法により形成されるDLC膜2の水素組成比は、例えば1%以下である。
【0013】
DLC膜2は、第1領域21と第2領域22を有する。第1領域21は、第2領域22よりも基板1から離れて位置する。第2領域22は、第1領域21よりも基板1側に位置する。第2領域22の仕事関数は、第1領域21の仕事関数よりも大きい。第1領域21の仕事関数は、例えば、0.15eV以上3.81eV以下である。第2領域22の仕事関数は、例えば、5.0eV以上5.2eV以下である。
【0014】
第1導電部3は、第1領域21の上に配置される。第1導電部3は、第1領域21と接していることが好ましい。第1導電部3は、保護素子5のアノード電極である。第1導電部3の仕事関数は、第1領域21の仕事関数よりも大きい。第1導電部3の仕事関数は、例えば、4.0eV以上5.0eV以下である。第1導電部3の材料としては、例えば、Al、Ti、W、Mo、Cr、Ni、Ru、Rh、Pt、Pd、Ag、Fe、Cuなどが挙げられ、なかでもDLC膜2との密着性が良好である、Cr、Mo、Ti、Wを含むことが好ましい。
【0015】
保護素子5において、上述したように、第1導電部3の仕事関数は、第1領域21の仕事関数よりも大きい。従って、第1領域21における第1導電部3の近傍にショットキー障壁が形成されると考えられる。その結果、保護素子5は、逆方向に電圧を印加した場合には第1導電部3から第1領域21への電子の移動がショットキー障壁によって阻害され電流は流れにくく、順方向に電圧を印加した場合に電流が流れるダイオード特性を示す。
【0016】
保護素子5は、上述したように、第2領域22の仕事関数が第1領域21の仕事関数よりも大きいDLC膜2を備える。例えば、第2領域22を含まず第1領域21のみからなるDLC膜2を備える保護素子である場合、順方向に電圧が印加されたときに、基板1等のカソード電極から第1領域21へ直接電子が供給されるため、第1領域21の電子濃度が過剰になりやすい。その結果、電子が、第1領域21の第1導電部3近傍に形成されるショットキー障壁を量子トンネル効果で通過し、逆電流の発生や負性抵抗の発生が懸念される。本実施形態の保護素子5は、第1領域21と第2領域22とを備えるDLC膜2を含むため、カソード電極から第1領域21に直接供給される電子量が第2領域22により低減され、量子トンネル効果による逆電流や負性抵抗が発生しにくい優れた整流作用を有する保護素子とすることができる。
【0017】
図1図3を参照して、実施形態における保護素子の製造方法について説明する。
【0018】
まず、図1を参照し、基板1上に、第1面2aと、基板1と対向し第1面2aと反対側に位置する第2面2bと、を有するDLC膜2を形成する工程を説明する。
【0019】
基板1を準備する。基板1には、例えば、上述した導電性の基板を用いることができる。
【0020】
基板1を準備した後、基板1上にDLC膜2を形成する。DLC膜2は、真空の放電空間にガスを導入しないアーク放電により発生させた炭素イオンを利用した蒸着法により、基板1上に炭素を積層することで形成することができる。例えば、DLC膜2は、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法により形成される。例えば、5×10-5Torr以下、好ましくは2×10-5Torr以下の真空度の真空中に配置した炭素材料(例えば、グラファイトのインゴット)上でアーク放電を起こして、陽イオン化した炭素を含むプラズマを発生させる。炭素イオンは、マイナスのバイアス電圧が印加された基板1に向けて真空チャンバー内を誘導され、基板1に衝突する。これにより、基板1上にDLC膜2が形成される。真空の放電空間にガスを導入しないアーク放電により発生させた炭素イオンを利用することで、水素をほとんど含まないDLC膜2を形成することができる。DLC膜2における水素組成比は、1%以下である。水素をほとんど含まないDLC膜2には、水素で終端されない未結合手が多く存在する。このようなDLC膜2を形成した後、後述するDLC膜2にプラズマを照射する工程を行うことにより、未結合手への分子または原子を結合させやすくし、第1領域21における第1導電部3の近傍にショットキー障壁を形成することができる。
【0021】
真空の放電空間にガスを導入しないアーク放電により発生させた炭素イオンを利用した蒸着法において、基板1に印加されるバイアス電圧は、-1500V以上-10V以下が好ましく、-1500V以上-800V以下がより好ましく、-1500V以上-1000V以下がさらに好ましい。バイアス電圧の値をこのような範囲にすることで、高い導電性のDLC膜2を形成することができる。
【0022】
次に、図2を参照し、第1面2aにプラズマを照射することで、DLC膜2に、第1面2a側に位置しプラズマが照射された第1領域21と、第2面2b側に位置しプラズマが照射されていない第2領域22とを形成する工程を説明する。
【0023】
基板1上にDLC膜2を形成した後、DLC膜2の第1面2a側からプラズマを照射することで、DLC膜2に、プラズマが照射された第1領域21と、プラズマが照射されていない第2領域22とを形成する。DLC膜2にプラズマを照射する方法としては、例えば、基板1及びDLC膜2を配置した空間内に気体を導入し、空間内に配置したプラズマ生成用の電極にRF電圧、直流電圧、パルス電圧などを印加する方法が挙げられる。DLC膜2のうちプラズマが照射された第1領域21においては、DLC膜2に含まれる未結合手に分子または原子が結合する。DLC膜2に他の分子または原子が結合することでDLC膜2の仕事関数が低下する。例えば、FCVA法により形成したDLC膜2の仕事関数は5.0eV以上5.2eV以下であるが、DLC膜2にプラズマを照射し、DLC膜2に含まれる未結合手に窒素原子を結合させることで仕事関数を、例えば、0.15eV以上3.81eV以下に低下させることができる。
【0024】
第2領域22はプラズマが照射されていない領域であるため、第2領域22の仕事関数はプラズマが照射された第1領域21の仕事関数よりも高い。第2領域22の仕事関数は、例えば、5.0eV以上5.2eV以下である。
【0025】
プラズマを照射する工程において、基板1及びDLC膜2を配置した空間内に導入する気体は、例えば、N、NHなどの窒素を含む気体、F、CF、CHF、SF、SF、SF、C、C、Cなどのフッ素を含む気体、Cl、HCl、BCl、SiCl、CClなどの塩素を含む気体が挙げられる。プラズマを照射する工程において、基板1及びDLC膜2を配置した空間内に導入する気体を、窒素を含む気体とすることで、第1領域21を炭素原子の一部に窒素原子が結合した状態にすることができる。プラズマ照射の際に、基板1及びDLC膜2を配置した空間内に導入する気体を、フッ素を含む気体とすることで、第1領域21を炭素原子の一部にフッ素原子が結合した状態にすることができる。プラズマ照射の際に、基板1及びDLC膜2を配置した空間内に導入する気体を、塩素を含む気体とすることで、第1領域21を炭素原子の一部に塩素原子が結合した状態にすることができる。第1領域21の炭素原子の一部に窒素原子、フッ素原子、塩素原子などが結合した状態にすることで、上述したように第1領域21の仕事関数を第2領域22の仕事関数よりも低くすることができる。DLC膜2に照射するプラズマ粒子のエネルギは、0.1keV以上3keV以下が好ましく、1keV以上1.5keV以下がさらに好ましい。プラズマ粒子のエネルギの値をこのような範囲とすることで、DLC膜2に第1領域21を形成しつつ、プラズマ照射による影響を受けていない第2領域22を形成しやすい。DLC膜2にプラズマを照射する時間は、例えば、30秒以上20分以下とすることができる。
【0026】
次に、図3を参照し、DLC膜2に電気的に接続される第1導電部3を第1面2aに形成する工程を説明する。
【0027】
DLC膜2に第1領域21を形成した後、第1領域21の表面である第1面2aに第1導電部3を形成する。第1導電部3は、例えば、スパッタリング法や蒸着法などによって形成することができる。上述したように、第1導電部3に、第1領域21よりも仕事関数の高い金属を用いることで、第1領域21における第1導電部3の近傍にショットキー障壁を形成することができる。
【0028】
上述したように、本実施形態の製造方法は、第1面2aにプラズマを照射することで、DLC膜2に、第1面2a側に位置しプラズマが照射された第1領域21と、第2面2b側に位置しプラズマが照射されていない第2領域22とを形成する工程を有する。これにより、DLC膜2に、プラズマを照射する前のDLC膜2の仕事関数よりも仕事関数が低下した第1領域21と、仕事関数が維持された第2領域22を容易に形成することができる。そして、第1領域21上に第1導電部3を形成することで、逆方向に電圧を印加しても第1導電部3から第1領域21への電子の移動がショットキー障壁によって阻害されることで電流は流れにくく、順方向に電圧を印加すると電流が流れるダイオード特性を示す保護素子5を容易に製造することができる。また、第2領域22が形成されていることにより、基板1等のカソード電極から第1領域21へ直接供給される電子量が低減され、量子トンネル効果による逆電流や負性抵抗が発生しにくい優れた整流作用を有する保護素子とすることができる。
【0029】
実施形態において、プラズマの照射条件を適宜選択することで、所望の電気的特性を有する保護素子を製造することができる。例えば、高い逆電圧が印加されても電流の流れにくい電気的特性の保護素子を製造する場合、プラズマ照射時間を長く、あるいはバイアス電圧を低くすることで優れた整流作用を有する保護素子を得ることができる。また、例えば、低電圧駆動が可能な保護素子を製造する場合、プラズマ照射時間を短く、あるいはバイアス電圧を高くすることで、低電圧駆動が可能な保護素子を得ることができる。このように、プラズマの照射条件を適宜変更することで、所望の電気的特性の保護素子を容易に製造することができる。
【0030】
実施形態において、基板1上にDLC膜2を形成した後、複数の第1導電部3を第1領域21の第1面2aに形成し、隣り合う第1導電部3の間で基板1を割断することで、複数の保護素子5に個片化してもよい。以上説明した製造方法により、保護素子5を製造することができる。
【0031】
続いて、図5を参照し、実施形態の変形例である保護素子6について説明する。保護素子6は、基板1と、DLC膜2と、第1導電部3と、第2導電部4と、を少なくとも備える。保護素子6は、基板1が絶縁性である点、第1領域21から露出した第2領域22上に第2導電部4が配置される点が、上述した保護素子5と主に異なる。以下、実施形態の変形例である保護素子6の構成において、上述した保護素子5の構成と相違する点について説明する。
【0032】
保護素子6において、基板1は、絶縁性の基板を用いることができ、例えば、石英基板、ガラス基板、サファイア基板、ガドリニウムガリウムガーネット基板、ダイヤモンド基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板、樹脂製基板などを用いることができる。
【0033】
また、DLC膜2において、第2領域22の一部が第1領域21から露出している。第2導電部4は、第1領域21から露出した第2領域22の上に配置される。第2導電部4は、第2領域22と接していることが好ましい。第2導電部4は、保護素子6のカソード電極である。第2導電部4の材料としては、上述した第1導電部3と同様の材料を用いることができる。
【0034】
保護素子6は、絶縁性の基板1と、第1領域21に電気的に接続される第1導電部3と、第2領域22に電気的に接続される第2導電部4とを有している。これにより、保護素子6を導電性の支持基板等の上に配置する場合に、保護素子6と支持基板との間に別途絶縁性部材を配置せずに、保護素子6を駆動させることができる。
【0035】
続いて、図4及び図5を参照し、実施形態における保護素子の製造方法の変形例を説明する。実施形態における製造方法の変形例は、上述した実施形態における製造方法と、図2に示すプラズマを照射する工程の後に行う工程が主に異なる。具体的には、実施形態における製造方法の変形例は、図2に示すDLC膜2の第1面2a側からプラズマを照射する工程の後、第1面2a側からDLC膜2の一部を除去し、第2領域22を第1領域21から露出させる工程と、第1領域21から露出された第2領域22に第2導電部4を形成する工程とを備える。
【0036】
図2に示すDLC膜2にプラズマを照射する工程の後、図4に示すように、第1面2a側からDLC膜2の一部を除去し、第1領域21から第2領域22を露出させる。DLC膜2の除去は、例えば、酸素プラズマをDLC膜2に照射することで行うことができる。
【0037】
第1面2a側からDLC膜2の一部を除去し、第1領域21から第2領域22を露出させた後、図5に示すように、第1領域21から露出された第2領域22に第2導電部4を形成する。第2導電部4は、例えば、スパッタリング法や蒸着法などによって形成することができる。また、第2導電部4は、上述した第1導電部3を形成する工程と同じ工程で形成することができる。
【0038】
続いて、実施例について説明する。基板1としてSi基板を用い、基板1上に、FCVA法によりDLC膜2を形成した。FCVA法において、バイアス電圧を-1200Vとし、真空度を2×10-5Torrとした。DLC膜2の膜厚は、60nmとなるように形成した。その後、DLC膜2に窒素を含むプラズマを照射し、DLC膜2に第1領域21を形成した。窒素を含むプラズマの照射条件は、バイアス電圧を-1300V、照射時間を5分間とした。その後、第1領域21上に第1導電部3として、Crを含む金属層を形成した。上記工程を行うことにより実施例にかかる保護素子を製造した。
【0039】
その後、カーブトレーサー(光洋電子工業製TCT-2005)を使用して保護素子のIV特性の測定を行った。IV特性の測定の結果、実施例にかかる保護素子は、順方向電圧を印加すると順方向に電流が流れ、逆方向電圧印加時には電流が流れにくいダイオード特性を示すことが確認できた。
【0040】
実施形態における保護素子は、例えば、発光ダイオード、レーザダイオード、LSIなどの半導体の保護素子として用いることができる。
【0041】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【0042】
本発明の実施形態は、以下の保護素子の製造方法及び保護素子を含む。
【0043】
[項1]
基板上に、第1面と、前記基板と対向し前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有するDLC膜を形成する工程と、
前記第1面にプラズマを照射することで、前記DLC膜に、前記第1面側に位置しプラズマが照射された第1領域と、前記第2面側に位置しプラズマが照射されていない第2領域とを形成する工程と、
前記第1面にプラズマを照射する工程の後、前記DLC膜に電気的に接続される第1導電部を前記第1面に形成する工程と、を備える保護素子の製造方法。
[項2]
前記基板は、導電性を有し、前記DLC膜と電気的に接続される上記項1に記載の保護素子の製造方法。
[項3]
前記第1面にプラズマを照射する工程の後、前記第1面側から前記DLC膜の一部を除去し、前記第1領域から前記第2領域を露出させる工程と、
前記第1領域から露出された前記第2領域に第2導電部を形成する工程と、をさらに備える上記項1又は項2に記載の保護素子の製造方法。
[項4]
前記第1面にプラズマを照射する工程において、プラズマ粒子のエネルギが0.1keV以上3keV以下のプラズマを照射する上記項1~3のいずれか1つに記載の保護素子の製造方法。
[項5]
前記第1面にプラズマを照射する工程において、窒素原子、フッ素原子、及び、塩素原子の少なくとも1つを含む気体のプラズマを照射する上記項1~4のいずれか1つに記載の保護素子の製造方法。
[項6]
前記DLC膜を形成する工程において、真空の放電空間にガスを導入しないアーク放電により発生させた炭素イオンを利用した蒸着法により、前記基板上に炭素を積層することで前記DLC膜を形成する、上記項1~5のいずれか1つに記載の保護素子の製造方法。
[項7]
前記DLC膜を形成する工程において、前記蒸着法におけるバイアス電圧を-1500V以上-10V以下とする上記項6に記載の保護素子の製造方法。
[項8]
基板と、
前記基板上に配置され、第1領域と、前記第1領域よりも前記基板側に位置し、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第2領域と、を備えるDLC膜と、
前記第1領域の上に配置され、前記第1領域の仕事関数よりも大きい仕事関数を有する第1導電部と、を備える保護素子。
【符号の説明】
【0044】
1…基板、2…DLC膜、21…第1領域、22…第2領域、2a…第1面、2b…第2面、3…第1導電部、4…第2導電部、5…保護素子、6…保護素子
図1
図2
図3
図4
図5