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特開2024-121571SQUIDセンサロッド及びSQUIDセンサ素子の取付方法
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  • 特開-SQUIDセンサロッド及びSQUIDセンサ素子の取付方法 図1
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  • 特開-SQUIDセンサロッド及びSQUIDセンサ素子の取付方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121571
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】SQUIDセンサロッド及びSQUIDセンサ素子の取付方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/035 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
G01R33/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028734
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】河合 淳
(72)【発明者】
【氏名】小田 啓邦
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA08
2G017AC06
2G017AD33
(57)【要約】
【課題】SQUIDセンサロッドの先端に設けられるSQUIDセンサ素子の端子に対して、SQUIDセンサ素子と測定対象のサンプルとの間の距離が端子とワイヤーを接続するための接続部材により遠ざかることを抑制できるSQUIDセンサロッドを提供する。
【解決手段】SQUIDセンサロッドは、端子を有するSQUIDセンサ素子と、SQUIDセンサ素子を先端に備える柱状の支持部材と、端子に対してワイヤボンディングにより一端が接続されたワイヤーと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有するSQUIDセンサ素子と、
前記SQUIDセンサ素子を先端に備える柱状の支持部材と、
前記端子に対してワイヤボンディングにより一端が接続されているワイヤーと、
を備えるSQUIDセンサロッド。
【請求項2】
前記支持部材の前記先端側は、テーパー状に形成されたテーパー部を備え、
前記テーパー部は、前記ワイヤーを添わせ、前記先端側から他端側に向けて延伸する溝部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項3】
前記ワイヤーは、前記溝部に対して導電性ペーストにより固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記先端側を有し、前記先端側とは他端側に第1接続部を有する第1支持部材と、
前記第1接続部と接続する第2接続部を有する第2支持部材とを備え、
前記第1支持部材は、前記第2支持部材に対して着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項5】
前記ワイヤーの他端は、前記テーパー部の前記先端側と逆側で前記支持部材に接続される
ことを特徴とする請求項2に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項6】
前記ワイヤーの他端は、更に、他のワイヤーに接続される
ことを特徴とする請求項5に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項7】
前記他のワイヤーは、金線である
ことを特徴とする請求項6に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項8】
前記ワイヤーは、アルミニウム線である
ことを特徴とする請求項7に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項9】
前記支持部材は、サファイアロッドである
ことを特徴とする請求項1に記載のSQUIDセンサロッド。
【請求項10】
SQUIDセンサロッドに対して、SQUIDセンサ素子の取り付け方法であって、
前記SQUIDセンサロッドの先端に、前記SQUIDセンサ素子を載置する載置ステップと、
前記SQUIDセンサ素子に設けられた端子に対して、ワイヤーをボンディングにより接続する接続ステップと、を含む
SQUIDセンサ素子の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、SQUID顕微鏡に用いられるSQUIDセンサロッド及びSQUIDセンサ素子のSQUIDセンサロッドに対する取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SQUID顕微鏡においては、SQUIDセンサロッド(サファイアロッド)の先端にSQUIDセンサ素子を搭載し、対象のサンプルの磁力を検出する。このSQUIDセンサ素子と対象のサンプル間の距離は、相対的に近い方が好ましいとされる。特許文献1には、SQUIDセンサ素子と対象のサンプル間の距離を調整できるSQUID顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-014541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、SQUIDセンサ素子は検知した磁力を示す信号を伝送する端子を備え、当該信号を伝達するワイヤーと当該端子は、導電性ペーストにより接続される。しかしながら、導電性ペーストによる接続は、導電性ペーストとしての性質上、否応なく盛り上がりが発生する場合がある。そのような場合には、当該盛り上がりにより、SQUIDセンサ素子と、対象のサンプルとの間の距離が相対的に遠くなる可能性が指摘されている。また、導電性ペーストを用いた場合には、SQUIDセンサ素子の端子における接触抵抗が安定しないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、SQUIDセンサ素子の端子を接続するにあたって、導電性ペーストにより、SQUIDセンサ素子と、対象のサンプルとの間の距離が遠くならないように構成されたSQUIDセンサロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に係るSQUIDセンサロッドは、端子を有するSQUIDセンサ素子と、SQUIDセンサ素子を先端に備える柱状の支持部材と、端子に対してワイヤボンディングにより一端が接続されているワイヤーと、を備える。
【0007】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、支持部材の先端側は、テーパー状に形成されたテーパー部を備え、テーパー部は、ワイヤーを添わせ、先端側から他端側に向けて延伸する溝部を備えることとしてもよい。
【0008】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、ワイヤーは、溝部に対して導電性ペーストにより固定されていることとしてもよい。
【0009】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、支持部材は、先端側を有し、先端側とは他端側に第1接続部を有する第1支持部材と、第1接続部と接続する第2接続部を有する第2支持部材とを備え、第1支持部材は、第2支持部材に対して着脱自在に構成されていることとしてもよい。
【0010】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、ワイヤーの他端は、テーパー部の先端側と逆側で支持部材に接続されることとしてもよい。
【0011】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、ワイヤーの他端は、更に、他のワイヤーに接続されることとしてもよい。
【0012】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、他のワイヤーは、金線であることとしてもよい。
【0013】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、ワイヤーは、アルミニウム線であることとしてもよい。
【0014】
また、上記SQUIDセンサロッドにおいて、支持部材は、サファイアロッドであることとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一実施態様に係るSQUIDセンサロッドに対して、SQUIDセンサ素子を取り付ける取り付け方法は、SQUIDセンサロッドの先端に、前記SQUIDセンサ素子を載置する載置ステップと、SQUIDセンサ素子に設けられた端子に対して、ワイヤーをボンディングにより接続する接続ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るSQUIDセンサロッドにおいては、SQUIDセンサ素子の端子との接続において導電性ペーストを用いず、ワイヤボンディングにより接続するので、導電性ペーストが盛り上がり、その結果、SQUIDセンサ素子と、対象のサンプルとの間の距離が遠ざかることはなく、SQUIDセンサ素子をより対象のサンプルに近い位置に配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】SQUID顕微鏡の構成例を示す模式図である。
図2】(a)SQUIDセンサロッドの側面図である。(b)SQUIDセンサロッドの断面図である。(c)SQUIDセンサロッドの分解断面図である。
図3】(a)SQUIDセンサ素子を取り付けていない状態のSQUIDセンサロッドの先端部である。 (b)SQUIDセンサ素子を取り付けた状態のSQUIDセンサロッドの先端部である。
図4】SQUIDセンサロッドの先端部を先端側から見た図である。
図5】SQUIDセンサロッドとサンプルとの関係を示す拡大図である。
図6】SQUIDセンサロッドに対する従来のSQUIDセンサ素子の取付例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施の形態>
<構成>
以下、実施の形態に係るSQUIDセンサロッドについて、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
図1は、SQUIDセンサロッドを用いるSQUID顕微鏡の一構成例を示すものである。まずは、SQUID顕微鏡1について簡単に説明する。
【0020】
図1に示すように、SQUID顕微鏡1は、SQUIDセンサ素子100と、SQUIDセンサ素子100を支持するための支持部材10と、SQUIDセンサ素子100を冷却するための冷却装置3a,3b,4と、SQUIDセンサ素子100や支持部材10を真空断熱するための真空容器3c,5とを備える。SQUID顕微鏡1は、SQUIDセンサ素子100に対向する位置の真空容器5の部分に設けた磁気検出部6の近傍の真空容器5外に置かれた試料の磁気をSQUIDセンサ素子100で検出するSQUID顕微鏡であって、SQUIDセンサ素子100を真空容器5の外に近づけたり遠ざけたりする方向に支持部材10が動き得るように弾性的に支持部材10を保持する弾性保持部材7と、SQUIDセンサ素子100を挟んで磁気検出部6(サファイア窓と呼称されてもよい)と反対側の真空容器3c外に且つSQUIDセンサ素子100を真空容器5の外に近づけたり遠ざけたりする方向にスピンドル8aが移動する姿勢で設置したディプスマイクロメータ8と、ディプスマイクロメータ8のスピンドル8aの移動を弾性保持部材7を介して支持部材10に伝えるためのシャフト9とを設けた構成をとることとしてよい。SQUID顕微鏡1は、SQUIDセンサ素子100により検出される試料の磁気を検出する。冷却装置は、一般的には、クライオスタットと呼称され、クライオスタット3は、外槽3cとその内部に設けられた内槽3bと、内槽3bに封入された液体ヘリウムにより実現される。SQUIDセンサロッド10は、銅ロッド14により保持される。当該銅ロッド14は、クライオスタット3内の熱伝導用銅線4と接続されて、冷却される。
【0021】
なお、図1には、特許文献1に示すSQUID顕微鏡と同様のものでありSQUIDセンサロッドとサンプルとの間の距離を調整可能に構成されたSQUID顕微鏡の例を示しているが、SQUID顕微鏡1は、当該構成のように、SQUIDセンサロッドと対象のサンプルとの間の距離を調整可能に構成されなくてもよい。
【0022】
支持部材10は、SQUIDセンサ素子100を支持する部材であり、SQUIDセンサロッド、サファイアロッドなどと呼称される。本明細書において、以降では、SQUIDセンサロッド10と記載する。
【0023】
図2(a)は、SQUIDセンサロッド10の側面図である。図2(b)は、図2(a)に示すSQUIDセンサロッド10の縦断面図である。図2(b)に示すように、SQUIDセンサロッド10は、第1SQUIDセンサロッド11と、第2SQUIDセンサロッド12と、が連結されて成る。図2(a)に示されるようにSQUIDセンサロッド10(第1SQUIDセンサロッド11)の先端部は、テーパー状(円錐状)に形成され、その頂点に磁気を検出するためのSQUIDセンサ素子100が設けられる。詳細は後述するが、SQUIDセンサ素子100には複数の端子が備えられ、当該端子には、SQUIDセンサロッドのテーパー状に形成されている部分(テーパー部)に沿って導電性ペーストに埋め込まれているワイヤーがワイヤーボンディングされており、接続部20a~20dに接続される。また、接続部20a~20dには、導電線21a~21dが接続され、SQUID信号線15に接続される。
【0024】
第1SQUIDセンサロッド11は、図2(c)に示されるように、第2SQUIDセンサロッド12から分離可能に構成される。図2(c)は、第2SQUIDセンサロッド12から第1SQUIDセンサロッド11を分離した状態を示す断面図である。図2(b)、図2(c)に示すように、第1SQUIDセンサロッド11は、第2SQUIDセンサロッド12に対して着脱自在に構成される。図2(b)に示す例では、第2SQUIDセンサロッド12を第1SQUIDセンサロッド11にねじ止めしている例を示しているが、第1SQUIDセンサロッド11が第2SQUIDセンサロッド12に嵌合している際に、第1SQUIDセンサロッド11が、自然に第2SQUIDセンサロッド12から外れなければ、どのような態様によって接続できてもよい。例えば、第1SQUIDセンサロッド11と第2SQUIDセンサロッド12とを、図2(b)の左右方向に貫通する貫通孔を設け、当該貫通孔に貫通部材を通して、第1SQUIDセンサロッド11と第2SQUIDセンサロッド12とを、接続できるように構成してもよい。第2SQUIDセンサロッド12が、第1SQUIDセンサロッド11に対して着脱自在に構成されていることで、仮に、第2SQUIDセンサロッド12の先端に取り付けられているSQUIDセンサ素子100が故障したり、SQUIDセンサ素子100の端子と、接続線の接続不良が発生したりしたとしても、第1SQUIDセンサロッド11を第2SQUIDセンサロッド12から取り外すことで、SQUIDセンサ素子100の交換、あるいは、SQUIDセンサ素子100の端子に接続されるワイヤーが断線した場合でも、その再接続を容易にすることができる。
【0025】
図3は、SQUIDセンサロッドの先端部、即ち、第1SQUIDセンサロッド11の先端部を示す斜視図である。図3(a)は、SQUIDセンサ素子を取り付けていない状態のSQUIDセンサロッドを示しており、図3(b)は、SQUIDセンサ素子100を取り付けている状態のSQUIDセンサロッドを示している。
【0026】
図3(a)に示すように第1SQUIDセンサロッド11の先端部には、SQUIDセンサ素子100を載置するためのザグリ部12eが設けられる。ザグリ部12eは、SQUIDセンサロッド12の先端部を掘削することで形成することとしてよい。ザグリ部12eは、SQUIDセンサ素子100を載置するに足る大きさ及び深さがあればよい。
【0027】
第1SQUIDセンサロッド11の先端部は約1.2mmの直径となっており、SQUIDセンサ素子100は、それよりも小さい。SQUIDセンサ素子100は、平板状に基板であり、その大きさは、0.75mm×0.75mmとしてよい。したがって、ザグリ部12eは、それよりも大きめの0.8mm×0.8mmの大きさとしてよいが、この大きさに限定するものではない。
【0028】
また、第1SQUIDセンサロッド11のテーパー部には、ザグリ部12eから、互いの間隔が同程度になるように掘削された溝部12a~12dが設けられる。当該溝部12a~12dは、図3(b)に示すように導電性ペースト13a~13dにより埋められる。そして、各導電性ペースト13a~13dは、SQUIDセンサ素子100の各端子に接続されているワイヤーと接続する。より具体的には、各端子に接続されたワイヤーを、各端子に対応するように設けられた各溝部に這わせ、その上から導電性ペーストを流し込む。これにより、SQUIDセンサ素子100の各端子と、その接続先のSQUID駆動用電子回路との接続を実現する。
【0029】
なお、テーパー部は、SQUIDセンサ素子100と、測定対象のサンプルとの間には位置しないので、ここでは、導電性ペーストを用いてもSQUIDセンサ素子100による測定を阻害する要因とはならない。
【0030】
各ワイヤーは、テーパー部と円柱部との境目付近で、他の導電線と接続されてよい。例えば、図2(a)に示されるように、導電性ペースト内のワイヤー141a~141d、142a~142dは、導電線21a~21d(21cは図2(a)の図面裏側に存在するため図示せず)と接続部20a~20d(20cは図2(a)の図面裏側に存在するため図示せず)を介してはんだ付け等により接続されてよい。導電線21a~21dは、導電性の金属線であればどのようなものであってもよいが、ここでは、直径0.1~0.3mmの金線を用いることとする。図2(a)に示す例では、導電線21a~21dは、見やすくするために第2SQUIDセンサロッド12の表面から離した例を示しているが、各導電線21a~21dは、SQUIDセンサロッド10の表面に長尺方向に延伸するようにプリントされて形成されてもよい。導電線21a~21dは、図1におけるSQUID信号線15と接続され、SQUIDセンサ素子100により測定された磁気信号が伝達される。
【0031】
図4は、SQUIDセンサロッド10を、先端側から見た場合の正面図であって、SQUIDセンサ素子100が取り付けられている状態を示している。図4に示すように、SQUIDセンサ素子100には、4つの端子101a~101dが設けられている。従来においては、当該端子は直接導電性ペーストでサファイアロッド上の端子に接続されていた。これに対して、本実施例に係るSQUIDセンサロッド10においては、4つの端子101a~101dそれぞれに対して、ワイヤー141a~141d、142a~142dをワイヤーボンディング151a~151d、152a~152dにより接続する。
【0032】
具体的には、図4に示されるように、端子101aに対しては、ワイヤー141aがワイヤーボンディング151aにより接続され、ワイヤー142aがワイヤーボンディング152aにより接続されている。なお、ここでは、端子に対して2本のワイヤーをワイヤーボンディングした例を示しているが、SQUIDセンサ素子100の端子に接続するワイヤーの本数は2本に限定するものではなく、1本でもよいし、3本以上であってもよい。そして、ワイヤー141a、142aは、溝部12aにおいて、溝部12aを埋める導電性ペースト13aと接続する。同様に、端子101bに対しては、ワイヤー141bがワイヤーボンディング151bにより接続され、ワイヤー142bがワイヤーボンディング152bにより接続されている。そして、ワイヤー141b、142bは、溝部12bにおいて、溝部12bを埋める導電性ペースト13bと接続する。また、端子101cに対しては、ワイヤー141cがワイヤーボンディング151cにより接続され、ワイヤー142cがワイヤーボンディング152cにより接続されている。そして、ワイヤー141c、142cは、溝部12cにおいて、溝部12cを埋める導電性ペースト13cと接続する。端子101dに対しては、ワイヤー141dがワイヤーボンディング151dにより接続され、ワイヤー142dがワイヤーボンディング152dにより接続されている。そして、ワイヤー141d、142dは、溝部12dにおいて、溝部12dを埋める導電性ペースト13dと接続する。
【0033】
各ワイヤー141a~141d、142a~142dは、それぞれ、直径0.025mm程度のアルミニウム線であってよいが、各ワイヤーは、導電性があり、所定の細さを担保できるのであれば、他の素材、他の直径のものであってもよい。なお、ワイヤーボンディングの大きさ(高さは)ワイヤーの細さに依存するため、ワイヤーはある程度細いことが望ましい。直径0.025mmのアルミニウム線の場合、ワイヤーボンディングとしての高さも0.025mm程度にとどまる。一方で、ワイヤーボンディングではなく導電性ペーストを利用する場合には、その高さはすくなくとも0.1mmにはなる。
【0034】
図5は、SQUIDセンサロッド10(第1SQUIDセンサロッド11)の側面から見た側面拡大図である。
【0035】
図5に示されるように、第1SQUIDセンサロッド11の先端にSQUIDセンサ素子100が設けられる。図4を用いて説明したように、SQUIDセンサ素子100は、第1SQUIDセンサロッド11の先端部のザグリ部12eに載置される。
【0036】
図5に示されるように、SQUIDセンサ素子100は、磁気を測定する対象となる試料Xに対して窓を介して正対して、試料Xの磁気を測定する。このとき、SQUIDセンサ素子100と、試料Xとの間の距離をdとした場合に、距離dは相対的に短い方が好ましい。従来の導電性ペーストを用いてSQUIDセンサロッドの先端にSQUIDセンサ素子を取り付ける構成の場合、この距離dは、短くとも、0.2mm程度が限度であった。本実施形態に係るSQUIDセンサロッドであれば、この距離dを0.2mmよりも短縮し得る。具体的には、一例として、発明者らは、本実施形態に係るSQUIDセンサロッドを作製し、当該距離dを0.2mmから0.187mmへの短縮に成功している。計測する試料の磁気信号は、距離の3乗のオーダーで変化するため、この距離の改善により、試料の磁気信号の測定の精度を大きく向上させることができる。
【0037】
図6は、SQUIDセンサ素子100をSQUIDセンサロッドに接続する際に、導電性ペーストを用いる従来の接着例を示す拡大側面図である。より具体的には、図6は、SQUIDセンサロッド60の先端部分の側面図であり、そのテーパー部に設けられているワイヤー60bと、SQUIDセンサ素子600の一端子を導電性ペースト63bにより接続し、ワイヤー60dとSQUIDセンサ素子600の他の一端子を導電性ペースト63dにより接続した例を示している。なお、ワイヤー60aとSQUIDセンサ素子600の他の一端子を接続する導電性ペーストについては、図面の見やすさを考慮して、図6には示していない。図6に示されるように、導電性ペーストによりSQUIDセンサ素子600をSQUIDセンサロッドの先端に接着した場合には、接続の仕方によっては、図示するように導電性ペーストがSQUIDセンサ素子600上に盛り上がる形で形成されることがある。SQUIDセンサ素子600は、測定対象との間の距離が短い方がよいことは図5を用いて説明した通りであり、その距離dのオーダーとしては0.2mm以下になることが望ましいとされる以上、図6に示すような導電性ペーストの盛り上がりも決して無視できないものになる。
【0038】
図6図5を比較すればわかるように、ボンディングによる接続(図5参照)の方が、導電性ペーストによる接続(図6参照)に比して、盛り上がりが少なく、その分だけ、SQUIDセンサ素子100を、測定対処のサンプルに近づけた配置とすることができ、本実施形態に示した接続形態(図5参照)の方が、従来よりも精度の高い測定をすることができる。
<まとめ>
【0039】
本実施形態においては、SQUIDセンサロッド10は、その先端部にSQUIDセンサ素子100を取り付ける場合には、SQUIDセンサ素子100の各端子101a~101dに対しては、ワイヤーボンディング151a~151d、152a~152dにより接続された構成となる。ワイヤーボンディングの場合、その高さは、ワイヤーの細さ程度(0.025mm程度)にとどまらせることができ、旧来の導電性ペーストに比してSQUIDセンサ素子100の高さが高くなるのを抑制することができる。その結果、旧来のSQUIDセンサロッドよりも、SQUIDセンサ素子100を測定対象の試料により近づけて測定を可能とするSQUIDセンサロッド10を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 SQUID顕微鏡
10 SQUIDセンサロッド(支持部材)
11 第1SQUIDセンサロッド(第1支持部材)
12 第2SQUIDセンサロッド(第2支持部材)
12a、12b、12c、12d 溝部
12e ザグリ部
13a、13b、13c、13d 導電性ペースト
100 SQUIDセンサ素子
101a、101b、101c、101d 端子
141a、141b、141c、141d、142a、142b、142c、142d ワイヤー
151a、151b、151c、151d、152a、152b、152c、152d ワイヤーボンディング
図1
図2
図3
図4
図5
図6