IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特開2024-121612チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法
<>
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図1
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図2
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図3
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図4
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図5
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図6
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図7
  • 特開-チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121612
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20240830BHJP
   B24B 55/00 20060101ALI20240830BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B55/00
B23Q3/08 A
H01L21/304 622H
H01L21/304 631
H01L21/68 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028807
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】永見 優
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
3C047
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA05
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD08
3C034DD10
3C047FF04
3C047FF17
5F057AA05
5F057AA41
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057BC06
5F057CA14
5F057DA11
5F057DA14
5F057DA22
5F057FA13
5F057GA27
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA42
5F131CA09
5F131CA12
5F131EB02
5F131EB03
5F131EB04
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの内部に加工屑が堆積されることを抑制することができるチャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル10は、一面に凹部31が形成された枠体30と、凹部31に嵌め込まれたポーラス状の吸着部40と、を有し、吸着部40は、ポーラスの内表面に撥水コーティング剤が被覆される。チャックテーブル10の作成方法は、撥水コーティング剤の液中に、少なくとも吸着部40を浸漬する浸漬ステップと、浸漬ステップの後に、吸着部40のポーラスの内部に滞留する撥水コーティング剤を吸引するとともに、ポーラスの内表面に残存する撥水コーティング剤を乾燥させる吸引ステップと、浸漬ステップの前、もしくは吸引ステップの後に、吸着部40を凹部31に嵌め込み、吸着部40と枠体30とを一体化させる一体化ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置において該被加工物を保持するチャックテーブルであって、
一面に凹部が形成された枠体と、
該凹部に嵌め込まれたポーラス状の吸着部と、を有し、
該吸着部は、ポーラスの内表面に撥水コーティング剤が被覆される、
チャックテーブル。
【請求項2】
一面に凹部が形成された枠体と、該凹部に嵌め込まれたポーラス状の吸着部と、を有するチャックテーブルの作成方法であって、
撥水コーティング剤の液中に、少なくとも該吸着部を浸漬する浸漬ステップと、
該浸漬ステップの後に、該吸着部のポーラスの内部に滞留する該撥水コーティング剤を吸引するとともに、該ポーラスの内表面に残存する該撥水コーティング剤を乾燥させる吸引ステップと、
該浸漬ステップの前、もしくは該吸引ステップの後に、該吸着部を該凹部に嵌め込み、該吸着部と該枠体とを一体化させる一体化ステップと、を含み、
該ポーラス状の内表面に撥水コーティング剤が被覆される、
チャックテーブルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のウェーハを薄化する薄化加工を実施する装置として、ウェーハの裏面(パターン面とは反対側の面)を研削砥石で研削する、研削装置が知られている。この研削装置では、保持面がポーラスで形成されるチャックテーブルに被加工物を保持し、負圧を形成させることで保持面上の被加工物を吸引保持した状態で研削を実施する。
【0003】
ところで、研削装置では、研削中もチャックテーブルが被加工物を吸引し続けるため、研削で発生した加工屑が被加工物の外周部からチャックテーブルに吸引されて内部に蓄積される。内部に堆積した加工屑が固着してポーラスの吸引孔が塞がれると、被加工物を吸着する際の吸引力が低下することで、研削加工中の被加工物の外周部がバタつくことによってエッジチッピングが増加したり、または研削加工中に被加工物がチャックテーブルから剥がれて割れたりする可能性がある。
【0004】
このように、研削加工では、チャックテーブルの内部に加工屑が堆積して固着するため、チャックテーブルを研削して固着した加工屑を削り取るセルフグラインドを、定期的に実施することで加工屑を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-094671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、チャックテーブルの内部に加工屑が堆積されることを抑制しセルフグラインドの工数を削減する手法の確立、という解決すべき課題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チャックテーブルの内部に加工屑が堆積されることを抑制することができるチャックテーブル、およびチャックテーブルの作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のチャックテーブルは、被加工物を加工する加工装置において該被加工物を保持するチャックテーブルであって、一面に凹部が形成された枠体と、該凹部に嵌め込まれたポーラス状の吸着部と、を有し、該吸着部は、ポーラスの内表面に撥水コーティング剤が被覆されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のチャックテーブルの作成方法は、一面に凹部が形成された枠体と、該凹部に嵌め込まれたポーラス状の吸着部と、を有するチャックテーブルの作成方法であって、撥水コーティング剤の液中に、少なくとも該吸着部を浸漬する浸漬ステップと、該浸漬ステップの後に、該吸着部のポーラスの内部に滞留する該撥水コーティング剤を吸引するとともに、該ポーラスの内表面に残存する該撥水コーティング剤を乾燥させる吸引ステップと、該浸漬ステップの前、もしくは該吸引ステップの後に、該吸着部を該凹部に嵌め込み、該吸着部と該枠体とを一体化させる一体化ステップと、を含み、該ポーラス状の内表面に撥水コーティング剤が被覆されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、チャックテーブルの内部に加工屑が堆積されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るチャックテーブルを備える加工装置の構成例を示す断面図である。
図2図2は、図1に示すチャックテーブルの吸着部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係るチャックテーブルの作成方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示す浸漬ステップの前の一状態を示す断面図である。
図5図5は、図3に示す浸漬ステップの一状態を示す断面図である。
図6図6は、図3に示す吸引ステップの一状態を示す断面図である。
図7図7は、図3に示す一体化ステップの一状態を示す断面図である。
図8図8は、比較例のチャックテーブルにおいて加工屑を吸引する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係るチャックテーブル10を備える加工装置1について、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るチャックテーブル10を備える加工装置1の構成例を示す断面図である。図2は、図1に示すチャックテーブル10の吸着部40を拡大して示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、加工装置1は、チャックテーブル10と、加工ユニット60と、を備える。また、加工装置1は、チャックテーブル10と加工ユニット60とを相対的に移動させる図示せぬ移動ユニットや、各部を制御する図示せぬ制御ユニット等を備える。加工装置1は、実施形態において、チャックテーブル10に保持された被加工物100を研削する研削装置である。
【0015】
被加工物100は、例えば、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTaO)等を基板101とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。実施形態の被加工物100は、外周縁102が面取りされ、基板101の表面103から裏面104に亘って断面円弧状になるように、厚さ方向の中央が最も外周側に突出している。被加工物100の表面103には、複数のIC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等の回路素子が形成される。被加工物100は、裏面104が研削装置により研削されることにより仕上げ厚さまで薄化される。
【0016】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持する支持台である。チャックテーブル10は、被加工物100を吸引することにより保持面に固定する。加工装置1では、チャックテーブル10の保持面に被加工物100を保持した状態で、加工ユニット60により被加工物100を加工する。チャックテーブル10は、基部20と、枠体30と、吸着部40と、吸引ポンプ50と、を備える。
【0017】
基部20は、チャックテーブル10の下部を構成する。基部20は、後述の枠体30が上面側に固定される。基部20は、吸引通路21、22と、回転機構23と、を有する。吸引通路21、22は、チャックテーブル10の保持面を吸引する際の気体の流路である。吸引通路21は、実施形態において、基部20の上面側の中央部に形成された凹状部である。吸引通路21は、凹状部の上端側の仮想面が、後述の枠体30に形成された複数の吸引通路34の下流端と連通する。すなわち、吸引通路21は、複数の吸引通路34からの合流部である。吸引通路22は、上流端が吸引通路21の下面に連通し、下流端が吸引ポンプ50に接続する。回転機構23は、加工装置1の装置本体に対して、チャックテーブル10を鉛直な軸心回りに回転させる。
【0018】
枠体30は、一面に、後述の吸着部40が嵌め込まれる凹部31が形成される。実施形態の凹部31は、枠体30の一面の中央部から円柱状にくり抜かれた形状である。凹部31の底面32および内周面33は、全面に亘って吸着部40と接する。枠体30の凹部31と反対側の面は、基部20の上面に固定される。すなわち、枠体30は、凹部31が上面側に形成される、下面が基部20の上面に固定される。基部20の吸引通路21は、枠体30の底面によって覆われる。枠体30は、凹部31の底面32から枠体30の下面に貫通する複数の吸引通路34を有する。吸引通路34は、チャックテーブル10の保持面を吸引する際の気体の流路である。吸引通路34は、凹部31の底面32側である下流側において、基部20に形成された吸引通路21に連通する。
【0019】
吸着部40は、枠体30の凹部31に嵌め込まれる。吸着部40の上面41は、枠体30の上面と面一の関係である。言い換えると、吸着部40の上面41と、枠体30の凹部31を除く上面と、によって、チャックテーブル10の保持面を構成する。吸着部40は、下面42が枠体30の凹部31の底面32を覆い、側面43が凹部31の内周面33に沿う円板形状である。吸着部40の側面43は、枠体30の内周面33によって全面が閉塞される。吸着部40は、セラミック等のポーラス状に形成される、所謂ポーラス板である。吸着部40は、ポーラス状であるため、上面41と下面42との間に通気性を有する。すなわち、吸着部40は、枠体30の吸引通路34側から吸引され、上面41側から下面42側に向かって吸引されることによって、上面41で被加工物100を吸引保持することができる。
【0020】
図2に示すように、吸着部40は、ポーラス状の内表面44に撥水コーティング剤70が被覆される。撥水コーティング剤70は、対象面に塗布された際の水の接触角が90°以上となる溶剤であり、一般に住居用として販売されるものが適用可能である。撥水コーティング剤70は、シリコーンやフッ素を主成分とし、実施形態では、信越化学工業株式会社製の「X-24-9418」が適用される。「X-24-9418」は、フッ素シリコーンのイソプロピルアルコール溶液であり、各種基材に処理することにより、常温で撥水性、撥油性、離型性、防汚性等に優れた均一な被膜を形成する。
【0021】
吸引ポンプ50は、吸引通路51を介して、基部20に形成された吸引通路22の下流端側に接続する。吸引ポンプ50は、吸引通路51、基部20の吸引通路22、21、枠体30の吸引通路34、および吸着部40のポーラスを介して、吸着部40の上面41に負圧を形成する。これにより、吸着部40のポーラスにおいて、上面41から下面42に向かう気体流れが発生する。チャックテーブル10の保持面(吸着部40の上面41)に被加工物100が載置されている状態において、吸引ポンプ50は、吸引通路22、21、34および吸着部40のポーラスを介して、被加工物100の下面(図1に示す例では、表面103)を吸引する。
【0022】
吸引通路51には、開閉弁52が設けられる。開閉弁52は、図1に示す一例では、2ポート2位置NC(常時閉、通電時開)型の電磁弁であるが、本発明ではこれに限定されない。また、吸引通路51には、更に、後述のとおり吸引される加工屑105を捕集して、吸引ポンプ50側に送らず吸引通路51外に排出する不図示の排出機構が設けられることが好ましい。
【0023】
加工ユニット60は、チャックテーブル10の吸着部40の上面41に保持された被加工物100を加工するユニットである。実施形態において、加工ユニット60は、被加工物100を研削する研削ユニットである。実施形態の加工ユニット60(研削ユニット)は、スピンドル61と、研削ホイール62と、研削砥石63と、不図示の研削液供給ユニットと、を有する。
【0024】
スピンドル61は、不図示のスピンドルハウジングに支持されて鉛直な軸心回りに回転する軸部材である。研削ホイール62は、スピンドル61の下端に取り付けられて、スピンドル61の回転に伴って鉛直な軸心回りに回転する。研削砥石63は、研削ホイール62の下面に装着される。研削液供給ユニットは、加工面に研削液を供給する。加工ユニット60は、不図示の昇降機構によって鉛直方向に移動可能であり、鉛直方向に加工送りされることによって、チャックテーブル10に保持された被加工物の上面を研削砥石63によって研削する。
【0025】
加工装置1においては、加工ユニット60がチャックテーブル10に保持された被加工物100を加工する。実施形態では、研削ユニットである加工ユニット60が被加工物100を裏面104側から研削する。加工の手順としては、まず、チャックテーブル10の吸着部40の上面41に、被加工物100を載置する。この際、被加工物100の表面103側が下方を向くようにする。次に、開閉弁52を開放するとともに吸引ポンプ50を作動させ、被加工物100を吸着部40の上面41に吸引保持する。
【0026】
次に、チャックテーブル10の回転機構23によりチャックテーブル10を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール62を軸心回りに回転させる。不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール62の研削砥石63をチャックテーブル10に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石63で被加工物100の裏面104を研削し、所定の仕上げ厚さまで薄化する。
【0027】
このような研削加工中、被加工物100の裏面104が研削されることにより、加工屑105が発生する。加工中は、チャックテーブル10が被加工物100を吸引し続けるため、研削で発生した加工屑105は、被加工物100の外周縁102近傍の吸着部40の上面41から、吸着部40の内部に吸引される。吸着部40の内部に吸引された加工屑105は、吸着部40のポーラスを通って下面42側において枠体30の吸引通路34に抜け、基部20の吸引通路21、22、および吸引通路51を通って、不図示の排出機構により外部へ排出される。
【0028】
ここで、吸着部40のポーラス状の内表面44(図2参照)は、撥水コーティング剤70によって被覆されている。これにより、内表面44が滑りやすくなっているため、吸着部40のポーラスを通る加工屑105が、内部に滞留せず、吸着部40の下面42側に排出される。加工屑105の滞留が抑制されるため、吸着部40の内部に加工屑105が堆積することを抑制することができる。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係るチャックテーブル10、すなわち、一面に凹部31が形成された枠体30と、凹部31に嵌め込まれたポーラス状の吸着部40と、を有し、ポーラスの内表面44に撥水コーティング剤70が被覆されるチャックテーブル10の作成方法について、図面に基づいて説明する。図3は、実施形態に係るチャックテーブル10の作成方法の流れを示すフローチャートである。実施形態のチャックテーブル10の作成方法は、浸漬ステップ201と、吸引ステップ202と、一体化ステップ203と、を含む。
【0030】
図4は、図3に示す浸漬ステップ201の前の一状態を示す断面図である。図5は、図3に示す浸漬ステップ201の一状態を示す断面図である。浸漬ステップ201は、撥水コーティング剤70の液中に、少なくとも吸着部40を浸漬するステップである。
【0031】
浸漬ステップ201では、まず、例えば、吸着部40を内部に収容可能な槽71を準備し、槽71の内部に液状の撥水コーティング剤70を溜める。次に、吸着部40を槽71に溜められた撥水コーティング剤70の液中に沈め、浸漬する。浸漬させる時間は、吸着部40のサイズ(直径および厚み)や、ポーラス状の粒径に応じて設定される。例えば、吸着部40が、直径200mm、厚み30mm程度の円板形状である場合、浸漬時間は、30~60分程度である。浸漬ステップ201において、ポーラス状の吸着部40を撥水コーティング剤70の液中に所定時間浸漬させることによって、液状の撥水コーティング剤70がポーラスの内部に入り込み、ポーラスの内部に滞留する。
【0032】
図6は、図3に示す吸引ステップ202の一状態を示す断面図である。吸引ステップ202は、浸漬ステップ201の後に実施される。吸引ステップ202は、吸着部40のポーラスの内部に滞留する撥水コーティング剤70を吸引するとともに、ポーラスの内表面44に残存する撥水コーティング剤70を乾燥させるステップである。
【0033】
吸引ステップ202では、まず、例えば、吸引テーブル80の保持面81に吸着部40を載置する。なお、図6に示す例では、下面42側を保持面81に接地させているが、上下を反転させて上面41側を保持面81に接地させてもよい。吸引テーブル80は、保持面81を上流端とする不図示の吸引流路を内部に有する。不図示の吸引流路の下流端は、吸引ポンプ90に接続する吸引流路91に接続する。吸引流路91には、開閉弁92が設けられる。開閉弁92は、図6に示す一例では、2ポート2位置NC(常時閉、通電時開)型の電磁弁であるが、本発明ではこれに限定されない。
【0034】
開閉弁92を開放した状態で吸引ポンプ90を作動させると、吸引ポンプ90は、吸引テーブル80内部の吸引流路と吸引流路91とを介して、保持面81に負圧を形成し、吸着部40を吸引する。これにより、吸着部40のポーラスにおいて、上面41から下面42に向かう流体流れが発生し、ポーラスの内部に滞留する撥水コーティング剤70が吸引される。
【0035】
撥水コーティング剤70の一部は、吸引ポンプ90によって吸引されて不図示の排出機構から排出される。また、ポーラスの内表面44には、撥水コーティング剤70が残存する。この際、更に吸引されることで、ポーラスの撥水コーティング剤70が残存して被覆された状態の内表面44の間には、上面41から下面42に向かう気体流れが発生する。これにより、ポーラスの内表面44を被覆する撥水コーティング剤70が乾燥して固まる。
【0036】
図7は、図3に示す一体化ステップ203の一状態を示す断面図である。一体化ステップ203は、浸漬ステップ201の前、もしくは吸引ステップ202の後に実施される。実施形態の一体化ステップ203は、吸引ステップ202の後に実施される。一体化ステップ203は、吸着部40を枠体30の凹部31に嵌め込み、吸着部40と枠体30とを一体化させるステップである。
【0037】
一体化ステップ203では、枠体30の凹部31が形成されている側において、吸着部40の下面42と凹部31の底面32とが対向し、かつ平面視で吸着部40の側面43と枠体30の内周面33との位置が合うよう、吸着部40を位置づける。次に、吸着部40の水平姿勢を維持した状態で、吸着部40を凹部31の底面32に向かって近接させて、凹部31の内部に奥まで嵌め込む。
【0038】
一体化ステップ203を、浸漬ステップ201より前に実施する場合は、浸漬ステップ201において、槽71に溜めた撥水コーティング剤70の液中に枠体30ごと吸着部40を浸漬させる。また、吸引ステップ202において、枠体30の吸引通路34を介して、吸着部40を吸引する。
【0039】
〔比較例〕
図8は、比較例のチャックテーブル10において加工屑105を吸引する様子を示す断面図である。より詳しくは、図8は、チャックテーブル10の吸着部40の内表面44(図2参照)に撥水コーティング剤70が被覆されていない場合において、加工屑105を吸引する様子を示す。
【0040】
吸着部40のポーラスの内表面44に撥水コーティング剤70が被覆されていない場合、上面41側から吸引される加工屑105がポーラスを通過する際に、内表面44で上手く滑らず、吸着部40のポーラスの内部に滞留する。これにより、吸着部40の内部に滞留した加工屑105が徐々に堆積して、気体および加工屑105の流路であるポーラスが徐々に塞がれる。また、ポーラスに加工屑105が堆積することにより、吸着部40の上面41から下面42に向かう気体の流れが抑制される。
【0041】
すなわち、実施形態のチャックテーブル10の作成方法で製造された吸着部40を備えた実施形態のチャックテーブル10では、加工屑105の滞留が抑制されるのに対し、撥水コーティング剤70でポーラスの内表面44を被覆しない従来の方法で製造された吸着部を備えたチャックテーブルでは、加工屑105の滞留が抑制されない。この対比を、以下の表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
このように、加工屑105の滞留状況に差異が生じるため、実施形態のチャックテーブル10では、比較例に比べて、研削加工時に加工屑105によってポーラスが詰まることを抑制することができる。
【0044】
以上説明したように、実施形態のチャックテーブル10は、保持面を構成するポーラス状の吸着部40のポーラスの内表面44に撥水コーティング剤70が被覆される。また、実施形態のチャックテーブル10の作成方法は、保持面を構成するポーラス状の吸着部40のポーラスの内表面44に撥水コーティング剤70を被覆する。
【0045】
これにより、ポーラスの内表面44の滑り性が向上するため、研削中に被加工物100の外周縁102の近傍からチャックテーブル10の内部に吸引された加工屑105が、ポーラスの内部に滞留せず、吸着部40の下面42側(吸引ポンプ50側)に排出される。加工屑105の滞留が抑制されるため、吸着部40のポーラスの内部に加工屑105が堆積することを抑制できるので、セルフグラインドの頻度を下げ、工数全体を削減することができる。また、セルフグラインドの頻度を下げることにより、チャックテーブル10自体のコスト削減にも貢献できる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、加工装置1は、実施形態において、チャックテーブル10に保持された被加工物を研削する研削装置であるが、本発明では、被加工物を切削する切削装置やレーザービームを照射するレーザー加工装置であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 加工装置(研削装置)
10 チャックテーブル
20 基部
21、22 吸引通路
23 回転機構
30 枠体
31 凹部
32 底面
33 内周面
34 吸引通路
40 吸着部
41 上面
42 下面
43 側面
44 内表面
50 吸引ポンプ
51 吸引通路
52 開閉弁
60 加工ユニット(研削ユニット)
70 撥水コーティング剤
100 被加工物
105 加工屑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8