(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121713
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】磁気テープカートリッジ、及び磁気テープカートリッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
G11B 23/107 20060101AFI20240830BHJP
G11B 23/30 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G11B23/107
G11B23/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028963
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 謙二
(57)【要約】
【課題】非接触式通信媒体の取付状態の不良が抑制可能な磁気テープカートリッジ、及び磁気テープカートリッジの製造方法を提供する。
【解決手段】ケース内に設けられ、かつ基板の板厚方向に貫通された貫通孔が形成された非接触式通信媒体と、ケースに一端が設けられた棒状部材であって、貫通孔に挿通されることで非接触式通信媒体をケース内で位置決め可能な軸部と、軸部の他端に設けられ、かつ貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより非接触式通信媒体が軸部から外れる方向の変位を規制する規制部と、を備える磁気テープカートリッジ。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に設けられ、かつ基板の板厚方向に貫通された貫通孔が形成された非接触式通信媒体と、
前記ケースに一端が設けられた棒状部材であって、前記貫通孔に挿通されることで前記非接触式通信媒体を前記ケース内で位置決め可能な軸部と、
前記軸部の他端に設けられ、かつ前記貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより前記非接触式通信媒体が前記軸部から外れる方向の変位を規制する規制部と、を備える
磁気テープカートリッジ。
【請求項2】
前記規制部は、前記貫通孔の径よりも大きい径を有する拡径部を有し、
前記拡径部は、前記貫通孔の前記周縁と当接する
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項3】
前記規制部は、前記規制部の先端から前記拡径部へ行くほど、径が大きくなる
請求項2に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項4】
前記規制部の前記先端の径は、前記貫通孔の径よりも小さい
請求項3に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項5】
前記規制部は、円錐台形状を有し、
前記円錐台形状において、下底部が前記拡径部とされている
請求項2に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項6】
前記非接触式通信媒体は、前記基板の外周縁に沿って周回する態様で形成されたアンテナコイルを備え、
前記貫通孔は、前記アンテナコイルの内周側に形成されている
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項7】
前記軸部は、前記ケース内で位置決めされた状態の前記基板の法線方向に沿って伸びている
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項8】
前記軸部は、前記ケースの底面の法線方向に沿って伸びている
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項9】
前記軸部の中心軸に沿った方向から前記非接触式通信媒体を見た場合に、前記貫通孔の形状は、前記軸部の横断面形状と相似の形状とされている
請求項8に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項10】
前記規制部は、前記軸部と一体成型されている
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項11】
前記ケースに形成され、かつ前記非接触式通信媒体が前記ケースの基準面に対して予め定められた角度で配置される態様で前記非接触式通信媒体の一方の面を支持する支持部材をさらに備え、
前記非接触式通信媒体は、前記規制部と前記支持部材との間で保持される
請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項12】
非接触式通信媒体の基板において板厚方向に貫通された貫通孔に対して、ケースに一端が設けられた棒状部材である軸部を挿通させることで、前記非接触式通信媒体を前記ケース内で位置決めすること、及び、
前記軸部の他端において前記貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより前記非接触式通信媒体が前記軸部から外れる方向の変位を規制すること、
を含む磁気テープカートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、磁気テープカートリッジ、及び磁気テープカートリッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カートリッジケースの内部に、磁気テープを巻装した単一のリールを回転可能に収容するとともに、情報を記憶し得る平板状の非接触式メモリ素子を備えた磁気テープカートリッジにおいて、非接触式メモリ素子は、情報を記憶し得る領域である有効領域の外側に非有効領域を有しており、該非有効領域には貫通孔が形成されているとともに、カートリッジケースに、メモリ素子の貫通孔に一部が嵌入して該メモリ素子をカートリッジケースの底面に対して略45度の角度で保持する柱状突起が形成されていることを特徴とする磁気テープカートリッジが記載されている。
【0003】
特許文献2には、データの書き込みおよび読み出しが可能な第1の記憶媒体と、データの書き込みおよび読み出しが可能であり、該第1の記憶媒体と異なる種類の第2の記憶媒体とを有する記憶媒体ユニットに対して、データの書き込みおよび読み出しを行なう記録・再生装置であって、記憶媒体ユニットが着脱自在に装填される装填部と、装填部に記憶媒体ユニットが装填された状態で、その第1の記憶媒体に対して、データの書き込みおよび読み出しを行なう第1のW/R手段と、装填部に記憶媒体ユニットが装填された状態で、その第2の記憶媒体に対して、データの書き込みおよび読み出しを行なう第2のW/R手段とを備えることを特徴とする記録・再生装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、記録テープが巻装されたリールを収容し、ドライブ装置に装填されたときにリールの軸方向の基準となる基準面を有するケースと、個体情報が記録され、ケースに収容された板状の非接触式通信媒体と、ケースに形成され、非接触式通信媒体が基準面に対して略45度の角度で配置されるように非接触式通信媒体の下端部を除く一方の面を支持する支持部と、ケースに形成され、非接触式通信媒体の下端部の一部を収容した溝部と、を備え、非接触式通信媒体の下端部における一方の面がケースに対して非接触とされている記録テープカートリッジが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-306720号公報
【特許文献2】特開2006-323918号公報
【特許文献3】特開2021-150000号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、非接触式通信媒体の取付状態の不良が抑制可能な磁気テープカートリッジ、及び磁気テープカートリッジの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、ケース内に設けられ、かつ基板の板厚方向に貫通された貫通孔が形成された非接触式通信媒体と、ケースに一端が設けられた棒状部材であって、貫通孔に挿通されることで非接触式通信媒体をケース内で位置決め可能な軸部と、軸部の他端に設けられ、かつ貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより非接触式通信媒体が軸部から外れる方向の変位を規制する規制部と、を備える磁気テープカートリッジである。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、規制部は、貫通孔の径よりも大きい径を有する拡径部を有し、拡径部は、貫通孔の周縁と当接する第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、規制部は、規制部の先端から拡径部へ行くほど、径が大きくなる第2の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、規制部の先端の径は、貫通孔の径よりも小さい第3の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、規制部は、円錐台形状を有し、円錐台形状において、下底部が拡径部とされている第2の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、非接触式通信媒体は、基板の外周縁に沿って周回する態様で形成されたアンテナコイルを備え、貫通孔は、アンテナコイルの内周側に形成されている第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、軸部は、ケース内で位置決めされた状態の基板の法線方向に沿って伸びている第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、軸部は、ケースの底面の法線方向に沿って伸びている第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、軸部の中心軸に沿った方向から非接触式通信媒体を見た場合に、貫通孔の形状は、軸部の横断面形状と相似の形状とされている第8の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、規制部は、軸部と一体成型されている第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、ケースに形成され、かつ非接触式通信媒体がケースの基準面に対して予め定められた角度で配置される態様で非接触式通信媒体の一方の面を支持する支持部材をさらに備え、非接触式通信媒体は、規制部と支持部材との間で保持される第1の態様に係る磁気テープカートリッジである。
【0018】
本開示の技術に係る第12の態様は、非接触式通信媒体の基板において板厚方向に貫通された貫通孔に対して、ケースに一端が設けられた棒状部材である軸部を挿通させることで、非接触式通信媒体をケース内で位置決めすること、及び、軸部の他端において貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより非接触式通信媒体が軸部から外れる方向の変位を規制すること、を含む磁気テープカートリッジの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る磁気テープカートリッジの外観の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下ケースの内側の右後端部の構造の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】実施形態に係るカートリッジメモリの構造の一例を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係るカートリッジメモリが軸部に取り付けられる様子の一例を示す概念図である。
【
図5】実施形態に係るカートリッジメモリが磁気テープカートリッジに設けられた状態の一例を示す概念図である。
【
図6】実施形態に係る磁気テープドライブのハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
【
図7】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下側から非接触式読み書き装置によって磁界が放出されている態様の一例を示す概略斜視図である。
【
図8】実施形態に係るカートリッジメモリの組付け工程の一例を示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係るカートリッジメモリが軸部に取り付けられる様子の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0021】
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。NVMとは、“Non-Volatile Memory”の略称を指す。ROMとは、“Read Only Memory”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。USBとは、“Universal Serial Bus”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-Chip”の略称を指す。ICとは、“Integrated Circuit”の略称を指す。RFIDとは、“Radio Frequency IDentifier”の略称を指す。
【0022】
以下の説明では、説明の便宜上、
図1において、磁気テープカートリッジ10の磁気テープドライブ30(
図6参照)への装填方向を矢印Aで示し、矢印A方向を磁気テープカートリッジ10の前方向とし、磁気テープカートリッジ10の前方向の側を磁気テープカートリッジ10の前側とする。以下の構造上の説明において、「前」とは、磁気テープカートリッジ10の前側を指す。
【0023】
また、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向とし、磁気テープカートリッジ10の右方向の側を磁気テープカートリッジ10の右側とする。以下の構造上の説明において、「右」とは、磁気テープカートリッジ10の右側を指す
【0024】
また、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、矢印C方向を磁気テープカートリッジ10の上方向とし、磁気テープカートリッジ10の上方向の側を磁気テープカートリッジ10の上側とする。以下の構造上の説明において、「上」とは、磁気テープカートリッジ10の上側を指す。
【0025】
また、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において、磁気テープカートリッジ10の前方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の後方向とし、磁気テープカートリッジ10の後方向の側を、磁気テープカートリッジ10の後側とする。以下の構造上の説明において、「後」とは、磁気テープカートリッジ10の後側を指す。
【0026】
また、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において、磁気テープカートリッジ10の上方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の下方向とし、磁気テープカートリッジ10の下方向の側を磁気テープカートリッジ10の下側とする。以下の構造上の説明において、「下」とは、磁気テープカートリッジ10の下側を指す。
【0027】
一例として
図1に示すように、磁気テープカートリッジ10は、平面視略矩形であり、かつ、箱状のケース12を備えている。磁気テープカートリッジ10は、本開示の技術に係る「磁気テープカートリッジ」の一例である。ケース12は、ポリカーボネート等の樹脂製であり、上ケース14及び下ケース16を備えている。上ケース14及び下ケース16は、上ケース14の下周縁面と下ケース16の上周縁面とを接触させた状態で、溶着(例えば、超音波溶着)及びビス止めによって接合されている。接合方法は、溶着及びビス止めに限らず、他の接合方法であってもよい。ケース12は、本開示の技術に係る「ケース」の一例である。
【0028】
ケース12の内部には、カートリッジリール18が回転可能に収容されている。カートリッジリール18は、リールハブ18A、上フランジ18B1、及び下フランジ18B2を備えている。リールハブ18Aは、円筒状に形成されている。リールハブ18Aは、カートリッジリール18の軸心部であり、軸心方向がケース12の上下方向に沿っており、ケース12の中央部に配置されている。上フランジ18B1及び下フランジ18B2の各々は円環状に形成されている。リールハブ18Aの上端部には上フランジ18B1の平面視中央部が固定されており、リールハブ18Aの下端部には下フランジ18B2の平面視中央部が固定されている。リールハブ18Aの外周面には、磁気テープMTが巻き回されており、磁気テープMTの幅方向の端部は上フランジ18B1及び下フランジ18B2によって保持されている。なお、リールハブ18A及び下フランジ18B2は一体として成型されていてもよい。
【0029】
ケース12の右壁12Aの前側には、開口12Bが形成されている。磁気テープMTは、開口12Bから引き出される。
【0030】
一例として
図2に示すように、下ケース16の右後端部には、カートリッジメモリ19が収容されている。カートリッジメモリ19は、本開示の技術に係る「非接触式通信媒体」の一例である。本実施形態では、いわゆるパッシブ型のRFIDタグがカートリッジメモリ19として採用されている。
【0031】
カートリッジメモリ19には、管理情報が記憶されている。管理情報は、磁気テープカートリッジ10を管理する情報である。管理情報としては、例えば、磁気テープカートリッジ10を特定可能な識別情報、磁気テープMTの記録容量、磁気テープMTに記録されている情報(以下、「記録情報」とも称する)の概要、記録情報の項目、及び記録情報の記録形式等を示す情報が挙げられる。
【0032】
カートリッジメモリ19は、非接触式で外部装置(図示省略)と通信を行う。外部装置としては、例えば、磁気テープカートリッジ10の生産工程で使用される読み書き装置、及び、磁気テープドライブ(例えば、
図6に示す磁気テープドライブ30)内で使用される読み書き装置(例えば、
図6及び
図7に示す非接触式読み書き装置50)が挙げられる。
【0033】
外部装置は、カートリッジメモリ19に対して、非接触式で各種情報の読み書きを行う。詳しくは後述するが、カートリッジメモリ19は、外部装置から与えられた磁界に対して電磁的に作用することで電力を生成する。そして、カートリッジメモリ19は、生成した電力を用いて作動し、磁界を介して外部装置と通信を行うことで外部装置との間で各種情報の授受を行う。
【0034】
下ケース16の右後端部の底板16Aの内面には、支持部材20が設けられている。支持部材20は、カートリッジメモリ19を基準面16A1(
図5参照)に対して予め定められた角度で配置される態様で支持する部材である。支持部材20は、本開示の技術に係る「支持部材」の一例である。
図2に示す例では、支持部材20は、カートリッジメモリ19を傾斜させた状態で下方から支持する一対の傾斜台である。一対の傾斜台は、第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bである。第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bは、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されており、下ケース16の後壁16Bの内面及び底板16Aの内面にモジュール化されている。第1傾斜台20Aは、傾斜面20A1を有しており、傾斜面20A1は、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。また、傾斜面20B1も、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。
【0035】
支持部材20の前方側には、一対の位置規制リブ22が左右方向に間隔を隔てて配置されている。一対の位置規制リブ22は、底板16Aの内面に立設されており、支持部材20に配置された状態のカートリッジメモリ19の下端面19B(
図5参照)の位置を規制する。
【0036】
下ケース16の右後端部の底板16Aの内面には、軸部24が設けられている。軸部24は、本開示の技術に係る「軸部」の一例である。軸部24は、一端が下ケース16の内面に取り付けられた棒状部材である。具体的には、軸部24は、第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bの間に設けられている。軸部24の一端は、下ケース16の底板16Aと後壁16Bとの間の角に取り付けられている。そして、軸部24は、下ケース16の内面からカートリッジメモリ19へ向かって伸びている。換言すれば、軸部24は、ケース12内で位置決めされた後のカートリッジメモリ19の法線方向(すなわち、板厚方向)に沿って伸びている。また、詳細は後述するが、軸部24の他端には、カートリッジメモリ19の貫通孔26Cに挿通可能な規制部28が設けられている。
【0037】
カートリッジメモリ19は、基板26を備えている。基板26は、本開示の技術に係る「基板」の一例である。基板26は、フレキシブルタイプの基板である。基板26は、一例として角部が円弧状に面取りされた、四角形の平板状をしている。基板26は、板厚方向に2つの面、すなわち、表面26Aと裏面26Bとを有する。基板26は、基板26の裏面26Bを下側に向けて支持部材20上に置かれ、支持部材20は、基板26の裏面26Bを下方から支持する。基板26の裏面26Bの一部は、支持部材20の傾斜面、すなわち、傾斜面20A1及び20B1に接触しており、基板26の表面26Aは、上ケース14側に露出している。
【0038】
カートリッジメモリ19の基板26には、貫通孔26Cが形成されている。貫通孔26Cは、基板26の板厚方向に沿って基板26が貫通されることで形成される。貫通孔26Cは、例えば、基板26の成形するためのプレス打ち抜き工程において形成される。貫通孔26Cには、規制部28及び軸部24が挿通可能とされる。貫通孔26Cは、本開示の技術に係る「貫通孔」の一例である。
【0039】
一例として
図3に示すように、カートリッジメモリ19の表面26Aには、ICチップ52及びコンデンサ54が搭載されている。ICチップ52及びコンデンサ54は、表面26Aに接着されている。また、カートリッジメモリ19の表面26Aにおいて、ICチップ52及びコンデンサ54は封止材56によって封止されている。ここでは、封止材56として、紫外線に反応して硬化する紫外線硬化樹脂が採用されている。なお、紫外線硬化樹脂は、あくまでも一例に過ぎず、紫外線以外の波長域の光に反応して効果する光硬化樹脂を封止材56として使用してもよいし、熱硬化性樹脂を封止材56として使用してもよいし、接着剤を封止材56として使用してもよい。
【0040】
カートリッジメモリ19の裏面26B(
図2参照)には、コイル60がループ状に形成されている。換言すれば、コイル60が、基板26の外周縁に沿って周回する態様で形成されている。ここでは、コイル60の素材として、銅箔が採用されている。銅箔は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウム箔等の他種類の導電性素材であってもよい。コイル60は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MF(
図7参照)が作用することで誘導電流を誘起する。なお、コイル60は、本開示の技術に係る「アンテナコイル」の一例である。
【0041】
カートリッジメモリ19の裏面26Bには、第1導通部62A及び第2導通部62Bが設けられている。第1導通部62A及び第2導通部62Bは、はんだを有しており、表面26AのICチップ52及びコンデンサ54に対してコイル60の両端部を電気的に接続している。
【0042】
カートリッジメモリ19の表面26Aにおいて、ICチップ52及びコンデンサ54は、ワイヤ接続方式で互いに電気的に接続されている。具体的には、ICチップ52の正極端子及び負極端子のうちの一方の端子が配線64Aを介して第1導通部62Aに接続されており、他方の端子が配線64Bを介して第2導通部62Bに接続されている。また、コンデンサ54は、一対の電極を有する。
図3に示す例では、一対の電極は、電極54A及び54Bである。電極54Aは、配線64Cを介して第1導通部62Aに接続されており、電極54Bは、配線64Dを介して第2導通部62Bに接続されている。これにより、コイル60に対して、ICチップ52及びコンデンサ54は並列に接続される。
【0043】
ループ状に形成されたコイル60の内周側には、貫通孔26Cが形成されている。すなわち、カートリッジメモリ19を平面視した場合に、貫通孔26Cは、コイル60の内周側に位置している。
【0044】
また、貫通孔26Cは、ICチップ52及びコンデンサ54を避けて形成されている。すなわち、カートリッジメモリ19を平面視した場合に、ICチップ52及びコンデンサ54の位置とは異なる位置に設けられている。これにより、ICチップ52及びコンデンサ54の大きさ又は配置が制限されることが抑制される。
【0045】
さらに、貫通孔26Cは、封止材56によって封止された領域を避けて形成されている。すなわち、カートリッジメモリ19を平面視した場合に、貫通孔26Cは、封止材56によって封止された領域とは異なる位置に設けられている。これにより、封止材56による封止が貫通孔26Cによって破られることが抑制される。
【0046】
一例として
図4の左に示すように、カートリッジメモリ19のケース12への組付け作業において、先ず、カートリッジメモリ19は、軸部24の中心軸CLに沿って、軸部24へ向かって移動する。この場合において、基板26に形成された貫通孔26Cの位置は、軸部24の先端に設けられた規制部28と対向する位置とされている。
図4に示す例において、規制部28は、円錐台形状を有している。規制部28の円錐台形状において、上底部28Aは、規制部28の先端に位置しており、下底部28Bは、規制部28の軸部24の側に位置している。規制部28は、規制部28の先端から軸部24へ行くほど径が大きくなる形状となっている。すなわち、規制部28は、上底部28Aから下底部28Bへ行くほど径が大きくなっている。また、規制部28は、軸部24と一体成型されている。規制部28は、本開示の技術に係る「規制部」の一例である。また、下底部28Bは、本開示の技術に係る「拡径部」及び「下底部」の一例である。
【0047】
ここで、上底部28Aの径は、貫通孔26Cの径よりも小さい径とされている。また、下底部28Bの径は、貫通孔26Cの径よりも大きい径とされている。また、下底部28Bの径は、規制部28が貫通孔26Cに挿通される場合に基板26に塑性変形を生じさせない径とされている。例えば、下底部28Bの径は、貫通孔26Cの径よりも5%程度大きい径とされている。
【0048】
図4の中央に示すように、カートリッジメモリ19が軸部24に向かって移動されると、規制部28の上底部28Aが、カートリッジメモリ19の貫通孔26Cに挿通される。そして、貫通孔26Cが規制部28にガイドされながら、カートリッジメモリ19が軸部24に向かって移動する。すなわち、貫通孔26Cの内周面が、規制部28の外周面に当接しながら、カートリッジメモリ19が軸部24へ向かって移動する。この場合において、貫通孔26Cが規制部28の外周面によって押圧されることで弾性変形し、貫通孔26Cが拡がる。そして、貫通孔26Cの径が一時的に大きくなった状態で、規制部28が貫通孔26Cへ挿通される。
【0049】
そして、
図4の右に示すように、貫通孔26Cが規制部28を通過すると、カートリッジメモリ19が軸部24の先端に位置する。軸部24の外径は、貫通孔26Cの径よりも小さいため、貫通孔26Cは、規制部28が挿通される前の径に戻る。そして、貫通孔26Cの内周面と、軸部24の外周面が当接することで、カートリッジメモリ19が、面内方向において、位置がずれることが抑制される。すなわち、軸部24が貫通孔26Cに挿通されることで、カートリッジメモリ19が下ケース16内で位置決めされる。
【0050】
一例として
図5示すように、規制部28を通過したカートリッジメモリ19が下ケース16に対して予め定められた位置に保持される。具体的には、カートリッジメモリ19が規制部28の下底部28Bと、傾斜台20Bとの間に保持される。基準面16A1は、底板16Aの外面に形成されている。基準面16A1は、平面である。ここで、平面とは、底板16Aを下側にして下ケース16を水平面に置いた場合において、水平面に対して平行な面を指す。
【0051】
支持部材20の傾斜角度θ、すなわち、傾斜面20A1及び傾斜面20B1の傾斜角度は、基準面16A1に対して45度である。カートリッジメモリ19は、基準面16A1に対して45度となる状態で下ケース16内に保持される。なお、45度は、あくまでも一例に過ぎず、“0度<傾斜角度θ<45度”であってもよいし、45度以上であってもよい。
【0052】
ところで、磁気テープカートリッジ10の製造段階において、軸部24からカートリッジメモリ19が外れる方向の力F1が、カートリッジメモリ19に作用することがある。カートリッジメモリ19が下ケース16内に位置決めされた状態で、力F1がカートリッジメモリ19の作用した場合、規制部28がないとカートリッジメモリ19が軸部24から外れてしまい、カートリッジメモリ19が下ケース16内で位置決めされなくなる。この状態で、上ケース14と下ケース16とが接合されると、上ケース14のリブ14Aがカートリッジメモリ19に当接すると、カートリッジメモリ19が変形した状態(例えば、湾曲した状態)でケース12に固定されることになる。これは、カートリッジメモリ19の破損、又はカートリッジメモリ19に対する読み書き不良を招来する。
【0053】
そこで、軸部24の先端に規制部28が設けられている。カートリッジメモリ19に力F1が作用した場合に、貫通孔26Cの周縁は、規制部28の下底部28Bに当接する。この結果、カートリッジメモリ19が軸部24から外れることが抑制される。このように、規制部28は、貫通孔26Cの周縁と当接することにより、カートリッジメモリ19が軸部24から外れる方向の変位(例えば、軸部24の中心軸CLに沿った方向の変位)を規制する。そして、カートリッジメモリ19が下ケース16内で予め定められた位置に保持された状態で、上ケース14と下ケース16とが接合されて、ケース12内にカートリッジメモリ19が収容される。
【0054】
カートリッジメモリ19が支持部材20に配置された状態で、上述したように上ケース14が下ケース16に接合されると、各リブ14Aの先端面14A1は、基板26に対して表面26A側から接触し、基板26は、各リブ14Aの先端面14A1と支持部材20の傾斜面とで挟み込まれる。これにより、カートリッジメモリ19の上下方向の位置がリブ14Aによって規制される。
【0055】
また、
図5に示されるように、下ケース16の底板16Aの内面には、カートリッジメモリ19の下端部19Aの一部を収容する溝部39が形成されている。この溝部39は、例えば、台形状に形成されており、カートリッジメモリ19の下端面19Bが当接する傾斜面39Aと、その傾斜面39Aの下縁部39Bから後方へ向かって連続する底面39Cと、底面39Cの後縁部39Dから上方へ向かって連続する縦壁面39Eと、を有している。これにより、例えば側面視で垂直な角部を構成する側面と底面とに、それぞれ下端面19Bの上側のエッジ部及び下側のエッジ部を当接させて(すなわち、下端面19Bと角部との間に空隙が形成されるようにして)カートリッジメモリ19を配置する構成に比べて、カートリッジメモリ19の姿勢を安定させることができる。
【0056】
そして、カートリッジメモリ19の下端部19Aにおける下面19A1が、縦壁面39Eの上縁部39Fに対して非接触とされている。換言すれば、下面19A1と上縁部39Fとの間に、間隙W1(例えば、底板16Aの内面に沿う方向の長さW1で、0.5mm程度)が形成される。これにより、組付けの際にカートリッジメモリ19が上縁部39Fに引っかかって歪むおそれがなく、ロボットハンド等によるカートリッジメモリ19の安定的な組み付けが可能となる。
【0057】
位置規制リブ22は、カートリッジメモリ19の上方へ張り出すオーバーラップ部22Aを有している。すなわち、この位置規制リブ22の後端部22Bは、側面視で上端部が下端部よりも予め定められた長さW2(例えば、W2=0.5mm程度)後方側へ位置するように、底板16Aの鉛直方向に対して後方側へ傾斜している。後端部22Bの上端部がオーバーラップ部22Aとなっている。これにより、カートリッジメモリ19が、配置された下ケース16を搬送させても、軽量なカートリッジメモリ19の位置ずれをより抑制することができる。
【0058】
なお、ここでは、ケース12に溝部39及びオーバーラップ部22Aが形成されている形態例を挙げて説明したが、これはあくまでも一例にすぎない。ケース12に溝部39及びオーバーラップ部22Aが形成されていなくても、本開示の技術は成立する。
【0059】
一例として
図6に示すように、磁気テープドライブ30は、搬送装置34、読取ヘッド36、及び制御装置38を備えている。磁気テープドライブ30には、磁気テープカートリッジ10が装填される。磁気テープドライブ30は、磁気テープカートリッジ10から磁気テープMTが引き出され、引き出された磁気テープMTから読取ヘッド36を用いて記録情報をリニアサーペンタイン方式で読み取る装置である。なお、本実施形態において、記録情報の読み取りとは、換言すると、記録情報の再生を指す。
【0060】
制御装置38は、磁気テープドライブ30の全体を制御する。本実施形態において、制御装置38は、ASICによって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置38は、FPGAによって実現されるようにしてもよい。また、制御装置38は、CPU、ROM、及びRAMを含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、ASIC、FPGA、PLD、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、制御装置38は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
【0061】
搬送装置34は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ40、巻取リール42、巻取モータ44、複数のガイドローラGR、及び制御装置38を備えている。
【0062】
送出モータ40は、制御装置38の制御下で、磁気テープカートリッジ10内のカートリッジリール18を回転駆動させる。制御装置38は、送出モータ40を制御することで、カートリッジリール18の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0063】
巻取モータ44は、制御装置38の制御下で、巻取リール42を回転駆動させる。制御装置38は、巻取モータ44を制御することで、巻取リール42の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0064】
磁気テープMTが巻取リール42によって巻き取られる場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0065】
磁気テープMTがカートリッジリール18に巻き戻される場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを逆方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0066】
このようにして送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルク等が調整されることで、磁気テープMTに既定範囲内の張力が付与される。ここで、既定範囲内とは、例えば、磁気テープMTから読取ヘッド36によってデータが読取可能な張力の範囲として、コンピュータ・シミュレーション及び/又は実機による試験等により得られた張力の範囲を指す。
【0067】
本実施形態では、送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTの張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTの張力は、ダンサローラを用いて制御されてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
【0068】
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ10と巻取リール42との間において読取ヘッド36を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
【0069】
読取ヘッド36は、読取素子46及びホルダ48を備えている。読取素子46は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ48によって保持されており、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTから記録情報を読み取る。
【0070】
磁気テープドライブ30は、非接触式読み書き装置50を備えている。非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態で、磁気テープカートリッジ10の下側にてカートリッジメモリ19の裏面26Bに正対するように配置されている。なお、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態とは、例えば、磁気テープカートリッジ10が読取ヘッド36による磁気テープMTに対する記録情報の読み取りを開始する位置として事前に定められた位置に到達した状態を指す。
【0071】
一例として
図7に示すように、非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10の下側からカートリッジメモリ19に向けて磁界MFを放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19を貫通する。非接触式読み書き装置50は、制御装置38に接続されている。制御装置38は、カートリッジメモリ19を制御する制御信号を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、制御装置38から入力された制御信号に従って、磁界MFをカートリッジメモリ19に向けて放出する。
【0072】
非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、コマンド信号をカートリッジメモリ19に空間伝送する。コマンド信号は、カートリッジメモリ19に対する指令を示す信号である。コマンド信号が非接触式読み書き装置50からカートリッジメモリ19に空間伝送される場合、磁界MFには、制御装置38からの指示に従って非接触式読み書き装置50によって空間伝送されたコマンド信号が含まれる。換言すると、磁界MFには、コマンド信号が重畳される。すなわち、非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、磁界MFを介してコマンド信号をカートリッジメモリ19に送信する。
【0073】
次に、本実施形態によるカートリッジメモリ19の組付け工程について
図8を参照しながら説明する。カートリッジメモリ19の組付け工程は、磁気テープカートリッジ10の製造工程の一部である。
図8に示すカートリッジメモリ19の組付け工程の流れは、本開示の技術に係る「磁気テープカートリッジの製造方法」の一例である。
【0074】
一例として
図8に示すカートリッジメモリ19の組付け工程では、先ず、ステップST101で、カートリッジメモリ19が、軸部24の中心軸CL方向に沿って軸部24へ向かって移動する。この後、組付け工程は、ステップST103に移行する。
【0075】
ステップST103で、軸部24の先端に設けられた規制部28が、貫通孔26Cに対して挿通される。この後、組付け工程は、ステップST105に移行する。
【0076】
ステップST105で、ステップST103において規制部28が貫通孔26Cを通過した後、カートリッジメモリ19の基板26に形成された貫通孔26Cに対して軸部24が挿通されることで、カートリッジメモリ19がケース12内で位置決めされる。この後、組付け工程は、ステップST107に移行する。
【0077】
ステップST107で、ステップST105で位置決めされたカートリッジメモリ19の軸部24から外れる方向の変位が規制される。これにより、カートリッジメモリ19の組付け工程が終了する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、軸部24がカートリッジメモリ19の基板26に形成された貫通孔26Cに挿通されることで、カートリッジメモリ19がケース12内で位置決めされる。そして、軸部24の先端に設けられた規制部28が貫通孔26Cの周縁に当接することで、カートリッジメモリ19が軸部24から外れる方向の変位が規制される。これにより、カートリッジメモリ19がケース12内で位置決めされ、さらに軸部24からカートリッジメモリ19が外れることが抑制される。この結果、磁気テープカートリッジ10におけるカートリッジメモリ19の取付け状態不良の発生が抑制される。
【0079】
例えば、軸部24に規制部28が設けられていない場合を考える。この場合、カートリッジメモリ19の組付け作業において、軸部24によって下ケース16内でカートリッジメモリ19の位置決めがされた後、上ケース14が下ケース16と接合されることで、カートリッジメモリ19がリブ14Aによって上方への変位が規制される。しかし、この場合では、上ケース14が取り付けられるまでは、カートリッジメモリ19が軸部24から外れてしまうことがある。例えば、組付け作業での予期せぬ外的要因(例えば、カートリッジメモリ19への振動等)により、カートリッジメモリ19へ力F1が作用することがある。これにより、下ケース16内でカートリッジメモリ19が軸部24から外れてしまう。このまま、上ケース14が取り付けられると、カートリッジメモリ19が位置決めされていないので、カートリッジメモリ19の取り付け状態の不良が生じる。本構成では、軸部24の先端に規制部28が設けられているので、カートリッジメモリ19が下ケース16内で位置決めされた後、カートリッジメモリ19に力F1が作用してもカートリッジメモリ19の軸部24から外れる方向の変位が抑制される。このため、カートリッジメモリ19の取り付け状態の不良の発生が抑制される。
【0080】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、規制部28は、下底部28Bを備えている。下底部28Bは、貫通孔26Cよりも大きい径を有しており、下底部28Bは、貫通孔26Cの周縁と当接する。貫通孔26Cの周縁と下底部28Bが当接するので、例えば、周縁の一か所のみでカートリッジメモリ19の変位が規制される場合と比較して、より広い範囲に亘ってカートリッジメモリ19が軸部24から外れる方向の変位が規制されるので、軸部24からカートリッジメモリ19が外れにくくなる。
【0081】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、規制部28は、規制部28の先端から下底部28Bへ行くほど、径が大きくなる形状を有している。これにより、カートリッジメモリ19を取り付ける場合、規制部28の外周面に沿って貫通孔26Cがガイドされるので、カートリッジメモリ19の取り付け作業が容易になる。
【0082】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、規制部28の上底部28Aの径は、貫通孔26Cの径よりも小さい。これにより、規制部28の上底部28Aを貫通孔26Cへ挿通しやすい。この結果、カートリッジメモリ19の取り付け作業が容易になる。
【0083】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、規制部28は、円錐台形状を有し、円錐台形状において下底部28Bが貫通孔26Cの周縁と当接する。これにより、規制部28の構造が簡素化されるので、磁気テープカートリッジ10を製造しやすい。
【0084】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、カートリッジメモリ19は、基板26の外周縁に沿って周回する態様で形成されたコイル60を備えている。そして、貫通孔26Cは、コイル60の内周側に形成されている。コイル60を用いた非接触通信の安定性向上、及び/又は高速化を図るため、コイル60は、基板26の外周縁に沿って周回する態様で形成される。コイル60の外周側に貫通孔26Cを設ける場合、基板26を貫通孔26Cの分だけ大きくしたり、コイル60の幅を狭めたりする必要がある。本構成では、コイル60の内周側に貫通孔26Cを設けているので、コイル60の幅を確保しながら、カートリッジメモリ19の小型化が実現される。
【0085】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、軸部24は、ケース12内で位置決めされた状態の基板26の法線方向に沿って伸びている。貫通孔26Cは、基板26の法線方向(すなわち、板厚方向)に沿って形成される。これにより、軸部24の挿通方向が、貫通孔26Cの形成される方向と一致するので、貫通孔26Cを軸部24に取り付けるのが容易になる。
【0086】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、規制部28は、軸部24と一体成型されている。これにより、例えば、規制部28が軸部24とは別部品である場合と比較して、規制部28と軸部24との間の結合が強くなるので、規制部28が軸部24から分離することが抑制される。
【0087】
また、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10では、傾斜台20A及び20Bがケース12に設けられ、傾斜台20A及び20Bは、カートリッジメモリ19の裏面26Bを下方から支持する。傾斜台20A及び20Bの傾斜面20A1及び20B1は、予め定められた角度(例えば、45度)とされており、カートリッジメモリ19は、ケース12内に45度で配置される。そして、カートリッジメモリ19は、規制部28と傾斜台20A及び20Bとの間で保持される。これにより、カートリッジメモリ19が予め定められた角度でケース12内に配置された状態が、規制部28によっても保持されるので、カートリッジメモリ19の位置決めの精度が向上する。
【0088】
(変形例)
上記実施形態では、軸部24がカートリッジメモリ19の法線方向に沿って伸びている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本変形例では、軸部24が、下ケース16の底板16Aの法線方向に沿って伸びている。
【0089】
一例として
図9に示すように、下ケース16の内面には、軸部24が設けられている。軸部24は、一端が下ケース16の底板16Aの内面に取り付けられた棒状部材である。そして、軸部24は、下ケース16の内面からカートリッジメモリ19へ向かって伸びている。軸部24は、下ケース16の底板16Aの内面(すなわち、底面16A2)の法線方向に沿って伸びている。底面16A2は、本開示の技術に係る「底面」の一例である。
【0090】
軸部24の他端には、カートリッジメモリ19に挿通可能な規制部28が設けられている。
図9に示す例において、規制部28は、円錐台の下底を斜めに切り取った形状を有している。規制部28において、上底部28Aは、規制部28の先端に位置しており、下底部28Bは、軸部24の側に位置している。下底部28Bは、上底部28Aに対して傾斜している。
【0091】
ここで、上底部28Aの径は、貫通孔26Cの径よりも小さい径とされている。また、下底部28Bの径は、貫通孔26Cの径よりも大きい径とされている。また、下底部28Bの径(ここでは、
図9に示すZ方向から見た場合の径)は、基板26に塑性変形を生じさせない径とされている。例えば、下底部28Bの径は、貫通孔26Cの径よりも5%程度大きい径とされている。
【0092】
また、軸部24の中心軸CLに沿った方向(すなわち、
図9に示すZ方向)からカートリッジメモリ19を見た場合に、貫通孔26Cの形状は、軸部24の横断面形状と相似の形状とされている。
図9に示す中心軸CL方向から見た図において、貫通孔26Cの形状は、円形とされており、軸部24の横断面形状は、貫通孔26Cよりも小さい径の円形とされている。
【0093】
カートリッジメモリ19の組付け作業において、カートリッジメモリ19が軸部24からの中心軸CLに沿った方向で軸部24に向かって(すなわち、下方に向かって)移動される。そして、貫通孔26Cが規制部28を通過した後、カートリッジメモリ19が下ケース16に対して予め定められた位置に保持される。具体的には、カートリッジメモリ19が規制部28の下底部28Bと、傾斜台20Bとの間に保持される。
【0094】
以上説明したように、本変形例に係る磁気テープカートリッジ10では、軸部24は、ケース12の底板16Aの法線方向に沿って伸びている。一般に、カートリッジメモリ19をケース12内に配置する場合、下ケース16の直上から下方に向かって移動させることが多い。そのため、軸部24が、下ケース16の底面16A2の法線方向に沿って伸びていることで、カートリッジメモリ19の組付け作業が容易になる。
【0095】
また、本変形例に係る磁気テープカートリッジ10では、軸部24の中心軸CLに沿った方向からカートリッジメモリ19を見た場合に、貫通孔26Cの形状は、軸部24の横断面形状と相似の形状とされている。軸部24の中心軸CLに沿った方向とカートリッジメモリ19の基板26の法線方向とが、交差する場合であっても、軸部24を貫通孔26Cに挿通することができる。これにより、カートリッジメモリ19の組付け作業が容易になる。
【0096】
例えば、貫通孔26Cが基板26の法線方向に沿って貫通されており、一方、軸部24が下ケース16の底板16Aの法線方向に沿って伸びている場合を考える。この場合、軸部24を貫通孔26Cに挿通させようとすると、中心軸CLに沿った方向から見た軸部24の横断面形状と貫通孔26Cの形状が相似ではないので、軸部24によって貫通孔26Cが変形される。このため、カートリッジメモリ19の組付け作業が困難になる。また、カートリッジメモリ19の基板26に対して余計な負荷が生じるので、カートリッジメモリ19の耐久性が低下する。本構成では、上記のように構成したので、軸部24の中心軸CLに沿った方向とカートリッジメモリ19の基板26の法線方向とが、交差する場合であっても、軸部24を貫通孔26Cに挿通することができる。これにより、カートリッジメモリ19の組付け作業が容易になる。
【0097】
なお、上記実施形態では、規制部28が、円錐台形状である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。規制部28は、カートリッジメモリ19が軸部24から外れる方向の変位を規制可能であればよく、形状は特に限定されない。例えば、規制部28は、円錐形状、又は球体等であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、規制部28の下底部28Bが、貫通孔26Cの周縁と当接する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、規制部28が軸部24の外周面よりも部分的に突出した部位を有し、突出した部位が、貫通孔26Cの周縁の一部と当接する態様であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、軸部24の横断面形状及び貫通孔26Cが円形状である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、軸部24の横断面形状及び貫通孔26Cの形状は、楕円形状、又は多角形状(例えば、六角形)であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、カートリッジメモリ19に貫通孔26Cが一つ設けられる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、貫通孔26Cは、複数設けられてもよい。また、軸部24についても同様に複数設けられてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、軸部24がケース12の内壁面から伸びている棒状部材である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、軸部24の一端は、傾斜台20A及び20Bの傾斜面20A1及び20B1に取り付けられてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、規制部28は、軸部24と一体成型されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、規制部28は、軸部24の先端に取り付け可能な別部品であってもよい。この場合において、貫通孔26Cに軸部24が挿通された後、規制部28が軸部24の先端が取り付けられる態様であってもよい。
【0103】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0104】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0105】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0106】
上記実施形態に関し、さらに以下を開示する。
<付記1>
ケース内に設けられ、かつ基板の板厚方向に貫通された貫通孔が形成された非接触式通信媒体と、
上記ケースに一端が設けられた棒状部材であって、上記貫通孔に挿通されることで上記非接触式通信媒体を上記ケース内で位置決め可能な軸部と、
上記軸部の他端に設けられ、かつ上記貫通孔の周縁の少なくとも一部と当接することにより上記非接触式通信媒体が上記軸部から外れる方向の変位を規制する規制部と、を備える
磁気テープカートリッジ。
<付記2>
上記規制部は、上記貫通孔の径よりも大きい径を有する拡径部を有し、
上記拡径部は、上記貫通孔の上記周縁と当接する
付記1に記載の磁気テープカートリッジ。
<付記3>
上記規制部は、上記規制部の先端から上記拡径部へ行くほど、径が大きくなる
付記2に記載の磁気テープカートリッジ。
<付記4>
上記規制部の上記先端の径は、上記貫通孔の径よりも小さい
付記3に記載の磁気テープカートリッジ。
<付記5>
上記規制部は、円錐台形状を有し、
上記円錐台形状において、下底部が上記拡径部とされている
付記2に記載の磁気テープカートリッジ。
<付記6>
上記非接触式通信媒体は、上記基板の外周縁に沿って周回する態様で形成されたアンテナコイルを備え、
上記貫通孔は、上記アンテナコイルの内周側に形成されている
付記1から付記5のうちの何れか一つに記載の磁気テープカートリッジ。
<付記7>
上記軸部は、上記ケース内で位置決めされた状態の上記基板の法線方向に沿って伸びている
付記1から付記6のうちの何れか一つに記載の磁気テープカートリッジ。
<付記8>
上記軸部は、上記ケースの底面の法線方向に沿って伸びている
付記1から付記6のうちの何れか一つに記載の磁気テープカートリッジ。
<付記9>
上記軸部の方向中心軸に沿った方向から上記非接触式通信媒体を見た場合に、上記非接触式通信媒体を上記ケース内に位置決めした上記貫通孔の形状は、上記軸部の横断面形状と相似の形状とされている
付記8に記載の磁気テープカートリッジ。
<付記10>
上記規制部は、上記軸部と一体成型されている
付記1から付記9の何れか一つに記載の磁気テープカートリッジ。
<付記11>
上記ケースに形成され、かつ上記非接触式通信媒体が上記ケースの基準面に対して予め定められた角度で配置される態様で上記非接触式通信媒体の一方の面を支持する支持部材をさらに備え、
上記非接触式通信媒体は、上記規制部と上記支持部材との間で保持される
付記1から付記10のうちの何れか一つに記載の磁気テープカートリッジ。
【符号の説明】
【0107】
10 磁気テープカートリッジ
12 ケース
12A 右壁
12B 開口
14 上ケース
14A リブ
14A1 先端面
16 下ケース
16A 底板
16A1 基準面
16A2 底面
16B 後壁
18 カートリッジリール
18A リールハブ
18B1 上フランジ
18B2 下フランジ
19 カートリッジメモリ
19A 下端部
19A1 下面
19B 下端面
20 支持部材
20A 第1傾斜台
20A1,20B1 傾斜面
20B 第2傾斜台
22 位置規制リブ
22A オーバーラップ部
22B 後端部
24 軸部
26 基板
26A 表面
26B 裏面
28 規制部
28A 上底部
28B 下底部
30 磁気テープドライブ
34 搬送装置
36 読取ヘッド
38 制御装置
39 溝部
39A 傾斜面
39B 下縁部
39C 底面
39D 後縁部
39E 縦壁面
39F 上縁部
40 送出モータ
42 巻取リール
44 巻取モータ
46 読取素子
48 ホルダ
50 非接触式読み書き装置
52 ICチップ
54 コンデンサ
54A,54B 電極
56 封止材
60 コイル
62A 第1導通部
62B 第2導通部
64A,64B,64C,64D 配線
A,B,C 矢印
CL 中心軸
F1 力
GR ガイドローラ
MF 磁界
MT 磁気テープ
θ 傾斜角度
W1 間隙
W2 長さ