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  • 特開-硬化性組成物及び硬化膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121800
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240830BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 51/10 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240830BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240830BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20240830BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F20/00 510
C08L51/10
C08L33/04
C08K3/013
C08F292/00
C08F2/44 B
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022284
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023070140
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023028256
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】福田 湧己
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BG071
4J002BJ001
4J002BN191
4J002DE096
4J002EN046
4J002FD016
4J002FD207
4J002GP00
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA07
4J011PA36
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA08
4J011QA13
4J011QA23
4J011SA84
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J026AC00
4J026BA28
4J026BA29
4J026BA40
4J026DB06
4J026DB11
4J026DB30
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA02
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】芳香族複素環を有する重合性化合物、無機微粒子、式(I)で表される化合物、及び重合開始剤を含有する硬化性組成物。

[式(I)中、RN1、RN2及びRN3は、水素原子、炭素数1~20の飽和炭化水素基等を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族複素環を有する重合性化合物、無機微粒子、式(I)で表される化合物、及び重合開始剤を含有する硬化性組成物。
【化1】

[式(I)中、RN1、RN2及びRN3は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基を示し、RN1、RN2及びRN3のうちの少なくとも1つは、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基であり、RN1、RN2及びRN3のうちの2つは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化2】

[式(II)中、Qは、3つの炭素原子と共に、炭素数6~20の芳香族炭化水素環を形成する基を示す。]
【請求項2】
式(I)で表される化合物の含有量は、芳香族複素環を有する重合性化合物の全量を基準として、0.1モル%以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
式(II)で表される基が、フェニル基である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記飽和炭化水素基が、アルキル基である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物から形成される硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、表示装置、照明装置などに使用されており、屈折率を制御して発光層からの光取り出し効率を上げる検討が行われている。特許文献1は高屈折率性を有する硬化性組成物を与えることを目的としており、例えば、ジルコニアナノ粒子45質量%と、環構造多官能化合物としてのトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート25質量%と、非環構造多官能化合物としての1,9-ノナンジオールジメタクリレート14質量%と、単官能化合物としてのイソブチルメタクリレート10質量%とを重合開始剤および界面活性剤と共に含む硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-61606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、硬化性組成物は、保存安定性に優れることが望ましい。そこで、本発明は、保存安定性に優れる硬化性組成物及びそれを用いた硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]芳香族複素環を有する重合性化合物、無機微粒子、式(I)で表される化合物、及び重合開始剤を含有する硬化性組成物。
【化1】

[式(I)中、RN1、RN2及びRN3は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基を示し、RN1、RN2及びRN3のうちの少なくとも1つは、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基であり、RN1、RN2及びRN3のうちの2つは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化2】

[式(II)中、Qは、3つの炭素原子と共に、炭素数6~20の芳香族炭化水素環を形成する基を示す。]
[2]式(I)で表される化合物の含有量は、芳香族複素環を有する重合性化合物の全量を基準として、0.1モル%以上である、[1]に記載の硬化性組成物。
[3]式(II)で表される基が、フェニル基である、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4]前記飽和炭化水素基が、アルキル基である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の硬化性組成物から形成される硬化膜。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保存安定性に優れる硬化性組成物及びそれを用いた硬化膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例7~10の硬化性組成物から形成された硬化膜におけるStrain[nm](押込み深さ)及びLoad[nm](試験荷重)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイル等の他の類似表現についても同様である。
【0011】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
(硬化性組成物)
本実施形態の硬化性組成物は、芳香族複素環を有する重合性化合物、無機微粒子、式(I)で表される化合物、及び重合開始剤を含有する。
【化3】

[式(I)中、RN1、RN2及びRN3は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基を示し、RN1、RN2及びRN3のうちの少なくとも1つは、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基であり、RN1、RN2及びRN3のうちの2つは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化4】

[式(II)中、Qは、3つの炭素原子と共に、炭素数6~20の芳香族炭化水素環を形成する基を示す。]
【0013】
このような硬化性組成物は、保存安定性に優れる。
【0014】
以下、硬化性組成物の各成分について説明する。
【0015】
<芳香族複素環を有する重合性化合物>
本実施形態の硬化性組成物は、芳香族複素環を有する重合性化合物を含有する。芳香族複素環を有する重合性化合物は、重合性基と芳香族複素環とを含有することができる。
【0016】
上記重合性基としては、例えば、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が挙げられる。
【0017】
上記芳香族複素環としては、例えば、含窒素芳香族複素環、含硫黄芳香族複素環及び含酸素芳香族複素環が挙げられる。
【0018】
上記芳香族複素環の具体例は、他の環と縮環していてもよいピロール環、他の環と縮環していてもよいチオフェン環及び他の環と縮環していてもよいフラン環を含む。
【0019】
他の環と縮環していてもよいピロール環、他の環と縮環していてもよいチオフェン環、及び他の環と縮環していてもよいフラン環には、置換基又は炭素数1~20のアルキル基が結合していてもよく、該炭素数1~20のアルキル基には置換基が結合していてもよい。
【0020】
他の環と縮環していてもよいピロール環としては、例えば、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、ナフトピロール環及びジナフトピロール環が挙げられる。他の環と縮環していてもよいチオフェン環としては、例えば、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトチオフェン環及びジナフトチオフェン環が挙げられる。他の環と縮環していてもよいフラン環としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ナフトフラン環及びジナフトフラン環が挙げられる。
【0021】
炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状の何れであってもよい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ヘプタデシル基及びウンデシル基が挙げられる。上記アルキル基の炭素数は、例えば、1~12であってもよく、1~8であってもよく、1~4であってもよい。
【0022】
上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;-NR(R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基である);ニトロ基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;及びメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2~10のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0023】
芳香族複素環を有する重合性化合物は、例えば、下記式(B1b)で示される化合物(以下、化合物(B1b)という場合がある)であることができる。
【化5】

[式中、Xは窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子である。
Xが酸素原子又は硫黄原子のとき、nは0である。
Xが窒素原子のとき、nは1であり、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基である。
~Rは、水素原子、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基であり、R~Rのうち隣接する2つは互いに結合して芳香族炭化水素環を形成してもよく、この芳香族炭化水素環には、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基が結合していてもよい。
前記炭素数1~20のアルキル基には、ビニル基、1-メチルビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は置換基が結合していてもよい。
前記置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、-NR(R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基である)、ニトロ基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシカルボニル基である。
式(B1b)で表される化合物は、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる重合性基(以下、「重合性基(V)という場合がある)を1つ又は2つ有する。]
【0024】
Xとしては、窒素原子又は硫黄原子が好ましい。
【0025】
化合物(B1b)は、例えば、R~Rの全てが水素原子又は重合性基(V)である態様(態様a)、又はR~Rのうち隣接する2つが互いに結合して芳香族炭化水素環を形成し、かつR~Rのうち芳香族炭化水素環を構成しないものは水素原子又は重合性基(V)である態様(態様b)であることができる。
【0026】
~Rが結合して形成される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環が挙げられる。
【0027】
化合物(B1b)を構成する炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、芳香族複素環を有する重合性化合物を構成する炭素数1~20のアルキル基と同様の基が例示される。化合物(B1b)を構成する置換基としては、芳香族複素環を有する重合性化合物を構成する置換基と同様の基が例示される。
【0028】
化合物(B1b)は、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる基を1つ又は2つ有し、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる基を1つ有するものが好ましい。
【0029】
Xが窒素原子である場合、Rがビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましく、
Xが酸素原子、又は硫黄原子である場合、R~Rの1つ又は2つが、それぞれ独立して、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0030】
芳香族複素環を有する重合性化合物の具体例は、式(B1c-1)、式(B1c-2)、式(B1c-3)、式(B1c-4)、式(B1d-1)、式(B1d-2)、式(B1d-3)、式(B1d-4)、式(B1d-5)、式(B1d-6)及び式(B1d-7)で表される化合物を含む。中でも、式(B1c-1)又は式(B1d-5)で表される化合物が好ましい。
【化6】

【化7】
【0031】
芳香族複素環を有する重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
硬化性組成物において、芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、得られる硬化物の高屈折率化の観点から、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の均一性(溶解性、凝集性)の観点から、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよい。これらの観点から、芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、5~50質量%であってもよく、10~40質量%であってもよく、15~30質量%以下であってもよい。
【0033】
<他の重合性化合物>
本実施形態の硬化性組成物は、芳香族複素環を有する重合性化合物以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。この重合性化合物は、例えば、エチレン性二重結合、好ましくはビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、1-メチルビニルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる重合性基を有することができる。
【0034】
芳香族複素環を有する重合性化合物以外の重合性化合物は、例えば、非環構造である多官能化合物であってもよく、炭化水素環を有する多官能化合物であってもよく、単官能化合物であってもよい。これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
非環構造である多官能化合物としては、例えば、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
【0036】
非環構造である2官能化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオール(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の、メチレン基が-O-に置き換わってもよい炭素数が1~40のアルカンジオールのジ(メタ)アクリレート及びアクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0037】
非環構造である3官能以上の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、3つ以上の水酸基を有しかつエーテル結合を有していてもよい炭素数4~40のジオールと3~6個の(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0038】
炭化水素環を有する多官能化合物としては、例えば、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
【0039】
炭化水素環を有する2官能化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロペンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の炭素数4~8程度のシクロアルカンジオールのジ(メタ)アクリレート;プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール類のOH基をヒドロキシアルキレンエーテル化することで得られるジオールのジ(メタ)アクリレート;及び9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。
【0040】
炭化水素環を有する3官能以上の化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0041】
単官能化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数が1~12のアルカノールの(メタ)アクリレート;エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノエーテルの(メタ)アクリレート;ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素環を有する単官能化合物;及び(メタ)アクリロイルモルホリン、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート等の窒素原子を有する単官能化合物が挙げられる。
【0042】
硬化性組成物が芳香族複素環を有する重合性化合物以外の重合性化合物を含有する場合、芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、重合性化合物全質量を基準として、例えば、5質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、重合性化合物全質量を基準として、例えば、80質量%以下、75質量%以下、又は65質量%以下であってもよい。芳香族複素環を有する重合性化合物の含有量は、重合性化合物全質量を基準として、例えば、5~80質量%であってもよく、20~75質量%であってもよく、30~65質量%であってもよい。
【0043】
硬化性組成物において、重合性化合物の合計質量(芳香族複素環を有する重合性化合物の質量とそれ以外の重合性化合物の質量との合計)は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってもよい。重合性化合物の含有量が低いほど、硬化性組成物から得られる膜の屈折率が高くなり、発光層から光り取り出し効率が向上する。重合性化合物の含有率は、例えば、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってもよい。
【0044】
<無機微粒子>
本実施形態の硬化性組成物は、無機微粒子を含有する。無機微粒子は、可視光域への波長変換能を有さない粒子であることが好ましく、また屈折率が1.6以上である粒子が好ましい。無機微粒子の屈折率が高くなるほど、硬化性組成物から得られる膜の屈折率も高くなり、発光層からの光取り出し効率が向上する。屈折率は、好ましくは1.8以上であり、より好ましくは2.0以上である。また屈折率は、例えば、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよい。上記屈折率は、ナトリウムのD線での値である。なお、本願明細書において、屈折率とは550nmにおける屈折率を意味する。
【0045】
無機微粒子は、酸化物であってもよく、窒化物であってもよい。無機微粒子としては、例えば、TiO(酸化チタン;屈折率2.3~2.7)、Nb(酸化ニオブ;屈折率2.3)、Ta(酸化タンタル;屈折率2.3)、BN(窒化ホウ素;屈折率2.2)、ZrO(酸化ジルコニウム;屈折率2.1)、SnO(酸化スズ;屈折率2.0)、ITO(スズドープ酸化インジウム;屈折率2.0)、Si(窒化ケイ素;屈折率2.0)、CeO(酸化セリウム;屈折率1.9~2.0)、ZnO(酸化亜鉛;屈折率1.9)、Y(酸化イットリウム;屈折率1.9)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ;屈折率1.7~1.9)、SbO(酸化アンチモン;屈折率1.8)、Al(酸化アルミニウム;屈折率1.8)及びTiN(窒化チタン;屈折率1.6)が挙げられる。
【0046】
無機微粒子としては、周期表第3~5、12~15族元素の酸化物又は周期表第4族元素の窒化物が好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、及び窒化ケイ素がより好ましく、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが更に好ましい。無機微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0047】
無機微粒子の体積平均粒子径は、例えば、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。粒子径が小さいほど、得られる膜の可視光透過率を高めることができる。無機微粒子(A)の体積平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1.0nm以上である。
【0048】
無機微粒子の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。無機微粒子の含有量が高いほど、硬化性組成物から得られる膜の屈折率が高くなり、発光層から光り取り出し効率が向上する。無機微粒子の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、60質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0049】
無機微粒子は、カップリング剤で表面処理されていてもよい。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤及びリン系カップリング剤が挙げられる。カップリング剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0050】
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びジフェニルジメトキシシランが挙げられる。
【0051】
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、モノアルコキシジルコアルミネート、トリアルコキシジルコアルミネート及びテトラアルコキシジルコアルミネートが挙げられる。
【0052】
チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタンが挙げられる。
【0053】
リン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート及びアクリロイルオキシエチルフタルオキシエチルジエチルホスフェートが挙げられる。
【0054】
無機微粒子は、例えば、分散剤と共に硬化性組成物に含まれる。分散剤としては、非イオン系、アニオン系、カチオン系等のいずれのタイプの分散剤も使用でき、アニオン系の分散剤が好ましい。アニオン系分散剤としては、リン酸エステル系分散剤を好適に使用することができる。
【0055】
分散剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、DISPERBYK-101、DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-165、DISPERBYK-166、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-182、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001(BYK Chemie,GMBH)、Solsperse 32000、Solsperse 36000、Solsperse 28000、Solsperse 20000、Solsperse 41000、及びSolsperse 45000(Lubrizol,Wickliffe,OH,USA)が挙げられる。
【0056】
分散剤の量は、無機微粒子100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。分散剤の量が多くなるほど、無機微粒子の分散性を向上できる。また分散剤の量は、無機微粒子100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。分散剤の量が少なくなるほど、硬化性組成物の屈折率を高めることができる。
【0057】
<式(I)で表される化合物>
本実施形態の硬化性組成物は、式(I)で表される化合物を含有する。
【化8】

[式(I)中、RN1、RN2及びRN3は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基を示し、RN1、RN2及びRN3のうちの少なくとも1つは、炭素数1~20の飽和炭化水素基又は下記式(II)で表される基であり、RN1、RN2及びRN3のうちの2つは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化9】

[式(II)中、Qは、3つの炭素原子と共に、炭素数6~20の芳香族炭化水素環を形成する基を示す。]
【0058】
N1、RN2及びRN3としての上記飽和炭化水素基としては、例えば、アルキル基、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0059】
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ヘプタデシル基及びウンデシル基が挙げられる。炭素数1~20のアルキル基は炭素数3~8のシクロアルキル基を有していてもよく、炭素数3~8のシクロアルキル基を有する炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、シクロアルキルメチル基、ジシクロペンチルメチル基が挙げられる。
【0060】
炭素数1~20のシクロアルキル基としては、単環であっても多環であってもよく、縮合していてもよく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、デカヒドロナフチル基が挙げられる。
【0061】
N1、RN2及びRN3としての飽和炭化水素基は、保存安定性が更に向上する観点から、アルキル基が好ましい。
【0062】
式(II)で表される基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基が挙げられる。
【0063】
式(II)で表される基は、保存安定性が更に向上する観点から、フェニル基が好ましい。
【0064】
式(I)で表される化合物の具体例は、ブチルアミン、ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、アニリン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、N-メチルアニリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ-n-オクチルアミン(TOA)及びN,N-ジメチルアニリンを含む。
式(I)で表される化合物としては、RN1、RN2及びRN3が全て、互いに独立に、炭素数1~20の飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~12の飽和炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましい。
【0065】
式(I)で表される化合物の含有量は、保存安定性が更に向上する観点から、芳香族複素環を有する重合性化合物の全量を基準として、例えば、0.001モル%以上、0.01モル%以上、0.1モル%以上、又は0.15モル%以上であってもよい。式(I)で表される化合物の含有量は、硬化膜としたときの膜の回復率の観点から、芳香族複素環を有する重合性化合物の全量を基準として、例えば、80モル%以下、50モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、6.5モル%以下、又は5.0モル%以下であってもよい。これらの観点から、式(I)で表される化合物の含有量は、芳香族複素環を有する重合性化合物の全量を基準として、例えば、0.001~80モル%、0.001~50モル%であってもよく、0.001~20モル%であってもよく、0.01~10モル%であってもよく、0.1~50モル%であってもよく、0.1~20モル%であってもよく、0.1~10モル%であってもよく、0.1~6.5モル%であってもよく、0.15~5.0モル%であってもよい。
【0066】
硬化性組成物において、式(I)で表される化合物の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、25質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。式(I)で表される化合物の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよい。これらの観点から、式(I)で表される化合物の含有量は、硬化性組成物全質量を基準として、例えば、0.0001~25質量%であってもよく、0.001~25質量%であってもよく、0.01~15質量%であってもよく、0.1~10質量%以下であってもよい。
【0067】
<重合開始剤>
本実施形態の硬化性組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤は、光や熱の作用により活性ラジカル、酸等を発生し、重合を開始しうる化合物であれば特に限定はないが、光重合開始剤が好ましい。活性ラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、O-アシルオキシム化合物、アルキルフェノン化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ホスフィン酸エステル化合物及びビイミダゾール化合物が挙げられる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0068】
上記O-アシルオキシム化合物は、式(c1)で表される部分構造を有する化合物である。以下、*は結合手を表す。
【0069】
【化10】
【0070】
前記O-アシルオキシム化合物としては、例えば、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-イミン及びN-ベンゾイルオキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミンが挙げられる。イルガキュア(登録商標)OXE01、OXE02、OXE03(以上、BASF社製)、アデカアークルズ(登録商標)N-1919、NCI-831、NCI-930(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。
【0071】
上記アルキルフェノン化合物は、式(c2)で表される部分構造又は式(c3)で表される部分構造を有する化合物である。これらの部分構造中、ベンゼン環は置換基を有していてもよい。
【化11】
【0072】
式(c2)で表される部分構造を有する化合物としては、例えば、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタン-1-オンが挙げられる。イルガキュア369、907、379(以上、BASF社製)等の市販品を用いてもよい。
【0073】
式(c3)で表される部分構造を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペニルフェニル)プロパン-1-オンのオリゴマー、α,α-ジエトキシアセトフェノン、及びベンジルジメチルケタールが挙げられる。
【0074】
上記トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0075】
上記アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。イルガキュア(登録商標)819(BASF社製)等の市販品を用いてもよい。
【0076】
上記ホスフィン酸エステル化合物としては、例えば、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルが挙げられる。Omnirad TPO-L(IGM Resins B.V社製)等の市販品を用いてもよい。
【0077】
上記ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(ジアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、及び4,4’5,5’-位のフェニル基がカルボアルコキシ基により置換されているビイミダゾール化合物(例えば、特開平7-10913号公報等参照)が挙げられる。
【0078】
重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;9,10-フェナンスレンキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、ベンジル、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等を用いることもできる。
【0079】
重合開始剤としては、酸発生剤も含まれる。酸発生剤としては、例えば、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩類や、ニトロベンジルトシレート類、及びベンゾイントシレート類が挙げられる。
【0080】
重合開始剤は、O-アシルオキシム化合物、アルキルフェノン化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ホスフィン酸エステル化合物、及びビイミダゾール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合開始剤が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びホスフィン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合開始剤がより好ましく、ホスフィン酸エステル化合物が更に好ましい。
【0081】
重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びホスフィン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、アシルホスフィンオキサイド化合物及びホスフィン酸エステル化合物の合計の含有量は、重合開始剤全質量を基準として、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0082】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0083】
<その他の成分>
本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて樹脂、溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤等を含んでいてもよい。
【0084】
(硬化性組成物の製造方法)
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、芳香族複素環を有する重合性化合物、無機微粒子、式(I)で表される化合物、重合開始剤及び必要に応じその他の成分を混合することにより製造できる。
【0085】
(硬化膜及びその製造方法)
本実施形態の硬化膜は、上記硬化性組成物から形成される。
【0086】
スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ-コート法、ノズルコート法等の湿式法で上記硬化性組成物を処理することにより硬化膜を作製できる。フォトリソグラフ法、インクジェット印刷法等を利用することによりパターン化された硬化膜を作製することもできる。
【0087】
硬化膜の厚さは、通常、100μm以下であり、1μm~50μmが好ましい。
【0088】
上記硬化膜は、マイクロレンズ、封止材等として使用でき、特に発光素子のマイクロレンズ、封止材等として使用することが好ましい。
【実施例0089】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0090】
(実施例1)
[無機微粒子分散液の製造]
酸化ジルコニウム分散液(酸化ジルコニウム/分散剤/メチルエチルケトン=55/15/30、質量比、酸化ジルコニウムの体積平均粒径:10nm)に、重合性化合物としてベンジルアクリレート(東京化成工業(株)社製)を加え、減圧留去することでメチルエチルケトンを除去し、酸化ジルコニウム粒子のベンジルアクリレート分散液(以下、無機微粒子分散液という)を得た。メチルエチルケトンの残存量はガスクロマトグラフィー(GC)分析により確認したところ、検出されなかった。
【0091】
[硬化性組成物の調製]
酸化ジルコニウム粒子の質量が24質量部、分散剤の質量が6質量部、ベンジルアクリレート(BzA)の質量が31質量部、9-ビニルカルバゾール(VCz)(日触ファインケミカル(株)社製)の質量が20質量部、アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(VEEA、(株)日本触媒社製、以下VEEAともいう)の質量が5質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(新中村化学(株)製、以下A-9550ともいう)の質量が6質量部となるように上記無機微粒子分散液の成分割合を調製し、重合開始剤としてフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(Omnirad TPO-L、IGM Resins B.V.社製、以下TPO-Lともいう)を8質量部、式(I)で表される化合物としてN,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(東京化成工業(株)製)を0.01質量部配合して溶解させた後、PTFE製のメンブレンフィルターでろ過し、硬化性組成物を得た。
【0092】
(実施例2)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を0.05質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0093】
(実施例3)
式(I)で表される化合物として、N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の代わりに、トリ-n-オクチルアミン(TOA)を0.0274質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0094】
(実施例4)
トリ-n-オクチルアミン(TOA)の配合量を0.137質量部としたこと以外は実施例3と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0095】
(実施例5)
実施例1と同様にして無機微粒子分散液を製造した。
【0096】
酸化ジルコニウム粒子の質量が20.6質量部、分散剤の質量が5.2質量部、ベンジルアクリレート(BzA)の質量が38.2質量部、9-ビニルカルバゾール(VCz)(日触ファインケミカル(株)社製)の質量が28質量部となるように上記無機微粒子分散液の成分割合を調製し、重合開始剤としてフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(Omnirad TPO-L、IGM Resins B.V.社製)を8質量部、式(I)で表される化合物としてN,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(東京化成工業(株)製)を0.014質量部配合して溶解させた後、PTFE製のメンブレンフィルターでろ過し、硬化性組成物を得た。
【0097】
(実施例6)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を0.07質量部としたこと以外は実施例5と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0098】
(実施例7)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を0.001質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0099】
(実施例8)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を0.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0100】
(実施例9)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0101】
(実施例10)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0102】
(比較例1)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較硬化性組成物を得た。
【0103】
(実施例11)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0104】
(実施例12)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の配合量を5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0105】
(実施例13)
実施例1と同様にして無機微粒子分散液を製造した。
【0106】
酸化ジルコニウム粒子の質量が24質量部、分散剤の質量が6質量部、ベンジルアクリレート(BzA)の質量が20質量部、上記式(B1d-5)で表される化合物(6EDNTA)の質量が31質量部、アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(VEEA、(株)日本触媒社製)の質量が5質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(新中村化学(株)製、A-9550)の質量が6質量部となるように上記無機微粒子分散液の成分割合を調製し、重合開始剤としてアデカアークルズ(登録商標)NCI-930(O-アシルオキシム化合物、株式会社ADEKA製)を8質量部、式(I)で表される化合物としてN,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(東京化成工業(株)製)を0.025質量部配合して溶解させた後、PTFE製のメンブレンフィルターでろ過し、硬化性組成物を得た。
【0107】
(比較例2)
N,N―ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を配合しなかったこと以外は、実施例13と同様にして、比較硬化性組成物を得た。
【0108】
[硬化性組成物の評価]
(粘度上昇率)
実施例1~12及び比較例1で得られた各硬化性組成物の温度23℃での粘度を、E型粘度計を用い、ローターの回転数10rpmにして測定し、これを0時間での粘度とした。得られた硬化性組成物を23℃、暗所にて1週間保存した後、上記同様の条件で硬化性組成物の粘度を測定し、(1週間後の粘度)/(0時間での粘度)を粘度上昇率として算出した。この粘度上昇率が低いほど、硬化性組成物の保存安定性に優れる。粘度上昇率は1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。
【0109】
(粘度変化[目視])
実施例13及び比較例2で得られた各硬化性組成物について、0時間のサンプル及び23℃で暗所にて1週間保存した後のサンプルそれぞれの23℃での粘度を目視にて確認した。具体的には、サンプル(23℃)を入れた容器を45°傾け、サンプルの流れ易さを目視で観察し、流れ難いものほど、粘度が高いと判断した。0時間のサンプルからの粘度上昇が少ないほど、硬化性組成物の保存安定性に優れる。
実施例13の硬化性組成物では、0時間のサンプルと1週間保存した後のサンプルとで粘度の違いは見られなかった。比較例2の硬化性組成物では、1週間保存した後のサンプルにおいて、0時間のサンプルよりも粘度が増大していた。すなわち、実施例13の硬化性組成物は、比較例2の硬化性組成物よりも、保存安定性に優れる。
【0110】
[硬化膜の製造とその評価]
得られた各硬化性組成物を2インチ角のガラス基板上に、硬化膜の平均厚さが10μmになるようにスピンコータを用いて塗布した。次いで、LEDランプを用い、波長385nm、積算光量2000J/mのUV照射を行い、硬化膜を得た。
【0111】
得られた硬化膜を用いて、微小圧子押込み硬さ試験(ナノ・インデンテーション試験)を実施し、ヤング率(押込み弾性率)EIT及び回復率(押込み塑性・弾性)nITを測定した。この試験では、ガラス基板の影響を受けないよう、押込み深さが膜厚の20%以下となるように最大負荷荷重を調整した。ヤング率(押込み弾性率)EIT及び回復率(押込み塑性・弾性)nITの測定は、ISO14577-1に基づく。
【0112】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
また、実施例7~10の硬化性組成物から形成された硬化膜におけるStrain[nm](押込み深さ)及びLoad[nm](試験荷重)の関係を図1に示す。Strain[nm](押込み深さ)及びLoad[nm](試験荷重)の関係は、硬化膜の回復率の指標である。図中、「DIPEA0.001部」は実施例7に、「DIPEA0.1部」は実施例8に、「DIPEA1部」は実施例9に、「DIPEA10部」は実施例10にそれぞれ対応する。表1及び図1からわかるように、実施例10は、粘度上昇率は良好であるが、回復率が11以下と低下し(表1)、実施例10により得られた硬化膜は、膜の戻りが少し低下した。(図1
【0113】
【表1】
【0114】
表1から、実施例の硬化性組成物は、比較例の硬化性組成物と比較して、粘度上昇率が低く、保存安定性に優れていることがわかる。
図1