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特開2024-12185時間スキュー量を求めるシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012185
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】時間スキュー量を求めるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20240118BHJP
【FI】
G01R31/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115970
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】202221040422
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18/220,222
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェック・シヴァラム
(72)【発明者】
【氏名】ニランジャン・アール・ヘグデ
(72)【発明者】
【氏名】シュバ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ・エヌ・エイチ・スリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨゲシュ・エム・パイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカトラジ・メリーナメイン
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA01
2G003AB07
2G003AB09
2G003AE06
2G003AF03
2G003AG03
2G003AH01
2G003AH05
(57)【要約】
【課題】2つの測定プローブ間の時間スキューを自動的に求める。
【解決手段】試験測定システムは、第1プローブ及び第2プローブと、1つ以上のプロセッサとを有し、1つ以上のプロセッサが、被試験デバイス(DUT)からの電流信号を第1プローブを介して測定する処理と、DUTからの電圧信号を第2プローブを介して測定する処理と、測定された電流信号からモデル化された電圧信号を生成する処理と、モデル化された電圧信号を測定された電圧信号と比較する処理と、これら比較された信号から第1プローブと第2プローブとの間の時間スキュー量を求める処理とを行うように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プローブ及び第2プローブと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
被試験デバイス(DUT)からの電流信号を上記第1プローブを介して測定する処理と、
上記DUTからの電圧信号を上記第2プローブを介して測定する処理と、
測定された上記電流信号からモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記モデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と、
これら比較された信号から上記第1プローブと上記第2プローブとの間の上記時間スキュー量を求める処理と、
上記システム内のスキュー値を求めた上記時間スキュー量に設定する処理と、
上記スキュー値を表示する処理と
を行うように構成される2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサが、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との間の信号マッチングを行うように更に構成される請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項3】
上記1つ以上のプロセッサが、
上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、
上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の水平距離を測定する処理と
を行うように更に構成される請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項4】
上記1つ以上のプロセッサが、
上記モデル化された電圧信号を生成するために使用されるパラメータを変更する処理と、
変更されたパラメータを使用して新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と
を行うように更に構成される請求項3の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項5】
上記システムが、
上記パラメータを変更する処理と、
変更されたパラメータを用いて新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記新しいモデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との差がスキュー閾値量以下になるまで、上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と
を反復して行う請求項4の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項6】
上記1つ以上のプロセッサが、
上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、
上記モデル化された電圧信号についての上記共通信号特性との間の垂直距離を測定する処理と
を行うように更に構成される請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項7】
上記1つ以上のプロセッサが、上記垂直距離に基づいてDUT測定回路における実効インダクタンスの量を求める処理を行うように更に構成される請求項6の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項8】
上記1つ以上のプロセッサが、上記垂直距離に基づいて、上記DUTのスルーレートの量を反復して求める処理を行うように更に構成される請求項6の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項9】
上記1つ以上のプロセッサが、
測定された上記電圧信号に対して周波数変換を実行する処理と、
上記モデル化された電圧信号に対して周波数変換を実行する処理と、
周波数領域において変換されたものを比較する処理と
を行うように更に構成される請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項10】
上記1つ以上のプロセッサが、上記第1プローブと上記第2プローブとの間の時間スキュー量を反復して求める処理を行いながら、測定された上記電圧信号及び上記モデル化された電圧信号をユーザに同時に表示する処理を行うように更に構成される請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項11】
2つの測定プローブ間の上記時間スキュー量を求めるタイミングを制御するパラメータは、測定された電流の閾値、プローブ・パラメータ、実効インダクタンス及びバイアス電圧を含むユーザの好みに基づくものである請求項1の2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステム。
【請求項12】
被試験デバイス(DUT)からの電流信号を第1プローブを介して測定する処理と、
上記DUTからの電圧信号を第2プローブを介して測定する処理と、
測定された上記電流信号からモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記モデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と、
比較された信号から上記第1プローブと上記第2プローブとの間の時間スキュー量を求める処理と、
システム内のスキュー値を求めた上記時間スキュー量に設定する処理と、
上記スキュー値を表示する処理と
を具える時間スキュー量を求める方法。
【請求項13】
測定された上記電圧信号に対して上記モデル化された電圧信号を信号マッチングさせる処理を更に具える請求項12の時間スキュー量を求める方法。
【請求項14】
上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、
上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の水平距離を測定する処理と
を更に具える請求項12の時間スキュー量を求める方法。
【請求項15】
上記モデル化された電圧信号を生成するために使用されるパラメータを変更する処理と、
変更されたパラメータを使用して新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と
を更に具える請求項14の時間スキュー量を求める方法。
【請求項16】
上記パラメータを変更する処理と、
変更された上記パラメータを用いて新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、
上記新しいモデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との間の差がスキュー閾値を下回るまで、測定された上記電圧信号に対して上記新しいモデル化された電圧信号を比較する処理と
を反復して行う請求項15の時間スキュー量を求める方法。
【請求項17】
上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、
上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の垂直距離を測定する処理と
を更に具える請求項12の時間スキュー量を求める方法。
【請求項18】
上記垂直距離に基づいて、DUT測定回路における実効インダクタンスの量を求める処理を更に具える請求項17の時間スキュー量を求める方法。
【請求項19】
測定された上記電圧信号を時間領域から周波数領域に変換する処理と、
上記モデル化された電圧信号を時間領域から周波数領域に変換する処理と、
周波数領域において変換されたものを比較する処理と
を更に具える請求項12の時間スキュー量を求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧半導体の自動デスキューシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー・エレクトロニクスに使用される半導体材料は、シリコンから、シリコン・カーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのワイド・バンド・ギャップ(WBG)半導体に移行しつつある。この材料の変更は、より高い電力レベルでのWBG半導体の優れた性能によるものであり、自動車及び産業用アプリケーションへの採用が増加している。MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又は絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)のスイッチング・パラメータの測定は、一般的にダブル・パルス試験(DPT)法を使用して実行される。この方法では、誘導性クランプ回路において、デバイスのゲートに2つのパルスが別々の時間に印加される。
【0003】
ダブル・パルス試験は、アクティブ電流プローブと差動電圧プローブを使用して実行される。各プローブには独自の特性伝搬遅延があり、電流と電圧の同時のアクイジション(波形サンプル取得)における遅延の変動の原因となる。同時アクイジション中の複数のプローブ間のこの遅延は、時間の「スキュー」として知られている。試験をする前に、これらプローブの「デスキュー」として知られるプロセスで、複数のプローブ間の時間のミスアライメント(不一致)を排除又は最小限に抑えて、プローブ間のこの遅延を補正することが重要である。そうしないと、タイミング・スキューによって、このような不正確な測定に基づいて、不正確な測定と計算が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-257905号公報
【特許文献2】特開2023-067867号公報
【特許文献3】特開2023-067868号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「テクトロニクス社製オシロスコープ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2023年7月13日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes>
【非特許文献2】「電流プローブ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2023年7月13日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/oscilloscope-probes/current-probes>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
WBG試験に固有の問題の1つは、従来のデスキュー方法では、WBG材料の試験に必要なレベルに対して低すぎる動作電圧レベルに制限されていることである。これらの限られた電圧レベルでのデスキューは、実際のWBG試験がWBG材料の試験の一般的な電圧レベルで実行される場合、不正確な結果を引き起こす可能性がある。更に、WBGダブル・パルス試験では、シャント抵抗が使用されるが、現時点では、一般的に同軸プローブのみが校正されているため、シャント抵抗のスキューを簡単に定量化する方法がない。
【0007】
現在のデスキュー方法のもう一つの問題は、デスキューが手作業のプロセスであり、ユーザによって操作されることである。従来のデスキュー・プロセスでは、ユーザが試験ベンチをセットアップし、各プローブを使用して、予備測定を実行する。試験のセットアップにおいては、トランジスタのオン/オフなどの明らかなある1つのイベントが発生すると、電流プローブと電圧プローブの両方がそのイベントを検出し、それらのトレースがオシロスコープなどのディスプレイに表示される。次に、ユーザは、2つのイベント間の画面上の水平距離を手動で測定して、これらプローブ間のスキューを求める。スキューを求めた後、ユーザは、デスキュー・セットアップ画面に、その値を手動で入力する。次に、試験測定装置は、プローブによって一方又は両方の測定値を補正されたデスキュー量で補正し、それらの測定値が一致(align:アライメント)するようにする。しかし、このような手作業の測定と、それに続くデスキューは、人為的ミスが発生しやすく、また、例えば、信号が、低サンプル・レートでアクイジション(波形サンプル取得)されたり、帯域幅の狭いオシロスコープでアクイジションされたりすると、不正確になる可能性がある。更に、高周波成分パターンの特性が見落とされたり、電圧波形や電流波形のノイズによって不明瞭になったりすることがある。このように、様々な理由から、手作業のデスキュー・プロセスでは、エラーが発生しやすくなる。
【0008】
WBG試験プラットフォームのデスキューに関する別の問題は、2つのWBGトランジスタの典型的なDPT試験セットアップ100を示す図1に示されている。一部のWBGメーカーは、試験セットアップ100のインダクタ(L)を、純粋な抵抗に置き換えている。この置き換えには、試験波形の位相シフトが追加されることで測定回路を変更してしまう、費用対効果が低い、追加のセットアップ時間が必要になる、最大電圧の制限が導入される、デスキュー測定の品質が低下するなど、多くの欠点がある。更に、この特定の方法は、スキュー値の測定を、特定の評価ボードに限定してしまう。このように、様々な理由から、インダクタを交換した法を使用したデスキューには問題がある。
【0009】
本開示による実施形態は、従来の試験システムにおけるこれらの問題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、開示技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0011】
実施例1は、2つの測定プローブ間の時間スキュー量を求めるシステムであって、第1プローブ及び第2プローブと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、被試験デバイス(DUT)からの電流信号を上記第1プローブを介して測定する処理と、上記DUTからの電圧信号を上記第2プローブを介して測定する処理と、測定された上記電流信号からモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記モデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と、これら比較された信号から上記第1プローブと上記第2プローブとの間の上記時間スキュー量を求める処理と、上記システム内のスキュー値を求めた上記時間スキュー量に設定する処理と、上記スキュー値を表示する処理とを行うように構成される。
【0012】
実施例2は、実施例1によるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との間の信号マッチングを行うように更に構成される。
【0013】
実施例3は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の水平距離を測定する処理とを行うように更に構成される。
【0014】
実施例4は、実施例3によるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記モデル化された電圧信号を生成するために使用されるパラメータを変更する処理と、変更されたパラメータを使用して新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理とを行うように更に構成される。
【0015】
実施例5は、実施例4によるシステムであって、上記システムが、上記パラメータを変更する処理と、変更されたパラメータを用いて新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記新しいモデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との差がスキュー閾値量以下になるまで、上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理とを反復して行う。
【0016】
実施例6は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、上記モデル化された電圧信号についての上記共通信号特性との間の垂直距離を測定する処理とを行うように更に構成される。
【0017】
実施例7は、実施例6によるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記垂直距離に基づいてDUT測定回路における実効インダクタンスの量を求める処理を行うように更に構成される。
【0018】
実施例8は、実施例7によるシステムであって、上記実効インダクタンスの量を求める処理は、反復して求められるものである。
【0019】
実施例9は、実施例6によるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記垂直距離に基づいて、上記DUTのスルーレートの量を反復して求める処理を行うように更に構成されている。
【0020】
実施例10は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、測定された上記電圧信号に対して周波数変換を実行する処理と、上記モデル化された電圧信号に対して周波数変換を実行する処理と、周波数領域において変換されたものを比較する処理とを行うように更に構成される。
【0021】
実施例11は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記第1プローブと上記第2プローブとの間の時間スキュー量を反復して求める処理を行いながら、測定された上記電圧信号及び上記モデル化された電圧信号をユーザに同時に表示する処理を行うように更に構成される。
【0022】
実施例12は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記第1プローブ又は上記第2プローブが、シャント抵抗プローブ、ホール効果プローブ及びロゴスキー・コイル・プローブのグループの中から選択されるプローブを含む。
【0023】
実施例13は、上述の実施例のいずれかに係るシステムであって、上記DUTは、SiC、GaN、GaN-HEMT、縦型GaN及びGaNカスコードの中から形成されたIGBTである。
【0024】
実施例14は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、2つの測定プローブ間の上記時間スキュー量を求めるタイミングを制御するパラメータは、ユーザの好みに基づくものである。
【0025】
実施例15は、実施例14によるシステムであって、上記ユーザの好みには、測定された電流の閾値、プローブ・パラメータ、実効インダクタンス及びバイアス電圧が含まれる。
【0026】
実施例16は、先行する実施例のいずれかによるシステムであって、上記1つ以上のプロセッサが、第1プローブと第2プローブとの間の時間スキュー量を、比較された信号から反復して求める処理を行うように構成される。
【0027】
実施例17は、方法であって、被試験デバイス(DUT)からの電流信号を第1プローブを介して測定する処理と、上記DUTからの電圧信号を第2プローブを介して測定する処理と、測定された上記電流信号からモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記モデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理と、比較された信号から上記第1プローブと上記第2プローブとの間の時間スキュー量を求める処理と、システム内のスキュー値を求めた上記時間スキュー量に設定する処理と、上記スキュー値を表示する処理とを具える。
【0028】
実施例18は、実施例17による方法であって、測定された上記電圧信号に対して上記モデル化された電圧信号を信号マッチングさせる処理を更に具える。
【0029】
実施例19は、実施例17による方法であって、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の水平距離を測定する処理とを更に具える。
【0030】
実施例20は、実施例19による方法であって、上記モデル化された電圧信号を生成するために使用されるパラメータを変更する処理と、変更されたパラメータを使用して新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記新しいモデル化された電圧信号を測定された上記電圧信号と比較する処理とを更に具える。
【0031】
実施例21は、実施例20による方法であって、上記パラメータを変更する処理と、変更された上記パラメータを用いて新しいモデル化された電圧信号を生成する処理と、上記新しいモデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号との間の差がスキュー閾値を下回るまで、測定された上記電圧信号に対して上記新しいモデル化された電圧信号を比較する処理とを反復して行う。
【0032】
実施例22は、先行する実施例の方法のいずれかによる方法であって、上記モデル化された電圧信号と測定された上記電圧信号の両方についての共通信号特性を特定する処理と、上記モデル化された電圧信号の上記共通信号特性との間の垂直距離を測定する処理とを更に具える。
【0033】
実施例23は、実施例22による方法であって、上記垂直距離に基づいて、DUT測定回路における実効インダクタンスの量を求める処理を更に具える。
【0034】
実施例24は、実施例23による方法であって、上記実効インダクタンスの量を求める処理が反復して求められるものである。
【0035】
実施例25は、先行する実施例の方法のいずれかによる方法であって、測定された上記電圧信号を時間領域から周波数領域に変換する処理と、上記モデル化された電圧信号を時間領域から周波数領域に変換する処理と、周波数領域において変換されたものを比較する処理とを更に具える。
【0036】
実施例26は、先行する実施例の方法のいずれかによる方法であって、比較された信号から上記第1プローブと上記第2プローブとの間の時間スキュー量を求める処理が、反復して求めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本開示技術の実施形態が動作しても良いWBGデバイス用のダブル・パルス試験プラットフォーム及び回路を示す。
図2A図2Aは、本開示技術の実施形態による自動デスキュー・プロセスを含む試験測定装置のためのユーザ・デスキュー及び環境設定(configuration)インタフェースを示す。
図2B図2Bは、本開示技術の実施形態による自動デスキュー・プロセスを含む試験測定装置のためのユーザ・デスキュー及び環境設定インタフェースを示す。
図3図3は、本開示技術の実施形態によるId及びVdsを用いてプローブ間のスキューを求める動作例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、本開示技術の実施形態による、CVRプローブが試験プラットフォームと共に使用される場合のモデリングに使用される典型的なDPT回路の回路図である。
図4B図4Bは、本開示技術の実施形態による、TCP又はTRCPプローブが試験プラットフォームと共に使用される場合をモデル化するために使用される典型的なDPT回路の回路図である。
図5図5は、本開示技術の実施形態による、デバイスのターン・オン過渡時をモデル化するために使用される簡略化されたDPT回路の回路図である。
図6図6は、本開示技術の実施形態による、統計的にモデル化されたVdsと、スキュー量を自動的に決定するために使用される測定されたId及び測定されたVdsとを示す一例の画面である。
図7図7は、本開示技術の実施形態による、有効なパワー・ループ・インダクタンスを求めるための動作例を示すフローチャートである。
図8図8は、本開示技術の実施形態に従って、ターン・オン過渡時の様々な実効インダクタンスを用いて測定されたId及び統計的にモデル化されたVdsを示す一例の画面である。
図9図9は、本開示技術の実施形態による、Vdsモデルにおける微分フィルタの次数を正確に求めるための動作例を示すフローチャートである。
図10A図10Aは、本開示技術の実施形態による、ターン・オン過渡におけるフィルタの様々な次数の効果を示すスクリーン例の1つである。
図10B図10Bは、本開示技術の実施形態による、ターン・オン過渡におけるフィルタの様々な次数の効果を示すスクリーン例の1つである。
図10C図10Cは、本開示技術の実施形態による、ターン・オン過渡におけるフィルタの様々な次数の効果を示すスクリーン例の1つである。
図11図11は、本開示技術の実施形態によるモデルVdsに対する微分フィルタの様々な次数の影響を示す画面例である。
図12図12は、本開示技術の実施形態が動作する環境を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の様々な実施形態は、高電圧半導体のための自動デスキュー・システム及び方法を記載しており、これは、測定プローブのデスキュー処理時間を数時間から数分に短縮できる。
【0039】
以下の説明では、説明都合上、本開示を理解してもらうための具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者には、本開示がこれらの詳細なしに実施されても良いことが理解できよう。当業者であれば、本開示技術の実施形態(そのうちのいくつかは以下に記載される)が、多数のシステムに組み込まれ得ることが理解できよう。
【0040】
図2A図2Bは、自動デスキュー・プロセスを含む試験測定装置のユーザ・インタフェースの例を示している。コンテキスト(状況順応型)パネル200は、ユーザが、これを通して試験環境の回路パラメータを入力するための入力フィールドを有する。例えば、ユーザは、ドロップ・ダウン画面でプローブの形式を選択できる。本願で説明する自動デスキュー手順は、電流表示抵抗器(CVR:Current Viewing Resistor)プローブなどの電流シャント測定プローブや、米国オレゴン州ビーバートンのテクトロニクス社から入手可能なTCP及びTRCPシリーズ・プローブなどのアイソレーション型(ホール効果、トランス・ベース又はロゴスキー・コイル・ベースの)電流プローブ及び同等のプローブと共に使用できる。TRCPプローブは、ロゴスキー・コイルを利用する点でTCPプローブとは異なる。プロービングの形式に基づいて、プローブ抵抗とループ・インダクタンスが、本願で説明される自動デスキュー・プロセスで考慮される。
【0041】
ユーザは、プローブの抵抗値、バイアス電圧、微分次数(differential order)及び実効インダクタンスなどのセットアップの追加パラメータもコンテキスト・パネル200を通して入力する。もしユーザが、以下で説明する反復法を用いて自動的に決定されるデスキューを選択した場合、ユーザは、各試験の反復に使用されるステップ・サイズを入力することも求められる。図2Aに示す例では、ユーザは1nHのステップ・サイズを入力している。図2Bは、測定用の特定のチャンネルの割り当て、検索方向の開始/停止レベルなど、試験測定装置を操作するための更なる設定の詳細を示している。試験測定装置の他の典型的な操作に関して、図2A又は2Bに示されていない試験セットアップの他の試験パラメータが存在することがある。例えば、ユーザは、通常、試験セットアップ100(図1)のような試験セットアップからダブル・パルス試験(DPT)信号をアクイジション(波形サンプル取得)するが、電流と電圧の間のスキューを計算するために、この回路のパラメータを試験測定装置に提供する。また、割り当てられた測定チャンネルのDCオフセットと垂直スケールを設定して、di/dtの過渡時間の区間中、オシロスコープの画面全体に、いっぱいとなるようにすることも有益である。
【0042】
上述のパラメータが入力されたら、ユーザは、コンテキスト・スクリーン200内のWBGデスキュー・ボタンを押すことで、電流プローブと電圧プローブとの間のスキューを求めて、試験測定装置のこのようなスキューを補正するための自動プロセスを開始する。以下で詳しく説明するが、概して、試験測定装置は、入力されたパラメータを使用して電圧波形の統計的モデルを計算し、被試験WBGデバイスの特定のターン・オン/ターン・オフ遷移時のスキュー値を決定し、ユーザが視覚的に確認するためにスキュー値を出力する。もし反復法を選択した場合、試験測定装置は、反復法を使用して、スキュー値と、場合によっては、パワー・ループの実効インダクタンス値とを自動的に決定する。また、このプロセスでは、アクイジション(波形サンプル取得)した波形を生成された統計的モデルと照合し、最終的なスキュー値をチャンネル・アクイジション・システムに設定する。電圧と電流のスキューを除去すると、スキューの決定に使用したのと同じアクイジション波形で測定を行うことができる。
【0043】
図3は、本開示技術の実施形態によるId及びVds測定値を用いてスキューを見つけるフロー300における動作例を示すフローチャートである。最初に、工程302において、ユーザは、SiC又はGaNなど、どのタイプのパワー・デバイスを試験するかを選択する。次いで、工程304は、選択されたデバイスのタイプに基づいて、設定を開始する。いくつかの例では、GaNデバイスとして、GaN-HEMT、縦型GaN(Vertical GaN)及びGaNカスコード(GaN-cascode)が含まれても良い。
【0044】
次に、図1のプラットフォーム100のようなWBG試験プラットフォームに通電し、DPTのパルスを被試験デバイスに送信する。図1では、2つのMOSFETデバイス(110、120)が被試験のWBGデバイスであるが、別の実施形態では、別のタイプのWBGデバイスが試験されても良い。パルスが、MOSFETデバイス110、120に到達すると、ドレイン・ソース間電圧(Vds)、ドレイン電流(Id)及びゲート・ソース間電圧(Vgs)信号のようなデバイスからの測定信号が、工程306においてアクイジション(波形サンプル取得)される。これらの測定信号がアクイジションされると、試験測定装置は、工程308において、信号に対して閾値その他の分析を行って、デバイスのターン・オン及びターン・オフ領域を特定する。つまり、試験測定装置は、測定された信号に基づいて、測定されたデバイスがいつオンになり、いつ測定されたデバイスがオフになったかを求める。
【0045】
ターン・オン及びターン・オフ領域が特定された後、試験測定装置は、工程310において、ユーザが入力したパラメータを読み出す。例えば、試験測定装置は、コンテキスト・パネル200からユーザによって入力されたパラメータ又は他のパラメータを読み出す。
【0046】
次に、工程312において、試験測定装置は、測定されたドレイン電流Idと工程310で読み出されたパラメータに基づいて、モデルVdsを生成する。このドレイン・ソース間電圧は、キルヒホッフの電圧則(KVL:Kirchhoff's Voltage law、キルヒホッフの第2法則)を用いて、工程308において決定されるスイッチング過渡の任意の時間の間でモデル化できる。図4Aは、CVR形式のプローブをモデル化するために使用されるDPT試験回路400を示しており、この回路には、シャント抵抗器450があり、その両端間のシャント電圧を差動電圧プローブ460が測定する。図4Bは、TCP又はTRCPタイプのプローブをモデル化するために使用されるDPT試験回路402であり、TCP又はTRCPプローブからの出力を使用してドレイン電流Idを測定する。図4AのDPT試験回路400とは異なり、図4BのDPT試験回路402では、シャント抵抗の量は無視できる程度であり、代わりに、インダクタンス470が、TCP又はTRCPプローブによるインダクタ・インピーダンスを表す。
【0047】
以下の数式1は、図4A及び4Bに示すような代表的な試験回路にKVLを適用することによって得られる。
【数1】
ここで、Rprobeは、電流の測定に使用されるプローブの抵抗、Leffは、図4Aに示すパワー・ループのインダクタンスにおいて測定される実効インダクタンス、VDDは、DCバス電圧である。通常の動作中では、Vds_lowとVds_highを統計的にモデル化するのは複雑であるが、ターン・オン/オフ遷移(transitions)時は、これらの電圧の1つがボディ・ダイオードによってクランプされる。このため、いずれかの遷移で統計的モデルを生成できる。等価回路500が、図5に図示されるようにモデル化され、これは、本開示の例示的な実装に従って、ターン・オン過渡時の単純化されたDPT回路500を示す。
【0048】
図5のモデルDPT回路500にKVLを適用すると、容量性効果を無視したVds_lowを数式2のようにモデル化できる。
【数2】
ここで、Vhsbfはハイ・サイドのボディ・ダイオードの順方向電圧である。VDDとVhsbfは、ロー・サイドMOSFETの実効バイアス電圧(Veb)としてまとめることができ、これは、ターン・オン過渡時に一定である。従って、ロー・サイドのVdsは、数式3に示すように、IdとdId/dtの関数になる。
【数3】
【0049】
数式3を用いてVds_lowを正確にモデル化するには、図5に示すRprobeとLeffが、適切な値である必要がある。Rprobeは、電流測定に使用されるプローブ方法に依存しており、これは、図2Aにおいて、ユーザによって指定される。もし図4Aに示すような電流シャント抵抗器450を使用して電流を測定する場合、プローブの抵抗は、電流シャント抵抗器のデータ・シートのパラメータを使用して見つけることができる。これに代えて、アイソレーションを用いるTCP又はTRCPプローブを使用する場合、図4Bに示すように、測定はホール効果に基づいているため、プローブの抵抗は無視できる。電流シャント抵抗器のプロービング方法に関する数式は、次のとおりである。
【数4】
アイソレーションされた電流プロービング又はTRCP方法に関する数式は、次のとおりである。
【数5】
【0050】
effがモデリング・システムに事前に知られている場合、即ち、コンテキスト・パネル200に入力されている場合又は別のプロセスから知られている場合、それを数式への入力として与えることができる。場合によっては、Leffの値が不明であり、決定が困難なこともある。本開示技術による実施形態は、Leff値を決定するための自動化された方法を提供し、これは、図7及び図8を参照して、以下で詳細に説明される。
【0051】
図3に戻ると、上述のモデル回路及び数式を使用して、Vdsが工程312でモデル化されると、試験測定装置は、工程306で測定された実際のVdsに対して、工程318でモデル化されたVdsを重ねたプロットを作成する。図6の表示画面600の例は、測定された信号Id610、Vds620と、工程312において計算又はモデル化されたVds630の例を示す。実際には、表示画面600は、実装の詳細に応じて、ユーザに示される場合と示されない場合がある。
【0052】
図2Aのコンテキスト・パネル200の「反復法」ボックスがユーザによって選択された場合、図6に図示される生成されたVdsモデルは、工程322(図3)において、測定されたVdsに対して比較される。実際には、水平方向のアライメント(一致)は、工程312で生成された統計的モデルと、工程306でアクイジション(波形サンプル取得)された波形との間で、試験測定装置において相互相関を利用して見出される。生成されたVdsと測定されたVdsの水平方向のミスマッチ(不一致)は、モデル化工程312においてスキューに使用された値が、最初は不正確であったことを表し、比較工程322を抜けて、工程324へと進む。工程324では、モデルにおいてスキューに使用される値が変更され、工程312においてモデルが再生成される。工程312、318、322及び324の間のループは、生成されたVdsと測定されたVdsとの間の水平方向のミスマッチが、ユーザが指定した又は試験測定装置で決定された最小アクイジション・システム・スキュー閾値を下回るまで継続する。いくつかの実施形態では、最小アクイジション・システム・スキューは、0.1ナノ秒である。
【0053】
また、工程322において、生成されたVdsと測定されたVdsとが、垂直方向のミスマッチ(不一致)に関して比較される。もし垂直方向のミスマッチが限界を超えたら、そのモデルは、パワー・ループのインダクタンス又はフィルタ次数のいずれかを最初に誤って予測したことになる。本開示技術の実施形態には、以下に記載されるように、これらの値を自動的に求める方法もある。
【0054】
図3に戻ると、フロー300において、試験測定装置が、水平及び垂直の両方のミスマッチが、工程322において、閾値を下回っていると判断した場合又はユーザが図2Aのコンテキスト・パネル200において反復処理を指示しなかった場合、フロー300は、判断工程320又は322のいずれかを抜けて、別の判断工程326へと進む。上述したフロー300によって求めたスキュー量が、試験測定装置のハードウェアの制限範囲(limits)内にない場合、判断工程326は、いいえの方向に抜けて、工程328において、エラー・メッセージがユーザに伝えられる。一実施形態では、スキューの限界(limit)は、125ナノ秒である。これに代えて、もしフロー300で求めたスキュー量がハードウェアの制限内にあると判断工程326が示す場合、工程330において、このスキュー値がユーザに示され、工程332において、試験に使用されるスキュー値として自動的に設定される。更に、スキューを求めるためにCVRのプローブ形式が使用された場合、フロー300は、求めた抵抗値に基づいて、試験測定装置上の波形の出力を自動的にスケール調整する。この自動再スケール調整により、ユーザは、更に測定を行う前に、この手順を実行する必要がなくなる。
【0055】
上述したように、図3のフロー300で行われる反復処理の中の1つは、実効インダクタンスを求めることであり、これは、工程318における測定及びモデル化されたVds信号を比較する処理と、工程322におけるこれらの垂直ミスマッチを比較する処理と、実効インダクタンスのパラメータを調整する処理314と、次いで、工程312におけるモデルを生成する際に更新(アップデート)されたパラメータを使用する処理とによって行われる。これら工程のより詳細な図が、図7のフローチャート700に示されている。
【0056】
図7において、工程702は、図3の工程304及び306と同様に、Vds、Id及び他の回路パラメータを捕捉する。次に、DCバイアスを比較し、図5を参照して上述のように、モデルを更新(アップデート)する。次いで、工程706は、図3の工程308のように、測定されるデバイスのターン・オン及びターン・オフ領域を特定し、そして、Vdsが、工程312で行われたのとよく似た工程712でモデル化される。
【0057】
判断工程716は、モデル化されたVdsと測定されたVdsとの間の垂直のマッチング量を比較する。好ましくは、これらの比較は、Vds_lowのモデル化及び測定されたバージョンを用いて実行されるが、本願に記載される発明の概念に影響を与えることなく、様々なモデル及び測定が、様々な実装実施形態において使用されて良いので、単にVdsと呼ぶことにする。図8は、Vdsのモデル化に使用される実効インダクタンスが、結果にどのように影響するかを示している。図8に図示されるように、表示画面800は、測定されたVds810に加えて、2つのモデル化されたVds信号820、830を示す。モデル化されたVds信号820は、実効インダクタンスLeffが、最初に低すぎる選択がされた場合のモデルの結果を示し、一方、モデル化されたVds信号830は、実効インダクタンスLeffが最初に高すぎる選択がされた場合のモデルの結果を示す。従って、判断工程716(図7)において、測定されたVdsに対するモデル化されたVdsの垂直方向の差を比較することにより、試験測定装置は、Leffの正しい値がモデルに使用されたか否かがわかる。モデル化されたVdsが測定されたVdsと垂直方向にマッチング(一致)する場合、判断工程716は、はいの方向に抜けて、Leff値がユーザに示される。これに代えて、モデル化されたVdsが垂直方向に測定されたVdsとマッチングしない場合、判断工程716は、いいえの方向に抜けて、別の判断工程720に進む。
【0058】
判断工程720は、モデル化されたVdsに対して、測定されたVdsを比較する。測定されたVdsが、モデル化されたVdsよりも大きい場合、Leff値は、コンテキスト・パネル200(図2A)においてユーザによって提供されるステップ・サイズだけ減少する。例えば、図8を参照すると、もしモデル化されたVdsがモデル化されたVds信号830のように見えて、測定されたVds810を下回っている場合、モデルで使用されているLeff値が高すぎるので、工程722においてLeff値を減少させる。これに代えて、もしモデル化されたVds信号が、モデル化されたVds信号810のように見えて、測定されたVds810を上回っている場合、モデルで使用されているLeff値が低すぎるので、Leff値を工程724で増加させる。
【0059】
上記のLeffを求める反復方法と同様に、モデル内の別の値を反復して求めても良い。特に、図3の工程316で概略が説明されている微分フィルタの次数を求める処理は、図9のフロー900で図示される処理を用いて求めても良い。
【0060】
背景として、図1の試験セットアップ100などのDPT回路のインダクタンス特性は、数式3にLeffの形で含まれている。DPT回路の電圧降下の主な要因は、ターン・オン過渡時に電流が急速に上昇するので、インダクタンスによるものである。そのため、電流変化率を正確に求めることは、図1のインダクタLのようなインダクタの両端間の電圧降下を正確にモデル化するのに有益である。電流変化率は、数式4に従った中心差分のフィルタを使用して求められ、数式4aに示すように表すことができる。
【数4a】
数式4aを参照すると、微分フィルタの次数は、hで表される。フィルタの次数が小さ過ぎると、モデル化されたVds波形に高周波成分が導入される。次数が増えていくと、高周波成分が平滑化されていき、波形がより良くモデル化される。フィルタの次数が大きすぎると、モデル化された波形の過渡特性が不明瞭になる。フィルタ次数の影響が、図10A、10B及び10Cに示されている。
【0061】
図10Aは、測定されたVds1010に加えて、正確なフィルタ次数を使用してモデル化されたVds1020を示している。モデル化されたVds1020が、測定されたVds1010に緊密に従っていることに注意されたい。図10Bは、ターン・オン過渡時に大きな微分次数のフィルタを持つVds1030のフラットなモデルの例を示し、図10Cは、ターン・オン過渡時に小さな微分次数のフィルタを使用したVds1040のノイズの多いモデルの例を示している。
【0062】
図9に戻ると、Vdsモデルで使用する微分フィルタの適切な次数を求めるフロー900が示されている。いくつかの工程、例えば、DPT回路内のデバイスに基づいてVdsを捕捉又は測定することや、Vdsをモデル化することなどは、他のフローチャートを参照して上述されており、両方とも工程902に示されている。そして、工程904では、ターン・オン及びターン・オフ領域が特定されるが、これも上述の通りである。しかしながら、フロー900において異なるのは、工程906において、捕捉されたVds信号に対して高速フーリエ変換を実行し、工程910において、モデル化されたVds信号に対して高速フーリエ変換を実行することである。次いで、変換された信号は、比較工程912及び920において、周波数領域において互いに比較される。
【0063】
2つの変換された信号の間の基本周波数が、周波数領域においてマッチングしない場合、工程914において、フィルタの次数を減少させる。その後、Vdsは、工程916において、再度モデル化され、工程910で再び変換される。次いで、より低いフィルタ次数を有するアップデートされ、変換されたモデル信号は、比較工程912において基本周波数がマッチングしていると判断されるまで、測定されたVds信号の変換されたものに対して、周波数領域において再びマッチングされる。このプロセスにより、フィルタ次数が、あり得る最小の値で開始されることを確実にする。このフィルタは、微分フィルタであるため、実際の信号には、高周波成分が導入される。図11は、比較工程920において判断される高周波マッチング・プロセスが、適切なフィルタ次数の選択に、どのように影響するかの例を示す。図11では、4つの別々の信号が示されており、これらは全て、FFTによって周波数領域に変換されている。変換された、測定されたVds信号は、信号1110として図示されている。正しいフィルタを用いて変換されたモデルは、信号1120として図示される。フィルタ処理不足のモデルを変換したものと、フィルタ処理過剰のモデルを変換したものが、それぞれ信号1130及び1140として示されている。この場合、FFTの大きさの違いは、0dBmを基準として、高い周波数ほど、裸眼でも顕著になる。
【0064】
図9に戻ると、これらの高い周波数は、比較工程920において比較される。これらがマッチングしない場合、工程922において、フィルタの次数を増加させ、Vdsが、工程916で再度モデル化される。このプロセスは、適切な次数のフィルタが選択されるまで繰り返される。
【0065】
図12は、プラットフォームと呼ぶこともある試験測定システム90を示すブロック図であり、これは、オシロスコープ又は他の試験測定装置などの試験測定装置40を有している。説明を簡潔にするため、試験測定装置40を測定装置と呼ぶことがある。システム90のもう1つの部分は、電力供給及び測定装置50であり、これは、説明を簡潔にするため、電力供給装置と呼ぶことにする。これらの用語は、いずれかの装置の機能を限定することを意図したものではなく、そのような限定を示唆するものではない。
【0066】
測定装置40は、多種多様なコンポーネントを有しても良く、これには、ユーザが測定装置上の様々なメニューのインタラクティブな操作可能にするユーザ・インタフェース44が含まれる。ユーザ・インタフェース44により、ユーザは、タッチスクリーンを有するディスプレイ又は様々なボタン及びノブなどを通して、実行する試験に関する選択、パラメータの設定などを行うことができる。測定装置40は、1つ以上のプロセッサ46を有しても良く、これは、ユーザ入力を受けて、パラメータ及び他の選択を測定装置に送信し、また、電力供給装置の出力を受け、そのデータからユーザのための出力を生成しても良い。測定装置40は、DUTのパラメータの試験と測定を行う測定ユニット47を備えている。
【0067】
本願で使用される「プロセッサ」という用語は、更に詳細に説明されるように、1つ以上のマイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)や特定用途向け集積回路(ASIC)など、命令を受信してアクションを実行できる任意の電子部品を意味する。
【0068】
測定装置40は、ケーブル又は他の直接接続部48を介して電力供給装置50と通信する。ケーブルは、接続回路を介して各装置に接続されるため、これら装置は、ケーブルの再接続なしに、構成を切り替えることができる。
【0069】
電力供給装置50は、また、いくつかの様々な要素を有していても良い。これらとしては、1つ以上のプロセッサ52、被試験デバイス(DUT)70に高電圧を供給する高電圧回路56及び高電圧回路の保護として機能するインターロック54があっても良い。インターロックは、高電圧回路によって生成される高電圧に起因するデバイスの損傷や危険な状態を防ぐように設計されている。DUTインタフェース58は、外部に取り付けられるDUT70に結合される。DUT70は、試験構成に応じて、実際には、2つ以上の別々のデバイスが含まれても良い。DUTインタフェース58は、DUT70が電力供給装置50内の様々なコンポーネント(構成要素)に接続することを可能にするユニバーサルDUTインタフェースによって具体化されても良い。電力供給装置50は、更に、装置50をDUT70から保護するためのバリア(障壁)64を有していても良い。
【0070】
電力供給装置50内の高電圧回路に加えて、DUT70の動作は、熱を発生する可能性があり、また、DUTは、動作するのに特定の温度範囲を必要とすることがある。電力供給装置50は、DUT70の温度を制御する温度制御回路62を有していても良い。1つ以上のプロセッサ52は、温度を監視し、温度制御回路62を動作させる。温度制御回路62は、例えば、ファン、切り替え可能なヒートシンク、冷却システム、ヒータなどのアイテムから構成されても良い。電力供給装置50は、また、スイッチング回路60を有していても良く、これは、DUT70を試験及び測定するために、電力供給装置内の様々なコンポーネントの動作を制御する。
【0071】
概して、動作において、ユーザは、ユーザ・インタフェース44を通して、遠隔又は直接的に、DUT70の特性を測定するために、電力供給装置50の動作を制御するための入力を行う。
【0072】
概して、図1を参照して上述した試験セットアップ100は、電力供給装置50の内部、より具体的には、スイッチング回路60内に収容されるが、本開示技術の実施形態はそのような例に限定されない。また、上述のプローブは、DUT70に結合されてもよく、概して、測定装置40にも結合され、ここで、測定は、測定ユニット47によって行われる。上述した自動化されたデスキュー手順、実効インダクタンス手順及び適切なフィルタ次数決定手順は、概して、測定装置の1つ以上のプロセッサ46によって実行されるが、電力供給装置50の1つ以上のプロセッサ52に部分的又は完全に実行させることもできる。
【0073】
概して、本開示による実施形態は、測定プローブ間の正しいスキュー量を自動的に決定することによって、装置の性能を向上させる。いくつかの実施形態では、正しい実効インピーダンス及び微分フィルタの正しい次数も決定する。差動電圧プローブが使用される場合、実施形態は、更に、設定された抵抗値に基づいて、電流波形を自動的に再スケール調整する。
【0074】
また、従来、プローブ間のスキューは、試験セットアップで任意の測定を開始する前に計算されるのに対し、本開示技術の実施形態では、測定システムのスキューは、測定される波形のアクイジション(波形サンプル取得)後に実行される。更に、デスキューは、測定レベルごとに設定できるため、ユーザは、全ての測定に対して全般的なデスキューを実行するのではなく、特定の測定に対してデスキューを実行するか否かを判断できる。
【0075】
上述の解決手法は、WBG信号だけでなく、IGBT及びSiデバイスにも適用できるため、幅広いパワー・デバイスをサポートしている。
【0076】
いくつかの実施形態では、統計的モデル、アクイジションされたVds及びId信号を、各反復における時間領域波形として、オシロスコープなどの試験測定装置のディスプレイ上でオーバーラップして示し、その結果、ユーザは、スキュー、実効インダクタンス及び微分フィルタの次数の自動設定を、これらの値を求めているときに、見ることができる。
【0077】
更に、いくつかの実施形態では、最終的に計算されたスキュー値が、指定されたチャンネルに割り当てられる。いくつかの実施形態では、ユーザは、任意の更なる後処理のために、デスキューされた波形を保存できる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ステップ・サイズの値は、GPIB(General-Purpose Interface Bus)のノブAにリンクされる。マウス・ホイールを回転させることで、ステップ・サイズの値を増減できる。これの利点の1つは、ユーザが、各動作で、オシロスコープ上で、アップデートされ、デスキューされ、モデル化されたVds波形を簡単に確認できることである。
【0079】
本発明の上述の説明は、単に本発明を説明するために設定されたものであり、限定することを意図するものではない。本発明の本質を組み込んだ開示された実施形態を改変することは、当業者であれば行いうるので、その発明は、本発明の範囲内の全てを含むと解釈されるべきである。
【0080】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0081】
本願の任意のブロック図は、本開示の原理を具体化する例示的な方法の概念図を表すことが、当業者には理解できよう。同様に、任意のフローチャート、フロー図などは、様々なプロセスを表すが、これらは、コンピュータ可読媒体において実質的に表すことができ、そのため、コンピュータ又はプロセッサ(そのようなコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず)によって実行されても良いことが理解できよう。
【0082】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される全ての特徴と、開示される全ての方法又は処理における全ての工程は、互いに少なくとも一部分が排他的でない限り、任意に組み合わせても良い。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される特徴の夫々は、特に明記されていない限り、同じ、等価又は類似の目的に寄与する代替の特徴で置き換えても良い。
【0083】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0084】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0085】
40 試験測定装置
44 ユーザ・インタフェース
46 プロセッサ
47 測定ユニット
48 ケーブル又はその他の直接接続部
50 電力及び測定装置
52 プロセッサ
54 インターロック
56 高電圧回路
58 DUTインタフェース
62 温度制御回路
64 バリア(障壁)
70 被試験デバイス(DUT)
90 試験測定システム
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
【外国語明細書】