(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121956
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】研削砥石のツルーイング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/075 20060101AFI20240902BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240902BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B24B53/075
H01L21/304 601B
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029220
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034CB12
3C047CC08
3C047CC11
5F057AA37
5F057BA12
5F057CA09
5F057EB26
(57)【要約】
【課題】複雑な溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行うのみならず、難加工材に対してもツルーイングに要する時間を短縮する研削砥石のツルーイング方法及び装置を提供する。
【解決手段】ウェーハWの面取り装置に使用される研削砥石16のツルーイング方法であって、粗研ツルア10-1により研削砥石16を粗研目標形状となるように粗加工としてツルーイングの加工取り分を残して高速にツルーイングし、研削砥石16が粗研目標形状の許容範囲になった場合は、粗研ツルア10-1より砥石の番手が大きい精研ツルア10-2により精研目標形状になるように精密加工としてツルーイングする。なお、粗研ツルア10-1の面角は、ウェーハWの設計値となる面角θよりも1~3度だけ小さくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング装置において、
粗研ツルアと、前記粗研ツルアの回転軸と同軸に配置され、前記粗研ツルアよりも目の細かい精研ツルアと、を含むツルアと、
前記回転軸に沿うZ方向の前記粗研ツルア及び前記精研ツルアの少なくとも1つに対応する第1位置を検出する第1センサと、
前記Z方向の前記研削砥石の第2位置を検出する第2センサと、
前記第1位置及び前記第2位置に基づいて、前記ツルア及び前記研削砥石の前記Z方向の位置を調整する制御部と、を備える、研削砥石のツルーイング装置。
【請求項2】
前記ツルアは、前記粗研ツルアと前記精研ツルアとが前記Z方向で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項3】
前記ツルアを固定するチャックテーブルを備え、
前記第1センサは、前記チャックテーブルの前記第1位置を検出する、ことを特徴とする請求項2に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項4】
前記チャックテーブルは、第1導電体又は第1磁性体を有し、
前記研削砥石は、第2導電体又は第2磁性体を有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、渦電センサである、ことを特徴とする請求項3に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項5】
前記第1位置及び前記第2位置の差が特定値となるように前記ツルアを移動させることにより、前記ツルアの前記Z方向の中央部と前記研削砥石の中央位置とを一致させる、ことを特徴とする請求項4に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項6】
前記粗研ツルアの端面の第1面角は、前記精研ツルアの端面の第2面角よりも小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項7】
前記粗研ツルア及び前記精研ツルアと前記研削砥石の2次元断面形状を測定する形状測定部と、
前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の変形を測定する変位評価部と、
前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の振動を測定する振動計測部と、
温度・熱流を計測する加工熱評価部と、を備え、
前記制御部は、前記変位評価部、前記振動計測部、前記加工熱評価部の評価に基づいて、加工条件として前記粗研ツルア及び前記精研ツルアに対する切込み量、回転速度、位置を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項8】
前記加工条件と加工後の前記形状測定部による測定結果と関連付けた加工条件データベースと、
前記加工条件データベースから構築された加工学習モデルと、を備えたことを特徴とする請求項7に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【請求項9】
ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング方法であって、
粗研ツルアにより研削砥石を粗研目標形状となるように粗加工としてツルーイングし、
前記研削砥石が前記粗研目標形状の許容範囲になった場合は、前記粗研ツルアより砥石の番手が大きい精研ツルアにより精研目標形状になるように精密加工として前記ツルーイングすることを特徴とする研削砥石のツルーイング方法。
【請求項10】
前記研削砥石の目標形状を決定し、加工前に測定された前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の2次元断面形状及び変位条件が反映されたツルーイングプログラムに従って前記ツルーイングを行い、
前記ツルーイング中は、前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の変形を測定する変位評価部、前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の振動を測定する振動計測部、温度・熱流を計測する加工熱評価部でモニタリングし、
加工条件と加工後の前記粗研ツルア又は前記精研ツルアと前記研削砥石の2次元断面形状を測定する形状測定部による測定結果と関連付けて加工条件データベースとしてデータベース化し、
前記加工条件データベースから加工学習モデルを構築することを特徴とする請求項9に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの端面における面取り装置に使用される溝形状を有する研削砥石のツルーイング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハ等は多品種少量生産が進められている。ウェーハの面取り加工において使用される溝形状を有する研削砥石は、多品種少量生産、ウェーハの品質向上、歩留まり向上などを目的として、高精度、形状変更要求のみならず、高速化の要求が高まっている。
【0003】
また、炭素(C)とシリコン(Si)との化合物であるSiC(炭化ケイ素)を始め、バンドギヤツプ(UWBG)が大きく、結晶を構成する原子間の結合が強い硬度の高い材料、例えばGaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム、AlGaN、ダイヤモンドを利用した半導体は、シリコン半導体より小型、低消費電力、高効率のパワー素子、高周波素子、耐放射線性に優れた半導体材料として期待され、実用化が進んでいる。しかし、4H-SiC等のUWBG材料は、難加工材であるため研削砥石の溝形状の高精度化、品質向上がより強く求められている。
【0004】
半導体原材料ウェーハの製造工程における面取り加工は、研削砥石(精研)をツルアによりツルーイング(研削)し、ウェーハを精研すること、研削後ウェーハのエッジ形状を測定すること、をウェーハが所望の形状になるまで繰り返すことが必要とされていた。従って、研削砥石のツルーイングは、特に高速かつ高精度に行うことが要求されていた。
【0005】
また、半導体ウェーハの外周面取りの仕上げ加工は、円周方向の研削痕が発生を防止するため、ウェーハに対して研削砥石を傾けて面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行うことが知られている。ただし、ヘリカル研削は、研削砥石のツルーイングによる形状の形成(ツルーイング後の砥石の加工面が、(砥石の)回転軸に対して軸対称でない3次元形状である)に関して、微妙な調整が不可欠であり、時間が掛かり、熟練した専任の担当者が必要であった。
【0006】
特許文献1は、ツルアを用いて溝の形成を行うヘリカル研削用のツルーイングにおいて、転写率、加工性を向上すると共に、ツルアによって形成される溝の精度を向上するため、研削砥石に形成する溝の上部あるいは下部をツルアで加工する。そして、その後は、ツルアを研削砥石に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させることを繰り返すことが記載されている。
【0007】
また、レーザ光によりツルーイングすることが知られ、特許文献2は、レーザ光によりツルーイングすることが記載され、被成形工具に対して熱影響が少なく、高い加工精度を得るため、フェムト秒レーザ等の超短パルスレーザを用いること、ツルーイングは、レーザ光における集光点を中心とした進行方向前後の所定範囲によって行うこと、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-325号公報
【特許文献2】特開2015-98041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術において、特許文献1に記載のものは、面取り加工を行う研削砥石のツルーイングを行う上でツルアの移動等に熟練した専任の担当者による調整が不可欠であり、加工を繰り返すことによる時間を要するものであった。また、難加工材であるSiC等では、加工に時間が掛かり、所望の形状を形成するのが困難であり、砥石の消耗も激しく研削加工のコストの低減が十分できるものとは言い難かった。
【0010】
また、特許文献2に記載のものは、照射範囲を広くすることが困難であり、一度にツルーイングできる部分が小さく砥石全体に実施することができず、溝形状を有するような砥石全体の形状を高精度化することは、考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、複雑な溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行うのみならず、難加工材に対してもツルーイングに要する時間を短縮し、効率的な研削砥石のツルーイング方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下のとおりである。
[1] ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング装置において、粗研ツルアと、上記粗研ツルアの回転軸と同軸に配置され、上記粗研ツルアよりも目の細かい精研ツルアと、を含むツルアと、上記回転軸に沿うZ方向の上記粗研ツルア及び上記精研ツルアの少なくとも1つに対応する第1位置を検出する第1センサと、上記Z方向の上記研削砥石の第2位置を検出する第2センサと、上記第1位置及び上記第2位置に基づいて、上記ツルア及び上記研削砥石の上記Z方向の位置を調整する制御部と、を備える、研削砥石のツルーイング装置。
[2] 上記ツルアは、上記粗研ツルアと上記精研ツルアとが上記Z方向で接続されていることを特徴とする[1]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[3] 上記ツルアを固定するチャックテーブルを備え、上記第1センサは、上記チャックテーブルの上記第1位置を検出する、ことを特徴とする[2]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[4] 上記チャックテーブルは、第1導電体又は第1磁性体を有し、上記研削砥石は、第2導電体又は第2磁性体を有し、上記第1センサ及び上記第2センサは、渦電センサである、ことを特徴とする[3]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[5] 上記第1位置及び上記第2位置の差が特定値となるように上記ツルアを移動させることにより、上記ツルアの上記Z方向の中央部と上記研削砥石の中央位置とを一致させる、ことを特徴とする[4]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[6] 上記粗研ツルアの端面の第1面角は、上記精研ツルアの端面の第2面角よりも小さい、ことを特徴とする[5]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[7] 上記粗研ツルア及び上記精研ツルアと上記研削砥石の2次元断面形状を測定する形状測定部と、上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の変形を測定する変位評価部と、上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の振動を測定する振動計測部と、温度・熱流を計測する加工熱評価部と、を備え、上記制御部は、上記変位評価部、上記振動計測部、上記加工熱評価部の評価に基づいて、加工条件として上記粗研ツルア及び上記精研ツルアに対する切込み量、回転速度、位置を制御する、ことを特徴とする[2]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[8] 上記加工条件と加工後の上記形状測定部による測定結果と関連付けた加工条件データベースと、上記加工条件データベースから構築された加工学習モデルと、を備えたことを特徴とする[7]に記載の研削砥石のツルーイング装置。
[9] ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング方法であって、粗研ツルアにより研削砥石を粗研目標形状となるように粗加工としてツルーイングし、上記研削砥石が上記粗研目標形状の許容範囲になった場合は、上記粗研ツルアより砥石の番手が大きい精研ツルアにより精研目標形状になるように精密加工として上記ツルーイングすることを特徴とする研削砥石のツルーイング方法。
[10] 上記研削砥石の目標形状を決定し、加工前に測定された上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の2次元断面形状及び変位条件が反映されたツルーイングプログラムに従って上記ツルーイングを行い、上記ツルーイング中は、上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の変形を測定する変位評価部、上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の振動を測定する振動計測部、温度・熱流を計測する加工熱評価部でモニタリングし、加工条件と加工後の上記粗研ツルア又は上記精研ツルアと上記研削砥石の2次元断面形状を測定する形状測定部による測定結果と関連付けて加工条件データベースとしてデータベース化し、上記加工条件データベースから加工学習モデルを構築することを特徴とする[9]に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粗研ツルアにより粗加工として加工取り分を残して高速にツルーイングし、研削砥石が粗研目標形状の許容範囲になった場合は、粗研ツルアより砥石の番手が大きい精研ツルアにより精密加工としてツルーイングするので、複雑な溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行うのみならず、難加工材に対してもツルーイングに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるツルアを示す一部断面図
【
図3】ツルーイングする時の加工精度に関する因子の説明図
【
図4】一実施形態によるツルアと研削砥石の位置合わせの説明図
【
図6】一実施形態によるツルーイング装置の全体システム構成を示すブロック図
【
図7】一実施形態によるツルーイング方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるツルア10を示す一部断面図、
図2は、面取り装置によるウェーハ端面の面取り加工手順を示す図である。面取り加工は、ツルア10により研削砥石16が形状転写あるいは加工(ツルーイング)され、次に研削砥石16によりウェーハWの形状が研削加工されることにより行われる。
図2において、研削砥石16は、クイル18を介して砥石スピンドル17に装着されて回転する。ヘリカル研削なので、ツルア10は端面の上面角θ1、下面角θ2として、ウェーハWは、上面角θ1’、下面角θ2’として形状転写する。例えば、ツルア10の上面角θ1は、ツルア10の端部の上側の斜面の角度に相当し、ツルア10の下面角θ2は、ツルア10の端部の下側の斜面の角度に相当する。例えば、ウェーハWの上面角θ1’は、ウェーハWの端部の上側の斜面の角度に相当し、ウェーハWの下面角θ2’は、ウェーハWの端部の下側の斜面の角度に相当する。上面角及び/又は下面角を単に面角と称する場合もある。
【0016】
ツルア10は、粗加工用の粗研ツルア10-1と、仕上げ加工用の精研ツルア10-2と、を有する。ツルア10は、粗研ツルア10―1及び精研ツルア10―2を交換可能に構成されていてもよい。
図1(a)に示すように、粗研ツルア10―1の断面形状と、精研ツルア10―2の断面形状とは、略同一である。なお、粗研ツルア10―1の断面形状と、精研ツルア10―2の断面形状とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
粗研ツルア10―1は、精研ツルア10―2と同軸に配置され得る。なお、精研ツルア10―1及び精研ツルア10―2の軸は、僅かにずれていてもよい。
例えば、
図1(a)に示すように、ツルア10は、粗研ツルア10―1と精研ツルア10―2とが2段で一体に形成される。粗研ツルア10―1と精研ツルア10―2とは、直接接着されていてもよいし、間に金属や樹脂等を含む部材を介して接続されていてもよい。
図1(a)に示した例では、粗研ツルア10-1に上に精研ツルア10―2が設けられている(又は、接着されている)。なお、粗研ツルア10-1の下に精研ツルア10-2が設けられていてもよい(又は、接着されていてもよい)。
そして、粗研ツルア10-1によるツルーイングは、粗研目標形状を研削砥石16の最終目標形状(精研目標形状)に対して10~20%の加工取り分を残して粗加工として高速に除去する。つまり、粗研目標形状は、精研目標形状の80~90%の大きさとされ、粗研ツルア10-1によるツルーイングは、精研ツルア10-2による加工取り分を残して精研ツルア10-2によるツルーイングよりも高速に行い研削効率を向上する。
【0017】
粗研ツルア10-1によるツルーイングの後は、精研ツルア10-2によるツルーイングを行う。精研ツルア10-2によるツルーイングは、粗加工で残った部分を精密加工として高精度に行う。そのため、粗研ツルア10-1の面角は、
図1(b)に示すようにウェーハWの設計値となる面角θよりも1~3度だけ小さくする。
【0018】
また、粗研ツルア10-1は、精研ツルア10-2の面角より小さくすることが好ましい。ただし、粗研ツルア10-1と精研ツルア10-2の形状は、全く同じとして加工条件で調整することでも良い。精研ツルア10-2の砥石の番手(砥石の粒度)は、粗研ツルア10-1よりも大きく、砥粒の大きさは小さくする。言い換えると、精研ツルア10―2は、粗研ツルア10-1よりも目が細かい。
【0019】
図1に示すように、粗研ツルア10-1と精研ツルア10-2とによりツルーイングすることは、目標形状に大きく近付ける粗加工と加工の履歴を蓄積した加工条件データベース等を利用した加工プログラムにより、ツルーイングに要する時間を短縮できる。なお、粗研ツルア10-1と精研ツルア10-2は、
図1で示したように2段で一体化しても良いし、分離して各々を別々に交換可能にできるようにしても良い。分離して各々を用途に応じて交換する場合であっても、後述する本実施形態の位置合わせを適用することで、目合わせなどによる位置合わせよりも粗研ツルア10―1と精研ツルア10―2とを高速に交換することが可能となる。
【0020】
図3は、ツルーイングする時の加工精度に関する因子の説明図であり、ツルーイングは、自動化され、精度のコントロールがされて品質向上することが望ましい。それに対して、現状のツルーイングは、目合わせなどによる位置合わせ、職人の勘による加工条件の作成等で行われている。そして、特にヘリカル研削用のツルーイング作業は、時間が掛かり、諸条件の設定に半日以上費やす場合もある。
【0021】
加工精度に関する因子は、研削砥石16の曲げ、ねじり、振動、振れ、ツルア10の表面形状、砥粒状態、形状転写時に掛かる力f1とツルア10の変形及び加工熱と熱膨張率(CTE)、ツルア10と研削砥石16の位置合わせ等となる。そこで、加工精度を向上するためには、力・熱等による変形の加工精度への影響を分析した加工制御モデルの構築、性能の強く影響する因子の特定、自動化するための機械学習が必要となる。特にツルア10と研削砥石16の位置は、研削環境下でセンシングし、計測に基づく位置合わせが重要となる。
【0022】
図4は、ツルア10と研削砥石16の位置合わせの説明図である。レーザ変位計20は、ツルア10、研削砥石16の2次元断面形状を計測する。レーザ変位計20による計測により、ツルア10の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mが一致する位置を基準位置に設定し、ツルア10の端面中央部Tを研削砥石16の溝底中央位置Mに移動させて位置合わせを行う。
【0023】
位置合わせは、研削砥石16の中に第1導電体(又は磁性体)23-1及びツルア10を固定するチャックテーブル24の中に第2導電体(又は磁性体)23-2を埋め込み、渦電センサ21-1、21-2により位置を検出して行う。なお、渦電センサ21は、加工中に、加工力による砥石の変位も計測し、ツルア10及び研削砥石16の研削力対変形の関係は予め求めておく。
【0024】
図5は、位置合わせ部の構成図であり、ツルア10はチャックテーブル24に固定されている。第2導電体(又は磁性体)23-2は、チャックテーブル24に埋め込まれている。第1導電体(又は磁性体)23-1は、研削砥石16の溝底中央部に埋め込まれている。移動ステージ22は測長機能付きであり、渦電センサ21-1、21-2を取り付けている。
【0025】
渦電センサ21-1は第1導電体(又は磁性体)23-1に対向する位置にZ方向に可動とされて取り付けられ、研削砥石16の溝底中央部の位置をZ1として求める。渦電センサ21-2は第2導電体23-2(又は磁性体)に対向する位置にZ方向に可動とされて取り付けられ、ツルア10の端面中央部Tの位置をZ2として求める。ツルア10の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mの位置合わせは、Z1とZ2との差が所定値となるようにツルア10を移動させれば設定した基準位置に一致したことになる。なお、実施形態では、ツルア10(若しくはチャックテーブル14)及び研削砥石16の位置をそれぞれ検出する各センサは、渦電センサ21―1及び渦電センサ21―2としたが、ツルア10(若しくはチャックテーブル14)及び研削砥石16の位置をそれぞれ検出可能であれば渦電センサ21-1及び21―2以外のセンサであってもよい。
【0026】
図6は、研削砥石16のツルーイング装置の全体システム構成を示すブロック図である。制御部30は、加工条件としてツルア10に対する切込み量、回転速度、位置等を変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33の評価に基づいて制御(又は調整)する。変位評価部31は、力-変位計測部36での測定値に基づいて加工時のツルア10と研削砥石16による変形(変位)を評価する。
【0027】
例えば、変位評価部31は、既知の力をツルア10に加え、その時のツルア10の変位を計測して予めモデル化し、加工中のツルア10と研削砥石16の変形(無負荷時からの変位)を測定してレイティング(基準に基づき数値化)する。振動計測部32は、ツルア10、研削砥石16の加工中の振動を測定する。
【0028】
振動計測部32は、
図4で示したレーザ変位計20、渦電センサ21と共通でも良い。加工熱評価部33は、温度・熱流計測部34を構成する熱電対や熱流計により温度・熱流の計測値を用いてツルア10と研削砥石16の加工熱を評価する。
【0029】
形状測定部35は、レーザ変位計20等で構成され、少なくともツルア10と研削砥石16の2次元断面形状を測定する。研削砥石16は、砥石スピンドル17に装着される。ツルア10は、ツルア移動台25に載置されたチャックテーブル24に固定され、回転軸の周りに回転可能であり、X、Y、及びZ軸にそれぞれ沿う複数の方向に可変とされる。加工条件データベース37-1は、加工条件をモニタリングし、加工後の形状測定部35の測定結果と紐づけて記憶する。記憶した結果は、加工学習モデル37-2として構築する。なお、制御部30はその他に冷却水系による研削熱を制御する。
【0030】
図7は、ツルーイング方法のフローチャートである。まず、研削砥石16の目標形状を決定し、目標形状をデータ化する。(ステップS1)
ステップS1は、ステップS35で加工前に測定されたでツルア10と研削砥石16の2次元断面形状、ステップS31でモデル化されたツルア10と研削砥石16の変位条件(研削力と変形の関係)をツルーイングプログラム(ステップS2)に反映する。(ステップS2)
【0031】
以下、一連のプロセスは、ツルーイングプログラムに従って行う。粗加工は、粗研ツルア10-1により研削砥石16を、後の精密加工する時の取り代分を残す粗研目標形状となるようにツルーイングする。(ステップS3)
ステップS3は、
図4で示したように、レーザ変位計20による計測により、粗研ツルア10-1の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mが一致する位置を基準位置に設定して行う。
【0032】
また、粗加工後は、形状測定部35のレーザ変位計20でツルア10と研削砥石16の形状を測定し、粗研目標形状と比較して次の精密加工に移行するかを判定する。ツルーイングされた研削砥石16が粗研目標形状の許容範囲に無い場合は、ステップ3の粗加工の工程に戻す。ツルア10の形状も測定することは、加工条件と加工後の2次元断面形状を関連付けて加工条件データベース37-1としてデータベース化し、加工学習モデル37-2を構築することであり、高精度化に寄与する。
【0033】
研削砥石16が粗研目標形状の許容範囲になった場合は、精研ツルア10-2により研削砥石16を、精研目標形状になるようにツルーイングする。(ステップS4)
ステップS4は、レーザ変位計20による計測により、精研ツルア10-2の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mが一致する位置を基準位置に設定して行う。また、精密加工後は、形状測定部35のレーザ変位計20で精研ツルア10-2と研削砥石16の形状を測定し(ステップS5)、良否判定する。(ステップS6)
【0034】
ツルーイングされた精研ツルア10-2が精研目標形状の許容範囲に無い場合は、ステップ4の精密加工の工程に戻す。精研目標形状の許容範囲の場合は、ウェーハWを形状転写された研削砥石16で研削し、エッジの設計値(目標値)に対する良否を判定を行う。
【0035】
ステップ3及びステップS4におけるツルア10の良否判定は、予め加工条件データベース37-1に蓄積された結果を利用しても良い。また、ステップ3での粗加工後の研削砥石16の良否判定は、加工条件データベース37-1に蓄積された結果を利用することが好ましい。
【0036】
ステップ3からステップ6の一連のプロセスにおいてツルーイング中は、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33等でモニタリングすることにより、加工条件と加工後の形状測定部35による結果と関連付けてデータベース化する。(ステップS37)
高精度・高速加工の加工学習モデル37-2は、データベース化された加工条件データベース37-1から構築される。ツルーイングプログラムは、加工学習モデル37-2を参照する。
【0037】
加工学習モデル37-2は、入力されたデータに対してコンピューターが評価・判断した結果を出力する機械学習モデルである。例えば、加工学習モデル37-2は、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33等でモニタリングした値を入力することにより、最適な加工条件を出力し得る。ツルーイングプログラムは、必要に応じて加工学習モデル37-2へ問い合わせを入力し、評価・判断した結果を得る。
【0038】
以上、述べたように、上記の実施形態は、半導体ウェーハの製造工程で、面取り加工に関わる研削砥石16のツルーイングを粗研ツルア10-1と精研ツルア10-2とで2段で行うので、難加工材のヘリカル研削であっても加工速度を向上し、溝形状の高精度化を達成できる。また、ツルーイングは、目標形状に大きく近付ける粗加工と加工条件データベース37と加工学習モデル37-2を利用し効率的なツールパスを実施するツルーイングプログラムにより、時間を短縮できる。
【0039】
図2、3の説明は、ツルア10の形状転写として説明したが、より高精度化を図るためには、研削砥石16に形成する溝の上部あるいは下部を精研ツルア10-2で加工し、その後は、ツルア10を研削砥石16に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させるように片側ずつ削ることが良い。
【0040】
また、研削砥石16のツルーイングを目標形状に近付けるために粗研ツルア10-1で大部分を除去し、その後に精研ツルア10-2により高精度に行うことは、ウェーハWが難加工材である4H-SiC、他のポリタイプ(3C-SiC、6H-SiC、15R-SiC等)、バンドギヤツプが大きく難加工材であるGaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム、AlGaNを利用したいずれかのものにも適用が可能である。そして、難加工材であっても研削砥石16による加工時間を短縮し、高品質化、特に後工程等にとって好適な、高精度な形状形成や均一な表面状態(うねり・粗さ)とすることができる。
【符号の説明】
【0041】
10…ツルア
10-1…粗研ツルア
10-2…精研ツルア
16…研削砥石
17…砥石スピンドル
18…クイル
20…レーザ変位計
21…渦電センサ
22…移動ステージ
23-1…第1導電体
23-2…第2導電体
24…チャックテーブル
25…ツルア移動台
30…制御部
31…変位評価部
32…振動計測部
33…加工熱評価部
34…温度・熱流計測部
35…形状測定部
36…変位計測部
37-1…加工条件データベース
37-2…加工学習モデル
M…溝底中央位置
T…端面中央部
W…ウェーハ