IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図1
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図2
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図3
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図4
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図5
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図6
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図7
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図8
  • 特開-チップ間隔拡大方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122074
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】チップ間隔拡大方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01L21/78 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029398
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA31
5F063DD71
5F063DD73
5F063DG21
(57)【要約】
【課題】ウエーハを保持するシートに生じた弛緩領域を、熱源を用いることなく平坦化すること。
【解決手段】チップ間隔拡大方法1000は、分割予定ラインに沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハがフレームの開口に支持シートを介して保持されたフレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップ1100と、フレームとウエーハとを相対的に上下方向に離反させ、支持シートを拡張してチップの間隔を広げる拡張ステップ1200と、拡張ステップ1200によって弛緩したウエーハの外周とフレームの内周と間の、支持シートに外力を付与して収縮する収縮ステップ1300と、を備える。収縮ステップ1300は、弛緩した領域の支持シートを重ねて超音波付与ユニットで挟持し、支持シートに超音波を付与することで支持シート同士を溶着させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインで区画されたデバイス領域を有するウエーハから、複数の該分割予定ラインに沿って分割して形成される複数のチップの間隔を広げるチップ間隔拡大方法であって、
該分割予定ラインに沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハがフレームの開口に支持シートを介して保持されたフレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、
該フレームと、該ウエーハと、を相対的に上下方向に離反させ、該支持シートを拡張して、該チップの間隔を広げる拡張ステップと、
該拡張ステップによって弛緩した該ウエーハの外周と該フレームの内周と間の、該支持シートに外力を付与して収縮する収縮ステップと、
を備え、
該収縮ステップは、弛緩した領域の該支持シートを重ねて超音波付与ユニットで挟持し、該支持シートに超音波を付与することで該支持シート同士を溶着させることを特徴とするチップ間隔拡大方法。
【請求項2】
表面に複数の分割予定ラインで区画されたデバイス領域を有するウエーハから、複数の該分割予定ラインに沿って分割して形成される複数のチップの間隔を広げるチップ間隔拡大方法であって、
該分割予定ラインに沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハがフレームの開口に支持シートを介して保持されたフレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、
該フレームと、該ウエーハと、を相対的に上下方向に離反させ、該支持シートを拡張して、該チップの間隔を広げる拡張ステップと、
該拡張ステップによって弛緩した該ウエーハの外周と該フレームの内周と間の、該支持シートに外力を付与して収縮する収縮ステップと、
を備え、
該収縮ステップは、弛緩した該支持シートを固定用テープによって該支持シートに重ねて固定することを特徴とするチップ間隔拡大方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ間隔拡大方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスに分割される。特許文献1には、ウエーハがエキスパンドテープを介してフレームに貼着されて形成されたフレームユニットのエキスパンドテープを拡張した後、ウエーハ外周のエキスパンドテープに発生した弛みを平坦化する技術が開示されている。詳細には、特許文献1では、エキスパンドテープを拡張してチップ間隔を広げた後、エキスパンドテープに負圧を作用させながら部材をエキスパンドテープの粘着面に固定してエキスパンドテープの拡張を維持し、エキスパンドテープの拡張を解除することでエキスパンドテープの余剰部分が隆起した隆起部を発生させる。特許文献1では、この隆起部を加熱部材とチャックテーブルの保持面との間で挟持して、エキスパンドテープの隆起部を潰した状態で熱圧着して固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-067817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、ウエーハの外周とフレームの内周との間に介在するエキスパンドテープ(シート)が弛緩すると、弛緩したシートを収縮する方法として熱を利用している。しかし、従来の技術は、熱を発生するヒータを利用する場合、ヒータの温度が上昇するまで待つ時間が発生する問題や、高熱の熱源部分が危険個所となるためにヒータを保護する機構が必要となり装置が大型化する問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウエーハを保持するシートに生じた弛緩領域を、熱源を用いることなく平坦化することができるチップ間隔拡大方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のチップ間隔拡大方法は、表面に複数の分割予定ラインで区画されたデバイス領域を有するウエーハから、複数の該分割予定ラインに沿って分割して形成される複数のチップの間隔を広げるチップ間隔拡大方法であって、該分割予定ラインに沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハがフレームの開口に支持シートを介して保持されたフレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、該フレームと、該ウエーハと、を相対的に上下方向に離反させ、該支持シートを拡張して、該チップの間隔を広げる拡張ステップと、該拡張ステップによって弛緩した該ウエーハの外周と該フレームの内周と間の、該支持シートに外力を付与して収縮する収縮ステップと、を備え、該収縮ステップは、弛緩した領域の該支持シートを重ねて超音波付与ユニットで挟持し、該支持シートに超音波を付与することで該支持シート同士を溶着させることを特徴とする。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のチップ間隔拡大方法は、表面に複数の分割予定ラインで区画されたデバイス領域を有するウエーハから、複数の該分割予定ラインに沿って分割して形成される複数のチップの間隔を広げるチップ間隔拡大方法であって、該分割予定ラインに沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハがフレームの開口に支持シートを介して保持されたフレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、該フレームと、該ウエーハと、を相対的に上下方向に離反させ、該支持シートを拡張して、該チップの間隔を広げる拡張ステップと、該拡張ステップによって弛緩した該ウエーハの外周と該フレームの内周と間の、該支持シートに外力を付与して収縮する収縮ステップと、を備え、該収縮ステップは、弛緩した該支持シートを固定用テープによって該支持シートに重ねて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、ウエーハを保持するシートに生じた弛緩領域を、熱源を用いることなく平坦化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法の処理手順を示すフローチャートである。
図2図2は、チップ間隔拡大方法で用いるフレームユニットの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す構成図である。
図4図4は、図1に示す拡張ステップを説明するための模式図である。
図5図5は、図1に示す収縮ステップを説明するための模式図である。
図6図6は、実施形態2に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す構成図である。
図7図7は、図1に示す実施形態2に係る拡張ステップを説明するための模式図である。
図8図8は、実施形態2に係るチップ間隔拡大方法を実施したフレームユニットの一例を示す平面図である。
図9図9は、実施形態の変形例に係る超音波付与ユニットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係るチップ間隔拡大方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法の処理手順を示すフローチャートである。図2は、チップ間隔拡大方法で用いるフレームユニットの一例を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法1000は、フレームユニット準備ステップ1100と、拡張ステップ1200と、収縮ステップ1300と、を備える。実施形態1に係るチップ間隔拡大方法は、例えば図2に示すウエーハ201から形成される複数のチップ102の間隔を広げる方法であり、後述するエキスパンド装置1によって実施される。
【0013】
実施形態1に係るチップ間隔拡大方法1000の処理対象であるフレームユニット200を図面に基づいて説明する。フレームユニット200は、図2に示すように、ウエーハ201と、ウエーハ201に貼着された支持シート210と、支持シート210の外周側が貼着された環状のフレーム211とを備える。ウエーハ201は、フレームユニット200において、支持シート210に支持される。支持シート210は、例えば、エキスパンドシートを含む。
【0014】
ウエーハ201は、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板203とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等である。ウエーハ201は、表面204の互いに交差する複数の分割予定ライン205で区画された各領域にそれぞれデバイス206が形成されている。ウエーハ201は、表面204の裏側の裏面207側に支持シート210が貼着され、支持シート210の外周にフレーム211が貼着されている。ウエーハ201は、裏面207側から基板203に対して透過性を有する波長のレーザー光線が分割予定ライン205に沿って照射されて、基板203の内部に分割予定ライン205に沿った分割起点である改質層208が複数形成されている。
【0015】
ウエーハ201は、改質層208を分割起点に分割予定ライン205に沿って個々のチップ202に分割される。チップ202は、基板203の一部分と、基板203の表面204に形成されたデバイス206とを備える。
【0016】
なお、改質層208とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0017】
支持シート210は、ウエーハ201の外径よりも大径な円板状に形成され、伸縮性を有する樹脂から構成されて、加熱されると収縮する熱収縮性を有する。フレーム211は、中央に円形の開口213を有し、開口213の内側に支持シート210を介してウエーハ201を保持する。
【0018】
本実施形態では、フレームユニット200は、ウエーハ201の基板203の裏面207と支持シート210との間に円板状のDAF(Die Attach Film)212が貼着されている。DAF212は、チップ202を他のチップ又は基板等に固定するためのダイボンディング用の接着フィルムである。本実施形態では、DAF212は、ウエーハ201の外径よりよりも大径で、かつフレーム211の内径よりも小径な円板状に形成されている。DAF212は、個々のチップ202毎に分割される。分割後のチップ202において、DAF212は、チップ202の基板203の裏面207に貼着されている。なお、フレームユニット200は、ウエーハ201の基板203の裏面207と支持シート210との間にDAF212が貼着されない構成としてもよい。
【0019】
なお、フレームユニット200のウエーハ201は、本実施形態では、分割予定ライン205に沿って分割起点である改質層208が形成されているが、本発明ではこれに限定されず、分割予定ライン205に沿って、分割起点となり、ウエーハ201を完全に分割しない深さのハーフカット溝が形成されていても良いし、分割予定ライン205に沿って、ウエーハ201を完全に分割する深さの分割溝が形成されて個々のチップ202に分割されていてもよい。ここで、ハーフカット溝及び分割溝は、フレームユニット200のウエーハ201の基板203に対して、吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン205に沿って照射することで形成しても良いし、スピンドルの先端に装着されて回転中の切削ブレードで分割予定ライン205に沿って切削することで形成してもよい。
【0020】
次に、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法を実施するエキスパンド装置の一例を図面に基づいて説明する。図3は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す構成図である。図4は、図1に示す拡張ステップを説明するための模式図である。図5は、図1に示す収縮ステップを説明するための模式図である。なお、図4及び図5では、説明を簡単化するために、フレームユニット200のDAF212を省略している。
【0021】
図3に示すように、エキスパンド装置1は、固定ユニット10と、拡張ユニット20と、超音波付与ユニット30と、制御ユニット40と、を備える。制御ユニット40は、固定ユニット10、拡張ユニット20及び超音波付与ユニット30と電気的に接続されている。図3に示す一例では、エキスパンド装置1は、チップ間隔拡大方法1000に係る構成を示し、その他の構成は省略している。
【0022】
固定ユニット10は、図4に示すように、フレームユニット200のフレーム211を下方から支持するフレーム支持部11と、フレーム211を上方から押さえるフレーム押さえ部12と、を有する。フレーム支持部11は、正方形状の板であり、中央に、フレーム211の開口213の内径程度の円形状の開口13が形成されている。フレーム支持部11は、下方側にエアシリンダ15が接続されており、エアシリンダ15の伸縮により鉛直方向に昇降自在である。フレーム押さえ部12は、フレーム支持部11と同様に、正方形状の板であり、中央に、フレーム211の内径程度の円形状の開口14が形成されている。フレーム押さえ部12は、不図示の水平移動ユニットにより水平方向に平行な方向に移動自在である。なお、フレーム支持部11と、フレーム押さえ部12と、は正方形に限らずフレーム211の内径より大きい板であれば良い。
【0023】
拡張ユニット20は、保持テーブル21と、突き上げ部材22と、拡張ローラ23と、昇降ユニット24と、を有する。保持テーブル21は、円形状であり、突き上げ部材22の内周かつ同軸に設けられる。保持テーブル21は、フレーム支持部11の開口13の内周かつ同軸に設けられる。保持テーブル21の上面は、固定ユニット10に固定されたフレーム211の開口213に支持シート210を介して支持されたウエーハ201を、裏面207側から支持シート210を介して保持する保持面27である。保持面27は、水平面に平行に形成される。なお、拡張ユニット20は、保持面27を加熱可能な構成としてもよい。
【0024】
突き上げ部材22は、円筒形状であり、保持テーブル21の外周かつ同軸に設けられる。突き上げ部材22は、また、フレーム支持部11の開口13の内周かつ同軸に設けられる。拡張ローラ23は、保持テーブル21の保持面27と同一平面上または僅かに上方、かつ突き上げ部材22の上端に、環状に複数配列され、いずれも突き上げ部材22の周方向に沿った回転軸回りに回転自在に設けられる。昇降ユニット24は、保持テーブル21及び突き上げ部材22の下方に接続して設けられ、保持テーブル21及び突き上げ部材22を一体的に上昇させる。
【0025】
超音波付与ユニット30は、図5に示すように、弛緩した領域の支持シート210を重ねて挟持し、該支持シート210に超音波を付与することで支持シート210同士を溶着させる。超音波付与ユニット30は、不図示の移動ユニットにより、保持テーブル21に保持しているフレームユニット200の支持シート210に対して接近又は遠ざかる方向に移動可能に設けられている。超音波付与ユニット30は、超音波ホーン31と、受け板部32と、を有する。超音波ホーン31は、受け板部32に向けて超音波を伝達可能である。受け板部32は、超音波ホーン31に対して接近または遠ざかる方向に水平移動が可能である。受け板部32は、超音波ホーン31との間に支持シート210の弛緩領域を挟持可能である。弛緩領域は、支持シート210を拡張した後に、支持シート210が弛んだ領域である。本実施形態では、超音波付与ユニット30は、超音波ホーン31から受け板部32に向けて超音波振動を伝達し、該超音波信号が支持シート210の弛緩領域を伝搬することによって支持シート210の弛緩領域が発熱し、該熱によって支持シート210の弛緩領域を溶解して溶着する。超音波付与ユニット30は、例えば、超音波シーラー、超音波ホッチキス等を用いることができる。
【0026】
制御ユニット40は、エキスパンド装置1の各種構成要素の動作を制御して、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法の一連の処理をエキスパンド装置1に実施させる。制御ユニット40は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット40が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット40の機能は、実施形態1では、制御ユニット40が含むコンピュータシステムの演算処理装置が、制御ユニット40が含むコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。制御ユニット40の演算処理装置は、制御ユニット40の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、エキスパンド装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット40の入出力インターフェース装置を介してエキスパンド装置1の各構成要素に出力する。
【0027】
以上、実施形態1に係るエキスパンド装置1の構成例について説明した。なお、図3を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、実施形態1に係るエキスパンド装置1の構成は係る例に限定されない。実施形態1に係るエキスパンド装置1の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0028】
(チップ間隔拡大方法)
次に、実施形態1に係るエキスパンド装置1が実行するチップ間隔拡大方法を説明する。図1に示したチップ間隔拡大方法1000は、表面204に複数の分割予定ライン205で区画されたデバイス領域を有するウエーハ201から、複数の分割予定ライン205に沿って分割して形成される複数のチップ202の間隔を、支持シート210を拡張して広げる方法である。チップ間隔拡大方法1000は、エキスパンド装置1の制御ユニット40がプログラムを実行することで実現される。
【0029】
まず、エキスパンド装置1は、フレームユニット準備ステップ1100を実行する。フレームユニット準備ステップ1100は、分割予定ライン205に沿って分割溝または分割起点が形成されたウエーハ201がフレーム211の開口213に支持シート210を介して保持されたフレームユニット200を準備するステップである。本実施形態では、フレームユニット準備ステップ1100は、フレーム211にウエーハ201が保持されていない状態で、ウエーハ201に分割起点である改質層208を形成する。例えば、フレームユニット準備ステップ1100は、レーザーを分割予定ライン205に沿って移動させ、分割予定ライン205毎にレーザービームを照射にすることで、改質層208と、該改質層208からウエーハ201の表面204に対して垂直な方向へ伸展するクラックとを有する分割起点を形成する。なお、レーザービームは、ウエーハ201に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(infrared rays;IR)である。また、フレームユニット準備ステップ1100は、切削ブレードやプラズマエッチングによって分割溝や分割起点を形成してもよい。フレームユニット準備ステップ1100は、フレーム211の開口213に分割予定ライン205に沿って分割起点が形成されたウエーハ201を、支持シート210を介して保持するように、フレームユニット200を形成する。
【0030】
フレームユニット準備ステップ1100は、エキスパンド装置1の固定ユニット10が、フレーム支持部11の開口13とフレーム211の開口213とが鉛直方向に重なるように、フレーム支持部11にフレームユニット200のフレーム211を載置する。その後、フレームユニット準備ステップ1100は、フレーム押さえ部12の開口14がフレーム支持部11の開口13及びフレーム211の開口213と鉛直方向に重なるように、不図示の水平移動ユニットによりフレーム押さえ部12をフレーム支持部11の直上に移動させてから、エアシリンダ15によりフレーム支持部11を上昇させる。これにより、フレームユニット準備ステップ1100は、図4に示すように、フレーム支持部11とフレーム押さえ部12とで挟み込んで、フレームユニット200を固定する。エキスパンド装置1は、フレームユニット200の準備が終了すると、図1に示す次のステップに進む。なお、フレームユニット準備ステップ1100は、完成したフレームユニット200を固定ユニット10に固定するステップとしてもよい。
【0031】
エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200を実行する。拡張ステップ1200は、フレームユニット200のフレーム211とウエーハ201とを相対的に上下方向に離反させ、支持シート210を拡張して複数のチップ202同士の間隔を広げるステップである。本実施形態では、エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200の図4に示す場面1201では、固定ユニット10に固定されたフレーム211に貼着されてウエーハ201を支持する支持シート210に、保持面27を有する保持テーブル21を接触させる。
【0032】
エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200の場面1202では、拡張ユニット20の昇降ユニット24により、保持テーブル21及び突き上げ部材22を固定ユニット10に対して相対的に上昇させる。エキスパンド装置1は、固定ユニット10に固定されたフレーム211に貼着されてウエーハ201を支持する支持シート210に、保持テーブル21の保持面27及び突き上げ部材22を接触させて、支持シート210を拡張することで、支持シート210に貼着された複数のチップ202同士の間隔を広げる。その後、エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200の場面1203では、保持テーブル21及び突き上げ部材22を固定ユニット10に対して相対的に下降させる。これにより、フレームユニット200は、突き上げ部材22によって拡張した支持シート210の緩んだ領域が弛緩領域220となる。弛緩領域220は、支持シート210の表面から鉛直方向の上方に隆起している。エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200が終了すると、図1に示す次のステップに進む。
【0033】
エキスパンド装置1は、収縮ステップ1300を実行する。収縮ステップ1300は、図5に示すように、拡張ステップ1200によって弛緩したウエーハ201の外周201-1とフレーム211の内周214と間の支持シート210に外力を付与して収縮するステップである。エキスパンド装置1は、図5の場面1301に示す収縮ステップ1300では、超音波付与ユニット30を支持シート210の弛緩領域220に上方から接近させ、弛緩領域220を超音波ホーン31と受け板部32との間に位置付け、超音波ホーン31に受け板部32を接近させることで、弛緩した弛緩領域220の支持シート210を重ねて超音波付与ユニット30で挟持する。そして、エキスパンド装置1は、超音波ホーン31から挟持している支持シート210の弛緩領域220に超音波を付与することで、支持シート210の弛緩領域220を溶解させ、支持シート210同士を溶着させる。本実施形態では、エキスパンド装置1は、ウエーハ201の外周における複数個所の弛緩領域220を溶着するが、支持シート210における全ての弛緩領域220を溶着してもよいし、弛緩領域220が発生している箇所のみを溶着してもよい。複数個所の弛緩領域220は、例えば、支持シート210で予め設定された領域、支持シート210において設定された判定範囲以上の領域等を含む。これにより、エキスパンド装置1は、図5の場面1302に示す収縮ステップ1300では、超音波付与ユニット30によって溶着した支持シート210の弛緩領域220を平らな収縮部221に収縮させる。そして、エキスパンド装置1は、収縮ステップ1300が終了すると、図1に示したチップ間隔拡大方法1000を終了させる。
【0034】
以上のように、実施形態1に係るチップ間隔拡大方法1000は、支持シート210を拡張することで、ウエーハ201の複数のチップ202の間隔を拡張し、支持シート210に弛緩領域220が生じると、熱源を有さない超音波付与ユニット30を用いて、該弛緩領域220を収縮することができる。超音波付与ユニット30は、支持シート210同士を接合するために重ねた支持シート210の接合面に、超音波によって局所的に熱を発生させる。このため、チップ間隔拡大方法1000は、従来の赤外線や温風を用いて外部から支持シート210を加熱してシートを収縮させる場合よりも、熱源の加熱時間を待つ必要がなくなり、かつ、危険源となる熱源を保護する機構を装置に設ける必要がなくなる。その結果、チップ間隔拡大方法1000は、ウエーハ201を保持する支持シート210に生じた弛緩領域220を、熱源を用いることなく平坦化することができる。
【0035】
[実施形態2]
実施形態2に係るチップ間隔拡大方法を図面に基づいて説明する。実施形態2では、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。図6は、実施形態2に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す構成図である。図7は、図1に示す実施形態2に係る拡張ステップを説明するための模式図である。図8は、実施形態2に係るチップ間隔拡大方法を実施したフレームユニットの一例を示す平面図である。
【0036】
実施形態2に係るチップ間隔拡大方法1000は、図1に示した実施形態1に係るチップ間隔拡大方法1000と同様に、フレームユニット準備ステップ1100と、拡張ステップ1200と、収縮ステップ1300と、を備える。
【0037】
図6に示すように、実施形態2に係るエキスパンド装置1は、上述した固定ユニット10、拡張ユニット20及び制御ユニット40と、テープ貼りユニット50と、を備える。制御ユニット40は、固定ユニット10、拡張ユニット20及びテープ貼りユニット50と電気的に接続されている。図6に示す一例では、エキスパンド装置1は、チップ間隔拡大方法1000に係る構成を示し、その他の構成は省略している。また、エキスパンド装置1は、上述した超音波付与ユニット30を備える構成としてもよい。
【0038】
テープ貼りユニット50は、図7に示すように、保持テーブル21に保持しているフレームユニット200の支持シート210の弛緩領域220に、固定用テープ51を貼り付ける。テープ貼りユニット50は、不図示の移動ユニットにより、保持テーブル21に保持しているフレームユニット200の支持シート210に対して接近又は遠ざかる方向、及び固定用テープ51の貼り付け方向に移動可能に設けられている。固定用テープ51は、例えば、ウエーハ201を保護する保護テープ、ダイシングテープ等を含む。
【0039】
テープ貼りユニット50は、固定用テープ51が設けられた基材がロール状に旋回されて固定用テープ51を送り出す送り出しローラ52と、固定用テープ51を貼り付ける貼り付けローラ53と、固定用テープ51を固定する固定ローラ54と、貼り付け後の基材を巻き取る巻き取りローラ55と、を備える。テープ貼りユニット50は、貼り付けローラ53を支持シート210の弛緩領域220に押し付けることで、固定用テープ51が弛緩領域220(図4の場面1203参照)を押し潰すように、固定用テープ51を支持シート210に貼り付ける。送り出しローラ52から送り出される固定用テープ51は、貼り付けローラ53によって支持シート210の弛緩領域220に貼り付けられ、固定ローラ54によって支持シート210に固定され、基材が巻き取る巻き取りローラ55によって巻き取られる。
【0040】
以上、実施形態2に係るエキスパンド装置1の構成例について説明した。なお、図6を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、実施形態2に係るエキスパンド装置1の構成は係る例に限定されない。実施形態2に係るエキスパンド装置1の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0041】
(チップ間隔拡大方法)
次に、実施形態2に係るエキスパンド装置1が実行するチップ間隔拡大方法1000を説明する。図1に示したチップ間隔拡大方法1000は、表面204に複数の分割予定ライン205で区画されたデバイス領域を有するウエーハ201から複数の分割予定ライン205に沿って分割して形成される複数のチップ202の間隔を広げる方法である。実施形態2に係るチップ間隔拡大方法1000は、実施形態1と同様に、フレームユニット準備ステップ1100と、拡張ステップ1200と、収縮ステップ1300と、を有する。チップ間隔拡大方法1000は、エキスパンド装置1の制御ユニット40がプログラムを実行することで実現される。
【0042】
まず、エキスパンド装置1は、フレームユニット準備ステップ1100を実行する。フレームユニット準備ステップ1100は、実施形態1と同様の処理を実行し、フレーム支持部11とフレーム押さえ部12とで挟み込んで、フレームユニット200を固定する。エキスパンド装置1は、フレームユニット200の準備が終了すると、図1に示す次のステップに進む。
【0043】
エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200を実行する。拡張ステップ1200は、実施形態1の拡張ステップ1200と同様の処理を実行し、フレームユニット200のフレーム211とウエーハ201とを相対的に上下方向に離反させ、支持シート210を拡張して複数のチップ202同士の間隔を広げる。これにより、フレームユニット200は、突き上げ部材22によって拡張した支持シート210の緩んだ領域が弛緩領域220となる。エキスパンド装置1は、拡張ステップ1200が終了すると、図1に示す次のステップに進む。
【0044】
エキスパンド装置1は、収縮ステップ1300を実行する。収縮ステップ1300は、実施形態1の収縮ステップ1300と同様の処理を実行し、拡張ステップ1200によって弛緩したウエーハ201の外周201-1とフレーム211の内周214と間の支持シート210に外力を付与して収縮する。エキスパンド装置1は、図7に示すように、テープ貼りユニット50を支持シート210の弛緩領域220に上方から接近させ、貼り付けローラ53を支持シート210の弛緩領域220に押し付けることで、固定用テープ51が弛緩領域220を押し潰すように固定用テープ51を支持シート210に貼り付ける。本実施形態では、エキスパンド装置1は、支持シート210の弛緩領域220を、フレームユニット200の径方向へ折りたたむように固定用テープ51で固定する。本実施形態では、エキスパンド装置1は、図8に示すように、ウエーハ201の外周201-1に沿った複数個所の弛緩領域220を固定用テープ51で固定する。図8に示す一例では、エキスパンド装置1は、支持シート210の弛緩領域220を、リング状に間隔をあけて固定用テープ51で4カ所を固定している。これにより、エキスパンド装置1は、図7に示すように、固定用テープ51によって支持シート210の弛緩領域220を平らに収縮させる。そして、エキスパンド装置1は、収縮ステップ1300が終了すると、図1に示したチップ間隔拡大方法1000を終了させる。
【0045】
以上のように、実施形態2に係るチップ間隔拡大方法1000は、支持シート210を拡張することで、ウエーハ201の複数のチップ202の間隔を拡張し、支持シート210に弛緩領域220が生じると、熱源を用いずに、固定用テープ51を用いて、該弛緩領域220を収縮することができる。これにより、チップ間隔拡大方法1000は、従来の熱源を用いてシートを収縮させる場合よりも、熱源の加熱時間を待つ必要がなくなり、かつ、危険原となる熱源を保護する機構を装置に設ける必要がなくなる。その結果、チップ間隔拡大方法1000は、ウエーハ201を保持する支持シート210に生じた弛緩領域220を、熱源を用いることなく平坦化することができる。
【0046】
[実施形態の変形例]
上述した実施形態1では、超音波付与ユニット30は、超音波ホーン31と受け板部32とを、フレームユニット200の弛緩領域220を左右方向から挟むように配置する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、超音波付与ユニット30は、フレームユニット200の弛緩領域220を左右方向と交わる上下方向(鉛直方向)から挟む構成としてもよい。
【0047】
図9は、実施形態の変形例に係る超音波付与ユニットを説明するための図である。図9に示すように、エキスパンド装置1は、超音波付与ユニット30-1を備える構成としてもよい。なお、エキスパンド装置1は、超音波付与ユニット30-1と上述した超音波付与ユニット30との両方を備える構成としてもよい。
【0048】
超音波付与ユニット30-1は、図9に示すように、超音波付与部33と、受け板部34と、を有する。超音波付与部33は、上下方向に移動可能に設けられ、不図示の移動ユニットによって支持シート210の弛緩領域220に接近可能になっている。受け板部34は、フレーム支持部11から保持テーブル21に向かって突出し、支持シート210の弛緩領域220の下方に配置可能な板状に形成されている。超音波付与ユニット30-1は、超音波付与部33から受け板部34に向けて超音波振動を伝達し、該超音波信号が支持シート210の弛緩領域220を伝搬することによって支持シート210の弛緩領域220が発熱し、該熱によって支持シート210の弛緩領域を溶解して溶着する。これにより、超音波付与ユニット30-1は、溶着した支持シート210の弛緩領域220を平らな上述した収縮部221に収縮させることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 エキスパンド装置
10 固定ユニット
20 拡張ユニット
21 保持テーブル
22 突き上げ部材
23 拡張ローラ
24 昇降ユニット
30 超音波付与ユニット
31 超音波ホーン
32 受け板部
40 制御ユニット
50 テープ貼りユニット
51 固定用テープ
52 送り出しローラ
53 貼り付けローラ
54 固定ローラ
55 巻き取りローラ
200 フレームユニット
201 ウエーハ
201-1 外周
202 チップ
203 基板
204 表面
205 分割予定ライン
206 デバイス
207 裏面
208 改質層
210 支持シート
211 フレーム
212 DAF
213 開口
214 内周
220 弛緩領域
221 収縮部
1000 チップ間隔拡大方法
1100 フレームユニット準備ステップ
1200 拡張ステップ
1300 収縮ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9