IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

特開2024-122080果実風味増強剤および果実風味増強方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122080
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】果実風味増強剤および果実風味増強方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240902BHJP
   A23D 9/007 20060101ALI20240902BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20240902BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240902BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240902BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20240902BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20240902BHJP
   A23G 9/00 20060101ALN20240902BHJP
   A23L 21/10 20160101ALN20240902BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23D9/007
A23D9/00 518
A23L5/00 H
A23L29/00
A23L2/00 B
A23L2/52 101
A23G9/00 101
A23L21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029407
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】池谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓章
(72)【発明者】
【氏名】竹内 守雄
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B035
4B041
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB22
4B014GG04
4B014GG09
4B014GG14
4B014GK02
4B014GL11
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG08
4B026DH05
4B026DL03
4B026DL05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX04
4B026DX08
4B035LC01
4B035LE01
4B035LG12
4B035LG17
4B035LG20
4B035LG32
4B035LG34
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP59
4B041LC01
4B041LD04
4B041LD05
4B041LH09
4B041LK18
4B041LK22
4B041LK29
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE06
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG05
4B047LG11
4B047LG38
4B047LP02
4B047LP03
4B047LP07
4B047LP20
4B117LC03
4B117LG05
4B117LG24
4B117LK10
4B117LK11
4B117LK13
(57)【要約】
【課題】
本発明は、果実を含む食品の果実風味を増強可能な果実風味増強剤および果実風味増強方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、果実を含む飲食品の果実風味を増強する果実風味増強剤であって、α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を有効成分とするものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実を含む飲食品の果実風味を増強する果実風味増強剤であって、
α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を有効成分とする、前記果実風味増強剤。
【請求項2】
前記酸化油脂の過酸化物価が15以上300以下である、請求項1に記載の前記果実風味増強剤。
【請求項3】
前記酸化油脂を含む粉末油脂である、請求項1または2に記載の前記果実風味増強剤。
【請求項4】
果実を含む飲食品に対して、
α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を添加する、果実風味増強方法。
【請求項5】
前記酸化油脂の過酸化物価が15以上300以下である、請求項4に記載の果実風味増強方法。
【請求項6】
前記果実を含む飲食品中に前記酸化油脂を0.5質量ppm以上80質量ppm以下含有させる、請求項4または5に記載の果実風味増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品に含まれる果実の風味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、果実風味は老若男女を問わず人気の風味である。しかし、果実含有量が少ない飲食品であったり、過度の加熱加工が必要な飲食品であったりすると、果実風味が充分に得られなかった。このため、果実風味を増強するという技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、グルカナーゼ処理した焼酎粕をデキストリンの存在下で加熱して得られる焼酎粕加工品を有効成分とした果実風味増強剤(特許文献1)、果実香を有する飲食品に酵母エキスを含有させることを特徴とする果実香の改善方法(特許文献2)などがある。
しかしこれらの技術は、一長一短があり、必ずしも満足できるものではなかった。そこで、本発明においては従来とは異なる材料にて果実風味を増強することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-093958号公報
【特許文献2】特開2011-103795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、果実風味増強剤および果実風味増強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
果実を含む飲食品の果実風味を増強する果実風味増強剤であって、α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を有効成分とする、前記果実風味増強剤。
【0007】
果実を含む飲食品に対して、α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を添加する、果実風味増強方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の果実風味増強剤によれば、果実を含む飲食品の果実風味を増強して前記飲食品の食味を向上させることができる。
また、本発明の果実風味増強方法によれば、果実風味に優れた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の果実風味増強剤および果実風味増強方法について具体的な態様を説明する。以降の説明において、数値範囲の上限値および下限値を示した時には、上限値及び下限値を適時組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
なお、本発明の果実風味増強剤および果実風味増強方法は、後述の実施形態および実施例に限定するものではなく、発明の特徴および効果を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
【0011】
1.果実風味増強剤
本発明の果実風味増強剤は、果実を含む飲食品の果実風味を増強する果実風味増強剤であって、α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を有効成分とするものである。
【0012】
(果実)
果実とは、植物の種子、果皮および子房などの付属物であり、本明細書においては果皮、果肉、果汁などを意味する。また、果実は、新鮮な果実だけでなく、果実の濃縮物、果実の凍結乾燥物など含む。果物類としては、特に限定しないが、例えば、いちご、オレンジ、ブルーベリー、りんご、グレープフルーツ、レモン、もも、パイナップル、メロン、マンゴー、ぶどう、梅、バナナ、ゆず、かぼす、すだち、トマトなどが挙げられる。
【0013】
本発明における「果実を含む飲食品」とは、前記果実を含む飲食品であり、限定するものではないが、例えば、ジュース、ジャム、ソース、フィリング、飲料、乳製品、冷菓、グミ、ゼリー、キャンディー、チョコレート、焼き菓子、菓子パン、ドレッシング、シーズニング、スープなどが挙げられる。
【0014】
また、本明細書において果実風味とは、前記果実の果皮、果肉および果汁由来の風味を意味する。
【0015】
(酸化油脂)
本発明の果実風味増強剤は、α―カロテンおよびβ―カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を有効成分とするものである。
【0016】
パーム系油脂は、アブラヤシの果実から得られるパーム系油脂あればよく、分子蒸留、分別、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭などの処理を施してなるものであってもよい。各処理の方法は、特に限定するものではなく、通常、油脂の加工・精製処理に用いられる方法を採用することができる。パーム系油脂のα―カロテンおよびβ―カロテンの合計含有量は、50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、50質量ppm以上1500質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上1000質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以上800質量ppm以下であることがさらに好ましい。また、パーム系油脂は、α―カロテンおよびβ―カロテンの合計含有量が上記範囲となる1種類を用いてもよく、あるいは2種類以上を混合して上記合計含有量となるように調製して用いてもよい。
【0017】
ヒマワリ油は、特に限定するものではないが、構成脂肪酸総量に占めるオレイン酸の割合が70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。また、ヒマワリ油は、精製処理を経ていることが好ましい。構成脂肪酸総量に占めるオレイン酸の含有量は、「基準油脂分析試験法2.5.23-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法」(日本油化学会)に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0018】
本発明における酸化油脂は、上記のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなることが重要であり、過酸化物価(以下、「POV」と称することがある。)が15以上300以下であることが好ましく、25以上290以下であることがより好ましく、40以上270以下であることがさらに好ましく、45以上250以下であることが特に好ましい。過酸化物価は、「基準油脂分析試験法2.5.2過酸化物価」(日本油化学会)に記載の方法に準拠して測定することができる。過酸化物価を上記範囲内とすることで、優れた果実風味増強効果を発揮することができる。
【0019】
酸化油脂を得る方法は、パーム系油脂およびヒマワリ油を酸化処理して過酸化物価が上記範囲内とすることができる方法であればよく、限定するものではないが、例えば、加熱処理が挙げられる。より具体的には、工業的スケールで生産する観点からは、タンク等の容器に原料となる油脂を収容した上で、容器に備えられた電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式等の加熱手段により加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、一概ではないが、例えば、加熱温度50℃以上220℃以下で加熱時間が0.1時間以上240時間以下で行うことが典型的であり、加熱温度60℃以上160℃以下で加熱時間が1時間以上100時間以下で行うことがより典型的である。加熱温度(℃)×加熱時間(時間)の積算量の条件としては、例えば、200以上20000以下の積算量で加熱処理を行うことが典型的であり、220以上18000以下の積算量で加熱処理を行うことがより典型的であり、240以上15000以下の積算量で加熱処理を行うことがさらに典型的である。なお、加熱温度を変化させた場合、加熱温度(℃)×加熱時間(時間)の積算量は、温度を変化させる前の加熱温度(℃)×温度を変化させる前の加熱時間(時間)+温度を変化させた後の加熱温度(℃)×温度を変化させた後の加熱時間(時間)、又は加熱時間(時間)にわたる加熱温度(℃)の積分値として算出することができる。
【0020】
また、酸化処理に際しては、加熱処理を施しながら撹拌により容器の開放スペースから酸素を取り入れたり、酸素を吹き込んだりして、酸素(空気)を供給してもよい。なお、酸素源は空気などを用いてもよい。これにより、原料となる油脂の酸化が促進される。その場合、酸素の供給量としては、原料油脂1kgあたり0.001~2L/分となるようにすることが好ましい。例えば、空気の場合は、原料油脂1kgあたり0.005~10L/分であることが好ましく、0.01~5L/分であることがよりに好ましい。
【0021】
果実風味増強剤中における前記酸化油脂の含有量は、限定するものではないが、例えば、0.1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の果実風味増強剤は、酸化油脂の機能性を損なわない範囲で、適宜適当な添加素材を配合していてもよい。具体的には、例えば、上記酸化油脂を除く食用油脂、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール等の酸化防止剤、香料、香辛料抽出物、動物エキス、脂肪酸等の風味付与材、乳化剤、シリコーン、色素などが挙げられる。
【0023】
酸化油脂を除く食用油脂は、特に限定しないが、例えば、菜種油(高オレイン酸タイプを含む)、大豆油、パーム油、パーム核油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ヒマワリ油、綿実油、こめ油、落花生油、ヤシ油、カカオ脂等の植物油脂;牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。加えて、これらの分別油(パーム油の中融点部、パーム油の軟質分別油、パーム油の硬質分別油等)、エステル交換油、水素添加油等の加工油脂等が挙げられる。食用油脂は、1種類単独でも2種類以上が混合されていてもよい。
【0024】
(形態)
また、本発明の果実風味増強剤は、その形態を限定するものではなく、例えば、液油、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、粉末油脂等とすることができる。
【0025】
例えば、粉末油脂の形態を採用する場合には、公知の製造方法を適宜選択して粉末油脂とすることが可能である。例えば、賦形剤を含む水相に酸化油脂を含む油相を添加し、ホモミキサーなどで攪拌後、必要に応じてホモジナイザーなどで均質化して得た水中油型乳化物を乾燥粉末化して得ることができる。乾燥粉末化する方法としては、特に限定するものではないが、噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法などを用いることができる。
【0026】
粉末油脂には、酸化油脂の他に、後述する食用油脂、賦形剤、乳化剤、助剤などが含まれてもよい。
【0027】
粉末油脂を調製する際には、酸化油脂以外の食用油脂を添加してもよい。食用油脂のヨウ素価は、0以上70以下であることが好ましく、0以上50以下であることがより好ましく、0以上30以下であることがさらに好ましい。
【0028】
また、粉末油脂に用いる食用油脂の融点は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましく、30℃以上であることがさらにより好ましい。融点の上限は特に限定されないが、例えば、70℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることがさらに好ましい。なお、融点は、日本油化学会が制定する「基準油脂分析試験法2.2.4.2融点(上昇融点)」に則って測定した値を意味する。
【0029】
賦形剤としては、油性成分を被覆することにより粉末油脂を形成し、さらに当該油性成分の滲みだしを防止できるものを用いることができる。特に限定されないが、例えば、でん粉(オクテニルコハク酸でん粉など)、水あめ、粉あめ、コーンシロップ、ショ糖(スクロース)、ぶどう糖(グルコース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、トレハロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンなどの糖類;エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴などの糖アルコール;小麦粉;ゼラチン;キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、トラガントガムなどのガム質などが挙げられる。これらの賦形剤は、一種単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0030】
賦形剤は、好ましくは、糖類であり、より好ましくは、オクテニルコハク酸でん粉、コーンシロップおよびデキストリンからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはコーンシロップおよびデキストリンからなる群から選ばれる1種または2種であり、さらに好ましくはコーンシロップである。糖類の平均分子量は、400以上20000以下であることが好ましく、500以上15000以下であることがより好ましい。また、糖類のデキストロース当量(DE)は、10以上50以下であることが好ましく、10以上40以下であることがより好ましく、10以上35以下であることがさらに好ましい。
【0031】
粉末油脂に含まれる賦形剤の含有量は、20質量%以上90質量%以下であり、30質量%以上85質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。賦形剤を所定量配合することで、保存安定性に優れた粉末油脂を得ることができる。
【0032】
乳化剤としては、通常、粉末油脂を調製する際に使用するものをもちいることが可能である。特に限定されないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましく、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種または2種であることがより好ましい。乳化剤のHLBは、1以上15以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、2以上8以下であることがさらに好ましい。
【0033】
粉末油脂には、発明の効果には関係ないが、さらにカゼインナトリウムが含まれていることが好ましい。
【0034】
2.果実風味増強方法
本発明の果実風味増強方法は、果実を含む飲食品に対して、α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂およびヒマワリ油からなる群から選ばれる1種以上の油脂を酸化処理してなる酸化油脂を添加するものである。そして、前記酸化油脂の過酸化物価が15以上300以下であることが好ましい。酸化油脂の詳しい説明は、1.果実風味増強剤にて説明した内容と同じであるため割愛する。
【0035】
本発明の果実風味増強方法においては、果実を含む飲食品中に前記酸化油脂を0.5質量ppm以上80質量ppm以下含有させることが好ましい。前記果実を含む飲食品中への酸化油脂の含有量は、1質量ppm以上80質量ppm以下であることがより好ましく、5質量ppm以上80質量ppm以下であることがさらに好ましく、8質量ppm以上70質量ppm以下であることが特に好ましい。果実を含む飲食品中における前記酸化油脂の含有量を上記範囲内とすることにより、異風味を感じさせずに効果的に果実風味を増強することを可能とする。
【実施例0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0037】
(油脂)
<パーム系油脂>
・レッドパーム油:α-カロテンおよびβ-カロテンの合計含有量411質量ppm、カロチーノ ピュアオレイン、カロチーノ社製、分子蒸留、1回分別
<ヒマワリ油>
・ヒマワリ油:ハイオレヒマワリ油NS、株式会社J-オイルミルズ製、構成脂肪酸総量に占めるオレイン酸含有量は83.7質量%
・ヤシ油:精製ヤシ油、不二製油株式会社製
(その他原料)
・アラビアガム:アラビックコールSS、三栄薬品貿易株式会社製
・コーンシロップ:フジシラップC-75S、平均分子量700、DE28、水分25質量%、加藤化学株式会社製
(果実を含む飲食品)
・フルーツジャム:アヲハタ55シリーズ(イチゴ、ママレード、ブルーベリー、リンゴ)、アヲハタ株式会社製
・フルーチェ(登録商標):イチゴ味、ミックスピーチ味、パイン味、メロン味、濃厚マンゴー味、濃厚ブルーベリー味、ハウス食品株式会社製
・ソフトクリーム:フルールソフトミックス厳選いちご、日世株式会社製、イチゴピューレを含む
・ジュース:Tropicana100%オレンジ、アップル、グレープフルーツ、キリンホールディングス株式会社販売
・ポッカレモン(登録商標)100:ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社製
【0038】
(α―カロテンおよびβ―カロテンの定量)
α-カロテンおよびβ-カロテンの定量は、高速液体クロマトグラフィーによる分析(HPLC分析)にて行った。具体的には、パーム系油脂、又は酸化処理物を0.5g秤量し、アセトン:テトラヒドロフラン=1:1で10mLにそれぞれメスアップし、HPLC分析に供し、検量線からα-カロテンおよびβ-カロテンの含有量を定量した。なお、検量線は定量標品としてα-カロテン(型番035-17981)およびβ-カロテン(型番035-05531)の試薬(和光純薬工業株式会社製)を使用して、所定濃度ごとにHPLC分析に供したときのピーク面積から作成した。以下にはおもな分析条件を示す。
【0039】
(HPLC条件)
・検出器:フォトダイオドアレイ検出器「2996 PHOTODIODE ARRAY DETECTOR」(Waters社)、300~600nmで検出
・カラム:Shim-pack VP-ODS, 4.6mmID×250mm, 4.6μm(株式会社島津製作所)
・カラム温度:50℃
・注入量:5uL
・流速:1.2mL/min
・移動相A:アセトニトリル
・移動相B:エタノール
・移動相C:アセトン
・グラジエント条件:表1に示す
【0040】
【表1】
【0041】
(過酸化物価(POV)の測定)
「基準油脂分析試験法2.5.2過酸化物価」(日本油化学会)に則って測定した。
【0042】
[調製例1]
〔酸化油脂〕
油脂200g~500gをビーカーに入れ、これに0.20~0.50L/分の量の空気を供給しつつ、オイルバス中、撹拌速度200rpmで攪拌しながら、表2に示す温度及び時間の条件で各油脂に対して加熱処理を施した。得られた酸化油脂の過酸化物価(POV)を、「基準油脂分析試験法2.5.2過酸化物価」に則って測定した。表2には、各油脂に対する酸化処理の条件と得られた酸化油脂のPOVの測定結果を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
[調製例2]
〔油脂組成物〕
調製例1にて得た酸化油脂を用いて、表3に示す配合にて酸化油脂および食用油脂を混合して果実風味増強剤もしくは果実風味増強用油脂組成物としての油脂組成物を調製した。
【0045】
【表3】
【0046】
[調製例3]
〔粉末油脂〕
表3に記載の試験油1および2を10質量%含有する果実風味増強剤としての粉末油脂および酸化油脂を含まない粉末油脂(対照)を調製した。粉末油脂は、表4に示す材料を用いて、以下の手順にて調製した。
(1)各材料が、水100質量部に対して100質量部となるように水に添加して、ホモミキサー(MARK II2.5型、プライミクス株式会社製)を用いて混合することにより、原料混合物を得た。
(2)上記原料混合物を、高圧乳化機(LAB-2000、SPXフローテクノロジー株式会社製)にて500barで処理することにより、O/W型エマルジョンを得た。
(3)得られたエマルジョンをスプレードライヤー(B-290、日本ビュッヒ株式会社製)を用いて乾燥粉末化することにより、粉末油脂を得た。
【0047】
【表4】
【0048】
[試験例1](ジャム)
表5に示す配合にてイチゴ、ママレード、ブルーベリーおよびリンゴのフルーツジャムに対して表4に記載の粉末油脂1および2を添加して果実風味の増強効果について評価した。風味評価は、粉末油脂を添加しないものを対照として行った。得られた評価結果を表5に示す。なお、風味の評価は、特別な訓練を行った専門パネラー4名が以下の評価指標に従って行い、合議にて評価結果とした。
【0049】
(評価指標)
5:対照と比べてフレッシュな果実風味を非常に強く感じた
4:対照と比べてフレッシュな果実風味をとても強く感じた
3:対照と比べてフレッシュな果実風味をやや強く感じた
2:対照と同等のフレッシュな果実風味を感じた
1:対照にはない異風味やネガティブな風味を感じた
【0050】
【表5】
【0051】
表5に示すように、いずれの風味のフルーツジャムについても粉末油脂1または2を酸化油脂添加量で10質量ppm以上100質量ppm未満の範囲で添加することにより果実風味の増強効果が確認された。
なお、粉末油脂1を酸化油脂添加量で100質量ppm添加したフルーツジャムにおいては、酸化油脂由来の異風味が感じられた。
【0052】
[試験例2](フルーチェ)
表6に示す配合にてイチゴ味、ミックスピーチ味、パイン味、メロン味、濃厚マンゴー味、濃厚ブルーベリー味のフルーチェに対して表4に記載の粉末油脂1および2を0.25質量%添加して果実風味の増強効果について評価した。風味評価は、粉末油脂を添加しないものを対照として行った。得られた評価結果を表6に示す。なお、風味の評価は、試験例1と同じ方法にて行った。
【0053】
【表6】
【0054】
表6に示すように、いずれの風味のフルーチェについても粉末油脂1または2を酸化油脂添加量で25質量ppm添加することにより果実風味の増強効果が確認された。酸化油脂を含まない粉末油脂(対照)については、イチゴ味のフルーチェの評価において果実風味の増強効果がないことが確認された。
この結果から、本発明の果実風味増強剤としての粉末油脂1または2を添加することによって、フルーチェに含まれる果実の風味を増強できることが明らかとなった。
【0055】
[試験例3](ソフトクリーム)
表7に示す配合にて日世フルーツソフトミックス厳選いちごに対して表4に記載の粉末油脂1および2を0.5質量%添加して果実風味の増強効果について評価した。ソフトクリームへの粉末油脂の添加は、ソフトクリームミックス原液に粉末油脂を混合し、アイスクリームメーカー(ICE-100、Cuisinart社製)を用いて凍結させ、-5℃で3時間以上保管した後に風味評価に供した。風味評価は、粉末油脂を添加しないものを対照として行った。得られた評価結果を表7に示す。なお、風味の評価は、試験例1と同じ方法にて行った。
【0056】
【表7】
【0057】
表7に示すように、イチゴピューレが含まれたソフトクリームに粉末油脂1または2を酸化油脂添加量で25質量ppm以上100質量ppm未満の範囲で添加することにより果実風味の増強効果が確認された。
なお、粉末油脂1を100質量ppm添加したソフトクリームにおいては、酸化油脂由来の異風味が感じられた。
【0058】
[試験例4](ジュース)
表8に示す配合にてオレンジジュース、アップルジュース、グレープジュースおよびレモン汁(2%溶液)に対して表4に記載の粉末油脂1および2を0.25質量%添加して果実風味の増強効果について評価した。レモン汁(2%溶液)は、冷水98質量%、ポッカレモン(登録商標)2質量%の配合比にて材料を混合して得た。風味評価は、粉末油脂を添加しないものを対照として行った。得られた評価結果を表8に示す。なお、風味の評価は、試験例1と同じ方法にて行った。
【0059】
【表8】
【0060】
表8に示すように、いずれの風味のジュースついても粉末油脂1または2を酸化油脂添加量で25質量ppm添加することにより果実風味の増強効果が確認された。
【0061】
試験例1乃至4の様に、本発明の果実風味増強剤を果実を含む食品に添加することにより、果実風味を増強できることが明らかとなった。
また、果実風味増強剤は、果実を含む食品に対して、酸化油脂添加量で10質量ppm以上100質量ppm未満となるように添加することが好ましいことが明らかとなった。