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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122230
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電装冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20240902BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240902BHJP
   B24B 55/00 20060101ALI20240902BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20240902BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240902BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B23Q11/12 Z
B23Q11/10 E
B24B55/00
B24B57/02
B24B55/06
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029667
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田部 政典
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C011EE09
3C047FF04
3C047FF15
3C047GG01
3C047HH11
5F057AA39
5F057AA48
5F057AA49
5F057CA13
5F057DA11
5F057FA48
5F057GA05
(57)【要約】
【課題】電装ボックス内に収容された電気制御機器を効果的に冷却してその耐久性を高めることができる電装冷却装置を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル(保持テーブル)11を有する保持ユニット10と、ウェーハ(被加工物)Wに研削水(加工液)を供給する研削水供給部(加工液供給部)20と、ウェーハWを加工する研削ユニット(加工ユニット)30と、研削砥石35bとチャックテーブル11とを収容する加工室Sと、電気制御機器40,41を集約した電装ボックス40とを備えた研削装置(加工装置)1に配設される電装冷却装置50は、加工室Sから排出される研削水の排水(排液)を、電気制御機器41,42を経由して流す排水管(排液管)P3~P6と、送液ポンプ(送水ポンプ)54を備え、排液管P3~P6を流れる排水と電気制御機器41,42との熱交換によって該電気制御機器41,42を冷却する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルを有する保持ユニットと、
該保持テーブルに保持された被加工物に加工液を供給する加工液供給部と、
該加工液を供給しつつ加工具によって被加工物を加工する加工ユニットと、
該加工具と該保持テーブルとを収容する加工室と、
各駆動部の電気制御機器を集約した電装ボックスと、
を備えた加工装置に配設される電装冷却装置であって、
該加工室から排出される加工液の排液を、該電気制御機器を経由して流す排液管と、
該排液管に排液を送る送液ポンプと、
を備え、該排液管を流れる排液と該電気制御機器との熱交換によって該電気制御機器を冷却する、電装冷却装置。
【請求項2】
該排液を貯める貯液タンクを備え、
該貯液タンクにおける放熱によって温度の下がった該排液を該送液ポンプによって該排液管に送って該電気制御機器を冷却する、請求項1記載の電装冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置に備えられた電装ボックス内に集約された電気制御機器を冷却するための電装冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を加工する加工装置には、加工手段の昇降駆動部や被加工物を保持する保持手段回転駆動部などの各駆動部を制御する電気制御機器を集約した電装ボックスが備えられている。このような電装ボックス内に収容されている電気制御機器は、駆動部を制御するための電気信号の送受信などを行うために発熱するが、電装ボックスの内部は密閉された空間であるため、電気制御機器の発熱によって電装ボックス内の温度が上昇し、その内部に収容されている電気制御機器が高温となり、該電気制御機器の耐久寿命が低下するという問題が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1には、例えば、研削装置の研削ホイールや被加工物を保持する保持テーブルなどを覆う加工室カバーの内部の加工室の排気口に一端が接続された排気管を電装ボックス内に配置するとともに、該排気管の他端をファンなどの排気手段に接続し、排気手段によって排気管の空気を吸引することによって、被加工物の加工中に加工室内に発生する加工液のミストを含む空気を排気管に流し、電装ボックス内の空気と排気管を流れる空気との熱交換によって電装ボックス内に電気制御機器を冷却するようにした電装冷却装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ワークが貼着された拡張テープを拡張しつつ冷却する冷却分割手段を備えた冷却分割ボックスと、各駆動部を制御する電気制御機器を集約した電装ボックスを備える加工装置において、冷却分割手段において使用された冷気を電装ボックス内に供給することによって、該電装ボックス内に収容されて電気制御機器を冷却してその温度上昇を抑えるようにした電装冷却装置が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、工作機械本体を制御する各種電気機器を収容した制御盤の制御盤ケースの内外に内部冷却水パイプと外部冷却水パイプを密着してそれぞれ配設し、工作機械本体で使用するエアを内部冷却パイプと外部冷却パイプに通すことによって、電気機器を冷却するようにした工作機械の制御盤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-005955号公報
【特許文献2】特開2013-038203号公報
【特許文献3】特開2000-005955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された電装冷却装置においては、加工液のミストを含む空気(加工排気)は、加工熱によって温められているため、この空気(加工排気)と電装ボックス内の空気との熱交換効率が低く、電気制御機器を効果的に冷却することができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2において提案された電装冷却装置は、テープを冷却するための冷却分割手段を備えている加工装置に対してしか適用することができず、その適用範囲が限定されるという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献3において提案された工作機械の制御盤においては、特に外部冷却水パイプを流れるエアと制御盤ケース内のエアとの熱交換が制御盤ケースを介して行われるため、熱交換効率が悪く、制御盤ケース内に収容された電気機器を十分冷却することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、加工液の排液を有効に利用して電装ボックス内に収容された電気制御機器を効果的に冷却してその耐久性を高めることができる電装冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、被加工物を保持する保持テーブルを有する保持ユニットと、該保持テーブルに保持された被加工物に加工液を供給する加工液供給部と、該加工液を供給しつつ加工具によって被加工物を加工する加工ユニットと、該加工具と該保持テーブルとを収容する加工室と、各駆動部の電気制御機器を集約した電装ボックスと、を備えた加工装置に配設される電装冷却装置であって、該加工室から排出される加工液の排液を、該電気制御機器を経由して流す排液管と、該排液管に排液を送る送液ポンプと、を備え、該排液管を流れる排液と該電気制御機器との熱交換によって該電気制御機器を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工室から排出される加工液の廃液を送水ポンプによって排液管に送り、この排液管に送られる排液が電装ボックス内の電気制御機器を経由して電装ボックス内を流れるため、電装ボックス内において排液と電気制御機器との熱交換によって電気制御機器が冷却される。つまり、電気制御機器が排液によって冷却されてその温度上昇が抑えられるため、加工室から排出される排液を有効に利用して電気制御機器の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電装冷却装置を備える研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2図1に示す研削装置の側断面図(Y軸方向で切断した断面図をX軸方向から見た図)である。
図3】本発明に係る電動冷却装置の電装ボックスの背面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、本発明に係る電装冷却装置を備える加工装置の一形態としての研削装置の構成を図1及び図2に基づいて説明する。
[研削装置の構成]
【0016】
図1は本発明に係る電動冷却装置を備える研削装置の一部を破断して示す斜視図、図2図1に示す研削装置の側断面図(Y軸方向で切断した断面図をX軸方向から見た図)である。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(前後方向)、Y軸方向(左右方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0017】
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。すなわち、研削装置1は、ウェーハWを保持する保持テーブル(以下、「チャックテーブル」と称する)11を備える保持ユニット10と、チャックテーブル11に保持されたウェーハWに加工液(以下、「研削水」と称する)を供給する加工液供給部(以下、「研削水供給部」と称する)20と、研削水を供給しつつ加工具である後述の研削砥石35b(図2参照)を加工(研削)する加工ユニット(以下、「研削ユニット」と称する)30と、研削砥石35bとチャックテーブル11とを収容する加工室S(図2参照)と、各駆動部の電気制御機器41,42(図2及び図3参照)を集約した電装ボックス40と、本発明に係る電装冷却装置50を主要な構成要素として備えている。
【0018】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図1に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護ざれている。そして、ウェーハWは、その表面(図1においては下面)がチャックテーブル11の保持面に吸引保持され、裏面(図1においては上面)が研削水の供給を受けながら研削ユニット30の研削砥石35b(図2参照)によって研削される。
【0019】
次に、研削装置1の主要な構成要素である保持ユニット10、研削水供給部20、研削ユニット30、加工室S及び電装冷却装置50の構成についてそれぞれ説明する。
【0020】
(保持ユニット)
保持ユニット10は、垂直な軸心CL1(図2参照)を中心として回転可能な円板状のチャックテーブル11を備えており、このチャックテーブル11の中央部には、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材11Aが組み込まれている。そして、ポーラス部材11Aは、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面を構成しており、このポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの吸引源12(図2参照)に選択的に接続される。
【0021】
ここで、チャックテーブル11は、図2に示す回転機構13によって軸心CL1を中心として回転駆動される。すなわち、チャックテーブル11は、図2に示すように、その中心から垂直下方に向かって一体に延びるシャフト14を備えており、このシャフト14が回転機構13を構成するサーボモータ15によって所定の速度で回転駆動される。なお、回転機構13には、サーボモータ15の回転数や回転角度、回転方向などを検出するエンコーダ16が設けられている。
【0022】
ところで、本実施の形態に係る研削装置1は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100を備えており、このベース100に開口するY軸方向に長い矩形の開口部100aにはチャックテーブル11が臨んでいる。そして、ベース100の上面に開口する開口部100aのチャックテーブル11の周囲は、矩形プレート状のカバー17によって覆われており、開口部100aのカバー17の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー17と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー18,19(図2参照)によってそれぞれ覆われている。したがって、チャックテーブル11がY軸上のどの位置にあっても、開口部100aは、カバー4と伸縮カバー18,19によって常に閉じられており、異物が開口部100aからベース100内に侵入することがない。
【0023】
また、図示しないが、ベース100の内部には、チャックテーブル11を図2の左右方向(Y軸方向)に移動させる水平移動機構が収容されている。なお、この水平移動機構は、周知のボールネジ機構によって構成されているため、これについての詳細な説明は省略する。
【0024】
(研削水供給部)
研削水供給部20は、研削加工中のウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に研削水を供給するものであって、図2に示すように、研削水供給源21と、該研削水供給源21から延びる配管22と、該配管22の端部に取り付けられたノズル23によって構成されている。なお、ノズル23は、後述の加工室S内に収容されて研削加工中のウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に研削水を噴射するものであって、このノズル23から噴射される研削水によって、研削によって発生した研削屑が除去されるとともに、ウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に発生する摩擦熱が奪われて該接触部が冷却される。なお、研削水を後述のスピンドルモータ32などの軸中心を経て研削砥石35bの中心部からウェーハWの中心に向けて噴射する方式を採用してもよい。ここで、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0025】
(研削ユニット)
研削ユニット30は、ホルダ31に収容されたスピンドモータ32と、該スピンドルモータ32によって鉛直な回転軸心CL2を中心として回転駆動されるスピンドル33と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34(図2参照)と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35(図2参照)とを備えている。ここで、図2に示すように、研削ホイール35は、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石35bによって構成されている。なお、研削砥石35bは、ウェーハWを研削するための加工具であって、その下面は、ウェーハWに接触する研削面を構成している。
【0026】
ところで、研削ユニット30は、垂直移動機構2によって鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降動可能であって、この垂直移動機構2は、ベース100の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム101の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この垂直移動機構2は、研削ユニット30に設けられたホルダ31の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板3を、ホルダ31及び該ホルダ31に保持されたスピンドル33と研削ホイール35と共に左右一対のガイドレール4に沿ってZ軸方向に昇降動させる機構である。ここで、左右一対のガイドレール4は、コラム101の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0027】
また、左右一対のガイドレール4の間には、回転可能なボールネジ5がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ5の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ6に連結されている。ここで、サーボモータ6は、コラム101の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット7を介して縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ5の下端は、軸受8(図2参照)によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ5には、昇降板3の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設されたナット部材9(図2参照)が螺合している。
【0028】
したがって、サーボモータ6を駆動してボールネジ5を正逆転させれば、このボールネジ5に螺合するナット部材9が取り付けられた昇降板3が研削ユニット30と共にZ軸に沿って上下動する。
【0029】
(加工室)
図1に示すように、ベース100上には、チャックテーブル11を周囲から覆う矩形ボック状の加工室カバー36が設置されており、この加工室カバー36の内部に形成された加工室Sには、図2に示すように、チャックテーブル11と、加工ユニット30の下端部(スピンドル33とマウント34及び研削ホイール35)及びノズル23が収容されている。なお、加工室カバー36の天板36Aには、加工ユニット30のスピンドル33が貫通するための円孔36aが形成されている。また、加工室カバー36の-Y軸方向の前板36Bの一部には、チャックテーブル11の通過を許容する矩形の開口部36bが形成されている。
【0030】
(電装ボックス)
電装ボックス40は、ベース100上の後端部(+Y軸方向端部)に垂直に立設された矩形のボックスであって、その内部には、図2に示すように、各駆動部、具体的には、スピンドルモータ32などを駆動制御する2つの電気制御機器41と、チャックテーブル11の回転機構13を構成するサーボモータ15やエンコーダ16などを駆動制御する6つの電気制御機器42が集約して収容されている。
【0031】
(電装冷却装置)
本発明に係る電装冷却装置50は、加工室S内において研削加工に供された研削水(以下、「排水」と称する)によって電装ボックス40内の電気制御機器41,42を冷却するものである。
【0032】
この電装冷却装置50は、研削装置1のベース100の横に設置された矩形ボックス状の貯水タンク51と、加工室カバー36の出口プラグ52から延びて貯水タンク51の上部の入口プラグ53へと接続された第1排水管P1と、貯水タンク51上に設置された送水ポンプ54と、該送水ポンプ54の吐出プラグ55から延びて電装ボックス40の下部の入口プラグ56へと接続された第2排水管P2と、図3に示すように、電装ボックス40内で入口プラグ56から左側(+X軸側)を垂直上方に立ち上がる第3排水管P3と、電装ボックス50内で右側(-X軸側)に配された第4排水管P4と、一方(上側)の2つの電気制御機器41の上側を横方向に横切って第3排水管P3と第4排水管P4とを接続する水平な第5排水管P5と、2つの電気制御機器41とその下方に配置された6つの電気制御機器42の間を横方向に横切って第3排水管P3と第4排水管P4とを接続する水平な第6排水管P6を含んで構成されている。なお、第4排水管P4の下端は、出口プラグ57に接続された第7排水管P7に接続されており、第7排水管P7は、不図示の排水処理部に接続されている。また、貯水タンク51は、排水の流れ方向において送水ポンプ54の上流側に配置されている。
【0033】
[ウェーハの研削方法]
次に、以上のように構成された研削装置1とこれに設けられた本発明に係る電装冷却装置50の作用について説明する。
【0034】
研削装置1においてウェーハWを研削するには、チャックテーブル11の保持面の該チャックテーブル11の回転軸心CL1とウェーハWの中心とを重ならせた位置でウェーハWが保持面に吸引保持される。すなわち、ウェーハWが上述のようにチャックテーブル11の保持面の回転軸心CL1とウェーハWの中心とを一致させる所定位置に保護テープT(図1参照)を下にして載置されると、チャックテーブル11のポーラス部材11Aが図2に示す吸引源12に接続される。すると、ポーラス部材11Aが吸引源12によって真空引きされて該ポーラス部材11Aに負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル11の保持面に吸引保持される。
【0035】
上述のように、ウェーハWがチャックテーブル11の保持面に吸引保持されると、該ウェーハWの上面(裏面)が研削ユニット30によって所定の厚みになるまで研削される。すなわち、不図示の水平移動機構が駆動されてチャックテーブル11が+Y軸方向(後方)に移動し、該チャックテーブル11の保持面に吸引保持されているウェーハWが研削ユニット30の研削ホイール35の下方に位置決めされる。
【0036】
上記状態から、チャックテーブル11が回転機構13によって回転軸心CL1を中心として所定の速度で回転駆動されるとともに、研削ユニット30のスピンドルモータ32が起動されて研削ホイール35が垂直な回転軸心CL2を中心として所定の速度でチャックテーブル11と同方向に回転駆動される。
【0037】
上述のようにチャックテーブル11と研削ホイール35が所定の速度で同方向に回転している状態から、垂直移動機構2によって研削ユニット30を鉛直下方(-Z軸方向)に研削砥石35bの研削面(下面)がチャックテーブル11の保持面に吸引保持されたウェーハWの上面に接触する位置まで移動させる。すると、チャックテーブル11の回転によって、該チャックテーブル11に保持されたウェーハWの上面(裏面)が研削砥石35bによって研削されるが、このウェーハWの研削加工においては、研削水供給部20からの研削水がノズル23からウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に向けて噴射される。すなわち、研削水供給部20の研削水供給源21からの研削水は、配管22を通って加工室S内に配置されたノズル23へと至り、該ノズル23からウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に向けて噴射されて該接触部の洗浄と冷却に供される。
【0038】
ところで、ウェーハWの研削加工中にノズル23からウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に向けて噴射されて該接触部の洗浄と冷却に供された研削水は、図2に示すように、ウェーハWと研削ホイール35(研削砥石35b)の回転に伴う遠心力によって加工室Sにおいて周囲に飛散するが、この研削水は、以下に説明するように、本発明に係る電装冷却装置50において、電装ボックス40内に収容された複数の電気制御機器41,42の冷却に供される。
【0039】
すなわち、電装冷却装置5において、送水ポンプ54が駆動されると、貯水タンク51内が負圧となるため、加工室Sにおいて周囲に飛散して該加工室Sの底部に滞留する研削水(以下、「排水」と称する)は、第1排水管P1を通って貯水タンク51内へと流れ、該貯水タンク51内に貯留される。この貯水タンク51においては、その退部に貯留された排水は、貯水タンク51の表面から大気中への放熱によって冷却され、この冷却された排水は、送水ポンプによって昇圧されて第2排水管P2を通って電装ボックス40内に配置された第3排水管P3へと送られる。なお、貯水タンク51の放熱性を高めるために該貯水タンク51の表面に放熱フィンを設けてもよい。また、貯水タンク51は、その放熱性を高めるために熱伝導率の高い金属(例えば、銅やアルミニウムなど)で構成することが望ましい。
【0040】
上述のように、電装ボックス40において、第3排水管P3へと送られた排水は、図3に矢印にて流れ方向を示すように、第3排水管P3を上方に向かって流れ、その一部が第5排水管P5を通って第4排水管P4へと流れ、他の一部が第6排水管P6を通って第4排水管P4へと流れる。そして、第4排水管P4へと流れ込んだ排水は、該第4排水管P
4を下方に向かって流れた後、その流れ方向が水平に曲げられて出口プラグ57へと向かい、該出口プラグ57に接続された第7排水管P7から電装ボックス40外へと排出され、不図示の排水処理部に向かって流れる。
【0041】
以上のように、ウェーハWの研削加工中にノズル23からウェーハWと研削砥石35bとの接触部(加工部)に向けて噴射されて該接触部の洗浄と冷却に供された研削水は、排水として貯水タンク51に貯留されて放熱によって冷却された後、送水ポンプ54によって電装ボックス40内へと導入され、電装ボックス40内においては、電気制御機器41,42の周囲を流れてこれらの電気制御機器41,42を冷却するため、複数の電気制御機器41,42の温度上昇が低く抑えられる。このため、複数の電気制御機器41,42の過熱による耐久寿命の低下が防がれ、これらの電気制御機器41,42の耐久性が高められる。
【0042】
なお、本実施形態では、電装ボックス40から第7排水管P7へと排出される排水を不図示の排水処理部へと送る(放水する)ようにしたが、この排水に含まれる研削屑を除去した後、この排水を研削水供給源21へと戻して再利用するようにしてもよい。
【0043】
また、以上の実施の形態では、研削装置に備えられた電装冷却装置に対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、加工液を使用する切削装置、バイト切削装置または、研磨装置などの任意の加工装置に備えられた電装冷却装置に対しても同様に適用可能である。
【0044】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1:研削装置(加工装置)、2:垂直移動機構、3:昇降板、4:ガイドレール、
5:ボールネジ、6:サーボモータ、7:ブラケット、8:軸受、9:ナット部材、
10:保持ユニット、11:チャックテーブル(保持テーブル)、
11A:ポーラス部材、12:吸引源、13:回転機構、14:シャフト、
15:サーボモータ、16:エンコーダ、17:カバー、18,19:伸縮カバー、
20:研削水供給部(加工液供給部)、21:研削水供給源、22:配管、
23:ノズル、30:研削ユニット(加工ユニット)、31:ホルダ、
32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:研削ホイール、35a:基台、
35b:研削砥石(加工具)、36:加工室カバー、36A:天板、36a:円孔、
36B:前板、36b:開口部、40:電装ボックス、41,42:電気制御機器、
50:電装冷却装置、51:貯水タンク(貯液タンク)、52:出口プラグ、
53:入口プラグ、54:送水ポンプ(送液ポンプ)、55:吐出プラグ、
56:入口プラグ、57:出口プラグ、100:ベース、100a:ベースの開口部、
101:コラム、
CL1:チャックテーブルの回転軸心、CL2:スピンドルの回転軸心、
P1:第1排水管、P2:第2排水管、P3:第3排水管、P4:第4排水管、
P5:第5排水管、P6:第6排水管、P7:第3排水管、S:加工室、
T:保護テープ、W:ウェーハ(被加工物)
図1
図2
図3