(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012226
(43)【公開日】2024-01-26
(54)【発明の名称】微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20240119BHJP
B22F 9/12 20060101ALI20240119BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B01J19/08 K
B22F9/12 Z
H05H1/26
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166218
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2021503265の分割
【原出願日】2019-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】田中 康規
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 直人
(72)【発明者】
【氏名】隠田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】末安 志織
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微粒子の粒径を制御でき、かつ粒径の均一性が良好な微粒子を、効率よく大量に製造できる微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】微粒子の製造装置であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、内部に熱プラズマ炎が発生され、原料供給部により供給される原料を熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、プラズマトーチの内部に熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部とを有し、プラズマ発生部は、プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、第1のコイルの下方に設置されプラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とを有し、第1のコイルと第2のコイルとはプラズマトーチの長手方向に並んで配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の製造装置であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、
内部に前記熱プラズマ炎が発生され、前記原料供給部により供給される前記原料を前記熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、
前記プラズマトーチの前記内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部とを有し、
前記プラズマ発生部は、前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とを有し、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されている、微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記熱プラズマ炎に、急冷ガスを供給する気体供給部を有する、請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記プラズマ発生部は、前記第2の電源部により、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の電流振幅が高い領域で、前記原料の供給量を多くする、請求項1または2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアである、請求項1~3のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項7】
プラズマトーチの内部で発生した熱プラズマ炎を用いた微粒子の製造方法であって、
前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とが設けられ、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されており、前記第1の電源部および前記第2の電源部により、前記熱プラズマ炎が発生され、
前記プラズマトーチの前記内部で発生した前記熱プラズマ炎に微粒子製造用の原料を供給する第1の工程と、
前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させ気相状態の混合物とし、前記混合物を冷却する第2の工程とを有し、
前記第1の工程および前記第2の工程において、前記第2の電源部は、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する、微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程は、前記熱プラズマ炎に急冷ガスを供給して、気相状態の前記混合物を冷却する、請求項7に記載の微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程では、前記第2の電源部により、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の電流振幅が高い領域で、前記原料の供給量を多くする、請求項7または8に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアである、請求項7~9のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程では、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項7~10のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記第1の工程では、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項7~10のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プラズマ炎を用いた微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関し、特に、2つのコイルと、2つのコイルにそれぞれ高周波電流を供給する2つの独立した高周波電源を用いて、電磁誘導により熱プラズマ炎を発生させて、微粒子を製造する微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、多岐の分野で用いられている。このような微粒子を製造する方法の一つとして、気相法がある。気相法には、各種のガス等を高温で化学反応させる化学的方法と、電子ビームまたはレーザ等のビームを照射して物質を分解し、蒸発させて微粒子を生成する物理的方法とがある。
【0003】
気相法の他の方法としては、熱プラズマ法がある。熱プラズマ法は、熱プラズマ炎中で原材料を瞬時に蒸発させた後、その蒸発物を急冷凝固させて微粒子を製造する方法である。熱プラズマ法によれば、クリーンで生産性が高く、高温であるため高融点材料にも対応可能であり、他の気相法に比べて複合化が比較的容易であるといった多くの利点を有する。このため、熱プラズマ法は、微粒子を製造する方法として積極的に利用されている。
【0004】
従来の熱プラズマ法を用いた微粒子の製造方法としては、例えば、原材料物質を粉末状にし、この粉末状にされた原材料(粉末原材料、粉体)をキャリアガス等と共に、分散させて、原料として、直接熱プラズマ中に投入することにより、微粒子を製造している。
また、例えば、特許文献1には、微粒子製造用材料(原材料)を分散媒中に分散させてスラリーにし、このスラリーを原料として、液滴化させて熱プラズマ炎中に導入することにより微粒子を製造する、微粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Kuraishi, et al., J.Phys. Conf. Ser., 441, 012016(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微粒子の製造方法としては、熱プラズマ炎中に、キャリアガスとともに供給すること、および上述の特許文献1のようにスラリーの形態で、原材料を供給することが従来から知られている。しかしながら、熱プラズマ炎の中でも、電磁誘導により発生させた誘導熱プラズマは、外部から擾乱により、熱プラズマ炎が不安定になることがある。
そこで、外部からの擾乱により熱プラズマ炎が不安定になることを解消するために、例えば、非特許文献1に記載のように、熱プラズマ炎を、2つのコイルと、2つのコイルにそれぞれ接続された2つの独立した高周波電源を用いて発生させることが提案されている。
ところで、現在、上述のように外部からの擾乱による熱プラズマ炎の不安定を解消すること以外に、得られる微粒子の粒径の制御、および得られる微粒子の粒径の均一性等が要求されている。
さらに、従来から提案されている外部からの擾乱による熱プラズマ炎の不安定を解消するための構成であっても、微粒子の生産性を上げるために大量の原材料を、熱プラズマ炎に供給した場合、熱プラズマ炎が消滅する等、熱プラズマ炎が不安定になり、生産性を向上させるには十分とは言えない。
本発明の目的は、微粒子の粒径を制御でき、かつ粒径の均一性が良好な微粒子を、効率よく大量に製造できる微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、微粒子の製造装置であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、内部に前記熱プラズマ炎が発生され、前記原料供給部により供給される前記原料を前記熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、前記プラズマトーチの前記内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部とを有し、前記プラズマ発生部は、前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とを有し、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されている、微粒子の製造装置を提供するものである。
【0009】
前記熱プラズマ炎に、急冷ガスを供給する気体供給部を有することが好ましい。
また、前記プラズマ発生部は、前記第2の電源部により、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の電流振幅が高い領域で、前記原料の供給量を多くすることが好ましい。
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアであることが好ましい。
また、前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
また、前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、プラズマトーチの内部で発生した熱プラズマ炎を用いた微粒子の製造方法であって、前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とが設けられ、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されており、前記第1の電源部および前記第2の電源部により、前記熱プラズマ炎が発生され、前記プラズマトーチの前記内部で発生した前記熱プラズマ炎に微粒子製造用の原料を供給する第1の工程と、前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させ気相状態の混合物とし、前記混合物を冷却する第2の工程とを有し、前記第1の工程および前記第2の工程において、前記第2の電源部は、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する、微粒子の製造方法を提供するものである。
【0011】
前記第2の工程は、前記熱プラズマ炎に急冷ガスを供給して、気相状態の前記混合物を冷却することが好ましい。
また、前記第1の工程では、前記第2の電源部により、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の電流振幅が高い領域で、前記原料の供給量を多くすることが好ましい。
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアであることが好ましい。
また、前記第1の工程では、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
また、前記第1の工程では、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法によれば、微粒子の粒径を制御でき、かつ粒径の均一性が良好な微粒子を、効率よく大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の微粒子の製造装置のプラズマトーチの一例を示す模式的部分断面図である。
【
図3】(a)は第1の電源部の高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(b)は第2の電源部の高周波電流の波形の一例を示す模式図である。
【
図4】(a)は第2の電源部の高周波電流の波形の一例を示すグラフであり、(b)はバルブの開閉タイミングを示すグラフであり、(c)は原料の供給を示すグラフである。
【
図5】(a)は第1のコイルの高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(b)は第2のコイルの高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(c)は第1のコイルによる投入電力の波形の一例を示す模式図であり、(d)は第2のコイルによる投入電力の波形の一例を示す模式図である。
【
図6】(a)~(d)はプラズマトーチの解析モデルの50%SCLにおける温度分布および流れ場の一例を示す模式図である。
【
図7】(a)~(d)はプラズマトーチの解析モデルの0%SCLにおける温度分布および流れ場の一例を示す模式図である。
【
図8】プラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の50%SCLにおける経験温度の一例を時間経過とともに示すグラフである。
【
図9】プラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の0%SCLにおける経験温度の一例を時間経過とともに示すグラフである。
【
図10】プラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の100%SCLにおける経験温度の一例を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施形態の微粒子の製造装置で得られた微粒子の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の微粒子の製造装置の一例を示す模式図であり、
図2は本発明の実施形態の微粒子の製造装置のプラズマトーチの一例を示す模式的部分断面図である。
【0015】
図1に示す微粒子の製造装置10(以下、単に製造装置10という)は、微粒子製造用の原料を用いて、ナノサイズの微粒子を製造するものである。微粒子製造用の原料には、例えば、粉体を用いる。
なお、製造装置10は、微粒子であれば、その種類は特に限定されるものではなく、原料の組成を変えることにより、金属微粒子以外にも微粒子として、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子、酸窒化物微粒子等の微粒子を製造することができる。
製造装置10は、原料供給部12と、プラズマトーチ14と、チャンバー16と、回収部18と、プラズマガス供給部20と、プラズマ発生部21と、気体供給部22と、制御部24とを有する。
【0016】
原料供給部12はプラズマトーチ14に中空状の供給管13を介して接続されている。
また、原料供給部12とプラズマトーチ14との間の供給管13に、後述するように間歇供給部15を設けてもよい。製造装置10では間歇供給部15は必須の構成ではない。
プラズマトーチ14の下方にチャンバー16が設けられ、チャンバー16の下流に回収部18が設けられている。プラズマ発生部21はプラズマトーチ14に接続されており、後述するようにプラズマ発生部21により、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100が発生される。
【0017】
原料供給部12は、微粒子製造用の原料をプラズマトーチ14の内部で発生する熱プラズマ炎100中に供給するためのものである。
原料供給部12は、原料を熱プラズマ炎100中に供給することができれば、特に限定されるものではなく、原料を粒子状に分散させた状態で熱プラズマ炎100中に供給するものと、原料をスラリーにし、スラリーを液滴化した形態で熱プラズマ炎100中に供給するものとの2通りの方式を用いることができる。
【0018】
例えば、微粒子製造用の原料に、粉体を用いた場合、プラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中に原料が供給される際には原料が粒子状に分散されている必要がある。このため、例えば、原料は、キャリアガスに分散させて粒子状に供給される。この場合、例えば、原料供給部12は、粉体の原料を分散状態に維持しつつ、定量的にプラズマトーチ14内部の熱プラズマ炎100中に供給するものである。このような機能を有する原料供給部12としては、例えば、特許第3217415号公報、および特開2007-138287号公報に開示されている装置が利用可能である。
例えば、原料供給部12は、例えば、原料の粉末を貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、原料の粉末を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された原料の粉末が最終的に散布される前に、これを粒子の状態に分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
キャリアガス供給源から押し出し圧力がかけられたキャリアガスとともに原料の粉末は供給管13を介してプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中へ供給される。
原料供給部12は、原料の粉末の凝集を防止し、分散状態を維持したまま、原料の粉末を、粒子状に分散させた状態でプラズマトーチ14内に散布することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。キャリアガスには、例えば、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0019】
原料の粉末をスラリーの形態で供給する原料供給部12は、例えば、特開2011-213524号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、原料供給部12は、原料の粉末が水等の液体に分散されたスラリー(図示せず)を入れる容器(図示せず)と、容器中のスラリーを攪拌する攪拌機(図示せず)と、供給管13を介してスラリーに高圧をかけプラズマトーチ14内に供給するためのポンプ(図示せず)と、スラリーを液滴化させてプラズマトーチ14内へ供給するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給源(図示せず)とを有する。噴霧ガス供給源は、キャリアガス供給源に相当するものである。噴霧ガスのことをキャリアガスともいう。
スラリーの形態で原料を供給する場合、原料の粉末を水等の液体に分散させてスラリーにする。なお、スラリー中の原料の粉末と水との混合比は、特に限定されるものではなく、例えば、質量比で5:5(50%:50%)である。
【0020】
原料の粉末をスラリーにして、スラリーを液滴化した形態で供給する原料供給部12を用いた場合、噴霧ガス供給源から押し出し圧力をかけられた噴霧ガスが、スラリーと共に供給管13を介してプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中へ供給される。供給管13は、スラリーをプラズマトーチ内の熱プラズマ炎100中に噴霧し液滴化するための二流体ノズル機構を有しており、これにより、スラリーをプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中に噴霧する。すなわち、スラリーを液滴化させることができる。噴霧ガスには、上述のキャリアガスと同様に、例えば、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
このように、二流体ノズル機構は、スラリーに高圧をかけ、気体である噴霧ガス(キャリアガス)によりスラリーを噴霧することができ、スラリーを液滴化させるための一つの方法として用いられる。
なお、上述の二流体ノズル機構に限定されるものではなく、一流体ノズル機構を用いてもよい。さらに他の方法として、例えば、回転している円板上にスラリーを一定速度で落下させて遠心力により液滴化する(液滴を形成する)方法、スラリー表面に高い電圧を印加して液滴化する(液滴を発生させる)方法等が挙げられる。
【0021】
プラズマトーチ14は、内部に熱プラズマ炎100が発生されるものであり、原料供給部12により供給される原料を熱プラズマ炎100にて蒸発させて気相状態の混合物45とするものである。
図2に示すように、プラズマトーチ14は、石英管14aと、石英管14aの外面に設けられた、プラズマトーチ14の外側を取り巻く高周波発振用コイル14bとで構成されている。プラズマトーチ14の上部には、供給管13が挿入される供給口14cがその中央部に設けられており、プラズマガス供給口14dがその周辺部(同一円周上)に形成されている。
供給管13により、例えば、粉末状の原料と、アルゴンガスまたは水素ガス等のキャリアガスとがプラズマトーチ14内に供給される。
【0022】
プラズマガス供給口14dは、例えば、図示しない配管によりプラズマガス供給部20が接続されている。プラズマガス供給部20は、プラズマガス供給口14dを介してプラズマトーチ14内にプラズマガスを供給するものである。プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスおよび水素ガス等が単独または適宜組み合わせて用いられる。
なお、プラズマガス供給部20に加えて、プラズマトーチ14内にシースガスを供給するシースガス供給部(図示せず)を設けてもよい。シースガスはプラズマガスと同じガスを用いることができる。
また、プラズマガス供給部20に代えて、上述のシースガス供給部を設けてもよい。
【0023】
また、プラズマトーチ14の石英管14aの外側は、同心円状に形成された石英管14eで囲まれており、石英管14aと14eの間に冷却水14fを循環させて石英管14aを水冷し、プラズマトーチ14内で発生した熱プラズマ炎100により石英管14aが高温になりすぎるのを防止している。
【0024】
プラズマ発生部21は、上述のようにプラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100を発生させるものである。プラズマ発生部21は、プラズマトーチ14の周囲を囲む第1のコイル60と、プラズマトーチ14の周囲を囲む第2のコイル62と、第1のコイル60に高周波電流を供給する第1の電源部21aと、第2のコイル62に振幅変調(AM変調)した高周波電流を供給する第2の電源部21bとを有する。第1のコイル60に供給する高周波電流のことを、第1のコイル電流ともいい、第2のコイル62に供給する高周波電流のことを、第2のコイル電流ともいう。
【0025】
第1のコイル60と第2のコイル62とはプラズマトーチ14の長手方向に並んで配置されており、第2のコイル62は、第1のコイル60の下方に設置されている。
第1の電源部21aおよび第2の電源部21bは、いずれも高周波電源であり、かつ互いに独立している。また、第1のコイル60と第2のコイル62との間の磁気結合を低減するために第1の電源部21aの高周波電流の周波数と、第2の電源部21bの高周波電流の周波数とは異なることが好ましい。これにより、互いの電源部への影響を抑制できる。
なお、第1のコイル60と第2のコイル62とにより高周波発振用コイル14bが構成される。第1のコイル60の巻数および第2のコイル62の巻数は、特に限定されるものではなく、製造装置10の仕様に応じて適宜決定されるものである。第1のコイル60および第2のコイル62の材質も、特に限定されるものではなく、製造装置10の仕様に応じて適宜決定されるものである。
【0026】
プラズマ発生部21において、2つのコイルと、2つの独立した電源部を用いることにより、誘導熱プラズマの直列構造を構成することができる。誘導熱プラズマの直列構造を構成することにより、プラズマトーチ14の軸方向に長い高温場を生成することができる。上述の長い高温場を利用することにより、高融点材料を完全に蒸発させることが可能である。なお、熱プラズマ炎が所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にされたもの、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されたもののことを変調誘導熱プラズマ炎という。
【0027】
プラズマ発生部21では、例えば、第1の電源部21aが第1のコイル60に、振幅変調していない無変調の高周波電流(
図3(a)参照)を供給する。第2の電源部21bが第2のコイル62に、振幅変調した高周波電流(
図3(b)参照)を供給する。
第1のコイル60に無変調の高周波電流(
図3(a)参照)が供給され、第2のコイル62に振幅変調した高周波電流(
図3(b)参照)が供給されると、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100が発生する。第2のコイル62に供給される振幅変調された高周波電流により、熱プラズマ炎100の温度を変えることができ、プラズマトーチ14の内部の温度を制御することができる。熱プラズマ炎100の温度状態が時間変調されて、熱プラズマ炎100の温度状態が周期的に高温状態と、高温状態よりも温度が低い低温状態になる。これにより、微粒子の粒径を制御でき、より粒径が小さい微粒子を大量に得ることができ、微粒子を効率よく大量に製造できる。
なお、第1のコイル60に無変調の高周波電流を供給して熱プラズマ炎100を発生させることにより、熱プラズマ炎100を安定させることができ、第2のコイル62へ供給する高周波電流を変調させても熱プラズマ炎100が不安定になることが抑制される。これにより、例えば、大量の原料が熱プラズマ炎100に供給された場合でも、熱プラズマ炎100の温度低下を抑制することができる。これにより、粒径の均一性が良好な微粒子を大量に得ることができる。このことからも、微粒子を効率よく大量に製造できる。
【0028】
ここで、
図3(a)は第1の電源部の高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(b)は第2の電源部の高周波電流の波形の一例を示す模式図である。
図3(a)は上述の振幅変調していない、無変調の高周波電流の波形を示すものであり、振幅が一定であり、変わらない。
図3(b)は上述の振幅変調した高周波電流の波形を示すものであり、振幅が時間に対して周期的に変調している。
図3(b)は矩形波振幅変調を示す。振幅変調は、
図3(b)に示す矩形波振幅変調に限定されるものではなく、これ以外に、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、または正弦波等を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができることは言うまでもない。
【0029】
振幅変調した高周波電流において、電流振幅の高値をHCL(Higher Current Level)、電流振幅の低値をLCL(Lower Current Level)とし、変調一周期の中で、HCLをとる時間をオン時間、LCLをとる時間をオフ時間と定義する。さらに、一周期におけるオン時間の割合(オン時間/(オン時間+オフ時間)×100(%))をデューティ比(DF)とする。また、振幅の比(LCL/HCL×100(%))を電流変調率(SCL)とする。電流変調率(SCL)は電流振幅の変調度合いを示すものであり、100%SCLは無変調状態を示し、0%SCLは電流振幅が最も大きく変調していることを示す。0%SCLでは、オフ時間、すなわち、後述のように高周波電流の電流振幅が低い領域において高周波電流の電流値が0A(アンペア)である。振幅変調は、0%SCL以上100%SCL未満であれば、特に限定されるものではないが、0%SCLに近い方が変調度合い高い、すなわち、振幅の変調が大きいため、0%SCLが最も好ましい。
なお、オン時間(
図3(b)参照)は高周波電流の電流振幅が高い領域であり、オフ時間(
図3(b)参照)は高周波電流の電流振幅が低い領域である。また、上述のオン時間、オフ時間、および1サイクルは、いずれもマイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0030】
プラズマトーチ14内における圧力雰囲気は、微粒子の製造条件に応じて適宜決定されるものであり。例えば、大気圧以下である。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、5Torr(666.5Pa)~750Torr(99.975kPa)とすることができる。
【0031】
図1に示すようにチャンバー16は、プラズマトーチ14に近い方から、上流チャンバー16aがプラズマトーチ14と同軸方向に取り付けられている。また、上流チャンバー16aと垂直に下流チャンバー16bを設け、さらに下流に、微粒子を捕集するための所望のフィルター18aを備える回収部18が設けられている。製造装置10において、微粒子の回収場所は、例えば、フィルター18aである。
チャンバー16に、気体供給部22が接続されている。気体供給部22から供給される急冷ガスにより、チャンバー16内で、原料に応じた材料の微粒子(図示せず)が生成される。また、チャンバー16は冷却槽として機能するものである。
【0032】
回収部18は、フィルター18aを備えた回収室と、この回収室内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ18bとを備えている。チャンバー16から送られた微粒子は、上述の真空ポンプ18bで吸引されることにより、微粒子が回収室内に引き込まれ、フィルター18aの表面で留まった状態にて微粒子が回収される。
【0033】
気体供給部22は、チャンバー16内の熱プラズマ炎100に急冷ガスを供給するものである。急冷ガスは、冷却ガスとして機能するものである。気体供給部22は、気体が貯留される気体供給源(図示せず)と、チャンバー16内に供給する急冷ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、ブロア等の圧力付与部(図示せず)とを有する。また、気体供給源からのガス供給量を制御する調整弁(図示せず)が設けられている。気体供給源は、急冷ガスの組成に応じたものが用いられ、気体の種類は1種類に限定されるものではなく、急冷ガスを混合ガスとする場合、気体供給源を複数用意する。
急冷ガスは、冷却する機能を発揮するものであれば、特に限定されるものではない。急冷ガスには、例えば、原料と反応しない、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが用いられる。急冷ガスは、これ以外に、水素ガスを含有してもよい。また、急冷ガスは、原料と反応する反応性ガスを含有してよい。反応性ガスとしては、例えば、メタン、エタン,プロパン,ブタン,アセチレン,エチレン,プロピレン,ブテン等の炭化水素ガス等が挙げられる。
【0034】
気体供給部22は、例えば、熱プラズマ炎100の尾部100b(
図2参照)、すなわち、プラズマガス供給口14dと反対側の熱プラズマ炎100の端、すなわち、熱プラズマ炎100の終端部に向かって、例えば、45°の角度で、急冷ガス(冷却ガス)を供給し、かつチャンバー16の内壁に沿って上方から下方に向かって、急冷ガス(冷却ガス)を供給する。なお、熱プラズマ炎100の終端部に急冷ガスを供給することに限定されるものではない。
【0035】
気体供給部22からチャンバー16内に供給される急冷ガスにより、熱プラズマ炎100で気相状態にされた混合物が急冷されて、原料に応じた材料の微粒子が得られる。これ以外にも上述の急冷ガスは微粒子の分級に寄与する等の付加的作用を有する。
原料に応じた材料の微粒子の生成直後の微粒子同士が衝突し、凝集体を形成することで粒子径の不均一が生じると、品質低下の要因となる。しかしながら、熱プラズマ炎の尾部100b(終端部)に向かって、急冷ガスを供給することにより、急冷ガスが微粒子を希釈することにより、微粒子同士が衝突して凝集することが防止される。
また、チャンバー16の内壁面に沿って、急冷ガスを供給することにより、微粒子の回収の過程において、微粒子のチャンバー16の内壁への付着が防止され、生成した微粒子の収率が向上する。
【0036】
気体供給部22の熱プラズマ炎100への急冷ガスの供給方法は、特に限定されるものではなく、1方向から急冷ガスを供給してもよい。また、熱プラズマ炎100の周囲を囲む、複数の方向から急冷ガスを供給してもよい。この場合、急冷ガスの供給口をチャンバー16の外周面に、周方向に沿って複数に、例えば、等間隔に設けるが、等間隔に限定されるものではない。
複数の方向から急冷ガスを供給する場合、供給タイミングは、特に限定されるものではなく、複数の方向から同期して急冷ガスを供給する。これ以外にも、例えば、時計回りまたは反時計回りの順で、急冷ガスを供給してもよい。この場合、急冷ガスにより、チャンバー16内に旋回流等の気流が生じる。複数の方向から急冷ガスを供給する場合、供給順を決定することなく、ランダムに供給してもよい。
なお、急冷ガスを用いることなく、微粒子を生成することができれば、気体供給部22は必ずしも必要ではない。気体供給部22がない構成の場合、製造装置10の装置構成を簡素化でき、かつ微粒子の製造方法も工程を簡素化できる。
【0037】
原料供給部12は、上述のように、熱プラズマ炎100に原料を供給するものであり、例えば、原料を、予め定めた量を供給するものであり、時間によらず、一定量の原料を供給する。
原料供給部12は、一定量の原料を供給するものに限定されるものではなく、原料の熱プラズマ炎100中への供給量を時間変調して、原料を熱プラズマ炎100中に供給するものでもよい。これにより、
図3(b)に示すオン時間に大量の原料を供給することができる。これにより、より小さい微粒子を大量に製造することができる。この場合、例えば、供給管13に間歇供給部15を設ける。間歇供給部15により、チャンバー16内に原料を時間変調して供給する。原料の供給量の変化は、特に限定されるものではなく、サイン波状でも、三角波状でも、方形波状でも、のこぎり波状でもよいが、第2のコイル62に供給される高周波電流の振幅変調に合わせることが好ましい。すなわち、関数で表される振幅変調の時間変化が同じであることが好ましい。これにより、オン時間と原料の供給とのタイミングが合わせやすくなる。
【0038】
間歇供給部15は、例えば、供給管13に接続されたソレノイドバルブ(電磁弁)を用いて、原料の供給量を時間変調する。制御部24により、ソレノイドバルブの開閉が制御される。ソレノイドバルブ以外に、ボールバルブを用いてもよい。この場合も、制御部24により、ボールバルブの開閉が制御される。制御部24により、例えば、オン時間のときに原料の供給量を多くし、オフ時間のときに原料の供給量を少なくするパターンで、原料の供給量を時間変調する。これにより、より小さい微粒子を大量に製造することができる。このため、原料の供給は、オン時間のときに原料の供給量を多くし、オフ時間のときに原料の供給量を少なくすることが好ましい。このように、オン時間に原料を供給することにより、大量の原料を蒸発させることができ、その結果、微粒子の大量生成が可能になり、微粒子を効率よく、しかも大量に製造できる。
【0039】
次に、上述の製造装置10を用いた微粒子の製造方法について、金属微粒子を例にして説明する。
まず、金属微粒子の原料の粉末として、例えば、体積平均粒径が30μm以下のSiの粉末を原料供給部12に投入する。
プラズマガスに、例えば、アルゴンガスを用いる。第1の電源部21aにより、無振幅変調の高周波電流を第1のコイル60に供給する。第2の電源部21bにより、振幅変調した高周波電流を第2のコイル62に供給する。これにより、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100を発生させる。第2のコイル62に供給する高周波電流の振幅変調は、例えば、50%SCLであり、変調周期が15ms、オン時間が10ms、オフ時間が5msである。
【0040】
次に、キャリアガスとして、例えば、アルゴンガスを用いてSiの粉末を気体搬送し、供給管13を介してプラズマトーチ14の内部の熱プラズマ炎100中に供給する(第1の工程)。供給されたSiの粉末は、熱プラズマ炎100中で蒸発させて気相状態の混合物45(
図2参照)となる。気相状態の混合物45(
図2参照)を冷却する(第2の工程)。これにより、Si微粒子(金属微粒子)が得られる。
そして、チャンバー16内で得られたSi微粒子は、真空ポンプ18bによる回収部18からの負圧(吸引力)によって回収部18のフィルター18aに捕集される。
上述のように、熱プラズマ炎100を安定した状態で周期的に高温状態と、高温状態よりも温度が低い低温状態にすることができることから、微粒子の粒径を制御でき、かつ粒径の均一性が良好な微粒子を得ることができる。
【0041】
なお、上述の気相状態の混合物45(
図2参照)の冷却(第2の工程)は、特に限定されるものではなく、急冷ガス等の冷却媒体を用いることなく冷却させた自然冷却でもよい。急冷ガスを用いない場合、SCLの値を小さくすることにより、すなわち、第2のコイルの高周波電流の変調度合いを大きくすることにより、オン時間の熱プラズマ炎100の温度を維持しつつ、オフ時間の熱プラズマ炎100の温度を低くできるため、急冷ガスを用いた冷却を行わなくても、より小さなサイズのSi微粒子(金属微粒子)を得ることができる。この場合、微粒子の製造方法の工程を簡素化できる。
また、気体供給部22から熱プラズマ炎100の尾部100b(
図2参照)、すなわち、熱プラズマ炎100の終端部に、急冷ガスとして、例えば、アルゴンガスを供給して、混合物45(
図2参照)を急冷してもよい。これにより、熱プラズマ炎100が急冷されてSi微粒子(金属微粒子)が生成されるが、このとき、チャンバー16内に温度が低い領域が生じ、よりさらに小さいSi微粒子(金属微粒子)が得られる。
【0042】
Siの粉末をプラズマトーチ14の内部の熱プラズマ炎100中に供給する際、上述のように、オン時間にSiの粉末の供給量を多くし、オフ時間にSiの粉末の供給量を少なくすることが好ましい。また、オン時間にSiの粉末を供給し、オフ時間にSiの粉末の供給しないようにしてもよい。いずれにしろ、ソレノイドバルブが開になってから実際に原料が搬送され、熱プラズマ炎100中の原料の供給量が多くなるまでに時間がかかるので、その搬送時間にかかる時間を見越して、ソレノイドバルブ等を制御する必要がある。
ここで、
図4(a)は第2の電源部の高周波電流の波形の一例を示すグラフであり、(b)はバルブの開閉タイミングを示すグラフであり、(c)は原料の供給を示すグラフである。
本実施形態では、例えば、
図4(a)に示す第2のコイル62の矩形波振幅変調された波形信号104に基づき、搬送時間を考慮してバルブの開閉タイミングが決定され、
図4(b)に示すバルブの開閉のタイミング信号106が得られ、バルブが所定の時間間隔で開閉される。その結果、
図4(c)に示す波形108で、例えば、原料粉末がプラズマトーチ14内にオン時間に供給され、結果として原料を間歇的に供給することができる。
【0043】
次に、製造装置10のプラズマ発生部21により、供給する高周波電流と、熱プラズマ炎への投入電力との関係について説明する。
図5(a)は第1のコイルの高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(b)は第2のコイルの高周波電流の波形の一例を示す模式図であり、(c)は第1のコイルによる投入電力の波形の一例を示す模式図であり、(d)は第2のコイルによる投入電力の波形の一例を示す模式図である。
図5(a)および(b)の縦軸は電流値であるが、これは電流値の2乗値の平均の平方根(root mean square)で表される実効値である。
図5(c)および(d)の縦軸は投入電力であるが、これは電力の2乗値の平均の平方根(root mean square)で表される実効値である。
図5(a)~(d)は、以下に示す電磁熱流体モデルを解析モデルに用いた解析により得られたものである。
【0044】
[電磁熱流体モデル]
電磁熱流体モデルは、
図1に示すプラズマトーチ14およびチャンバー16の断面を対象とした。プラズマトーチは内径70mm、長さ440mmとし、チャンバーは内径130mm、長さ810mmとした。プラズマトーチおよびチャンバーの外壁および原料投入用チューブは水冷されているとした。シースガスとしてArガスをプラズマトーチ上部から、軸方向およびスワール方向に流している。キャリアガスとしてArガスをプラズマトーチヘッド中央から原料供給用の水冷チューブを通じてプラズマトーチに導入している。水冷チューブの挿入深さは185mmとした。Arガス(キャリアガス)は、微粒子生成の際、原料粉体を導入する役割を持つ。
電磁熱流体モデルにおける計算空間としては、軸方向に114分割、半径方向に65分割した。プラズマトーチは、半径方向への温度変化が急激であるため、軸方向および半径方向へのメッシュサイズを、10mm×1mmとした。
また、電磁熱流体モデルでは、熱プラズマモデルとして以下を仮定した。
局所熱平衡状態である。すなわち、電子温度、ガス温度、励起温度等の温度は等しい。さらに、全ての反応は反応論的平衡状態に達している。
プラズマは光学的に薄く、光吸収効果は無視する。
流れは層流であり、乱流は考慮しない。
円筒軸対称である。
これらの4つの仮定の下、質量、運動量、エネルギーの保存式および2つのコイル電流が作るそれぞれのベクトルポテンシャルに対するポアソン方程式を作成し、以下に示す計算条件に基づき解析した。
【0045】
[計算条件]
過渡解析のタイムステップを50μsとした。熱プラズマ炎への平均投入電力として、第1のコイルでは10kW、第2のコイルでは10kWとした。プラズマトーチの内部の圧力を300Torr一定とした。第1のコイルに供給される高周波電流の周波数を430kHzに設定し、第2のコイルに供給される高周波電流の周波数を300kHzに設定した。
キャリアガスとしてArガスを4リットル/分導入した。プラズマガスを未供給とした。シースガスとしてArガスを90リットル/分導入した。投入するArガスの温度はいずれも300K一定とした。
本計算では、第1のコイルの入力電力が10kW一定となるように電流振幅を1タイムステップ毎に変更した。第2のコイルの高周波電流は1周期での平均電力が10kWとなるように矩形波振幅変調した。変調周期は20msとし、オン時間を10ms、オフ時間を10msとした。計算パラメータとして、第2のコイルの高周波電流のSCLを、100%、50%および0%の3通りに設定した。
【0046】
図5(a)~(d)は、第1のコイルの高周波電流の実効値、第2のコイルの高周波電流の実効値と熱プラズマ炎への投入電力の実効値を示す。上述のように100%SCLの場合では無変調状態であり、0%SCLの場合は電流振幅が最も大きく変調している。時刻0~10ms間はオフ時間、時刻10~20ms間はオン時間である。
図5(b)は設定した第2のコイルの高周波電流の振幅変化を示す。
【0047】
図5(a)は、第1のコイルの高周波電流の実効値を示しており、上述のように第1のコイルの入力電力が10kW一定になるように変化させたものを示す。このとき、第1のコイルの高周波電流による入力電力は
図5(c)に示すように10kW一定であり、設定通りである。第2のコイルの高周波電流の矩形波振幅変調に従い、
図5(d)に示すように、第2のコイルから熱プラズマ炎への入力電力が三角波状に時間変化している。
上述のように第2のコイルの高周波電流を矩形波振幅変調することにより、第2のコイルの温度場が高電流時では高温場が得られ、低電流時では低温場が得られる。さらに、第2のコイルの高周波電流の変調度合いを大きくすることにより、第2のコイルによる温度場をさらに変動させることができる。これらの結果から、微粒子生成プロセスでは、高電流時に原料を投入することにより、原料をより確実な蒸発させることができ、低電流時では成長段階にある微粒子の成長抑制をできることが示唆された。このことから、第2のコイルの高周波電流を振幅変調し、さらに振幅変調の変調度合いを高めることにより、より効率的な微粒子生成プロセスの実現が可能である。
【0048】
次に、解析モデルの温度分布および流れ場について説明する。
図6(a)~(d)はプラズマトーチの解析モデルの50%SCLにおける温度分布および流れ場の一例を示す模式図である。
図7(a)~(d)はプラズマトーチの解析モデルの0%SCLにおける温度分布および流れ場の一例を示す模式図である。
図6(a)~(d)および
図7(a)~(d)は、半径位置0mmを境に左側の領域70と右側の領域72との区画されている。左側の領域70には温度分布が示され、右側の領域72には流れ場が示される。また、軸方向位置0mm以上180mm未満の領域が、第1のコイル60が配置される第1のコイル領域61であり、軸方向位置180~350mmの領域が、第2のコイル62が配置される第2のコイル領域63である。
なお、
図6(a)および
図7(a)は時刻0msにおける温度分布および流れ場を示し、
図6(b)および
図7(b)は時刻5msにおける温度分布および流れ場を示す。
図6(c)および
図7(c)は時刻10msにおける温度分布および流れ場を示し、
図6(d)および
図7(d)は時刻15msにおける温度分布および流れ場を示す。変調周期は20msであり、オン時間は10ms、オフ時間は10msである。
【0049】
温度分布においては、50%SCLの場合、時刻0ms(
図6(a)の領域70)では、第2のコイル領域63に8000K以上の高温場80が広い範囲に分布している。その後のオフ時間時(時刻0~10ms)では、第2のコイル領域63の温度が低下し、時刻10ms(
図6(c)の領域70)において、第2のコイル領域63の温度は6000~8000Kに低下している。オン時間時(時刻10~20ms)では、その低下した高温場が再び加熱され、時刻20ms、すなわち、初期時刻(0ms)において軸方向に長い高温場が形成されている。
【0050】
さらに変調度合いを高くした0%SCLの場合、時刻0ms(
図7(a)の領域70)において、50%SCLの場合に比べて第2のコイル領域63にある8000K以上の高温場80が拡大している。その後のオフ時間時では、50%SCLの場合より第2のコイル領域63の温度が速く急激に低下していることがわかる。時刻10ms(
図7(c)の領域70)では、第2のコイル領域63の温度は、4000~8000Kと著しく低下している。オン時間時では、第2のコイルにおける温度が急激に上昇し、8000K以上の広い高温場80を再び形成する。
【0051】
流れ場においては、50%SCLの場合、時刻0ms(
図6(a)の領域72)では、第2のコイル領域63において、軸方向下向きの流速が50m/s以上と非常に速い。オフ時間時(時刻0~10ms)では、この領域の流速が低下している。これは、主に熱プラズマ温度が低下することにより密度が上昇し、質量保存式を満たすように流速が低下するためである。一方、オン時間時(10~20ms)では、再び温度が上昇するため、流速が増加している。
【0052】
さらに変調度合いを高くした0%SCLの場合、時刻0ms(
図7(a)の領域72)では、第2のコイル領域63の軸方向下向きの流速が、50%SCLの場合と比べるとさらに増加している。これは、0%SCLの場合と、50%SCLの場合とを比較して、より温度が高いためである。
しかし、時刻10ms(
図7(c)の領域72)では、この軸方向下向きへの流速は50%SCLの場合と比べて殆ど変わらない。50%SCLおよび0%SCLいずれの条件においても、オン時間において、第2のコイル領域63の軸方向下向きの流速が増加しており、オフ時間では、この流速が低下していることがわかる。軸方向下向きへの流速の増加は、後述する現象により生じていると考えられる。
オン時間では、高周波電流が増加するため、第2のコイル領域63に発生する磁界および電界が強くなる。磁界および電界が強くなることにより入力電力が増加する。このため、この領域における温度が上昇することにより密度が低下し、質量保存式を満たすように流速が速くなる。さらに、その領域に発生する径方向内側へのローレンツ力が強くなる。このローレンツ力の増大によって、トーチ内部の圧力が上昇し、この圧力増加に伴って流速が速くなることが考えられる。このため、高周波電流が増加するオン時間では、第2のコイルにおいて軸方向下側への流速が増加したと考えられる。
【0053】
上述のプラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の経験温度について説明する。具体的には、仮想粒子について、投入タイミングによる経験温度の違いを求めた。なお、仮想粒子は質量がない質点とし、仮想粒子の初期位置を水冷チューブの先端位置とした。また、仮想粒子は水冷チューブ先端から熱プラズマ炎内に入り、かつ流れに沿って輸送されると仮定した。
図8はプラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の50%SCLにおける経験温度の一例を時間経過とともに示すグラフであり、
図9はプラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の0%SCLにおける経験温度の一例を時間経過とともに示すグラフであり、
図10はプラズマトーチの解析モデル内に供給された仮想粒子の100%SCLにおける経験温度の一例を示すグラフである。
【0054】
図10に示すように100%SCLの場合、仮想粒子投入後の時刻0~7msにおいて、仮想粒子が熱プラズマ炎中に流入するため、急激に温度が上昇し、時刻7msで約9000Kに達している。その後時刻7~38msの期間において仮想粒子が下流に輸送されるに従い温度が徐々に低下している。
次に、
図8に示す50%SCLの場合、仮想粒子の経験温度は、仮想粒子の導入タイミングによって異なる。導入タイミングは時刻2.5msから20ms(=0ms)まで設定した。なお、仮想粒子は時刻2.5msに導入した。
【0055】
時刻2.5msに導入された仮想粒子は、時刻2.5~10msの間、温度上昇しており、時刻10msでその経験温度のピークを取り、8000Kに達している。オフ時間(時刻0~10ms)に仮想粒子が投入された場合、温度上昇後のピークの値が8000~8500K程度にとどまる。それに対し、オン時間(12.5~20ms)に仮想粒子が投入された場合、温度上昇後のピークの値が9000K以上にまで達する。
時刻10.0~15.0msに仮想粒子が投入された場合では、温度減少時の低下率が-500K/ms程度と高い。他のタイミング、例えば、時刻2.5msに仮想粒子が投入された場合では、温度減少時の低下率は-300K/ms程度である。このことから、時刻10.0~15.0msで仮想粒子を投入した場合、急冷の度合いが高い。
さらに変調度合いを高くした
図9に示す0%SCLの場合、オフ時間(時刻0~10ms)に仮想粒子が投入された場合では、温度上昇後のピークの値が6000~7500K程度であり、顕著に低い値である。一方、オン時間(時刻10~20ms)に仮想粒子が投入された場合では、温度上昇後のピークが100%SCL時および50%SCL時に比べて高く8000~9200K程度である。時刻10~15msに仮想粒子が投入された場合では、温度減少時の低下率が50%SCL時と比べてさらに大きい。
【0056】
上述のことから、オン時間時に原料を投入することにより、原料のより完全な蒸発を行えることが考えられる。さらにオン時間付近で投入された原料は、無変調状態時と比べてさらに急冷を行えるため、成長段階にある粒子の成長をさらに抑制できることが期待できる。したがって、第2のコイルの高周波電流の振幅変調することにより、効率的なナノ粒子生成プロセスを行える。振幅変調のSCLの値を小さくすることにより、熱プラズマ炎の温度をより低くできるため、さらに確実な蒸発および成長段階にある粒子の効率的な冷却が可能である。
【0057】
上述の
図1に示す製造装置10を用いて微粒子を以下のようにして製造することができる。具体的には、第1のコイルおよび第2のコイルへの入力電力をそれぞれ10kWとし、第1のコイルの高周波電流の周波数を450kHz、第2のコイルの高周波電流の周波数を320kHzとした。
第1の高周波電流の電流を無変調とし,第2の高周波電流の電流は矩形波振幅変調とした.変調周期は15msとしオン時間10ms,オフ時間を5msとした。デューティ比(DF)%は、66%である。変調度合いを示すSCLは0%に設定した。プラズマトーチ内の圧力を300Torrとした。シースガスとしてArガスを90slpm導入した。また、Si原料粉体をArガス(キャリアガス)4slpmとともに熱プラズマ炎に供給した。
Si原料粉体に体積平均粒径28μmのSi粉体を用いた。Si原料粉体をオン時間に同期するように間歇投入した。なお、急冷ガスは用いていない。得られた微粒子を
図11に示す。
【0058】
なお、比較のために第1のコイルおよび第2のコイルの高周波電流をいずれも、振幅変調させ、80%SCLとした以外は同じ条件で微粒子を製造した。得られた微粒子を
図12に示す。なお、
図11および
図12はいずれも倍率が50000倍である。
図11の微粒子と
図12に示す微粒子から、いずれも微粒子が大量に得られているが、
図11に示す微粒子の方が、粒径が小さい。また、粒子生成率は、本発明の製造方法が300g/hであり、比較の製造方法が180g/hであり、本発明の製造方法の方が、生産性が高く、大量の微粒子を製造することができる。
【0059】
また、微粒子を以下のようにして製造することもできる。具体的には、第1のコイルおよび第2のコイルの時間平均入力電力を、それぞれ10kWに設定した。第1のコイルの高周波電流は変調せず、第2のコイルの高周波電流を変調した。変調周期を15msとし、オン時間を10ms、オフ時間を5msとした。デューティ比(DF)%は、66%である。また、SCLを50%および0%に設定した。
プラズマトーチ内の圧力を300torrに設定した。シースガスにアルゴンガスを用い、90リットル/分の流量で供給した。プラズマガスは用いていない。
また、キャリアガスにアルゴンガスを用い、流量を4リットル/分とした。
原料粉末には、金属グレードSi粉末(99.5%純度)を用いた。原料粉末の平均直径は約19.2μmであった。第2のコイルの高周波電流(変調電流)の変調にソレノイドバルブを同期させ、原料粉末を含むキャリアガスを断続的にプラズマトーチ内に供給した。原料粉末の供給量を3.5g/分および5.7g/分とした。
なお、急冷ガスは使用しなかった。
5.7g/分の供給量で安定して微粒子を製造することができた。0%SCLおよび50%SCL条件下で、多くのナノサイズの微粒子が得られたことを、FE-SEM画像を用いた確認できた。
50%SCLでは平均直径が62.0nmのSi微粒子が得られ、0%SCLでは平均粒径が47.4nmのSi微粒子が得られた。変調度合いを大きくすることにより、急冷ガスを用いることなく、より小さなサイズの微粒子が得られた。
【0060】
なお、本実施形態の製造装置10は、原料に、例えば、Si粉体を用い、ナノサイズのSi微粒子を製造することができる。しかし、これに限定されるものではなく、他の元素の粒子を微粒子製造用の原料として用いて、その酸化物、金属、窒化物、炭化物等の微粒子の製造を行うことも可能である。この場合、スラリー化しても微粒子の製造を行うことができる。
【0061】
原料は、粉末の場合、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒子径が適宜設定されるが、平均粒子径は、例えば、BET径換算で、100μm以下であり、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
例えば、原料としては、熱プラズマ炎により蒸発させられるものであれば、その種類を問わないが、好ましくは、以下のものがよい。すなわち、原子番号3~6、11~15、19~34、37~52、55~60、62~79および81~83の元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、単体酸化物、複合酸化物、複酸化物、酸化物固溶体、金属、合金、水酸化物、炭酸化合物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物、水素化物、金属塩または金属有機化合物を適宜選択すればよい。
【0062】
なお、単体酸化物とは酸素以外に1種の元素からなる酸化物をいい、複合酸化物とは複数種の酸化物から構成されるものをいい、複酸化物とは2種以上の酸化物からできている高次酸化物をいい、酸化物固溶体とは異なる酸化物が互いに均一に溶け合った固体をいう。また、金属とは1種以上の金属元素のみで構成されるものをいい、合金とは2種以上の金属元素から構成されるものをいい、その組織状態としては、固溶体、共融混合物、金属間化合物あるいはそれらの混合物をなす場合がある。
【0063】
また、水酸化物とは水酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭酸化合物とは炭酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、ハロゲン化物とはハロゲン元素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、硫化物とは硫黄と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、窒化物とは窒素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭化物とは炭素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、水素化物とは水素と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、金属塩は少なくとも1種以上の金属元素を含むイオン性化合物をいい、金属有機化合物とは1種以上の金属元素と少なくともC、O、N元素のいずれかとの結合を含む有機化合物をいい、金属アルコキシドおよび有機金属錯体等が挙げられる。
【0064】
例えば、単体酸化物としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化銀(Ag2)、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(Mn3O4)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム(BeO)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化バリウム(BaO)などを挙げることができる。
【0065】
また、複合酸化物としては、アルミン酸リチウム(LiAlO2)、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄(FeTiO3)、酸化チタンコバルト(CoTiO3)等を、複酸化物としては、錫酸バリウム(BaSnO3)、(メタ)チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウムに酸化ジルコニウムと酸化カルシウムが固溶した固溶体などを挙げることができる。
さらに、水酸化物としてはZr(OH)4、炭酸化合物としてはCaCO3、ハロゲン化物としてはMgF2、硫化物としてはZnS、窒化物としてはTiN、炭化物としてはSiC、水素化物としてはTiH2等を挙げることができる。
【0066】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0067】
10 微粒子の製造装置(製造装置)
12 原料供給部
13 供給管
14 プラズマトーチ
14a 石英管
14b 高周波発振用コイル
14c 供給口
14d プラズマガス供給口
14e 石英管
14f 冷却水
15 間歇供給部
16 チャンバー
16a 上流チャンバー
16b 下流チャンバー
18 回収部
18a フィルター
18b 真空ポンプ
20 プラズマガス供給部
21 プラズマ発生部
21a 第1の電源部
21b 第2の電源部
22 気体供給部
24 制御部
45 混合物
60 第1のコイル
61 第1のコイル領域
62 第2のコイル
63 第2のコイル領域
70 領域
72 領域
100 熱プラズマ炎
100b尾部
104 波形信号
106 タイミング信号
108 波形
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の製造装置であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、
内部に前記熱プラズマ炎が発生され、前記原料供給部により供給される前記原料を前記熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、
前記プラズマトーチの前記内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部と、
前記原料供給部と前記プラズマトーチとの間に設けられ、前記プラズマトーチ内の前記熱プラズマ炎に前記原料を時間変調して供給する間歇供給部と、を有し、
前記プラズマ発生部は、前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とを有し、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されており、
前記間歇供給部は、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の振幅変調あわせて前記原料の供給量を時間変調するものであり、前記高周波電流の振幅が高値の時には、前記原料の供給量を多くして前記原料を供給し、前記高周波電流の振幅が低値の時には、前記原料の供給量を少なくして前記原料を供給する、微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記熱プラズマ炎に、急冷ガスを供給する気体供給部を有する、請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記熱プラズマ炎の周囲を囲む、複数の方向から急冷ガスを供給する気体供給部を有する、請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアである、請求項1~3のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項7】
前記プラズマトーチの下方にチャンバーが設けられており、
前記複数の前記急冷ガスの供給口は、前記チャンバーの外周面に、周方向に沿って、等間隔に設けられている、請求項3に記載の微粒子の製造装置。
【請求項8】
前記気体供給部は、前記急冷ガスを前記複数の方向から同期して、又は前記急冷ガスを時計回り若しくは反時計回りの順で供給する、請求項3または7に記載の微粒子の製造装置。
【請求項9】
プラズマトーチの内部で発生した熱プラズマ炎を用いた微粒子の製造方法であって、
前記プラズマトーチの周囲を囲む第1のコイルと、前記第1のコイルの下方に設置され前記プラズマトーチの周囲を囲む第2のコイルと、前記第1のコイルに高周波電流を供給する第1の電源部と、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給する第2の電源部とが設けられ、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは前記プラズマトーチの長手方向に並んで配置されており、前記第1の電源部および前記第2の電源部により、前記熱プラズマ炎が発生され、
前記プラズマトーチの前記内部で発生した前記熱プラズマ炎に微粒子製造用の原料を供給する第1の工程と、
前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させ気相状態の混合物とし、前記混合物を冷却する第2の工程とを有し、
前記第1の工程および前記第2の工程において、前記第2の電源部は、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、
前記第1の工程では、前記第2の電源部により、前記第2のコイルに振幅変調した高周波電流を供給し、前記第2のコイルに供給される前記高周波電流の振幅が高値の時には、前記原料の供給量を多くして前記原料を供給し、前記高周波電流の振幅が低値の時には、前記原料の供給量を少なくして前記原料を供給する、微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程は、前記熱プラズマ炎に急冷ガスを供給して、気相状態の前記混合物を冷却する、請求項9に記載の微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程は、前記熱プラズマ炎の周囲を囲む、複数の方向から急冷ガスを供給して、気相状態の前記混合物を冷却する、請求項9に記載の微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記第2のコイルに供給する、前記振幅変調した前記高周波電流は、前記高周波電流の電流振幅が低い領域では電流値が0アンペアである、請求項9~11のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記第1の工程では、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項9~12のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記第1の工程では、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項9~12のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記プラズマトーチの下方にチャンバーが設けられており、
前記複数の前記急冷ガスの供給口は、前記チャンバーの外周面に、周方向に沿って、等間隔に設けられている、請求項11に記載の微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記第2の工程は、前記急冷ガスを前記複数の方向から同期して、又は前記急冷ガスを時計回り若しくは反時計回りの順で供給する、請求項11または15に記載の微粒子の製造方法。