(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122521
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】複合材料および成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20240902BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030099
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】高柳 篤史
(72)【発明者】
【氏名】武山 慶久
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002BE041
4J002DA016
4J002FD106
4J002FD116
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】導電性に優れ、帯電防止部材の材料等として有用な複合材料、および、当該複合材料を用いた成形体を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブと、フッ素樹脂とを含み、前記カーボンナノチューブの比表面積が、350m2/g以上1100m2/g以下である、複合材料。また、当該複合材料を成形してなる、成形体。ここで、複合材料中のカーボンナノチューブの含有割合は、0.005質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、フッ素樹脂とを含み、
前記カーボンナノチューブの比表面積が、350m2/g以上1100m2/g以下である、複合材料。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの含有割合が0.005質量%以上0.2質量%以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
帯電防止部材用である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の複合材料を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料および成形体に関し、特には、フッ素樹脂およびカーボンナノチューブを含有する複合材料および成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、導電性、熱伝導性、摺動特性、機械特性等に優れるため、幅広い用途への応用が検討されている。
そこで、近年、カーボンナノチューブの優れた特性を活かし、樹脂とカーボンナノチューブとを複合化することで、加工性や強度といった樹脂の特性と、導電性などのカーボンナノチューブの特性とを併せ持つ樹脂材料を提供する技術の開発が進められている。
【0003】
具体的には、例えば特許文献1には、フッ素樹脂と、カーボンナノチューブとを含有する粒子状の複合材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、フッ素樹脂とカーボンナノチューブとを含有する複合材料は、耐薬品性および導電性に優れているため、半導体製造に用いられる薬液ノズルやチューブなどの半導体製造装置の部品の成形材料として用いられている。
【0006】
しかし、上記従来の複合材料には、導電性を更に高め、帯電防止性能を更に向上させるという点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、導電性に優れ、帯電防止部材の材料等として有用な複合材料、および、当該複合材料を用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[1]本発明の複合材料は、カーボンナノチューブと、フッ素樹脂とを含み、前記カーボンナノチューブの比表面積が、350m2/g以上1100m2/g以下であることを特徴とする。比表面積が上記範囲内のカーボンナノチューブを含有させれば、導電性を高め、帯電防止性能に優れる複合材料を得ることができる。
なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法に従って測定した窒素吸着比表面積を意味する。
【0009】
ここで、[2]上記[1]に記載の複合材料は、前記カーボンナノチューブの含有割合が0.005質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内であれば、導電性を更に高めることができる。
【0010】
また、[3]上記[1]または[2]に記載の複合材料は、前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブを用いれば、導電性を更に高めることができる。
【0011】
更に、[4]上記[1]~[3]の何れかに記載の複合材料は、前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂を用いれば、耐薬品性を高めることができる。
【0012】
そして、[5]上記[1]~[4]の何れかに記載の複合材料は、帯電防止部材に好適に用いることができる。上述した複合材料は、導電性に優れ、高い帯電防止性能を有しているからである。
【0013】
また、この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[6]本発明の成形体は、上記[1]~[5]の何れかに記載の複合材料を成形してなることを特徴とする。このように、上述した複合材料を用いれば、導電性に優れ、高い帯電防止性能を有する成形体が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性に優れ、高い帯電防止性能を有する複合材料および成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
ここで、本発明の複合材料は、本発明の成形体の成形材料、特には、帯電防止部材用の材料として好適に用いることができる。そして、本発明の成形体は、特に限定されることなく、半導体製造に用いられる半導体製造装置部品、薬液ノズル、チューブ、薬液タンク、ウエハ洗浄用容器、洗浄用ノズル、帯電防止シート、集積回路用トレー、ウエハキャリア、薬液ホース、配管継手、ダイヤフラム、シール材などの部品、特には半導体製造などに用いられる帯電防止部材として好適に用いることができる。
【0016】
(複合材料)
本発明の複合材料は、フッ素樹脂と、比表面積が350m2/g以上1100m2/g以下のカーボンナノチューブとを含むことを必要とする。
なお、本発明の複合材料は、任意に、フッ素樹脂以外の樹脂、および、酸化防止剤や可塑剤等の添加剤からなる群より選択される1種以上のその他の成分を更に含んでいてもよい。但し、本発明の複合材料中のその他の成分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%である(即ち、複合材料は、フッ素樹脂と、比表面積が350m2/g以上1100m2/g以下のカーボンナノチューブと、複合材料の調製中に不可避的に混入した不純物のみからなる)ことが更に好ましい。
【0017】
そして、本発明の複合材料は、比表面積が350m2/g以上1100m2/g以下のCNTを含有しているので、導電性に優れており、高い帯電防止性能を発揮することができる。
【0018】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、特に限定されることなく、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリビニルフルオライド(PVF)などが挙げられる。耐薬品性の観点からは、フッ素樹脂は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
なお、上記フッ素樹脂は1種を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0019】
そして、複合材料は、フッ素樹脂の含有割合が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。
【0020】
<CNT>
複合材料に含まれるカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、複合材料の導電性を更に高めることができる。
【0021】
ここで、CNTは、比表面積が350m2/g以上1100m2/g以下であることが必要であり、CNTの比表面積は、380m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、1050m2/g以下であることが好ましい。CNTの比表面積が上記範囲内であれば、複合材料の導電性を更に高めることができる。また、CNTの比表面積が上記範囲内であれば、複合材料を用いた成形体の強度を高めることもできる。
【0022】
ここで、CNTは炭素純度が97.5質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましい。CNTの炭素純度が上記下限値以上であれば、得られる複合材料および成形体の電気抵抗を一層低減することができる。
【0023】
また、CNTの平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径が1nm以上であれば、CNTの分散性を高め、複合材料および成形体に安定的に導電性等の特性を付与することができる。また、CNTの平均直径が60nm以下であれば、配合量が少ない場合であっても複合材料および成形体に効率的に導電性等の特性を付与することができる。
なお、本発明において、「CNTの平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0024】
また、CNTとしては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60以下のCNTを用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超のCNTを用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超のCNTを用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60以下のCNTを使用すれば、複合材料および成形体の性能を更に向上させることができる。
なお、CNTの平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
【0025】
そして、CNTとしては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
【0026】
また、CNTは、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましく、600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。平均長さが10μm以上であれば、複合材料および成形体中において導電パスを良好に形成でき、また、分散性を向上させることができる。そして、平均長さが600μm以下であれば、複合材料および成形体の導電性を安定化させることができる。従って、CNTの平均長さを上記範囲内とすれば、成形体の体積抵抗率を十分に低下させることができる。
なお、本発明において、CNTの平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0027】
更に、CNTは、通常、アスペクト比が10超である。なお、CNTのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択したCNT100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0028】
また、CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定されたCNTの吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、CNTのt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
【0029】
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
【0030】
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有するCNTは、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTに多数の開口が形成されていることを示している。
【0031】
なお、CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。CNTのt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、CNTの分散性を高め、複合材料および成形体の導電性等の特性を高めることができる。具体的には、屈曲点の値が0.2未満であれば、CNTが凝集し易く分散性が低下し、屈曲点の値が1.5超であればCNT同士が絡み合いやすくなり分散性が低下する虞がある。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
【0032】
更にCNTは、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。CNTのS2/S1の値がかかる範囲内であれば、CNTの分散性を高め、少ない配合量で複合材料および成形体の導電性等の特性を高めることができる。
ここで、CNTの全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0033】
因みに、CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、および、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて行うことができる。
【0034】
更に、CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
【0035】
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が0.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、150以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、5.0以下であることが更に好ましい。G/D比が0.5以上5.0以下であれば、製造される複合材料および成形体の性能を更に向上させることができる。
【0036】
なお、CNTは、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTは、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
そして、スーパーグロース法により製造されたCNTは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等その他の炭素成分を含んでいてもよい。
【0037】
そして、複合材料は、CNTの含有割合が、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。CNTの含有割合が上記範囲内であれば、複合材料の導電性を更に高めることができる。
【0038】
<複合材料の製造方法>
本発明の複合材料は、特に限定されることなく、例えば、CNTとフッ素樹脂とを複合化させる複合化工程を実施し、任意に、得られた複合体を粉砕する粉砕工程を実施して得ることができる。
【0039】
[複合化工程]
複合化工程におけるCNTとフッ素樹脂との複合化は、特に限定されることなく、既知の複合化方法を用いて行うことができる。中でも、複合化は、有機溶媒などの分散媒中でフッ素樹脂とCNTとを混合および分散した後、得られたスラリーから分散媒を除去することにより行うことが好ましい。
【0040】
ここで、有機溶媒としては、特に限定されることなく、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、トルエンなどを用いることができる。中でも、シクロヘキサンが好ましい。
【0041】
フッ素樹脂およびCNTの混合および分散は、特に限定されることなく、高速撹拌機、インラインミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、ジェットミル、ボールミルなどを用いて行うことができる。中でも、CNTに損傷が発生するのを抑制すると共に、CNTを良好に分散させる観点からは、高速撹拌機、ホモジナイザーおよびインラインミキサーなどの分散メディアを使用せずに湿式で分散処理をする湿式メディアレス分散機を用いることが好ましい。
【0042】
そして、スラリーからの分散媒の除去は、ドラフトチャンバー等を用いた換気乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などにより行うことができる。なお、乾燥時間および乾燥温度等の乾燥条件は、適宜設定することができる。
【0043】
[粉砕工程]
任意に実施し得る粉砕工程では、複合化工程で得られた、カーボンナノチューブおよびフッ素樹脂を含有する複合体を粉砕する。ここで、粉砕方法としては、特に限定されることなく、任意の粉砕方法を用いることができる。中でも、粉砕工程では、例えば回転翼の回転により複合体を粉砕することが好ましい。
【0044】
(成形体)
そして、本発明の成形体は、上述した複合材料を、所望の成形品形状に応じた成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロール機等により成形して得ることができる。なお、成形体には、任意に架橋処理を施してもよい。
【0045】
ここで、成形体は、体積抵抗率が1×108Ω・cm以下であることが好ましく、1×105Ω・cm以下であることがより好ましく、5×103Ω・cm以下であることが更に好ましい。体積抵抗率が上記上限値以下であれば、帯電防止性能を更に高めることができる。
なお、本発明において、体積抵抗率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【実施例0046】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、体積抵抗率および比表面積は、以下の方法を使用して測定した。
【0047】
<体積抵抗率>
作製した成形体の表面を耐水研磨紙(3000番)で研磨した後、低抵抗(108Ω・cm未満)は抵抗率計ロレスタ(三菱化学アナリテック社製、製品名「MCP-T610」、プローブLSP)、高抵抗(108Ω・cm以上)は抵抗率計ハイレスタ(三菱化学アナリテック社製、製品名「MCP-HT800」、プローブURSS)を用いて体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。体積抵抗率の値が小さい程、導電性に優れており、高い帯電防止性能を有することを示す。
<比表面積>
JIS Z8830に準拠し、BET比表面積測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名「BELSORP(登録商標)-mini」)を用いて、CNTのBET比表面積(m2/g)を測定した。
【0048】
(実施例1)
5LのSUS缶に、分散媒としてシクロヘキサンを2720gと、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のフッ素樹脂粒子(AGC社製、製品名「Fluon PTFE G163」、平均粒径30μm、比重2.15)を679.83gと、単層カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、比重1.7、炭素純度:99.5%、平均直径3.5nm、3σ/Av:0.60、平均長さ:450μm、比表面積:1042m2/g、t-プロット:上に凸)を0.17gとを投入し、分散機(ラボリューション、プライムミクス株式会社製)を用いて、12000rpmで15分間混合し、フッ素樹脂粒子と、カーボンナノチューブとを含むスラリー状の分散液を得た。
次いで、得られたスラリーをフッ素コーティングアルミバット(AS ONE品番:2-339-07、型番:深1号)を用いてドラフトチャンバーで乾燥させて分散媒を除去し、その後、角型真空乾燥器(ヤマト科学社製)にて125℃で2時間にわたり熱風乾燥することで、フッ素樹脂および単層カーボンナノチューブを含む複合体を得た
得られた複合体を、撹拌翼を備える粉砕装置であるミルミキサーを用いて15秒間粉砕し、複合材料(複合樹脂粒子)を得た。
得られた複合樹脂粒子を金型に投入後、圧縮成型機(ダンベル社製、型番「SDOP-1032IV-2HC-AT」)を用いて、室温、圧力9MPa、圧力保持時間5分の条件にて予備成形を行い、幅130mm×80mm、厚み2mmのシート状の予備成形体を得た。予備成形体を脱型後、フリーの状態で熱風循環炉にて370℃で6時間焼成することにより、成形体を得た。得られた成形体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
単層カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO(登録商標)SG101」)に替えて単層カーボンナノチューブ(OCSiAl社製、製品名「TUBALL」)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
フッ素樹脂の量を679.93gに変更し、単層カーボンナノチューブの量を0.07gに変更した以外は実施例2と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
単層カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO(登録商標)SG101」)に替えて多層カーボンナノチューブ(JEIO社製、製品名「JC142」)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
フッ素樹脂の量を679.32gに変更し、単層カーボンナノチューブの量を0.68gに変更した以外は実施例2と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
単層カーボンナノチューブ(OCSiAl社製、製品名「TUBALL」)に替えて多層カーボンナノチューブ(KUMHO PETROCHEMICAL社製、製品名「K-nanos 100P」)を用いた以外は実施例5と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
単層カーボンナノチューブとして国際公開第2006/011655号の記載に従いスーパーグロース法で調製した単層カーボンナノチューブ(比表面積:1454m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合材料および成形体を得た。そして、実施例1と同様にして測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1より、実施例1~5の成形体は、比較例1~2の成形体よりも導電性に優れている事が分かる。