(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122545
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ブレ補正装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240902BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030139
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】粟津 亘平
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA01
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA24
2K005CA34
2K005CA40
2K005CA44
2K005CA53
5C122EA41
5C122EA54
5C122FB04
5C122GE11
5C122GE19
5C122HA75
5C122HA82
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】 小型化されたブレ補正装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】 ブレ補正装置100は、撮像素子16を、アクチュエータにより駆動し、ブレ補正を行うブレ補正装置100において、アクチュエータのマグネットとヨークとを備える第1の固定部材を含む固定部201と、撮像素子16とアクチュエータのコイルとを保持する保持枠を備え、光軸に交差する平面内で移動可能に構成される可動部101と、光軸方向に沿って可動部を第1の固定部材側に、点接触で付勢する付勢部と、を備え、アクチュエータは、撮像素子16の背面に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を、アクチュエータにより駆動し、ブレ補正を行うブレ補正装置において、
前記アクチュエータのマグネットとヨークとを備える第1の固定部材を含む固定部と、
前記撮像素子と前記アクチュエータのコイルとを保持する保持枠を備え、光軸に交差する平面内で移動可能に構成される可動部と、
前記光軸方向に沿って前記可動部を前記第1の固定部材側に、点接触で付勢する付勢部と、
を備え、
前記アクチュエータは、前記撮像素子の背面に配置される、
ブレ補正装置。
【請求項2】
前記撮像素子と前記アクチュエータとは、前記撮像素子の厚み方向の投影領域と前記アクチュエータの少なくとも一部とが重なる位置関係に設けられる、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項3】
前記アクチュエータに接続される第1の可撓性基板と前記撮像素子に接続される第2の可撓性基板とは、前記保持枠の側面に取り付けられている、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項4】
前記保持枠は、少なくとも第1の側面及び前記第1の側面に交差する第2の側面を有し、
前記第1の可撓性基板は前記第1の側面に取り付けられ、前記第2の可撓性基板は前記第2の側面に取り付けられる、
請求項3に記載のブレ補正装置。
【請求項5】
前記第1の可撓性基板と前記第2の可撓性基板とは、少なくとも一方が屈曲部を有して取り付けられ、
前記保持枠の移動に追従して、前記屈曲部が変化する、請求項3に記載のブレ補正装置。
【請求項6】
前記可動部の共振を抑制する駆動信号を前記アクチュエータに入力する制御部を備える、請求項3に記載のブレ補正装置。
【請求項7】
環境温度を取得する温度取得部を備え、
前記温度取得部で取得された前記環境温度に基づいて、前記駆動信号を前記アクチュエータに入力する、請求項6に記載のブレ補正装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記環境温度に基づいて、複数の前記駆動信号のうちから前記駆動信号を選択して、前記アクチュエータに入力する請求項7に記載のブレ補正装置。
【請求項9】
前記付勢部は、ボールプランジャを含む請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項10】
前記撮像素子の位置を検出するホールセンサを備え、
前記ホールセンサにより検出される磁界を発生させるマグネットは、前記アクチュエータの前記マグネットを使用し、
前記ホールセンサを構成するホール素子は、前記アクチュエータのコイルの内部に配置される、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項11】
前記アクチュエータの前記マグネットは、前記ヨーク上に第1の間隔で配置された一対のマグネットで構成されたマグネット部であり、
前記一対のマグネットの先端部の対向するコーナ部はカットされ、前記先端部の第2の間隔は、前記第1の間隔よりも拡げられている、請求項10に記載のブレ補正装置。
【請求項12】
前記撮像素子の背面側とコイルとの間に電磁波シールド部材が配置される、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項13】
前記アクチュエータは、ボイスコイルモータである請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1項に記載のブレ補正装置を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサに手ブレなどブレを抑制するブレ補正装置を取り付けたカメラの技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には主に、カメラボディに固定される固定部と、イメージセンサを保持する可動部と、可動部を光軸に対して垂直な面で移動可能に支持する支持部と、で構成されるブレ補正装置に関する技術が記載されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、ブレ補正装置の可動部を駆動させるボイスコイルモータを構成するコイルからの磁場の影響を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-170339号公報
【特許文献2】特開2020-170963号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術にかかる一つの実施形態は、小型化されたブレ補正装置及び撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様であるブレ補正装置は、撮像素子を、アクチュエータにより駆動し、ブレ補正を行うブレ補正装置において、アクチュエータのマグネットとヨークとを備える第1の固定部材を含む固定部と、撮像素子とアクチュエータのコイルとを保持する保持枠を備え、光軸に交差する平面内で移動可能に構成される可動部と、光軸方向に沿って可動部を第1の固定部材側に、点接触で付勢する付勢部と、を備え、アクチュエータは、撮像素子の背面に配置される。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、好ましくは、撮像素子とアクチュエータとは、撮像素子の厚み方向の投影領域とアクチュエータの少なくとも一部とが重なる位置関係に設けられる。
【0009】
第3の態様は、第1の態様において、好ましくは、アクチュエータに接続される第1の可撓性基板と撮像素子に接続される第2の可撓性基板とは、保持枠の側面に取り付けられている。
【0010】
第4の態様は、第3の態様において、好ましくは、保持枠は、少なくとも第1の側面及び第1の側面に交差する第2の側面を有し、第1の可撓性基板は第1の側面に取り付けられ、第2の可撓性基板は第2の側面に取り付けられる。
【0011】
第5の態様は、第3の態様において、好ましくは、第1の可撓性基板と第2の可撓性基板とは、少なくとも一方が屈曲部を有して取り付けられ、保持枠の移動に追従して、屈曲部が変化する。
【0012】
第6の態様は、第3の態様において、好ましくは、可動部の共振を抑制する駆動信号をアクチュエータに入力する制御部を備える。
【0013】
第7の態様は、第6の態様において、好ましくは、環境温度を取得する温度取得部を備え、温度取得部で取得された環境温度に基づいて、駆動信号をアクチュエータに入力する。
【0014】
第8の態様は、第7の態様において、好ましくは、制御部は、環境温度に基づいて、複数の駆動信号のうちから駆動信号を選択して、アクチュエータに入力する。
【0015】
第9の態様は、第1の態様において、好ましくは、付勢部は、ボールプランジャを含む。
【0016】
第10の態様は、第1の態様において、好ましくは、撮像素子の位置を検出するホールセンサを備え、ホールセンサにより検出される磁界を発生させるマグネットは、アクチュエータのマグネットを使用し、ホールセンサを構成するホール素子は、アクチュエータのコイルの内部に配置される。
【0017】
第11の態様は、第10の態様において、好ましくは、アクチュエータのマグネットは、ヨーク上に第1の間隔で配置された一対のマグネットで構成されたマグネット部であり、一対のマグネットの先端部の対向するコーナ部はカットされ、先端部の第2の間隔は、第1の間隔よりも拡げられている。
【0018】
第12の態様は、第1の態様において、好ましくは、撮像素子の背面側とコイルとの間に電磁波シールド部材が配置される。
【0019】
第13の態様は、第1の態様において、好ましくは、アクチュエータは、ボイスコイルモータである。
【0020】
第14の態様は、第1の態様から第13の態様のいずれかに記載のブレ補正装置を備える撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ブレ補正装置を搭載する撮像装置の内部の概略図である。
【
図2】
図2は、撮像装置の内部構成の実施形態を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、ブレ補正装置を構成する固定部の正面斜視図である。
【
図6】
図6は、ブレ補正装置を構成する可動部の正面斜視図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すA-A線での断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1のFPC及び第2のFPCの配置位置に関して説明する模式図である。
【
図9】
図9は、第1のFPC及び第2のFPCの形状に関して模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、巻線コイルに作用するローレンツ力について説明する図である。
【
図11】
図11は、一般的な磁気バネで可動部を付勢する場合の模式図である。
【
図15】
図15は、ホールセンサの配置と磁石形状とを説明する模式図である。
【
図16】
図16は、マグネット間隔Wとリニアリティ誤差の関係を示す図である。
【
図17】
図15(A)及び
図15(B)に示した形態のリニアリティ誤差の関係を示す図である。
【
図18】
図18は、マグネットの面取り形状の変形例を示す図である。
【
図19】
図19は、温度変化とブレ補正装置の一次共振周波数の関係を示す図である。
【
図20】
図20は、
図9で示した第2のFPC123の片側半分を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、フレキシブルプリント基板のY方向の変位と反力の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、ホール素子の配置位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にしたがって本発明に係るブレ補正装置及び撮像装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
<撮像装置>
手ブレなどのブレにより、得られる画像における像ブレを抑制するブレ補正装置を搭載する撮像装置に関して説明する。
【0024】
図1は、本発明のブレ補正装置100を搭載する撮像装置10の内部の概略図である。
【0025】
撮像装置10は、レンズ交換式のカメラであり、撮像装置本体2にアダプタ6を介して、撮影レンズ装置12を装着する。撮影レンズ装置12は、絞り8、レンズ群12A及び12Bを備える。光軸Lを有する撮影レンズ装置12は、被写体1で反射した光を結像させる。撮像装置本体2は接眼部4を備え、撮影者は、被写体1を撮影する場合には、接眼部4に接眼して被写体1の撮影を行う。
【0026】
撮像素子16は、撮像装置本体2の光軸Lに垂直に交わる2つの方向(X方向とY方向)とで構成される平面(X-Y平面)に沿って受光面(撮像面)が配置されている。撮像素子16は、ブレ補正装置100に保持されている。また、ブレ補正装置100に含まれる駆動部58が制御部40に制御されることにより、ブレ補正機能が実現される。
【0027】
図2は、撮像装置10の内部構成の実施形態を示すブロック図である。この撮像装置10は、撮像した画像をメモリカード54に記録するもので、装置全体の動作は、制御部40(中央処理装置:CPU:Central Processing Unit)によって統括制御される。
【0028】
撮像装置10には、シャッタボタン、電源/モードスイッチ、モードダイヤル、十字操作ボタン、等の操作部38が設けられている。この操作部38からの信号(指令)は制御部40に入力され、制御部40は入力信号に基づいて撮像装置10の各回路を制御し、撮像素子16の駆動制御、レンズ駆動制御、絞り駆動制御、撮像動作制御、画像処理制御、画像データの記録/再生制御、及び、画像モニタ30の表示制御などを行う。
【0029】
撮影レンズ装置12を通過した光束は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のカラーイメージセンサである撮像素子16に結像される。なお、撮像素子16は、CMOS型に限らず、CCD(Charge Coupled Device)型、又は有機撮像素子など他の形式のイメージセンサが用いられてもよい。
【0030】
撮像素子16は、多数の受光素子(例えばフォトダイオード)が2次元配列されており、各受光素子の受光面に結像された被写体像は、その入射光量に応じた量の信号電圧(又は電荷)に変換(光電変換)され、撮像素子16内のA/D(Analog/Digital)変換器を介してデジタル信号に変換されて出力される。
【0031】
動画又は静止画の撮影時に撮像素子16から読み出された画像信号(画像データ)は、画像入力コントローラ22を介してメモリ(SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory))48に一時的に記憶される。
【0032】
また、フラッシュメモリ(Flash Memory)47は、カメラ制御プログラム、画像処理等に使用する各種のパラメータやテーブルが記憶されている。
【0033】
ブレセンサ66は、撮像装置10の姿勢情報及び姿勢変化情報を検出する。ブレセンサ66は、例えばジャイロセンサで構成される。ブレセンサ66は、縦方向の手振れ量と横方向の手振れ量を検出するために例えば2つのジャイロセンサで構成され、検出された手振れ量(角速度)は制御部40に入力される。また、ブレセンサ66は、後で説明するホールセンサを含む。制御部40は、ホールセンサにより、可動部101の移動量を取得して、その移動量に応じて駆動部58を制御する。すなわち、制御部40は、駆動部58を制御して、手振れに応じた被写体像の移動をキャンセルするように撮像素子16を移動させることでブレ補正を行う。
【0034】
温度センサ68は、温度取得部として機能し、撮像装置10が使用される環境温度を測定する。温度センサ68は、撮像装置本体2の内部及び/又は撮像装置本体2の周辺の温度を測定する。温度センサ68は、例えばサーミスタなどの、公知の温度を計測するセンサにより構成される。温度センサ68で取得された環境温度に関する情報は、制御部40に入力される。制御部40は、入力された環境温度に基づいて、駆動信号を駆動部58に出力する。
【0035】
駆動部58は、制御部40からの電気信号(駆動信号)により可動部101を移動させるアクチュエータにより構成される。アクチュエータの具体例として、ボイスコイルモータ(Voice Coil Motor)が挙げられる。駆動部58は、制御部40から入力される電気信号に応じて、可動部101を光軸Lに対して垂直なX-Y平面で移動させる。
【0036】
画像処理部24は、動画又は静止画の撮影時に画像入力コントローラ22を介して取得され、メモリ48に一時的に記憶された未処理の画像データを読み出す。画像処理部24は、読み出した画像データに対してオフセット処理、画素補間処理(位相差検出用画素、欠陥画素等の補間処理)、ホワイトバランス補正、感度補正を含むゲインコントロール処理、ガンマ補正処理、同時化処理(「デモザイク処理」ともいう)、輝度及び色差信号生成処理、輪郭強調処理、及び色補正等を行う。画像処理部24により処理された画像データであって、ライブビュー画像として処理された画像データは、VRAM(Video RAM Random access memory)50に入力される。
【0037】
VRAM50から読み出された画像データは、ビデオエンコーダ28においてエンコーディングされ、カメラ背面に設けられている画像モニタ30に出力される。これにより、被写体像を示すライブビュー画像が画像モニタ30に表示される。
【0038】
画像処理部24により処理された画像データであって、記録用の静止画又は動画として処理された画像データ(輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr))は、再びメモリ48に記憶される。
【0039】
圧縮伸張処理部26は、静止画又は動画の記録時に、画像処理部24により処理され、メモリ48に格納された輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr)に対して圧縮処理を施す。圧縮された圧縮画像データは、メディアコントローラ52を介してメモリカード54に記録される。
【0040】
また、圧縮伸張処理部26は、再生モード時にメディアコントローラ52を介してメモリカード54から得た圧縮画像データに対して伸張処理を施す。メディアコントローラ52は、メモリカード54に対する圧縮画像データの記録及び読み出しなどを行う。
【0041】
上記実施形態において、各種の処理を実行する処理部(制御部40等)(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0042】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0043】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0044】
<ブレ補正装置>
次に、本発明のブレ補正装置100に関して説明する。
【0045】
図3、
図4、
図5、及び
図6は、撮像装置10に搭載されるブレ補正装置100を示す図である。
図3は、ブレ補正装置100の正面斜視図であり、
図4は、ブレ補正装置100の背面斜視図であり、
図5は、ブレ補正装置100を構成する固定部201の正面斜視図であり、
図6は、ブレ補正装置100を構成する可動部101の正面斜視図である。なお、以下の説明では、正面はプラスZ軸側(被写体側)から見た面であり、背面はマイナスZ軸側(撮影者側)から見た面を意味する。
【0046】
ブレ補正装置100は主に、撮像素子16を保持する可動部101(
図6を参照)と、撮像装置本体2に固定される固定部201(
図5を参照)とから構成される。可動部101は、支持機構により支持されており、光軸Lに交差する平面(図中では、光軸Lに垂直に交わるX-Y平面)を移動可能である。
【0047】
固定部201は、主にベースプレート105とカウンタープレート103とから構成される。ベースプレート105とカウンタープレート103とは、光軸L方向に対向し離間して配置される。また、ベースプレート105とカウンタープレート103とは、第1のシャフト109a、第2のシャフト109b、及び第3のシャフト109cにより接続される。ベースプレート105とカウンタープレート103との間には、第1のFPC固定部材111、第2のFPC固定部材113が設けられている。ここでFPCは、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits)を意味する。以下の説明では、可撓性基板の一例として、FPCを使用した場合に関して説明するが、本発明において可撓性基板はFPCに限定されない。
【0048】
ベースプレート105は、アクチュエータの具体例である3つのボイスコイルモータ171a~171c(
図14を参照)をそれぞれ構成する第1のマグネット115a、第2のマグネット115b、及び第3のマグネット115cを保持する。また、ベースプレート105は、ボイスコイルモータのヨークとして機能する。また、ベースプレート105には、付勢部119を構成するボールプランジャが設けられている。なお、ボールプランジャに関しては、後で説明を行う。
【0049】
ベースプレート105は、ボール受け面107a~107cを有する。可動部101は、ベースプレート105に3つのボール(不図示)を介して当接している。可動部101は、ベースプレート105に対してマグネット(不図示)による吸着力又はバネ(不図示)による弾性力によって付勢される。そして、可動部101とベースプレート105との間で3つのボールが挟持され、3つのボールが転動することにより、可動部101は、X-Y平面を移動することが可能となる。
【0050】
可動部101は、主に撮像素子16を保持する可動部枠(保持枠)131で構成される。可動部枠131は、ボイスコイルモータ171a~171c(
図14参照)を構成する第1の巻線コイル127a(
図6)、第2の巻線コイル127b(
図6)、及び第3の巻線コイル127c(
図7)を保持する。可動部枠131の側面には、第1のFPC121、第2のFPC123の一方の端部が接続されている。なお、本発明において、第1のFPC121は第1の可撓性基板を構成し、第2のFPC123は第2の可撓性基板を構成する。
【0051】
可動部枠131の一つの側面(第1の側面)(
図6では、プラスX軸側のY-Z面)に、第1のFPC121の端部が接続されている。ここで、第1のFPC121は、Y軸のプラス側及びマイナス側に凸形状が向くように屈曲部が配置される。言い換えると、第1のFPC121は、二つのU字を、一方を反転させて接続した長楕円の形状を有している。なお、第1のFPC121は、駆動部58に接続されている。
【0052】
また、可動部枠131の他の側面(第2の側面)(
図6では、マイナスY軸側のX-Z面)に、第2のFPC123が接続されている。ここで、第2のFPC123は、X軸のプラス側及びマイナス側に凸形状が向くように屈曲部が配置される。言い換えると、第2のFPC123は、二つのU字を、一方を反転させて接続した長楕円の形状を有している。なお、第2のFPC123は、撮像素子16に接続されている。
【0053】
また、第2のFPC123の内側には、放熱部材125が接続されている。放熱部材125は、例えばパンタグラフ型のグラファイトシートで構成され、撮像素子16で発生する熱を放熱させる。この場合、第2のFPC123の固定部材は、銅、アルミなどの熱伝導率の高い材料で構成することが望ましい。
【0054】
<コイルの配置位置>
次に、ブレ補正装置100におけるボイスコイルモータ171a~171c(
図14参照)を構成する第1の巻線コイル127a、第2の巻線コイル127b、及び第3の巻線コイル127cの配置位置に関して説明する。
【0055】
図7は、
図3に示すA-A線での断面を模式的に示す断面図である。
【0056】
図7に示すように、ブレ補正装置100では、撮像素子16の背面にボイスコイルモータが配置されている(なお、
図7ではボイスコイルモータ171aとボイスコイルモータ171bが示されている)。ブレ補正装置100は、撮像素子16の厚み方向(
図7中ではZ軸方向)の投影領域CASとボイスコイルモータ171a~171cの少なくとも一部とが重なる位置関係に、ボイスコイルモータ171a~171cが設けられている。具体的には、
図7に示す場合では、撮像素子16が保持される可動部枠131のベースプレート105の面に、巻線コイル127a~127cが配置され、それらに対応するように、マグネット115a~115cが配置されている。
【0057】
このように、ボイスコイルモータ171a~171cを撮像素子16の背面に配置することにより、ブレ補正装置100の厚み幅(図中ではX-Y平面)を縮小することができ小型化を行うことができる。
【0058】
ここで、撮像を行う場合には、制御部40により可動部101の位置を制御するため、撮像装置10の電源が入っている間には、ボイスコイルモータを構成する巻線コイル127a~127cには、常に電流が流される。また、巻線コイル127a~127cに電流が流されることにより、巻線コイル127a~127c(
図7では不図示)から発せられる磁気ノイズ(
図7では矢印Nで示す)が撮像素子16に到達し、撮像素子16で得られる画像の画質を低下させるという問題がある。
【0059】
例えば上述した特許文献2では、このような画質の低下をコイルの外周に導電性部材を配置することで、この磁気ノイズの低減を図っている。しかしながら、特許文献2に記載された手法では、撮像素子とコイルとの間の磁気ノイズの到達経路が完全に遮蔽できていないため撮像素子への磁気ノイズの影響が残ってしまう。
【0060】
一方、本発明のブレ補正装置100では、電磁波シールド部材133を撮像素子16の背面側であって、巻線コイル127a~127cと撮像素子16との間に配置する。ここで、電磁波シールド部材133は可動部枠部材やCMOS基板と同一部品でも良く、導電性材料を用いることで電磁シールド効果が得られる。このように、電磁波シールド部材133を配置することにより、ブレ補正装置100では、磁気ノイズNの撮像素子16への到達経路を効果的に遮蔽することができ、撮像素子16への磁気ノイズを抑制することができる。よって、ブレ補正装置100を搭載する撮像装置10では、磁気ノイズが抑制された画質の良い画像を取得することができる。
【0061】
<FPCの配置位置>
次に、ブレ補正装置100の第1のFPC121及び第2のFPC123の配置位置に関して説明する。
【0062】
図8は、第1のFPC121及び第2のFPC123の配置位置に関して説明する模式図である。
図9は、可動部枠131が移動した場合の第1のFPC121及び第2のFPC123の形状に関して模式的に示す図である。
【0063】
第1のFPC121は可動部枠131の第1の側面141に配置され、第2のFPC123は可動部枠131の第2の側面143に配置される。第1のFPC121及び第2のFPC123の屈曲部の屈曲半径Rの中心軸Oは、光軸Lの方向(
図8中ではZ軸方向)と平行になるように配置されている。なお、第1の側面141と第2の側面143は、互いに交差する側面である。
【0064】
ここで、従来のブレ補正装置では、FPCは固定部の背面においてU字型に屈曲して配置されている(
図23の符号501を参照)。このため、ブレ補正装置の背面(固定部)と撮像装置本体2との間に、FPCを配置するためのスペースを確保しなければならず、そのために撮像装置10の厚み幅が大きくなってしまう。
【0065】
一方、本発明のブレ補正装置100では、第1のFPC121及び第2のFPC123を可動部枠131の第1の側面141及び第2の側面143に配置しているので、撮像素子16の厚み方向(
図8ではZ軸方向)の厚さの増加を抑えることができる。
【0066】
第1のFPC121及び第2のFPC123は、2つの屈曲部がU字形状となるように保持されており、二つのU字のうち一つを反転させて繋げた長楕円のような形状を有する。
【0067】
また、
図9に示すように、第1のFPC固定部材111と第1のFPC121とが接触している面積に対して、第1のFPC121が接着等で固定されている面積Qは小さく設計されている。また、第2のFPC固定部材113と第2のFPC123とが接触している面積に対して、第2のFPC123が接着固定されている面積Qは小さく設計されている。これにより、X-Y平面で可動部101が動いた場合には、第1のFPC121及び第2のFPC123は、変形して可動部枠131の動きに追従する(
図9(B)を参照)。
【0068】
図9(B)は、X-Y平面において可動部枠131が矢印Mの方向に移動した場合の第1のFPC121及び第2のFPC123の形状について説明する図である。
【0069】
可動部枠131が矢印Mの方向に移動すると、第1のFPC121は、クローラ(Crawler)のように変形することで第1のFPC固定部材111と可動部枠131の接触面上を移動する。一方、第1のFPC121は、第2のFPC固定部材113と可動部枠131との間隔が広がるのに合わせてU字形状の曲率半径が大きくなることで、可動部枠131に追従する。ここで可動部枠131と第2のFPC固定部材113の間隔が小さくなるとFPCの変形による反力が急激に大きくなるため、間隔は5mm以上であることが望ましい。
【0070】
以上で説明したように、ブレ補正装置100では、第1のFPC121及び第2のFPC123を可動部枠131の側面に配置することにより、撮像素子16の厚み方向の縮小化を行っている。
【0071】
<付勢部材>
次に、ブレ補正装置100の付勢部119に関して説明する。
【0072】
先ず、一般的なボイスコイルモータの構成における巻線コイルに作用するローレンツ力について説明する。
【0073】
図10は、ボイスコイルモータの構成における巻線コイルに作用するローレンツ力について説明する図である。
図10(A)は、対向ヨークYK及び対向マグネットMgを設けない場合の巻線コイルCOに作用するローレンツ力F(図中ではF
1及びF
2と示す)を示し、
図10(B)は対向ヨークYKのみを設ける場合の巻線コイルCOに作用するローレンツ力F(図中ではF
1及びF
2と示す)を示し、
図10(C)は対向ヨークYK及び対向マグネットMgを設ける場合の巻線コイルCOに作用するローレンツ力F(図中ではF
1及びF
2と示す)を示す。
【0074】
巻線コイルCOに電流が流れると、巻線コイルCOの外周部に磁界が形成されボイスコイルモータの磁気回路との作用で駆動力となるローレンツ力Fが発生する。
【0075】
図10(A)に示す場合では、対向マグネットMg及び対向ヨークYKを設けていなく、
図10(B)に示す場合では、対向マグネットMgを設けていないので、巻線コイルCO近傍は一様な並行磁場とならず巻線コイルCOには光軸方向と平行な向きのローレンツ力Fzが作用してしまう。
【0076】
一方で、
図10(C)に示す場合では、対向ヨークYK及び対向マグネットMgを設けているので、巻線コイルCOの近傍は一様な平行磁場となり、ローレンツ力Fは可動部101の移動方向と平行である。
【0077】
このように、ローレンツ力Fzは、対向ヨークYK及び対向マグネットMgを設けた場合は、巻線コイルCOの近傍の磁場が一様な並行磁場に近づくため、小さくなり(
図10(C)の場合)、対向ヨーク及び/又は対向マグネットMgがない場合は、巻線コイルCOの近傍の磁力線が曲がるため、ローレンツ力Fzは大きくなる(
図10(A)及び(B)の場合)。
【0078】
ここで、ブレ補正装置100において、ローレンツ力Fzが可動部101を固定部201に付勢する力よりも大きくなると、可動部101は固定部201から浮き上がり、撮像素子16の像面のあおりが生じてしまう。したがって、ブレ補正装置100においては、可動部101の可動範囲内で、常にローレンツ力Fzよりも大きな付勢力を用いて付勢を行う必要がある。
【0079】
次に、磁気バネで可動部を固定部に対して付勢する場合に関して説明する。
【0080】
図11は、一般的な磁気バネで可動部を付勢する場合の模式図である。
【0081】
図11では、マグネット305と磁性体プレート301により磁気バネを形成し、磁気バネの吸着力を使用して、コイル303を保持する可動部307を付勢力Gzで固定部309に向かって付勢している。
【0082】
図11(A)に示すように、可動部307が中心に位置している場合には、主にZ軸方向に平行な付勢力Gzで付勢を行うことができる。一方、
図11(B)に示すように、可動部307がX軸方向に移動した場合には、付勢力Gzと共に付勢力Gxも発生する。これは、磁性体プレート301のように一定の面積を有する部材を介して付勢力を付与しているためである。
【0083】
ここで一般的に、可動部307の固定部309への付勢は、コイルバネや磁気バネを用いて行われる。コイルバネを使用して付勢力を付与した場合であっても、前述した磁気バネと同様に、Z方向の付勢力(Gz)を大きくするとX方向の力(Gx)も大きくなり、可動部101を駆動するための推力が大きくなってしまう。
【0084】
そこで、ブレ補正装置100では、可動部101の付勢を点接触で行う付勢部119を設けることにより、上述したX方向に平行な力(Gx)の発生を抑制し、可動部101を駆動するための推力が大きくなってしまうことを抑制する。
【0085】
ブレ補正装置100では、付勢部119として、点接触を行うことができるプランジャを採用し、ローレンツ力Fzよりも大きな付勢力Gxを付与している。プランジャは、ボールを押し当てて点接触により付勢力を付与する構造を採用しているので、駆動方向(X方向)の反力(Gx)を抑制することができる。
【0086】
図12及び
図13は、ブレ補正装置100の付勢部119を構成するボールプランジャの一例を示す図である。
図12は、
図4におけるB-B線での断面を模式的に示す図であり、
図13は、
図4におけるC-C線での断面を模式的に示す図である。
【0087】
図12に示すように、付勢部119を構成するボールプランジャは、プランジャ153、コイルバネ151、ボール155、プランジャ側ボール受け面157、プランジャガイド159から構成される。そして、ボールプランジャによりボール155が、固定部側ボール受け面161に対して押し付けられて、付勢力Gが固定部側ボール受け面161に作用する。
【0088】
プランジャガイド159は、ベースプレート105に取り付けられる。筒形状のプランジャガイド159の内部には、コイルバネ151、プランジャ側ボール受け面157が取り付けられたプランジャ153、及びボール155が配置されている。プランジャ153は、コイルバネ151の反縮反力により移動する移動片として機能し、プランジャ153の端部のプランジャ側ボール受け面157上に配置されたボール155を、固定部側ボール受け面161に対して押し付けている。
【0089】
固定部側ボール受け面161は、ネジ163を介して可動部枠131に取り付けられており(
図13を参照)、可動部枠131をベースプレート105の方向に押し付けることができる。
【0090】
ここで、可動部枠131が移動した場合には、ボール155はプランジャ側ボール受け面157と固定部側ボール受け面161との間を転動する。したがって、駆動方向(例えば
図10でのX方向)の反力は、ボール155の転がり抵抗のみとなる。この転がり抵抗は、
図10で示した磁気バネの吸着力(Gx)やコイルバネの力よりも小さいため、より小さな駆動力で可動部101を移動させることができる。
【0091】
図13に示すように、固定部側ボール受け面161は、可動部枠131に設けられた突起部172aとネジ163、及び突起部172bとネジ163で可動部枠131に接続されている。このように、固定部側ボール受け面161と接続を行うための突起部172a及び172bは、可動部枠131と一体に形成されることが望ましい。
【0092】
次に、付勢部119の配置位置に関して説明する。
【0093】
図14は、付勢部119の配置位置を説明する図である。
【0094】
付勢部119は、ベースプレート105に設けられるボール受け面107a~107cを結ぶ三角形Tの内側に設けられることが望ましい。前述したように可動部枠131は、ベースプレート105に対して付勢され3つのボールを介して接触している。したがって、三角形Tの内側に、付勢部119を設けることにより、安定的に可動部101をベースプレート105側に付勢することができる。
【0095】
<ホールセンサの配置と磁石形状>
次に、ホールセンサの配置と磁石形状に関して説明する。ブレ補正装置100は、ホールセンサにより構成されるブレセンサ66で、可動部101の位置を検出しブレを抑制する制御を制御部40で行う。ここで、ブレ補正装置100では、ホールセンサを構成するマグネットは、ボイスコイルモータ171a~171cを構成するマグネット115a~115cの一部又は全部により構成される。また、ホールセンサを構成するホール素子は、ボイスコイルモータ171a~171cの巻線コイル127a~127cの内部に配置される。
【0096】
図15は、ホールセンサの配置とマグネット形状とを説明する模式図である。なお、以下の説明では、マグネット115aと巻線コイル127aとで構成されるホールセンサに関して説明するが、マグネット115b及び115cと巻線コイル127b及び127cとで構成されるホールセンサに関しても同様である。
【0097】
ホール素子165は、可動部枠131に設けられるボイスコイルモータを構成する巻線コイル127aの内部に配置される。そして、ベースプレート105に配置されたマグネット115aの磁場の変化から、ホール素子165の位置を検出することにより、制御部40は可動部枠131の移動量を算出する。
【0098】
ここで、一対のマグネットで構成されたマグネット115a(マグネット部)は、マグネット間隔Wで配置される。マグネット間隔Wは、小型化の観点から、小さく設定することが望ましい。しかしながら、マグネット間隔Wが小さくなると、以下に説明するようにホールの位置検出のリニアリティ誤差が悪化してしまう場合がある。
【0099】
図16は、マグネット間隔Wとリニアリティ誤差の関係を示す図である。なお、
図16では、縦軸に誤差を示し、横軸に可動部101のストロークを示す。
【0100】
図16では、マグネット間隔W=2の場合(符号183で示す)と、マグネット間隔W=1.5の場合(符号185で示す)のリニアリティ誤差が示されている。図示されるように、マグネット間隔Wが小さくなると、誤差が大きくなりホール位置検出のリニアリティ誤差が悪化してしまう。
【0101】
そこで、ブレ補正装置100では、
図15(B)に示すように、一対のマグネット115aの先端部の間隔は、対向するコーナ部をカットすることにより面取り形状Sを追加し、マグネット間隔W(第1の間隔)からマグネット間隔WL(第2の間隔)に拡げられている。
【0102】
図17は、
図15(A)及び
図15(B)に示した形態のリニアリティ誤差の関係を示す図である。なお、
図17では、縦軸に誤差を示し、横軸に可動部101のストロークを示す。
【0103】
マグネット間隔Wでマグネット115aに面取り形状Sが無い場合(
図15(A)の場合)のリニアリティ誤差を符号185で示す。また、同じマグネット間隔Wでマグネット115aに面取り形状Sがある場合(
図15(B)の場合)のリニアリティ誤差を符号187で示す。図示されるように、マグネット間隔Wが同じ場合であっても、面取り形状Sを付加することにより、先端部のマグネット間隔WLが拡がり、位置検出のリニアリティ誤差が改善する。したがって、ブレ補正装置100のマグネット115a~115cにおいても、面取り形状Sを設けることが望ましく、これにより、可動部101の位置検出を精度良く行うことができる。
【0104】
図18は、マグネット115aの面取り形状Sの変形例を示す図である。
【0105】
前述した例では、マグネット115aに面取り形状Sを追加することにより、マグネット115aの先端部のマグネット間隔を拡げてリニアリティ誤差の改善を図った。しかしながら、マグネット115aの先端部の間隔を拡げることができれば、マグネット115aの先端部に付与する形状は特に限定されない。例えば、
図18(A)に示すように、マグネット115aの先端部を、丸みを付けたR形状S1としてもよい。また
図18(B)に示すように、マグネット115aの先端部を、逆R形状S2としてもよい。このように、マグネット115aの先端部を面取り形状S以外の形状に加工して先端部のマグネット間隔WLを拡げることにより、前述した面取り形状Sを追加した場合と同様に、リニアリティ誤差を改善させることができる。
【0106】
<FPCのバネ性(バネ定数)>
次に、FPCのバネ性に関して説明する。
【0107】
前述したように、ブレ補正装置100では、可動部枠131の第1の側面141及び第2の側面143に、第1のFPC121及び第2のFPC123をそれぞれ配置している。また、第1のFPC121及び第2のFPC123はU字形状に屈曲しており、バネ性を有し可動部枠131に力を作用させている。可動部101のバネ定数を考える場合には、以下で説明する磁気バネ、コイルバネ、FPC反力、グラファイトシート反力のバネ成分が考慮される。
【0108】
磁気バネは、マグネットと磁性体プレートの吸引力に起因する力である。温度依存性は殆どなく、変位量に対して反力が二次関数的に変化する。
【0109】
コイルバネは、引張バネに起因する力である。温度依存性は殆どなく、変位量に対して力が比例関係である。
【0110】
FPC反力は、FPCの変形抵抗に起因する力である。温度依存性があり、低温環境ではFPCが固くなるため、変形抵抗が大きくなる(バネ定数が上がる)。
【0111】
グラファイトシート反力は、グラファイトシートの変形抵抗に起因する力である。温度依存性があり、低温環境ではグラファイトシートが固くなるため、変形抵抗が大きくなる(バネ定数が上がる)。
また、可動部101の共振周波数fは次式で与えられる。
【0112】
【0113】
なお、上式でkはバネ定数を示す。なお、以下の説明では、バネ定数の温度依存性を考えるために、FPC反力とグラファイトシート反力の和を考える。またmは、可動部101の重量を示す。
【0114】
可動部重量mは不変であるが、バネ定数kは環境(例えば環境温度)で変化するので、共振周波数fも変化することになる。
【0115】
図19は、温度変化とブレ補正装置100の一次共振周波数の関係を示す図である。なお、
図19では、横軸が周波数を示し、縦軸がゲインを示す。
【0116】
HTMは高温環境下におけるブレ補正装置100の周波数であり、MTMは常温環境下におけるブレ補正装置100の周波数であり、LTMは低温環境下におけるブレ補正装置100の周波数である。
【0117】
図19に示すように、一次共振周波数は温度によって変化し、低温になるほど一次共振周波数が高域にシフトする。制御部40は、環境温度による一次共振周波数の変化に基づいて、ブレ補正を行うことにより、より精度の高いブレ補正を行うことができる。
【0118】
そこで、ブレ補正装置100では、環境温度が高温~低温であっても、精度良くブレ補正を行うようにするため、環境温度に応じた制御を行う。
【0119】
具体的には、制御部40は、撮像装置10の温度センサ68で環境温度を測定し、測定した温度に応じたサーボ制御パラメータを選択して可動部101の制御を行う。これにより、ブレ補正装置100は、様々な環境温度においても、精度良くブレ補正を行うことができる。
【0120】
<FPCの屈曲>
次に、FPCの屈曲に関して説明する。
【0121】
図20は、
図9で示した第2のFPC123の片側半分を模式的に示す図である。なお、以下の説明では、第2のFPC123に関して説明を行うが、第1のFPC121も同様である。
【0122】
可動部101がY方向に駆動した場合には、第2のFPC123のGapは可動部101の変位に追従して変化する。第2のFPC123は、弾性的に変形するため、変位に応じで反力が発生する。ブレ補正装置100の小型化の観点からGapは、小さいことが望ましいが、Gapがある値よりも小さくなると第2のFPC123の反力は急激に大きくなってしまう。
【0123】
図21は、第2のFPC123のY方向の変位と反力の一例を示す図である。なお、
図21では横軸がY方向変位を示し、縦軸がFPC反力を示す。なお、
図21では、FPC(フレキシブルプリント基板)の総厚50μmの場合の反力の例が示されている。
【0124】
ここで、可動部101の共振周波数を変化させないために、FPCの反力の線形領域を駆動範囲とすることが望ましい。
【0125】
このように、フレキシブルプリント基板の弾性特性に応じて、Gapを設計することにより、精度の高い可動部101の制御を行うことができる。
【0126】
<ホールセンサの位置>
次に、本発明のホールセンサを構成するホール素子の配置位置の変形例に関して説明する。
【0127】
図22は、本発明のホール素子165の配置位置を説明する図である。
【0128】
図22(A)は、ホール素子165と巻線コイル127aとの実装面が異なる場合であり、
図22(B)は、ホール素子165と巻線コイル127aとの実装面が同じ場合である。
【0129】
ブレ補正装置100では、ボイスコイルモータを撮像素子16の背面に配置したことにより、
図21(A)に示すように、FPC175を介して異なる面にホール素子165と巻線コイル127aを実装することもできるし、
図21(B)に示すように、FPC175の同じ面にホール素子165と巻線コイル127aを実装することもできる。このように、ブレ補正装置100では、ボイスコイルモータを撮像素子16の背面に配置したことにより、様々な形態を採用することが可能である。
【0130】
<付記>
前述した本開示には、以下の態様の発明を含むことを付記する。
(態様1)
撮像素子を、アクチュエータにより駆動し、ブレ補正を行うブレ補正装置において、
前記アクチュエータのマグネットとヨークとを備える第1の固定部材を含む固定部と、
前記撮像素子と前記アクチュエータのコイルとを保持する保持枠を備え、光軸に交差する平面内で移動可能に構成される可動部と、
前記光軸方向に沿って前記可動部を前記第1の固定部材側に、点接触で付勢する付勢部と、
を備え、
前記アクチュエータは、前記撮像素子の背面に配置される、
ブレ補正装置。
(態様2)
前記撮像素子と前記アクチュエータとは、前記撮像素子の厚み方向の投影領域と前記アクチュエータの少なくとも一部とが重なる位置関係に設けられる、態様1に記載のブレ補正装置。
(態様3)
前記アクチュエータに接続される第1の可撓性基板と前記撮像素子に接続される第2の可撓性基板とは、前記保持枠の側面に取り付けられている、態様1又は2に記載のブレ補正装置。
(態様4)
前記保持枠は、少なくとも第1の側面及び前記第1の側面に交差する第2の側面を有し、
前記第1の可撓性基板は前記第1の側面に取り付けられ、前記第2の可撓性基板は前記第2の側面に取り付けられる、
態様3に記載のブレ補正装置。
(態様5)
前記第1の可撓性基板と前記第2の可撓性基板とは、少なくとも一方が屈曲部を有して取り付けられ、
前記保持枠の移動に追従して、前記屈曲部が変化する、態様3又は4に記載のブレ補正装置。
(態様6)
前記可動部の共振を抑制する駆動信号を前記アクチュエータに入力する制御部を備える、態様3から5のいずれかに記載のブレ補正装置。
(態様7)
環境温度を取得する温度取得部を備え、
前記温度取得部で取得された前記環境温度に基づいて、前記駆動信号を前記アクチュエータに入力する、態様6に記載のブレ補正装置。
(態様8)
前記制御部は、前記環境温度に基づいて、複数の前記駆動信号のうちから前記駆動信号を選択して、前記アクチュエータに入力する態様7に記載のブレ補正装置。
(態様9)
前記付勢部は、ボールプランジャを含む態様1から8のいずれかに記載のブレ補正装置。
(態様10)
前記撮像素子の位置を検出するホールセンサを備え、
前記ホールセンサにより検出される磁界を発生させるマグネットは、前記アクチュエータの前記マグネットを使用し、
前記ホールセンサを構成するホール素子は、前記アクチュエータのコイルの内部に配置される、態様1から9のいずれかに記載のブレ補正装置。
(態様11)
前記アクチュエータの前記マグネットは、前記ヨーク上に第1の間隔で配置された一対のマグネットで構成されたマグネット部であり、
前記一対のマグネットの先端部の対向するコーナ部はカットされ、前記先端部の第2の間隔は、前記第1の間隔よりも拡げられている、態様10に記載のブレ補正装置。
(態様12)
前記撮像素子の背面側とコイルとの間に電磁波シールド部材が配置される、態様1から11のいずれかに記載のブレ補正装置。
(態様13)
前記アクチュエータは、ボイスコイルモータである態様1から12のいずれかに記載のブレ補正装置。
(態様14)
態様1から13のいずれかに記載のブレ補正装置を備える撮像装置。
【0131】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0132】
1 :被写体
2 :撮像装置本体
10 :撮像装置
16 :撮像素子
40 :制御部
58 :駆動部
66 :ブレセンサ
68 :温度センサ
100 :ブレ補正装置
101 :可動部
103 :カウンタープレート
105 :ベースプレート
107a~107c :ボール受け面
111 :第1のFPC固定部材
113 :第2のFPC固定部材
115a~115c :マグネット
119 :付勢部
121 :第1のFPC
123 :第2のFPC
125 :放熱部材
127a~127c :巻線コイル
131 :可動部枠
133 :電磁波シールド部材
171a~171c :ボイスコイルモータ