(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122576
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】焼結体の製造方法及び焼結体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/44 20060101AFI20240902BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20240902BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240902BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240902BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240902BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B35/50
C09K11/08 B
C09K11/80
C09K11/88
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030183
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 稜
(72)【発明者】
【氏名】武富 正蔵
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA31
4H001XA34
4H001XA39
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA65
4H001YA58
5F142AA02
5F142AA22
5F142DA03
5F142DA15
5F142DA45
5F142DA54
5F142DA72
5F142DA73
5F142DB32
5F142DB40
5F142FA28
5F142GA01
(57)【要約】
【課題】焼結体の製造方法及び焼結体を提供する。
【解決手段】Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R
1、Ce、Al、Gaの各元素を含む各酸化物粒子を含み、Scを含む酸化物粒子が含まれてもよく、仕込み組成において、R
1とCeの合計のモル比が3であり、Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、Al、Ga及びScの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと変数kの積であり、Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積である原料混合物を準備することと、原料混合物を成形して成形体を得ることと、成形体を焼成して、希土類アルミン酸塩結晶相と2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相を含む焼結体を得ること、を含む製造方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子を含み、必要に応じてScを含む酸化物粒子が含まれてもよく、
仕込み組成において、前記希土類元素R1と前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、前記Alと、前記Gaと、必要に応じて含まれてもよい前記Scとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、前記Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと前記変数kの積であり、前記Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと前記変数kの積である原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を成形して、成形体を得ることと、
前記成形体を1300℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成して、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相を含み、前記酸化アルミニウム相が2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である焼結体を得ること、を含む焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記原料混合物を、下記式(I)で表される仕込み組成となるように調製して準備する、請求項1に記載の焼結体の製造方法。
(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5k (I)
(式(I)中、R1は、Y、La、Gd及びTbのうちから選ばれる少なくとも1種であり、k、m、n、p及びqは、5.25<k<19、0.001≦m≦0.017、0.10≦n≦0.39、0.61≦p≦0.90、0≦q≦0.02、p+n+q=1を満たす。)
【請求項3】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記式(I)中のn、pは、それぞれ0.16≦n≦0.39、0.61≦p≦0.84を満たす、請求項2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、前記光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、請求項1又は2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、CIE色度図の色度座標のx値が0.340以上0.380以下の範囲内であり、y値が0.580以上0.610以下の範囲内である光を発する、請求項1又は2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、前記焼結体の表面又は断面において、前記酸化アルミニウム相を、表面又は断面の100面積%に対して、2.7面積%以上62.0面積%以下の範囲内で含む、請求項1又は2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記原料混合物を準備することにおいて、BET法で測定される、前記希土類元素R1を含む酸化物粒子の比表面積、前記Ceを含む酸化物粒子の比表面積、前記Alを含む酸化物粒子の比表面積、前記Gaを含む酸化物粒子の比表面積、及び前記Scを含む酸化物粒子の比表面積が、それぞれ1.0m2/g以上130.0m2/g以下の範囲内であり、
前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体の表面又は断面において、下記測定条件で測定された前記酸化アルミニウム相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満であり、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満である、請求項1又は2に記載の焼結体の製造方法。
測定条件
前記焼結体の表面又は断面における測定範囲に含まれる1つの前記酸化アルミニウム相又は前記希土類アルミン酸塩結晶相の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長とする。
【請求項8】
Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1と、Ceと、Alと、Gaとを含み、必要に応じてScが含まれてもよい、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相とを含む焼結体であり、
前記焼結体に含まれるGaが、焼結体の全体量に対して、13質量%以上23質量%以下の範囲内であり、
前記酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である、焼結体。
【請求項9】
前記酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、30体積%未満である、請求項8に記載の焼結体。
【請求項10】
前記焼結体が、前記希土類元素R1と前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、前記Alと、前記Gaと、必要に応じて含まれてもよい前記Scとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、前記Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと前記変数kの積であり、前記Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと前記変数kの積である組成を有する、請求項8に記載の焼結体。
【請求項11】
前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、前記光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、請求項8又は9に記載の焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結体の製造方法及び焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)と、LEDやLDから発せられた光の波長を変換する蛍光体を含む波長変換部材を備えた発光装置が知られている。このような発光装置は、例えば車載用、一般照明用、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター等の光源に用いられている。
【0003】
発光装置に備えられる波長変換部材として、例えば、特許文献1には、酸化物を含む蛍光体原料を、焼結して得られる単相セラミックス変換部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、所望の色調を有する光を発し、照明効率を維持しながら、光束及び光の取り出し効率が高い焼結体の製造方法及び焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子を含み、必要に応じてScを含む酸化物粒子が含まれてもよく、仕込み組成において、前記希土類元素R1と前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、前記Alと、前記Gaと、必要に応じて含まれてもよい前記Scとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、前記Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと前記変数kの積であり、前記Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと前記変数kの積である原料混合物を準備することと、前記原料混合物を成形して、成形体を得ることと、前記成形体を1300℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成して、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相を含み、前記酸化アルミニウム相が2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である焼結体を得ること、を含む焼結体の製造方法である。
【0007】
第2態様は、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1と、Ceと、Alと、Gaとを含み、必要に応じてScが含まれてもよい、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相とを含む焼結体であり、前記焼結体に含まれるGaが、焼結体の全体量に対して、13質量%以上23質量%以下の範囲内であり、前記酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である、焼結体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、所望の色調を有する光を発し、照明効率を維持しながら、光束及び光の取り出し効率が高い焼結体の製造方法及び焼結体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】発光装置の一例を示す概略構成を示す図である。
【
図3】蛍光体デバイスの一例の概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図3における蛍光体デバイスの一例の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る焼結体の製造方法及び焼結体を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の焼結体の製造方法及に焼結体に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において半値全幅(FWHM)は、発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピーク波長における発光強度に対して50%となる波長幅をいう。
【0011】
焼結体の製造方法は、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子を含み、必要に応じてScを含む酸化物粒子が含まれてもよく、仕込み組成において、希土類元素R1とCeの合計のモル比が3であり、Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、Alと、Gaと、必要に応じて含まれてもよいScの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと変数kの積であり、Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積である原料混合物を準備することと、原料混合物を成形して成形体を得ることと、成形体を1300℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成して、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相を含み、酸化アルミニウム相が2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である、焼結体を得ることを含む。
【0012】
図1は、焼結体の製造方法の一例を示すフローチャートである。焼結体の製造方法は、原料混合物を準備するS101こと、原料混合物を成形して成形体を得るS102こと、成形体を焼成して焼結体を得るS103ことを含む。
【0013】
原料混合物を焼成して得られた焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する。原料混合物を準備することにおいて、原料混合物は、仕込み組成において、0.001以上0.017以下の変数mと3の積で表されるモル比となるようにCeを含むため、得られる焼結体において、希土類アルミン酸塩結晶相中に賦活元素であるCeが含まれる。賦活元素であるCeを含む原料混合物を焼成して得られる焼結体は、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光の照射により、照射された光を波長変換して、発光スペクトルにおいて、500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。焼結体中の希土類アルミン酸塩結晶相は、賦活元素であるCeが含まれるため、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相が得られる。本明細書において、希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相は、希土類アルミン酸塩結晶相とも記載する。
【0014】
原料混合物を準備することにおいて、原料混合物は、仕込み組成において、0.61以上0.90以下の変数pと5.25より大きく19未満の変数kの積で表されるモル比となるようにAlを含むため、原料混合物を焼成して得られた焼結体中には、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成する。原料混合物の仕込み組成において、原料混合物に含まれるAlのうち、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlは、酸素とともに酸化アルミニウム相を形成する。
【0015】
原料物混合物を準備することにおいて、原料混合物は、仕込み組成において0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積で表されるモル比となるようにGaを含むため、仕込み組成において、希土類元素R1としてルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、希土類元素R1としてルテチウムを含む場合と同様の発光ピーク波長の光を発する希土類アルミン酸塩結晶相が得られる。原料混合物は、仕込み組成において、0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積で表されるようにGaを含むことによって、Gaを含まない場合と比べて、結晶構造が歪み、希土類元素R1にルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、励起光の照射によって、発光ピーク波長が短波長側に移動した光を発する希土類アルミン酸塩結晶相が得られる。ルテチウムの価格は、例えばイットリウムの価格と比べて高い。そのため、ルテチウムを用いることなく、ルテチウムを組成に含む希土類アルミン酸塩結晶相と同様の色調を有する光を発する希土類アルミン酸塩結晶相を含む焼結体を安価に得ることができる。原料混合物は、仕込み組成において、希土類アルミン酸塩結晶相中にルテチウムのモル比が0.3以下となるようにルテチウムを含んでもよく、ルテチウムを含む場合には、ルテチウムのモル比が0.003以上となるように含んでもよい。
【0016】
原料混合物を準備することにおいて、原料混合物は、下記式(I)で表される仕込み組成となるように調製して準備することが好ましい。
(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5k (I)
(式(I)中、R1は、Y、La、Gd及びTbのうちから選ばれる少なくとも1種であり、k、m、n、p及びqは、5.25<k<19、0.001≦m≦0.017、0.10≦n≦0.39、0.61≦p≦0.90、0≦q≦0.02、p+n+q=1を満たす。)
【0017】
原料混合物は、仕込み組成において、Ceのモル比を表す変数kと変数mのうち、変数mは、0.002以上0.016以下(0.002≦m≦0.016)でもよく、0.003以上0.015以下(0.003≦m≦0.015)でもよい。
【0018】
原料混合物は、仕込み組成において、Alのモル比を表す変数pと変数kのうち、変数pは、0.61以上0.89以下(0.61≦p≦0.89)でもよく、0.62以上0.89以下(0.62≦p≦0.89)でもよく、0.62以上0.85以下(0.62≦p≦0.85)でもよい。原料混合物は、仕込み組成において、Gaのモル比を表す変数nと変数kのうち、変数nは、0.11以上0.39以下(0.11≦n≦0.39)でもよく、0.11以上0.38以下(0.11≦n≦0.38)でもよい。原料混合物は、仕込み組成において、Scのモル比を表す変数qと変数kのうち、変数qは、0.001以上0.02以下(0.001≦q≦0.02)でもよく、0.005以上0.02以下(0.005≦q≦0.02)でもよい。原料混合物は、仕込み組成において、変数kは、5.26以上16.5以下(5.26≦k≦16.5)でもよく、5.3以上16以下(5.3≦k≦16)でもよく、15以下(k≦15)でもよく、12以下(k≦12)でもよく、10以下(k≦10)でもよい。
【0019】
原料混合物を準備することにおいて、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素R1を含む酸化物粒子は、具体的には、酸化イットリウム粒子、酸化ランタン粒子、酸化ガドリニウム粒子、酸化テルビウム粒子が挙げられる。その他の酸化物粒子としては、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子、酸化スカンジウム粒子が挙げられる。
【0020】
原料混合物を準備することにおいて、BET法で測定される、希土類元素R1を含む酸化物粒子の比表面積、Ceを含む酸化物粒子の比表面積、Alを含む酸化物粒子の比表面積、Gaを含む酸化物粒子の比表面積、及びScを含む酸化物粒子の比表面積は、それぞれ1.0m2/g以上130.0m2/g以下の範囲内であることが好ましい。原料となる、希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子、Scを含む酸化物粒子は、BET法で測定されるそれぞれの酸化物粒子の比表面積が1.0m2/g以上130.0m2/g以下の範囲内であれば、各酸化物粒子が均一に混合されやすく、各酸化物粒子が均一に分散した原料混合物を得ることができる。原料となる各酸化物粒子を均一に混合することができれば、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相が均一に分散された焼結体が得られやすくなる。希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子、及び必要に応じて含まれてもよいScを含む酸化物粒子は、BET法で測定されるそれぞれの酸化物粒子の比表面積が、125m2/g以下でもよく、120m2/g以下でもよく、100m2/g以下でもよく、10m2/g以上でもよく、20m2/g以上でもよく、30m2/g以上でもよく、40m2/g以上でもよく、50m2/g以上でもよい。
【0021】
原料混合物を準備することにおいて、BET法で測定される、希土類元素R1を含む酸化物粒子の比表面積、Ceを含む酸化物粒子の比表面積、Alを含む酸化物粒子の比表面積、Gaを含む酸化物粒子の比表面積、及びScを含む酸化物粒子の比表面積は、それぞれ1.0m2/g以上130.0m2/g以下の範囲内であると、原料混合物中で各酸化物粒子が均一に分散されているので、焼結体を得ることにおいて、焼結体の表面又は断面において、下記測定条件で測定された酸化アルミニウム相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満であり、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満である、焼結体を得ることができる。
測定条件
焼結体の表面又は断面における測定範囲に含まれる1つの酸化アルミニウム相又は希土類アルミン酸塩結晶相の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長とする。
【0022】
希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子、必要に応じて含まれてもよいScを含む酸化物粒子は、液体に混合させてスラリー状の原料混合物を得てもよい。原料となる各酸化物粒子を液体に混合することによって均一に分散し、略均一に希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相が配置された焼結体を製造することができる。原料となる各酸化物粒子を分散させる液体としては、脱イオン水、水、エタノール等が挙げられる。液体は、R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子、及び必要に応じて含まれてもよいScを含む酸化物粒子の合計量100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下の範囲内であることが好ましく、50質量部以上150質量部以下の範囲内でもよい。
【0023】
スラリー状の原料混合物には、分散性を高めるために分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、例えば有機系分散剤を用いることができ、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤等を用いることができる。原料混合物に分散剤を加える場合には、希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子、及び必要に応じて含まれてもよいScを含む酸化物粒子の合計量100質量%に対して、後の加熱脱脂又は焼成で揮発可能となる量であることが好ましく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよく、3質量%以下であってもよい。
【0024】
原料混合物を準備することにおいて、得られたスラリー状の原料混合物を撹拌することを含んでいてもよい。スラリー状の原料混合物は、20rpm以上250rpm以下の撹拌速度で2時間以上40時間以内撹拌することが好ましい。スラリー状の原料混合物を均一に混合することによって、各酸化物粒子が均一に分散され、略均一に希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相が配置された焼結体を製造することができる。
【0025】
焼結体の製造方法は、得られたスラリー状の原料混合物を乾燥させて原料混合物粉体を得るために乾燥することを含んでいてもよい。乾燥温度は、50℃以上150℃以下の範囲内であり、乾燥時間は1時間以上20時間以内であることが好ましい。原料が均一に混合されたスラリー状の原料混合物を乾燥させることで、各原料が均一に混合された原料混合物粉体を得ることができる。
【0026】
焼結体の製造方法は、原料混合物粉体を粉砕して混合する乾式粉砕混合することを含んでいてもよい。乾式粉砕混合は、例えばボールミルで5分以上1時間以内行うことが好ましい。原料混合物粉体中の粒子は、全て粉砕されている必要はなく、一部のみが粉砕され、混合されていればよい。乾式粉砕混合を行うことによって、原料混合物中の粒子の凝集が抑制される。
【0027】
焼結体の製造方法は、得られた原料混合粉体を成形して成形体を得ることを含む。原料混合物粉体を成形する方法は、プレス成形法等の知られている方法を採用することができる。プレス成形法としては、例えば金型プレス成形法、JIS Z2500:2000、No.2109で用語が定義されている、冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法等が挙げられる。その他に一軸で圧縮して成形してもよい。成形方法は、成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよく、例えば金型プレス成形をした後に、CIPを行ってもよく、ローラベンチ法により一軸で圧縮した後に、CIPを行ってもよい。CIPは、水を媒体とする冷間静水等方圧加圧法により成形体をプレスすることが好ましい。
【0028】
金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力は、好ましくは5MPa以上50MPa以下の範囲内であり、より好ましくは5MPa以上30MPa以下の範囲内である。金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力が前述の範囲内であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
【0029】
CIPにおける圧力は、好ましくは50MPa以上200MPa以下の範囲内であり、より好ましくは50MPa以上180MPa以下の範囲内である。CIPにおける圧力が50MPa以上200MPa以下の範囲内であると、焼成により相対密度が90%以上であり、空隙率が1%以上10%以下の範囲内である希土類アルミン酸塩焼結体を得ることが可能な成形体を形成することができる。
【0030】
焼結体の製造方法は、成形された成形体を加熱して、分散剤等を除去し脱脂することを含んでいてもよい。加熱して脱脂する場合は、大気及び窒素雰囲気中で、500℃以上1000℃以下の範囲内で加熱することを含むことが好ましい。大気及び窒素雰囲気中で500℃以上1000℃以下の範囲内で加熱することによって、成形体中に含まれる炭素の量が減り、炭素が含まれることによる光束の低下を抑制することができる。
【0031】
焼結体の製造方法は、得られた成形体を1300℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成して焼結体を得ることを含む。成形体の焼成温度は、1300℃以上1800℃以下の温度範囲で行い、好ましくは1400℃以上1790℃以下の範囲内で行い、より好ましくは1450℃以上1780℃以下の範囲内で行う。焼成温度が1300℃以上であれば、均一に混合された原料混合物中の各酸化物粒子が反応して、希土類アルミン酸塩結晶相及び酸化アルミニウム相が略均一に分散された焼結体を得ることができる。
【0032】
成形体の焼成は、酸素含有雰囲気のもとで行うことが好ましい。雰囲気中の酸素の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。成形体は、大気(酸素含有量が20体積%以上)雰囲気のもとで焼成してもよい。雰囲気中の酸素の含有量が1体積%未満の雰囲気中では、酸化物の表面が溶融し難く、酸化物同士が溶融して希土類アルミン酸塩の組成を有する結晶構造が生成され難く、空隙を有する焼結体が得られ難い場合がある。雰囲気中の酸素量の測定は、例えば焼成装置に流入する酸素量によって測定してもよく、20℃の温度、大気圧(101.325kPa)の圧力で測定してもよい。
【0033】
焼結体の製造方法は、得られた焼結体を、還元雰囲気でアニール処理することを含んでいてもよい。得られた焼結体を還元雰囲気でアニール処理することによって、焼結体中の結晶相に含まれる酸化された賦活元素であるセリウムが還元されて、各結晶相における波長変換効率の低下と発光効率の低下を抑制することができる。還元雰囲気は、へリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種の希ガス又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含む雰囲気であればよく、雰囲気中に少なくともアルゴン又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含むことがより好ましい。アニール処理は、加工後に行ってもよい。
【0034】
アニール処理の温度は、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1600℃以下の範囲内であることが好ましい。アニール処理の温度は、より好ましくは1100℃以上1400℃以下の範囲内である。アニール処理の温度が、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1600℃以下の範囲内であれば、焼結体中の空隙を低下させることなく、焼結体中の結晶相に含まれる酸化された賦活元素であるセリウムを還元し、波長変換の効率の低下と発光効率の低下を抑制することができる。
【0035】
焼結体の製造方法は、得られた焼結体を、所望の大きさ又は厚さに切断する加工することを含んでいてもよい。切断する方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソーを用いて切断する方法が挙げられる。
【0036】
焼結体の製造方法は、得られた焼結体を面処理することを含んでいてもよい。面処理は、得られた焼結体又は焼結体を切断して得た切断物の表面を面処理する。この面処理により、焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相による発光を好適な状態とすることができ、焼結体を所望の形状、大きさ又は厚さにすることができる。面処理は、焼結体を所望の大きさ若しくは厚さに切断して加工する前に行ってもよく、加工後に行ってもよい。面処理する方法としては、例えば、サンドブラストによる方法、機械研削による方法、ダイシングによる方法、化学的エッチングによる方法等が挙げられる。
【0037】
得られる焼結体が、仕込み組成おいて、希土類元素R1とCeの合計のモル比が3であり、Ceのモル比0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、Alと、Gaと、必要に応じて含まれてもよいScとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと変数kの積であり、Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積となるように、希土類元素R1、Ce、Al、Gaが原料混合物に含まれているか否かは、得られる焼結体をアルカリ溶液に溶融後、塩酸溶液で加熱溶解させて、塩酸溶液中に溶解した焼結体中の希土類元素R1、Ce、Al、Ga、及び必要に応じて含まれてもよいScの元素の量を、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(例えばOptima8300、Perkin Elmer社製)を用いて組成分析を行うことにより確認することができる。アルカリ溶液は、例えばアンモニア溶液が挙げられる。アルカリ溶液中の例えばアンモニアの濃度、塩酸溶液中の塩酸の濃度は、焼結体が溶融及び/又は溶解する量に適宜調整することができる。焼結体を塩酸溶液に溶解させる温度は、例えば40℃以上100℃以下の範囲内の温度であればよい。
【0038】
得られる焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相を含み、酸化アルミニウム相が2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である。原料混合物は、仕込み組成において、0.61以上0.90以下の変数pと5.25より大きく19未満の変数kの積で表されるモル比となるようにAlを含むため、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlによって、酸素とともに2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相が形成される。原料混合物の仕込み組成において、Alのモル比を表す変数pと変数kにおいて、変数kが5.25より大きく19未満であるAlを含むと、Alによって焼結体中に2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相が形成される。原料混合物の仕込み組成において、イットリウムアルミニウムガーネット構造を形成する、Al及びGa及び必要に応じて含まれてもよいScの合計のモル比が5よりも大きくなると、焼結体に酸化アルミニウム相が含まれる。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相は、2.8体積%以上でもよく、3.0体積%以上でもよく、56.0体積%以下でもよく、50体積%以下でもよく、40体積%以下でもよく、30体積%以下でもよく、25体積%以下でもよい。焼結体は、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相を含むことによって、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光が照射された場合に、照射された光が焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率を高くすることができる。
【0039】
得られる焼結体の酸化アルミニウム相は、原料混合物に含まれるAlのイットリウムアルミニウムガーネット構造を構成するモル比の余剰分のAlのモル比から算出することができる。イットリウムアルミニウムガーネット構造を形成する組成において、Alのモル比は5であるので、AlとGaと必要に応じて含まれてもよいScの合計のモル比が5を超える場合は、5を超えた余剰分の数値が、余剰分のAlの数値となり、余剰分のAlが希土類アルミン酸塩結晶相から分離した酸化アルミニウム相となる。余剰のAlのモル比から、Alの原子量及び密度に基づき、焼結体の全体100体積%としたときの余剰のAlによって形成される酸化アルミニウム相の体積割合が算出される。焼結体の全体の体積は、焼結体を構成する原料混合物に含まれる希土類元素R1、Ce、Al、Ga、及び必要に応じて含まれてもよいScの各元素のモル比、各元素の原子量、並びに、希土類アルミン酸塩結晶相及び酸化アルミニウム相の密度から算出することができる。
【0040】
得られる焼結体中の希土類元素R1、Ce、Al、Ga、及び必要に応じて含まれもよいScの、例えば導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(例えばOptima8300、Perkin Elmer社製)を用いた各元素の分析値から、焼結体の組成を導きだし、組成を構成する各元素のモル比、各元素の原子量、並びに、希土類アルミン酸塩結晶相及び酸化アルミニウム相の密度から、焼結体の全体を100体積%としたときの、酸化アルミニウム相の体積割合を算出することもできる。
【0041】
焼結体は、焼結体の表面又は断面において、酸化アルミニウム相を、表面又は断面の100面積%に対して、2.7面積%以上62.0面積%以下の範囲内で含むことが好ましく、2.8面積%以上61.0面積%以下でもよく、2.9面積%以上60.0面積%以下でもよく、3.0面積%以上60.0面積%以下でもよい。焼結体は、焼結体の表面又は断面において、2.7面積%以上62.0面積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相を含むことによって、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光が照射された場合に、照射された光が焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0042】
焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相は、賦活元素であるCeを含み、光の照射により、光を波長変換して、特定の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する希土類アルミン酸塩蛍光体結晶相となる。得られる焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相により、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光の照射により、照射された光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。焼結体は、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光の照射により、光を波長変換して、発光スペクトルにおいて、500nm以上640nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を発してもよく、510nm以上630nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発してもよく、510nm以上620nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発してもよい。
【0043】
焼結体は、焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相によって、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光の照射によりCIE(国際照明委員会)色度図の色度座標のx値0.340以上0.380以下の範囲内であり、y値が0.580以上0.610以下の範囲内である光を発することが好ましい。焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相は、原料混合物は、仕込み組成において0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積で表されるモル比となるようにGaを含むため、仕込み組成において、希土類元素R1としてルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、希土類元素R1としてルテチウムを含む場合と同様の色調を有する光を発する。焼結体は、ルテチウムを用いることなく、ルテチウムを組成に含む希土類アルミン酸塩結晶相と同様の色調を有する光を発する希土類アルミン酸塩結晶相を含む焼結体を安価に得ることができる。焼結体は、焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相によって、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光の照射によりCIE色度図の色度座標のx値が0.341以上0.368以下の範囲内であり、y値が0.591以上0.608以下の範囲内である光を発してもよい。
【0044】
焼結体は、焼結体の表面又は断面において、前述及び後述の測定条件によって測定された酸化アルミニウム相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満であり、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満である。焼結体は、焼結体の表面又は断面において、酸化アルミニウム相の絶対最大長が0.05μm以上9.0μm以下の範囲内でもよく、0.1μm以上8.0μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上6.0μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上5.0μm以下の範囲内でもよい。焼結体は、焼結体の表面又は断面において、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長が0.05μm以上9.0μm以下の範囲内でもよく、0.1μm以上8.0μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上6.0μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上5.0μm以下の範囲内でもよい。酸化アルミニウム相と希土類アルミン酸塩結晶相が均一に分散して混在するため、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmである光が照射された場合に、照射された光が焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱されやすくなり、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。焼結体は、焼結体の表面又は断面において、希土類アルミン酸塩結晶相が凝集した結晶凝集粒が存在せず、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相が均一に分散して混在していることが好ましい。
【0045】
測定条件
焼結体の表面又は断面における測定範囲に含まれる1つの酸化アルミニウム相又は希土類アルミン酸塩結晶相の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長とする。
より具体的には、焼結体の表面又は断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により撮影して得られたSEM画像において、面積が3024μm2である領域を測定範囲とし、この測定範囲における1つの希土類アルミン酸塩結晶相又は酸化アルミニウム相の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長として測定することもできる。
【0046】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長の算術平均値(以下、「平均絶対最大長」ともいう)が、1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であることが好ましく、1.1μm以上3.7μm以下の範囲内でもよく、1.2μm以上3.5μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長が1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、照射された光が焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0047】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長の最大値が、1.5μm以上7.5μm以下の範囲内であることが好ましく、1.7μm以上7.2μm以下の範囲内でもよく、2.0μm以上7.0μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長の最大値が1.5μm以上7.5μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0048】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長の最小値が、0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であることが好ましく、0.2μm以上1.7μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上1.5μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長の最小値が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0049】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長の標準偏差が、0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であることが好ましく、0.12μm以上0.87μm以下の範囲内でもよく、0.15μm以上0.85μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長の標準偏差が0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であれば、平均絶対最大長のばらつきが小さく、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0050】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる酸化アルミニウム相の絶対最大長の算術平均値(以下、「平均絶対最大長」ともいう)が、0.1μm以上2.5μm以下の範囲内であることが好ましく、0.2μm以上2.3μm以下の範囲内でもよく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相の平均絶対最大長が0.1μm以上2.5μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、酸化アルミニウム相で光が散乱されやすく、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0051】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる酸化アルミニウム相の絶対最大長の最大値が、1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であることが好ましく、1.2μm以上3.8μm以下の範囲内でもよく、1.5μm以上3.5μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の最大値が1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、酸化アルミニウム相で光が散乱されやすく、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0052】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる酸化アルミニウム相の絶対最大長の最小値が、0.1μm以上1.5μm以下の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上1.3μm以下の範囲内でもよく、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の最小値が0.1μm以上1.5μm以下の範囲内であれば、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、酸化アルミニウム相で光が散乱されやすく、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0053】
焼結体は、面積が3024μm2の測定範囲に含まれる酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の標準偏差が、0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であることが好ましく、0.12μm以上0.85μm以下の範囲内でもよく、0.15μm以上0.80μm以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の標準偏差が0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であれば、平均絶対最大長のばらつきが小さく、例えばエネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光が照射された場合に、酸化アルミニウム相で光が散乱されやすく、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0054】
焼結体は、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1と、Ceと、Alと、Gaとを含み、必要に応じてScが含まれてもよい、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相とを含む焼結体であり、焼結体に含まれるGaが、焼結体の全体量に対して、13質量%以上23質量%以下の範囲内であり、酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である。焼結体は、前述の製造方法によって製造された焼結体であることが好ましい。焼結体が、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相を含み、酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%の範囲内であることによって、焼結体に照射された光を酸化アルミニウム相によって焼結体に照射された光が散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光が吸収された波長変換しやすくなる。焼結体が、焼結体の全体量に対して、Gaを13質量%以上23質量%以下の範囲内で含むことによって、ルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、光が照射された場合に、ルテチウムを含む場合と同様の色調の光を発することができる。焼結体が光を照射された場合の色調を考慮して、焼結体に含まれるGaは、焼結体の全体量に対して、13質量%以上23質量%以下の範囲内であることが好ましく、14質量%以上22質量%以下の範囲内であることがより好ましく、15質量%以上21質量%以下の範囲内であることさらに好ましく、17質量%以上21質量%以下の範囲内でもよい。
【0055】
焼結体に含まれるAlは、焼結体中にイットリウムアルミニウムガーネット構造の結晶構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相と、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内の酸化アルミニウム相が含まれる量であればよく、焼結体の全体量に対して11質量%以上50質量%以下の範囲内でもよく、12質量%以上48質量%以下の範囲内でもよく、12質量%以上45質量%以下の範囲内でもよい。
【0056】
焼結体に含まれるGaの量は、焼結体を構成する原料混合物中のGa及び焼結体を構成する各元素のモル比が分かる場合には、焼結体を構成する各元素の原子量とモル比、及び、原料混合物中に含まれるGaの原子量とモル比から算出することができる。
焼結体に含まれる希土類元素R1、Ce、Al、Ga、及び必要に応じて含まれもよいScの各元素のモル比が、例えば導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(例えばOptima8300、Perkin Elmer社製)を用いた元素分析値からわかる場合は、分析値の各元素のモル比と、各元素の原子量から、焼結体に含まれるGaの量を算出することができる。
【0057】
焼結体は、酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である。焼結体が、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相を含み、酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%の範囲内であることによって、焼結体に照射された光を酸化アルミニウム相によって焼結体に照射された光が散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光が吸収されて波長変換しやすくなる。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相は、焼結体の全体量100体積%に対して、2.8体積%以上56.0体積%以下の範囲内でもよい。焼結体に含まれる酸化アルミニウム相は、焼結体の全体量100体積%に対して、30体積%未満含まれてもよく、2.9体積%以上30体積%未満でもよく、3.0体積%以上29.0体積%以下の範囲内でもよい。
【0058】
焼結体は、Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1とCeの合計のモル比が3であり、Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、Alと、Gaと、必要に応じて含まれてもよいScとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと変数kの積であり、Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積である組成を有することが好ましい。焼結体は、前述の製造方法によって得られた焼結体あることが好ましい。
焼結体は、0.61以上0.90以下の変数pと5.25より大きく19未満の変数kの積で表されるモル比となるようにAlを含むため、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相と、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlと酸素によって形成された酸化アルミニウム相を含む。
また、焼結体は、0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積で表されるモル比となるようにGaを含むため、ルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、ルテチウムを含む場合と同様の発光ピーク波長の光を発する希土類アルミン酸塩結晶相が得られる。
焼結体を構成する各元素を含む組成は、焼結体をアルカリ溶液に溶融後、塩酸溶液で加熱溶解させて、塩酸溶液中に溶解した焼結体中の各元素の量を、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(例えばOptima8300、Perkin Elmer社製)を用いて組成分析を行うことにより確認することができる。
【0059】
焼結体は、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、この光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発することが好ましい。
焼結体は、Gaを含むため、希土類元素R1としてルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、希土類元素R1としてルテチウムを含む場合と同様の発光ピーク波長の光を発する希土類アルミン酸塩結晶相が得られる。焼結体は、Gaを含むことによって、Gaを含まない場合と比べて、結晶構造が歪み、希土類元素R1にルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、励起光の照射によって、発光ピーク波長が短波長側に移動した光を発する希土類アルミン酸塩結晶相が焼結体に含まれる。焼結体は、前述の製造方法によって得られた焼結体であることが好ましい。
【0060】
希土類アルミン酸塩結晶相は、下記式(II)で表される組成を有してもよい。
(R1
1-m1Cem1)3(Alp1Gan1Scq1)k1O4.5+1.5k1 (II)
(式(II)中、R1は、Y、La、Gd及びTbのうちから選ばれる少なくとも1種であり、k1、m1、n1、p1及びq1は、4.75≦k1≦5.5、0.001≦m1≦0.017、0.25≦n1≦0.55、0.45≦p1≦0.75、0≦q1≦0.02、p1+n1+q1=1を満たす。)
【0061】
希土類アルミン酸塩結晶相は、下記式(III)で表される組成を有してもよい。
(R1
1-m1―rLurCem1)3(Alp1Gan1Scq1)k1O4.5+1.5k1 (III)
(式(III)中、R1は、Y、La、Gd及びTbのうちから選ばれる少なくとも1種であり、r、k1、m1、n1、p1及びq1は、0≦r≦0.1、4.75≦k1≦5.5、0.001≦m1≦0.017、0.25≦n1≦0.55、0.45≦p1≦0.75、0≦q1≦0.02、p1+n1+q1=1を満たす。rは、0.001≦r≦0.1でもよく、0.002≦r≦0.08でもよく、0.003≦r≦0.05でもよい。)
【0062】
焼結体は、相対密度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがよりさらに好ましく、100%でもよく、99%以下でもよい。焼結体は、その相対密度が90%以上100%以下の範囲内であると、照射された光を焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱させやすくなり、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率が高くすることができる。
【0063】
焼結体の相対密度は、焼結体の見掛け密度及び焼結体の真密度から下記式(1)により算出することができる。
【0064】
【0065】
焼結体の見掛け密度は、焼結体の質量を焼結体の体積で除した値であり、下記式(2)により算出することができる。焼結体の真密度は、下記式(3)により、希土類アルミン酸塩結晶相の真密度と、酸化アルミニウム相の真密度を用いることができる。焼結体の空隙率は、100%から焼結体の相対密度を差し引いた残部であり、下記式(4)により算出することができる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
焼結体は、励起光が入射される入射面(第1の主面)と、波長変化された光が出射する出射面(第1の主面)とが同一の面である反射型の波長変換部材として用いることができる。焼結体を反射型の波長変換部材として用いる場合には、焼結体の厚さには制限されず、焼結体が板状体である場合には、光の取り出し効率をよくするために、板厚は、90μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましく、100μm以上240μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
焼結体は、形状が板状であり、励起光が入射される入射面と光が出射される出射面が同一の面である場合に、入射光の光径を100%としたときに、出射光の光径が140%以下であることが好ましく、135%以下であることより好ましい。入射光の光径に対して、入射面と同一面から出射される出射光の光径が、入射光の光径100%に対して、140%以下であれば、後述する照明効率を維持して、出射光の光の広がりが抑制し、焼結体から出射された光を目的の位置に集光することができる。焼結体の一つの面に入射される入射光の光径は、光源から出射された光の光径である。入射光の光径は、例えば色彩輝度計によって測定することができる。入射光の光径は、好ましくは0.1mm以上5mm以下の範囲内であり、より好ましくは0.5mm以上4mm以下の範囲内である。焼結体の入射光が入射された面と同一の面から出射される出射光の光径は、焼結体から出射される光の発光輝度を、色彩輝度計によって測定し、得られた発光スペクトルにおいて最大輝度を示す位置を中心(測定中心)とし、発光スペクトルにおいて最大輝度の100分の30となる輝度(以下、「30/100輝度」と記載する場合がある。)となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)を絶対値として測定し、発光スペクトルにおける最大輝度から最大輝度の30/100輝度となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)の絶対値の和を出射光の光径として測定することができる。
【0071】
得られる焼結体は、波長変換部材として、光源と組み合わせることによって、プロジェクター用光源等の発光装置に用いることができる。
【0072】
前述の焼結体を波長変換部材として用いた発光装置について、説明する。発光装置は、焼結体と、励起光源と、を備える。
【0073】
励起光源は、LEDチップ又はLDチップからなる半導体発光素子であることが好ましい。半導体発光素子は、窒化物系半導体を用いることができる。励起光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。焼結体は、半導体発光素子から発せられた光の波長を変換し、波長変換された混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。半導体発光素子は、エネルギー密度が34.0W/mm2の光を発するものであることが好ましい。半導体発光素子は、例えば350nm以上500nm以下に発光ピーク波長を有する光を発するものであることが好ましい。焼結体は、半導体発光素子からの励起光を波長変換して、500nm以上650nm未満に発光ピーク波長を有する出射光を発することが好ましい。
【0074】
発光素子は、レーザーダイオードであることがより好ましい。励起光源であるレーザーダイオードから出射された励起光を、波長変換部材に入射させ、波長変換部材のセラミックス複合体に含まれる蛍光体によって波長が変換された光を集光させて、レンズアレイ、偏光変換素子、色分離光学系等の複数の光学系によって赤色光、緑色光、及び青色光に分離して、画像情報に応じて変調し、カラーの画像光を形成してもよい。励起光源としてレーザーダイオードから出射された励起光は、ダイクロイックミラー又はコリメート光学系等の光学系を通じて波長変換部材に入射させてもよい。
【0075】
図2は、発光装置100の一例を示す構成を示す概略図である。
図2中の矢印は、光の光路を模式的に表した。発光装置100は、発光素子である励起光源101と、コリメートレンズ102と、3つのコンデンサレンズ103、105及び106と、ダイクロイックミラー104と、ロッドインテグレータ107と、波長変換部材を含む波長変換デバイス120とを含むことが好ましい。励起光源101は、レーザーダイオードを用いることが好ましい。励起光源101は、複数のレーザーダイオードを用いてもよく、複数のレーザーダイオードをアレイ状又はマトリクス状に配置したものであってもよい。コリメートレンズ102は、複数のコリメートレンズがアレイ状に配置されたコリメートレンズアレイであってもよい。励起光源101から出射されたレーザー光は、コリメートレンズ102によって略平行光となり、コンデンサレンズ103によって集光され、ダイクロイックミラー104を通って、さらにコンデンサレンズ105によって集光される。コンデンサレンズ105によって集光されたレーザー光は、波長変換部材110と好ましくは光反射板122と、を含む波長変換デバイス120によって波長変換され、所望の波長範囲に発光ピーク波長を有する光が、波長変換デバイス120の波長変換部材110側から出射される。波長変換デバイス120から出射された波長変換された光は、コンデンサレンズ106によって集光され、ロッドインテグレータ107に入射され、被照明領域における照度分布の均一性を高めた光が発光装置100から出射される。
【0076】
図3は、波長変換デバイス120の一例の平面の構成を示す概略図である。なお、
図4では、発光装置100を構成する部材の一つとして、波長変換デバイス120を側面図で示している。波長変換デバイス120は、少なくとも波長変換部材110を備える。波長変換デバイス120は、円板状の波長変換部材110を備え、波長変換部材110を回転させるための回転機構121を備えていてもよい。回転機構121は、モータ等の駆動機構と連結され、波長変換部材110を回転させることによって放熱することができる。
【0077】
図4は、
図2で発光装置100を構成する部材の一つとして側面図で示した波長変換デバイス120の詳細について、波長変換デバイス120の一例の側面の構成を示す概略図である。波長変換デバイス120は、波長変換部材110と、波長変換部材110の光の入射面の反対側に光反射板122を備えてもよい。なお、波長変換部材110で十分に所望の光を出射させることができる場合には、光反射板122を省略することもできる。光反射板122は、光を反射させる部材としてだけでなく、波長変換部材110で発生した熱を伝達して外部に放熱する放熱部材として用いてもよい。
【0078】
本開示に係る実施形態は、以下の焼結体の製造方法及び焼結体を含む。
【0079】
[項1]Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1を含む酸化物粒子、Ceを含む酸化物粒子、Alを含む酸化物粒子、Gaを含む酸化物粒子を含み、必要に応じてScを含む酸化物粒子が含まれてもよく、
仕込み組成において、前記希土類元素R1と前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、前記Alと、前記Gaと、必要に応じて含まれてもよい前記Scとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、前記Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと前記変数kの積であり、前記Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと前記変数kの積である原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を成形して、成形体を得ることと、
前記成形体を1300℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成して、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相を含み、前記酸化アルミニウム相が2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である焼結体を得ること、を含む焼結体の製造方法。
[項2]前記原料混合物を準備することにおいて、前記原料混合物を、下記式(I)で表される仕込み組成となるように調製して準備する、項1に記載の焼結体の製造方法。
(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5k (I)
(式(I)中、R1は、Y、La、Gd及びTbのうちから選ばれる少なくとも1種であり、k、m、n、p及びqは、5.25<k<19、0.001≦m≦0.017、0.10≦n≦0.39、0.61≦p≦0.90、0≦q≦0.02、p+n+q=1を満たす。)
[項3]前記原料混合物を準備することにおいて、前記式(I)中のn、pは、それぞれ0.16≦n≦0.39、0.61≦p≦0.84を満たす、項2に記載の焼結体の製造方法。
[項4]前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、前記光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、項1から3のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
[項5]前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、CIE色度図の色度座標のx値が0.340以上0.380以下の範囲内であり、y値が0.580以上0.610以下の範囲内である光を発する、項1から4のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
[項6]前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体が、前記焼結体の表面又は断面において、前記酸化アルミニウム相を、表面又は断面の100面積%に対して、2.7面積%以上62.0面積%以下の範囲内で含む、項1から5のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
[項7]前記原料混合物を準備することにおいて、BET法で測定される、前記希土類元素R1を含む酸化物粒子の比表面積、前記Ceを含む酸化物粒子の比表面積、前記Alを含む酸化物粒子の比表面積、前記Gaを含む酸化物粒子の比表面積、及び前記Scを含む酸化物粒子の比表面積が、それぞれ1.0m2/g以上130.0m2/g以下の範囲内であり、
前記焼結体を得ることにおいて、前記焼結体の表面又は断面において、下記測定条件で測定された前記酸化アルミニウム相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満であり、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長が0.01μm以上10.0μm未満である、項1から6のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
測定条件
前記焼結体の表面又は断面における測定範囲に含まれる1つの前記酸化アルミニウム相又は前記希土類アルミン酸塩結晶相の輪郭の最も離れている2点の距離を絶対最大長とする。
[項8]Y、La、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の希土類元素R1と、Ceと、Alと、Gaとを含み、必要に応じてScが含まれてもよい、希土類アルミン酸塩結晶相と、酸化アルミニウム相とを含む焼結体であり、
前記焼結体に含まれるGaが、焼結体の全体量に対して、13質量%以上23質量%以下の範囲内であり、
前記酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、2.7体積%以上57.0体積%以下の範囲内である、焼結体。
[項9]前記酸化アルミニウム相が、焼結体の全体量100体積%に対して、30体積%未満である、項8に記載の焼結体。
[項10]前記焼結体が、前記希土類元素R1と前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が0.001以上0.017以下の変数mと3の積であり、前記Alと、前記Gaと、必要に応じて含まれてもよい前記Scとの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kであり、前記Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと前記変数kの積であり、前記Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと前記変数kの積である組成を有する、項8又は9に記載の焼結体。
[項11]前記焼結体が、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmの光の照射により、前記光を波長変換して、発光スペクトルにおいて500nm以上650nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、項8から10のいずれか1項に記載の焼結体。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
酸化イットリウムの純度が98質量%であり、比表面積が20m2/gである酸化イットリウム粒子を用いる。
【0082】
酸化セリウムの純度が92質量%であり、比表面積が125m2/gである酸化セリウム粒子を用いる。
【0083】
酸化アルミニウムの純度が99質量%であり、比表面積が6m2/gである酸化アルミニウム粒子を用いる。
【0084】
酸化ガリウムの純度が99質量%であり、比表面積が2m2/gである酸化ガリウム粒子を用いる。
【0085】
酸化ルテチウムの純度が99質量%であり、比表面積が12m2/gである酸化ルテチウム粒子を用いる。
【0086】
比表面積
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子、酸化ルテチウム粒子について、比表面積測定装置(株式会社マウンテック製)を用いてBET法により比表面積を測定した。
【0087】
実施例1
原料混合物の準備
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるY、Ce、Al、Gaの各元素のモル比が仕込み組成で、式(I)で表される(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5kの各変数m、p、n及びkが表1に表される数値となるように計量した。式(I)において、希土類元素R1は、イットリウム(Y)である。式(I)中、q=0である。酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子及び酸化ガリウム粒子の合計量100質量部に対して、分散剤(エスリーム―2093I、日油株式会社)を3質量部加え、さらにエタノールを50質量部加えて原料混合物を準備した。
原料混合物を湿式ボールミルで15時間撹拌し、酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、及び酸化ガリウム粒子を均一に混合させたスラリー状の原料混合物を準備した。
得られたスラリー状の原料混合物を、大気雰囲気において、130℃で10時間乾燥させて粉体状の原料混合物を得た。
【0088】
原料混合物の成形
得られた粉体状の原料混合物を金型に充填し、5MPa(51kgf/cm2)の圧力で直径26mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を、包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方圧加圧装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて176MPaでCIPを行い、成形体を得た。
得られた成形体を大気雰囲気、700℃で加熱脱脂した。
【0089】
成形体の焼成
得られた成形体を焼成炉(丸祥電気株式会社製)により焼成を行い、焼結体を得た。焼成の条件は、大気雰囲気(101.325kPa、酸素濃度:約20体積%)であり、温度が1560℃であり、焼成時間が6時間であった。
得られた焼結体をワイヤーソーで適切な形状及び大きさに切断した後、その切断物の表面を平面研削機で研磨した。そして、最終的に板厚が200μmである実施例1の焼結体を得た。
【0090】
実施例2
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるY、Ce、Al、Gaの各元素のモル比が仕込み組成で、式(I)で表される(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5kの各変数m、p、n及びkが表1に表される数値となるように計量したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の焼結体を得た。
【0091】
実施例3、4、及び8
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるY、Ce、Al、Gaの各元素のモル比が仕込み組成で、式(I)で表される(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5kの各変数m、p、n及びkが表1に表される数値となるように計量したこと及び、成形体の焼成温度が1570℃であること以外は、実施例1と同様にして、実施例3、4及び8の各焼結体を得た。
【0092】
実施例5から7、9及び10
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるY、Ce、Al、Gaの各元素のモル比が仕込み組成で、式(I)で表される(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5kの各変数m、p、n及びkが表1に表される数値となるように計量したこと及び、成形体の焼成温度が1600℃であること以外は、実施例1と同様にして、実施例5から7、9及び10の各焼結体を得た。
【0093】
比較例1
酸化ルテチウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるLu、Ce、Alの各元素のモル比が仕込み組成で、Lu2.987Ce0.013Al5O12で表される組成となるように、各酸化物を計量したこと及び成形体を窒素雰囲気で加熱脱脂したこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0094】
比較例2及び3
酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ガリウム粒子を用いて、各酸化物粒子に含まれるY、Ce、Al、Gaの各元素のモル比が仕込み組成で、式(I)で表される(R1
1-mCem)3(AlpGanScq)kO4.5+1.5kにおいて、変数pが0.61未満、及び、変数nが0.39を超えるように表1に表される数値となるように計量したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び2の各焼結体を得た。
【0095】
各焼結体について、以下の評価を行った。結果は表2から3に記載した。表2から3中、「-」の記号は、該当する項目又は数値がないことを表す。
【0096】
相対密度
実施例及び比較例の各焼結体の相対密度を測定した。各焼結体の相対密度は上述した式(1)により算出した。焼結体の見掛け密度は、上述した式(2)より算出した。焼結体の真密度は、上述の式(3)より算出した。希土類アルミン酸塩結晶相の真密度は、希土類アルミン酸塩結晶相の組成によって変化するため、仕込み組成において希土類アルミン酸塩結晶相の組成1モルにおいて、Gaの目的とするモル比が1.5モル、2.0モル、2.5モルの場合に分けて、目的とする希土類アルミン酸塩結晶相のそれぞれの組成式から求められる真密度の数値を用いた。希土類アルミン酸塩結晶相の仕込み組成において、希土類アルミン酸塩結晶相の組成1モルにおいて、Gaの目的とする組成が1.5モルである、実施例8は、組成式Y3(Al3.5Ga1.5)O12で表される希土類アルミン酸塩結晶相として真密度は4.83g/cm3とした。希土類アルミン酸塩結晶相の仕込み組成において、希土類アルミン酸塩結晶相の組成1モルにおいて、Gaの目的とする組成が2.0モルである、実施例1から7及び比較例2から3は、組成式Y3(Al3.0Ga2.0)O12で表される希土類アルミン酸塩結晶相として真密度は4.93g/cm3とした。希土類アルミン酸塩結晶相の仕込み組成において、希土類アルミン酸塩結晶相の組成1モルにおいて、Gaの目的とする組成が2.5モルである、実施例9及び10は、組成式Y3(Al2.5Ga2.5)O12で表される希土類アルミン酸塩結晶相として真密度は5.02g/cm3とした。酸化アルミニウム相の真密度は3.98g/cm3とした。比較例1は、組成Lu3Al5O12で表される希土類アルミン酸塩結晶相として真密度は6.69g/cm3とした。
【0097】
発光スペクトル(分光分布)、発光ピーク波長
実施例及び比較例の各焼結体に、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmのレーザー光をレーザーダイオードから照射し、各焼結体から発せられる光の発光スペクトル(分光分布)を、分光光度計を用いて測定した。得られた発光スペクトルから各焼結体から発せられる光の発光ピーク波長を求めた。
【0098】
色度座標(x値、y値)
各実施例及び比較例の各焼結体に、エネルギー密度が34.0W/mm2であり、発光ピーク波長が450nmのレーザー光をレーザーダイオードから照射し、各焼結体から発せられる光の発光スペクトルを、分光光度計を用いて測定し、測定した発光スペクトルから、発光色の色度座標(x値、y値)を求めた。
【0099】
相対光束(%)
実施例及び比較例の各焼結体に対して、レーザーダイオードからエネルギー密度が34.0W/mm2(発光ピーク波長が450nm)のレーザー光を入射光の光径が1.0mmとなるようにして照射して焼結体に入射し、レーザー光を入射した面と同一の面から出射された光の放射束を、積分球で測定した。比較例1に係る焼結体の放射束を100%とし、比較例1の放射束に対する、実施例及び比較例に係る各焼結体の放射束を相対光束(%)として表した。
【0100】
相対光径比(%)
各焼結体に対して、レーザーダイオードから発光ピーク波長が450nmのレーザー光を入射光の光径が、レーザー光が入射された第1の主面上で0.6mmとなるように照射し、レーザー光の光径を焼結体の第1の主面に入射される入射光の光径とした。レーザー光が入射された第1の主面と同一の面から出射された出射光の光径は、各焼結体から出射された光の発光輝度を色彩輝度計で測定し、得られた発光スペクトルにおいて最大輝度を示す位置を中心(測定中心)とし、発光スペクトルにおいて最大輝度の100分の30となる輝度(30/100輝度)となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)を絶対値として測定し、最大輝度から最大輝度の30/100輝度となる測定中心から2か所の位置の距離(mm)の絶対値の和を第1の主面から出射された出射光の光径として測定した。各焼結体の第1の主面に入射される入射光100に対する同一面である第1の主面から出射された出射光の光径の光径比(出射光の光径/入射光の光径)を求めた。比較例1に係る焼結体の光径比を100%として、実施例及び比較例の各焼結体の相対光径比として表した。
【0101】
照明効率(%)
光径比が小さいほど、狭いエリアで発光していることになる(点光源)。各焼結体を波長変換部材として用いた光学系を1次光学系とし、他の2次光学系が存在する場合に、1次光学系から出射した光が2次光学系に入りやすくなり照明効率が高くなる。一般的な実際の2次光学系(例えばロッドインテグレータ)を用いて測定することができる照明効率(照明効率=照明出力×100/蛍光出力)は、上述の相対光径比の値を用いて、以下の式(5)で近似することができる。
【0102】
【0103】
相対光の取り出し効率(%)
各焼結体に対して、測定した相対光束と照明効率の積を光の取り出し効率として算出し、比較例1に係る焼結体の光の取り出し効率を100%として、実施例及び比較例に係る各焼結体の光取り出し効率を、相対光取り出し効率(%)として表した。
【0104】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、各焼結体の表面のSEM画像を得た。なお、図に示したSEM画像は、500倍の倍率で得た画像であり、最大長の測定に用いたSEM画像は、解析の精度を考慮して、2000倍の倍率で得た画像とした。
図5は、実施例1に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図6は、実施例3に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図7は、実施例5に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図8は、実施例8に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図9は、比較例2に係る焼結体の表面のSEM写真である。
【0105】
酸化アルミニウム相の面積割合
実施例及び比較例の各焼結体の表面又は断面をSEMにより撮影して得られたSEM画像において、Winroof2018画像解析ソフトウェア装置(三谷商事株式会社製)を用いて酸化アルミニウム相の合計の面積を測定し、焼結体の表面又は断面における測定領域を100面積%とした場合の面積割合を算出した。焼結体の表面又は断面における測定領域は、希土類アルミン酸塩結晶相と酸化アルミニウム相の合計100面積%と同じ意味である。また、焼結体において、酸化アルミニウム相は、厚さ方向にも同様の酸化アルミニウム相が存在するため、焼結体中の酸化アルミニウム相の体積割合と、焼結体の酸化アルミニウム相の面積割合は、数値が近似する。
【0106】
酸化アルミニウム相の体積割合(仕込み組成から算出)
実施例及び比較例の各焼結体を構成する原料混合物に含まれる希土類元素R1、Ce、Al、Ga、及び必要に応じて含まれてもよいScの仕込み組成の各元素のモル比と、各元素の原子量から、各元素の質量比率を算出する。希土類アルミン酸塩結晶相及び酸化アルミニウム相の真密度を用いて、焼結体を構成する原料混合物の仕込み組成から焼結体の全体の体積を算出する。原料混合物に含まれるAlのイットリウムアルミニウムガーネット構造を構成するモル比の余剰分のAlのモル比を算出する。イットリウムアルミニウムガーネット構造を形成する組成において、Alのモル比は5であるので、AlとGaと必要に応じて含まれてもよいScの合計のモル比が5を超える場合は、5を超えた数値が、余剰分のAlの数値となり、余剰分のAlが希土類アルミン酸塩結晶相から分離した酸化アルミニウム相になると推定する。余剰のAlのモル比から、Alの原子量及び密度に基づき、Alの酸化物換算(Al2O3)の体積を算出する。焼結体の全体の体積を100体積%として、Alの酸化物換算の体積を、酸化アルミニウム相の体積割合として算出する。焼結体を構成する各元素の原子量は、周期表の数値を用いた。希土類アルミン酸塩結晶相の真密度と、酸化アルミニウム相の真密度は、相対密度を算出する場合に用いた真密度の数値を用いた。
【0107】
酸化アルミニウム相の体積割合(焼結体の分析値から算出)
焼結体は、アルカリ溶液に溶融した後、塩酸溶液に入れて、40℃から100℃に加熱し、焼結体を溶解させたサンプル溶液を作製した。このサンプル溶液を誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(Optima8300、Perkin Elmer社製)を用いて、焼結体に含まれる各元素の組成分析を行った。分析によって得られた各元素のモル比からAlの原子量及び密度に基づき、Alの酸化物換算(Al2O3)の体積を算出する。焼結体の全体の体積を100体積%として、Alの酸化物換算の体積を、酸化アルミニウム相の体積割合として算出する。各元素の原子量、真密度は、仕込み組成のモル比から酸化アルミニウム相の体積割合を算出する際に用いた数値と同様の数値を用いた。
【0108】
Al含有量(質量%)、Ga含有量(質量%)(仕込み組成から算出)
実施例及び比較例の各焼結体を構成する原料混合物に含まれるAl含有量(質量%)とGa含有量(質量%)を、仕込み組成から算出した。具体的には、仕込み組成のAlとGaのモル比にAl、Gaの各元素の原子量を積算し、焼結体を構成する仕込み組成に含まれる各元素のモル比と各元素の原子量から焼結体の質量を算出し、焼結体の質量を100質量%として、Al含有量(質量%)と、Ga含有量(質量%)を算出した。
【0109】
Al含有量(質量%)、Ga含有量(質量%)(焼結体の分析値から算出)
実施例及び比較例の各焼結体に含まれるAl含有量(質量%)とGa含有量(質量%)を、前述のサンプル溶液を、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)装置(Optima8300、Perkin Elmer社製)を用いた焼結体に含まれる各元素の組成分析から算出した。具体的には、組成分析により得られたAlのモル比とGaのモル比にAl、Gaの各元素の原子量をそれぞれ積算し、焼結体の分析組成に含まれる各元素のモル比と各元素の原子量から焼結体の質量を算出し、焼結体の質量を100質量%として、Al含有量(質量%)と、Ga含有量(質量%)を算出した。
【0110】
絶対最大長の測定方法
実施例及び比較例の各焼結体の表面又は断面をSEMにより撮影して得られたSEM画像において、面積が3024μm2である領域を測定範囲とした。ここで、SEM画像の縦横のデータサイズが、縦×横が960×1280画素であり、1画素が0.04960938μmであったので、測定範囲の面積を47.6μm×63.5μmとして計算し、3024μm2とした。この測定範囲に含まれる1つの希土類アルミン酸塩結晶相の輪郭の最も離れている2点の距離を、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長として、Winroof2018画像解析ソフトウェア装置(三谷商事株式会社製)を用いて測定した。また、酸化アルミニウム相(SEM画像上の黒点)の輪郭の最も離れている2点の距離を、酸化アルミニウム相の絶対最大長として、前述の画像解析ソフトウェア装置を用いて測定した。測定面積上の10個以上10000個以下、より具体的には1000個以上8000個以下の希土類アルミン酸塩結晶相又は酸化アルミニウム相の絶対最大長の最小値、最大値、及び算術平均値を表4に記載した。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
実施例1から10に係る焼結体は、比較例1に係る焼結体と比べて、発光ピーク波長が大幅に変わることなく、また、色度座標(x値,y値)が大きく変化することなく、希土類元素R1にルテチウム(Lu)を含まない場合であっても、ルテチウムを組成に含む希土類アルミン酸塩結晶相と同様の色調を有する光を発した。実施例1から10に係る焼結体は、焼結体の製造方法における原料混合物の仕込み組成において、希土類元素R1とCeの合計のモル比が3の場合に、AlとGaの合計のモル比が5.25より大きく19未満の変数kの数値を満たし、Alのモル比が0.61以上0.90以下の変数pと変数kの積であり、Gaのモル比が0.10以上0.39以下の変数nと変数kの積の数値を満たしている。
【0116】
実施例1から10に係る焼結体は、比較例1に係る焼結体と同様の色調を有する光を発することができるとともに、相対光束が優れていた。実施例2から10に係る焼結体は、比較例1に係る焼結体と比べて、相対光の取り出し効率も優れていた。実施例2から10に係る焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlが、酸素とともに酸化アルミニウム相を形成するため、照射された光が焼結体内で酸化アルミニウム相によって散乱され、希土類アルミン酸塩結晶相に光を吸収させて波長変換しやすくし、焼結体から発せられる光の照明効率を維持しながら、波長変換された光の光束及び光の取り出し効率を高くすることができる。
【0117】
実施例1に係る焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlが少ないため、焼結体中に形成される酸化アルミニウム相が少なく、照射された光を焼結体内で十分に散乱されず、相対光の取り出し効率が、比較例1に係る焼結体と比べて低くなったと推測される。
【0118】
比較例2に係る焼結体は、ルテチウムの代わりにイットリウムを組成に含む希土類アルミン酸塩結晶相を含み、比較例1に係る焼結体と比べて、発光ピーク波長が短波長側に移動(シフト)した。
【0119】
比較例3に係る焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlが少ないため、焼結体中に形成される酸化アルミニウム相が少なく、照射された光を焼結体内で十分に散乱されず、相対光の取り出し効率が、比較例1に係る焼結体と比べて低くなった。
【0120】
実施例1から10に係る焼結体は、仕込み組成から算出されるGaの含有量が、焼結体の全体量に対して13質量%以上23質量%以下の範囲内であり、分析値から算出したGaの含有量も、測定された値は13質量%以上23質量%以下の範囲内であった。また、実施例1から10に係る焼結体は、仕込み組成から算出されるAlの含有量が、12質量%以上45質量%以下の範囲内であり、分析値から算出したAlの含有量も、測定された値は12質量%以上45質量%以下の範囲内であった。
【0121】
実施例1から10に係る焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長の平均値(平均絶対最大長)が1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であり、具体的には1.3μm以上2.1μm以下の範囲内であった。また、実施例1から10に係る焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相の絶対最大長の最大値が、1.5μm以上7.5μm以下の範囲内であり、具体的には2.1μm以上6.0μm以下の範囲内であった。また、実施例1から10に係る焼結体は、絶対最大長の最小値が、0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であり、具体的には0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であった。また、実施例1から10に係る焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長の標準偏差が0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であり、具体的には0.24μm以上0.78μm以下の範囲内であり、ばらつきが小さかった。
また、実施例1から10に係る焼結体は、酸化アルミニウム相の絶対最大長の平均値(平均絶対最大長)が、0.1μm以上2.5μm以下の範囲内であり、より具体的には0.8μm以上1.5μm以下の範囲内であった。実施例1から10に係る焼結体は、酸化アルミニウム相の絶対最大長の最大値が、1.0μm以上4.0μm以下の範囲内であり、より具体的には、2.0μm以上3.0μm以下の範囲内であった。実施例1から10に係る焼結体は、酸化アルミニウム相の絶対最大長の最小値が、0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であり、より具体的には0.2μm以上0.8μm以下の範囲内であった。また、実施例1から10に係る焼結体は、酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の標準偏差が0.10μm以上0.90μm以下の範囲内であり、具体的には0.35μm以上0.71μm以下の範囲内であり、ばらつきが小さかった。
実施例1から10に係る焼結体は、希土類アルミン酸塩結晶相の平均絶対最大長よりも、相対的に酸化アルミニウム相の平均絶対最大長の方が小さくなった。
【0122】
図5は、実施例1に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図6は、実施例3に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図7は、実施例5に係る焼結体の表面のSEM写真である。
図8は、実施例8に係る焼結体の表面のSEM写真である。実施例1、3、5に係る焼結体は、実施例の番号順にイットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAlの量が多くなり、余剰のAlが多いほど、焼結体に含まれる酸化アルミニウム相を表す黒色の部分が多くなっていることが確認できた。
図5から
図8に示すように、焼結体の表面において、酸化アルミニウム相を表す黒色の部分は、焼結体中にほぼ均一に分散していた。
図8に示す実施例8に係る焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAl量が少ないため、実施例5の焼結体と比べて、酸化アルミニウム相を表す黒色の部分が少なくなった。
【0123】
図9は、比較例2に係る焼結体の表面のSEM写真である。比較例2に係る焼結体は、イットリウムアルミニウムガーネット構造を有する希土類アルミン酸塩結晶相を形成するために必要なAlを超える余剰のAl量がなく、Alのモル比が、希土類アルミン酸塩の理論組成のモル比と同等の値となっているが、焼結体中に酸化アルミニウム相を表す黒色の部分が確認でき、微量の酸化アルミニウム相が形成されていた。
【0124】
本開示にかかる焼結体は、励起光源と組み合わせて、車載用や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源の波長変換部材として利用することができる。
1:希土類アルミン酸塩結晶相、2:酸化アルミニウム相、100:発光装置、101:励起光源、102:コリメートレンズ、103、105及び106:コンデンサレンズ、104:ダイクロイックミラー、107:ロッドインテグレータ、110:波長変換部材、120:波長変換デバイス、121:回転機構、122:光反射板。