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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122611
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】窒化ガリウム基板
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20240902BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030259
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶本 哲治
(72)【発明者】
【氏名】井上 京由
(72)【発明者】
【氏名】深田 崇
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅之
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB02
4G077AB04
4G077AB10
4G077BE15
4G077DB04
4G077DB08
4G077EB01
4G077EC09
4G077ED05
4G077ED06
4G077EE07
4G077EF03
4G077FG13
4G077FJ03
4G077GA01
4G077GA02
4G077GA06
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA07
4G077TB02
4G077TB05
4G077TK11
(57)【要約】
【課題】レーザーダイオード用c面GaN基板として用いる場合に、レーザーダイオード製造時の歩留まり悪化を低減できるGaN基板を提供する。
【解決手段】(0001)面からの傾斜が0~20度であり、面積が15cm以上である主面を有する窒化ガリウム基板であって、前記主面のフォトルミネッセンスイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)において直径50μm以上のシミ状模様が観察されないことを特徴とする、窒化ガリウム基板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(0001)面からの傾斜が0~20度であり、面積が15cm以上である主面を有する窒化ガリウム基板であって、
前記主面のフォトルミネッセンスイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)において直径50μm以上のシミ状模様が観察されないことを特徴とする、窒化ガリウム基板。
【請求項2】
原子間力顕微鏡で測定される前記主面のRMS粗さが、測定範囲2μm×2μmにおいて2nm未満である、請求項1に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項3】
前記主面の転位密度が5×10cm-2以下である、請求項1又は2に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項4】
前記主面の法線方向をz方向とし、
前記z方向に直交し、かつ、互いに直交する2方向をそれぞれx方向及びy方向とした際に、
前記主面の中央を通り前記x方向に延びる第一のライン上におけるオフカット角の前記x方向成分の変動幅と、前記主面の中央を通り前記y方向に延びる第二のライン上における前記オフカット角の前記y方向成分の変動幅とが、それぞれ、長さ40mmの区間内で0.2度以下である、請求項1又は2に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項5】
不純物濃度に関して下記条件(a)~条件(c)から選ばれる一以上の条件を充たす、請求項1又は2に記載の窒化ガリウム基板。
条件(a)Si濃度が5×1016atoms/cm以上である。
条件(b)O濃度が3×1016atoms/cm以下である。
条件(c)H濃度が1×1017atoms/cm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN結晶から得られるGaN基板は、レーザーダイオード(LD)製造のための基板として用いられている。最近では、縦型パワー半導体デバイス(PD)用の基板としてのGaN基板が有望視されている。
【0003】
LD用GaN基板や縦型PD用GaN基板として、デバイスの性能向上のために転位密度やオフ角分布が低減されたGaN基板が求められている。
特許文献1には、ハイドライド気相成長(HVPE)法を用いて転位密度が低減されたGaN結晶を得る方法が記載されている。特許文献2には、HVPE法を用いて得られたオフカット角度の変動が抑制されたc面GaN基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-125229号公報
【特許文献2】特開2021-031329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにHVPE法を用いた従来の製法で得られるGaN結晶は、LD用c面GaN基板として用いると、GaN基板上にエピタキシャル成長させたGaNエピタキシャル層において暗点が発生してLD製造時の歩留まりが低下し、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の主たる目的は、LD用c面GaN基板として用いる場合に、LD製造時の歩留まり悪化を低減できるGaN基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対し、本発明者らが鋭意検討を行った結果、上記歩留まりの低下は、GaN基板の主面のフォトルミネッセンス(PL)イメージング像において直径50μm以上のシミ状模様を観察されない程度まで低減することで抑制しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の実施形態には、下記のGaN基板が含まれる。
本発明の態様1は、(0001)面からの傾斜が0~20度であり、面積が15cm以上である主面を有する窒化ガリウム基板であって、前記主面のフォトルミネッセンスイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)において直径50μm以上のシミ状模様が観察されないことを特徴とする。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の窒化ガリウム基板において、原子間力顕微鏡で測定される前記主面のRMS粗さが、測定範囲2μm×2μmにおいて2nm未満である。
【0010】
本発明の態様3は、態様1又は態様2の窒化ガリウム基板において、前記主面の転位密度が5×10cm-2以下である。
【0011】
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか1つの窒化ガリウム基板において、前記主面の法線方向をz方向とし、前記z方向に直交し、かつ、互いに直交する2方向をそれぞれx方向及びy方向とした際に、前記主面の中央を通り前記x方向に延びる第一のライン上におけるオフカット角の前記x方向成分の変動幅と、前記主面の中央を通り前記y方向に延びる第二のライン上における前記オフカット角の前記y方向成分の変動幅とが、それぞれ、長さ40mmの区間内で0.2度以下である。
【0012】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの窒化ガリウム基板において、不純物濃度に関して下記条件(a)~条件(c)から選ばれる一以上の条件を充たす。
条件(a)Si濃度が5×1016atoms/cm以上である。
条件(b)O濃度が3×1016atoms/cm以下である。
条件(c)H濃度が1×1017atoms/cm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、GaN基板上にエピタキシャル成長させたGaNエピタキシャル層における暗点の発生が抑制されたGaN基板が得られるため、LD用c面GaN基板として用いる場合に、LD製造時の歩留まり悪化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、GaN基板の主面におけるPLイメージング像(波長365nm、対物レンズ5倍)の一部を拡大した図である。図1の(a)は転位群、図1の(b)は幾何学状模様として観察された不純物濃度分布に由来する明暗、図1の(c)は筋状模様として観察された不純物濃度分布に由来する明暗、図1の(d)はシミ状模様である。
図2図2は、本実施形態に係るc面GaN基板の一例を示す斜視図である。
図3図3は、c面GaN基板のオフカット角が互いに垂直な2方向の成分に分解できることを説明する図面である。
図4図4は、本実施形態に係るGaN基板を製造する方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書にいうGaN結晶は、特に断らない限り、ウルツ鉱型の結晶構造を有する六方晶GaN結晶を意味する。
GaN結晶では、[0001]および[000-1]に平行な結晶軸がc軸、<10-10>に平行な結晶軸がm軸、<11-20>に平行な結晶軸がa軸と呼ばれる。c軸に直交する結晶面はc面(c-plane)、m軸に直交する結晶面はm面(m-plane)、a軸に直交する結晶面はa面(a-plane)と呼ばれる。本明細書では、(0001)結晶面と(000-1)結晶面を総称してc面と呼んでいる。
以下において、結晶軸、結晶面、結晶方位等に言及する場合には、特に断らない限り、GaN結晶の結晶軸、結晶面、結晶方位等を意味する。
六方晶のミラー指数(hkil)は、h+k=-iの関係があることから、(hkl)と3桁で表記されることもある。例えば、(0004)を3桁で表記すると(004)である。
特に断らない限り、本明細書にいう転位は貫通転位(threading dislocation)を意味する。本明細書では、螺旋転位、混合転位および刃状転位を区別せず、総称して転位と呼ぶ。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
1.GaN基板
第1の実施形態に係るGaN基板は、(0001)面からの傾斜が0~20度であり、面積が15cm以上である主面(第一主面)を有し、前記主面のPLイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)において直径50μm以上のシミ状模様が観察されないことを特徴とする。
【0017】
本発明者らは、GaN基板上にエピタキシャル成長させたGaNエピタキシャル層において、特定波長の光を照射した際に部分的に発光しない暗点が発生するという課題に直面した。GaNエピタキシャル層に発光しない暗点が生じることは、特にGaN基板を発光デバイスであるレーザーダイオード(LD)等の製造に用いる場合に、LDの製造歩留まり悪化の原因になる。
【0018】
この課題を解決すべく本発明者らが検討を進めたところ、GaNエピタキシャル層で観察される暗点と、GaN基板の主面のPLイメージング像において観察される直径50μm以上のシミ状模様との間に一定の関係があることを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、GaN基板の主面のPLイメージング像において観察される直径50μm以上シミ状模様と、GaN基板の主面上に形成されるGaNエピタキシャル層における暗点との間に相関があるとの着想に基づくものである。
【0019】
実際に、本発明者らが行った実験によれば、GaN基板の第一主面のPLイメージング像において5倍の対物レンズで観察される直径50μm以上のシミ状模様の位置と、そのGaN基板の第一主面上に形成したGaNエピタキシャル層における暗点の位置とがよく一致していた。
【0020】
以上の理由から、GaN基板の第一主面のPLイメージング像において直径50μm以上のシミ状模様を5倍の対物レンズで観察されない程度まで低減することで、LD用c面基板として用いた場合に、LD製造の歩留まり悪化を十分低減することができる。
【0021】
なお、前記主面のPLイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)において直径50μm以上のシミ状模様が観察されないとは、前記条件のPLイメージング像において、シミ状模様が、いかなるコントラスト調整を実施しても観察されないことを意味する。
第一主面のPLイメージング像における前記暗領域の数密度を評価するときは、基板外周からの距離が1mm未満の領域を、例外的な領域として除外してよい。
【0022】
GaN基板の第一主面のPLイメージング像は、市販で入手可能なPLイメージング装置を用いて得ることができる。第一主面のPLイメージング像においては、主面の結晶中の不純物濃度の分布も暗部として観察される場合がある。しかしながら、PLイメージング像において観察される前記のシミ状模様と、結晶中の不純物濃度の分布由来の明暗模様とは、その形態や再研磨・洗浄による発生有無によって区別することができる。
【0023】
その他PLイメージングで明暗として見えるものとしては、転位、結晶中の不純物濃度の分布、加工ダメージ、表面の付着物による影響がある。
先ず、転位に関して、個々の転位は、対物レンズ100倍では観察可能であるが、対物レンズ5倍程度の低倍率では観察することはできない。転位が集まって転位群となった場合には、5倍の対物レンズでも観察可能である。しかし、この場合、結晶方位の影響を受けた形状となり、シミ状模様とは区別できる。図1の(a)にPLイメージング像で観察された転位群の一例を示す。
【0024】
また、結晶中の不純物濃度の分布がPLイメージング像の明暗として観察される場合がある。この場合、PLイメージング像では、幾何学状模様であったり、同一方向に連なる筋状模様として観察される。図1の(b)にPLイメージング像で幾何学状模様として観察された不純物濃度分布による明暗の一例を示す。図1の(c)にPLイメージング像で筋状模様として観察された不純物濃度分布による明暗の一例を示す。
PLイメージング像の5倍観察では、加工ダメージがスクラッチとして観察される場合があるが、その形態は真直ぐな直線状である。
【0025】
一方、シミ状模様は、前記のように筋状・線状であったり結晶方位の影響を受けることはなく、円形や楕円、湾曲した境界を持つ領域である。さらに転位群・不純物濃度分布とシミ状模様の決定的な違いは、前者は基板を再研磨・洗浄しても同じ場所に発生するのに対し、後者は消滅することである。
以上の相違点に基づき、PLイメージング像の5倍観察によって、シミ状模様を区別することができる。図1の(d)に、PLイメージング像で観察されたシミ状模様の一例を示す。
【0026】
以下、第1の実施形態(以降、本実施形態と称する場合がある。)に係るGaN基板についてさらに説明する。
【0027】
前記第一主面における、(0001)面からの傾斜は0~20度であるが、0.2度以上であってもよく、また、10度以下、5度未満、2.5度未満、1.5度未満、1度未満または0.5度未満であってもよい。
また、第一主面の面積は15cm以上であればよく、18cm以上であってもよく、200cm以下であってもよい。
【0028】
本実施形態に係るGaN基板の一例を図2に示す。
図2に示す基板100は自立GaNウエハであり、互いに反対方向を向いた2つの主面(大面積面)、すなわち、第一主面101と第二主面102を有する。
第一主面101と第二主面102は、好ましくは互いに平行である。
第一主面101は、窒化物半導体デバイスを製造するときなどに、窒化物半導体のエピタキシャル成長に使用される主面、すなわち「おもて面」である。第二主面102は「裏面」である。
【0029】
本明細書において、第一主面101はGa極性で、他方の第二主面102はN極性である。
(000-1)結晶面に対する第二主面102の傾斜は0度以上20度以下であることが好ましい。該傾斜は、0.2度以上であってもよく、また、10度以下、5度未満、2.5度未満、1.5度未満、1度未満または0.5度未満であってもよい。
【0030】
基板100の直径は、前記第一主面101の面積が15cm以上である限りは特に限定されないが、通常45mm以上であり、95mm以上、あるいは145mm以上であってもよく、典型的には50~55mm(約2インチ)、100~105mm(約4インチ)、150~155mm(約6インチ)等である。
【0031】
基板100の厚さは、基板100が自立可能かつハンドリング可能となるように設計される。
基板100の直径が約2インチのとき、その厚さは好ましくは250μm以上、より好ましくは300μm以上であり、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
基板100の直径が約4インチのとき、その厚さは好ましくは350μm以上、より好ましくは400μm以上であり、また、好ましくは800μm以下、より好ましくは650μm以下である。
基板100の直径が約6インチのとき、その厚さは好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上であり、また、好ましくは850μm以下、より好ましくは750μm以下である。
【0032】
GaN基板の主面において、転位密度が小さいほど、結晶品質に優れるため好ましい。
GaN基板の前記第一主面における転位密度は5×10cm-2以下が好ましく、2×10cm-2以下がより好ましく、さらに好ましくは1×10cm-2以下、よりさらに好ましくは8×10cm-2以下、ことさらに好ましくは6×10cm-2以下、特に好ましくは5×10cm-2以下である。前記転位密度は、通常、1×10cm-2以上である。
【0033】
GaN結晶のカソードルミネセンス(CL)像には転位が暗点として現れるので、転位密度はCL像観察により測定できる。第一主面がGa極性であるときは、270℃に加熱した濃度89%の硫酸で基板を1時間エッチングした後の該第一主面101におけるエッチピットの密度を、転位密度とみなしてもよい。
第一主面における転位密度を評価するときは、基板外周からの距離が5mm未満の領域を、例外的な領域として除外してよい。
【0034】
基板100の第一主面101における転位密度を評価するときは、各測定点において180μm×180μm(32400μm)以上の面積の矩形エリアを観察することが好ましい。観察面積が180μm×180μm以上のとき、第一主面101内における転位密度の最大値は最小値の4倍を超えることはなく、大抵は3倍以下であり、更には2倍以下であり得る。
【0035】
基板100のオフカット角は、x方向成分とy方向成分という、第一主面101内で互いに直交する2方向の成分に分解することができる。このことを図3を参照して説明すると、次の通りである。
第一主面101の法線方向をz方向、c軸に平行なベクトルをベクトルVcとしたとき、ウエハ20のオフカット角はベクトルVcのz方向からの傾斜θに等しい。このベクトルVcは、x方向成分であるベクトルVcと、y方向成分であるベクトルVcとに分解することができる。xz平面上におけるベクトルVcの正射影がベクトルVcであり、yz平面上におけるベクトルVcの正射影がベクトルVcである。
ベクトルVcをこのように分解したとき、ベクトルVcのz方向からの傾斜がオフカット角θのx方向成分θであり、ベクトルVcのz方向からの傾斜がオフカット角θのy方向成分θである。
【0036】
基板100では、第一主面101の中央を通りx方向に延びる第一のライン上におけるオフカット角のx方向成分の変動幅と、第一主面101の中央を通りy方向に延びる第二のライン上におけるオフカット角のy方向成分の変動幅が、それぞれ、長さ40mmの区間内で0.2度以下であることが好ましい。x方向はa面のひとつと平行であってもよく、そのときy方向はm面のひとつと平行である。
ここでいう変動幅とは、オフカット角の最大値と最小値の差であり、変動幅が0.2度以下であるとは、言い換えると、オフカット角の中央値からの変動が±0.1度以内ということである。
【0037】
該第一のライン上におけるオフカット角のx方向成分の変動幅と、該第二のライン上におけるオフカット角のy方向成分の変動幅は、小さければ小さい程好ましい。これらの変動幅は、それぞれ、長さ40mmの区間内で0.2度以下、0.1度以下、更には0.08度以下、更には0.06度以下、更には0.04度以下であり得る。
オフカット角の変動幅を評価する際、基板外周からの距離が5mm未満の部分は除外してもよい。
【0038】
基板100のおもて面である第一主面101は鏡面仕上げされるのが普通であり、原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscope)で測定されるその根二乗平均(RMS)粗さは、測定範囲2μm×2μmにおいて好ましくは2nm未満であって、1nm未満または0.5nm未満であってもよい。
裏面である第二主面102は、鏡面仕上げされてもよいし、艶消し仕上げされてもよい。
【0039】
基板100のエッジは面取りされてもよい。
基板100には、結晶の方位を表示するオリエンテーション・フラットまたはノッチ、おもて面と裏面の識別を容易にするためのインデックス・フラット等、必要に応じて様々なマーキングを施してもよい。
【0040】
基板100は、HVPEで成長されたGaN結晶でありうる。
石英リアクターを備える通常のHVPE装置で成長されたGaNは、不純物濃度に関して次の条件(a)~条件(c)から選ばれる一以上の条件を充たしうる。
条件(a)Si濃度が5×1016atoms/cm以上である。
条件(b)O濃度が3×1016atoms/cm以下である。
条件(c)H濃度が1×1017atoms/cm以下である。
【0041】
基板100は、上記条件(a)~条件(c)のうち二以上の条件を充たし得る。ある場合には、上記条件(a)及び条件(b)の双方、上記条件(b)及び条件(c)の双方、又は、上記条件(a)及び条件(c)の双方を充たし得る。ある場合には、基板100は、上記条件(a)~条件(c)のすべてを充たし得る。
【0042】
2.GaN基板の製造方法
本実施形態に係るGaN基板を製造する方法の一例を以下で説明する。
ある製造方法では、図4にフロー図を示すように、GaNテンプレートを準備するGaNテンプレート準備工程P1と、該GaNテンプレート準備工程P1で準備したGaNテンプレート上に、HVPEでGaN結晶を成長させるHVPE工程P2が、この順に実行される。その後、成長させたGaN結晶をスライスしてGaN基板を得る基板取得工程P3に進む。
各工程について以下に詳述する。
【0043】
2.1.GaNテンプレート準備工程
GaNテンプレート準備工程P1で準備されるGaNテンプレートは、後に続くHVPE工程P2でGaN結晶層を成長させるときにシードとしての役割を果たす。
GaNテンプレート準備工程P1では、c面ヘテロ基板上にGaN結晶薄膜をエピタキシャル成長させ、GaN結晶薄膜上に剥離層を形成した剥離層付きGaNテンプレートを得る。
ヘテロ基板とは、GaNとは組成の異なる化合物からなる単結晶基板であり、例えばサファイア基板である。
【0044】
c面ヘテロ基板上に有機金属気相成長(MOCVD;metal organic chemical vapor deposition)法でc軸配向GaN結晶薄膜をエピタキシャル成長させてGaNテンプレートを得る。GaN結晶薄膜の厚みは、例えば1~5μmである。GaN結晶薄膜の表面の転位密度は、1×10~1×1010cm-2であることが好ましい。
【0045】
得られたGaNテンプレートのGaN結晶薄膜の表面に、SiNx膜を堆積させる。用いることができる堆積方法としては、プラズマCVD法やスパッタ法が挙げられる。SiNx膜の厚みは、例えば100~10000Åでありうる。
【0046】
堆積したSiNx膜上をフォトリソグラフィおよびドライエッチングの技法を用いてパターニングし、剥離膜を形成する。好適なマスクパターンとしては、三角格子型のネットパターンが挙げられる。開口率は、15~75%の範囲でありうる。これにより、パターンマスク付きGaNテンプレートが得られる。
【0047】
2.2.HVPE工程
HVPE工程P2では、GaNテンプレート準備工程P1で準備されたGaNテンプレートの表面上に、HVPE法でGaN結晶が成長される。
HVPE工程P2では、初期層、中間層、ピット化層、平坦化層、本成長層の順に成長させる。
ピット化層(pitted layer)を成長させた後、成長条件を変更して平坦化層を成長させる操作が1回以上行われる。この操作は2回以上繰り返すことができる。
【0048】
初期層は、GaNテンプレート表面上にHVPEにより成長させる。初期層は、GaNテンプレートからHVPE成長層をクラック等の欠陥を発生させずに剥離させる目的のために形成される。成長条件としては、成長温度が900~980℃、V/III比が1.5~8.0、キャリアガスのF値が0.50~1.00の範囲内で設定される。ここで、キャリアガスのF値とはリアクター内に導入されるキャリアガスに占めるH(水素ガス)のモル比である。
【0049】
中間層は、初期層の上に成長させる。中間層は、初期層で意図せずに形成された局所的なピットを埋め、表面を平坦化させる目的のために形成される。
【0050】
中間層の成長条件としては、成長温度が1000~1100℃、V/III比が3~10の範囲内で設定される。ここで、キャリアガスのF値を0.05以上とすることが肝要である。F値が0.05未満であると、最終的に得られるGaN結晶の主面内の局所歪みの数が増大してしまい、GaN基板をLD用c面基板として用いる際は、LD製造の歩留まり悪化を招いてしまう恐れがある。これは、Hガスによるエッチング効果が失われ、成長中に除去できない局所的な異常成長部が転位等の欠陥を発生させ、歪みが生じるためと推測される。より安定的に結晶を成長させることができるという観点から、F値は0.5以下とすることが好ましい。
【0051】
ピット化層は、中間層の上に成長させる。ピット化層は、成長表面にファセット面があらわれ、無数のピットが形成された層である。
ピット化層の成長中は、転位がピットに向かって集まること、また、ピット同士が合体するときに転位の伝搬方向が曲げられることから、転位の対消滅が起こる確率が高くなる。従って、GaN結晶の転位密度は、ピット化層の上に積層される平坦化層において、ピット化層の下側よりも低くなる。
【0052】
ピット化層の厚さは、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。驚くべきことに、100μm以下の厚さしか持たないピット化層の形成によって、十分に効果的な転位密度の低減が生じる。
【0053】
ピット化したGaN層を成長させることは、単結晶成長が困難とならない範囲で、成長温度を十分に下げることにより可能であり、SAG(Selective Area Growth)技法を必要としない。
【0054】
ピット化層の成長条件としては、成長温度が900~980℃、V/III比が1.5~8.0、キャリアガスのF値が0.50~1.00の範囲内で設定される。
【0055】
平坦化層は各ピット化層に続いて成長させる層である。平坦化層では、ピット化層にて形成されたピットを埋めて実質的に消失させ、平坦な結晶面を得る。
ピット化層の上に平坦化層を成長させるには、成長条件を変更すればよい。平坦化層の成長温度は、好ましくは1000℃以上である。必要に応じて、表面の平坦化を加速するために、平坦化層を成長させるときのV/III比およびキャリアガスのF値のいずれか一方または両方を、ピット化層を成長させるときよりも低くしてよい。
【0056】
平坦化層は、表面のピットが実質的に消失するように成長させる。ピットが実質的に消失した状態とは、外周近傍を除いた平坦化層の表面におけるピット密度が1ピット/cm以下となった状態をいう。外周近傍を除く理由は、外周近傍では成長条件に関わりなくピットが発生し易い傾向があるからである。
【0057】
平坦化層を成長させた後であっても、その下のピット化層の厚さは、GaN結晶のc面に垂直な断面を蛍光顕微鏡で観察することにより調べることができる。ピット化層と平坦化層とでは、恐らく成長時に取り込まれる不純物の濃度および/または種類が異なるせいで、蛍光顕微鏡像における色調が明瞭に異なっており、容易に識別できる。蛍光顕微鏡像では、ピット化層の方が平坦化層よりも暗く見える。
ピット化層と平坦化層で特に濃度が異なる不純物は酸素であり、ピット化層は平坦化層よりも高い酸素濃度を有する。
【0058】
前述の通り、HVPE工程P2では、ピット化層(pitted layer)を成長させた後、成長条件を変更して平坦化層を成長させる操作が1回以上行われる。この操作は、2回以上繰り返すことが好ましい。このようにピット化層と平坦化層を交互に成長させる操作を2回以上繰り返す場合、ピットへの転位の集中による転位低減の効果がより発揮され、得られるGaN結晶の転位密度を効果的に低減することが可能になる。
【0059】
ピット化層としてGaN結晶層を成長させた後、結晶成長条件を平坦化層の成長条件に変更する際、原料ガス供給を中止せず、原料ガス供給を続けて結晶成長を継続しながら、成長温度、V/III比等の成長条件を徐々に変更することができる。このように、ピット化層から平坦化層へ連続的に結晶成長させると、局所的な異常成長の発生を抑制出来、GaN結晶の成長過程で生じる局所歪みを低減することができるため、得られるGaN基板の結晶品質が改善される。
【0060】
HVPE工程P2において、最後に、上記平坦化層の上に、本成長層を成長させる。本成長層の厚さは、通常1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上、更に好ましくは8mm以上とする。
本成長層の成長条件は終始同じとしてもよいし、あるいは、成長の途中で変更してもよい。
【0061】
本成長層のうち、表面からピットが実質的に消失した後に成長した部分では、酸素濃度が通常2×1016atoms/cm以下である。
本成長層は、Si(ケイ素)やGe(ゲルマニウム)のようなドナー不純物でドープしたり、あるいは、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)およびC(炭素)のような、ドナー不純物の補償を通してGaNを半絶縁性にする作用のある不純物でドープしたりすることができる。
本成長層のドーピングは、表面のピットが実質的に消失した後から開始してもよい。
【0062】
前記HVPE工程P2に用いるHVPE装置は、公知の種々の構成の装置を用いることができる。
前記HVPE工程P2に用いるHVPE装置は、シード上への異物の付着を防止するカバーを設けていることが好ましい。シード上への異物の付着は、のちの結晶成長における欠陥の起点となりうる。例えば、HVPE装置を構成するリアクター管が縦型リアクター管である場合には、異物はシードの上部から落下してシード表面に付着する場合が多いと予想される。したがって、縦型リアクター管の場合は、シードの上部に異物付着防止カバーを設置することが有効である。
【0063】
2.3.基板取得工程
基板取得工程P3では、HVPE工程P2で得られた本成長層をスライスすることによりウエハを取得し、その後ウエハに加工等を施して、好ましい品質を有するc面GaN基板を製造することができる。
c面GaN基板とは、GaN単結晶のみからなる自立したウエハであって、c面と平行またはc面から僅かにオフカットされた大面積表面であるc面表面を有する。c面単結晶GaN基板の厚さは、c面表面の面積に応じて、300μm~1mmの間で適宜設定することができる。
HVPE工程P2で得られた本成長層をスライスして得られたウエハは、通常、主面の平坦化処理を行う。平坦化処理としては、例えば、おもて面と裏面を表面研削したのち、化学機械研磨(CMP)などの表面研磨処理(ポリシング処理)を行う工程が挙げられる。表面研磨処理を行うことで、GaN基板の主面のRMS粗さを極めて小さい値まで低減することができる。通常、平坦化処理後、ウエハの洗浄を行う。
【0064】
本発明者らは検討の結果、洗浄後のウエハのGa極性側の主面について酸素プラズマアッシング処理を行うことで、GaN基板の第一主面のPLイメージング像において観察される直径50μm以上のシミ状模様を効果的に低減できることを見出した。これらの事実から、主面のPLイメージング像において観察される前記のシミ状模様の起源の一つは、GaN基板の主面に微量付着した有機物である可能性が高い。このような有機物は、ウエハのポリシング処理で使用する研磨布の残渣がウエハの主面に付着し、その後の洗浄工程でも完全には除去できないまま微量が表面に残留したものと推測される。
【0065】
酸素プラズマアッシングは、市販のアッシング装置を用いて行うことができる。好ましいアッシング条件としては、以下が挙げられる。
・圧力:1~5Pa
・酸素流量;10sccm~300sccm
・プラズマ生成電源出力:30~500W
・アッシング時間:0.2~10分
【0066】
上述の酸素プラズマアッシング処理を行った後、ウエハをフッ酸を含む水溶液に1時間以上浸漬して洗浄することが好ましい。この場合には、アッシングで表面に生成した酸化膜を低減することができるため、LD製造時の歩留まり悪化をより効果的に抑制できる。
【0067】
前述の方法で成長させたGaN結晶から得られたc面GaN基板をHVPE工程で用いるシードとして用いて、前述の工程に従ってGaN結晶を成長させることもできる。つまり、この場合には、前述のGaNテンプレート準備工程P1で準備したGaNテンプレートの代わりに、前記の方法で得られたc面GaN基板をシードとして用いる。
【0068】
シードとして、前記の方法で得られたc面GaN基板を用いる場合においては、HVPE工程P2における初期層の成長工程は省略し、シード上にHVPE法で中間層(以降、区別のためにこの場合における中間層を「初期c面成長層」と呼ぶ場合がある。)を成長させる工程から開始することができる。これ以降の工程は、前述したシードとしてGaNテンプレートを用いる場合と同様に行うことができる。
【0069】
シードとして前記の方法で得られたc面GaN基板を用いる場合、最終的に得られるGaN基板の結晶品質をさらに優れたものにすることができる。具体的には、転位密度をより低減したGaN基板や、オフ角分布がより小さいGaN基板が得られる。
【0070】
3.GaN基板の用途
実施形態に係るc面GaN基板は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)などの発光デバイスと、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの電子デバイスとを含む、各種の窒化物半導体デバイスの製造に使用することができる。
窒化物半導体は、窒化物系III-V族化合物半導体、III族窒化物系化合物半導体、GaN系半導体などとも呼ばれ、GaNを含む他、GaNのガリウムの一部または全部を他の周期表第13族元素(B、Al、In等)で置換した化合物を含む。
窒化物半導体デバイスとは、デバイス構造の主要部を窒化物半導体で形成した半導体デバイスである。
【実施例0071】
以下に、本発明者らが行なった実験の結果を記す。
<実施例1>
直径76mmのc面サファイア基板上に、MOCVD法で約3μm厚のc軸配向GaN膜をエピタキシャル成長させてなるGaNテンプレートを準備した。GaN膜の表面はGa極性で、転位密度は10cm-2台であった。
このGaN膜の表面に、プラズマCVD法によって厚さ800ÅのSiN膜を堆積させ、更に、このSiN膜をフォトリソグラフィおよびドライエッチングの技法を用いてパターニングすることにより、三角格子型のネットパターンを有する開口率40%の剥離層を形成した。この剥離層の付いたパターンマスク付GaNテンプレートをシードに用いて、HVPEでGaN結晶を成長させた。
【0072】
GaN結晶の成長には、石英製のホットウォール型リアクターと、その内部に設置された石英製ガリウムボートおよびパイロリティックグラファイト製サセプターとを備える、常圧HVPE装置を用いた。HVPE装置には、成長中の結晶の上に異物が付着することを防止するために、シード直上の空間に異物付着防止カバーを設けた。
【0073】
ガリウムボートの温度は終始850℃に保持しつつ、初期層、中間層、ピット化層、平坦化層および本成長層からなるGaN結晶を、下記表1に示す条件で成長させた。キャリアガスにはH(水素ガス)とN(窒素ガス)を用いた。
【0074】
【表1】
【0075】
表1にいうV/III比は、リアクター内に供給するNH(アンモニア)とガリウムボートに供給するHCl(塩化水素)のモル流量比である。
【0076】
最初に成長させたのは初期層で、次いで中間層を成長させ、続いてピット化層と平坦化層を交互に成長させ、最後に本成長層を成長させた。
中間層を成長させる工程では、キャリアガス中のHモル比を0.05以上に設定した。ここで、キャリアガス中のHモル比は、リアクター外からリアクター内に供給されるHとNのモル流量に基づいて算出した値である。
ピット化層としてGaN結晶層を成長させた後、結晶成長条件を平坦化層の成長条件に変更する際、原料ガス供給を中止せず、結晶成長を継続しながら、成長条件を徐々に変更した。すなわち、ピット化層の成長条件から平坦化層の成長条件への移行を連続的に行った。具体的には、原料ガス供給を続けながら、成長温度、V/III比を10分かけて徐々に変更した。
ピット化層と平坦化層は交互に成長させ、これを複数回繰り返した。
本成長層の成長後、リアクター温度を室温まで下げ、GaNテンプレートとその上に成長したGaN結晶をリアクターから取り出して観察したところ、両者間の分離はリアクター内で実質的に完了していた。
【0077】
成長したGaN結晶の外周を円筒形に加工した後、その本成長層部分からc面と略平行な主面を有するウエハをスライスした。前記ウエハのGa極性側の主面、N極性側の裏面を、研削で平坦化した後、ダメージ層を除去するために化学機械研磨した。こうして直径5cm(約2インチ)で厚さ400μmのc面GaN基板シードを得た。
【0078】
得られたc面GaN基板シードをシードに用いて、HVPEでGaN結晶を成長させた。
GaN結晶の成長には、異物付着防止カバーを設置しなかったこと以外はc面GaN基板シードの製造に用いたものと同タイプのHVPE装置を用いた。
ガリウムボートの温度は終始850℃に保持しつつ、初期層、ピット化層、平坦化層および本成長層からなるGaN結晶を、下記表2に示す条件で成長させた。キャリアガスにはH(水素ガス)とN(窒素ガス)を用いた。
【0079】
【表2】
【0080】
最初に初期c面成長層を成長させ、続いてピット化層と平坦化層を交互に成長させ、その後に本成長層を成長させた。実施例1と同じく、ピット化層から平坦化層への移行は結晶成長を継続しながら連続的に行った。ピット化層と平坦化層を交互に成長させることを複数回繰り返した。
【0081】
成長したGaN結晶の外周を円筒形に加工した後、その本成長層部分からc面と略平行な主面を有するウエハをスライスした。前記ウエハのGa極性側の主面、N極性側の裏面を、研削で平坦化した後、ダメージ層を除去するために化学機械研磨し、洗浄した。
次に、アッシング装置(キヤノンアネルバ社製)を用いて、酸素プラズマアッシングを行った。
アッシング条件は以下の通りである。
・圧力;2Pa
・酸素流量;200sccm
・プラズマ生成電源出力:30W
・アッシング時間:0.25分
【0082】
酸素プラズマアッシング処理後、ウエハをフッ酸を含む水溶液に20時間以上浸漬して洗浄した。
こうして直径5cm(約2インチ)で厚さ400μmのc面GaN基板を完成させた。
【0083】
c面GaN基板のGa極性側の主面について、PLイメージング像(波長:365nm、対物レンズ5倍)を取得した。PLイメージング像観察の結果、直径50μm以上のシミ状模様は観察されなかった。
【0084】
c面GaN基板上に、MOCVD法によりGaN結晶を2~4μmエピタキシャル成長させた。形成したc面GaN基板上のGaNエピタキシャル層について、PLマッピング測定(波長:365nm)を行った。PLマッピング測定の結果、GaNエピタキシャル層に暗点は観察されなかった。PLマッピングは、PLマッピング装置(フォトンデザイン社製)を用いて行った。
【0085】
また、第一のライン上の40mmの区間内におけるオフカット角のx方向成分の変動幅と、第二のライン上の40mmの区間内におけるオフカット角のy方向成分の変動幅を、X線回折装置を用いて調べた。
オフカット角の変動幅は、x方向0.060°、y方向0.015°であった。
【0086】
<比較例1>
酸素プラズマアッシング処理及びフッ酸を含む水溶液による浸漬洗浄を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして、c面GaN基板を得た。
【0087】
実施例1と同様にして、c面GaN基板のGaN極性側の主面について、PLイメージング像において、直径50μm以上のものを含む大小様々なシミ状模様が観察された。
また、実施例1と同様にしてc面GaN基板上にGaNエピタキシャル層を成長させ、PLマッピング測定を行った。PLマッピング測定の結果、GaNエピタキシャル層成長前にシミ状模様が観察された位置と同一位置に多数の暗点が観察された。
【0088】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0089】
100 基板
101 第一主面
102 第二主面
図1
図2
図3
図4