(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122617
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】シニアの健康状態の改善方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/00 20180101AFI20240902BHJP
【FI】
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030272
(22)【出願日】2023-02-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)講演抄録 機能性食品と薬理栄養(日本機能性食品医用学会誌)Vol.16 No.3 December 2022「第20回 日本機能性食品医用学会総会 プログラム・抄録集」 0-4.高齢者向け健康寿命延伸食事プログラムの検証 (2)学会発表 第20回 日本機能性食品医用学会(2022年度)講演番号:0-4.高齢者向け健康寿命延伸食事プログラムの検証
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】中世古 拓男
(72)【発明者】
【氏名】平野 行央
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
5L099AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シニアにおける健康状態の改善を目的として栄養素が調整された食事を摂取する方法を提供する。
【解決手段】エネルギー比率においてタンパク質を14~20%又は15~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%の割合で含むとともに、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、ビタミン類及びミネラル類の栄養素が所定量の範囲に調整された食事を少なくとも一日における朝食、昼食、夕食の三食から選択される一食以上において継続的に摂取することによるシニアの健康状態の改善方法、とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー比率においてタンパク質を14~20%又は15~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%の割合で含むとともに、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、ビタミン類及びミネラル類の栄養素が所定量の範囲に調整された食事を少なくとも一日における朝食、昼食、夕食の三食から選択される一食以上において継続的に摂取することによるシニアの健康状態の改善方法。
【請求項2】
前記健康状態が認知機能検査、歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢からなる群より選択される一又は二以上のいずれかの健康指標により判断される請求項1に記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項3】
前記ビタミン類が少なくともビタミンAを含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウムを含む請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項4】
前記ビタミン類が少なくともビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1及びビタミンB2を含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウム、マグネシウム及び亜鉛を含む請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項5】
前記脂質において飽和脂肪酸が所定量以下であって、n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸が所定量以上である請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項6】
前記ビタミン類が少なくともビタミンD及びビタミンB6を所定量以上であって、前記脂質においてn-3系脂肪酸が所定量以上である請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項7】
前記食事の継続的な摂取の期間が少なくとも3週間以上である請求項3~6のいずれかに記載のシニアの健康状態の改善方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のシニアの健康状態の改善方法において摂取される、栄養素が調整された食事。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養素が調整された食事を摂取することによってシニアの健康状態を改善するための改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴う医療費や介護費の増加が問題となっており、健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる「健康寿命」を伸ばすことが、医療費抑制や豊かな老後を過ごす上で重要な課題となっている。特にシニアと称される世代、すなわち、50歳以上、60歳以上又は65歳以上の世代において重要な課題となっている。
例えば、日本国厚生労働省は、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を5年毎に改定しており、2019年12月24日に「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(以下、「日本人の食事摂取基準」という)を公表している。
【0003】
「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、及び身体活動レベル(低い(I)、ふつう(II)、高い(III))の区分ごとに推定エネルギー必要量(kcal/日)を計算し、推定エネルギー必要量に応じて、三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物の目標量(各栄養素が総エネルギー摂取量に占めるべき割合)を規定するとともに、ビタミンA、ビタミンD等の脂溶性ビタミン、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン等の水溶性ビタミン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガン等のミネラルについて、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量のいずれか、またはこれらの組み合わせを規定している。
【0004】
「日本人の食事摂取基準」に記載されている各栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量、目標量等の基準値は、性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に設けられている。すべての栄養素が基準値を満たすように栄養計算を行うには試行錯誤が必要で、三大栄養素と食塩相当量のみ、またはこれらに加えて主要ビタミン、主要ミネラルについて基準値となるように栄養計算を行うことが多い。また、毎食の栄養素が基準値になるように栄養計算を行うのではなく、例えば1週間などの所定期間内における対象者の栄養摂取量の平均値が基準値を満たすように栄養計算されることも多い。
【0005】
特許文献1には、エネルギー比率において、少なくとも、2~75%の糖質、10%以上のタンパク質、15~70%の脂質、を含み、日本国厚生労働省発行の日本人の食事摂取基準に示された推定エネルギー必要量を摂取した場合において、日本国厚生労働省発行の日本人の食事摂取基準に示されるビタミン及びミネラルの摂取量が、必要量以上且つ上限量以下に達するように設計された経口摂取用栄養調整食品に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-140952 このような健康状態の改善を目的として、栄養素が調整された食事を摂取する方法に関する発明が開示されている。一方、特許文献1以外の方法についても種々の方法が想定されるところである。
【0007】
さらに、栄養素が調整された食事を摂取する場合、その食事の内容とともに、摂取するタイミング(朝食、昼食又は夕食)や、当該食事を継続する期間等の種々のファクターによって結果が影響を受ける場合も多いと考えられる。さらに、このような栄養素が調整された食事(調整食)を利用して具体的に人が継続的に摂取してその効果を示したデータは、シニア世代を含めてそれほど多くは得られていないのが現状である。
また、栄養バランスが整った食事が健康に資することはよく言われているが、多くの栄養素についてその範囲を具体的に定義し、シニアの健康の改善を確認した例は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、特にシニア世代における栄養素が調整された食事を摂取する方法を新たに検討し、単に摂取する食事の内容だけでなく、その摂取時期、タイミング等も含めて検討することを課題とした。さらに、実際に当該調整された食事を摂取した場合の効果についても検討し、健康状態を改善することと目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは種々の検討の結果、エネルギー比率においてタンパク質を14~20%又は15~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%含み、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、ビタミン類及びミネラル類の栄養素が所定量に調整された食事を少なくとも一日における朝食、昼食、夕食の三食から選択される一食以上において継続的に摂取することによって、シニアの健康状態が改善されることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本願第一の発明は、
「エネルギー比率においてタンパク質を14~20%又は15~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%の割合で含むとともに、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、ビタミン類及びミネラル類の栄養素が所定量の範囲に調整された食事を少なくとも一日における朝食、昼食、夕食の三食から選択される一食以上において継続的に摂取することによる健康状態の改善方法。」、である。
【0011】
次に、前記健康状態は認知機能検査、歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢からなる群より選択される一又は二以上のいずれかの健康指標により判断されるものであることが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
「前記健康状態が認知機能検査、歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢からなる群より選択される一又は二以上のいずれかの健康指標により判断される請求項1に記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0012】
次に、前記ビタミン類が少なくともビタミンAを含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウムを含むことが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
「前記ビタミン類が少なくともビタミンAを含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウムを含む請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0013】
次に、前記ビタミン類が少なくともビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1及びビタミンB2を含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウム、マグネシウム及び亜鉛を含むことが好ましい。
すなわち、本願第四の発明は、
「前記ビタミン類が少なくともビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1及びビタミンB2を含むとともに、前記ミネラル類が少なくともカルシウム、マグネシウム及び亜鉛を含む請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0014】
次に、前記脂質において飽和脂肪酸が所定量以下であって、n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸が所定量以上であることが好ましい。
すなわち、本願第五の発明は、
「前記脂質において飽和脂肪酸が所定量以下であって、n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸が所定量以上である請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0015】
次に、シニア世代においては、ビタミン類についてはビタミンD及びビタミンB6が、また、脂質においてはn-3系脂肪酸が特に重要になってくる。
すなわち、本願第六の発明は、
「前記ビタミン類が少なくともビタミンD及びビタミンB6を所定量以上であって、前記脂質においてn-3系脂肪酸が所定量以上である請求項2に記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0016】
次に、前記食事の継続的な摂取の期間が少なくとも3週間以上であることが好ましい。すなわち、本願第七の発明は、
「前記食事の継続的な摂取の期間が少なくとも3週間以上である請求項3~6のいずれかに記載のシニアの健康状態の改善方法。」、である。
【0017】
また、本願出願人は、本願第1~第7の発明において利用される栄養素が調整された食事についても意図している。
すなわち、本願第八の発明は、
「請求項1~7のいずれかに記載のシニアの健康状態の改善方法において摂取される、栄養素が調整された食事。」、である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法を利用し、栄養素が調整された食事を継続的に摂取することでシニアの健康状態を改善することができる。特に、認知機能検査、歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢からなる群より選択される一又は二以上のいずれかの健康指標により判断される健康状態を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】非認知症(健常~MCI)~認知症の程度を示した図である。
【
図2】本願の実施例におけるMPIスコア(認知機能指数)についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図3】本願の実施例における歩行機能についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図4】本願の実施例における5回椅子立ち上がりテストについての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図5】本願の実施例における総抗酸化能についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図6】本願の実施例におけるサーチュイン遺伝子発現量についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図7】精神的健康状態の評価におけるWHO-5の質問内容を示した図である。
【
図8】本願の実施例における精神的健康状態についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【
図9】本願の実施例における腸内菌叢についての試験食群とコントロール群の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の本発明の内容を詳細に説明する。
─シニア─
本発明におけるシニアとは50歳以上、60歳以上又は65歳以上の男女をいうものとする。
【0021】
─栄養素が調整された食事の一日の三食における摂取する時期─
本発明においては、後述する栄養素が調整された食事を一日の朝食、昼食及び夕食のうち、少なくとも一食以上において摂取する。また、一日の朝食、昼食及び夕食のうち、少なくとも二食以上において摂取することが好ましい。またこの場合、具体的には、朝食及び昼食、朝食及び夕食、昼食及び夕食のいずれかの組み合わせが可能である。また、さらに好ましくは朝食、昼食及び夕食の全食において栄養素が調整された食事を摂取する場合である。
【0022】
─エネルギー量─
本発明の調整食を摂取する期間において、一日における朝食、昼食及び夕食におけるエネルギー摂取量の総量については、特に限定されるものではないが、好ましくは、日本人の食事摂取基準(2019年12月24日)に従うことが好ましい。
すなわち、日本国厚生労働省は、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を5年毎に改定しており、2019年12月24日に「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(以下、「日本人の食事摂取基準」という)を公表している。
【0023】
「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、及び身体活動レベル(低い(I)、ふつう(II)、高い(III))の区分ごとに推定エネルギー必要量(kcal/日)が開示されており、当該設定エネルギー必要量に従うことが好ましい。
エネルギー量は、対象者の性別や年齢区分等に応じてさまざまに設定が可能である。
【0024】
次に、一日に摂取する総カロリー数のうち、調整食を摂取する食事(朝食、昼食、夕食から選択される二食)におけるカロリー数の占める割合が多いことが好ましい。尚、当該一日に摂取する総カロリー数は、予め設計しておくことが好ましい。
さらに、一日のうちの一食において後述する調整食を喫食する場合、残りの二食についての食事の内容については特に限定されない。
また、一日のうちの二食において後述する調整食を喫食する場合、一日のうちの二食において後述する調整食を喫食していれば、残りの一食における食事の内容については特に限定されない。
但し、好ましくは、調整食以外の食事の内容については、調整食に準じた栄養バランスに配慮した食事とすることが好ましい。
【0025】
─エネルギー比率─
本発明の栄養素の調整食においては、エネルギー比率においてタンパク質を14~20%又は15~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%の割合で含む栄養素が調整された食事、すなわち、PFCバランスを備えた調整食とする。
本タンパク質、脂質及び炭水化物の摂取バランスは、日本人の食事摂取基準の2020年度版において、エネルギー産生栄養素バランスとして記載されているものである。
【0026】
─タンパク質─
本発明の調整食におけるタンパク質量は上述のPFCバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のタンパク質量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して喫食する調整食において摂取するエネルギー量を基準エネルギー量(50歳以上における性別、及び身体活動レベルの各区分の推定エネルギー必要量の最小値)で割った値(調整食におけるエネルギー摂取率)を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0027】
ここで一日のタンパク質量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、エネルギー産生栄養素バランスにおけるタンパク質の食事摂取基準(目標量)は、男女とも50~64歳で14~20%、65歳以上で15~20%エネルギー/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))のタンパク質の目標量上限値を用いて算出した数値を、一日のタンパク質量の摂取上限値とすることができる。
この場合、一日のタンパク質の摂取上限値は70g/日(=1400kcal/4kcal×20%)となる。
【0028】
一方、一日のタンパク質量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、タンパク質の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~64歳で65g/日、65歳以上で60g/日に、女性では50歳以上は50g/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なタンパク質を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のタンパク質量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のタンパク質量の摂取下限値は65g/日となる。
【0029】
そして、調整食におけるタンパク質量は、このように設定した一日のタンパク質量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0030】
─脂質─
本発明の調整食における脂質量は上述のPFCバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の脂質量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0031】
ここで、一日の脂質量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、エネルギー産生栄養素バランスにおける脂質の食事摂取基準(目標量)は、男女とも50歳以上で20~30%エネルギー/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))の脂質の目標量上限値を用いて算出した数値を、一日の脂質量の摂取上限値とすることができる。
この場合、一日の脂質量の摂取上限値は46.7g/日(=1400kcal/9kcal×30%)となる。
【0032】
一方、一日の脂質量の摂取下限値は以下のように算出することが好適である。
50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))の脂質の目標量下限値を用いて算出した数値を、一日の脂質量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の脂質量の摂取下限値は31.1g/日(=1400kcal/9kcal×20%)となる。
【0033】
そして、調整食における脂質量は、このように設定した一日の脂質量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0034】
また、脂質のうち飽和脂肪酸量は摂取しすぎることが無いように考慮して設計することが良く、以下のように一日の飽和脂肪酸の摂取上限値を設け、当該摂取上限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0035】
ここで、一日の飽和脂肪酸量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、飽和脂肪酸の食事摂取基準(目標量)は、男女とも50歳以上で7%エネルギー/日以下に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))の飽和脂肪酸の目標量上限値を用いて算出した数値を、一日の飽和脂肪酸量の摂取上限値とすることができる。
この場合、一日の飽和脂肪酸量の摂取上限値は10.9g/日(=1400kcal/9kcal×7%)となる。
【0036】
そして、調整食における飽和脂肪酸量は、このように設定した一日の飽和脂肪酸量の摂取上限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0037】
さらに、脂質のうちn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量は適切な量を摂取できるように考慮して設計することが良く、以下のように一日におけるn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0038】
ここで、一日のn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸の食事摂取基準の目安量は、n-3系脂肪酸は男性では50~74歳で2.2g/日、75歳以上で2.1g/日、女性では50~64歳で1.9g/日、65~74歳で2.0g/日、75歳以上で1.8g/日に、またn-6系脂肪酸は男性では50~64歳で10g/日、65~74歳で9g/日、75歳以上で8g/日、女性では50~74歳で8g/日、75歳以上で7g/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なn-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸を摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値はそれぞれ、2.2g/日、10g/日となる。
【0039】
また、n-3系脂肪酸はシニア世代においては摂取不足とならないようにすることが好ましいと考えられており、一日のn-3系脂肪酸量の摂取下限値を2.2g/日より増やしてもよい。
【0040】
そして、調整食におけるn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量は、このように設定した一日のn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0041】
─炭水化物(食物繊維を含む)─
本発明の調整食における炭水化物量及び食物繊維量は上述のPFCバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の炭水化物量の摂取上限値及び摂取下限値、並びに一日の食物繊維量の摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0042】
ここで、一日の炭水化物量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、エネルギー産生栄養素バランスにおける炭水化物の食事摂取基準(目標量)は、男女とも50歳以上で50~65%エネルギー/日に設定されている。
そこで、性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))の炭水化物の目標量上限値を用いて算出した数値を、一日の炭水化物量の摂取上限値とすることができる。
この場合、一日の炭水化物量の摂取上限値は227.5g/日(=1400kcal/4kcal×65%)となる。
【0043】
一方、一日の炭水化物量の摂取下限値は以下のように算出することが好適である。
50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる各区分において推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、75歳以上、身体活動レベルI(低い))の炭水化物の目標量下限値を用いて算出した数値を、一日の炭水化物量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の炭水化物量の摂取下限値は175g/日(=1400kcal/4kcal×50%)となる。
【0044】
また、一日の食物繊維量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、食物繊維の食事摂取基準の目標量は、男性では50~64歳で21g/日以上、65歳以上で20g/日以上、女性では50~64歳で18g/日以上、65歳以上で17g/日以上に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分な食物繊維を摂取できるように、50歳以上の各区分の目標量の最大値を一日の食物繊維量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の食物繊維量の摂取下限値は21g/日となる。
【0045】
そして、調整食における炭水化物量及び食物繊維量は、このように設定した一日の炭水化物量の摂取上限値及び摂取下限値、並びに一日の食物繊維量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0046】
─ビタミン類、ミネラル類─
本発明では、栄養素が調整された食事においてビタミン類、ミネラル類の含有量が調整されることが必要である。以下に各栄養素の好ましい形態を示すが、これらのうち、少なくとも1以上の栄養素において調整されていればよいが、好ましくは、50歳以上において国民健康・栄養調査における栄養素等摂取量が食事摂取基準に対して20%以上不足しているビタミン、ミネラルである“ビタミンA”及び”カルシウムが少なくとも調整の対象として含まれていることが好ましい。
【0047】
さらに好ましくは、50歳以上において国民健康・栄養調査における栄養素等摂取量が食事摂取基準に対して不足しているビタミン、ミネラルである“ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1及びビタミンB2”及び“カルシウム、マグネシウム及び亜鉛”が少なくとも調整の対象として含まれていることがより好ましい。
最も好ましくは以下のビタミン及びミネラルの全てが調整対象として含まれていることである。
【0048】
〇ナトリウム(食塩相当量)
本発明の調整食における食塩相当量は摂取しすぎることが無いように考慮して設計することが良く、以下のように一日の食塩相当量の摂取上限値を設け、当該摂取上限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0049】
ここで、一日の食塩相当量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、食塩相当量の食事摂取基準(目標量)は、男性では50歳以上で7.5g/日未満、女性では50歳以上で6.5g/日未満に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記目標量を超えないように、各区分において下記の式により正規化食塩相当量を算出し、その中で最も少ない正規化食塩相当量を調整食における食塩相当量の摂取上限値とすることができる。
正規化食塩相当量=食塩相当量の目標量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日の食塩相当量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化食塩相当量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化食塩相当量が最小値で、3.56g/日(=7.5g×1400kcal/2950kcal)となる。
【0050】
そして、調整食における食塩相当量は、このように設定した一日の食塩相当量の摂取上限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0051】
また、食塩相当量は食事の味にも影響するものであるため、調整食における食塩相当量の摂取上限値は柔軟に考えることも可能である。例えば、日本栄養改善学会 日本給食経営管理学会 日本高血圧学会等のコンソーシアムにより審査・認証されるスマートミール基準では、一食あたりの食塩相当量の基準を「ちゃんと(450~650kcal)」は3.0g未満、「しっかり(650~850kcal)」は3.5g未満と設定しており、本基準に従ってもよい。
さらに、他の独自の基準を設定してもよい。例えば、450kcal未満の場合は、食塩相当量を2.5g未満としてもよい。また、850kcal以上の場合は4.0g未満としてもよい。
その他に、上述した設定方法以外の他の基準に従っても良いし、美味しく食べられて無理なく減塩できる基準を設定しても良い。
このように調整食における食塩相当量の摂取上限値を設けることが可能である。
【0052】
〇カルシウム
本発明の調整食におけるカルシウム量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のカルシウム量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0053】
ここで一日のカルシウム量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、カルシウムの食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で2500mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化カルシウム量を算出し、その中で最も少ない正規化カルシウム量を一日のカルシウム量の摂取上限値とすることができる。
正規化カルシウム量=カルシウムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のカルシウム量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化カルシウム量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化カルシウム量が最小値で、1186.4mg/日(=2500mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0054】
一方、一日のカルシウム量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、カルシウムの食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で750mg/日、75歳以上で700mg/日、女性では50~74歳は650mg/日、75歳以上で600mgに設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なカルシウムを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のカルシウム量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のカルシウム量の摂取下限値は750mg/日となる。
【0055】
そして、調整食におけるカルシウム量は、このように設定した一日のカルシウム量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0056】
〇鉄
本発明の調整食における鉄量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の鉄量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0057】
ここで一日の鉄量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、鉄の食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50歳以上で50mg/日、女性では50歳以上で40mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化鉄量を算出し、その中で最も少ない正規化鉄量を一日の鉄量の摂取上限値とすることができる。
正規化鉄量=鉄の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日の鉄量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化鉄量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化鉄量が最小値で、23.7mg/日(=50mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0058】
一方、一日の鉄量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、鉄の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で7.5mg/日、75歳以上で7.0mg/日、女性では50~64歳で6.5mg/日、65歳以上で6.0mgに設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分な鉄を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日の鉄量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の鉄量の摂取下限値は7.5mg/日となる。
【0059】
そして、調整食における鉄量は、このように設定した一日の鉄量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0060】
〇リン
本発明の調整食におけるリン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のリン量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0061】
ここで一日のリン量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、リンの食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で3000mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化リン量を算出し、その中で最も少ない正規化リン量を一日のリン量の摂取上限値とすることができる。
正規化リン量=リンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のリン量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化リン量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化リン量が最小値で、1423.7mg/日(=3000mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0062】
一方、一日のリン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、リンの食事摂取基準の目安量は、男性では50歳以上で1000mg/日、女性では50歳以上で800mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なリンを摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のリン量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のリン量の摂取下限値は1000mg/日となる。
【0063】
そして、調整食におけるリン量は、このように設定した一日のリン量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0064】
〇マグネシウム
本発明の調整食におけるマグネシウム量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のマグネシウム量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0065】
ここで、一日のマグネシウム量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、マグネシウムの食事摂取基準の推奨量は、男性では50~64歳で370mg/日、65~74歳で350mg/日、75歳以上で320mg/日、女性では50~64歳で290mg/日、65~74歳で280mg/日、75歳以上で260mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なマグネシウムを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のマグネシウム量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のマグネシウム量の摂取下限値は370mg/日となる。
【0066】
そして、調整食におけるマグネシウム量は、このように設定した一日のマグネシウム量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0067】
〇カリウム
本発明の調整食におけるカリウム量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のカリウム量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0068】
ここで、一日のカリウム量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、カリウムの食事摂取基準の目安量は、男性では50歳以上で2500mg/日、女性では50歳以上で2000mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なカリウムを摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のカリウム量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のカリウム量の摂取下限値は2500mg/日となる。
【0069】
そして、調整食におけるカリウム量は、このように設定した一日のカリウム量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0070】
〇銅
本発明の調整食における銅量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の銅量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対し調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0071】
ここで一日の銅量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、銅の食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で7mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化銅量を算出し、その中で最も少ない正規化銅量を一日の銅量の摂取上限値とすることができる。
正規化銅量=銅の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日の銅量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化銅量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化銅量が最小値で、3.3mg/日(=7mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0072】
一方、一日の銅量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、銅の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で0.9mg/日、75歳以上で0.8mg/日、女性では50歳以上で0.7mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分な銅を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日の銅量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の銅量の摂取下限値は0.9mg/日となる。
【0073】
そして、調整食における銅量は、このように設定した一日の銅量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0074】
〇ヨウ素
本発明の調整食におけるヨウ素量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のヨウ素量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0075】
ここで一日のヨウ素量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ヨウ素の食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で3000μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ヨウ素量を算出し、その中で最も少ない正規化ヨウ素量を一日のヨウ素量の摂取上限値とすることができる。
正規化ヨウ素量=ヨウ素の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のヨウ素量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ヨウ素量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ヨウ素量が最小値で、1423.7μg/日(=3000μg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0076】
なお、「日本人の食事摂取基準」におけるヨウ素の耐容上限量は習慣的摂取に対して定められたものであり、間欠的に耐容上限量を超えることは容認されており、本実施形態においても同様である。
【0077】
一方、一日のヨウ素量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ヨウ素の食事摂取基準の推奨量は、男女とも50歳以上で130μg/日に設定されている。
そこで、上記推奨量を一日のヨウ素量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のヨウ素量の摂取下限値は130μg/日となる。
【0078】
そして、調整食におけるヨウ素量は、このように設定した一日のヨウ素量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0079】
〇セレン
本発明の調整食におけるセレン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のセレン量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率)を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0080】
ここで一日のセレン量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、セレンの食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50~74歳で450μg/日、75歳以上で400μg/日、女性では50歳以上で350μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢、身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化セレン量を算出し、その中で最も少ない正規化セレン量を一日のセレン量の摂取上限値とすることができる。
正規化セレン量=セレンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のセレン量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化セレン量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化セレン量が最小値で、213.6μg/日(=450μg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0081】
一方、一日のセレン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、セレンの食事摂取基準の推奨量は、男性では50歳以上で30μg/日、女性では50歳以上で25μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なセレンを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のセレン量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のセレン量の摂取下限値は30μg/日となる。
【0082】
そして、調整食におけるセレン量は、このように設定した一日のセレン量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0083】
〇亜鉛
本発明の調整食における亜鉛量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の亜鉛量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0084】
ここで一日の亜鉛の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛の食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50~64歳で45mg/日、65歳以上で40mg/日、女性では50~74歳で35mg/日、75歳以上で30mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化亜鉛量を算出し、その中で最も少ない正規化亜鉛量を一日の亜鉛の摂取上限値とすることができる。
正規化亜鉛量=亜鉛の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日の亜鉛の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化亜鉛量を算出した結果、男性、65~74歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化亜鉛量が最小値で、20.4mg/日(=40mg×1400kcal/2750kcal)となる。
【0085】
一方、一日の亜鉛量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で11mg/日、75歳以上で10mg/日、女性では50歳以上で8mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分な亜鉛を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日の亜鉛量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の亜鉛量の摂取下限値は11mg/日となる。
【0086】
そして、調整食における亜鉛量は、このように設定した一日の亜鉛量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0087】
〇クロム
本発明の調整食におけるクロム量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のクロム量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0088】
ここで一日のクロム量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、クロムの食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で500μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化クロム量を算出し、その中で最も少ない正規化クロム量を一日のクロム量の摂取上限値とすることができる。
正規化クロム量=クロムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のクロム量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化クロム量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化クロム量が最小値で、237.3μg/日(=500μg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0089】
一方、一日のクロム量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、クロムの食事摂取基準の目安量は、男女とも50歳以上で10μg/日に設定されている。
そこで、上記目安量を一日のクロム量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のクロム量の摂取下限値は10μg/日となる。
【0090】
そして、調整食におけるクロム量は、このように設定した一日のクロム量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0091】
〇マンガン
本発明の調整食におけるマンガン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のマンガン量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0092】
ここで一日のマンガン量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、マンガンの食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で11mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化マンガン量を算出し、その中で最も少ない正規化マンガン量を一日のマンガン量の摂取上限値とすることができる。
正規化マンガン量=マンガンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のマンガン量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化マンガン量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化マンガン量が最小値で、5.2mg/日(=11mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0093】
一方、一日のマンガン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、マンガンの食事摂取基準の目安量は、男性では50歳以上で4.0mg/日、女性では50歳以上で3.5mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なマンガンを摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のマンガン量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のマンガン量の摂取下限値は4.0mg/日となる。
【0094】
そして、調整食におけるマンガン量は、このように設定した一日のマンガン量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0095】
〇モリブデン
本発明の調整食におけるモリブデン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のモリブデン量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0096】
ここで一日のモリブデン量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、モリブデンの食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50歳以上で600μg/日、女性では50歳以上で500μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化モリブデン量を算出し、その中で最も少ない正規化モリブデン量を一日のモリブデン量の摂取上限値とすることができる。
正規化モリブデン量=モリブデンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のモリブデン量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化モリブデン量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化モリブデン量が最小値で、284.7μg/日(=600μg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0097】
一方、一日のモリブデン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、モリブデンの食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で30μg/日、75歳以上で25μg/日、女性では50歳以上で25μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なモリブデンを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のモリブデン量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のモリブデン量の摂取下限値は30μg/日となる。
【0098】
そして、調整食におけるモリブデン量は、このように設定した一日のモリブデン量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0099】
〇ビタミンA
本発明の調整食におけるビタミンA量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンAの摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0100】
ここで一日のビタミンA量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンA量の食事摂取基準の耐容上限量はカロテノイドを除くレチノール活性当量として、男女とも50歳以上で2700μgRAE/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ビタミンA量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンA量を一日のビタミンA(カロテノイドを除くレチノール活性当量として)量の摂取上限値とすることができる。
正規化ビタミンA量=ビタミンA(カロテノイドを除くレチノール活性当量として)の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のビタミンA(カロテノイドを除くレチノール活性当量として)量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ビタミンA量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ビタミンA量が最小値で、1281.4μgRAE/日(=2700μgRAE×1400kcal/2950kcal)となる。
【0101】
一方、一日のビタミンA量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンAの食事摂取基準の推奨量はレチノール活性当量として、男性では50~64歳で900μgRAE/日、65~74歳で850μgRAE/日、75歳以上で800μgRAE/日、女性では50~74歳で700μgRAE/日、75歳以上で650μgRAE/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なビタミンAを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のビタミンA(レチノール活性当量として)量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンA(レチノール活性当量として)量の摂取下限値は900μgRAE/日となる。
【0102】
そして、調整食におけるビタミンA量は、このように設定した一日のビタミンA量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0103】
〇ビタミンD
本発明の調整食におけるビタミンD量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンD量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0104】
ここで一日のビタミンD量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンDの食事摂取基準の耐容上限量は、男女とも50歳以上で100μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ビタミンD量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンD量を一日のビタミンD量の摂取上限値とすることができる。
正規化ビタミンD量=ビタミンDの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のビタミンD量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ビタミンD量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ビタミンD量が最小値で、47.5μg/日(=100μg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0105】
一方、一日のビタミンD量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンDの食事摂取基準の目安量は、男女とも50歳以上で8.5μg/日に設定されている。
そこで、上記目安量を一日のビタミンD量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンD量の摂取下限値は8.5μg/日となる。
【0106】
また、ビタミンDについては、骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年度版(日本骨粗鬆症学会))において少なくならないようにすることが好ましいと考えられていることから、一日のビタミンD量の摂取下限値を8.5μg/日よりも多くしてもよい。例えば、好ましくは一日のビタミンD量の摂取下限値を10μg/日としてもよい。
【0107】
そして、調整食におけるビタミンD量は、このように設定した一日のビタミンD量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0108】
〇ビタミンE
本発明の調整食におけるビタミンE量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンE量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0109】
ここで一日のビタミンE量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンEの食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50~74歳で850mg/日、75歳以上で750mg/日、女性では50~64歳で700mg/日、65歳以上で650mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ビタミンE量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンE量を一日のビタミンE量の摂取上限値とすることができる。
正規化ビタミンE量=ビタミンEの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のビタミンE量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ビタミンE量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ビタミンE量が最小値で、403.4mg/日(=850mg×1400kcal/2950kcal)となる。
【0110】
一方、一日のビタミンE量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンEの食事摂取基準の目安量は、男性では50~74歳で7.0mg/日、75歳以上で6.5mg/日、女性では50~64歳で6.0mg/日、65歳以上で6.5mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なビタミンEを摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のビタミンE量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンE量の摂取下限値は7.0mg/日となる。
【0111】
そして、調整食におけるビタミンE量は、このように設定した一日のビタミンE量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0112】
〇ビタミンK
本発明の調整食におけるビタミンK量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンK量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食おけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0113】
ここで、一日のビタミンK量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンKの食事摂取基準の目安量は、男女とも50歳以上で150μg/日に設定されている。
そこで、上記目安量を一日のビタミンK量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンK量の摂取下限値は150μg/日となる。
【0114】
そして、調整食におけるビタミンK量は、このように設定した一日のビタミンK量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0115】
〇ビタミンB1
本発明の調整食におけるビタミンB1量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンB1量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0116】
ここで、一日のビタミンB1量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB1の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で1.3mg/日、75歳以上で1.2mg/日、女性では50~74歳で1.1mg/日、75歳以上で0.9mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なビタミンB1を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のビタミンB1量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンB1量の摂取下限値は1.3mg/日となる。
【0117】
そして、調整食におけるビタミンB1量は、このように設定した一日のビタミンB1量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0118】
〇ビタミンB2
本発明の調整食におけるビタミンB2量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンB2量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0119】
ここで、一日のビタミンB2量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB2の食事摂取基準の推奨量は、男性では50~74歳で1.5mg/日、75歳以上で1.3mg/日、女性では50~74歳で1.2mg/日、75歳以上で1.0mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なビタミンB2を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のビタミンB2量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンB2量の摂取下限値は1.5mg/日となる。
【0120】
そして、調整食におけるビタミンB2量は、このように設定した一日のビタミンB2量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0121】
〇ナイアシン
本発明の調整食におけるナイアシン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のナイアシン量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0122】
ここで一日のナイアシン量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ナイアシンの食事摂取基準の耐容上限量はニコチン酸として、男性では50~64歳で85mg/日、65~74歳で80mg/日、75歳以上で75mg/日、女性では50~74歳で65mg/日、75歳以上で60mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ニコチン酸量を算出し、その中で最も少ない正規化ニコチン酸量を一日のナイアシン(ニコチン酸として)量の摂取上限値とすることができる。
正規化ニコチン酸量=ナイアシン(ニコチン酸として)の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のナイアシン(ニコチン酸として)量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ニコチン酸量を算出した結果、男性、50~64歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ニコチン酸量が最小値で、40.3mg/日(=85mg×1400kcal/2950kcal)となる。
なお、ナイアシン量の摂取上限値は強化されたニコチン酸あるいはニコチン酸アミドについて考慮すればよい。
【0123】
一方、一日のナイアシン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ナイアシンの食事摂取基準の推奨量はナイアシン当量として、男性では50~74歳で14mgNE/日、75歳以上で13mgNE/日、女性では50~74歳で11mgNE/日、75歳以上で10mgNE/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なナイアシンを摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のナイアシン(ナイアシン当量として)量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のナイアシン(ナイアシン当量として)量の摂取下限値は14mgNE/日となる。
【0124】
そして、調整食におけるナイアシン量は、このように設定した一日のナイアシン量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0125】
〇ビタミンB6
本発明の調整食におけるビタミンB6量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンB6量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0126】
ここで一日のビタミンB6量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB6の食事摂取基準の耐容上限量は、男性では50~64歳で55mg/日、65歳以上で50mg/日、女性では50~64歳で45mg/日、65歳以上で40mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化ビタミンB6量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンB6量を一日のビタミンB6量の摂取上限値とすることができる。
正規化ビタミンB6量=ビタミンB6の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日のビタミンB6量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化ビタミンB6量を算出した結果、男性、65~74歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化ビタミンB6量が最小値で、25.5mg/日(=50mg×1400kcal/2750kcal)となる。
【0127】
一方、一日のビタミンB6量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB6の食事摂取基準の推奨量は、男性では50歳以上で1.4mg/日、女性では50歳以上で1.1mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なビタミンB6を摂取できるように、50歳以上の各区分の推奨量の最大値を一日のビタミンB6量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンB6量の摂取下限値は1.4mg/日となる。
【0128】
また、一日のビタミンB6量の摂取下限値は、タンパク質量から補正した1.5mg/日としてもよい。
【0129】
そして、調整食におけるビタミンB6量は、このように設定した一日のビタミンB6量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0130】
〇ビタミンB12
本発明の調整食におけるビタミンB12量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンB12量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0131】
ここで、一日のビタミンB12量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB12の食事摂取基準の推奨量は、男女とも50歳以上で2.4μg/日に設定されている。
そこで、上記推奨量を一日のビタミンB12量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンB12量の摂取下限値は2.4μg/日となる。
【0132】
そして、調整食におけるビタミンB12量は、このように設定した一日のビタミンB12量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0133】
〇ビオチン
本発明の調整食におけるビオチン量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビオチン量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0134】
ここで、一日のビオチン量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビオチンの食事摂取基準の目安量は、男女とも50歳以上で50μg/日に設定されている。
そこで、上記目安量を一日のビオチン量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビオチン量の摂取下限値は50μg/日となる。
【0135】
そして、調整食におけるビオチン量は、このように設定した一日のビオチン量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0136】
〇ビタミンC
本発明の調整食におけるビタミンC量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のビタミンC量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0137】
ここで、一日のビタミンC量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンCの食事摂取基準の推奨量は、男女とも50歳以上で100mg/日に設定されている。
そこで、上記推奨量を一日のビタミンC量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のビタミンC量の摂取下限値は100mg/日となる。
【0138】
そして、調整食におけるビタミンC量は、このように設定した一日のビタミンC量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0139】
〇パントテン酸
本発明の調整食におけるパントテン酸量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日のパントテン酸量の摂取下限値を設け、当該摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0140】
ここで、一日のパントテン酸量の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、パントテン酸の食事摂取基準の目安量は、男性では50歳以上で6mg/日、女性では50歳以上で5mg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別及び年齢の異なる利用者が十分なパントテン酸を摂取できるように、50歳以上の各区分の目安量の最大値を一日のパントテン酸量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日のパントテン酸量の摂取下限値は6mg/日となる。
【0141】
そして、調整食におけるパントテン酸量は、このように設定した一日のパントテン酸量の摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0142】
〇葉酸
本発明の調整食における葉酸量はバランスを考慮して設計することが良く、以下のように一日の葉酸量の摂取上限値及び摂取下限値を設け、当該摂取上限値及び摂取下限値に対して調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることが好ましい。
【0143】
ここで一日の葉酸量の摂取上限値は以下のように算出することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、葉酸の食事摂取基準の耐容上限量は非天然型のプテロイルモノグルタミン酸として、男女とも50~64歳で1000μg/日、65歳以上で900μg/日に設定されている。
そこで、50歳以上の性別、年齢及び身体活動レベルの異なる区分のすべての利用者が上記耐容上限量を超えないように、各区分において下記の式により正規化葉酸量を算出し、その中で最も少ない正規化葉酸量を一日の葉酸(非天然型のプテロイルモノグルタミン酸として)量の摂取上限値とすることができる。
正規化葉酸量=葉酸(非天然型のプテロイルモノグルタミン酸として)の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
この場合、一日の葉酸(非天然型のプテロイルモノグルタミン酸として)量の摂取上限値は、50歳以上の各区分において正規化葉酸量を算出した結果、男性、65~74歳、身体活動レベルIIIの区分の数値で計算した正規化葉酸量が最小値で、458.2μg/日(=900μg×1400kcal/2750kcal)となる。
なお、一日の葉酸量の摂取上限値は強化された非天然型のプテロイルモノグルタミン酸量について考慮すればよく、食事性葉酸量を考慮する必要はない。
【0144】
一方、一日の葉酸の摂取下限値は以下のように設定することが好適である。
「日本人の食事摂取基準」では、葉酸の食事摂取基準の推奨量は、男女とも50歳以上で240μg/日に設定されている。
そこで、上記推奨量を一日の葉酸量の摂取下限値とすることができる。
この場合、一日の葉酸量の摂取下限値は240μg/日となる。
【0145】
そして、調整食における葉酸量は、このように設定した一日の葉酸量の摂取上限値及び摂取下限値に対して、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲となるようにすることができる。
【0146】
また、栄養素の摂取上限値及び摂取下限値は、食事摂取基準の改定に応じ数値を合理的に見直すことが望ましい。
【0147】
─栄養素が調整された食事─
上記の栄養素の調整のために、朝食、昼食及び夕食において、野菜や穀物、畜肉、魚等及びこれらの加工品を必要に応じて、焼く、煮る、蒸す、揚げる等の方法により調理し、必要に応じて調味料により味付けされたものを提供するメニューを基本とし、これ以外に補助的に栄養補助食品、食品添加物、機能性原料、各種塩類等を利用して各種の栄養素の不足を補ってもよいことは勿論である。
【0148】
─継続的に摂取する─
本発明では、上記のビタミン類及びミネラル類の栄養素が所定量の範囲に調整された食事を継続的に摂取することを必要とする。本発明にいう継続的に摂取するとは、連続的にかつ所定期間の調整食の摂取を継続することをいう。
ここで、連続的にとは種々の態様が可能であるが、例えば、毎日摂取する場合が挙げられる。また、一週間のうちの平日のみ(土日は除く)に摂取する方法が挙げられる。さらに、2日摂取し1日無しのパターンで摂取することも可能である。加えて、隔日の摂取方法も考えらえる。
【0149】
尚、調整食を摂取する頻度については、概ねその割合が20~100%程度の範囲が可能である。また、45~100%程度の範囲が好ましい。さらに、70~100%程度がより好ましい。
次に、継続する期間については、毎日摂取する方法では、2~3週間以上継続することが好ましい。例えば、3週間、6週間、12週間又は18週間等が例として挙げられる。
また、一週間のうちの平日のみ(土日は除く)の継続摂取では3週間以上継続することが好ましい。
また、喫食者の日常の問題等により、摂取すべき日がイレギュラーに欠ける場合であっても全体として継続的な摂取を実現することができれば可能であることは勿論である。
すなわち、所定期間の長さにおいて上記の調整食を摂取したことが認められるものであればよい。
【0150】
─健康状態の改善─
本発明にいう健康状態の改善とは、世界保健機関WHOの憲章にもあるように,「健康とはただ疾病や傷害がないだけでなく,肉体的,精神的ならびに社会的に完全に快適な状態であること」と定義されている。
また、一般的には個人の健康条件としては次のようなことがあげられる。疾病のないこと,食欲が十分あり便通がよいこと,元気がよく疲れにくいこと,睡眠が十分とれること,抵抗力があり病気にかかりにくいこと,姿勢がよく身体の調和がとれていること,発育が正常であることをいう。
【0151】
そして、このような健康状態とは、種々の健康指標によって判断される。健康指標の具体例としては、体重、BMI、体脂肪率、血中中性脂肪、 LDL-コレステロール、血糖値、血圧、骨密度、プレゼンティーズム、QOL、気分状態、疲労感、ストレス、排便状況、腸内菌叢、睡眠状況、平均寿命、有病率等の健康指標により判断される。
特に本発明においてはシニアの健康状態の改善を目的としており、本発明における栄養素が調整された食事を継続的に摂取することによって、認知機能検査、歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢から選択される一又は二以上の健康指標により判断される健康状態を改善することが可能である。
【実施例0152】
以下に本発明の実施例を記載する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〈試験方法〉
本発明における調整食を一日に二食摂取した場合の健康状態の変化をコントロール群や摂取前と比較し検討するため、シニア世代の男女(60歳~74歳、平均年齢:64.9±3.7歳)を対象に、オープンラベルのランダム化比較試験を実施した。詳細は以下の通りである。
─被験者─
試験に参加した被験者は110名であった。男性は55名、女性は55名であった。
─選択基準─
表1に記載する改訂日本版CHS基準で1項目以上該当する方、すなわちプレフレイル以上(フレイルを含む)に該当する方とした。
【0153】
【表1】
また、認知機能検査における評価が健常~MCIの範囲の方とし、調整食を完食できる方を選択対象とした。従って、健常~MCIの範囲の方であっても食が細い人や嚥下障害者は含めないこととした。さらに、食物アレルギーのある方、運動療法、食事療法中の方は除外することとした。
【0154】
─群構成─
群構成としては、コントロール群(食事非介入)及び試験食群(調整食介入)について合計110人のうち、各群55名とした。また、各群とも、週3~5回程度のレジスタンス運動を必須とした。
─調整食の摂取期間─
摂取期間は12週間とした。
【0155】
─調整食のメニュー─
調整食のメニューについては表2に示す通りの20種類とした。これを2週間ごとに28食分を被験者の自宅に届け、被験者はこの中から任意に選択して調整食を摂取した。
【0156】
【0157】
─調整食の摂取タイミング─
調整食の摂取タイミングは、朝食、昼食及び夕食のうちの二食として、どのタイミングで摂取してもよいとした。尚、調整食以外の食事及び間食は自由に摂取できることとした。
【0158】
─解析対象者及び解析方法─
解析対象者は、上記摂取期間中に調整食の摂取率が80%未満の方、レジスタンス運動の実施頻度が多すぎる人と少なすぎる方、体の痛みで指定のレジスタンス運動が実施できていない方などを除いた被験者とした。
また、解析方法は2群間を比較する検定方法として“t検定”または“マン・ホイットニーのU検定”を利用した。また、同一群内で前後比較する検定方法として“対応のあるt検定”または“ウィルコクソンの符号付順位検定”を利用した。また有意水準は0.05とした。
【0159】
─調整食─
調整食のエネルギー量及び各栄養素量の範囲は以下のように調整した。
【0160】
各調整食のエネルギー量はメニューによって異なるが、 一食あたり概ね500kcalとなるように調整した。
【0161】
・PFCバランス
調整食のPFCバランスは、タンパク質を14~20%、脂質を20~30%、炭水化物を50~65%の割合とした。
【0162】
・タンパク質
調整食一食あたりのタンパク質量は、一日のタンパク質量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ70g/日及び65g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0163】
・脂質
調整食一食あたりの脂質量は、一日の脂質量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ46.7g/日及び31.1g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0164】
次に、調整食一食あたりの飽和脂肪酸量は、一日の飽和脂肪酸量の摂取上限値を10.9g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0165】
また、調整食一食あたりのn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量は、一日のn-3系脂肪酸量及びn-6系脂肪酸量の摂取下限値をそれぞれ2.63g/日及び10g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0166】
・炭水化物
調整食一食あたりの炭水化物量は、一日の炭水化物量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ227.5g/日及び175g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
次に、調整食一食あたりの食物繊維量は、一日の食物繊維量の摂取下限値を21g/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
〇ミネラル類及びビタミン類
【0167】
・ナトリウム(食塩相当量)
調整食一食あたりのナトリウム量は、食塩相当量として3.0g未満となるように調整した。
【0168】
・カルシウム
調整食一食あたりのカルシウム量は、一日のカルシウム量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ1186.4mg/日及び750mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0169】
・鉄
調整食一食あたりの鉄量は、一日の鉄量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ23.7mg/日及び7.5mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0170】
・リン
調整食一食あたりのリン量は、一日のリン量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ1423.7mg/日及び1000mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0171】
・マグネシウム
調整食一食あたりのマグネシウム量は、一日のマグネシウム量の摂取下限値を370mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0172】
・カリウム
調整食一食あたりのカリウム量は、一日のカリウム量の摂取下限値を2500mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0173】
・銅
調整食一食あたりの銅量は、一日の銅量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ3.3mg/日及び0.9mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0174】
・ヨウ素
調整食一食あたりのヨウ素量は、一日のヨウ素量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ1423.7μg/日及び130μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0175】
・セレン
調整食一食あたりのセレン量は、一日のセレン量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ213.6μg/日及び30μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した
【0176】
・亜鉛
調整食一食あたりの亜鉛量は、一日の亜鉛量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ20.4mg/日及び11mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0177】
・クロム
調整食一食あたりのクロム量は、一日のクロム量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ237.3μg/日及び10μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0178】
・マンガン
調整食一食あたりのマンガン量は、一日のマンガン量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ5.2mg/日及び4mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0179】
・モリブデン
調整食一食あたりのモリブデン量は、一日のモリブデン量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ284.7μg/日及び30μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0180】
・ビタミンA
調整食一食あたりのビタミンA量は、一日のビタミンA量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ1281.4μgRAE/日(カロテノイドを除くレチノール活性当量として)及び900μgRAE/日(レチノール活性当量として)とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0181】
・ビタミンD
調整食一食あたりのビタミンD量は、一日のビタミンD量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ47.5μg/日及び10μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0182】
・ビタミンE
調整食一食あたりのビタミンE量は、一日のビタミンE量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ403.4mg/日及び7.0mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0183】
・ビタミンK
調整食一食あたりのビタミンK量は、一日のビタミンK量の摂取下限値を150μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0184】
・ビタミンB1
調整食一食あたりのビタミンB1量は、一日のビタミンB1量の摂取下限値を1.3mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0185】
・ビタミンB2
調整食一食あたりのビタミンB2量は、一日のビタミンB2量の摂取下限値を1.5mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0186】
・ナイアシン
調整食一食あたりのナイアシン量は、一日のナイアシン量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ40.3mg/日(ニコチン酸として)及び14mgNE/日(ナイアシン当量として)とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0187】
・ビタミンB6
調整食一食あたりのビタミンB6量は、一日のビタミンB6量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ25.5mg/日及び1.5mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0188】
・ビタミンB12
調整食一食あたりのビタミンB12量は、一日のビタミンB12量の摂取下限値を2.4μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0189】
・ビオチン
調整食一食あたりのビオチン量は、一日のビオチン量の摂取下限値を50μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0190】
・ビタミンC
調整食一食あたりのビタミンC量は、一日のビタミンC量の摂取下限値を100mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0191】
・パントテン酸
調整食一食あたりのパントテン酸量は、一日のパントテン酸量の摂取下限値を6mg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0192】
・葉酸
調整食一食あたりの葉酸量は、一日の葉酸量の摂取上限値及び摂取下限値をそれぞれ458.2μg/日(非天然型のプテロイルモノグルタミン酸として)及び240μg/日とし、調整食におけるエネルギー摂取率を乗じて得られた数値の範囲で調整した。
【0193】
・その他の事項
上記各栄養素が調整された食事は、野菜や穀物、畜肉、魚等及びこれらの加工品を必要に応じて、焼く、煮る、蒸す、揚げる等の方法により調理し、必要に応じて調味料により味付けされたものを提供するメニューを基本とし、これ以外に補助的に栄養補助食、食品添加物、機能性原料、各種塩類等を利用して各種の栄養素の不足を補った。
【0194】
<結果>
12週間の試験期間のうち、試験開始時、12週間後の認知機能検査、歩行機能(10m歩行速度)、5回椅子立ち上がりテスト、総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態、腸内菌叢の各項目について、コントロール群及び試験群の結果を対比することとした。
【0195】
以下に内容及び結果につき詳細を示す。
1.認知機能検査
MCI Screenの日本語版を使用した。この検査は、
図1に示すように健常~MCI群における認知機能の定量的経時評価が可能なスケールであり、MPIスコア(認知機能指数)として0~100でスコア化され、スコアが高い方が良好な結果となる。結果を
図2に示す。
─結果─
MPIスコアは、試験食群では12週検査で有意な改善が確認され、一方でコントロール群では有意な改善が確認されなかった。また、12週後の試験食群の変化量はコントロール群と比べて有意な改善が確認された。
【0196】
2.歩行機能(10m普通歩行速度)
普通歩行(普段歩いている、最も気持ちの良い速度)速度として、10mの歩行距離を1/100秒単位で測定し、その歩行速度を算出した。尚、2回の平均値を採用した。結果を
図3に示す。
─結果─
10m普通歩行速度は、12週後の試験食群の変化量はコントロール群と比べて有意な改善が確認された。
【0197】
3.5回椅子立ち上がりテスト
両手を胸の前で交差させて椅子に座り、その状態から膝を伸ばした状態まで立ち上がり、再び椅子に座るという動作を5回連続で実施した時間を測定した。尚、短い休憩を挟み2回実施し、良い方の測定値を採用した。結果を
図4に示す。
─結果─
5回椅子立ち上がりテストは、試験食群では12週検査で有意な改善が確認され、一方でコントロール群では有意な改善が確認されなかった。
【0198】
4.総抗酸化能
総抗酸化能(STAS:serum total anti-oxidant status)として、血清中の総抗酸化能をABTSラジカル消去能により測定、評価した。尚、数値が高いほど総抗酸化能が高い。結果を
図5に示す。
─結果─
総抗酸化能は、試験食群では12週検査で有意な改善が確認され、一方でコントロール群では有意な改善が確認されなかった。また、12週後の試験食群の変化量はコントロール群と比べて有意な改善が確認された。
【0199】
5.サーチュイン遺伝子発現量
サーチュイン遺伝子の発現量は内臓脂肪面積やメタボ診断基準項目該当数と逆相関があり、サーチュイン遺伝子の発現量(SIRT1mRNA発現量)が高いほど好ましい結果と考えられている。尚、サーチュイン遺伝子の発現量の測定は定量RT-PCR法により行った。結果を
図6に示す。
─結果─
サーチュイン遺伝子発現量は、試験食群では12週検査で有意な増加が確認され、一方、コントロール群では有意な増加が確認されなかった。
【0200】
6.精神的健康状態
精神的健康状態については、WHO-5(精神的健康状態表)で評価した。WHO-5とは、WHOが開発した簡易的な精神的健康状態の指標の測定ツールであり(
図7)、アウトプットは5項目質問の合計点とした。結果を
図8に示す。
─結果─
WHO-5の合計点は、試験食群では12週検査で有意な改善が確認され、一方でコントロール群では有意な改善が確認されなかった。また、12週後の試験食群の変化量はコントロール群と比べて有意な改善が確認された。
【0201】
7. 腸内菌叢
被験者の腸内菌叢の状態について検査した。検査結果を
図9に示す。尚、腸内菌叢の測定については16SrRNA菌叢解析により得られた各菌の占有率とした。
─結果─
加齢や疾病により減少が報告されているブラウティア属や酪酸産生菌に分類されるアナエロスティペス属の占有率は、試験食群では12週検査で有意な増加が確認され、一方でコントロール群では有意な増加が確認されなかった。さらに、12週後の試験食群におけるこれらの腸内細菌占有率の変化量はコントロール群と比べて有意な増加が確認された。
また、悪玉菌が多く含まれるプロテオバクテリア門の占有率は試験食群では12週検査で減少が、大腸がん患者に多いとの報告があるフソバクテリウム属の占有率は12週検査で有意な減少が確認され、一方でコントロール群では有意な減少が確認されなかった。さらに、12週後の試験食群におけるこれらの腸内細菌の占有率の変化量はコントロール群と比べて有意な減少が確認された。
以上より、調整食の摂取がシニアの腸内環境に良い影響を及ぼしていることが示唆された。
【0202】
─結論─
本発明における調整食をシニア世代の男女が一日に二食摂取した場合、オープンラベルのランダム化比較試験により、その健康状態として認知機能や運動機能(歩行機能、5回椅子立ち上がりテスト)、血清中の総抗酸化能、サーチュイン遺伝子発現量、精神的健康状態及び腸内菌叢の占有率において有意な改善が確認され、このような調整食を継続的に摂取することがシニアの健康状態の改善に有用であると考えられた。