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特開2024-122663樹脂組成物、成形品、および、ペレット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122663
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、および、ペレット
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240902BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240902BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240902BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L67/02 ZAB
C08L25/04
C08K7/14
C08L69/00
C08J5/00 CET
C08J5/00 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030335
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】角 洋幸
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA22
4F071AA45
4F071AA50
4F071AA81
4F071AA88
4F071AB03
4F071AB28
4F071AC10
4F071AC11
4F071AC12
4F071AC15
4F071AD01
4F071AE05
4F071AE09
4F071AE11
4F071AE17
4F071AF01
4F071AF14
4F071AF17
4F071AF20
4F071AF23
4F071AF45
4F071AF54
4F071AH07
4F071AH11
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC01
4F071BC03
4F071BC12
4J002BC03X
4J002BC04X
4J002BC05X
4J002BC06X
4J002BN15X
4J002BP01X
4J002CF07W
4J002CG013
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD040
4J002FD060
4J002FD090
4J002FD160
(57)【要約】
【課題】高剛性のガラス繊維を配合した樹脂組成物であって、成形品の反りが抑制され、曲げ物性等の機械強度に優れた樹脂組成物、成形品、および、ペレットの提供。
【解決手段】 ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂とを含み、ポリスチレン系樹脂が、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が3.20以上であり、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、弾性率が85GPa以上のガラス繊維を20質量部以上含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂とを含み、
ポリスチレン系樹脂が、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が3.20以上であり、
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、弾性率が85GPa以上のガラス繊維を20質量部以上含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ガラス繊維の弾性率が90GPa以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を40質量部以上の割合で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を80質量部以上の割合で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂の割合が、40~85質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.3~0.8dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、ポリカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート樹脂がリサイクル品を含む、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物中のガラス繊維を除く成分のリサイクル品の占める割合が20質量%以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン樹脂および/またはゴム強化ポリスチレン樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ガラス繊維の弾性率が90GPa以上であり、
前記樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂の割合が、40~85質量部であり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.3~0.8dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であり、
さらに、ポリカーボネート樹脂を含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を40質量部以上の割合で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1、2または12に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項14】
請求項1、2または12に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項15】
請求項14に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、および、ペレットに関する。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂を主要成分として含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、耐薬品性および電気絶縁性等に優れることから、電気電子機器部品、自動車用内外装部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
【0003】
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶性樹脂であるため、成形収縮率が大きく、特にガラス繊維を配合した際には、成形品が反ってしまう場合がある。そこで、反りの低減の為、種々の非晶性樹脂を混合する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、(A)固有粘度IVが0.3~0.8のポリブチレンテレフタレート樹脂15~45質量部と(B)スチレン系ポリマー55~85質量部の合計100質量部に対し、(C)ガラス繊維10~150質量部を含有し、(B)スチレン系ポリマーが、(B-1)250℃、912sec-1における溶融粘度が70~500pa・sの範囲にあるポリスチレン系樹脂と(B-2)スチレン系エラストマーからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-069942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記樹脂組成物は、成形品の反りを効果的に抑制できるものである。
しかしながら、近年、ポリブチレンテレフタレート樹脂とスチレン系樹脂を含む樹脂組成物の用途拡大に伴い、高剛性のガラス繊維を含む樹脂組成物が求められる。そして、本発明者が検討を行ったところ、高剛性のガラス繊維を配合した場合、成形品の反りや曲げ物性等の機械的強度が劣る場合があることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高剛性のガラス繊維を配合した樹脂組成物であって、成形品の反りが抑制され、曲げ物性等の機械強度に優れる樹脂組成物、成形品、および、ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、所定のポリスチレン系樹脂を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂とを含み、
ポリスチレン系樹脂が、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が3.20以上であり、
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、弾性率が85GPa以上のガラス繊維を20質量部以上含む、
樹脂組成物。
<2>前記ガラス繊維の弾性率が90GPa以上である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を40質量部以上の割合で含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を80質量部以上の割合で含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂の割合が、40~85質量部である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.3~0.8dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>さらに、ポリカーボネート樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記ポリカーボネート樹脂がリサイクル品を含む、<8>に記載の樹脂組成物。
<10>前記樹脂組成物中のガラス繊維を除く成分のリサイクル品の占める割合が20質量%以上である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン樹脂および/またはゴム強化ポリスチレン樹脂を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>前記ガラス繊維の弾性率が90GPa以上であり、
前記樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂の割合が、40~85質量部であり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.3~0.8dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であり、
さらに、ポリカーボネート樹脂を含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ガラス繊維を40質量部以上の割合で含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<14><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<15><14>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高剛性のガラス繊維を配合した樹脂組成物であって、成形品の反りが抑制され、曲げ物性等の機械強度に優れた樹脂組成物、成形品、および、ペレットを提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書においてガラス転移温度(Tg、ガラス転移点ということもある)は、特に述べない限り、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂とを含み、ポリスチレン系樹脂が、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が3.20以上であり、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、弾性率が85GPa以上のガラス繊維を20質量部以上含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、成形品の反りが抑制され、曲げ物性等の機械強度に優れた樹脂組成物が得られる。
この理由は、ガラスの弾性率が高いので、練りこみ時や成形時において、ガラスの繊維長が保持されるためであると推測される。
【0010】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
【0011】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0012】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記テレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂が共重合体である場合、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全単位中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、成形収縮率が小さくおよび耐衝撃性が高い成形品が得られるため好ましい。
【0014】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、5eq/ton以上が好ましい。
【0015】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.3dL/g以上であることが好ましく、0.5dL/g以上であることがより好ましく、0.6dL/g以上であることがさらに好ましい。前記固有粘度は、2dL/g以下であることが好ましく、1.5dL/g以下であることがより好ましく、1.0dL/g以下であることがさらに好ましく、0.8dL/g以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0017】
固有粘度は以下の方法で測定される。
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒中に、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットを、濃度が1.00g/dLとなるように110℃で1時間攪拌して溶解させる。その後、30℃まで冷却する。全自動溶液粘度計にて、30℃で試料溶液の落下秒数、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、式により固有粘度を算出する。
固有粘度=((1+4KHηsp0.5-1)/(2KHC)
ここで、ηsp=η/η0-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
全自動溶液粘度計は、柴山科学社製のものを用いる。
本実施形態の樹脂組成物がポリブチレンテレフタレート樹脂を2種以上含む場合は、混合物の固有粘度とする。
【0018】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式やバッチ式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0019】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、用途等に応じて、10質量%以上、12質量%以上であってもよい。また、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、用途等に応じて、20質量%以下、15質量%以下であってもよい。
【0021】
<ポリスチレン系樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.20以上であるポリスチレン系樹脂を含む。
この様にある程度分子量が大きく、かつ、分子量分布が大きめのポリスチレン系樹脂を用いることにより、樹脂組成物に高剛性のガラス繊維を配合しても、成形品の反りを抑制できる。
【0022】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.00×105以上であり、2.20×105以上であってもよく、2.30×105以上であってもよく、また、5.00×105以下であることが好ましく、4.00×105以下であることがより好ましく、3.50×105以下であることがさらに好ましく、3.00×105以下であることが一層好ましく、2.90×105以下であってもよく、2.85×105以下であってもよく、2.80×105以下であってもよい。前記下限値以上とすることにより、機械物性がより向上する傾向にある。前記上限値以下とすることにより、成形時の流動性が向上する傾向にある。
【0023】
前記ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、3.20以上であり、3.50以上であってもよく、4.00以上であってもよく、4.50以上であってもよく、また、7.00以下であることが好ましく、6.00以下であることがより好ましく、5.00以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、ウェルド強度がより向上する傾向にある。
このようなMwおよび分子量分布を満たすポリスチレン系樹脂は、複数種のリサイクルポリスチレン系樹脂をブレンドすることによっても達成できる。
【0024】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、リサイクル品を含むことが好ましい。
リサイクルポリスチレン系樹脂としては、成形品の端材や不合格品、回収された使用済ポリスチレン系樹脂成形体を粉砕、洗浄して再利用するマテリアルリサイクルにより得られたもの、ケミカルリサイクル(化学分解法)より得られたもの等が挙げられる。
本実施形態においては、樹脂組成物に含まれるポリスチレン系樹脂のうち、80質量%以上がリサイクル品であることが好ましく、85質量%以上がリサイクル品であることがより好ましく、90質量%以上がリサイクル品であることがさらに好ましく、95質量%以上がリサイクル品であることが一層好ましく、97質量%以上がリサイクル品であることが特に一層好ましい。また、樹脂組成物に含まれるポリスチレン系樹脂の100質量%がリサイクル品であってもよい。
【0025】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、マグネシウム元素、カルシウム元素、鉄元素および亜鉛元素の少なくとも1種を含むことが好ましい。尚、各種元素は、ポリスチレン系樹脂の中で必ずしも元素単体として存在している必要はなく、化合物の一部として含まれていてもよい。本実施形態においては、後述する実施例で述べる<金属元素の量の測定>の測定値を前記金属元素の量とする。
【0026】
前記ポリスチレン系樹脂は、マグネシウム元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むものであってよい。前記マグネシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、350.0質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解性がより向上する傾向にある。
【0027】
前記ポリスチレン系樹脂が、カルシウム元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むものであってよい。前記カルシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、200.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましく、150.0質量ppm以下であることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解性がより向上する傾向にある。
【0028】
前記ポリスチレン系樹脂が、鉄元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むものであってよい。前記鉄元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、200.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解がより向上する傾向にある。
【0029】
前記ポリスチレン系樹脂が、亜鉛元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むものであってよい。前記亜鉛元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、250.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解がより向上する傾向にある。
【0030】
本実施形態におけるポリスチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体、スチレン系単量体とスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体は、全体単量体の50質量%以上スチレン系単量体であることが好ましく、60質量%以上がスチレン系単量体であることがより好ましい。
スチレン系単量体とは、スチレンおよび置換基を有するスチレンを意味し、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルスチレン、tert-ブチルスチレンが挙げられる。
【0031】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、ゴム強化ポリスチレン樹脂を含んでいてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン-IPN型ゴム共重合体等の樹脂等が挙げられる。
本実施形態では、ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)であることが好ましく、ポリスチレン樹脂であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、その一部がスチレン-マレイン酸重合体(好ましくはスチレン-無水マレイン酸重合体)であることも好ましい。スチレン-マレイン酸重合体は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ポリスチレン樹脂および/またはゴム強化ポリスチレン樹脂との相溶化剤として働く。この結果、得られる成形体の強度を高めることができる。
スチレン-マレイン酸重合体を配合する場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以上であることが一層好ましく、10質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の強度がより高くなる傾向にある。また、前記スチレン-マレイン酸重合体の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、18質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の耐熱性が高く維持される傾向にある。
【0033】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン樹脂および/またはゴム強化ポリスチレン樹脂を含むことが好ましい。
【0034】
前記ポリスチレン系樹脂は、250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であることが好ましく、90Pa・sec以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。前記ポリスチレン系樹脂の溶融粘度の上限は、500Pa・sec以下であることが好ましく、300Pa・sec以下であることがより好ましく、200Pa・sec以下であることがさらに好ましく、180Pa・sec以下であることが一層好ましく、160Pa・sec以下であることがより一層好ましく、120Pa・sec以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリスチレン系樹脂を2種以上含む場合、混合物の溶融粘度が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態における溶融粘度はISO 11443に準拠し、キャピラリーレオメーターおよびスリットダイレオメーターを用いることで測定できる。具体的には内径9.5mmの炉体に対してキャピラリー径1mmおよびキャピラリー長30mmとなるオリフィスを組み合わせ、75mm/minの速度でピストンを押し込んだ際の応力より、溶融粘度が算出できる。
【0035】
本実施形態においては、特に、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.3~0.8dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
【0036】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂のJIS K7210に従った、250℃、荷重2.16kgfの条件で測定したメルトボリュームレート(MVR)は、18cm3/10分以上であることが好ましく、22cm3/10分以上であることがより好ましく、26cm3/10分以上であることがさらに好ましく、30cm3/10分以上であってもよく、35cm3/10分以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、前記MVRの上限値は、200cm3/10分以下であることが好ましく、160cm3/10分以下であることがより好ましく、120cm3/10分以下であることがさらに好ましく、90cm3/10分以下であることが一層好ましく、60cm3/10分以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリスチレン系樹脂を2種以上含む場合、混合物のMVRが上記範囲となることが好ましい。
【0037】
このようなポリスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂の詳細は、特開2017-052925号公報の段落0061~0069の記載、特開2017-052262号公報の段落0021~0031の記載、段落0057~0064の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂のブレンド比>
本実施形態においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂の割合が、40質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましく、55質量部以上であることが一層好ましく、58質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低反り性がより向上する傾向にある。また、前記ポリスチレン系樹脂の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、85質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましく、65質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計含有量は、樹脂組成物100質量%中、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂の流動性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計含有量は、樹脂組成物100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
<ガラス繊維>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し弾性率が85GPa以上のガラス繊維を20質量部の以上の割合で含む。ガラス繊維を含むことにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。
【0042】
ガラス繊維の弾性率は、ASTM D2343テストに従って測定することができる値である。
前記ガラス繊維の弾性率は、87GPa以上であることが好ましく、90GPa以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、ガラスの弾性率が高いので、練りこみ時や成形時において、ガラスの繊維長が保持され、各種物性が向上する傾向にある。また、前記ガラス繊維の弾性率の上限は特に定めるものではないが、200GPa以下が実際的である。
【0043】
ガラス繊維は、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる構造体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
【0044】
ガラス繊維は、本実施形態における樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における、ガラス繊維の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、20質量部以上であり、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが一層好ましく、60質量部以上であることがより一層好ましく、70質量部以上であることがさらに一層好ましく、80質量部以上であることがさらに一層好ましく、90質量部以上であることが特に一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性や耐熱性の向上および成形時収縮の低減と異方性の低減効果がより向上する傾向にある。また、前記ガラス繊維の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、200質量部以下であることがより好ましく、190質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、170質量部以下であることがさらに好ましく、160質量部以下であることが一層好ましく、150質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物における、ガラス繊維の含有量は、樹脂組成物100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、また、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、弾性率が85GPa未満の強化繊維(特に、ガラス繊維)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、弾性率が85GPa未満のガラス繊維、さらには、弾性率が85GPa未満の強化繊維を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、弾性率が85GPa未満のガラス繊維、さらには、弾性率が85GPa未満の強化繊維が、弾性率が85GPa以上のガラス繊維の含有量の10質量%未満であることをいい、5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0048】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とスチレン系樹脂の相溶化剤として機能する。従って、本実施形態の樹脂組成物が他の相溶化剤を含む場合等は、必ずしも必須成分ではない。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい単独重合体または共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0049】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、ビスフェノールがより好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等がさらに好ましく、ビスフェノールAが一層好ましい。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0050】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂)、または、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m-およびp-メチルフェノール、m-およびp-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0052】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が5,000以上のものを用いることにより、得られる樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましく、25,000以下であることが一層好ましく、20,000以下であってもよい。60,000以下のものを用いることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、成形性が向上する傾向にある。
ポリカーボネート樹脂を2種以上含む場合、混合物が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し固有粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0054】
ポリカーボネート樹脂のJIS K7210(温度300℃、荷重1.2kgf)に準拠して測定されるメルトボリュームレート(MVR)は、通常、1cm3/10分以上であり、3cm3/10分以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる樹脂組成物ないし成形体の流動性がより向上する傾向にある。また、前記MVRの上限は、例えば、100cm3/10分以下であり、さらには、50cm3/10分以下であることが好ましく、さらには、30cm3/10分以下、20cm3/10分以下、10cm3/10分以下であってもよい。
また、ポリカーボネート樹脂のJIS K7210(温度300℃、荷重1.2kgf)に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常、1g/10分以上であり、3g/10分以上であることが好ましく、5g/10分以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる樹脂組成物ないし成形体の流動性がより向上する傾向にある。また、前記MFRの上限は、例えば、100g/10分以下であり、さらには、50g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下、20g/10分以下、10g/10分以下であってもよい。
【0055】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)および溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0056】
ポリカーボネート樹脂は、リサイクル品を活用してもよい。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂についてもリサイクル品を用いても、バージン品のポリカーボネート樹脂を用いた場合と同等の性能を達成することができる。
【0057】
また、ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂との相溶性がより向上し、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが一層好ましく、15質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の耐熱性が高く維持される傾向にある。
【0058】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。なお、他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
樹脂添加剤としては、具体的には、安定剤(熱安定剤、光安定剤)、離型剤、着色剤(顔料、染料)、核剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、反応性化合物、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
これらの他の成分の総量は、樹脂組成物100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤を配合でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ガラス繊維、ならびに、必要に応じ配合される成分の合計が100質量%となる。
【0059】
<<安定剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤(光安定剤および/または熱安定剤)を含んでいてもよい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示され、ヒンダードフェノール系化合物およびリン系化合物が好ましい。本実施形態では、また、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物および硫黄系安定剤を併用することも好ましい。このように3種の安定剤を併用することにより、熱安定性がより向上し、さらに熱安定性が長期に継続する傾向にある。
安定剤としては、具体的には、特開2021-063196号公報の段落0067~0075の記載、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0060】
本実施形態で用いる安定剤の融点は、50~140℃であることが好ましい。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物が安定剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、溶融混練時や成形時、さらに成形品としての使用中での、樹脂の熱劣化や酸化劣化の抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記安定剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、安定剤などの添加剤の凝集などによる外観や物性へ悪影響を効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0062】
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アマイド、エステル化合物、エチレンビスステアロアマイドなどが例示され、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、合成ワックスおよびエチレンビスステアロアマイドから選ばれる少なくとも1種が好ましく、高級脂肪酸アマイドおよびモンタン酸エステルワックスがより好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0063】
本実施形態で用いる離型剤の融点は、50~140℃であることが好ましい。
【0064】
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上にすることにより、成形時の離型性が向上する傾向にある。また、前記離型剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下にすることにより、耐加水分解性の低下を抑制し、射出成型時の金型汚染、アウトガス量を低減することができる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0065】
<<着色剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤(染料および/または顔料)を含んでいてもよい。着色剤としては、染料であっても、顔料であってもよいが、顔料が好ましい。
着色剤としては、有機着色剤および無機着色剤のいずれでもよい。また、有彩色着色剤および無彩色着色剤のいずれであってもよいが、無彩色着色剤が好ましい。
着色剤としては、特開2021-101020号公報の段落0121~0123の記載、特開2019-188393号公報の段落0088~0090の記載が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。中でも、ファーネスブラックが好ましい。その数平均粒子径には特に制限はないが、5~60nm程度であることが好ましい。
【0066】
カーボンブラックのDBP吸油量(単位:cm3/100g)は40~300cm3/100gであることが好ましい。上限値は、300cm3/100g以下であることが好ましく、200cm3/100g以下であることがより好ましく、150cm3/100g以下であることがさらに好ましく、100cm3/100g以下であってもよい。また、下限値は40cm3/100g以上が好ましく、50cm3/100g以上がより好ましく、60cm3/100g以上がさらに好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。なお、DBP吸油量(単位:cm3/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。
カーボンブラックの数平均粒子径は、5~60nmであることが好ましい。上限値は、60nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、25nm以下であることがより一層好ましい。下限値は10nm以上であることが好ましく、13nm以上であることがより好ましく、16以上であることがさらに好ましく、19nm以上であることがより一層好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
【0067】
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂やポリスチレン系樹脂と予め混合したマスターバッチとして配合することにより、カーボンブラックの分散度が高まり、成形品の外観が向上する傾向にある。マスターバッチにおけるカーボンブラックの濃度は10~40質量%であることが好ましい。
【0068】
本実施形態の樹脂組成物が着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.3質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色効果がより効果的に発揮される。また、前記着色剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0069】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、リサイクル性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物(ガラス繊維を除く)におけるリサイクル品の占める割合(リサイクル率)が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、また、70質量%以下が実際的であり、60質量%以下であっても要求性能を満たす。
【0070】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の調製の常法によって製造できる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本実施形態の樹脂組成物を調製することもできる。着色剤等の一部の成分を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維は、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することが好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0071】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法に従って成形される。
成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
射出成形法の詳細は、特許第6183822号公報の段落0113~0116の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、射出成形等、金型成形する際の金型温度は、40~150℃であることが好ましい。
【0072】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、ペレットとすることができる。
本実施形態の樹脂組成物ないしペレットは、樹脂組成物ないしペレットから形成された成形品として用いられる。
樹脂組成物ないし成形品の用途としては、特に定めるものでは無く、車輌部品用または電気電子部品用であることが好ましい。
車輛部品としては、ランプにおけるハウジング、リフレクター、ベゼル、エクステンションや、コネクタ、ECUケース、ヘッドアップディスプレイの筐体、車載カメラやミリ波レーダー用の筐体、バッテリーケース、センサー筐体などが挙げられる。
電気電子部品としては、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等のハウジング、カバー、キーボード、ボタン、スイッチ部材、電力計用筐体、バッテリーケース、電池搬送用トレイ、リレー、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、グリル調理機器部品などが挙げられる。
【0073】
また、本実施形態の樹脂組成物は、レーザーマーキング用として好ましく用いられる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品(特に、上述の用途の成形品)は、レーザーマーキングにより、文字、標識、バーコード、QRコード(登録商標)、図、パターン等が施すことができる。レーザーマーキングの方法は、公知であり、各種の方法を適用することができる。レーザーマーキング方法で用いるレーザー光としては、レーザー発振波長532~1,064nmのものが好ましい。具体的には、樹脂への発色印字をするアプリケーションでは、一般的にYAG波長(1,064nm)レーザーマーカーが使用されている。ネオジウム変性イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)、または、ネオジウム変性イットリウム-四酸化バナジウム(Nd:YVO4)等の結晶に高出力の光を与えてレーザーを発生させ、さらにミラーの往復反射で増幅させ、Qスイッチ機器によりパルスレーザにする方式のレーザーマーカーを用いることもできる。また、近年の主流となりつつあるファイバー方式(イットリビウムが注入されたファイバーに複数のレーザーダイオード(LD)を低出力で使用し、レーザー光を発生・増幅させる方式のもの)のレーザーマーカーも用いることができる。
【0074】
なお、レーザーマーカーとしては、レーザービームはシングルモードでもマルチモードでもよく、またビーム径が20~40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80~100μmのように広いものについても用いることができるが、シングルモードで、ビーム径が20~40μmの方が、良好なコントラストでマーキングを行えることから好ましい。
【実施例0075】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0076】
1.原料
表1に示す原料を用いた。
【表1】
【0077】
ポリスチレン系樹脂の詳細は以下の通りである。
【表2】
【0078】
上記表2において、Mg(質量ppm)とは、ポリスチレン系樹脂中のマグネシウム元素の量を示している。他の金属についても同じである。
また、Mw×10-5とは、重量平均分子量に10-5をかけた値を意味している。従って、例えば、バージンPSのMwは3.12×105(312,000)となる。
n.dは検出不可を示している。
【0079】
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
ポリスチレン系樹脂のメルトボリュームレートは、メルトインデクサーを用いて、JIS K7210に従い、250℃、荷重2.16kgfの条件で、ポリスチレン系樹脂のMVR(単位:cm3/10分)を測定した。
メルトインデクサーは、東洋精機製作所製のものを用いた。
【0080】
<溶融粘度の測定>
ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、溶融粘度はISO 11443に準拠し、250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度を測定した。
具体的には、キャピラリーレオメーターおよびスリットダイレオメーターを用いることで測定した。具体的には内径9.5mmの炉体に対してキャピラリー径1mmおよびキャピラリー長30mmとなるオリフィスを組み合わせ、75mm/minの速度でピストンを押し込んだ際の応力より、算出した。
単位は、Pa・secで示した。
【0081】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はHLC-8320GPC/EcoSEC(TOSOH社製)を用いて測定し、ポリスチレン換算で算出した。測定条件は以下の通りである。
カラム:Shodex KF-G + KF-805L×3 + KF-800D
検出器:UV検出器 254nm
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0082】
<灰分の測定>
ポリスチレン系樹脂について、500℃の電気炉内で3時間灰化し、樹脂成分のみを燃焼させた後、残渣重量の比率から灰分を測定した。
ポリスチレン系樹脂中の灰分の割合の単位は、質量%で示した。
電気炉は、東洋製作所社製「電気マッフル炉KM-28」を用いた。
【0083】
<金属元素の量の測定>
ポリスチレン系樹脂中の金属元素の定性/半定量分析は、ICP発光分析法によって行った。この場合、前処理として試料200mgを秤量し、ケルダール湿式分解(硫酸/硝酸、硫酸/過酸化水素)を行い、50mLに定容し、続いて、ICP発光分析を酸濃度マッチング一点検量法にて行った。単位は、質量ppmにて示した。
ICP発光分析は、ThermoThrmo Fisher Scientific社製「iCAP7600duoiCAP76000uo」を用い、axial/radial測光にて行った。
【0084】
2.実施例1、比較例1、比較例2
<コンパウンド>
表1に示す各成分を表3に示す割合(表3における各成分は質量部で示している)にて、ガラス繊維以外の成分をタンブラーミキサーで均一に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)にメインフィード口より供給した。第一混練部のシリンダー設定温度260℃に設定し、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給した。ガラス繊維添加以降のシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0085】
<リサイクル率>
各樹脂組成物の原料のうち、ガラス繊維を除く成分のリサイクル品の割合(質量%)を算出した。
【0086】
<引張特性>
上記で得られたペレットを、110℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、4mm厚のISO試験片を射出成形した。
上記で得られたISO試験片(4mm厚さ)について、ISO527-1およびISO527-2に従い、引張強さ(単位:MPa)、および、破壊歪み(単位:%)を測定した。
【0087】
<曲げ特性>
上記で得られたペレットを、110℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、4mm厚のISO試験片を射出成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0088】
<ノッチ付きシャルピー衝撃強さ>
上記で得られたペレットを、110℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、4mm厚のISO試験片を射出成形した。
ISO179-1およびISO179-2に従い、23℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
【0089】
<DTUL(アニール後)>
アニール後の試験片につき、ISO75-1およびISO75-2に準拠して、荷重1.80MPaの条件で、荷重たわみ温度(単位:℃)を測定した。試験片の事前アニール条件は160℃×3時間とした。
【0090】
<ソリ特性>
射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出ピーク圧の8割の値を保圧値の条件で、直径100mm、厚み1.6mmの円板をサイドゲート金型により成形し、円板の反り量(単位:mm)を求めた。
ここでの反り量は、円板を平板の上に置いたとき、平板と円板の距離が最も離れている部分の平板と円板(平板側)の距離とした。
【0091】
【表3】
【0092】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、反りが抑制され、曲げ物性等の各種機械的強度が高かった。また、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、リサイクル率を高くしても、機械的強度を高く維持できる点でも有益である。