(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122736
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】撮像素子ユニット、ブレ補正装置、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/50 20230101AFI20240902BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20240902BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240902BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240902BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
H04N23/50
H04N23/54
G03B5/00 J
G03B11/00
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030447
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】松下 周平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄大
(72)【発明者】
【氏名】粟津 亘平
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 篤志
【テーマコード(参考)】
2H083
2H100
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H083AA26
2H083AA32
2H100EE06
2K005BA52
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA24
2K005CA44
2K005CA46
2K005CA53
5C122DA03
5C122DA04
5C122EA41
5C122FB03
5C122FB08
5C122FB23
5C122FC00
5C122FC01
5C122FC02
5C122GE05
5C122GE11
5C122GE22
5C122HA82
5C122HA84
(57)【要約】
【課題】本開示の技術に係る一つの実施形態は、撮像素子を備える撮像素子ユニット、可動部を移動させてブレを補正するブレ補正装置、及び撮像素子ユニットを備える撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の一の態様に係る撮像素子ユニットは、撮像素子と、撮像素子の撮像面側に配置された光学部材と、光学部材の第1面に配置された振動付与装置と、を備える撮像素子ユニットであって、光学部材の第1面と対向する第2面は、撮像素子の光軸方向に透視した場合に振動付与装置と重なる領域を含む第1領域と、第1領域以外の領域である第2領域と、を有し、第1領域と第2領域とは表面特性が異なる。斯かる態様の撮像素子ユニットにおいて、振動付与装置は表面特性の相違を利用して第1面に固定されることが好ましい。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子の撮像面側に配置された光学部材と、
前記光学部材の第1面に配置された振動付与装置と、
を備える撮像素子ユニットであって、
前記光学部材の前記第1面と対向する第2面は、前記撮像素子の光軸方向に透視した場合に前記振動付与装置と重なる領域を含む第1領域と、前記第1領域以外の領域である第2領域と、を有し、
前記第1領域と前記第2領域とは表面特性が異なる撮像素子ユニット。
【請求項2】
前記振動付与装置は前記表面特性の相違を利用して前記第1面に固定される請求項1に記載の撮像素子ユニット。
【請求項3】
前記振動付与装置は、前記第1面と前記振動付与装置との間に塗布された紫外線硬化型接着剤に前記第1領域を介して紫外線を照射することにより前記第1面に固定される請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項4】
前記表面特性は紫外線のカット率である請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項5】
前記第1領域における前記カット率は前記第2領域における前記カット率よりも低い請求項4に記載の撮像素子ユニット。
【請求項6】
前記光学部材は赤外線光をカットするガラス部材である請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項7】
前記振動付与装置で前記光学部材を振動させることにより前記光学部材に付着した塵埃を除去する請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項8】
前記振動付与装置は圧電素子である請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項9】
前記第1面は、前記光学部材の前記撮像素子の側の面である請求項1または2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項10】
マグネット部材とヨーク部材とを備えた固定部と、
請求項1または2に記載の撮像素子ユニットと、コイル部材とを備える可動部と、
を備え、
前記可動部を前記撮像素子の光軸と交差する面内で移動することにより像ブレを補正するブレ補正装置。
【請求項11】
前記ヨーク部材は、前記マグネット部材が設けられる第1ヨークと、前記第1ヨークとは離間して配置される第2ヨークとで構成される請求項10に記載のブレ補正装置。
【請求項12】
前記第1ヨークと前記第2ヨークとの側面部の間隙のうち少なくとも一部が第1防塵部材で遮蔽される請求項11に記載のブレ補正装置。
【請求項13】
前記撮像素子の光軸の方向における前記第2ヨークと前記可動部との間隙のうち少なくとも一部が第2防塵部材で遮蔽される請求項11に記載のブレ補正装置。
【請求項14】
前記可動部は、前記コイル部材に対して前記撮像素子と反対方向に脱脂部を備える請求項10に記載のブレ補正装置。
【請求項15】
前記可動部は、前記コイル部材と前記撮像素子との間の部位に塵埃吸着部材を備える請求項10に記載のブレ補正装置。
【請求項16】
請求項10に記載のブレ補正装置と、
前記撮像素子に被写体の光学像を結像させる光学系と、
を備える撮像装置。
【請求項17】
前記光学部材と、前記光学系を構成するレンズのうち前記撮像素子の撮像面に最も近い側に位置するレンズである最後尾レンズと、の間には、前記光軸の方向において他の光学部品が介在しない請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記撮像装置はレンズ一体型の撮像装置である請求項16に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記ブレ補正装置は、レンズを保持するレンズ枠と緩衝部材を介して接触しており、
前記レンズ枠は、前記コイル部材と前記撮像素子との間の部位に塵埃吸着部材を備える請求項16に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子ユニット、撮像素子ユニットを備えるブレ補正装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置のブレ補正を行うための技術に関し、例えば特許文献1,2には、固定部及び可動部、ヨーク、コイル等を備える手ぶれ補正機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-135198号公報
【特許文献2】特開2013-187832号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、撮像素子を備える撮像素子ユニット、可動部を移動させてブレを補正するブレ補正装置、及び撮像素子ユニットを備える撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る撮像素子ユニットは、撮像素子と、撮像素子の撮像面側に配置された光学部材と、光学部材の第1面に配置された振動付与装置と、を備える撮像素子ユニットであって、光学部材の第1面と対向する第2面は、撮像素子の光軸方向に透視した場合に振動付与装置と重なる領域を含む第1領域と、第1領域以外の領域である第2領域と、を有し、第1領域と第2領域とは表面特性が異なる。
【0006】
本発明の第2の態様に係る撮像素子ユニットは第1の態様において、振動付与装置は表面特性の相違を利用して第1面に固定される。
【0007】
第3の態様に係る撮像素子ユニットは第1または第2の態様において、振動付与装置は、第1面と振動付与装置との間に塗布された紫外線硬化型接着剤に第1領域を介して紫外線を照射することにより第1面に固定される。
【0008】
第4の態様に係る撮像素子ユニットは第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、表面特性は紫外線のカット率である。
【0009】
第5の態様に係る撮像素子ユニットは第4の態様において、第1領域におけるカット率は第2領域におけるカット率よりも低い。
【0010】
第6の態様に係る撮像素子ユニットは第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、光学部材は赤外線光をカットするガラス部材である。
【0011】
第7の態様に係る撮像素子ユニットは第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、振動付与装置で光学部材を振動させることにより光学部材に付着した塵埃を除去する。
【0012】
第8の態様に係る撮像素子ユニットは第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、振動付与装置は圧電素子である。
【0013】
第9の態様に係る撮像素子ユニットは第1から第8の態様のいずれか1つにおいて、第1面は、光学部材の撮像素子の側の面である。
【0014】
本発明の第10の態様に係るブレ補正装置は、マグネット部材とヨーク部材とを備えた固定部と、第1から第9の態様のいずれか1つに係る撮像素子ユニットと、コイル部材とを備える可動部と、を備え、可動部を撮像素子の光軸と交差する面内で移動することにより像ブレを補正する。
【0015】
第11の態様に係るブレ補正装置は第10の態様において、ヨーク部材は、マグネット部材が設けられる第1ヨークと、第1ヨークとは離間して配置される第2ヨークとで構成される。
【0016】
第12の態様に係るブレ補正装置は第11の態様において、第1ヨークと第2ヨークとの側面部の間隙のうち少なくとも一部が第1防塵部材で遮蔽される。
【0017】
第13の態様に係るブレ補正装置は第11または第12の態様において、撮像素子の光軸の方向における第2ヨークと可動部との間隙のうち少なくとも一部が第2防塵部材で遮蔽される。
【0018】
第14の態様に係るブレ補正装置は第10から第13の態様のいずれか1つにおいて、可動部は、コイル部材に対して撮像素子と反対方向に脱脂部を備える。
【0019】
第15の態様に係るブレ補正装置は第10から第14の態様のいずれか1つにおいて、可動部は、コイル部材と撮像素子との間の部位に塵埃吸着部材を備える。
【0020】
本発明の第16の態様に係る撮像装置は、第10から第15の態様のいずれか1つに係るブレ補正装置と、撮像素子に被写体の光学像を結像させる光学系と、を備える。
【0021】
第17の態様に係る撮像装置は第16の態様において、光学部材と、光学系を構成するレンズのうち撮像素子の撮像面に最も近い側に位置するレンズである最後尾レンズと、の間には、光軸の方向において他の光学部品が介在しない。
【0022】
第18の態様に係る撮像装置は第16または第17の態様において、撮像装置はレンズ一体型の撮像装置である。
【0023】
第19の態様に係る撮像装置は第16から第18の態様のいずれか1つにおいて、ブレ補正装置は、レンズを保持するレンズ枠と緩衝部材を介して接触しており、レンズ枠は、コイル部材と撮像素子との間の部位に塵埃吸着部材を備える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ブレ補正装置の構成を示す正面斜視図である。
【
図4】
図4は、ドライブヨークを撮影者側(-Z側)から見た様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ドライブヨークを被写体側(+Z側)から見た様子を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、カウンターヨークを被写体側(+Z側)から見た様子を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、可動部の保持枠を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第1ボール受け面でボールを受ける様子を示す図である。
【
図9】
図9は、付勢部材による付勢の様子を示す図である。
【
図10】
図10は、最後尾レンズと光学部材との位置関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は、撮像素子ユニットを制御する様子を示す図である。
【
図12】
図12は、レンズ交換型カメラにおける撮像素子ユニットの構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る撮像素子ユニットの構成を示す図である。
【
図14】
図14は、光学部材において各種コートを設ける範囲を示す図である。
【
図15】
図15は、撮像素子ユニットにおける光学部材及び圧電素子の配置を示す図である。
【
図16】
図16は、ブレ補正装置における撮像素子ユニット及びヨーク配置を示す図である。
【
図17】
図17は、ブレ補正装置における塵埃吸着部材及び防塵部材の配置を示す図である。
【
図18】
図18は、ブレ補正装置における塵埃吸着部材及び防塵部材の配置を示す他の図である。
【
図19】
図19は、ブレ補正装置における防塵部材の配置を示す図である。
【
図20】
図20は、ブレ補正装置の変形例(塵埃対策なしの状態)を示す図である。
【
図21】
図21は、ブレ補正装置の変形例(塵埃対策ありの状態)を示す図である。
【
図22】
図22は、第2の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【
図23】
図23は、第2の実施形態に係る撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図24】
図24は、撮像素子ユニットを制御する様子を示す図である。
【
図25】
図25は、第2の実施形態における撮像素子ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明に係る撮像素子ユニット、ブレ補正装置、及び撮像装置の好ましい実施の形態について説明する。なお以下の図面において、説明を分かりやすくするため、図面によっては一部の部材の表示を省略し、かつ/または部材の色彩や線種等を変更して表示する場合がある。
【0026】
[第1の実施形態]
[撮像装置の構成]
まず、撮像素子ユニット及びブレ補正装置を搭載する撮像装置に関して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【0027】
撮像装置10(撮像装置)はレンズ一体型のカメラであり、撮像装置本体2にレンズ装置12(光学系)が装着されている。レンズ装置12は、絞り8(光学系)、レンズ群12A(光学系)、及びレンズ群12B(光学系)を備え、光軸L(光軸)を有する。レンズ装置12は、撮像素子ユニット16(撮像素子ユニット)が備える撮像素子(撮像素子17;
図10,12等を参照)に、被写体1(被写体)の光学像を結像させる。撮像装置本体2は接眼部4を備え、撮影者は接眼部4に接眼して被写体1を視認することができる。
【0028】
撮像素子17(撮像素子ユニット16)は、可動部110の保持枠112(
図7等を参照)に保持されており、撮像素子17(撮像素子)には、光軸L(Z方向)に直交する2つの方向(X方向とY方向)で構成される平面(XY平面)に沿って撮像面17A(撮像面、受光面;
図11等を参照)が配置されている。なお光軸Lは撮像素子17の中心を通る軸であり、撮像素子17及びレンズ装置12は、撮像素子17の光軸Lとレンズ装置12の光軸とが一致するように配置される。また、詳細を後述するように、制御部40がブレ補正装置100の駆動部58を制御することにより、ブレ補正機能が実現される。また、詳細を後述するように、制御部40が振動付与装置(圧電素子19:
図11等を参照)で光学部材(光学部材18;
図11等を参照)を振動させることにより、光学部材に付着した塵埃を除去することができる。
【0029】
図2は、撮像装置10の内部構成の一態様を示すブロック図である。この撮像装置10は、撮像した画像をメモリカード54に記録するもので、装置全体の動作は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備える制御部40によって統括制御される。
【0030】
撮像装置10には、シャッタボタン、電源/モードスイッチ、モードダイヤル、十字操作ボタン等の操作部38が設けられている。この操作部38からの信号(指令)は制御部40に入力され、制御部40は入力信号に基づいて撮像装置10の各回路を制御し、撮像素子17の駆動制御、レンズ駆動制御、絞り駆動制御、撮像動作制御、画像処理制御、画像データの記録/再生制御、及び、画像モニタ30の表示制御などを行う。
【0031】
レンズ装置12を通過した光束は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のカラーイメージセンサである撮像素子17(撮像素子)に結像される。なお、撮像素子17は、CMOS型に限らず、CCD(Charge Coupled Device)型、または有機撮像素子など他の形式のイメージセンサでもよい。
【0032】
撮像素子17には、多数の受光素子(例えばフォトダイオード)が2次元配列されており、各受光素子の受光面に結像された被写体像は、その入射光量に応じた量の信号電圧(または電荷)に変換(光電変換)され、撮像素子17内のA/D(Analog/Digital)変換器を介してデジタル信号に変換されて出力される。
【0033】
動画または静止画の撮影時に撮像素子17から読み出された画像信号(画像データ)は、画像入力コントローラ22を介してメモリ48(例えばSDRAM:Synchronous Dynamic Random Access Memory)に一時的に記憶される。
【0034】
また、フラッシュメモリ47(Flash Memory)には、カメラ制御プログラム、画像処理等に使用する各種のパラメータやテーブルが記憶されている。
【0035】
センサ66は手振れセンサであり、撮像装置10の姿勢情報及び姿勢変化情報を検出する。センサ66は、例えばジャイロセンサで構成される。センサ66は、縦方向(+Y,-Y方向)の手振れ量と横方向(+X,-X方向)の手振れ量を検出するために例えば2つのジャイロセンサで構成され、検出された手振れ量(角速度)は制御部40に入力される。制御部40は駆動部58を制御して、手振れに応じた被写体像の移動をキャンセルするように撮像素子17を移動させることでブレ補正を行う。回転方向(例えば、Z軸周り)の手振れ量を検出するためのジャイロセンサをセンサ66に設け、この回転方向の手振れをキャンセルするようにブレ補正を行ってもよい。
【0036】
駆動部58(駆動機構)は、制御部40により制御される。駆動部58は、後述するボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)等により構成される。
【0037】
画像処理部24は、動画または静止画の撮影時に画像入力コントローラ22を介して取得され、メモリ48に一時的に記憶された未処理の画像データを読み出す。画像処理部24は、読み出した画像データに対してオフセット処理、画素補間処理(位相差検出用画素、欠陥画素等の補間処理)、ホワイトバランス補正、感度補正を含むゲインコントロール処理、ガンマ補正処理、同時化処理(「デモザイク処理」ともいう)、輝度及び色差信号生成処理、輪郭強調処理、及び色補正等を行う。画像処理部24により処理された画像データであって、ライブビュー画像として処理された画像データは、VRAM(Video RAM、RAM:Random access memory)50に入力される。
【0038】
VRAM50から読み出された画像データは、ビデオエンコーダ28においてエンコーディングされ、カメラ背面に設けられている画像モニタ30に出力される。これにより、被写体像を示すライブビュー画像が画像モニタ30に表示される。
【0039】
画像処理部24により処理された画像データであって、記録用の静止画または動画として処理された画像データ(輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr))は、再びメモリ48に記憶される。
【0040】
圧縮伸張処理部26は、静止画または動画の記録時に、画像処理部24により処理され、メモリ48に格納された輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr)に対して圧縮処理を施す。圧縮された圧縮画像データは、メディアコントローラ52を介してメモリカード54に記録される。
【0041】
また、圧縮伸張処理部26は、再生モード時にメディアコントローラ52を介してメモリカード54から得た圧縮画像データに対して伸張処理を施す。メディアコントローラ52は、メモリカード54に対する圧縮画像データの記録及び読み出しなどを行う。
【0042】
上記実施形態において、各種の処理を実行する制御部40等の処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0043】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0044】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0045】
[ブレ補正装置の構成]
次に、ブレ補正装置100の構成を説明する。なお以下の説明において、「正面」とは+Z側(被写体側)から見た面であり、「背面」とは-Z側(撮影者側)から見た面である。
【0046】
図3に示すように、ブレ補正装置100は主に、撮像素子ユニット16(撮像素子ユニット)が保持される可動部110(可動部)と、撮像装置本体2に固定される固定部130(固定部)と、により構成される。固定部130は、ドライブヨーク150(ヨーク部材、第1ヨーク)と、カウンターヨーク170(ヨーク部材、第2ヨーク)とを備える。ドライブヨーク150とカウンターヨーク170とは離間して配置され、不図示のシャフトで連結される。可動部110は、後述する磁気バネ162,164,166(付勢部材;
図9を参照)により、ドライブヨーク150の側(+Z側、被写体側)に付勢される。
【0047】
[固定部の構造]
図4は、ドライブヨーク150(ヨーク部材、第1ヨーク)を撮像面側(-Z側)から見た様子を示す図である。ドライブヨーク150は-X側が開放された形状であり、この-X側にフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)等が配置される(
図3を参照)。
【0048】
また、ドライブヨーク150には、マグネット部材が配置される。具体的には、
図4に示すように、(+X,+Y)側にマグネット136A,136B(マグネット部材)が配置され、(+X,-Y)側にマグネット138A,138B(マグネット部材)が配置され、これらマグネットよりも-X側にマグネット140A,140B(マグネット部材)が配置される。これらのマグネットと可動部110に備えられるコイル(コイル部材;
図7,11を参照)とは、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)を構成する。なお、例えばマグネット136A、138A、140AについてはN極を
図4の上側(-Z側)にして配置し、逆にマグネット136B、138B、140BについてはS極を上側にして配置することができるが、マグネットの磁極の向きはこれと逆でもよい。
【0049】
[第1ボール受け面]
ドライブヨーク150には、第1ボール受け面152(第1ボール受け面)が3箇所に設けられている。第1ボール受け面152は、ドライブヨーク150(第1ヨーク)の一部の領域であり、可動部の側への凸部である。第1ボール受け面152は、例えばドライブヨーク150を構成する部材をプレス加工することにより、ドライブヨーク150と一体に形成することができる。プレス加工は、例えばハーフパンチ加工(部材を完全に貫通させず、部材の半分程度の高さを突出させる加工をいう;半抜き、半貫、打ち出し、ダボ加工等と呼ばれることもある)であるが、凸部の高さは部材の厚さの半分に限定されるものではない。また、第1ボール受け面152は、ハーフパンチにより形成された凸部を機械加工して形成された面であることが好ましい。なお、ここで機械加工とは機械を使って素材を目的の形状に加工することであり、切削加工やプレス加工など、複数の種類がある。例えば、研磨により平面度を高める加工を行うことができる。上述のように、第1ボール受け面152はドライブヨーク150の一部の領域なので、ドライブヨーク150の全体に対して機械加工を行わなくてよく、ブレ補正装置100のコストダウンを図ることができる。
【0050】
このようにして形成された第1ボール受け面152にはボール134(ボール)が接し、ボール134が第1ボール受け面152に対して転動する。即ち、撮像素子17(撮像素子ユニット16)を保持する可動部110は光軸Lと交差する面内で移動可能に支持されており、この可動部110の移動により像ブレを補正することができる。なお、「光軸Lと交差する面」は、光軸Lと直交する面であることが好ましい。
【0051】
図5は、ドライブヨーク150を+Z側(被写体側)から見た状態を示す斜視図である。同図に示すように、第1ボール受け面152の部分を+Z側から見ると、凹部152A(凹部)が形成されていることが分かる。なお、ブレ補正装置100は、第1ボール受け面152と反対側の面である取付面154(取付面)を介して撮像装置本体2に取り付けられる(
図10を参照)。
【0052】
[ドライブヨーク(第1ヨーク)の素材]
上述したドライブヨーク150(第1ヨーク)は、飽和磁束密度が0.6T以上、かつ表面硬度が290Hv以上の素材により形成される。このような素材としては、例えばSUS630材、SUS631材を用いることができる。これらの素材は析出硬化系ステンレス鋼で比較的高い残留磁束密度の磁性材であり、飽和磁束密度及び表面硬度に対する要求性能を満足することができる。なお、SUS630材、SUS631材には特性の異なる複数の素材が存在するが、それら素材の内でも、表面硬度が350Hv以上の素材によりドライブヨーク150(第1ヨーク)を形成することが好ましい。
【0053】
図6は、カウンターヨーク170を被写体側(+Z側)から見た様子を示す図である。
【0054】
[可動部の構成]
図7は、可動部110の保持枠112(保持枠)を示す正面図である。保持枠112は開口112Aを備え、この開口112Aに撮像素子17(撮像素子ユニット16;
図7では不図示)が配置される。また、保持枠112は開口114A,114B,114Cを備え、これら開口にコイル120,122,124(コイル部材)がそれぞれ配置される。また、保持枠112には、ボール134を保持するボール保持部116(ボール保持部)が3箇所に形成される。ボール保持部116は、上述した第1ボール受け面152と対応する位置に形成されている。
【0055】
[第1ボール受け面でボールを受ける様子]
図8は第1ボール受け面152でボール134を受ける様子を示す図(部分断面図)である。ボール保持部116にはボール受け部材118が配置されており、ボール受け部材118の+Z側の面が第2ボール受け面118A(第2ボール受け面)としてボール134と接触する。ブレ補正装置100が組み立てられた状態では、ボール保持部116に保持されたボール134が第1ボール受け面152に接し、ボール134は、可動部110の移動に伴い第1ボール受け面152に対して転動する。なお、付勢がアンバランスな場合等に、3つのボール134のうち一部が第1ボール受け面152から浮き上がっても差し支えない。
【0056】
[素材の選択及び部品の一体化による効果]
可動部110が光軸Lに交差する面(垂直な面)に対して倒れることなく並進または回転運動するために、第1ボール受け面152には高い平面度が求められる。そのため、第1ボール受け面152とヨーク(ドライブヨーク150、カウンターヨーク170)を組立した固定部130で高い平面度を保証する高精度な組立が求められていた。これまでは、ボール受け面とヨークは強力な瞬間接着剤やスポット溶接などにより接合していた。
【0057】
接着剤による組立は、ボール受け面上にキズや打痕が付かないように部品を取り扱いながらヨークとの貼り合せ面と側面を接着するなど工程が煩雑であり、貼り合わせ面に塗布した接着厚みが均一でないとボール受け面が傾く、ボール受け面に接着剤が付着すると可動部の追従性が悪くなる、など組立品質の管理が難しく、高コストな工程であった。スポット溶接による組立も専用設備と溶接ノウハウが必要な工程であり、溶接条件が適正でないとボール受け面が歪んだり剥がれたりするなど組立品質の管理が難しく、同じく高コストな工程であった。
【0058】
本実施形態で説明したように、SUS630材やSUS631材のような高飽和磁束密度かつ高表面硬度の素材を用いてヨークとボール受け面とを一体化した部品では、これらの接合工程が不要となるため、組立工数、設備や品質管理の面でコストダウンが期待できる。また、一体化した部品にハーフパンチ加工等の機械加工を施す際、凸形状のボール受け面を反りや歪みが小さくなるように形成することで高い平面度を実現することができ、高精度なブレ補正が図られる。
【0059】
レンズ交換式のカメラにおけるBISのVCMを設計する場合、ユーザが様々なレンズとの組み合わせで使用することを想定して、最も要求性能が厳しいレンズでも成立するVCMを設計していく。そのため、可動量の大きいBISとなる。VCMは可動部が中心にいる時に最大推力が得られ、中心から離れるほど推力は落ちていく。可動量の大きいBISの可動領域端部付近において必要十分な推力を出すためのVCM設計では、SPCC材のヨークの使用は不可避であった。一方、レンズ一体型のカメラにおけるBISのVCMを設計する場合、レンズとボディの組み合わせが1対1で決まっているため、レンズの性能に合わせてVCMを個別最適化できる。これは可動量を必要最小限に抑え込んだBISとなることであり、SPCC材のヨークの代わりにSUS630/631材のヨークを使って要求性能を満足するVCM設計が可能であることを意味する。
【0060】
[ブレ補正装置の取り付け]
ブレ補正装置100の取付面は、一体化部品(ドライブヨーク150、第1ヨーク)の第1ボール受け面152と反対側の面(被写体側の面、+Z側の面)である取付面154であり、この取付面154が、撮像装置本体2にブレ補正装置100を締結する基準面となる。なお、レンズ装置12が、マウント面13(
図10を参照)を介して撮像装置本体2に取り付けられる。
【0061】
[レンズ交換の有無と可動部の付勢方向との関係]
レンズ交換式のカメラはレンズを着脱できるマウント構造となっていて、ユーザはマウントから撮像素子をクリーニングすることができる。この場合、クリーニングペーパー等を使って手入れする時に撮像素子に触れることになる。BIS(ブレ補正機構)搭載のカメラであってもペーパーの押し付け方向と可動部の付勢方向が同じ向きのBIS構成ならば、撮像素子に触れても光軸方向にガタつくことがなく、品位を損ねることがない。一方、ペーパーの押し付け方向と可動部の付勢方向が逆向きであると、撮像素子に触れた時に光軸方向にガタつき、品位を損ねる懸念がある。この理由もあって、従来はペーパーの押し付け方向と可動部の付勢方向が同じ向きとなるようにBISを構成していた。
【0062】
このようなレンズ交換式のカメラに対し、レンズ一体型のカメラはユーザが撮像素子に直接アクセスができない構造となっている。よって、可動部の付勢方向を反転して+Z側(被写体側)にしても問題はない上に、シンプルなBIS構成になることによるコストダウンを享受できる。本実施形態は、このような構成のブレ補正装置、及び斯かるブレ補正装置を備えるカメラ(特にレンズ一体型のカメラ)において有効である。
【0063】
[付勢部材による付勢]
図9は、付勢部材による付勢の様子を示す図である。同図に示すように、また
図4について上述したように、ドライブヨーク150(第1ヨーク)にはマグネット136A,136B,138A,138B,140A,140Bが配置されており、これらマグネットの-Z側にコイル120,122,124が配置される。さらに、これらコイルの-Zに磁気バネ162,164,166(付勢部材)が配置されて、可動部110(保持枠112に保持された撮像素子ユニット16及びコイル120,122,124を含む)がこれら磁気バネによりドライブヨーク150(第1ヨーク)に付勢される。即ち、ブレ補正装置100では、可動部の付勢方向が+Z方向(被写体側)である。
【0064】
なお、磁気バネ162,164,166は付勢部材の一態様であって機械バネ等他の付勢部材を用いてもよい。また、磁気バネ(付勢部材)の枚数及び位置も、
図9の態様に限定されるものではない。
【0065】
[部品点数とブレ補正装置の倒れにくさ]
ドライブヨーク150(第1ヨーク)と一体に形成された第1ボール受け面152と反対側の面である取付面154(取付面)は、撮像装置本体2にブレ補正装置100を取り付ける基準面となる。撮像装置本体2にはレンズ装置12を取り付けるマウント面13が存在し、撮像素子17の撮像面17Aがこのマウント面13と平行になるようにブレ補正装置100を取り付けることが求められる。撮像素子17から取付面154まで介する部品点数が多いと、その点数分だけ部品公差が積み上がる。すなわち、撮像素子17に対して取付面154が倒れやすく(傾斜しやすく)、平行を出すことが難しくなる。
【0066】
上述したように、これまでのレンズ交換式カメラのブレ補正装置では、撮像面側(-Z側)の固定部に可動部を付勢していた。このような構成のブレ補正装置では、撮像素子から撮像装置本体までに、可動部のボール受け面、ボール、固定部のボール受け面、ベースヨーク、シャフト、フロントヨークが介在する。
【0067】
これに対し、本実施形態に係るブレ補正装置100では、
図8,9等について上述したように、被写体側(+Z側)の固定部(ドライブヨーク150)に可動部110を付勢している。斯かる構成のブレ補正装置100では、撮像素子17から撮像装置本体2までに介在するのは、可動部110の第2ボール受け面118A、ボール134、ドライブヨーク150(第1ヨーク)である。なお、ブレ補正装置100(可動部110)においては、ドライブヨーク150に対し不図示のシャフトを介してカウンターヨーク170が取り付けられているが、「撮像素子17に対する取付面154の倒れ」という意味では、シャフト及びカウンターヨーク170は介在していない。
【0068】
このようなブレ補正装置100では、撮像素子17から取付面154まで介する部品点数が従来のブレ補正装置よりも少ないため、倒れにくい構成である。これにより、撮像素子17とマウント面13との平行を出すためのあおり調整工程の削除や調整工数の削減などが可能となり、コストダウンが図られる。
【0069】
[ブレ補正装置の構成による撮像装置の構成への影響]
図10は、最後尾レンズと光学部材との位置関係を示す模式図である。撮像装置10がレンズ一体型である場合、ブレ補正装置100では、撮像素子ユニット16の前(+Z側)に配置する光学部材18とレンズ最後面(最後尾レンズ12Cの-Z側の面)との距離を短く設計できる。これは、可動部110の付勢方向が撮像面側(撮影者側;-Z側)の場合には、付勢方向と反対方向に落下や振動等の外力が加えられて可動部110が(+Z側に)浮き上がった時に、最後尾レンズ12Cと光学部材126が接触する懸念があるが、第1の実施形態のように付勢方向が被写体側(+Z側)の場合には、外力により可動部110が浮き上がる方向が逆向き(-Z側)となるため光学部材18が最後尾レンズ12Cから遠ざかり、可動部110と最後尾レンズ12Cが接触することはないからである。なお、光学部材18と最後尾レンズ12Cとの間には、光軸Lの方向において他の光学部品(レンズ、フィルタ、ガラス部材等)が介在しないものとする。ただし、緩衝部材や取付金具等は介在していてもよい。
【0070】
[撮像素子ユニットの構成]
図11は、第1の実施形態に係る撮像素子ユニットの概略構成を示す図である。同図に示すように、撮像素子ユニット16(撮像素子ユニット)は、撮像素子17(撮像素子)と光学部材18(光学部材)とを備える。光学部材18の第1面20(第1面;-Z側の面)には、圧電素子19が配置されている。光学部材18の第2面21は、詳細を後述するように第1領域21A及び第2領域21Bを有する。
【0071】
[ブレ補正装置における塵埃対策]
次に、ブレ補正装置における塵埃対策について説明する。
【0072】
デジタルカメラでは、手振れ補正機能を搭載して手振れによる画像ブレに対応する機種が知られている。手振れ補正の仕組みとして、従来はレンズ装置での光学的な手振れ補正(OIS:Optical Image Stabilization)が主流であったが、近年はデジタルカメラ性能のアップやカメラとレンズ装置とで構成されるカメラの全体サイズの小型化のため、撮像素子等を駆動して補正するボディ内手振れ補正(BIS:in-Body Image Stabilization、IBISともいう)を搭載する機種が増えてきている。近年は撮像素子の高解像度化や高画質化が進み、撮像素子は大型化しており、大きな撮像素子を使用するのに伴ってBISユニット(ブレ補正装置)も大型化している。そして高画質化が求められるため、撮像素子または近傍に配置された光学素子に塵埃などが付着して画像にゴミが写り込むことは問題となる。そこで、カメラ内部では撮像素子の前に置いた光学ダミーガラスにて撮像素子を密閉構造にしてゴミの侵入を防ぐことや、ダミーガラス表面に付着したゴミに対してガラスを加振してゴミを落とすダストリダクション(DR:Dust Reduction、除塵ともいう)機能によってゴミが画像に写り込まないようにすることが行われている。
【0073】
[レンズ交換式のカメラ及びレンズ一体型のカメラにおける塵埃対策]
レンズ交換式のカメラにおいては、レンズを外して手動で撮像素子周りをクリーニングしてゴミを除去することできて、ゴミの対策ができる。そのため、撮像素子を駆動するBISユニットの動作で塵埃などが発生しても、クリーニングすることでカメラ内部にゴミが溜まり続けることがなく問題にならない。一方、レンズ一体型のカメラでは、撮像素子を駆動するBISユニットの動作で塵埃などが一旦発生すると、そのゴミはカメラ内部に留まり続ける。このため、BISユニットにDR機能を搭載してゴミを落としたり、ゴミの移動を制限したり、ゴミを捕捉したりして画像へのゴミの写り込みを抑える必要がある。
【0074】
また、レンズ一体型のカメラではレンズとカメラボディの組み合わせが1対1で決まっており、撮像素子の前に配置される光学素子も含めて、レンズの光学系を設計することができる。そのため、レンズ交換式のカメラのように汎用性を持たせるためのダミーガラスを撮像素子の前面に置く必要がなくなり、IRカットガラス(IR:Infrared、赤外線)の配置のみで構成されるDR機構部を設計することが可能となる。この場合、IRカットガラスに圧電素子を接着固定して、圧電素子に電圧を印加してIRカットガラスを加振させることでゴミを落とす。
【0075】
図12は、レンズ交換式のカメラにおける、DR機能を備える撮像素子ユニットの構成を示す図である。同図に示すように、撮像素子ユニット102はダミーガラス15と光学部材18の両方を備えており、ダミーガラス15に圧電素子19を接着固定して、ダミーガラス15を加振してゴミを落としている。ダミーガラス15には反射防止コートが両面に蒸着されており、光学部材18にはIR/UVカットコート(UV:Ultraviolet、紫外線)が片方の面に、反射防止コートが他方の面に蒸着されている。
【0076】
図13は、第1の実施形態に係る撮像素子ユニット16の構成を示す図である。同図に示すように、撮像素子ユニット16にはダミーガラスがなくIRカットガラスにより構成される光学部材18(光学部材)のみであり、この光学部材18に圧電素子19を接着固定して、圧電素子19で光学部材18を加振してゴミを落とす。
【0077】
[各種コートの蒸着]
従来の撮像素子ユニットと同様に、光学部材18にはIR/UVカットコートが片方の面に、反射防止コートが他方の面に蒸着されるが、IR/UVカットコートの蒸着範囲を限定する必要がある。すなわち、圧電素子19の貼り付け範囲はUV光を透過させる必要があるため、圧電素子19を貼り付ける対向面の当該範囲にはコートを蒸着しないことになる。
【0078】
また、IR/UVカットコートは、ゴースト対策のためIRカットガラスの被写体側の面(+Z側の面)に蒸着するのが望ましい。これにより、圧電素子19はIR/UVカットコートと反対の、撮影者側の面(-Z側の面)に配置することとなる。ここで、IRカットガラスは下記の条件(1)、(2)に沿って設計することが光学設計的に望ましい。
【0079】
条件(1):付着したゴミが画像に写り込んだ際の影響を小さくするため、IRカットガラスと撮像素子との間隔を離す。
条件(2):光学設計の自由度を増やすため、IRカットガラスとレンズ最後面との間隔を近づける。
【0080】
条件(1)の「間隔を離す」ことで生まれた空間には圧電素子を配置するのが望ましく、これにより小型化と画像ゴミ対策の両立が図れる。さらに、圧電素子が被写体側の面にないことで、条件(2)の「間隔を近づける」ことに寄与できるため、上記の部品配置による設計が最も良い。例えば、仮にIRカットガラスの被写体側の面に圧電素子を配置すると、上記条件(2)に影響してしまう。
【0081】
[IRカットガラスにおけるコーティング及び圧電素子の配置]
図14は、第1の実施形態に係る光学部材18(IRカットガラス、光学部材)におけるコーティング及び圧電素子の配置を示す図である。光学部材18においては、IRカットガラス18Aの撮像素子17側の面(-Z側の面)である第1面20(第1面)に反射防止コート膜18Bが蒸着され、第1面20と対向する第2面21(第2面)にIR/UVカットコート膜18Cが蒸着される。即ち、光学部材18(IRカットガラス18A)は、赤外線光をカットするガラス部材である。
【0082】
IRカットガラス18Aの第2面21は、第1領域21Aと、第2領域21Bとを有する。第1領域21Aは光軸Lの方向に透視した場合に圧電素子19(振動付与装置)と重なる領域を含み、第2領域21Bは第2面21の、第1領域21A以外の領域(第1領域以外の領域)である。第1領域21Aと第2領域21Bとは、紫外線のカット率(表面特性の一態様)が異なる。具体的には、第1領域21Aにおける紫外線カット率は、第2領域21Bにおける紫外線カット率よりも低い。なお、第1領域21Aを介して紫外線を照射するため、第1領域21Aにおける紫外線カット率はできるだけ低いことが好ましいが、接着剤の硬化が可能であればカット率がゼロでなくてもよい。また、第1領域21Aと第2領域21Bとでの紫外線カット率の相違は、第1領域21Aをマスクして第2領域21Bだけにコートする、第2面21の全体にコートしたガラスの第1領域21Aにおけるコートを有機溶剤や研磨剤で除去する、等により実現することができる。
【0083】
[圧電素子の固定]
上述した構成の撮像素子ユニットにおいて、圧電素子19を光学部材18(IRカットガラス18A)に貼り付ける組立では、高精度な位置決めと接着強度の高さが求められる。圧電素子19の貼り付け位置がズレると、ガラスの振動モードが変わってゴミ除去率に影響を及ぼすためである。また、圧電素子19の全体がガラスに接着固定されていなかったり、接着強度不足によって部分的に剥がれたりすると、大きな振動が発生せずゴミ除去率が低下する。このことから、圧電素子19と光学部材18とを貼り合わせた直後でも硬化せずに貼り付け位置を微調整できて、且つ瞬間的に硬化して固着できるUV接着(紫外線硬化型接着剤を用いた接着)による固定が望ましい。
【0084】
紫外線硬化型接着剤を用いる場合、圧電素子19(振動付与装置)は、光学部材18の第1面20と第2面21との間での紫外線カット率の相違を利用して第1面に固定することができる。具体的には、圧電素子19は、第1面20と圧電素子19との間に塗布された紫外線硬化型接着剤19Aに第1領域21Aを介して紫外線を照射することにより、第1面20に固定される。
【0085】
図15は、このようにして構成された撮像素子17、光学部材18、及び圧電素子19の配置を示す図であり、
図16は、固定部130のヨーク(ドライブヨーク150、カウンターヨーク170)及び撮像素子ユニット16(撮像素子17、光学部材18)の配置を示す図である。
【0086】
[防塵部材等による塵埃対策]
大きな撮像素子を駆動するBISユニット(ブレ補正装置)は大型化しやすく、クリーンルーム内で組立してゴミを最大限除去してもBISユニット内の全てのゴミを除去することは不可能であり、構成部品の様々な位置に微小なゴミが付着したままで組立されることになる。またBISユニットは動作する(可動部が、光軸に交差する面内で移動する)ため、外装部品との接触や干渉を防止するために、可動量に合わせて適切なクリアランスを設けている。この隙間からゴミが移動して撮像素子の前まで侵入すると、画像に写り込んでしまう(例えば、後述の変形例において説明する
図20を参照)。
【0087】
そのため、BISユニットの可動部の周辺を防塵シート等で囲い込むことで防塵領域と外装部品領域に仕切ってやり、防塵領域に滞留するゴミの量と防塵領域内へのゴミの移動を制限することが好ましい。防塵領域内にはゴミが移動できる隙間は多数存在するが、ゴミが移動して画像に写り込む可能性のあるルートは限られている。よって、ゴミの問題となるルートにゴミ吸着部材(両面テープ、粘性のあるグリスなど;塵埃吸着部材)を置いてやり、撮像素子へ向かうゴミを捕捉することで防塵領域内のゴミの移動も制限できる。ゴミ吸着部材は、撮像素子へ向かうゴミだけでなくDR機能にて撮像素子から落としたゴミの捕捉にも有効である。
【0088】
図17及び
図18は、防塵部材及び塵埃吸着部材の配置を示す図である。これらの図に示すように、ドライブヨーク150(第1ヨーク)とカウンターヨーク170(第2ヨーク)との側面部(XY面内方向)の間隙の一部が、防塵部材35A,35B,35C(第1防塵部材)で遮蔽されている。なお、間隙の「少なくとも一部」について遮蔽を行うものとする。防塵の観点からは間隙のできるだけ多くの部分、可能であれば間隙の全てを遮蔽することが好ましいが、他の部材や配線の引き出し等のためのスペースを確保することは差し支えない。ただし、そのような目的のために確保したスペースも、他の遮蔽部材等により可能な限り遮蔽することが好ましい。
【0089】
また、撮像素子17の被写体側(+Z側)には、塵埃吸着部材36A(塵埃吸着部材)が設けられる。上述のように、両面テープや粘性のあるグリスなどを、塵埃吸着部材36Aとして用いることができる。
【0090】
さらに、ブレ補正装置100では、光軸Lの方向における、カウンターヨーク170(第2ヨーク)と可動部110との間隙のうち少なくとも一部が、防塵部材(第2防塵部材)で遮蔽される。具体的には、
図19に示すように、ブレ補正装置100の後端部(-Z側)において、カウンターヨーク170と可動部110との間隙が、防塵部材37(第2防塵部材)で遮蔽される。「少なくとも一部」の意味は第1防塵部材について上述したのと同様である。
図19に示す態様では、防塵部材37における配線引き出し等のための開口が、テープ部材37A,37Bで遮蔽されている。
【0091】
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る撮像素子ユニット16、ブレ補正装置100、及び撮像装置10によれば、撮像装置10における部品配置や光学設計の制約が減ると共に、撮像素子ユニット16やブレ補正装置100の小型化及び高精度化を図ることができ、レンズ一体型のカメラにおいて小型で高性能のレンズを設計することが可能となる。さらに、効果的に防塵及び除塵を行い、塵埃が画像に映り込むのを抑制することができる。
【0092】
[第1の実施形態の変形例]
上述した第1の実施形態では可動部110を被写体側(+Z側)のドライブヨーク150(第1ヨーク)に付勢しているが、本発明において可動部はこれと反対側(-Z側の第2ヨーク)に付勢してもよい。以下、このようなブレ補正装置及び撮像装置の構成の変形例について説明する。
【0093】
図20は、第1の実施形態の変形例について説明するための図である。同図に示すように、変形例においては、ブレ補正装置100Aの可動部110Aが-Z側のカウンターヨーク170Aに付勢されている。可動部110Aは、撮像素子ユニット16Aを備える。
図20に示す例は塵埃対策を施していない状態を示しており、この状態では、撮像装置の外装70と可動部110Aとの隙間等から入り込んだゴミ99(塵埃)が光学部材18等に付着してしまう。
【0094】
これに対し、
図21は塵埃対策を施した状態を示しており、ドライブヨーク150A(第1ヨーク)とカウンターヨーク170A(第2ヨーク)との側面部の間隙のうち少なくとも一部が防塵部材35D(第1防塵部材)で遮蔽され、また光軸Lの方向におけるカウンターヨーク170A(第2ヨーク)と可動部との間隙のうち少なくとも一部が防塵部材37(第2防塵部材)で遮蔽されている。
【0095】
また、ブレ補正装置100Aは、最後尾レンズ12C(レンズ)を保持するレンズ枠12D(レンズ枠)と緩衝部材14(緩衝部材)を介して接触しており、レンズ枠12D及びブレ補正装置100Aは、XY面内方向(光軸Lと交差する方向)におけるコイル部材121(コイル部材)と撮像素子17(撮像素子)との間の部位に、塵埃吸着部材36B,36C(塵埃吸着部材)をそれぞれ備える。さらに、ブレ補正装置100Aの可動部110Aは、コイル部材121に対して撮像素子17と反対方向(コイル部材121に対して光軸Lから遠い側;
図21の左側)に脱脂部39(脱脂部)を備える。なお、
図21ではブレ補正装置100Aの片側のみ示しているが、図示を省略した部分においても塵埃吸着部材や脱脂部を備えることが好ましい。
【0096】
なお、光学部材18の第1面20に圧電素子19を設ける点、及び圧電素子19が第1面20と第2面21との表面特性の相違を利用して第1面20に固定される点は、第1の実施形態について上述したのと同様である。
【0097】
このような変形例に係る撮像素子ユニット、ブレ補正装置、及び撮像装置においても、上述した第1の実施形態と同様に小型化や高精度化、防塵及び除塵等の効果を奏する。
【0098】
[デジタルカメラ以外の機器への本発明の適用]
なお、第1の実施形態及び変形例では、BIS(ブレ補正装置)を搭載したレンズ一体型のデジタルカメラを例に本発明を説明したが、本発明はデジタルカメラに特化した発明ではない。例えば、レンズ一体型の監視カメラやドローンカメラなど、BISを搭載可能な他の撮影機器にも本発明を適用することができる。
【0099】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態及び変形例では、ブレ補正装置を有する撮像装置に本発明を適用する場合について説明した。しかしながら本発明は、ブレ補正装置を有しない撮像装置にも適用することができる。
図22は第2の実施形態に係る撮像装置11の概略構成を示す図であり、
図23は撮像装置11の内部構成を示す図である。撮像装置11はブレ補正装置を有さず、また制御部40が撮像素子ユニット23(光学部材18及び圧電素子19;
図24を参照)を制御して除塵を行う。撮像装置11のその他の構成は第1の実施形態と同様(
図1,2等を参照)であるため、同様の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0100】
図24は、第2の実施形態に係る撮像素子ユニット23の構成を示す図である。同図に示すように、撮像素子ユニット23は撮像素子25(撮像面は撮像面25A)を有し、撮像素子25の前面(+Z側、被写体側)に光学部材18(光学部材)が配置されている。
【0101】
光学部材18はIRカットガラスであり、第1の実施形態と同様に、反射防止コート膜及びIR/UVカットコート膜がコーティングされている。そして、光学部材18の第1面20に圧電素子19が配置され、制御部40が圧電素子19を制御して振動させることで、除塵を行うことができる。また、光学部材18の第2面21は第1領域21Aと第2領域21Bとを有し、表面特性(紫外線のカット率)の相違を利用して、第1領域21Aを介して紫外線を照射することで紫外線硬化型接着剤(
図24では不図示;
図14を参照)を硬化させて圧電素子19を固定することができる。これらの点は、第1の実施形態について上述したのと同様であり、詳細な説明を省略する。
【0102】
図25は、撮像装置11の撮像素子ユニット23の部分を示す図である。撮像装置11は、第1の実施形態と同様に、撮像素子ユニット23の側面部分を遮蔽する防塵部材35D(防塵部材)と、底面部分を遮蔽する防塵部材37(防塵部材)を有する。さらに、撮像装置11は塵埃吸着部材36Dを備える。撮像装置11は、第1の実施形態と同様に脱脂部を備えることが好ましい。
【0103】
このような構成の撮像素子ユニット及び撮像装置においても、第1の実施形態及び変形例について上述したのと同様に、小型化や高精度化、防塵等の効果を奏する。なお、第2の実施形態に係る撮像素子ユニット及び撮像装置は、一般的なデジタルカメラの他に、スマートフォンやタブレット端末、あるいはゲーム機器等に搭載したカメラ、監視カメラやドローンカメラなど、他の撮影機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 被写体
2 撮像装置本体
4 接眼部
10 撮像装置
11 撮像装置
12 レンズ装置
12A レンズ群
12B レンズ群
12C 最後尾レンズ
12D レンズ枠
13 マウント面
14 緩衝部材
15 ダミーガラス
16 撮像素子ユニット
16A 撮像素子ユニット
17 撮像素子
17A 撮像面
18 光学部材
18A IRカットガラス
18B 反射防止コート膜
18C IR/UVカットコート膜
19 圧電素子
19A 紫外線硬化型接着剤
20 第1面
21 第2面
21A 第1領域
21B 第2領域
22 画像入力コントローラ
23 撮像素子ユニット
24 画像処理部
25 撮像素子
25A 撮像面
26 圧縮伸張処理部
28 ビデオエンコーダ
30 画像モニタ
35A 防塵部材
35B 防塵部材
35C 防塵部材
35D 防塵部材
36A 塵埃吸着部材
36B 塵埃吸着部材
36C 塵埃吸着部材
36D 塵埃吸着部材
37 防塵部材
37A テープ部材
37B テープ部材
38 操作部
39 脱脂部
40 制御部
47 フラッシュメモリ
48 メモリ
52 メディアコントローラ
54 メモリカード
58 駆動部
66 センサ
70 外装
99 ゴミ
100 ブレ補正装置
100A ブレ補正装置
102 撮像素子ユニット
110 可動部
110A 可動部
112 保持枠
112A 開口
114A 開口
114B 開口
114C 開口
116 ボール保持部
118 ボール受け部材
118A 第2ボール受け面
120 コイル
121 コイル部材
122 コイル
124 コイル
130 固定部
134 ボール
136A マグネット
136B マグネット
138A マグネット
138B マグネット
140A マグネット
140B マグネット
150 ドライブヨーク
150A ドライブヨーク
152 第1ボール受け面
152A 凹部
154 取付面
162 磁気バネ
164 磁気バネ
166 磁気バネ
170 カウンターヨーク
170A カウンターヨーク