(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122807
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 36/00 20060101AFI20240902BHJP
A61K 36/238 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/30 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/8962 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/87 20060101ALI20240902BHJP
A61K 36/42 20060101ALI20240902BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240902BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240902BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240902BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240902BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240902BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240902BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240902BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240902BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240902BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240902BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240902BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240902BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240902BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240902BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240902BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240902BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240902BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240902BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240902BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K36/00
A61K36/238
A61K36/30
A61K36/899
A61K36/8962
A61K36/9066
A61K36/87
A61K36/42
A61K31/7105
A61P37/02
A61P29/00
A61P21/00
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/00
A61P1/00
A61P27/02
A61P25/28
A61P31/14
A61P17/00
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/72
A61K8/9789
A61K8/9794
A23L33/105 ZNA
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030573
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】516126296
【氏名又は名称】株式会社医道メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 徹
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 祐己
(72)【発明者】
【氏名】林 寛敦
(72)【発明者】
【氏名】山角 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小田 健昭
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 弥磨
(72)【発明者】
【氏名】陰山 泰成
(72)【発明者】
【氏名】小島 拓哉
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
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4B018LE06
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4B018ME01
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4B018ME04
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4B018ME14
4B018MF01
4C076AA06
4C076AA11
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4C088AB12
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4C088AB87
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4C088BA06
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4C088ZA15
4C088ZA33
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4C088ZB01
4C088ZB11
4C088ZB33
4C088ZC33
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】本発明は、新規な医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品を提供することを目的とする。
【解決手段】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する、医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項2】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する医薬品。
【請求項3】
前記植物が、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、及びゴーヤからなる群から選択される、請求項2に記載の医薬品。
【請求項4】
抗炎症剤、筋力増強剤、糖尿病治療剤、糖尿病予防剤、皮下脂肪抑制剤、痩身剤、ドライアイ治療剤、過敏性腸症候群治療剤、サイトカインストーム抑制剤、コロナウイルス感染症治療剤、または認知症治療剤である、請求項2または3に記載の医薬品。
【請求項5】
前記抗炎症剤が、脳炎、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労性症候群、コロナウイルス感染症の後遺症、炎症性腸疾患、または皮膚炎に対する治療薬である、請求項4に記載の医薬品。
【請求項6】
塗布剤、経口剤、点眼剤、点鼻薬、吸入剤、または注射剤である、請求項2~5のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項7】
前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nm、135~165nm、110~140nm、または160~190nmである、請求項2~6のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項8】
前記細胞外小胞の平均粒子径が135~145nm、145~155nm、120~130nm、または170~180nmである、請求項2~6のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項9】
90%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項2~8のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項10】
95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項2~8のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項11】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する食品組成物。
【請求項12】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する食品。
【請求項13】
前記植物が、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、及びゴーヤからなる群から選択される、請求項2に記載の食品。
【請求項14】
前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nmである、請求項12または13に記載の食品。
【請求項15】
前記細胞外小胞の平均粒子径が135~145nmである、請求項12または13に記載の食品。
【請求項16】
90%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項12~15のいずれか1項に記載の食品。
【請求項17】
95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項12~15のいずれか1項に記載の食品。
【請求項18】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する化粧品組成物。
【請求項19】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する化粧品。
【請求項20】
前記植物が、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、及びゴーヤからなる群から選択される、請求項19に記載の化粧品。
【請求項21】
前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nmである、請求項19または20に記載の化粧品。
【請求項22】
前記細胞外小胞の平均粒子径が135~145nmである、請求項19または20に記載の化粧品。
【請求項23】
90%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項19~22のいずれか1項に記載の化粧品。
【請求項24】
95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmである、請求項19~22のいずれか1項に記載の化粧品。
【請求項25】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する炎症性サイトカインの発現抑制剤。
【請求項26】
前記炎症性サイトカインがIL-6、IL-1β、CXCL2、またはIL-4である、請求項25に記載の発現抑制剤。
【請求項27】
植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する老化のマーカーの発現抑制剤。
【請求項28】
前記炎症性マーカーがp15またはp16である、請求項27に記載の発現抑制剤。
【請求項29】
以下の塩基配列を含むRNAを有効成分として含有する医薬組成物。
hsa-miR-6737-3p:
UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:
UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:
UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:
UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
【請求項30】
以下の塩基配列を有するRNAを有効成分として含有する医薬品。
hsa-miR-6737-3p:
UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:
UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:
UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:
UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
以下の塩基配列を有するRNAを有効成分として含有する炎症性サイトカインの発現抑制剤。
以下の塩基配列を有するRNAを有効成分として含有する医薬品。
hsa-miR-6737-3p:
UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:
UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:
UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:
UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
【請求項31】
前記炎症性サイトカインが、IL-6である、請求項31に記載の炎症性サイトカインの発現抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)は、直径30~1000nmの小胞であって、異なる起源や大きさや機能を有する様々な小胞を含む。近年、細胞外小胞を治療薬やバイオマーカーなどに使用するために様々な研究が行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"Molecular evaluation of five different isolation methods for extracellular vesicles reveals different clinical applicability and subcellular origin" RE Veerman et al. J Extracell Vesicles. 2021 10:e12128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する医薬組成物または医薬品である。
【0006】
前記医薬品は、抗炎症剤、筋力増強剤、糖尿病治療剤、糖尿病予防剤、皮下脂肪抑制剤、痩身剤、ドライアイ治療剤、過敏性腸症候群治療剤、サイトカインストーム抑制剤、コロナウイルス感染症治療剤、または認知症治療剤であってもよい。前記抗炎症剤が、脳炎、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労性症候群、コロナウイルス感染症の後遺症、炎症性腸疾患、または皮膚炎に対する治療薬であってもよい。前記医薬品は、塗布剤、経口剤、点眼剤、点鼻薬、吸入剤、または注射剤であってもよい。前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nm、135~165nm、110~140nm、または160~190nmであってもよく、より好ましくは、135~145nm、145~155nm、120~130nm、または170~180nmであってもよい。90%以上、または95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmであってもよい。
【0007】
本発明の他の実施態様は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する食品組成物または食品である。前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nmまたは135~145nmであってもよい。90%以上、または95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmであってもよい。
【0008】
本発明のさらなる実施態様は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する化粧品組成物または化粧品である。前記細胞外小胞の平均粒子径が125~155nmまたは135~145nmであってもよい。90%以上、または95%以上の前記細胞外小胞の粒子径が50~250nmであってもよい。
【0009】
本発明のさらなる実施態様は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する炎症性サイトカインの発現抑制剤である。前記炎症性サイトカインがIL-6、IL-1β、CXCL2、またはIL-4であってもよい。
【0010】
本発明のさらなる実施態様は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する老化のマーカーの発現抑制剤である。前記炎症性マーカーがp15またはp16であってもよい。
【0011】
なお、前記植物が、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、及びゴーヤからなる群から選択されてもよい。
【0012】
本発明のさらなる実施態様は、以下の塩基配列を有するRNAを有効成分として含有する医薬組成物、医薬品、食品組成物、食品、化粧品組成物、化粧品、炎症性サイトカインの発現抑制剤である。
【0013】
hsa-miR-6737-3p:
UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:
UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:
UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:
UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
【0014】
前記炎症性サイトカインが、IL-6であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、新規な医薬組成物および医薬品、食品組成物および食品、並びに化粧品組成物および化粧品を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例において、(A)長命草の搾汁を遠心して得た沈殿物をPBSに懸濁し、ショ糖密度勾配超遠心で分画したときに得られる遠心管内の分画を示す写真、(B)密度1.12~1.18g/mLに集積したバンド(第2バンド)に含まれる細胞外小胞の粒度分布を示すグラフ、および(C)第2バンドに含まれる細胞外小胞の平均粒子径を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、培養細胞を用いたin vitroの実験で、LPS刺激による炎症性サイトカインの発現誘導の抑制効果を有することを示す図である。
【
図3】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、マウス大腸炎モデルマウスにおける出血抑制効果を有することを示す図である。
【
図4】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、マウス大腸炎モデルマウスにおける上皮組織に対する抗炎症効果を有することをしめす図である。
【
図5】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、Ras遺伝子の発現誘導による老化のマーカーの発現誘導を抑制することを示す図である。
【
図6】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、マウス個体の筋力増強効果を有することを示す図である。
【
図7】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、マウス個体に対する高脂肪食負荷による(A)インスリン抵抗性の軽減効果を有すること(B)脂肪の蓄積の抑制効果を有すること(C)HbA1c濃度の抑制効果を有すること、を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、ドライアイの症状を軽減する効果を有することを示す図である。
【
図9】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、皮膚の炎症に伴う耳の腫れを軽減する効果を有することを示す図である。
【
図10】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、皮膚の炎症に伴う免疫細胞の浸潤を抑制する効果を有することを示す図である。
【
図11】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、皮膚の炎症に伴う耳の腫れによる組織の肥厚を抑制する効果を有することを示す図である。
【
図12】本発明の一実施例において、長命草由来の細胞外小胞が、皮膚の炎症に伴う炎症性因子の発現を抑制する効果を有することを示す図である。
【
図13】本発明の一実施例において、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、ゴーヤから調製した細胞外小胞が、培養細胞を用いたin vitroの実験で、LPS刺激による炎症性サイトカインの発現誘導の抑制効果を有することを示す図である。
【
図14】本発明の一実施例において、哺乳類miRNAが、培養細胞を用いたin vitroの実験で、LPS刺激による炎症性サイトカインの発現誘導の抑制効果を有することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。
【0018】
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、M. R. Green & J. Sambrook (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (4th edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2012); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0019】
なお、本発明の目的、特徴、利点、および、そのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をこれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0020】
==細胞外小胞の調製方法==
植物由来の細胞外小胞(本明細書等中で、EVsとも表記される)の調製方法は当業者には公知であって、特に限定されない。ここで、植物とは、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、及びゴーヤからなる群から選択されることが好ましいが、特に限定されない。使用部位も特に限定されず、当業者が適宜選択することができるが、例えば、長命草では葉、長生百薬では葉、レモングラスでは葉、葉ニンニクでは葉、ウコンでは根茎、山葡萄では果実、及びゴーヤでは実であることが好ましい。以下、細胞外小胞の調製方法の例を具体的に説明する。
【0021】
まず、植物を破砕して搾汁を得る。この際、例えば1000~10000gで10~60分程度遠心することによって、目に見える程度の固形物を除去しておくのが好ましい。その後、120000~150000gで60分~一晩超遠心し、沈殿物を得る。この沈殿物をPBSなどの緩衝液に懸濁し、ショ糖密度勾配超遠心法などで分画する。ショ糖密度勾配の場合、例えば、長命草の場合30~45%に集積した画分、長生百薬の場合8~30%(密度1.02~1.12g/mL)(第1バンド)および30~45%(密度1.12~1.18g/mL(第2バンド)に集積した画分に集積したバンド、レモングラスの場合30~45%(密度1.12~1.18g/mL)(第2バンド)に集積した画分、葉ニンニクの場合8~30%(密度1.02~1.12g/mL)(第1バンド)および30~45%(密度1.12~1.18g/mL)(第2バンド)に集積した画分、ウコンの場合30~45%(密度1.12~1.18g/mL)(第2バンド)に集積した画分、山葡萄の場合30~45%(密度1.12~1.18g/mL)(第2バンド)に集積した画分、及びゴーヤの場合30~45%(密度1.12~1.18g/mL)(第2バンド)に集積した画分を回収することによって、目的の細胞外小胞を得ることができる。この調製方法は、適宜修正してもよく、例えば、ショ糖密度勾配超遠心法の代わりに、OptiPrep密度勾配遠心法、サイズ排除クロマトグラフィー、exoEasy midiなどの市販のスピンカラム法、タンジェンシャルフローろ過法などを用いてもよい。得られた細胞外小胞の粒子径、粒度分布、濃度は、NanoSight NS300 (Malvern Instrument)などのナノ粒子分析装置によって測定することができる。
【0022】
長命草由来の細胞外小胞は、平均粒子径が125~155nmであることが好ましく、135~145nmであることがより好ましい。長生百薬の細胞外小胞第1バンドは、平均粒子径が125~155nmであることが好ましく、135~145nmであることがより好ましい。長生百薬の細胞外小胞第2バンドは、平均粒子径が135~165nmであることが好ましく、145~155nmであることがより好ましい。レモングラスの細胞外小胞は、平均粒子径が135~165nmであることが好ましく、145~155nmであることがより好ましい。葉ニンニクの細胞外小胞第1バンドは、平均粒子径が125~155nmであることが好ましく、135~145nmであることがより好ましい。葉ニンニクの細胞外小胞第2バンドは、平均粒子径が135~165nmであることが好ましく、145~155nmであることがより好ましい。ウコンの細胞外小胞は、平均粒子径が110~140nmであることが好ましく、120~130nmであることがより好ましい。山葡萄の細胞外小胞は、平均粒子径が160~190nmであることが好ましく、170~180nmであることがより好ましい。ゴーヤの細胞外小胞は、平均粒子径が125~155nmであることが好ましく、135~145nmであることがより好ましい。植物由来の細胞外小胞の個々の粒子径としては、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の細胞外小胞の粒子径が、50~250nmである。
【0023】
長命草とは、ボタンボウフウとも呼ばれるセリ科カワラボウフウ属の植物であり、学名をPeucedanum japonicumという。長生百薬とは、オカムラサキまたはアカザカズラとも呼ばれるツルムラサキ科アカザカズラ属の植物であり、学名をAnredera cordifoliaという。レモングラスとは、イネ科オガルカヤ属の植物であり、学名をCymbopogon citratusという。葉ニンニクとは、12月~2月にかけて、葉が大きく育ったニンニク(学名:Allium sativum)のことである。ウコンとは、ターメリックとも呼ばれるショウガ科ウコン属の植物であり、学名をCurcuma longaという。山葡萄とは、エビカズラとも呼ばれるブドウ科ブドウ属の植物であり、学名をVitis coignetiaeという。ゴーヤとは、ツルレイシまたはニガウリとも呼ばれるウリ科ツルレイシ属の植物であり、学名をMomordica charantia var. pavelという。
【0024】
==細胞外小胞を含有する発現抑制剤==
本明細書に開示の炎症性サイトカインの発現抑制剤は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する。炎症性サイトカインには、IL-6、IL-1β、CXCL-2、IL-4、IL-13、IL-33、TNF-αなどが含まれる。
【0025】
本明細書に開示の老化のマーカーの発現抑制剤は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する。老化のマーカーには、p15、p16、p19、またはβガラクトシダーゼなどが含まれる。従って、植物由来の細胞外小胞は、老化抑制作用を有する。
【0026】
==細胞外小胞を含有する医薬==
本明細書に開示の医薬組成物及び医薬品は、植物由来の細胞外小胞を有効成分として含有する。
【0027】
医薬品が対象とする疾患または症状は、炎症、糖尿病、肥満、ドライアイ、過敏性腸症候群、サイトカインストリーム、および認知症である。従って、本医薬品は、抗炎症剤、筋力増強剤、糖尿病治療剤、糖尿病予防剤、皮下脂肪抑制剤、痩身剤、ドライアイ治療剤、過敏性腸症候群治療剤、サイトカインストーム抑制剤、コロナウイルス感染症治療剤、または認知症治療剤として利用できる。この抗炎症剤が治療対象とする炎症は、脳炎、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労性症候群、コロナウイルス感染症の後遺症、炎症性腸疾患、または、皮膚炎を含む。
【0028】
本医薬品は、その用途に応じて、塗布剤、経口剤、点眼剤、または注射剤であることが好ましい。注射剤の場合、投与ルートは特に限定されないが、静脈内に投与されることが好ましい。
【0029】
==細胞外小胞由来のsmall RNAの製造方法==
本明細書に記載される細胞外小胞由来のsmall RNA(本明細書では、miRNAを含むものとする)は、以下の配列を含むか、または以下の配列からなる。なお、長命草由来の細胞外小胞に含まれているsmall RNAのうち、哺乳類のmiRNAに相当する配列の名称を、Pj-(哺乳類相当miRNA名)とする。また、小文字の塩基は、対応する哺乳類のmiRNAと植物のsmall RNAにおいて、塩基が異なることを示す。
【0030】
hsa-miR-6737-3p:
UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:
UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:
UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:
UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
Pj-has-miR-6737-3p:
UCUG(a/c)GCU(a/g)CACCCCUACCCAG(配列番号23)
Pj-mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGAgCUGcAUCCCCAG(配列番号24)
Pj-mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCaUCgUCUCACAG(配列番号25)
Pj-mmu-miR-12178-5p:
UAaGGGUGGCUGtUCUCAGAAGAG(配列番号26)
Pj-mmu-miR-3063-3p:aGgGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号27)
Pj-mmu-miR-487b-5p:UGGUUAUCCCUccCCUCUUCG(配列番号28)
【0031】
このsmall RNAは当業者に公知の方法で化学合成して製造できる。
【0032】
なお、本発明の効果を有する限り、上記small RNAの配列中、1個、2個、3個、4個、または5個が他の塩基に変異していてもよく、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個などの一部、または全部の塩基がDNA、または修飾された塩基であってもよい。また、small RNAの配列に対し、1個、2個、3個、4個、または5個のRNAまたはDNAの余分な配列を有していてもよい。
【0033】
==細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する発現抑制剤==
本明細書に開示の炎症性サイトカインの発現抑制剤は、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを有効成分として含有する。炎症性サイトカインには、IL-6、IL-1β、CXCL2、IL-4、IL-13、IL-33、TNF-αなどが含まれる。従って、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAは抗炎症作用を有する。
【0034】
本明細書に開示の老化のマーカーの発現抑制剤は、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを有効成分として含有する。老化のマーカーには、p15、p16、p19、またはβガラクトシダーゼなどが含まれる。従って、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAは、老化抑制作用を有する。
【0035】
==細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する医薬==
本明細書に開示の医薬組成物及び医薬品は、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを有効成分として含有する。
【0036】
医薬品が対象とする疾患または症状は、炎症、糖尿病、肥満、ドライアイ、過敏性腸症候群、サイトカインストリーム、および認知症である。従って、本医薬品は、抗炎症剤、筋力増強剤、糖尿病治療剤、糖尿病予防剤、皮下脂肪抑制剤、痩身剤、ドライアイ治療剤、過敏性腸症候群治療剤、サイトカインストーム抑制剤、コロナウイルス感染症治療剤、または認知症治療剤として利用できる。この抗炎症剤が治療対象とする炎症は、脳炎、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労性症候群、コロナウイルス感染症の後遺症、炎症性腸疾患、または皮膚炎を含む。
【0037】
本医薬品は、その用途に応じて、塗布剤、経口剤、点眼剤、または注射剤であることが好ましい。注射剤の場合、投与ルートは特に限定されないが、静脈内に投与されることが好ましい。
【0038】
==細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する食品==
本明細書に開示の食品組成物及び食品は、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する。
【0039】
食品組成物は、日常的に摂食する食品を製造するのに用いてもよく、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、補助食品、サプリメントなどの機能を有する食品を製造するのに用いてもよい。食品の形状も特に限定されず、固体、液体、ゼリー、グミ、ガム、シロップなどが例示できる。
【0040】
植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する食品は、炎症、糖尿病、肥満、過敏性腸症候群、サイトカインストリーム、および認知症などを予防または治療する機能を有する。従って、本食品は、抗炎症用、筋力増強用、糖尿病治療用、糖尿病予防用、皮下脂肪抑制用、痩身用、過敏性腸症候群治療用、サイトカインストーム抑制用、コロナウイルス感染症治療用、または認知症治療用として利用できる。また、サプリメントとしては、抗炎症剤、筋力増強剤、糖尿病治療剤、糖尿病予防剤、皮下脂肪抑制剤、痩身剤、過敏性腸症候群治療剤、サイトカインストーム抑制剤、コロナウイルス感染症治療剤、または認知症治療剤として利用できる。この抗炎症効果の対象とする炎症は、脳炎、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労性症候群、コロナウイルス感染症の後遺症、炎症性腸疾患、または皮膚炎、を含む。
【0041】
本食品は、経口で摂食される。
【0042】
==細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する化粧品==
本明細書に開示の化粧品組成物及び化粧品は、植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する。
【0043】
植物由来の細胞外小胞および/またはそれ由来のsmall RNAを含有する化粧品は、炎症、特に皮膚炎などを予防または治療する効果を有する。従って、本化粧品は、抗炎症用として利用できる。
【0044】
本化粧品は、塗布剤として、塗布することによって用いられる。
【実施例0045】
(1)細胞外小胞の調製
沖縄県宮古島の農園栽培の長命草を水で洗浄し、水切りした後、家庭用ジューサー (Kuvings)を用いて破砕した。得られた破砕物を、Avati J-E (Bechman Courlter:JA-14 ローター)を用いて3,000gで20分間遠心後、10,000gで40分間遠心することで大きめの固形物を除去し搾汁を得た。得られた搾汁をOptima XE-90 (Bechman Courlter: SW32 Ti ローター)を用いて150,000gで90分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物をPBSに懸濁した後、ショ糖密度勾配溶液(8,30,45,60%)にアプライし、更に150,000gで90分間超遠心して分画した(
図1A)。その後、密度1.12~1.18g/mLに集積したバンド(
図1Aの矢印)を20mLシリンジ(テルモ社)を用いて回収した。PBSに混和後、150,000gで90分間遠心し、沈殿物を再度PBSに懸濁して細胞外小胞(細胞外小胞)とした。
【0046】
得られた細胞外小胞の粒度分布(
図1B)と平均粒子径(
図1C)を、405nmブルーレーザーを搭載したNanoSight NS300(Malvern Instrument)を用いて計測した。その結果、粒子径が50~250nmの粒子は95%以上であって、平均粒子径は約140nmであった。
【0047】
(2)炎症性サイトカインの発現抑制
実施例における細胞培養において、粉末MEM(Minimum essential medium)および粉末DMEM(Dulbecco’s modified eagle’s medium)は日水製薬から購入した。ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)はEquitech-BioもしくはGIBCOより購入した。トリプシン粉末はGIBCOから購入した。その他、特に指定のない実験試薬類は、Wako、ナカライテスク、SIGMAの特級、生化学実験用のものを用いた。
【0048】
マウスマクロファージRaw-Blue(InvivoGen)及びヒトマクロファージ細胞THP-1細胞(ATCC)は、10%FBS、100μg/mL NormocinTM(InvivoGen)、100U/mL PS(Pen-Strep)を含有したDulbecco’s Modifeid Eagle Medium(DMEM;Thermo Fisher社)を培地に用い、100mmディッシュに4.7x106個の細胞を播種して、37℃、5%CO2で継代培養した細胞を用いた。
【0049】
まず、Raw-BlueあるいはTHP-1細胞を12ウエルディッシュ0.8x10
5個/ウエルとなるように播種後、細胞外小胞を1.0x10
10個/mLで加えた。16時間後PBSで洗浄し、培地にLPS(Salmonella minnesota R595由来:WAKO)(最終濃度1μg/mL)を添加して24時間刺激した。刺激後、細胞をPBSで洗浄し、Trizol(Thermo Fisher)を用いて、total RNAを抽出し、炎症性サイトカインIL-6、IL-33、IL-1β、TNF-αの発現をRT-qPCRにより測定した。
図2にその結果を示す。
【0050】
図2に示されているように、両方の細胞株において、長命草由来の細胞外小胞はIL-6、IL-1βのLPSによる発現誘導を強力に抑制した。
【0051】
(3)マウス大腸炎モデルマウスにおける抗炎症効果
1日1回1010個の細胞外小胞を野生型8週齢雄マウス(C57BL6/6J)に1週間投与した後、大腸炎を引き起こす3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を給水に添加し、引き続き同量の細胞外小胞を投与した。
【0052】
図3Aに示すように、DSS未処理の段階で、細胞外小胞を投与したマウス群では、コントロールとして用いたPBS摂取群と同様の体重増加が観察され、細胞外小胞は個体への急性毒性はなかった。
【0053】
また、
図3Bに示すように、PBS摂取群ではDSS摂取3日目から糞便中に血液の混入が認められ、投与日数に応じて増加したが、細胞外小胞摂取群においては、3日目では糞便中の血液の混入が認められず、4日目から糞便中に血液の混入が認められたもののその量は少なく、7日目には血液の混入は認められなくなった。
【0054】
次に、PBS摂取群及び細胞外小胞摂取群にDSSを摂取させた後、0、3、5、7日目に灌流固定し、盲腸から肛門に至る大腸領域を腸管ロール (Swiss roll)にしたパラフィン切片を作成してHE染色後、アルシアンブルー染色(pH2.5)を行った。さらに、細胞核をNuclear Fast red で赤色に染色し、大腸切片の形態を観察した。
【0055】
図4に示すように、盲腸に近い領域から近傍、中間、遠位大腸領域とすると、PBS摂取群及び細胞外小胞摂取群の両方で、酸性粘液多糖類のカルボキシル基及び硫酸機に結合するアルシアンブルーの染色域が、ほぼ大腸全域に渡って認められた(
図4A、B、D、E)。さらに、上皮細胞マーカーであるβカテニン及びZO-1を用いた免疫染色を行ったところ、このアルシアンブルー染色域は上皮細胞であった(
図4A、B、D、E)。
【0056】
DSS摂取3日目では、アルシアンブルー染色像並びに免疫染色像のいずれでも顕著な組織へのダメージは認められなかったが(
図4G、H、J、K)、DSS摂取5日目で、PBS摂取群組織においては、アルシアンブルー細胞外へ漏れ出すとともに(
図4M、N)、ZO-1の発現低下に伴うtight-junctionの変化によりβカテニンの染色に裂孔が認められた(
図4O矢印)。しかしながら、細胞外小胞摂取群においては、DSS摂取5日目で、顕著な変化は認められなかった(
図4P、Q、R)。さらにDSS摂取7日目では、アルシアンブルー陽性域は、PBS摂取群組織の遠位大腸においてはほぼ消失し、単層円柱上皮構造も著しく欠損するが(
図4S、T、U)、細胞外小胞摂取群の遠位大腸域においては、ZO-1の発現低下は認められるが、顕著なアルシアンブルーの細胞からの漏れは無く、上皮構造が維持されていた(
図4V、W、X)。
【0057】
このように、細胞外小胞は、大腸炎の抗炎症効果を有する。
【0058】
(4)老化のマーカーの発現誘導の抑制
ヒト正常線維芽細胞IMR90にRas遺伝子を薬剤依存的に発現誘導することにより細胞老化を引き起こす培養細胞系を用い、細胞外小胞が、細胞老化およびそれに伴う炎症応答に与える作用を調べた。
【0059】
IMR90細胞は、MEMに10%FBS、1×Non-Essential Amino Acids Solution、1mMピルビン酸ナトリウムを加えた培地を用いて37℃、3%O2、5%CO2の低酸素インキュベーターで、10cmディッシュに1×106個の細胞を播種して継代培養した細胞を用いた。また、Plat A細胞は、10%FBS含有DMEMを用い、37℃、5%CO2,のインキュベーターで、10cmディッシュに1×106個の細胞を播種して継代培養した細胞を用いた。
【0060】
まず、Plat A細胞に、PEIを用いてレトロウイルスベクターのpLNCX2 ER:Ras(add gene社)をトランスフェクトし、ER:Ras発現レトロウイルスのパッケージングを行った。遺伝子導入から12時間後に培地交換し、さらに24~36時間後にレトロウイルスを含む培養上清を回収した。IMR90細胞にレトロウイルスを感染させた2日後、neomycinを含む培地で継代培養することによって、感染細胞IMR90 ER-Rasを選択した。
【0061】
IMR90 ER-Ras細胞に対して200nMの4-OH tamoxifenを6日間処理することでRas誘導による細胞老化を誘導した。こうして老化を誘導した細胞の培養液中に1×1010個/mLの細胞外小胞を添加し、6日目に細胞を回収し、TRIsure(日本ジェネティックス)を用いてRNAを抽出した。Primescript RT Master Mix(Takara)を用いてcDNAを合成し、RT-qPCRにより細胞老化マーカーp15、p16ならびに炎症性サイトカインIL-6の発現を調べた。なお、コントロールとして、Ras誘導の無い細胞、およびRas誘導後に細胞外小胞を添加していない細胞についても、同様に処理した。
【0062】
その結果、
図5に示すように、Ras誘導に伴う細胞老化マーカーp15、p16及び炎症性サイトカインIL-6の発現誘導が、細胞外小胞の添加によって抑制された。なお、Ras誘導の代わりに酪酸ナトリウム(Sodium butyrate:NaBu)により細胞老化を誘導する実験系においても同様の効果が観察された。
【0063】
このように、長命草由来の細胞外小胞はRas誘導に伴う細胞老化を抑制する機能がある。
【0064】
(5)マウス個体の筋力増強効果
長命草由来の細胞外小胞がマウス個体の筋力に与える影響を定量的に評価するため、単独飼育条件下で高脂肪食負荷時に長命草由来の細胞外小胞を投与した高脂肪食負荷マウスに対して、筋力(特に握力)を測定するGrip Strength Testおよび4-limb Hanging Testを行った。具体的には、慣らし飼育を行った後の5週齢雄のC57B6Jマウスを9~10匹ずつ体重ごとに均等に二群に分け、各マウスに対して高脂肪食(60 kcal%Fat)を12週間給餌し高脂肪食負荷マウスを作製した。長命草由来の細胞外小胞は3×109個/mLの濃度で純水に添加し、給水投与を行った。
【0065】
Grip Strength Testとしては、高脂肪食負荷マウスに対し、スマート型ラット・マウス用握力測定装置MK-380Si(室町機械)を用いて、マウス1匹について3回の測定を行い、その平均値を各マウスの握力値とした(
図6A)。また、4-limb Hanging Testとしては、マウスが全ての手足で金網を握っている条件下で、素早く上下反転し、落下するまでに耐えた時間をHanging time、Hanging timeと各々のマウスの体重をかけあわせたものをHanging scoreとして評価した(
図6B)。有意差検定にはスチューデントのt検定を用いた。
【0066】
その結果、
図6Aに示すように、長命草由来の細胞外小胞を投与した群は、コントロール群と比較して高い握力値を示した。また、
図6Bに示すように、長命草由来の細胞外小胞を投与した群では、コントロール群と比較して逆さ吊り状態の耐久時間(Hanging time)が長く、耐久時間とマウス体重をかけあわせたスコア(Hanging score)も大きいこと、すなわちより高い筋持久力を示す
【0067】
このように、長命草由来の細胞外小胞には、筋力増強効果がある。
【0068】
(6)マウス個体における抗糖尿病作用
(5)と同様に作製した高脂肪食負荷マウスを、4時間絶食させた後に、1IU(International Unit)/kgとなるように、PBSで希釈したHuman recombinant Insulin(Invitrogen)を腹腔内投与することにより、インスリン負荷試験を行った。インスリン投与後に、0、40、80、120分と経時的に尾静脈から採血し、アセンシアブリーズ2(バイエル薬品株式会社)を用いて血糖値を測定した。有意差検定にはスチューデントのt検定を用いた。
【0069】
その結果、
図7Aに示すように、長命草由来の細胞外小胞を投与することにより高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性が軽減した。
【0070】
次に、上記の高脂肪食負荷中に細胞外小胞を投与したマウスを、12週間の給餌・給水後、6時間絶食させた後に屠殺し、肝臓、ならびに精巣上体および皮下の脂肪重量を計測した。
【0071】
その結果、
図7Bに示すように、
図7Bに示すように、長命草由来の細胞外小胞を投与することにより脂肪重量が全体的に減る傾向があったが、特に皮下脂肪重量が有意に減少した。
【0072】
さらに、上述のように高脂肪食負荷マウスから採血した血液中のトリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロール、グルコース、HbA1cを定量した。その結果、
図7Cに示すように、長命草由来の細胞外小胞を投与することにより全体に数値が低下したが、特にHbA1cが有意に低下した。
【0073】
このように、長命草由来の細胞外小胞には、抗糖尿病作用および痩身作用がある。
【0074】
(7)ドライアイ軽減作用
ドライアイの症状として、涙量の減少や角膜上皮細胞の障害があげられる。本実施例では、ヒトのドライアイと共通の症状の誘発が可能なマウスモデルを使用し(Ouyang W. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci.2021 Jan; 62(1): 25.; Lin Z. et al., Mol Vis. 2011; 17: 257-264)、長命草由来の細胞外小胞がこれらのドライアイの症状を軽減する効果があることを示す。。
【0075】
具体的には、8-10週齢の野生型C57BL/6Jマウスに、0.1%BAC液を点眼してドライアイを誘発した。0.1%BAC液は、Sigmaより購入したBACを生理食塩水を用いて0.1%に希釈して使用した。点眼する長命草由来の細胞外小胞は、2.5×1010個/mLの濃度になるように生理食塩水で希釈して、片目あたり5μlを一日に2回点眼した。最初の5日間は、細胞外小胞点眼群には細胞外小胞を点眼し、コントロール群には生理食塩水を点眼した。続く7日間は、0.1%BAC液を投与してドライアイの症状の一つである角膜損傷を誘発し、その30分後に、コントロール群のマウスには生理食塩水を点眼し、細胞外小胞点眼群には細胞外小胞を点眼した。最後の7日間は、コントロール群のマウスには生理食塩水を点眼し、細胞外小胞点眼群には細胞外小胞を点眼した。
【0076】
19日間の処理後、細胞外小胞点眼群とコントロール群の涙量を以下のように測定した。綿糸(ZONE-QUICK/あゆみ製薬株式会社)を下眼瞼に挿入し、20秒後に抜き取り、涙で濡れて変色した部分の長さを実体顕微鏡下で計測し、涙量とした。涙量測定の有意差検定にはスチューデントのt検定を用いた。
【0077】
その結果、
図8Aに示すように、細胞外小胞点眼群はコントロール群に比べて有意に涙量が多かった (コントロール群3.38±0.37 vs 細胞外小胞点眼群4.38±0.13 mm)。
【0078】
次に、蛍光色素を用いて角膜染色することにより、0.1%BAC液によって生じた角膜の損傷を調べた。19日間の処理後、各群のマウスに片目あたり1μlの0.1%Fluorescein sodium salt液を点眼し、蛍光実体顕微鏡(Leica)に接続されたデジタルカメラ(LUMIX)で角膜表面の画像を取得した。そして角膜の炎症後の治癒を、角膜表面の総面積あたりにおける蛍光色素で染色されている染色領域の輝度の総和に基づいて評価した。なお、角膜が損傷している部分が蛍光色素で染色される。
【0079】
その結果、
図8Bに示すように、細胞外小胞点眼群はコントロール群に比べて有意に染色面積が減少し(コントロール群20.86±2.09 vs 細胞外小胞点眼群12.58±2.8)、細胞外小胞の点眼によって、角膜の損傷の治癒が進んでいた。
【0080】
さらに、現在眼科臨床で使用されているムコスタとの比較実験を行った。この実施例では、0.1%BAC液の点眼を7日間行った後ムコスタあるいは細胞外小胞を点眼した。涙量と角膜損傷の回復は、上述のように測定した。
【0081】
その結果、
図8C、
図8Dに示すように、涙量と角膜損傷の回復の両方に対し、細胞外小胞はムコスタよりも優れた効果を示した。
【0082】
このように、長命草由来の細胞外小胞には、ドライアイの治療効果がある。
【0083】
(8)皮膚炎治療効果
8週齢の雄マウス(Balb/c)の腹部を剃毛し、アセトン:エタノール(1:9)溶媒に溶解した5%2,4,6-トリニトロクロロベンゼン(TNCB:東京化成工業)(150μl/mice)を塗布することにより感作した。3-4日目に長命草由来細胞外小胞(1.0x1011個/100μlPBS/匹)を腹腔内に注射した。対照群にはPBS(100μl/匹)を腹腔内注射した。5日目に、アセトンに溶解した1%TNCBを両耳の表裏にそれぞれ10μlずつ塗布し、接触性皮膚炎を誘導した。炎症非誘導群には、アセトンに溶解した1%TNCBの代わりに、アセトンを塗布した。24時間後、耳介の厚みをマイクロメータで計測した。計測は両耳に対して行い、その平均値をその個体の耳介の厚みとした。
【0084】
その結果、
図9に示すように、対照群(PBS投与群)と比較して細胞外小胞投与群では炎症に伴う耳の腫れが有意に抑制されていた。
【0085】
厚みを測定後、右耳の耳介からはFACS解析用の細胞を回収し、左耳の耳介の一部からはqPCR用のRNAを回収した。左耳の耳介の残りは10%ホルマリン/PBSで固定し、パラフィン包埋して、組織切片を作製し、HE染色を行った。
【0086】
FACS解析用の右耳は、ピンセットで表皮と裏皮を剥離した後に細切した。次に、Multi tissue dissociation kit 1 (Miltenyi)およびgentleMACS Octo Dissociator with Heaters (Miltenyi)を用いて単一細胞にまで分離した。分離した細胞を100μlのcell strainerに通した後、溶血操作を行い、溶血後の細胞をMACS Rincing buffer (Miltenyi)で懸濁し、細胞数を計測した。得られた細胞は抗CD16/32抗体でブロッキング後、anti-CD11b-FITC (M1/70)(単核球マーカー), anti-F4/80-PE (BM8)(マクロファージマーカー), anti-Ly6G-PE-Cy7 (1A8)(好中球マーカー), anti-CD3e-APC (145-2C11)(T細胞マーカー), anti-CD45/Cy7 (I3/2.3)(白血球マーカー)(すべてBioLegend)で染色した。Cell viability solution (BD)で染色後、FACS Melody (BD)を用いてFACS解析を行い、炎症性サイトカインの発現を調べた。
【0087】
その結果、
図10に示すように、細胞外小胞投与群では炎症に伴う免疫細胞の浸潤が抑制傾向にあり、特に好中球の浸潤が有意に抑制されていた。この結果は、細胞外小胞が抗炎症効果を有することと一致する。
【0088】
組織切片の観察の結果を
図11に示す。
図9のデータでは、対照群(PBS投与群)と比較して細胞外小胞投与群では炎症に伴う耳の腫れが有意に抑制されていたが、この直接観察では、
図9のデータと一致して、炎症非誘導群では最も厚みが薄く、PBS投与群では最も厚みが厚く、細胞外小胞投与群では厚みが低減されていた。
【0089】
左耳の耳介の一部はTrisure (Bioline)に懸濁後、ホモジナイズした。RNAは試薬に添付のプロトコルに従って回収し、逆転写反応はPrimescript (TAKARA)を用いて行った。qPCRはSYBR Green qPCR Master Mix (Roche)を使用し、炎症に関与するサイトカインやケモカインの発現を調べるため、以下のプライマーを用いて、LightCycler 480でPCR反応を行った。
【0090】
IL-4for:CATCGGCATTTTGAACGAG(配列番号7)
IL-4rev:CGAGCTCACTCTCTGTGGTG(配列番号8)
IL-13for:CCTCTGACCCTTAAGGAGCTTAT(配列番号9)
IL-13rev:CGTTGCACAGGGGAGTCT(配列番号10)
CXCL1for:AGACTCCAGCCACACTCCAA(配列番号11)
CXCL1rev:TGACAGCGCAGCTCATTG(配列番号12)
CXCL2for:AAAATCATCCAAAAGATACTGAACAA(配列番号13)
CXCL2rev:CTTTGGTTCTTCCGTTGAGG(配列番号14)
IL-33for:GACACATTGAGCATCCAAGG(配列番号15)
IL-33rev:AACAGATTGGTCATTGTATGTACTCAG(配列番号16)
IL-6for:GCTACCAAACTGGATATAATCAGGA(配列番号17)
IL-6rev:CCAGGTAGCTATGGTACTCCAGAA(配列番号18)
IL-1βfor:AGTTGACGGACCCCAAAAG(配列番号19)
IL-1βrev:AGCTGGATGCTCTCATCAGG(配列番号20)
TNF-αfor:TCTTCTCATTCCTGCTTGTGG(配列番号21)
TNF-αrev:GAGGCCATTTGGGAACTTCT(配列番号22)
【0091】
その結果、
図12に示すように、細胞外小胞投与群では炎症性因子の発現量は全体的に抑制傾向にあったが、その中でも、CXCL2とIL-1βの発現量が有意に減少していた。CXCL2は好中球の遊走、浸潤を誘導する活性がある。細胞外小胞の作用でCXCL2の発現が低下することにより好中球の浸潤が抑制されたと考えられる。
【0092】
(9)他の植物由来の細胞外小胞の炎症性サイトカイン発現誘導の抑制効果
(1)に記載した長命草と同様に、各種植物(長生百薬の葉[137及び145nm]、レモングラスの葉[147nm]、葉ニンニクの葉[138及び147nm]、ウコンの根茎[123nm]、山葡萄の果実[176nm]、ゴーヤの実[138nm]、アロエの葉[150及び187nm]、マクワウリの果実[135nm])より細胞外小胞を調製した(なお、[ ]内には、得られた各細胞外小胞の平均粒子径が示されている。)。なお、50~250nmの範囲の粒子の含有率は、全て95%以上であった。
【0093】
各細胞外小胞をマウスマクロファージ細胞株Raw-Blueに1x10
10個/mLの濃度で16時間作用させた後、1μg/mL LPS(Salmonella minnesota R595由来)にて刺激した。24時間後、(8)の記載と同様にして、炎症性サイトカインIL-6、IL-33、IL-1β、TNF-αの発現をRT-qPCRにより測定した。測定値を、Gapdh遺伝子の発現で標準化し、さらに、刺激なしのコントロールの値を1として、相対値を算出した。その結果を
図13に示す。
【0094】
図13では、各番号は、以下の植物とバンドの位置を表している:N,Negative control(PBS);1,長命草-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);2,長命草-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);3,長生百薬-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);4,長生百薬-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);5,レモングラス-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);6,レモングラス-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);7,葉ニンニク-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);8,葉ニンニク-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);9,生姜-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);10,ウコン-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);11,ウコン-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);12,シークワーサー-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);13,シークワーサー-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);14,アロエ-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);15,アロエ-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);16,グレープフルーツ-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);17,グレープフルーツ-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);18,山葡萄-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL),19,マクワウリ-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);20,フルーツシークワーサー-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);21,フルーツシークワーサー-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);22,青パパイヤ-第1バンド(8~30%、密度1.02~1.12g/mL);23,青パパイヤ-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL);24,ゴーヤ-第2バンド(30~45%、密度1.12~1.18g/mL)。
【0095】
本図に示されるように、長命草、長生百薬、レモングラス、葉ニンニク、ウコン、山葡萄、ゴーヤから調製した細胞外小胞はIL-6、IL-1β、IL-33のLPSによる発現誘導を強力に抑制した。アロエの細胞外小胞はIL-1β、IL-33、マクワウリの細胞外小胞はIL-6、IL-33の発現誘導を抑制した。一方、いずれの細胞外小胞も、TNF-αの発現誘導を抑制しなかった。
【0096】
(10)small RNAの効果
長命草由来の細胞外小胞から、Direct-zol RNA MicroPrep (ZYMO RESEARCH)を使用してsmall RNAを抽出し、得られたsmall RNAの品質確認をBioAnalyzer (Agilent Technologies)を用いて行った。その後、NEB Next(R) Multiplex Small RNA Library Prep Set for Illumina(R) (Set 1) (Cat No. E7300, New England Biolabs)を用いてライブラリー調製を行った。得られたライブラリーに対し、NovaSeq 6000 (Illumina)を用いて、100bpのシングルリードの条件で塩基配列を決定した。取得したリードは、Trim Galoreによってアダプター配列およびポリA配列を除去し、10-40bpのリード長になるように成形し、ライブラリーの配列データとした。
【0097】
一方、以下の配列のmiRNAを化学合成した。hsa番号は、ヒト由来のmiRNAの配列で、mmu番号は、マウス由来のmiRNAの配列である。
【0098】
hsa-miR-6737-3p:UCUGUGCUUCACCCCUACCCAG(配列番号1)
mmu-miR-7006-3p:UUUCUGACCUGGAUCCCCAG(配列番号2)
mmu-miR-6995-3p:UGUGUCCCCUUCCUCUCACAG(配列番号3)
mmu-miR-12178-5p:UAUGGGUGGCUGGUCUCAGAAGAG(配列番号4)
mmu-miR-3063-3p:UGAGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号5)
mmu-miR-487b-5p:UGGUUAUCCCUGUCCUCUUCG(配列番号6)
【0099】
次にヒトマクロファージ由来THP-1細胞に Lipofectamine RNAiMAX (Thermo Fisher)を用いてmiRNAを遺伝子導入し、24時間後1μg/ml LPSで0、3、6時間刺激した後(0時間刺激=刺激なし)、RT-qPCRにてIL-6の発現を測定した。その結果、has-mira-6737-3p、mmu-miR-7006-3p及びmmu-miR-7006-3pとmmu-miR-6995-3pを共発現させた場合、IL-6の発現を抑制した(
図14A)。
【0100】
一方、マウスマクロファージ由来RawBlue細胞にmmu-miR-487b-5p、mmu-miR-3063-3p、mmu-miR-7006-3p及びmmu-miR-12178-5pを発現させ、LPSにより刺激し、IL-6の発現を測定した。その結果、これらのmiRNAは全て、LPS刺激によるIL-6の発現を抑制した(
図14B)。
【0101】
このように、上記miRNAは、IL-6の発現抑制剤として有用である。
【0102】
なお、これらの配列はいずれも、長命草由来の細胞外小胞から得られたsmall RNAライブラリーの配列データの中に、シード配列外に2塩基のミスマッチを許容する範囲内において存在した。長命草由来のsmall RNAは、以下の配列を有する。
【0103】
Pj-has-miR-6737-3p:
UCUG(a/c)GCU(a/g)CACCCCUACCCAG(配列番号23)
Pj-mmu-miR-7006-3p:
UUUCUGAgCUGcAUCCCCAG(配列番号24)
Pj-mmu-miR-6995-3p:
UGUGUCCCCaUCgUCUCACAG(配列番号25)
Pj-mmu-miR-12178-5p:
UAaGGGUGGCUGtUCUCAGAAGAG(配列番号26)
Pj-mmu-miR-3063-3p:aGgGGAAUCCUGAUCUCUCGCC(配列番号27)
Pj-mmu-miR-487b-5p:UGGUUAUCCCUccCCUCUUCG(配列番号28)
【0104】
長命草由来のsmall RNAは、上記哺乳類のmiRNAと高い相同性を有するので、LPS刺激によるIL-6の発現を抑制する効果を有すると考えられる。