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特開2024-122921テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、可塑剤、これらを含む樹脂組成物および冷却液組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122921
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、可塑剤、これらを含む樹脂組成物および冷却液組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/82 20060101AFI20240902BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20240902BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C07C69/82 A
C08L27/06
C08K5/12
C09K5/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027120
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023029676
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹田 康幸
(72)【発明者】
【氏名】石田 和史
(72)【発明者】
【氏名】山本 真一
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB50
4H006AB93
4H006BJ50
4H006KC30
4J002BD031
4J002BD041
4J002BD051
4J002EH146
4J002FD010
4J002FD026
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD070
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】 通常の被覆材として、JIS規格(K6723)に合格する電気絶縁性のものが得られるだけでなく、電源ケーブル等では銅芯線の錆発生による劣化を防ぐための防錆剤をはじめ、種々薬剤や基剤を添加する場合であっても、電気絶縁性の低下が避けることができる可塑剤および冷却液を提供すること。
【解決手段】 絶縁性の低下を誘発するイオン性物質を除去する単独または複数の吸着剤で処理することによって、単体で測定した体積固有抵抗が15.0~7.0×1014Ω・cmである、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体で測定した体積固有抵抗が15.0~7.0×1014Ω・cmである、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)。
【請求項2】
請求項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を含有する可塑剤。
【請求項3】
請求項2に記載の可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を用いた樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を含有する冷却液組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の含有量が1~99質量%である、請求項5に記載の冷却液組成物。
【請求項7】
25℃での電気伝導率が、1.00×10-4μS/cm以下である、請求項6に記載の冷却液組成物。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の冷却液組成物を冷媒として用いた冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は体積固有抵抗が高いテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(以下、DOTPと示すことがある)、DOTPを含有する体積固有抵抗の高い可塑剤、及び塩化ビニル系樹脂組成物、特に電線ケーブル等、電気絶縁性を要求される電線の被覆材として好適な塩化ビニル系樹脂組成物等に関する。
【0002】
銅、アルミニウム等からなる電線を直接被覆する絶縁材としては高度の電気絶縁性が要求され、電気特性を始めとし、耐候性、耐蝕性、着色性、難燃性のほか、加工上の利点を生かし、可塑剤含有軟質塩化ビニル系樹脂が使用されている。
【0003】
通常、電線被覆用塩化ビニル系樹脂には、加熱成形加工時、製品の使用時の熱や光に対する安定性を向上するため、金属化合物を主とした安定剤が用いられる。近年、環境または人体等への悪影響を考慮して、比較的優れた性能を示すものの毒性が心配されるカドミウム系、鉛系、有機錫系などの安定剤に代えて、前者と比較して低毒のバリウム/亜鉛系、カルシウム/亜鉛系などの安定剤の開発が進んでいる。
【0004】
低毒性の安定剤は、カドミウム系、鉛系、有機錫系などの安定剤と比較して耐熱性が不十分であるといったことがあり、それを補うための種種の安定化助剤が使用されている。また、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物において安定剤として特にハイドロタルサイトや有機酸亜鉛塩を用いた場合、着色性、耐熱性および電気絶縁性について改善の余地が十分にあった。
【0005】
また電力ケーブル等に塩化ビニル樹脂等を用いる場合、銅芯線の錆発生による劣化を防ぐため防錆剤を添加する場合があり、その場合、電気絶縁性の低下が避けられず、JIS規格(K6723)を満足させることができない。
【0006】
特許文献1には、絶縁性の低下を誘発するイオン性物質の吸着剤として知られているシリカ、クレイ又は酸化マグネシウムなどの配合によって電気絶縁性の向上を試みたが、上記JIS規格値に合格することができなかった旨が記載されている。
【0007】
また、高い絶縁性が求められる分野として、電気自動車やハイブリッド車向けの冷却器用冷却液が挙げられる。
【0008】
ハイブリッド車及び電気自動車等の走行用モーターを備える自動車は、電力を適切にコントロールするためのパワーコントロールユニット(PCU)を搭載している。PCUはインバーターやコンバーターから構成され、これらは半導体素子を内蔵したパワーカードを有し、スイッチング操作に伴い発熱する。また、他にも内蔵するバッテリーも発熱機器で有ることから、走行用モーターを備える自動車には、インバーターやコンバーター、バッテリー等を冷却するための機器が備え付けられている。
【0009】
特許文献2に開示されている通り、一般に、ハイブリッド車及び電気自動車等の冷却液は、パワーカードやバッテリーの近くを循環している。そのため、ハイブリッド車や電気自動車等の走行用モーターを備える自動車において、事故によって冷却液が漏れると、漏れた冷却液がパワーカードやバッテリー等の端子に接触し、ショートを起こす可能性がある。そのため、冷却液が漏れた場合でもそのような二次災害を起こし難くする観点から、冷却液には優れた絶縁性が求められる。
【0010】
これらの冷却液として、水を含む水系冷却液(例えばエチレングリコールと水との混合物)等が一般に用いられている。しかしエチレングリコール及び水の混合物は、冷却性能に優れている一方、絶縁性が低い課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-75050号公報
【特許文献2】特開2017-017228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の安定化助剤以外の問題点として、上記のような既存の可塑剤を用いる場合、通常の被覆材としては充分にJIS規格(K6723)に合格する電気絶縁性のものが得られるが、電源ケーブル等では銅芯線の錆発生による劣化を防ぐための防錆剤をはじめ、種々薬剤や基剤を添加する場合があり、その場合、電気絶縁性の低下が避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に対し種々検討した結果、合成したDOTPに対し絶縁性の低下を誘発するイオン性物質を除去する単独または複数の吸着剤で処理することによって、DOTP単体の体積固有抵抗が非常に高くなり、加えてそのDOTPを含有する可塑剤およびにDOTPを含む可塑剤を使用した樹脂組成物に関しても非常に高い体積固有抵抗を示す事を見いだすに至った。
【0014】
本発明は、絶縁性の低下を誘発するイオン性物質を除去する吸着剤で処理をした体積固有抵抗が非常に高いジオクチルテレフタレート(DOTP)、そのDOTPを成分として含有する可塑剤組成物、この可塑剤組成物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物、並びに体積固有抵抗が非常に高いジオクチルテレフタレート(DOTP)を含有する冷却液組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の体積固有抵抗が非常に高いジオクチルテレフタレート(DOTP)を使用することで、そのDOTPを成分として含有する可塑剤組成物の体積抵抗率も高くなり、結果的にそのDOTPを含有する可塑剤組成物を使用することにより、着色性、耐熱性、および電気絶縁性に優れた電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物、および電気絶縁性に優れた冷却液組成物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の体積固有抵抗が非常に高いジオクチルテレフタレート(DOTP)、そのDOTPを成分として含有する可塑剤組成物、着色性、耐熱性、および電気絶縁性に優れた電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物、および電気絶縁性に優れた冷却液組成物について詳細に説明する。
【0017】
本発明は、下記の項などである。
【0018】
項1. 単体で測定した体積固有抵抗が15.0×1014~7.0×1014Ω・cmである、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)。
【0019】
項2. 項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を含有する可塑剤。
【0020】
項3. 項2に記載の可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物。
【0021】
項4. 項3に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を用いた樹脂成形体。
【0022】
項5.項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を含有する冷却液組成物。
【0023】
項6.項1に記載のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の含有量が1~99質量%である、項5に記載の冷却液組成物
【0024】
項7.25℃での電気伝導率が、1.00×10-4μS/cm以下である、項5または項6に記載の冷却液組成物。
【0025】
項8.項5~項7のいずれか1項に記載の冷却液組成物を冷媒として用いる冷却装置。
【0026】
テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)の調製方法、DOTPを含有する可塑剤、塩化ビニル系樹脂組成物、および冷却液組成物について順に説明する。
【0027】
1.テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)の調製方法
原料であるテレフタル酸またはテレフタル酸エステルと2-エチルヘキサノールとをチタン、ジルコニウムまたは錫含有触媒の存在下に反応させることによってテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を製造することが出来る。酸またはエステルとアルコールとの混合物を最初に100~160℃で、場合によって生じる水の除去下に互いに反応させ、この反応を触媒の添加下温度を約230℃に高めることによって完結し、その反応混合物をアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物水溶液で中和し、その後水で洗浄、次いで過剰の2-エチルヘキサノールを分離除去後、粗テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を濾過し、その後吸着剤を用いた不純物除去工程を行うことで調製することが出来る。
【0028】
1-1.原料
本発明の原料であるカルボン酸については、テレフタル酸の他、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル等のテレフタル酸エステルや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のテレフタル酸を原料とした高分子も使用することが出来る。
【0029】
1-2.触媒
エステル化を促進する触媒としては微細状態の金属チタン、金属ジルコニウムまたは金属錫およびそれらの化合物を使用する事ができる。触媒として、酸化錫(II)、蓚酸錫(II)、並びにチタンおよびジルコニウムのエステル、例えばオルト-チタン酸テトラ(イソプロピル)、オルトチタン酸テトラブチルおよびジルコニウム酸テトラブチルが挙げる事ができる。使用される触媒の量は広い範囲に渡っていてもよく、反応混合物を基準として0.01質量%および5質量%の触媒を使用することができる。
【0030】
エステル化は化学量論量の2-エチルヘキサノールおよびテレフタル酸を用いて実施することが出来るが、特に反応水を除去するための共沸剤を使用する場合には、できるだけ完全に酸を反応させるために、1モルのテレフタル酸エステルを基準として化学量論量より0.05~0.6モル過剰の2-エチルヘキサノールを使用するのが好ましい。
【0031】
終了後の反応混合物は目的とするテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の他にポリエステル、特に部分エステル化されたジ-カルボン酸、過剰の2-エチルヘキサノールおよび触媒も含有している。まず反応を停止するために反応混合物をアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物で中和する。この場合、アルカリ性中和剤は溶液を基準として5~20質量%、好ましくは10から15質量%の水酸化物を含有する水溶液として用いる事ができる。使用するアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
中和後、粗テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を水で洗浄し、水に可溶な有機・無機の不純物を除去する。洗浄に使用する水として、不純物に対する溶解性の観点から純水で有ることが好ましい。
【0033】
続いて未反応の2-エチルヘキサノールを粗テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)から除去する。この工程として、常圧または減圧下での蒸留にて容易に除去することができる。
【0034】
未反応の2-エチルヘキサノールの除去に続いてテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を乾燥させる。乾燥工程に於いては乾燥剤を用いることが出来、また窒素ガス等の不活性ガスを粗テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)に通すことで乾燥させることができる。
【0035】
次いで、テレフタル酸の塩、1箇所のカルボキシル基のみがエステル化されたテレフタル酸の塩、触媒の加水分解生成物等を除くために、粗テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)から固体物質を濾去する。この濾過は慣用の濾過装置で常温または150℃までの温度で行なう。この濾過においては濾過助剤として、珪藻土、シリカゲル、セルロース等を用いてもよい。
【0036】
1-3.吸着材による精製
このように製造した、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)にはイオン性不純物が含まれている。これらのイオン性不純物は、原料に含有されていたもの、製造工程にて混入したもの、精製工程の段階で除去出来なかった副生物等が含まれる。一般的にはこれらのイオン性不純物はイオン性化合物を吸着し、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)をあまり吸着しない吸着材により処理することにより、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)からイオン性化合物を分離除去することができる。この目的のためには、活性炭、活性白土、セライト、アルミナ、シリカゲル、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、シリカアルミナ類、ゼオライト及びイオン交換樹脂等から選ばれる吸着材が好ましく、活性白土、セライト、アルミナ、シリカゲル、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカアルミナ類がより好ましい。これらの吸着材は、異なった種類の吸着剤を混ぜて使用することができる。イオン性不純物の分離を判定する方法としては、イオンクロマトなどによる分析的方法や、精製後のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を後述する体積固有抵抗測定などにより評価することができる。
吸着剤によるテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の処理方法としては、吸着材をカラムクロマトとして使用する方法、直接テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)に添加する方法を挙げることができる。吸着効率を高めるためには、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の中へ吸着材を添加し、撹拌などの手段によりイオン性不純物と吸着材との接触効率を上げる方法が好適である。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を精製後、吸着材を完全に除去するためにフィルター、濾紙や濾布などを用いて、濾過により吸着材を分離除去することが好ましい。
【0037】
2.可塑剤
2-1.成分化合物
本発明の可塑剤について説明をする。少なくとも1つの本発明によって製造されるテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を成分として含む。可塑剤は、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を1質量%から99質量%の範囲で含有することが、高い体積固有抵抗を発現させるために好ましい。
【0038】
本発明の可塑剤では、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の他、他のテレフタル酸ジアルキルエステル化合物を含有していてもよい。その例として、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジ-2-プロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸-ターシャリィブチル、テレフタル酸ジ-2-ブチル、テレフタル酸ジ1,1-ジメチルエチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジ-3-メチルブチル、テレフタル酸ジ1-エチルプロピル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジノニル、テレフタル酸ジデシル、テレフタル酸ジウンデシル、テレフタル酸ジドデシルなどが挙げられる。
【0039】
本発明の可塑剤では、テレフタル酸アルキルエステル以外に、従来知られている可塑剤化合物を含有してもよい。このような可塑剤化合物としては、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-6-メチルペンチル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジ-8-メチルノナン、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、または炭素数11~13程度の高級アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸系可塑剤、トリメリット酸n-オクチル-n-デシル、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリス(-8-メチルノナン)、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸系可塑剤、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジ(8-メチルノナン)、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸-2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸-2-エチルヘキシル等のエポキシ系可塑剤または液状のエポキシレジン等が挙げられる。
【0040】
3.塩化ビニル系樹脂組成物
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物について説明をする。少なくとも1つの本発明によって製造されるテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を成分として含む。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)およびテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を含有する可塑剤組成物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、柔軟性を付与する効果の観点から、好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~80質量部である。
【0041】
塩化ビニル系樹脂組成物については、塩化ビニル系樹脂へあらかじめ調製した可塑剤組成物を用いてもよく、また塩化ビニル系樹脂組成物を調製する段階で本発明のテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を添加する時点で前述の可塑剤組成物の成分として列挙した化合物を所望とする配合になる様に添加してもよい。
【0042】
塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などその重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂を挙げることができる。さらに、上記樹脂に加えて、上記樹脂相互のブレンド品、または、上記塩素含有樹脂と、他の塩素を含まない合成樹脂として、、アクリロニトリル-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体などを挙げることができる。
【0043】
本発明の組成物を電線被覆材として使用するにあたり、芯線の錆発生を抑制するために用いる防錆剤としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ターシャリィブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらの防錆剤は塩化ビニル系樹脂100質量部に対し通常0~4質量部の範囲、好ましくは0.5~2質量部の範囲で配合される。即ち防錆剤を添加しない場合でも、本発明の高い体積固有抵抗を示すテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を配合した塩化ビニル系樹脂組成物は、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の代わりに従来の可塑剤を配合したものよりも防錆効果は良好である。
【0044】
また、本発明の組成物には、更に、通常塩化ビニル系樹脂用添加剤として用いられている各種の添加剤として、有機ホスファイト化合物、フェノール系酸化防止剤、硫黄系抗酸化剤、エポキシ化合物、ポリオール類、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤等を配合することもできる。
【0045】
上記有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-ターシャリィブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-ターシャリィブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4-シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-ターシャリィブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-ターシャリィブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル-4,4’-イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12~15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’-n-ブチリデンビス(2-ターシャリィブチル-5-メチルフェノール)〕・1,6-ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’-ブチリデンビス(2-ターシャリィブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3-トリス(2-メチル-5-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール・2,4,6-トリ-2-メチル-2-プロピル-ターシャリィブチルフェノールモノホスファイトなどが挙げられる。上記有機ホスファイト化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。
【0046】
上記フェノール系抗酸化剤としては、2,6-ジ-ターシャリィブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレンビス〔(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’-チオビス(6-ターシャリィブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリィブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-ターシャリィブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-ターシャリィブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-ターシャリィブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリィブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-ターシャリィブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-ターシャリィブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-ターシャリィブチル-ベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-ターシャリィブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-ターシャリィブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン-ビス〔β-(3-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシ-5-ブチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔β-(3-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3-(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルプロピオンアミドなどが挙げられる。上記フェノール系抗酸化剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。上記硫黄系抗酸化剤としては、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β-ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。上記硫黄系抗酸化剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。上記エポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油などのエポキシ化動植物油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸-2-エチルヘキシル、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロヘキセンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシ化合物などが挙げられる。上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。
【0047】
上記ポリオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールのステアリン酸ハーフエステル、ビス(ジペンタエリスリトール)アジペート、グリセリン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。上記ポリオール化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。
【0048】
上記紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)などの2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-ターシャリィブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-ターシャリィブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチル)ブチル-6-ベンゾトリアゾリル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-3-ターシャリィブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-ターシャリィブチル-フェニル-3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類などが挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。
【0049】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-ターシャリィブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラエチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン、2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ〕ウンデカンなどのヒンダードアミン化合物が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である。
【0050】
充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナけい酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、けい酸アルミニウム、けい酸マグネシウム、けい酸カルシウム、ゼオライト等のけい酸金属塩、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、三酸化アンチモンなどである。
【0051】
また、本発明の組成物には、通常塩化ビニル系樹脂に使用される安定化助剤を添加することができる。かかる安定化助剤としては、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p-2-メチル-2-プロピル-安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩などが挙げられる。
【0052】
その他、本発明の組成物には、必要に応じて通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合することができる。
【0053】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂と添加剤とをドライブレンドで混合してもよく、添加剤の一部をプレブレンドした後、残りの成分とドライブレンドしてもよい。ドライブレンドの後に、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサーなどを用いて混合し、単軸または二軸押出機等を用いて混練してもよい。
【0054】
また、本発明の組成物は、塩化ビニル系樹脂の加工方法には無関係に使用することが可能であり、ロール加工、押出成形加工、溶融流延法、加圧成形加工等に好適に使用することができる。
【0055】
4.冷却液組成物
本発明の冷却液組成物について説明をする。少なくとも1つの本発明によって製造されるテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を成分として含む。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の冷却液組成物中への含有量は、例えば、10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の含有量を10質量%以上とすることにより、冷却液組成物に対し高い電気抵抗率を付与することができる。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の冷却液組成物中の含有量は、例えば、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の含有量を高くする事は、冷却液組成物に対して高い電気抵抗率を発現させる観点で好ましい。
【0056】
本発明の冷却液組成物は、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の他、テレフタル酸エステルや他の鉱物油や合成油を含有していてもよい。テレフタル酸エステルの例として、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジ-2-プロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸-ターシャリィブチル、テレフタル酸ジ-2-ブチル、テレフタル酸ジ1,1-ジメチルエチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジ-3-メチルブチル、テレフタル酸ジ1-エチルプロピル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジノニル、テレフタル酸ジデシル、テレフタル酸ジウンデシル、テレフタル酸ジドデシルなどが挙げられる。
【0057】
本発明の冷却液組成物ではテレフタル酸アルキルエステル以外に、非水系の成分を含んでいても良い。他の非水系基剤として、例えば鉱油、合成油、動植物油、またはこれらの混合物が挙げられる。鉱油は高い電気抵抗率を発現することから、冷却液組成物に高い電気抵抗率を付与する観点で鉱油を含むこと好ましい。鉱油の例としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油やナフテン系鉱油、又はこれらの混合物が挙げられる。1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、セバシン酸ジオクチルの様な二塩基酸のジ
エステル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポ
リオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシ
アルキレングリコールエーテル、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル
、含フッ素化合物( パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等) 、シリコーンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物、又はこれらの水素化物が含まれる
。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα- オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンについては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。特にポリα-オレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが適している。
【0060】
本発明の潤滑剤組成物には、更に、その用途に応じて防錆剤、防食剤、酸化防止剤、極
圧剤、分散剤、界面活性剤、付着性向上剤( ポリマーなど) 、油性剤、摩擦低減剤、耐摩耗剤その他の添加剤を適宜に併用することができる。
【実施例0061】
実施例(合成例、使用例を含む)により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合することによって調製した組成物をも含む。
【0062】
1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および液晶表示素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0063】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX-500を用いた。H-NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0064】
ガスクロマト分析:測定には、(株)島津製作所製のGC-2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1ml/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1質量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には(株)島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0065】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。
【0066】
可塑剤の(1)体積固有抵抗[Ω・cm]、(2)比重、(3)屈折率、(4)加熱減量については、JIS規格 K6751(フタル酸エステル試験方法)に従って測定した。
(1)体積固有抵抗[Ω・cm]:日置電機(株)製の超絶縁計SM7110を用いた。
(2)密度・比重:アントンパール社製デジタル密度計 DMA4500を用いて測定した。
(3)屈折率:(株)アタゴ製のアッベ屈折計 DR-M2を用いて測定した。
(4)加熱減量:JIS規格 K6751(フタル酸エステル試験方法)に従って測定した。
(5)粘度η[単位:mPa・s]:可塑剤組成物の粘度は測定温度25℃にてE型粘度計を使用して測定した。
【0067】
(6)樹脂の体積抵抗率試験:[Ω・cm]JIS K-6723:1995(軟質塩化ビニルコンパウンド)に記載の方法で測定を行った。
(株)エーディーシー社製 デジタル超高抵抗/微少電流計 R8340A、レジスティビティ・チェンバ R12704Aを用いて測定した。
【0068】
冷却液組成物の(7)電気伝導率、(8)熱伝導率については、下記に示す方法に従って測定した。
(7)電気伝導率[σ(μS/cm)]
電気抵抗率(比抵抗)[MΩ・cm]を測定し、下記式から電気伝導率を求めた。 σ(電気伝導率(μS/cm))=1/ρ(電気抵抗率(比抵抗)[MΩ・cm])
電気抵抗率(比抵抗)測定方法は、セル(:電極(ITO)面積 1.1cm×1.1cm、セルギャップ18.6μm)に試料を注入した。このセルに25℃にて、三角波(0.1Hz、±5V)を印加し、(株)東陽テクニカ製物性測定システム 6254型を用い、セル中の電流および印加電圧を測定し、その電流・電圧の変化率に相当する抵抗値を測定し、以下の式から比抵抗を算出した。
ρ[電気抵抗率]=R(電気抵抗[Ω])×(S(電極面積[cm2])/d(電極間距離 [cm])。
(8)熱伝導率[W/mK]熱伝導率は、予め放熱部材の比熱((Thermo plus EV02((株)リガク製)により測定)と密度(密度計DMA4500(アントンパール社製)により測定)を求めた。その値を(株)アイフェイズ製ai-Phase Mobile 1u熱拡散率測定装置を用い、試料を測定装置に円盤形状にして測定器内にセットし、試料の片面から瞬間的な熱パルスを与え、反対面のセンサーで温度変化の経時変化を記録し、熱拡散方程式から熱拡散係数を算出した。装置のマイクロヒータとセンサーの間にサンプル70μm~120μmの厚みで挟み込み測定することによって得られる熱拡散率と、前述の測定で求めた比熱と密度とを下記に示す式に代入することにより熱伝導率を求めた。
λ[熱伝導率 (W/(m/K))= α[熱拡散率(m/s)]×Cp[比熱(J/(g・K))×ρ[密度 (g/cm)]
【0069】
[合成例1]化合物(1-1)
【0070】
ディーンスターク装置、冷却管、攪拌機を備えた2000mL容四つ口フラスコへ2-エチルヘキサノール(以下、OA)873.6g(6.72mol)を仕込み、攪拌下に於いてテレフタル酸(以下、TPA)429.9g(2.59mol)を仕込んだ。OA/TPA(mol比)は2.6とする。
この溶液を攪拌しながら加熱し反応液温度が140℃になった時点で、テトラプロピルチタネート(以下、TPT)652μL(予想生成DOTPに対して625ppm相当)を投入し、更に230℃まで昇温した。エステル化によって生成する水を効率よく系外へ抜き出すためにNガスを150mL/minの速度で吹き込みながら反応を行い、生成水は油水分離し系外へ抜き出した。
理論生成水量相当である93.6g留出及び反応粗液酸価が0.1KOHmg/g以下の値を確認して反応終点とした(約10時間)。
加熱停止冷却後、粗DOTP酸価に対して20%水酸化ナトリウム水溶液を用いて80℃にて30分攪拌することで中和し、その後前述の中和液質量に対して25質量%の純水を加え80℃で30分攪拌したのち30分静置し下層(水層)を分離し、当該操作を2回実施した。油水分離後の油層(粗DOTP層)中の未反応OA、及び水を減圧下(10~20mmHg(1.3~2.6kPa))、60~70℃程度にてOA留出分が無くなるまで留去した。
その後粗DOTP質量に対して0.1質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、0.1質量%のキョーワード600(協和化学工業(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.3gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、目的物であるテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(以下、DOTP)871.0g(2.23mol)収率86.1%で得た。これを処理前DOTP(1)とする。
【0071】
H-NMR(CDCl;δppm):8.15(s,4H),4.35(dd,4H),1.75(quin.2H),1.55-1.25(m、16H),0.99(t,6H),0.88(t,6H).
【0072】
[実施例1]
処理前DOTP(1)100gに5.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製)と、5.0wt%のキョーワード500(協和化学工業(株)製)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、95.0gの処理後DOTP[DOTP(2-1)]を得た。
【0073】
[実施例2]
処理前DOTP(1)100gに5.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、5.0wt%のキョーワード700(協和化学工業(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、95.1gの処理後DOTP(1)[DOTP(2-2)]を得た。
【0074】
[実施例3]
処理前DOTP(1)100gに5.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、5.0wt%のニッカゲルS(東新化成工業(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、96.1gの処理後DOTP[DOTP(2-3)]を得た。
【0075】
[実施例4]
処理前DOTP(1)100gに5.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、5.0wt%のCK-T(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、95.3gの処理後DOTP[DOTP(2-4)]を得た。
【0076】
[実施例5]
処理前DOTP(1)100gに5.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製)と、5.0wt%のCK-T6(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、95.0gの処理後DOTP[DOTP(2-5)]を得た。
【0077】
[実施例6]
処理前DOTP(1)100gに10.0wt%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、10.0質量%のCK-T6(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、90.2gの処理後DOTP(1)[DOTP(2-6)]を得た。
【0078】
[実施例7]
処理前DOTP(1)100gに3.0質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、3.0質量%のCK-T6(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、96.1gの処理後DOTP[DOTP(2-3)]を得た。
【0079】
[実施例8]
処理前DOTP(1)100gに1.0質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製)と、1.0質量%のCK-T6(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、97.4gの処理後DOTP[DOTP(2-1)]を得た。
【0080】
[実施例9]
処理前DOTP(1)100gに3.0質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、3.0質量%のキョーワード500(協和化学工業(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、94.5gの処理後DOTP(1)[DOTP(2-9)]を得た。
【0081】
[実施例10]
処理前DOTP(1)100gに1.0質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、1.0質量%のキョーワード500(協和化学工業(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、97.1gの処理後DOTP[DOTP(2-10)]を得た。
[実施例11]
処理前DOTP(1)100gに3.0質量%セライト(ラジオライト#800S:昭和化学工業(株)製商品名)と、3.0質量%のCK-T(富田製薬(株)製商品名)をDOTP粗液へ加え、液温80℃にて30分間攪拌を行った。その後、桐山ロート用ろ紙(No.5)((有)桐山製作所製商品名)を備えた桐山ロート((有)桐山製作所製商品名)上にセライト(ラジオライト#800S)1.0gを乗せ、ろ過剤含む粗DOTPを流し込みろ過分離し、96.9gの処理後DOTP[DOTP(2-3)]を得た。
【0082】
[比較例1]
[合成例1]に記載した処理前のDOTP(1)を使用し体積固有抵抗を測定した。
【0083】
以下、実施例1~実施例3で調製したDOTP(2-1)~DOTP(2-11)の単体での体積固有抵抗、および[比較例1]で使用したDOTP(1)の値を表1に示す。
【0084】
表1
【0085】
2.可塑剤の実施例
本発明は、例えば可塑剤実施例1の組成物と可塑剤実施例2の組成物と混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。本発明は、以下の実施例に限定されない。使用例における化合物は、下記定義に基づいて表した。可塑剤化合物の割合(百分率)は、可塑剤の質量に基づいた質量百分率(質量%)である。最後に、可塑剤の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値をそのまま記載した。
【0086】
可塑剤の調製方法:攪拌器付きフラスコへ任意の比率に従って各化合物を加え、25℃にて回転数400rpmにて10分間攪拌することにより可塑剤組成物を調製した。
【0087】
DOTP:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
DOP:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
DINP:フタル酸ジイソノニルジイソノニルフタレート
TOTM:トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)
DINCH:1,2-シクロヘキサンジカルボン酸 ビス(8-メチルオクチル)
PL-200:フタル酸ジアルキル(C9-11)
【0088】
[可塑剤実施例1]
DOTP 98.2質量%
DOP 1.8質量%
体積固有抵抗:11.5×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.49、加熱減量:0.09%、粘度:62.0mPa・s.
【0089】
[可塑剤実施例2]
DOTP 94.8質量%
DOP 5.2質量%
体積固有抵抗:10.8×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.49、加熱減量:0.09%、粘度:63.0mPa・s.
【0090】
[可塑剤実施例3]
DOTP 90.1質量%
DOP 9.9質量%
体積固有抵抗:9.81×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.48、加熱減量:0.09%、粘度:64.7mPa・s.
[可塑剤実施例4]
DOTP 98.0質量%
DINP 2.0質量%
体積固有抵抗:11.4×1014Ω・cm、比重:0.983、屈折率:1.48、加熱減量:0.09%、粘度:63.3mPa・s.
【0091】
[可塑剤実施例5]
DOTP 94.7質量%
DINP 5.3質量%
体積固有抵抗:10.5×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.49、加熱減量:0.09%、粘度:63.7mPa・s.
【0092】
[可塑剤実施例6]
DOTP 90.2質量%
DINP 9.8質量%
体積固有抵抗:9.59×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.48、加熱減量:0.09%、粘度:64.5mPa・s.
【0093】
[可塑剤実施例7]
DOTP 97.5質量%
TOTM 2.5質量%
体積固有抵抗:11.2×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.49、加熱減量:0.10%、粘度:65.9mPa・s.
【0094】
[可塑剤実施例8]
DOTP 94.0質量%
TOTM 6.0質量%
体積固有抵抗:10.4×1014Ω・cm、比重:0.984、屈折率:1.48、加熱減量:0.11%、粘度:70.0mPa・s.
【0095】
[可塑剤実施例9]
DOTP 89.3質量%
TOTM 10.7質量%
体積固有抵抗:2.20×1014Ω・cm、比重:0.985、屈折率:1.49、加熱減量:0.11%、粘度:75.5mPa・s.
【0096】
[可塑剤実施例10]
DOTP 97.5質量%
DINCH 2.5質量%
体積固有抵抗:11.1×1014Ω・cm、比重:0.983、屈折率:1.48、加熱減量:0.10%、粘度:62.7mPa・s.
【0097】
[可塑剤実施例11]
DOTP 95.3質量%
DINCH 4.7質量%
体積固有抵抗:10.4×1014Ω・cm、比重:0.982、屈折率:1.48、加熱減量:0.10%、粘度:62.5mPa・s.
【0098】
[可塑剤実施例12]
DOTP 90.0質量%
DINCH 10.0質量%
体積固有抵抗:9.29×1014Ω・cm、比重:0.980、屈折率:1.48、加熱減量:0.10%、粘度:61.9mPa・s.
【0099】
[可塑剤実施例13]
DOTP 97.1質量%
PL-200 2.9質量%
体積固有抵抗:11.3×1014Ω・cm、比重:0.983、屈折率:1.49、加熱減量:0.10%、粘度:63.4mPa・s.
【0100】
[可塑剤実施例14]
DOTP 95.0質量%
PL-200 5.0質量%
体積固有抵抗:10.6×1014Ω・cm、比重:0.983、屈折率:1.49、加熱減量:0.10%、粘度:63.7mPa・s.
【0101】
[可塑剤実施例15]
DOTP 90.1質量%
PL-200 9.9質量%
体積固有抵抗:9.50×1014Ω・cm、比重:0.982、屈折率:1.49、加熱減量:0.10%、粘度:64.3mPa・s.
【0102】
可塑剤実施例から分かる様に、本発明のDOTPを使用することで、可塑剤自体に高い体積固有抵抗を付与することが出来、本願発明のDOTPの含有量が多い程、体積固有抵抗が高いことが分かる。また他の可塑剤成分を使用することで、粘度等の諸物性を調整することが出来る。可塑剤の物性を調整することで、所望の物性を有する塩化ビニル系樹脂組成物を得ることが出来る。
【0103】
3.塩化ビニル系樹脂組成物の実施例
本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0104】
樹脂組成物の調製方法:下記に記載の成分を吸収処理後、ロール条件170℃、20rpmで混練(混練時間:7分間)した後、170℃でプレスした試料を用い、体積抵抗率を測定した。樹脂組成物実施例1~6、ならびに樹脂組成物比較例1および2の配合に使用した成分は下記に記載し、部数および体積抵抗率は、表2および表3に記載した。
【0105】
(配合)
・塩化ビニル樹脂(平均重合度:1000)
・炭酸カルシウム
・可塑剤:表2および表3に記載の通り
・防錆剤:1,2,3-ベンゾトリアゾール
・安定剤:Ca/Zn系安定剤(堺化学工業OW-3200R)
【0106】
表2
【0107】
表3

上記樹脂組成物実施例と樹脂組成物比較例との比較により明らかなように、本願発明の樹脂組成物は体積抵抗率試験において高い絶縁性を示す。
【0108】
3.冷却液組成物の実施例
本発明は、例えば冷却液実施例1の組成物と冷却液実施例2の組成物と混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。本発明は、以下の実施例に限定されない。使用例における化合物は、下記定義に基づいて表した。可塑剤化合物の割合(百分率)は、冷却液組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)である。最後に、冷却液組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値をそのまま記載した。
【0109】
冷却液組成物の調製方法:攪拌器付きフラスコへ任意の比率に従って各化合物を加え、25℃にて回転数400rpmにて10分間攪拌することにより冷却液組成物を調製した。
【0110】
DOTP:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
PAO-4:PolyAlphaOlefin_164
PAO-8:PolyAlphaOlefin_168
SBEH:セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)
PEG:ポリエチレングリコール400
DINP:フタル酸ジイソノニルジイソノニルフタレート
【0111】
[冷却液実施例1]
DOTP(2-1) 70.0質量%
PAO-4 30.0質量%
電気伝導率:9.88×10-6μS/cm、密度:0.92(g/cm)、熱伝導率:1.13×10-1(W/mK)
【0112】
[冷却液実施例2]
DOTP(2-1) 50.0質量%
PAO-4 50.0質量%
電気伝導率:8.90×10-7μS/cm、密度:0.89(g/cm).
【0113】
[冷却液実施例3]
DOTP(2-1) 30.0質量%
PAO-4 70.0質量%
電気伝導率:3.29×10-7μS/cm、密度:0.86(g/cm)、熱伝導率:1.17×10-1(W/mK)
[冷却液実施例4]
DOTP(2-1) 70.0質量%
PAO-8 30.0質量%
電気伝導率:4.70×10-6μS/cm、密度:0.93(g/cm).
【0114】
[冷却液実施例5]
DOTP(2-1) 50.0質量%
PAO-8 50.0質量%
電気伝導率:1.31×10-6μS/cm、密度:0.89(g/cm).
【0115】
[冷却液実施例6]
DOTP(2-1) 40.0質量%
PAO-8 60.0質量%
電気伝導率:3.00×10-6μS/cm、密度:0.88(g/cm)、熱伝導率:1.13×10-1(W/mK)
[冷却液実施例7]
DOTP(2-1) 60.0質量%
PAO-8 40.0質量%
電気伝導率:4.48×10-6μS/cm、密度:0.91(g/cm)、熱伝導率:1.10×10-1(W/mK)
[冷却液実施例8]
DOTP(2-1) 100.0質量%
電気伝導率:7.85×10-5μS/cm、密度:0.98(g/cm)、熱伝導率:1.39×10-1(W/mK).
【0116】
[冷却液比較例1]
SBEH 100.0質量%
電気伝導率:5.13×10-4μS/cm、密度:0.91(g/cm)、熱伝導率:1.15×10-1(W/mK).
【0117】
[冷却液比較例2]
PEG 100.0質量%
電気伝導率:4.54×10-3μS/cm、密度:1.12(g/cm)、熱伝導率:1.36×10-1(W/mK).
【0118】
[冷却液比較例3]
DINP 100.0質量%
電気伝導率:1.76×10-3μS/cm、密度:0.97(g/cm)、熱伝導率:1.28×10-1(W/mK).
【0119】
[冷却液比較例4]
PAO-4 100.0質量%
電気伝導率:2.69×10-7μS/cm、密度:0.81(g/cm)、熱伝導率:1.20×10-1(W/mK).
【0120】
[冷却液比較例5]
PAO-8 100.0質量%
電気伝導率:1.97×10-7μS/cm、密度:0.82(g/cm)、熱伝導率:1.12×10-1(W/mK).
【0121】
冷却液実施例1~8の冷却液の特性と、一般的に冷却液に使用されている、冷却液比較例1~5の特性を表4、5に示す
【0122】
表4
【0123】
表5
【0124】
表6
【0125】
冷却液実施例1~8に示すように、本願実施例1の化合物(2)を含有する冷却液組成物は、何れも電気伝導率、熱伝導率に優れ、特に電気・電子機器の冷却液として高い機能を発し、優れた冷却特性を有している。
【0126】
<冷却液実施例8と冷却液比較例1~5との対比>
本願実施例1の化合物(2)100質量部含有する冷却液実施例8と、エステル系またはポリエーテル系の冷却液100質量部含有する比較例1~3とを比較すると、何れも電気伝導率並びに熱伝導率、共に本願化合物(2)の方が優れ、特に電気伝導率に至っては特に優れる。
一方、本願実施例1の化合物(2)100質量部含有する冷却液実施例8と、合成潤滑油基油として知られる、PAO系化合物であるPAO-4(冷却液比較例4)、PAO-8(冷却液比較例5)とを比較すると、電気伝導率については、PAO系の冷却液比較例4および5の方が優れる一方、熱伝導率については、本願冷却液実施例8の方がすぐれる。
【0127】
上記冷却液実施例と冷却液比較例との比較により明らかなように、本願発明の冷却液組成物は電気伝導率試験において高い絶縁性を示し、熱伝導率試験において高い冷却特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により、体積固有抵抗が高いDOTP、DOTPを含有する体積固有抵抗の高い可塑剤、及び絶縁性の高い塩化ビニル系樹脂組成物を得ることが可能となり、電線ケーブル等、電気絶縁性を要求される電線の被覆材に好適に用いることができる。
また、電気抵抗率が高いDOTPを含有する冷却液組成物を得ることが可能となり、高い絶縁性と冷却特性を併せ持つ冷却液として用いることが出来る。