(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122972
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】有機スズクラスター、有機スズクラスターの溶液、及び高解像度パターン形成への適用
(51)【国際特許分類】
C07F 7/22 20060101AFI20240903BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07F7/22 A
C07F7/22 K
G03F7/004
G03F7/004 531
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075585
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2020527805の分割
【原出願日】2018-11-19
(31)【優先権主張番号】62/588,546
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511130955
【氏名又は名称】インプリア・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Inpria Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ジェイ・カーディノー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ティ・マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アーリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ティ・アンダーソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機金属放射線感受性パターン形成レジスト組成物と、レジストパターンを形成するための方法に関し、さらに、有機金属クラスターを含む前駆体溶液と、有機金属クラスターを合成するための方法を提供する。
【解決手段】モノアルキルスズトリ(アルキルアセチリド)を合成する方法であって、有機溶媒中で、式HC≡CR”を有するアルキルアセチレンと、式RSn(NR”’2)3を有するアルキルスズトリ(ジアルキルアミド)とを反応させて、式RSn(C≡CR”)3を有するモノアルキルスズトリ(アルキルアセチリド)を形成することを含み、Rは、ヘテロ原子官能基で任意に置換された、1~31個の炭素原子を有する炭化水素基を含み、R”は、1~31個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル、またはアリールを含み、R”’は、1~31個の炭素原子を有するアルキル基を含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R3Sn3(O2CR’)3+x(L)2-x(OH)2(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;Lは式ORa又はSRaを有する配位子であり、RaはH又は1~20個の炭素原子を有する有機基である;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル)によって表される分子クラスターを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が結晶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
x=2である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
Rが分枝状アルキル基、シクロアルキル基又はこれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を合成するための方法であって、
有機溶媒中で、アルキルスズトリアルキルアセチリドと、カルボン酸及び水とを反応させることを含む方法。
【請求項8】
有機溶媒と、式R3Sn3(O2CR’)5-x(L)2+x(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”はH、有機基又はこれらの組合せである)を有する溶媒和有機金属クラスターとを含む溶液。
【請求項9】
前記有機溶媒がアルコール、エーテル、エステル又はこれらの混合物を含む、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
前記有機溶媒がさらに約5v/v%~約25v/v%のカルボン酸を含む、請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
スズの量を基準として約1.9mM~約9.4mMのクラスター濃度を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項12】
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項13】
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、請求項8~12のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項14】
R”が-R0OHR1、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又はこれらの組合せを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項15】
構造物をパターン化するための方法であって、
放射線感受性コーティングを有する基板をパターン化放射線に暴露して、潜像を有する暴露コーティングを形成するステップであって、前記放射線感受性コーティングが、式R3Sn3(O2CR’)3+x(L)2-x(OH)2(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル、R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”は有機基である)によって表される分子クラスターを含む溶液の堆積によって形成された、ステップと
前記暴露コーティングを適切な現像剤で現像して、パターン化コーティングを形成する、ステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記放射線がEUV放射線である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
R”が-R0OHR1、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又はこれらの組合せを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記現像剤が、ネガ型パターンを形成するための有機溶媒を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって本明細書に援用される2017年11月20日に出願された「Organometallic Metal Clusters and Application to High Resolution Patterning」という表題の同時係属中の米国仮特許出願第62/588,546号(Cardineau et al.)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、有機金属放射線感受性パターン形成レジスト組成物と、本組成物を用いてレジストパターンを形成するための方法とに関し、本組成物は有機金属クラスターを含むことができる。本発明はさらに、有機金属クラスターを含む前駆体溶液と、有機金属クラスターを合成するための方法とに関する。有機金属クラスターにより形成されたコーティングは、低暴露線量で放射線によりパターン化されて構造物を生じることができる。
【背景技術】
【0003】
半導体回路及びデバイスの加工は、各世代にわたって限界寸法の継続的な縮小を伴ってきた。これらの寸法が縮小するにつれて、ますます小さくなるフィーチャーの加工及びパターン形成の要求に応えるために、新しい材料及び方法が所望され得る。パターン形成は、一般に、放射線感受性材料(レジスト)の薄層を選択的に暴露してパターンを形成し、その後、これを次の層又は機能材料に転写することを含む。極紫外線(EUV)及び電子ビーム放射線の良好な吸収を提供すると同時に、非常に高いエッチングコントラストを提供するのに特に適している有望な新しい種類の金属ベースの放射線レジストが発見されている。より小さいパターン化フィーチャーを得るために、EUVは半導体加工における重要な手段になることが突き止められており、EUVの利点を利用することができるレジスト組成物は、この試みの有益な要素であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、本発明は、式R3Sn3(O2CR’)3+x(L)2-x(OH)2(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;Lは式ORa又はSRaを有する配位子であり、RaはH又は1~20個の炭素原子を有する有機基である;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル)によって表される分子クラスターを含む組成物に関する。
【0005】
さらなる態様では、本発明は、有機溶媒と、式R3Sn3(O2CR’)5-x(L)2+x(μ3-O)(ここで、0≦x<2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”はH、有機基又はこれらの組合せである)を有する溶媒和有機金属クラスターとを含む溶液に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、放射線感受性コーティングを有する基板をパターン化放射線に暴露して、潜像を有する暴露コーティングを形成するステップと、暴露コーティングを適切な現像剤で現像して、パターン化コーティングを形成するステップとを含む、構造物をパターン化するための方法に関する。放射線感受性コーティングは、一般に、式R3Sn3(O2CR’)5-x(L)2+x(μ3-O)(ここで、0≦x<2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル、R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”は有機基である)によって表される分子クラスターを含む溶液の堆積によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】X線回折及びディフラクトグラムの分析から得られる結晶性スズトリマー、((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(μ
3-O)の3次元構造のボール及びスティック画像である。
【
図2】空気中でSnO
2への転化を示す((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)の熱重量分析を示すプロットであり、重量及び熱流量のプロットは、温度の関数として与えられる。
【
図3】アルゴン中でSnOへの転化を示す((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)の熱重量分析を示すプロットであり、重量及び熱流量のプロットは、温度の関数として与えられる。
【
図4】CDCl
3中の((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)の
1H及び
119Sn NMRの1セットのスペクトルのプロットである。
【
図5】テトラヒドロフラン-25%ギ酸溶媒中のSn
3トリマー((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)のエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI-MS)であり、主要なフラグメントイオンについて拡大挿入プロットが示される。
【
図6】メタノール溶媒中のSn
3トリマー((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)のESI-MSスペクトルであり、主要なフラグメントイオンについて拡大挿入プロットが示される。
【
図7】二乗平均平方根(RMS)表面粗さの評価と共に、100℃での照射前ベーキングにより((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)前駆体溶液を用いて形成された照射前の放射線感受性膜の原子間力顕微鏡法走査である。
【
図8】二乗平均平方根(RMS)表面粗さの評価と共に、120℃での照射前ベーキングにより((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)前駆体溶液を用いて形成された照射前の放射線感受性膜の原子間力顕微鏡法走査である。150℃又は180℃
【
図9】二乗平均平方根(RMS)表面粗さの評価と共に、150℃での照射前ベーキングにより((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)前駆体溶液を用いて形成された照射前の放射線感受性膜の原子間力顕微鏡法走査である。
【
図10】二乗平均平方根(RMS)表面粗さの評価と共に、180℃での照射前ベーキングにより((CH
3)
3C)
3Sn
3(O
2CH)
5(OH)
2(μ
3-O)前駆体溶液を用いて形成された照射前の放射線感受性膜の原子間力顕微鏡法走査である。
【
図11】EUV線量の関数としてプロットされた正規化した膜厚による5つのコントラスト曲線のプロットであり、現像の前に、放射線感受性膜を5つの照射後ベーキング温度のうちの1つにさらした。
【
図12】100mJ/cm
2のEUV線量による照射及び現像の後の、36nmピッチのラインを有するパターン化されたレジストの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アルキル配位子、並びに架橋カルボキシラト配位子、架橋ヒドロキソ配位子、及び架橋オキソ配位子を有する3つのSn原子を通常含む有機スズクラスターが合成されており、これは、放射線ベースのパターン形成用途に有利であり得る代替の加工特性を提供する。クラスターは、各スズ原子に1個のアルキル配位子が付いた3つのスズ原子を有する。いくつかの実施形態では、クラスターは、3~5個のカルボキシラト配位子及び4~2個のヒドロキソ配位子と共に、3つの金属原子の間を架橋する1つの酸素原子(μ3-O)を有し、ここで、2つの配位子は、カルボキシラト配位子とヒドロキソ配位子との間で交換可能である。スズ-アルキル結合及びスズ-カルボキシラト結合は、放射線暴露などによる切断に敏感である。この結合の断裂は化学的コントラストを作り出し、所望の放射線ベースのパターン形成が可能になる。スズクラスターの合成は前駆体アセチリド配位子に基づき、選択された量のカルボン酸及び水との反応により、クラスター形成が駆動され、対応するカルボキシラト、ヒドロキソ及びオキソ配位子が対応して形成される。クラスターにより形成される非水性溶液は、他の放射線ベースの有機金属パターン形成材料と比べて改善された前駆体溶解性、コーティング品質、及び感受性に関して有望であるコーティング組成物を提供する。
【0009】
アルキル金属配位組成物は高エネルギー放射線により望ましいパターン形成特性を提供し、それにより、非常に微細なフィーチャーのパターン形成が可能になることが見出されている。これらの組成物は、電子ビーム又はEUV放射線によるパターン形成のために特に有効である。高性能の放射線ベースのパターン形成組成物におけるアルキル置換金属配位化合物の使用は、たとえば、参照によって本明細書に援用される「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions」という表題の米国特許第9,310,684号明細書(Meyers et al.)に記載されている。パターン形成のためのこれらの有機金属組成物の改良は、「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions and Corresponding Methods」という表題の米国特許出願公開第2016/0116839A1号明細書(Meyers et al.)、及び「Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions, Precursors, and Patterning」という表題の米国特許出願公開第2017/0102612A1号明細書(Meyers et al.)に記載されており、これらはいずれも参照によって本明細書に援用される。これらの参考文献の有機金属組成物は単一の金属部分に基づいた構造を有し、加工の間に金属オキソ-ヒドロキソ材料に縮合され得る。
【0010】
本明細書に記載される3つの金属原子及び有機配位子を有する金属クラスターは、2つ又は3つの金属原子の間の架橋基を含む。金属クラスター組成物は合成時には結晶性固体であり、構造は、それぞれの実施形態について決定されている。金属クラスター組成物は、付加的な加工のための適切な有機溶媒に可溶性である。金属クラスターの溶液は、適切な基板上に堆積され、そしてパターン形成のためにさらに加工され得る放射線レジストとして使用することができる。本明細書において実証されるように、金属クラスターベースの組成物はパターン形成のために有効に使用することができ、加工の利点を有し得る。
【0011】
現在対象としているスズクラスターは、3つのスズ原子を結びつけるμ3中心架橋酸素原子を有する3つのスズ原子のコアを含む。各スズはアルキル配位子を有する。3つの架橋(μ2)カルボキシラート配位子は、スズ原子のそれぞれの対を結びつける。付加的な2つのカルボキシラト配位子は非架橋(Sn-O結合)配置で2つのスズ原子に結合し、非架橋カルボキシラート配位子を持たないスズ原子は、そのスズ原子を他の2つのスズ原子のそれぞれに架橋させる2つのμ2ヒドロキソ配位子に結合する。したがって、スズ原子のうちの2つは同等の配位子構造を有し、第3のスズ原子は若干異なる配位子構造を有するが、スズ原子は全てアルキル配位子(Sn-C結合)を有し、2つの架橋カルボキシラト配位子を共有する。下記の実施例の結果に基づいて、2つの非架橋カルボキシラト配位子は、非架橋ヒドロキソ配位子及び/又はアルコキシド配位子(Sn-O結合)によって容易に置換され得ると考えられる。以下で詳細に記載されるように、合成は、極性有機溶媒中のアルキルスズトリ(アルキルアセチリド)と、カルボン酸及び水との反応を含む。
【0012】
いくつかのスズクラスターの形成がアルキルスズ酸RSn(O)OHの反応に基づいて記載されている。ホスファート配位子を有するスズトリマーの形成は、参照によって本明細書に援用される「A New Structural Form of Tin in an Oxygen-Capped Cluster」という表題のDay et al.,J.Am.Chem.Soc.1987,Vol.109,940-941に記載されている。他の有機スズケージは、参照によって本明細書に援用される「Organotin Cages,{[(n-BuSn)3(μ3-O)(OC6H4-4-X)3]2(HPO3)4},X=H,Cl,Br,and I,in Double O-Capped Structures:Halogen-Bonding-Mediated Supramolecular Formation」という表題のChandrasekhar et al.,Organometallics 2005,Vol.24,4926-4932に記載されている。アルキルスズ酸に基づく付加的な合成方法は、参照によって本明細書に援用される「Organotin assemblies containing Sn-O bonds」という表題のChandrasekhar et al.,Coordination Chemistry Reviews,2002,Vol.235,1-52によるレビューに要約される。アルキルスズ酸に基づくこの合成研究は、本明細書に記載される合成方法又は本明細書に記載される特定の範囲の組成物を示唆しない。
【0013】
金属クラスター化合物は、再結晶などによる精製の後に結晶性固体を形成する。固体組成物は、室温で、任意選択的に安定化のためにある量のカルボン酸を含む適切な溶媒中に溶解させることができ、得られた溶液は、レジスト前駆体組成物として適している。レジスト前駆体組成物は、パターン形成用途の分配のために溶液中で安定的であり得る。以下で例証されるように、前駆体組成物は、パターン化する基板をコーティングするために使用することができる。コーティングの最中及びコーティング後の適切な加工により、放射線パターン形成のためのコーティングされた基板を調製することができる。以下の結果は、得られたコーティングされた基板が、ナノメートルスケールのフィーチャーのEUVパターン形成に適していることを実証する。
【0014】
本明細書中のスズクラスター組成物は、式R3Sn3(O2CR’)5-x(OH)2+x(μ3-O)(ここで、0≦x<2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~31個の炭素原子を有するアルキル)によって表すことができる。スズクラスターは、μ3酸素原子の周りに3つのスズ原子を有し、ここで、μ3は、3つの部分に結合する配置を示す。5つのカルボキシラト配位子のうちの3つは架橋しており(μ2)、2つは架橋していない。μ記号は、便宜上、必ずしも式中に含まれるとは限らない。R基は、直鎖状、分枝状(金属に結合した炭素原子における第2級又は第3級を含む)、又は環状のヒドロカルビル基であり得る。
【0015】
各R(アルキル)基は個々にスズ原子に結合し、一般には1~31個の炭素原子を有し、第2級結合(secondary-bonded)炭素原子を持つ基の場合は3~31個の炭素原子を有し、第3級結合(tertiary-bonded)炭素原子を持つ基の場合は4~31個の炭素原子を有するが、いくつかの実施形態では、各R基は20個以下の炭素原子を有することができ、さらなる実施形態では、15個以下の炭素原子を有することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の炭素数のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。特に、いくつかのパターン形成組成物のために分枝状アルキル配位子が望ましいことがあり、この場合、クラスターのR-Sn部分は、R1R2R3CSnとして表すことができ、式中、R1及びR2は独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3は水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、R1及びR2は環状アルキル部分を形成することができ、R3は環状部分の他の基に結合していてもよい。適切な分枝状アルキル配位子は、たとえば、イソプロピル(R1及びR2はメチルであり、R3は水素である)、tert-ブチル(R1、R2及びR3はメチルである)、tert-アミル(R1及びR2はメチルであり、R3は-CH2CH3である)、sec-ブチル(R1はメチルであり、R2は-CH2CH3であり、R3は水素である)、ネオペンチル(R1及びR2は水素であり、R3は-C(CH3)3である)、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、及びシクロプロピルであり得る。適切な環状基の例としては、たとえば、1-アダマンチル(第3級炭素において金属に結合した-C(CH2)3(CH)3(CH2)3又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)、及び2-アダマンチル(第2級炭素において金属に結合した-CH(CH)2(CH2)4(CH)2(CH2)又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)が挙げられる。他の実施形態では、ヒドロカルビル基は、アリール若しくはアルケニル基、たとえば、ベンジル若しくはアリル、又はアルキニル基を含み得る。他の実施形態では、ヒドロカルビル配位子Rは、C及びHのみからなり、且つ1~31個の炭素原子を含有する任意の基を含み得る。たとえば:直鎖状又は分枝状アルキル(i-Pr((CH3)2CH-)、t-Bu((CH3)3C-)、Me(CH3-)、n-Bu(CH3CH2CH2CH2-))、シクロ-アルキル(シクロ-プロピル、シクロ-ブチル、シクロ-ペンチル)、オレフィン(アルケニル、アリール、アリリック)、若しくはアルキニル基、又はこれらの組合せ。さらなる実施形態では、適切なR基は、シアノ、チオ、シリル、エーテル、ケト、エステル、又はハロゲン化基、又はこれらの組合せを含むヘテロ原子官能基で置換されたヒドロカルビル基を含み得る。
【0016】
カルボキシラト配位子O2CR’に関して、ホルマート配位子(O2CH、R’=CH3)は以下に例示される。一般に、R’は直鎖状又は分枝状でよく、最大20個までの炭素原子、さらなる実施形態では最大12個までの炭素原子、他の実施形態では10個以下の炭素原子を有する。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の炭素原子のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。他の特に適切なカルボキシラート(或いは、カルボキシラトとも称される)配位子には、たとえば、アセタート配位子(O2CCH3)、プロピオナート配位子(O2CCH2CH3)、オキサラート配位子(O2CCO2H)、又はこれらの組合せが含まれる。
【0017】
3つのカルボキシラート配位子は架橋しており(μ2)、構造を安定化させると考えられるSn-O-CR’-O-Sn構造を有する。2つのカルボキシラート配位子は架橋しておらず、これらは、たとえばヒドロキソ(OH)配位子又はアルコキシド配位子と交換可能であると考えられる。したがって、式中のパラメーターxは、非分枝状カルボキシラート配位子とヒドロキシド配位子との交換の度合いを示す。アルコキシド配位子は式ORaによって表すことができ、式中、Raは、一般に1~20個の炭素原子を有する有機基である。有機基はアルキル基又はシクロアルキル基などの有機部分を指し、より一般的には飽和であるか、又は不飽和(アルケニル、アルキニル又は芳香族)であり、そしてヘテロ原子によって置換されているか、又は非置換である。カルボニルアミド、カルバマートのカルボニルO、又はチオールのSに対する配位子などの他の低pKa配位子も非架橋カルボキシラート配位子の置換のために適切であり得る。したがって、スズトリマーの式はこれらの置換に基づいて一般化されて、R3Sn3(O2CR’)3+x(OH)2(L)2-x(μ3-O)となり、ここで、0≦x≦2であり、Lは、式ORa又はSRa(式中、Raは、1~20個の炭素原子を有するH又は有機基である)を有する配位子を表す。合成したときのクラスターの構造は、精製した結晶形態で決定されるが、非晶質形態の固体を形成することも可能であり得る。コアクラスター構造は溶液中で維持されるが、溶媒は、水又はアルコールなどの交換可能な配位子を提供し得ると考えられる。クラスター組成物がアルコール溶媒中に溶解されると、アルコキシド配位子は、少なくともある程度、非架橋カルボキシラート配位子及び/又はヒドロキシド配位子と置換し得ることが可能である。溶液が周囲雰囲気下で薄いコーティングに形成されるか、又は溶媒がある量の水を含むと、カルボキシラート配位子は、大気中の水又は溶媒からの水による暴露のためにヒドロキシド配位子によって置換され得る。
【0018】
スズクラスターの合成は、初期スズ反応物のアルキルスズトリアセチリドRSn(C≡CR”)の使用に基づくことができ、式中、Rは、クラスター中のアルキル配位子について上記で特定されたアルキル基に一致する。R”は一般的に直鎖状又は分枝状アルキル基でよく、環状、不飽和、又は芳香族であり得る。R”は、実施例ではフェニル基である。アルキルスズアセチリドは、アセチリドアニオン(R’C≡C-)のRSnCl3への添加、アルキルアニオンのSn(C≡CR”)4への添加、又はHC≡CR”とRSn(NR”’2)3との反応によって合成することができる。アルキルスズトリアセチリドは、極性溶媒中でカルボン酸及び少量の水と反応される。一般に、溶媒は、エタノールなどのアルコール、又は他の水混和性有機溶媒であり得る。カルボン酸及び水の量は、トリマークラスター形成を提供するように選択される。一般に、カルボン酸対水のモル比は約3~約18、さらなる実施形態では約5~約15、他の実施形態では約7~約14である。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のカルボン酸対水比のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0019】
反応を実施するために、熱を加えて、アルキルスズトリアセチリドの溶解を加速させることができる。以下の実施例において、反応物を溶解させるために溶液は60℃で10分間加熱される。温度は、溶媒の沸点よりも低い所望の値に選択することができ、時間は、反応物の溶解に基づいて選択することができる。加熱工程の温度は、クラスター形成にとって重要ではないと思われる。クラスターを形成するための反応は一晩実施することができるが、より長い又はより短い時間が適していることもある。一般に、クラスターを形成するための反応は、少なくとも約30分間、さらなる実施形態では少なくとも約1時間、他の実施形態では約90分~約2日間実施することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。反応は室温で実施することができるが、所望によりいくらかの加熱又は冷却が使用されてもよい。
【0020】
生成物は、より低い温度を可能にするために一般的に減圧下で実施される溶媒の蒸発によって捕集することができる。捕集した固体は、一般に有機溶媒から、溶媒を加熱して組成物を溶解させ、溶液をゆっくり冷却させることにより、精製のために再結晶させることができる。再結晶に適した溶媒には、たとえば、トルエン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、アセトンなどが含まれる。再結晶した組成物はさらなる使用のために捕集され、任意選択的に適切な溶媒で洗浄され得る。実験に基づいて、非架橋カルボキシラト配位子の少なくとも一部の交換は、アルコール溶媒中での再結晶中のアルコキシ配位子との交換であり得る。
【0021】
レジスト前駆体溶液を形成するために、クラスター組成物は適切な有機溶媒中に溶解され得る。約1%~25%v/v、さらなる実施形態では約5%~20%v/v(混合物の全容積当たりの添加された容積)の濃度のギ酸又は他のカルボン酸を安定剤として用いて、クロロホルム、アルコール及び様々な極性有機溶媒中で溶解性が見出されている。アルコールは、1-メトキシ-2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、シクロペンタノール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、若しくはイソプロパノール、又はこれらの混合物などのうちの1つ又は複数であり得る。アルキルスズトリマー組成物は、極性エーテル、たとえばtert-ブチルメチルエーテル及びアニソール、乳酸エチル、又は環状エーテル、たとえばテトラヒドロフランなどのうちの1つ又は複数と混合されたギ酸溶液中にも溶解する。上記の特定された溶媒に基づいた他の有機溶媒もまた適し得る。スズ濃度は、約0.1mM~約1M、さらなる実施形態では約0.5mM~約500mM、他の実施形態では約1mM~約100mM(スズの量による)の範囲であり得る。一般に、有機溶媒の選択は、溶解性パラメーター、揮発性、燃焼性、毒性、粘性及び他の加工材料との可能性のある化学的相互作用によって影響され得る。一般的に、添加したカルボン酸の量は、カルボキシラート配位子の酸形態に対応し得る。したがって、例示されるクラスターの場合、溶液にギ酸が添加され得る。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の濃度のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。一般的に、前駆体溶液は、形成する材料の容積に適した適切な混合装置を使用することにより、十分に混合することができる。好適な濾過を使用して、汚染物又は適切に溶解しない他の成分を除去することができる。
【0022】
上記のような溶液中で、2つの非架橋カルボキシラート配位子は、アルコキシド又は硫黄類似体などの他の配位子によって置換され得る。したがって、クラスターの式は、R3Sn3(O2CR’)3+x(OH)2(L)2-x(μ3-O)(ここで、0≦x≦2、LはORa又はSRaであり、Raは上記で特定される)になる。置換スズトリマークラスターは溶液中で形成され得るが、溶媒を除去して対応する固体を形成することができる。
【0023】
コーティング材料は、堆積によって形成することができ、次いで選択された基板上でその前駆体溶液を処理する。本明細書に記載されている前駆体溶液を使用する場合、幾分かの加水分解及び縮合は、一般的には、コーティング時に実施されるが、それに続く工程、たとえば空気中での加熱によって完結させるか、さらにポストコーティングを進めさせてもよい。基板は、一般的には、その上にコーティング材料を堆積させることを可能とする表面を提供し、その基板が複数の層で構成されていてもよく、その中でも表面は最上層に関わる。いくつかの実施形態では、その基板表面を処理して、コーティング材料を付着させるための表面を備えるようにすることができる。さらに、その表面を洗浄し、及び/又は適切に平滑化させることも可能である。好適な基板表面には、任意の合理的な材料を含むことができる。特に興味深いいくつかの基板としては、たとえば以下のものが挙げられる:シリコンウェーハ、シリカ基板、他の無機材料、たとえば、セラミック材料、ポリマー基板、たとえば有機ポリマー、それらの複合材料、並びに基板の表面全体及び/又は層中でのそれらの組合せ。ウェーハ、たとえば比較的薄い円筒状の構造物が好都合であるが、任意の合理的な形状の構造物を使用することも可能である。ポリマー基板又は非ポリマー性の構造物上にポリマー層を有する基板は、それらが低コストであり、可撓性があるため、ある種の用途で望ましいものであり得、本明細書に記載されているパターン形成可能な材料を加工するために使用することが可能な加工温度が比較的低いことから、好適なポリマーを選択することができる。好適なポリマーとしては、たとえば以下のものが挙げられる:ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリアルケン、それらのコポリマー、及びそれらの混合物。一般的に、基板は平坦な表面を有するのが望ましく、特に高解像度用途ではそうである。しかしながら、特定の実施形態では、基板が実質的にトポグラフィーを有してもよく、その場合、レジストコーティングは、特定のパターン形成用途のために、フィーチャーを埋めて平坦化させる目的で使用される。
【0024】
一般に、前駆体溶液を基板に送達するために任意の適切な溶液コーティングプロセスを使用することができる。適切なコーティングアプローチは、たとえば、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ナイフエッジコーティング法、蒸着法、例えば化学蒸着法(CVD)又は原子層堆積法(ALD)、並びに印刷アプローチ、例えばインクジェット印刷及びスクリーン印刷などを含むことができる。これらのコーティングアプローチのいくつかでは、コーティングプロセス中にコーティング材料のパターンが形成されるが、現在印刷などから得ることができる解像度は、本明細書に記載される放射線ベースのパターン形成から得られるものよりも著しく低レベルの解像度を有する。
【0025】
放射線を使用してパターン形成を実施する場合、スピンコーティング法は、基板を比較的均質にカバーするために望ましいアプローチ方法であり得るが、ただし、エッジ効果が出る可能性もある。いくつかの実施形態では、ウェーハを約500rpm~約10,000rpm、さらなる実施形態では約1000rpm~約7500rpm、さらに次の実施形態では約2000rpm~約6000rpmの速度で回転させる。スピンニング速度を調節することにより、所望のコーティング厚みを得ることができる。スピンコーティングは、約5秒~約5分、さらなる実施形態では約15秒~約2分の時間をかけて実施することができる。最初は低速のスピン、たとえば、50rpm~250rpmを使用して、基板全体に組成物の初期バルクスプレッディング(bulk spreading)を行わせることができる。裏面リンス、エッジビーズ除去工程などを、水又は他の好適な溶媒を用いて実施してエッジビーズをすべて除去することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のスピンコーティングパラメーターのさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0026】
コーティングの厚みは、一般的には、前駆体溶液の濃度、粘度、及びスピンコーティングのスピン速度の関数であり得る。他のコーティングプロセスでも、その厚みは、一般的には、やはりコーティングパラメーターを選択することによって調節することができる。いくつかの実施形態では、それに続くパターン形成プロセスにおいて、微細で高解像度のフィーチャーの形成を容易にするために薄いコーティングを使用するのが望ましい。たとえば、乾燥後のコーティング材料は、以下のような平均厚みを有することができる:約10ミクロン以下、他の実施形態では約1ミクロン以下、さらなる実施形態では約250ナノメートル(nm)以下、さらに次の実施形態では約1ナノメートル(nm)~約50nm、他の実施形態では約2nm~約40nm、及びいくつかの実施形態では約3nm~約35nm。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の厚みのさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。厚みは、非接触法の、X線反射法(X-ray reflectivity)及び/又は膜の光学的性質に基づくエリプソメトリを使用して評価することができる。一般的に、コーティングは比較的均質であり、加工を容易にしている。いくつかの実施形態では、コーティングの厚みの変動は、平均コーティング厚みから±50%以下、さらなる実施形態では±40%以下、さらに次の実施形態では平均コーティング厚みに対して約±25%以下の変動である。たとえば、より大きい基板上での高均質コーティングのようないくつかの実施形態では、コーティングの均質性の評価は、エッジから1センチメートルを排除して評価するのがよく、すなわち、コーティングの均質性は、エッジから1センチメートル以内のコーティングの部分では評価しない。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0027】
コーティングプロセスそのものでは、溶媒の一部を蒸発させることになり、なぜなら、多くのコーティングプロセスでは、コーティング材料の液滴又は他の形状を形成して大きい表面積を得、及び/又は溶液を動かして蒸発を促進させるからである。溶媒が失われると材料中の化学種の濃度が上がるために、コーティング材料の粘度が高くなる傾向がある。コーティングプロセスの場合の目的は、溶媒を十分に除去して、次の加工のためにコーティング材料を安定化させることにある。反応性の化学種が、コーティング時又はその次の加熱で縮合され、加水分解物のコーティング材料が形成される。
【0028】
一般的に、コーティング材料を放射線暴露前に大気湿分の存在下で暴露させ、任意選択的に加熱して、その前駆体組成物中の金属に対する加水分解性の結合を加水分解させ、及び/又は溶媒をさらに追い出して、コーティング材料の高密度化を促すことができる。インサイチューでの加水分解後のコーティング材料は、一般的には、オキソ-ヒドロキソ及び/又はカルボキシラート配位子と金属との結合に基づくポリマー性の金属オキソ-ヒドロキソ及び/又はカルボキシラートネットワーク(その中で金属がいくつかの配位子を有する)を形成するか、又はアルキル配位子を含む多核金属オキソ/ヒドロキソ及び/又はカルボキシラート化学種からなる分子固体を形成することができる。
【0029】
その加水分解/溶媒除去プロセスでは、加熱されたコーティング材料の正確な化学量論、及び/又はコーティング材料中に残存している溶媒の特定の量について量的に調節されていても調節されていなくてもよい。さらに、本明細書において表されている式及び組成には、Snに直接結合されているか、又はネットワークの水素結合された成分として、幾分かの追加の水が含まれていてもよい。一般的には、そのようにして得られたコーティング材料の性質の実験的な評価を実施して、パターン形成プロセスに有効な加工条件の選択を可能としている。プロセスの適用を成功させるのに加熱が必要なわけではないが、コーティングされた基板を加熱して、加工の速度を上げ、及び/又はプロセスの再現性を向上させ、及び/又は加水分解による反応生成物、たとえば、アミン及び/又はアルコールの蒸発を容易にすることが望ましい。溶媒を除去する目的で曝露前ベーキングにおいて熱を加える実施形態では、そのコーティング材料を約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約55℃~約225℃の温度に加熱することができる。溶媒除去のための加熱は、一般的には少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分間~約30分間、さらに次の実施形態では約0.75分間~約10分間かけて実施することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の加熱温度及び時間のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。コーティング材料の加熱処理、加水分解、及び高密度化の結果として、そのコーティング材料は、屈折率及び放射線の吸収の増大を示すことができ、しかもコントラストの顕著な低下はない。
【0030】
加水分解、縮合、及び乾燥に続いて、コーティング材料は、放射線を用いて微細にパターン化することができる。上記のように、前駆体溶液及びそれにより対応するコーティング材料の組成は、特にEUV放射に対する利益を考慮して、所望の形態の放射線を十分に吸収するように設計することができる。放射線の吸収は、金属とアルキル配位子との間の結合を壊すことができるエネルギーをもたらし、したがって、アルキル配位子の少なくとも一部は、もはや材料の安定化に利用できなくなる。同様に、放射線の吸収は金属とカルボキシラート配位子との間の結合を壊し、且つ/或いはカルボキシラート配位子を分解することもできる。アルキル配位子又は他のフラグメントも含めて、放射線分解反応の生成物は、プロセス変数及びそのような反応生成物の識別に依存して、その膜から拡散して出ることができ、又は出ないことができる。十分な量の放射線を吸収すると、その暴露されたコーティング材料が縮合する、すなわち、より高度の金属オキソ-ヒドロキソネットワークを形成し、それは、周囲大気から吸収した追加の水を含むことができる。放射線は、一般的には、選択されたパターンに従って送達することができる。放射線のパターンが、コーティング材料中で照射された領域と照射されなかった領域に対応するパターン、すなわち潜像に変換される。照射された領域には、化学的に変化されたコーティング材料が含まれ、及び照射されなかった領域には、一般的には、最初に形成されたままのコーティング材料が含まれる。以下でも説明するように、そのコーティング材料を現像して、照射されなかったコーティング材料を除去するか、又は代替的に照射されたコーティング材料を選択的に除去すると、極めて滑らかなエッジを形成することができる。
【0031】
放射線は、一般的には、マスクを通してコーティングされた基板に直射することもでき、又は放射線ビームを調節可能な方法で基板上においてスキャンさせることもできる。一般的に、放射線としては、電磁照射線、電子線(ベータ線)、又は他の好適な放射線を挙げることができる。一般的に、電磁照射線は、所望の波長又は波長範囲、たとえば可視光線、紫外光線、又はX線を有することができる。放射線パターンで達成可能な解像度は、一般的には、放射線の波長に依存し、一般的には、より短い波長の放射線を用いれば、より高い解像度パターンを得ることができる。したがって、特に高い解像度パターンを得るために紫外光、X線、又は電子線を使用するのが望ましい。
【0032】
国際標準のISO 21348(2007)(これは参照により本明細書に組み込まれる)によれば、紫外光とは、100nm以上~400nm未満の波長を指す。クリプトンフルオリドレーザーは、248nmの紫外光のための光源として使用することができる。紫外光の範囲は、受理された標準では、いくつかの方法でさらに細分することも可能であり、たとえば10nm以上~121nm未満は極端紫外(EUV)、及び122nm以上~200nm未満は遠紫外(FUV)である。アルゴンフルオリドレーザーからの193nm線は、FUVのための放射線源として使用可能である。13.5nmのEUV光がリソグラフィのために使用されてきたが、この光は、高エネルギーレーザー又は放電パルスを使用して励起させたXe又はSnプラズマ源で発生させる。軟X線は、0.1nm以上~10nm未満と定義することができる。
【0033】
電磁照射の量は、フルエンス又は線量によって特性決定することができ、それは、暴露時間中の積分した放射束によって定義される。好適な放射フルエンスは、約1mJ/cm2~約175mJ/cm2、さらなる実施形態では約2mJ/cm2~約150mJ/cm2、さらなる実施形態では約3mJ/cm2~約125mJ/cm2とすることができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の放射フルエンスのさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0034】
コーティング材料の設計に基づいて、照射された領域(コーティング材料が縮合されている)と、照射されなかった領域(実質的に有機又はカルボキシラート配位子が変化していないコーティング材料)との間で材料の性質に大きいコントラストがあるようにすることができる。照射後の加熱処理を使用する実施形態では、その照射後の加熱処理を約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約50℃~約190℃、さらに次の実施形態では約60℃~約175℃の温度で実施することができる。暴露後の加熱は、一般的には少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分間~約30分間、さらに次の実施形態では約0.75分間~約10分間かけて実施することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の照射後の加熱温度及び時間のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。この材料中での高いコントラストの性能により、そのパターンに、スムーズなエッジを有する高い解像度の線を形成することが容易となり、これについては次のセクションで説明する。
【0035】
ネガ調の画像形成の場合、その現像剤が、有機溶媒、たとえば前駆体溶液を形成するときに使用した溶媒であってよい。一般的に、現像剤の選択に影響を与えるのは以下の項目である:照射された場合と照射されていない場合との両方のコーティング材料に関する溶解性パラメーター、並びに現像剤の揮発性、引火性、毒性、粘性、及び他のプロセス材料との可能性のある化学的相互作用。特に、好適な現像剤としては、たとえば、以下のものが挙げられる:アルコール(たとえば、4-メチル-2-ペンタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、メタノール)、乳酸エチル、エーテル(たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール)など。現像は、約5秒間~約30分間、さらなる実施形態では約8秒間~約15分間、それに続く実施形態では約10秒間~約10分間で実施することができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0036】
主要な現像剤組成物に加えて、現像剤は、現像プロセスを容易にするための付加的な組成物を含むことができる。適切な添加剤は、たとえば、粘度調整剤、可溶化助剤、又は他の加工助剤を含み得る。任意成分の添加剤を存在させる場合、その現像剤には、約10重量パーセント以下の添加剤、さらなる実施形態では約5重量パーセント以下の添加剤を含むことができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の添加剤濃度のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。
【0037】
より弱い現像剤、たとえば、低濃度の水性現像剤、希釈した有機現像剤、又はその中ではコーティング現像速度が遅い組成物を用いる場合、加工速度を高めるために、より高温の現像プロセスを使用することができる。より強い現像剤の場合、現像プロセスの温度を下げることにより速度を低下させ、及び/又は現像の動力学を調節することができる。一般的に、現像の温度は、溶媒の揮発性に見合う適切な数値間で調節するのがよい。さらに、現像剤-コーティングの界面近くでコーティング材料を溶解させる現像剤は、現像時に超音波を用いて分散させることができる。
【0038】
現像剤は、各種の合理的なアプローチ方法を使用して、パターン化されたコーティング材料に適用することができる。たとえば、パターン化されたコーティング材料上に現像剤をスプレーすることができる。スピンコーティングを使用することも可能である。自動化された加工では、パドル法を使用することが可能であり、一定の形態のコーティング材料上に現像剤を注ぐ。必要に応じて、スピンリンシング及び/又は乾燥を用いて現像プロセスを完了させることができる。好適なリンシング溶液としては、たとえば以下のもの挙げられる:超純水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、及びそれらの組合せ。画像が現像できた後、そのコーティング材料は基板上にパターンとして配置されている。
【0039】
現像工程が完了した後、コーティング材料を熱処理することが可能であり、材料をさらに縮合させ、さらに脱水し、高密度化し、又は残存している現像剤を材料から除去する。この加熱処理は、オキシドコーティング材料が最終的なデバイス内に組み込まれる実施形態では、特に望ましいものとなり得るが、さらなるパターン形成を容易にするために、コーティング材料の安定化が望ましい場合、コーティング材料がレジストとして使用され且つ最終的に除去されるいくつかの実施形態では、加熱処理を実施するのが望ましい。特に、パターン化されたコーティング材料が所望のレベルのエッチ選択性を示す条件下において、パターン化されたコーティング材料のベーキングを実施することができる。いくつかの実施形態では、パターン化されたコーティング材料を約100℃~約600℃、さらなる実施形態では約175℃~約500℃、さらに次の実施形態では約200℃~約400℃の温度に加熱することができる。加熱は、少なくとも約1分間、他の実施形態では約2分間~約1時間、さらなる実施形態では約2.5分間~約25分間かけて実施することができる。加熱は、空気中、真空、又は不活性ガス雰囲気、たとえばAr若しくはN2中で実施するのがよい。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内の加熱処理のための温度及び時間のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。同様に、非加熱処理、たとえば、ブランケットUV暴露、又はO2のような酸化性プラズマへの暴露も同様のプロセスで採用してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、近接した構造の隣り合う線形セグメントが約60nm以下(ハーフピッチで30nm以下)、いくつかの実施形態では約50nm以下(ハーフピッチで25nm以下)、さらなる実施形態では約34nm以下(ハーフピッチで17nm以下)の平均ピッチ(ハーフピッチ)を有することが可能である。ピッチは、設計から評価し、走査型電子顕微鏡法(SEM)、たとえばトップダウン画像を用いて確認することができる。本明細書で使用するとき、「ピッチ」とは、繰り返されている構造素子の空間周期又は中心-中心距離を指し、当技術分野で一般的に使用されているように「ハーフピッチ」はピッチの半分である。パターンのフィーチャー寸法もフィーチャーの平均幅に関連させて記述することができ、それは一般的にコーナーなどから評価される。さらに、「フィーチャー」は、材料素子間及び/又は材料素子までのギャップを指すことができる。平均幅は、いくつかの実施形態では約25nm以下、さらなる実施形態では約20nm以下、さらに次の実施形態では約15nm以下とすることができる。当業者がよく認識しているように、上で明示された範囲内のピッチ、及び平均幅のさらなる範囲も考えられ、それらも本発明の開示に含まれる。これらのプロセスに基づき、一般的には適切に層状化された構造物、たとえばトランジスタ又は他の素子を形成するための繰り返しパターン形成プロセスを介してパターン形成を適応させて、各種のデバイス、たとえば電子集積回路を形成することができる。
【0041】
ウェーハのスループットは、量産タイプの半導体製造におけるEUVリソグラフィの実施での実質的な制約因子であり、所定のフィーチャーをパターン化するのに必要な線量に直接関係する。しかしながら、画像形成線量を低減させるための化学的な戦略が存在するものの、目標のフィーチャーをプリントするのに必要な画像形成線量とフィーチャーサイズの均質性(たとえばLWR)との間の負の相関関係が、フィーチャーサイズ及びピッチが50nm未満のEUVフォトレジストで一般的に観察され、それにより最終的なデバイスの可用性とウェーハの収率とが制限される。パターン形成能力は、線量対ゲル値に関して表すことができる。画像形成線量の要件は、暴露されたパッドのアレイを形成することによって評価することができ、ここで、暴露時間をパッド毎に段階付けして暴露の量を変化させる。次に膜を現像して、たとえば分光エリプソメトリを用いて、全てのパッドについて残存するレジストの厚みを評価することができる。そうして測定した厚みを、測定された最大レジスト厚みに対して正規化することができ、暴露線量の対数に対してプロットして、特性曲線を作成した。正規化された厚みに対する対数線量曲線の最大の勾配は、フォトレジストコントラスト(γ)として定義され、及びこの点を通って引いた接線が1に等しくなる線量の値がフォトレジスト線量対ゲル値(Dg)と定義される。このようにして、フォトレジストの特性表示に使用される共通パラメーターは、Mack,C.,Fundamental Principles of Optical Lithography,John Wiley&Sons,Chichester,U.K;pp.271-272,2007に従って近似させることができる。
【実施例0042】
実施例1.トリマー(t-Bu)3Sn3(O2CH)5(OH)2Oの調製
この実施例は、スズクラスター組成物の合成を実証する。
【0043】
クラスター形成のための反応物をまず合成した。3Lの丸底フラスコに磁気攪拌子及び温度計を備え付け、窒素でパージする。フラスコに酢酸水溶液バブラーを取り付けて、放出されるジメチルアミンを捕集する。次にフラスコに505gのフェニルアセチレン及び1Lのヘキサンを入れる。激しく攪拌しながら、462gのtert-ブチルスズトリス(ジメチルアミド)を添加し、温度を50℃よりも低く維持する。添加を通して、アミンの急速な放出が起こる。完了したら攪拌を停止し、フラスコを一晩放置して結晶化させる。tertブチルスズトリ(フェニルアセチリド)の結晶を捕集し、ヘキサン中で再結晶させる(698.6g/収率97.2%)。
【0044】
磁気撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコに、50gの合成したtertブチルスズトリ(フェニルアセチリド)、375mLの無水エタノール、125mLの92%ギ酸(8%水)、及び付加的な5mLの脱イオン水を入れた。丸底フラスコ中の溶液を60℃で10分間、又はアセチリドが溶解するまで加熱してから、室温で一晩攪拌した。一晩反応させた後、溶媒を真空下で蒸留した。溶媒の除去に続いて、回収した固体を500mLの高温トルエン(80℃)に溶解させ、次に溶液をゆっくり25℃まで冷却することにより、固体を再結晶させた。無色の結晶を濾過により捕集した(収率82%)。
【0045】
X線回折、示差走査熱量測定、NMR、及びエレクトロスプレーイオン化質量分析を用いて、無色の結晶を特徴付けした。組成物の特徴付けは、
図1~6に示される。
図1は、Bruker
TMSHELXL-2014パッケージ(Bruker Corporaton)を用いてX線回折により得られる、結晶性生成物の推定結晶構造である(Sheldrik,G.M.(2008)Acta.Crst.A64,112-122を参照)。構造は、3つのスズ原子の間を架橋するμ
3-O原子を示す。各スズ原子はt-ブチル配位子を有し、3つの架橋ギ酸イオンはスズ原子のそれぞれの対を結びつける。2つのOH基は1つのスズ原子と他のスズ原子との間を架橋し、2つの同等のスズ原子と、1つの識別可能なスズ原子とをもたらす。2つの非架橋ギ酸イオンは、2つの同等のスズ原子に対する配位子である。以下のNMR結果は、結晶性環境において、2つのスズ原子が同等であり、1つのスズ原子が明確に異なることと一致する。
【0046】
図2及び3は、結晶の示差走査熱量測定である。
図2の熱重量分析は周囲の空気雰囲気で得られ、
図3の熱重量分析はアルゴンガスで得られた。
図2は最終的なSnO
2の形成を実証し、
図3は最終的なSnOの形成を実証し、これらは、最終重量に従って評価される。結果は、最終生成物に到達するためのプロセスにおけるいくつかの熱的ステップを示す熱流量の結果も提供する。
【0047】
図4のNMRスペクトルについては、5mmのBBOFプローブを用いる500MHzのBruker-Ascend NMRスペクトロメーターを用いて、
1H及び
119Snチャネルを使用した。MestReNova v.12 NMRソフトウェアを用いてデータを分析した。スズスペクトルは、-550及び-571ppmにおいて1:2の積分値の2つの共鳴を示し、2つのスズ環境と、全部で3つのスズ(又は3倍)とが示される。プロトンNMRスペクトルは、8.44ppmにホルマートプロトンに対する幅広の瘤(hump)を示し、6.11ppmにヒドロキシルプロトンに対する別の幅広の瘤を示す。1.6及び1.1ppmのピークは、1.4ppmのtert-ブチルピークに対する
119/117Snサテライトである。これらのピークの正確なシフトは溶媒中の水分レベルに敏感であり、水との相互作用が示唆される。
【0048】
図5及び6は、溶液から得られる生成物スズトリマーのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトルである。
図5は、1mMのスズのテトラヒドロフラン-25%ギ酸溶媒の溶液から得られ、
図6は、1mMスズのメタノール溶液から得られた。図面は両方とも、オートインジェクターと共に構成されたAgilent 1200LC液体クロマトグラフにおいて収集され、そしてAgilent ESI-QTOF 6510に直接流される。スペクトルは両方とも、2つの非架橋ホルマートと、水又はメタノールのいずれかとの間の急速な交換を示唆する。
【0049】
実施例2.コーティングされたウェーハの調製
この実施例は、EUVパターン形成のためのコーティングされたウェーハの調製を記載する。
【0050】
実施例1からの結晶性スズトリマーを、1.9~9.4mMの範囲の濃度で95%の無水アニソール及び5%のギ酸(1%の水を含む99%のギ酸)の混合溶媒中に溶解させた。モル濃度は、トリマーのモル数ではなくスズ原子に関するものであり、これはこの分野において慣習的である。
【0051】
8.6mMのスズ濃度の5%ギ酸/アニソール中のスズトリマーの溶液を空気中、1500rpmで45秒間スピンコーティングすることにより、放射線感受性膜をシリコンウェーハ上に25nmの厚みに堆積させた。4つのコーティングされたウェーハに、100℃、120℃、150℃又は180℃のいずれかで60秒間、曝露前ベーキングを行った。ベーキングした後、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて膜を検査し、二乗平均平方根表面粗さの値は0.16nm~12nmであることが分かった。AFMの結果は、上に記載される4つのベーキング温度について
図7~10に示される。100℃又は120℃のベーキング温度については、膜は原子的に平滑化された。より高い温度でベーキングした膜では、粒成長が観察され、膜の表面粗さを生じた。
【0052】
実施例3.膜の暴露及びEUVコントラスト
この実施例は、調製された放射線感受性膜のコントラスト曲線の評価に関する。
【0053】
放射線感受性膜を有するコーティングされたウェーハのセットを上記のように調製した。Lawrence Berkeley National LaboratoryでEUV Direct Contrast Tool(13.5nm)において膜を暴露し、コントラストを査定した。暴露の前に、膜を80℃で60秒間ベーキングした。各ウェーハの選択された領域を、線量を増大させながら暴露した。特に、パッドのアレイは、アレイに沿って各パッドに送達されるEUV線量を段階付けするように調節された暴露時間を有した。暴露の後、80℃~150℃の間で選択された温度において種々のウェーハの膜をベーキング(暴露後ベーキング)してから、ベーキング後に、暴露されたウェーハを2-ヘプタノンで現像した。現像後のウェーハ上の暴露されたそれぞれのパッドの残存厚みを分光エリプソメトリにより査定した。測定された厚みを、測定された最大レジスト厚みに対して正規化し、暴露線量の対数に対してプロットして、一連の暴露後ベーキング温度における各レジストの特性曲線を作成した。
図8は、それぞれの暴露後ベーキング温度について得られたコントラスト曲線を示す。
【0054】
実施例4.EUV暴露によるネガ型画像形成
この実施例は、スズクラスター前駆体を用いて高解像度パターンを形成する能力を実証する。
【0055】
実施例2及び3に記載される5%ギ酸/アニソールのレジスト前駆体溶液を、自然酸化物表面を有するシリコン基板上に分配し、1500rpmで45秒間スピンコーティングし、次に100℃で120秒間、ホットプレート上でベーキングした。Berkeley Microfield Exposure Toolにおいて13.5nm波長の放射線、ダイポール照明、及び0.3の開口数を用いて、コーティングされた基板を暴露した。次に、暴露したレジスト及び基板に、170℃で120秒間、ホットプレート上で暴露後ベーキングを行った。暴露したウェーハを2-ヘプタノン中に15秒間浸漬させて、レジストの非暴露部分を除去し、次いで乾燥させた。
図9は、得られた36nmピッチのライン/スペースパターンのSEM画像を示す。したがって、クラスターベースのレジスト材料は、ナノメートルスケールのEUVパターン形成に適していることが実証された。
【0056】
上記の実施形態は、説明することを目的としており、本明細書を限定するものではない。追加の実施形態が請求項中にも存在する。加えて、特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当業者であればよく認識するであろうように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における変化形態がなされ得る。上に参照した文献の組み込みはいずれも限定されており、本明細書における明白な開示に反するいかなる主題も組み込まれない。特定の構造物、組成物及び/又はプロセスが、成分、素子、構成要素又は他のパーティションを用いて本明細書に記載される限り、そうではないと特に断らない限り、本明細書における開示は、特定の実施形態、特定の成分、素子、構成要素、他のパーティション、又はそれらの組合せを含む実施形態、及び説明において示唆してきたような主題の基本的な本質を変化させない追加の特徴を含む、そのような特定の成分、構成要素、他のパーティション、又はそれらの組合せから実質的になる実施形態を包含することが理解される。
アルキルアセチレンがフェニルアセチレンを含み、アルキルスズトリ(ジアルキルアミド)がt-ブチルスズトリ(ジメチルアミド)を含み、有機溶媒がヘキサンを含み、モノアルキルスズトリ(アルキルアセチリド)がt-ブチルスズトリ(フェニルアセチリド)を含む、請求項1に記載の方法。
コーティングを形成することが、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ナイフエッジコーティング、蒸着、または印刷アプローチを含む、請求項18または19に記載の方法。
上記の実施形態は、説明することを目的としており、本明細書を限定するものではない。追加の実施形態が請求項中にも存在する。加えて、特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当業者であればよく認識するであろうように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における変化形態がなされ得る。上に参照した文献の組み込みはいずれも限定されており、本明細書における明白な開示に反するいかなる主題も組み込まれない。特定の構造物、組成物及び/又はプロセスが、成分、素子、構成要素又は他のパーティションを用いて本明細書に記載される限り、そうではないと特に断らない限り、本明細書における開示は、特定の実施形態、特定の成分、素子、構成要素、他のパーティション、又はそれらの組合せを含む実施形態、及び説明において示唆してきたような主題の基本的な本質を変化させない追加の特徴を含む、そのような特定の成分、構成要素、他のパーティション、又はそれらの組合せから実質的になる実施形態を包含することが理解される。
なお、上述のような本発明は、以下の態様を包含していることを確認的に述べておく。
第1態様:
式R3Sn3(O2CR’)3+x(L)2-x(OH)2(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;Lは式ORa又はSRaを有する配位子であり、RaはH又は1~20個の炭素原子を有する有機基である;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル)によって表される分子クラスターを含む組成物。
第2態様:
前記組成物が結晶性である、第1態様に記載の組成物。
第3態様:
x=2である、第2態様に記載の組成物。
第4態様:
Rが分枝状アルキル基、シクロアルキル基又はこれらの混合物を含む、第1態様~第3態様のいずれか1つに記載の組成物。
第5態様:
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せである、第1態様~第3態様のいずれか1つに記載の組成物。
第6態様:
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、第1態様~第5態様のいずれか1つに記載の組成物。
第7態様:
第1態様~第6態様のいずれか1つに記載の組成物を合成するための方法であって、
有機溶媒中で、アルキルスズトリアルキルアセチリドと、カルボン酸及び水とを反応させることを含む方法。
第8態様:
有機溶媒と、式R3Sn3(O2CR’)5-x(L)2+x(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル;R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”はH、有機基又はこれらの組合せである)を有する溶媒和有機金属クラスターとを含む溶液。
第9態様:
前記有機溶媒がアルコール、エーテル、エステル又はこれらの混合物を含む、第8態様に記載の溶液。
第10態様:
前記有機溶媒がさらに約5v/v%~約25v/v%のカルボン酸を含む、第9態様に記載の溶液。
第11態様:
スズの量を基準として約1.9mM~約9.4mMのクラスター濃度を有する、第8態様~第10態様のいずれか1つに記載の溶液。
第12態様:
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せを含む、第8態様~第11態様のいずれか1つに記載の溶液。
第13態様:
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、第8態様~第12態様のいずれか1つに記載の溶液。
第14態様:
R”が-R0OHR1、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又はこれらの組合せを含む、第8態様~第13態様のいずれか1つに記載の溶液。
第15態様:
構造物をパターン化するための方法であって、
放射線感受性コーティングを有する基板をパターン化放射線に暴露して、潜像を有する暴露コーティングを形成するステップであって、前記放射線感受性コーティングが、式R3Sn3(O2CR’)3+x(L)2-x(OH)2(μ3-O)(ここで、0≦x≦2;R=1~31個の炭素原子を有する分枝状又はシクロアルキル、R’=H又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、及びLは式-OR”を有する配位子であり、R”は有機基である)によって表される分子クラスターを含む溶液の堆積によって形成された、ステップと
前記暴露コーティングを適切な現像剤で現像して、パターン化コーティングを形成する、ステップと
を含む方法。
第16態様:
前記放射線がEUV放射線である、第15態様に記載の方法。
第17態様:
Rがメチル、エチル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル若しくはt-ブチル基、t-アミル、ネオペンチル又はこれらの組合せを含む、第15態様又は第16態様に記載の方法。
第18態様:
R’がH、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの組合せを含み、LがOHである、第15態様~第17態様のいずれか1つに記載の方法。
第19態様:
R”が-R0OHR1、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又はこれらの組合せを含む、第15態様~第18態様のいずれか1つに記載の方法。
第20態様:
前記現像剤が、ネガ型パターンを形成するための有機溶媒を含む、第15態様~第19態様のいずれか1つに記載の方法。