IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.の特許一覧

特開2024-123003リソグラフィシステムを制御するための方法
<>
  • 特開-リソグラフィシステムを制御するための方法 図1
  • 特開-リソグラフィシステムを制御するための方法 図2
  • 特開-リソグラフィシステムを制御するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123003
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】リソグラフィシステムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 503
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024086499
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2021551802の分割
【原出願日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】19164206.5
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ノールドマン,オスカー,フランシスカス,ヨセフス
(72)【発明者】
【氏名】ケンペン,アントニウス,セオドロス,ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スホート,ジャン,ベルナルド,プレヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク,マリヌス,アールト
(57)【要約】
【課題】リソグラフィシステムを制御するための方法を提供する。
【解決手段】 リソグラフィシステムは放射源及びリソグラフィ装置を備える。放射源はリソグラフィ装置に放射を提供する。リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため放射を用いる。結像には所定の放射ドーズが必要である。システムは、所定のドーズの大きさに応じて放射のパワーのレベルを設定するように構成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムを制御する方法であって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記所定のドーズの大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定することを含む、方法。
【請求項2】
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記放射の前記パワーの前記レベルを設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録することと、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアで結像を行うことと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記放射源は、EUV放射を供給するように動作可能であり、レーザ生成プラズマタイプのものである、請求項1、2、3、又は4に記載の方法。
【請求項6】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムであって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記所定のドーズの大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定するように構成されている、リソグラフィシステム。
【請求項7】
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記放射の前記パワーの前記レベルを設定するよう構成されている、請求項6に記載のリソグラフィシステム。
【請求項8】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録し、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアで結像を行う、
ように構成されている、請求項7に記載のリソグラフィシステム。
【請求項9】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成されている、請求項7又は8に記載のリソグラフィシステム。
【請求項10】
前記放射源は、EUV放射を供給するように動作可能であり、レーザ生成プラズマタイプのものである、請求項6、7、8、又は9に記載のリソグラフィシステム。
【請求項11】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムで用いるために構成された制御ソフトウェアであって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記所定のドーズの大きさを表すデータを受信するように構成された第1の命令と、
前記所定のドーズの前記大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定するように構成された第2の命令と、
を含む、制御ソフトウェア。
【請求項12】
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記放射の前記パワーの前記レベルを設定するように構成された第3の命令を含む、請求項11に記載の制御ソフトウェア。
【請求項13】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録するように構成された第4の命令と、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像を制御するように構成された第5の命令と、
を含む、請求項12に記載の制御ソフトウェア。
【請求項14】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成された第6の命令を含む、請求項12又は13に記載の制御ソフトウェア。
【請求項15】
前記第6の命令は、前記数を発生させるように構成された数学モデルにアクセスするための第7の命令を含む、請求項14に記載の制御ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2019年3月21日に出願されたEP出願第19164206.5号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィシステムを制御するための方法に関する。また、本発明は、リソグラフィシステム、及びこのリソグラフィシステムで用いるために構成された制御ソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)でのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0005】
[0005] EUVリソグラフィシステムは、EUV放射を発生させるように構成された放射源と、リソグラフィ源からのEUV放射を受け取ると共に、このEUV放射を用いて、感光性レジストが提供された基板(すなわち半導体ウェーハ)上にパターンを結像するように構成されたリソグラフィ装置と、を備えている。放射源は典型的にはレーザ生成プラズマ(LPP:laser-produced-plasma)源であり、高パワーレーザが質量制限燃料ターゲットを1つずつプラズマに変換する。このプラズマがEUVを発生させる。従ってEUV放射は、例えば50kHz又は100kHzのようなレートのパルスシーケンスで提供される。リソグラフィ装置は例えばスキャナであり、放射ビームによって結像されるパターンを所与の方向にスキャンしながら、同時に、この方向に対して平行又は逆平行に基板をスキャンすることにより、基板上の各ターゲットエリアを照射することができる。一般に、リソグラフィ装置のスループット(すなわち1時間当たりの基板数)を増大させるため、基板上にパターンを結像するのに要する時間を最短に抑えることが望ましい。
【0006】
[0006] 基板の単位表面エリアに送出される放射エネルギ量は、ドーズと呼ばれる。ドーズの典型的な大きさは、例えば20mJ/cm~70mJ/cmの範囲内である。基板に送出される放射ドーズを正確に制御することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本発明の第1の態様に従って、放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムを制御する方法が提供される。放射源は、リソグラフィ装置に放射を提供するように構成されている。放射源は、例えばLPP源と呼ばれるタイプのものである。リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため放射を用いるように構成されている。結像には所定の放射ドーズが必要である。方法は、所定のドーズの大きさに応じて放射のパワーのレベルを設定することを含む。
【0008】
[0008] 今日まで、リソグラフィシステムの動作において、放射源では固定の時間平均エネルギレベルが用いられている。このエネルギレベルは、使用され得る全てのフォトレジストに適切であるよう選択される。言い換えると、平均エネルギレベルは、最も高い感度のフォトレジストにも適切であるように選択される。本発明者らは、実際にはその結果として、選択されるエネルギレベルがほとんどの適用例で必要であるよりも低いことを認識した。所望のドーズに応じて時間平均エネルギレベル(パワーレベル)を設定することにより、スループットを最大化するように放射源の動作パワーを最適化できることが分かっている。本発明の方法が有利である理由は、必要なドーズに応じて放射源の動作パワーを制御することにより、リソグラフィシステムのスループット、すなわち単位時間当たりに処理される基板の数を最適化できることである。以下で更に詳しく説明するように、ドーズは、放射源からの1パルス当たりの(時間平均)エネルギとスキャナのスキャン速度との比に比例する。スキャナのスループット(スキャナが1枚の基板を取り扱うために要する時間)は、スキャン速度の上昇と共に増大する。必要な大きさに等しいドーズを維持するためには、1パルス当たりのエネルギも増大させなければならない。しかしながら、エネルギの増大は、放射源によって生成されるエネルギの不安定さを招く恐れがあり、放射源がスキャン対象エリアに与えるエネルギが不充分になることがある。そのようなターゲットエリアでは、スキャナによる基板の第1のパス(pass)が必要なエネルギ量を送出しなかったので、スキャナによる基板の第2のパスで再露光を行う必要がある。そのような第2のパスは「ダイリペア(die-repair)」とも呼ばれる。このため、放射源の単位時間当たりのエネルギが大きくなればなるほど(すなわち、パワーが大きくなればなるほど)、概して不安定さの数も増加し、ダイリペアの数を増やした第2のパスの必要が生じる。従って、必要なドーズに応じて放射源のパワーを設定することにより、露光のための高いスキャン速度と設定パワーレベルの結果として必要となるダイリペアの数との間で、スキャナのスループットを最大限にするような最適条件を見出すことができる。
【0009】
[0009] 本発明の方法の一実施形態において、複数のターゲットエリアでの結像のための合計時間長は、半導体基板の第1のパスにおける複数のターゲットエリアでの結像のための第1の時間長と、半導体基板の第2のパスにおける複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像のための第2の時間長と、を含む。1つ以上の特定ターゲットエリアは、第1のパスで所定のドーズを受けなかったものである。方法は、合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように放射のパワーのレベルを設定することを含む。基板の第1のパスの間、基板の1つ以上のターゲットエリアが受ける実際の放射ドーズは所望のドーズ未満である可能性がある。これを、後の第2の露光パス(すなわち、いわゆるダイリペア又は再露光パス)によって補償することができる。リソグラフィシステムの総スループットは、最初の露光に要する時間と、後の第2の露光(すなわちダイリペアのため)に要する時間との和に依存する。本発明者らは、必要なドーズに応じて放射源の動作パワーを制御することによって、基板を完全に露光するために要する合計時間を最短に抑えられることを認識した。
【0010】
[00010] 一実施形態において、方法は更に、第1のパスの間、1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、基板上の各位置を表す情報と、所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録することと、第2のパスの間、記録された情報の制御のもとで複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアで結像を行うことと、を含む。
【0011】
[00011] 結像中に、ターゲットエリア1つ当たりの受け取るエネルギ量を適切なセンサによって記録し、1つ以上の特定ターゲットエリアのアイデンティティも記録する。当技術において既知のように、ターゲットエリアのアイデンティティは、いわゆるウェーハグリッドから導出される。ウェーハグリッドは、露光面内の基板のターゲットエリアの位置の座標を決定する。ウェーハグリッドは、基板に埋め込まれたアライメントマークによって決定される。投影光学系に対する基板の適正な位置合わせは、アライメントシステムによって実行される。例えば、基板上の多数のアライメントマークを測定して座標系を導出し、これをモデル化グリッドと比較して、基板上のフィーチャの位置を導出する。しかしながら、基板を基板テーブルにクランプすること、又は非リソグラフィプロセスステップで発生するウェーハ歪みによって、基板の歪みが生じる可能性がある。これは、測定値とグリッドを比較することにより監視できる。ウェーハグリッドを記述するモデルを生成し、歪みを補償するように基板を露光する際に用いることができる。例えば、Menchtchikov等に発行され、ASML社に譲渡され、援用により本願に含まれる米国特許第9,310,698号を参照のこと。
【0012】
[00012] この文脈で用いられる場合、第1の時間期間と第2の時間期間の和を最小限に抑えるとは、真の最小値であるか又は真の最小値に近い(例えば、その10%以内、好ましくは2%以内、特に好ましくは1%以内)第1の時間期間と第2の時間期間の和の達成を意味することが意図されることは認められよう。
【0013】
[00013] 所望のドーズが大きい場合は、設定エネルギレベルを実質的に増大させることで、より小さいドーズが望ましい場合(設定エネルギレベルも実質的に低い可能性がある)よりも放射源の公称動作パワーは最大パワーに近付き得る。上述のように、EUV LPP源では、ドーズは一連のパルスによって送出され得る。より大きい総ドーズが望ましい場合は、より小さいドーズが望ましい場合よりも多数のパルスを基板上のターゲットエリアへ送出することができる。ターゲットエリアへ送出されるパルス数を用いて、エネルギレベルを決定できる。例えば、ルックアップテーブル又は別の数学モデルを用いて、パルス数を特定のエネルギレベルに変換できる。
【0014】
[00014] 本発明の方法の別の実施形態は、パワーのレベル及び必要なドーズの大きさに応じて特定ターゲットエリアの数を事前に推定することを含む。これは数学モデルによって実施することができ、例えば、ルックアップテーブル又はアルゴリズムが、設定された放射源パワーに応じて所与のドーズに対して第2のパスの再露光を必要とするターゲットエリアの数を予測するか、又は他の方法で決定もしくは推定する。このようなモデル又はルックアップテーブルは、設定される様々な制御エネルギレベルに対して放射源が送出するパワーの不安定性を監視することによって事前に準備するか、又はシミュレーションから導出することができる。
【0015】
[00015] また、本発明は、放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムに関する。放射源は、リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、例えばEUV LPPタイプのものである。リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため放射を用いるように構成されている。結像には所定の放射ドーズが必要である。システムは、所定のドーズの大きさに応じて放射のパワーのレベルを設定するように構成されている。
【0016】
[00016] リソグラフィシステムの一実施形態において、複数のターゲットエリアでの結像のための合計時間長は、半導体基板の第1のパスにおける複数のターゲットエリアでの結像のための第1の時間長と、半導体基板の第2のパスにおける複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像のための第2の時間長と、を含む。1つ以上の特定ターゲットエリアは、第1のパスで所定のドーズを受けなかったものである。リソグラフィシステムは、合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように放射のパワーのレベルを設定するよう構成されている。
【0017】
[00017] 別の実施形態において、リソグラフィシステムは、第1のパスの間、1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、半導体基板における各位置を表す情報と、所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録し、第2のパスの間、記録された情報の制御のもとで複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像を制御するように構成されている。
【0018】
[00018] 別の実施形態において、リソグラフィシステムは、パワーのレベル及び必要なドーズの大きさに応じて特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成されている。
【0019】
[00019] 別の実施形態において、放射源は、EUV放射を供給するように動作可能であり、レーザ生成プラズマタイプのものである。
【0020】
[00020] 本発明は更に、放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムで用いるために構成された制御ソフトウェアに関する。制御ソフトウェアは、データキャリア又は別の機械可読媒体上に提供できる。あるいは、制御ソフトウェアは、例えばリソグラフィシステムにダウンロードするためデータネットワークを介して提供できる。放射源は、リソグラフィ装置に放射を提供するように構成されている。リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため放射を用いるように構成されている。結像には所定の放射ドーズが必要である。制御ソフトウェアは、所定のドーズの大きさを表すデータを受信するように構成された第1の命令と、所定のドーズの大きさに応じて放射のパワーのレベルを設定するように構成された第2の命令と、を含む。
【0021】
[00021] 制御ソフトウェアの一実施形態において、複数のターゲットエリアでの結像のための合計時間長は、半導体基板の第1のパスにおける複数のターゲットエリアでの結像のための第1の時間長と、半導体基板の第2のパスにおける複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像のための第2の時間長と、を含む。1つ以上の特定ターゲットエリアは、第1のパスで所定のドーズを受けなかったものである。制御ソフトウェアは、合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように放射のパワーのレベルを設定するよう構成された第3の命令を含む。
【0022】
[00022] 一実施形態において、制御ソフトウェアは、第1のパスの間、1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、半導体基板における各位置を表す情報と、所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録するように構成された第4の命令と、第2のパスの間、記録された情報の制御のもとで複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像を制御するように構成された第5の命令と、を含む。
【0023】
[00023] 別の実施形態は、パワーのレベル及び必要なドーズの大きさに応じて特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成された第6の命令を含む。第6の命令は、この数を発生させるように構成された、例えばアルゴリズム又はルックアップテーブルのような数学モデルにアクセスするための第7の命令を含む。
【0024】
[00024] 典型的なドーズ(例えば40mJ/cm)の利点は、EUV放射源が、20mJ/cmに対するパワーレベルよりも約5%高いパワーで動作することができ、最大で0.5%の再露光となり得ることである。この結果、40mJ/cmのドーズで約3.5%の1時間当たりの基板スループットの増大が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
[00025] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0026】
図1】リソグラフィ装置と放射源とを備えるリソグラフィシステムを概略的に示す。
図2】あるドーズが与えられた場合、ダイリペアを含めて基板を露光するために必要な合計時間を放射源パワーの関数として示す図である。
図3】2つのドーズレベルについて、1枚の基板当たりのダイリペアの推定数を放射源パワーの関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[00026] 図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えるリソグラフィシステムを示す。放射源SOは、EUV放射ビームBを発生させるように、及び、EUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように、構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備える。
【0028】
[00027] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMA上に入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。それに加えて、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、所望の断面形状及び所望の強度分布を伴うEUV放射ビームBを提供する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、又はそれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むことができる。
【0029】
[00028] このように調節した後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付与されたEUV放射ビームB’が発生する。投影システムPSは、パターン付与されたEUV放射ビームB’を基板Wに投影するよう構成されている。この目的のため、投影システムPSは複数のミラー13、14を備えることができ、これらは、パターン付与された放射ビームB’を基板テーブルWTで保持された基板Wに投影するよう構成されている。投影システムPSは、パターン付与された放射ビームB’に縮小率を適用することで、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成できる。例えば、縮小率4又は8を適用することができる。図1では、投影システムPSは2つのミラー13、14のみを有するものとして図示されているが、投影システムPSは異なる数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を含むことができる。
【0030】
[00029] 基板Wは、以前に形成されたパターンを含むことがある。これが当てはまる場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付与されたEUV放射ビームB’を、基板W上に以前に形成されたパターンと位置合わせする。
【0031】
[00030] 放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に、相対真空(relative vacuum)、すなわち大気圧よりも充分に低い圧力の少量のガス(例えば水素)を提供してもよい。
【0032】
[00031] 図1に示されている放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ぶことがあるタイプである。例えばCO2レーザを含み得るレーザシステム1は、レーザビーム2を介して、例えば燃料放出器3から与えられるスズ(Sn)のような燃料の質量制限ターゲット(例えば小滴)にエネルギを堆積するよう配置されている。以下の記載ではスズに言及するが、任意の適切な燃料を使用すればよい。燃料は、例えば液体の形態とすることや、例えば金属又は合金とすることが可能である。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4へ向かう軌道に沿って誘導するよう構成されたノズルを備えることができる。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4においてスズに入射する。レーザエネルギのスズへの堆積は、プラズマ形成領域4においてスズプラズマ7を生成する。プラズマイオンによる電子の脱励起及び再結合の間に、プラズマ7からEUV放射を含む放射が放出される。
【0033】
[00032] プラズマからのEUV放射は、コレクタ5によって収集され集束される。コレクタ5は、例えば近法線入射放射コレクタ5を含む(より一般的に法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)。コレクタ5は、EUV放射(例えば、13.5nm等の所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置された多層ミラー構造を有し得る。コレクタ5は、2つの焦点を有する楕円構成を有し得る。焦点のうち第1のものはプラズマ形成領域4にあり、焦点のうち第2のものは中間焦点6にあり得る。これについては以下で検討する。
【0034】
[00033] レーザシステム1は、放射源SOから空間的に分離してもよい。これが当てはまる場合、レーザビーム2は、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダ及び/又は他の光学系を含むビームデリバリシステム(図示せず)によって、レーザシステム1から放射源SOへ渡すことができる。レーザシステム1、放射源SO、及びビームデリバリシステムは、共に放射システムと見なすことができる。
【0035】
[00034] コレクタ5によって反射された放射は、EUV放射ビームBを形成する。EUV放射ビームBは、中間焦点6で集束されて、プラズマ形成領域4に存在するプラズマの中間焦点6での像を形成する。中間焦点6の像は、照明システムILの仮想放射源として作用する。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの閉鎖構造9の開口8に又は開口8の近くに位置付けられるように配置されている。
【0036】
[00035] 図1は放射源SOをレーザ生成プラズマ(LPP)源として図示しているが、放電生成プラズマ(DPP:discharge produced plasma)源又は自由電子レーザ(FEL:free electron laser)等のいずれかの適切な放射源を用いてEUV放射を発生させればよい。
【0037】
[00036] 上述のように、質量制限燃料ターゲット(「小滴」)は次々とプラズマに変換される。このプロセスは、例えば50kHz又は100kHzの周波数で実行され得る。従ってEUV放射ビームBは、時系列で発生する離散的なEUVパルスから成る。ここで、いわゆるスキャンモードで用いられるリソグラフィ装置LAについて検討する。スキャンモードでは、マスクMA及び基板Wを同期的にスキャンしながら、放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲットエリアに投影する。マスクMAに対する基板Wの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。リソグラフィ装置LAによって基板Wの表面上の単位表面エリアに送出される合計放射エネルギ量は「ドーズ」と呼ばれる。所望のドーズは、基板Wの表面上のフォトレジスト層の変化又は硬化を達成するためのものである。所望のドーズは、フォトレジストの感度に応じて変動し得る。例えば、感度が高いフォトレジストの場合、基板Wにパターンを結像するために比較的小さいドーズ(例えば20mJ/cm)が望ましいことがある。しかしながら、感度が低いフォトレジストの場合は、より大きいドーズ(例えば70mJ/cm)が望ましいことがある。
【0038】
[00037] 基板Wのターゲットエリアが所望のドーズとは異なるドーズを受け取った場合、これはドーズエラーと呼ばれる。具体的には、ドーズエラーは、ターゲットエリアが受け取った実際のドーズと所望のドーズとの差である。ドーズエラーは、「正」である(すなわち、ターゲットエリアが所望のドーズよりも大きいドーズを受け取った場合)か、又は「負」である(すなわち、ターゲットエリアが所望のドーズよりも小さいドーズを受け取った場合)可能性がある。いかなるドーズエラーも、感光性レジストに何らかのプリントエラーを発生させる。負のドーズエラーは、以前の不足分を補償するため追加のドーズを与えることによって補正できる。しかしながら、正のドーズエラーでは、過度のドーズ(例えば過剰露光(overexposure)を引き起こす)がすでに与えられた後であり、フォトレジストの変化は一般に不可逆的であるので、これを補正することは不可能である場合がある。この結果、基板Wに取り返しのつかない損傷を与える恐れがある。
【0039】
[00038] 製造公差に従って、あるレベルの正のドーズエラーは許容可能と見なせることは認められよう。例えば、要件に応じて、最大1%、特に最大0.5%の正のドーズエラーは許容可能と見なされ得る。本明細書で言及される場合、過度のドーズとは、許容可能な公差レベルから外れているドーズを意味する。
【0040】
[00039] 前述した通り、露光対象のターゲットエリアのスキャン中に、放射ビームはパルス状のEUV放射エネルギをターゲットエリアへ送出する。すなわち、ターゲットエリアの単位表面エリアが受け取るエネルギすなわちドーズは、スキャンされている単位表面エリアに入射する各パルスのエネルギの和に等しい。基板Wのターゲットエリアに送出されるパルスの数は、とりわけ、放射源SOの動作パワー及びスキャン速度に依存する。スキャン速度の役割に関して、EUV放射はスリットを介して基板Wに到達し、このスリットの下方で基板を移動させることを注記しておく。基板Wは複数のターゲットエリアを含み、各ターゲットエリアは長さ「l」と幅「w」を有する。ターゲットエリア(又は「ダイ」)の露光中、基板Wは、相対速度「v」で、ターゲットエリアの長さ「l」に対して平行な方向に移動している。ターゲットエリアの露光に要する時間Tscanはl/vに等しい。放射源SOが毎秒Nパルスのレートでエネルギを送出する場合、エリアl・wが受け取るパルス数は、N・Tscan=N・(l/v)に等しい。もしも各パルスが一定のエネルギEを有するならば、エリアl・wが受け取るエネルギはN・(l/v)・Eとなる。パラメータ「ドーズ」は単位エリア当たりの受け取られるエネルギとして定義されるので、送出されるドーズはN・(l/v)・E/(w・l)=N・E/(v・w)となる。従ってドーズは、パルスレート、パルス当たりのエネルギ、及びスキャン速度のうち少なくとも1つを制御することによって調整できる。所与のドーズレベルは、比E/vによって求められる。スキャン速度を最大にするため、従って所与のドーズレベルに対するリソグラフィ装置のスループットを最大にするため、比を一定に保つようにパルス当たりのエネルギを最大化する必要がある。
【0041】
[00040] 実際には、EUVパルスのエネルギはパルスごとに変わる可能性がある。その原因は、燃料小滴のサイズ又は速度の変動やレーザパルスタイミングの変動等であり得る。従って、各EUVパルスのエネルギが追跡される。この目的のため、1パルス当たりに発生するEUVを検知するよう構成された1つ以上のEUVセンサを閉鎖構造9内に収容することができる。これ以上の背景については、例えば、Pate等に発行され、ASML社に譲渡され、援用により本願に含まれる米国特許第9,360,600号を参照されたい。放射源SOの動作では、いわゆるドーズマージン(dose margin)が、特定の時間長で平均したEUVエネルギレベル(制御エネルギ(controlled energy)又はパワーとも呼ぶ)を、放射源の最大出力パワー未満に制御可能に設定する(開ループエネルギとも呼ぶ)。非ゼロのドーズマージンは、例えば1つ以上のパルス長を調整することによって、又は、次の燃料小滴のうち1つ以上で発火する(fire)1つ以上のレーザパルスのエネルギを調整することによって、EUVエネルギの一時的な低下を補償することを可能とする。ドーズ制御のこれ以上の情報については、例えば、Ershovに発行されてASML社に譲渡された米国特許第9,693,440号、及び、Schafgans等に発行されてASML社に譲渡された米国特許第8,872,122号を参照されたい。これらは双方とも援用により本願に含まれる。また、Everts等に発行され、ASML社に譲渡され、援用により本願に含まれる米国特許出願公報第20180253014号も参照されたい。更に、Partlo等に発行され、ASML社の子会社であるCymer社に譲渡され、援用により本願に含まれる、米国特許第8,653,437号及び米国特許第9,390,827号も参照されたい。
【0042】
[00041] 過剰な数の連続EUVパルスが過度に低いエネルギを基板の露光ターゲットエリアに送出する場合、ターゲットエリアに送出される最終的なドーズが小さすぎる可能性がある。このようなドーズ低下とこれに関連するターゲットエリアが記録される。次いで、それらのエリアのドーズを補正するため、この情報を用いて、基板の第2のパスでそのようなエリアを露光する。
【0043】
[00042] 所与の動作パワーでは、感度の高いフォトレジストは、感度の低いフォトレジストよりも、基板Wにパターンを結像する所望のドーズを達成するために受け取るパルス数が少ない可能性がある。実際には、パルス放射源SOの出力は時間と共に変動する。個々のパルスのエネルギが各パルスの公称出力エネルギ又は望ましい出力エネルギよりも高いか又は低い場合、これはドーズエラーの一因となる。ターゲットエリアが受け取るパルス数が少なければ少ないほど、そのような個々のパルスエネルギエラーが合計ドーズに与える効果は大きくなる。
【0044】
[00043] ドーズマージンが小さくなり、従って放射源SOの動作が最大パワーに近付く場合、スキャン速度を増大させると、単一の基板を露光する時間を短縮することができる。しかしながら、放射源SOの動作を最大パワーに近付けると、基板Wの特定のターゲットエリアを第2のパスで再露光しなければならない可能性も増大する。その理由は、先行するEUVパルスによってターゲットエリアへ送出されるEUVエネルギが低下した場合、後にそのターゲットエリアに入射する限られた数のEUVパルスにおいて、EUVエネルギ低下を補償するために充分なエネルギが常に利用可能とは限らないからである。従って、基板Wの露光を成功裏に完了させるのに要する合計時間Ttotalは、第1のパスでの基板Wの露光に必要な露光時間Texposeと、1又は複数の足りないドーズを送出するため基板Wの第2のパスでの再露光の実行に必要な再露光時間Tre-exposeとを加えたものである。
【0045】
[00044] 必要なドーズが与えられる場合、双方のパラメータTexpose及びTre-exposeは、スキャン速度v及びドーズマージンに依存する(言い換えると、設定される制御エネルギのレベルに依存する)。パラメータTexposeは、制御エネルギに対して単調に低下する関数であり、パラメータTre-exposeは、制御エネルギに対して非線形な単調に増加する関数であることが分かっている。従って、制御エネルギの関数として、すなわち、導関数[δTexpose/δ制御エネルギ]及び[δTre-expose/δ制御エネルギ]の和がゼロに等しい制御エネルギのレベルに対して、合計時間Ttotalの最小の大きさが存在する。必要なドーズN・E/(v・w)が与えられる場合、制御エネルギをそのレベルに又はほぼそのレベルに設定すると、概して、基板W当たりのスループット時間は最短に抑えられる。このため、制御エネルギの変化と共にウェーハ1枚当たりの再露光の数がどのように変化するかに関する情報を有する必要がある。これは例えば、放射源の挙動のプロファイルを取得できるように、制御エネルギの様々なレベルに対する放射源SOの出力を監視することによって、決定されモデル化されている。上記のことが図2及び図3の図に示されている。
【0046】
[00045] 図2の図は、不安定さが存在しない場合の、所与のドーズに対して基板Wの露光に必要な時間を示す曲線Texposeを放射パワーの関数として示す。パワー増大と共に放射源パワーの不安定さが増すにつれて、ダイリペアの数も増加する。曲線Tre-exposeは、基板Wの再露光に必要な時間を放射源パワーの関数として示す。曲線Ttotalは、露光に必要な時間と再露光に必要な時間の和を放射源パワーの関数として示す。
【0047】
[00046] 図3の図は、2つの異なるドーズレベル、すなわち20mJ/cm及び70mJ/cmについて、基板(ウェーハ)1枚当たりの必要なダイリペアの推定数を放射源パワーの関数として示す。
【0048】
[00047] 要約すると、スキャン速度vを増大させた場合、スループットを増大させることができる。しかしながら、所与のドーズでは、すなわちE/vの所与の比では、この比を一定に保つために平均エネルギEも増大させなければならない。平均エネルギEを増大させること、すなわちドーズマージンを低減させることは、不安定性さの増大を引き起こし、これによって必要なダイリペアが増加する、すなわち、必要な再露光のための基板の第2のパスが長くなる。本発明者らは、合計時間Ttotalが短い範囲内でエネルギレベルEを設定することを提案する。このエネルギEによって、必要なドーズE/vの所与の大きさに対するスキャン速度vを決定する。第2のパスでは、第1のパスで不完全なドーズを受け取ったターゲットエリアへ、足りないドーズが供給される。足りないドーズは、Eの変化、vの変化、又はこれら双方によって制御され得る。例えば、上記で言及した米国特許第8,653,437号、及び米国特許第9,390,827号を参照のこと。
【0049】
[00048] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0050】
[00049] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0051】
[00050] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムを制御する方法であって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記方法は、前記所定のドーズの大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定することを含み、
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記第1のパス及び前記第2のパスにおいて前記放射源の前記放射の前記パワーの前記レベルを設定することを含む、方法。
【請求項2】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録することと、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアで結像を行うことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射源は、EUV放射を供給するように動作可能であり、レーザ生成プラズマタイプのものである、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムであって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記システムは、前記所定のドーズの大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定するように構成され、
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記第1のパス及び前記第2のパスにおいて前記放射源の前記放射の前記パワーの前記レベルを設定するよう構成されている、リソグラフィシステム。
【請求項6】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録し、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアで結像を行う、
ように構成されている、請求項5に記載のリソグラフィシステム。
【請求項7】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成されている、請求項5又は6に記載のリソグラフィシステム。
【請求項8】
前記放射源は、EUV放射を供給するように動作可能であり、レーザ生成プラズマタイプのものである、請求項5、6、又は7に記載のリソグラフィシステム。
【請求項9】
放射源とリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムで用いるために構成された制御ソフトウェアであって、
前記放射源は、前記リソグラフィ装置に放射を提供するように構成され、
前記リソグラフィ装置は、半導体基板上のフォトレジスト層の複数のターゲットエリアにパターンを結像するため前記放射を用いるように構成され、
前記結像には所定の放射ドーズが必要であり、
前記制御ソフトウェアは、
前記所定のドーズの大きさを表すデータを受信するように構成された第1の命令と、
前記所定のドーズの前記大きさに応じて前記放射のパワーのレベルを設定するように構成された第2の命令と、を含み、
前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための合計時間長は、
前記半導体基板の第1のパスにおける前記複数のターゲットエリアでの前記結像のための第1の時間長と、
前記半導体基板の第2のパスにおける前記複数のターゲットエリアのうち1つ以上の特定ターゲットエリアでの前記結像のための第2の時間長と、を含み、前記1つ以上の特定ターゲットエリアは前記第1のパスで前記所定のドーズを受けなかったものであり、
前記制御ソフトウェアは、
前記合計時間長を実質的に最小値に保つか又は最小値の近くに保つように前記第1のパス及び前記第2のパスにおいて前記放射源の前記放射の前記パワーの前記レベルを設定するように構成された第3の命令を含む、制御ソフトウェア。
【請求項10】
前記第1のパスの間、前記1つ以上の特定ターゲットエリアのそれぞれについて、前記半導体基板における各位置を表す情報と、前記所定のドーズ及び実際に受け取ったドーズの間の差と、を記録するように構成された第4の命令と、
前記第2のパスの間、前記記録された情報の制御のもとで前記複数のターゲットエリアのうち前記1つ以上の特定ターゲットエリアでの結像を制御するように構成された第5の命令と、
を含む、請求項9に記載の制御ソフトウェア。
【請求項11】
前記パワーの前記レベル及び前記必要なドーズの前記大きさに応じて前記特定ターゲットエリアの数を事前に推定するように構成された第6の命令を含む、請求項9又は10に記載の制御ソフトウェア。
【請求項12】
前記第6の命令は、前記数を発生させるように構成された数学モデルにアクセスするための第7の命令を含む、請求項11に記載の制御ソフトウェア。
【外国語明細書】