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特開2024-123353無線通信システム、制御装置、無線通信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123353
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】無線通信システム、制御装置、無線通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20240905BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240905BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240905BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20240905BHJP
【FI】
H04W16/28
H04B7/06 956
H04B7/08 804
H04W24/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030688
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕史
(72)【発明者】
【氏名】山本 高至
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD45
5K067HH22
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】無線通信装置の周囲の見通し環境と見通し外環境の双方に基づいて、無線通信の品質を改善する。
【解決手段】第1無線通信装置は、ビームを形成して第2無線通信装置と無線通信する無線通信部と、ビームを制御するビーム制御部と、自装置の周囲を収音した音情報を取得する取得部とを備える。第2無線通信装置は、ビーム制御部の制御により無線通信部が複数種類のビームそれぞれにより送信した参照信号を受信し、受信した参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する。第1無線通信装置又は制御装置は、伝送情報及び音情報を用いて第1無線通信装置と第2無線通信装置との間の伝搬環境や将来の通信品質、第2無線通信装置の在圏確率を推定又は予測する推定予測部と、推定又は予測の結果に基づいて第1無線通信装置と第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置とを有する無線通信システムであって、
前記第1無線通信装置は、
ビームを形成して前記第2無線通信装置と無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部が形成するビームを制御するビーム制御部と、
自装置の周囲を収音した音情報を取得する取得部と、
を備え、
前記第2無線通信装置は、
前記ビーム制御部の制御により前記無線通信部が複数種類のビームそれぞれにより送信した参照信号を受信し、受信した前記参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する通知部を備え、
前記第1無線通信装置又は前記第1無線通信装置と接続される制御装置は、
前記通知部から通知された前記伝送情報と前記取得部が取得した前記音情報とを用いて前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測部と、
前記推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御部とを備える、
無線通信システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置が形成するビーム、前記第1無線通信装置のスリープ、前記第1無線通信装置におけるビームサーチ範囲、又は、前記第2無線通信装置が接続する前記第1無線通信装置の切り替えを指示する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記伝送情報は、前記参照信号を伝送した無線の受信電力、通信品質、通信距離及び伝送路情報のうち一以上と、前記参照信号の受信タイミング及び前記参照信号の伝送に用いられた前記ビームの識別情報のうち一以上とを含む、
請求項1又は請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記伝搬環境は、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間における無線信号の遮蔽又は反射を含む、
請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置と、前記第1無線通信装置を制御する制御装置とを有する無線通信システムにおける前記制御装置であって、
複数種類のビームそれぞれにより前記第1無線通信装置から送信された参照信号を前記第2無線通信装置が受信した際の無線伝送に関する情報を示す伝送情報と前記第1無線通信装置の周囲を収音した音情報とを取得し、取得した前記伝送情報及び前記音情報を用いて前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測部と、
前記推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項6】
1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置とを有する無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記第1無線通信装置が、
複数種類のビームそれぞれにより無線の参照信号を送信する送信ステップと、
自装置の周囲を収音した音情報を取得する取得ステップと、
前記第2無線通信装置が、
複数種類のビームそれぞれにより前記第1無線通信装置から送信された参照信号を受信し、受信した前記参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する通知ステップと、
前記第1無線通信装置又は前記第1無線通信装置と接続される制御装置が、
前記通知ステップにおいて通知された前記伝送情報と前記取得ステップにおいて取得された前記音情報とを用いて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測ステップと、
前記第1無線通信装置又は前記制御装置が、前記推定予測ステップにおける推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項7】
コンピュータを、
請求項5の制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、制御装置、無線通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第5世代移動通信システム)等のシステムにおいては、ミリ波帯の高周波数帯が使用されている。加えて、6G(第6世代移動通信システム)等の将来の無線通信システムにおいて更なる高速・大容量化を実現していくために、より広い帯域幅を確保可能な更なる高周波数帯の使用が想定されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、高周波数帯は、伝搬損失が大きい上に、直進性が高くて透過性も低い。そのため、高周波数帯は、遮蔽による通信品質の劣化の影響が顕著である(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
通信品質の劣化の回避には、通信品質の変動を検知して無線局切替制御を行う手段の利用が一般的である。加えて、カメラを用いた予測に基づき通信品質劣化前に無線局切替制御を行うことが提案されている(例えば、非特許文献3参照)。この技術によれば、見通し通信路が遮蔽されることによる通信品質の低下を回避できる可能性が示されている。また、外部センシング機器を用いずにビームスイープを用いた通信電波センシングも提案されており(例えば、非特許文献4参照)、無線通信装置のサイズやコストの増加を抑えつつ、効率的に通信品質の改善を図ることができる可能性が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"White Paper 5G Evolution and 6G", NTT DOCOMO, INC., Version 4.0, January 2022
【非特許文献2】3GPP TR38.901 V16.0.0: "Study on channel model for frequencies from 0.5 to 100 GHz (Release 16)," Oct. 2019.
【非特許文献3】Y. Koda, K. Nakashima, K. Yamamoto, T. Nishio, and M. Morikura, "Handover Management for mmWave Networks With Proactive Performance Prediction Using Camera Images and Deep Reinforcement Learning," IEEE Transactions on Cognitive Communications and Networking, vol. 6, no. 2, June 2020.
【非特許文献4】米村樹他,"ミリ波通信におけるビームペアスキャンを用いた遮蔽予測",2022年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,B-15-3,2022年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信品質の変動を検知して無線局切替制御を行う場合、変動検知後から制御を完了するまでに一時的な通信品質の劣化を避けることができない。また、ビームスイープ時に取得可能な受信電力等の情報や、カメラによるセンシングでは見通し外の状況把握が困難である。従って、無線通信装置の見通し外の状況に基づく制御の実現は難しい。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、無線通信装置の周囲の見通し環境と見通し外環境の双方に基づいて、無線通信の品質を改善することができる無線通信システム、制御装置、無線通信方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置とを有する無線通信システムであって、前記第1無線通信装置は、ビームを形成して前記第2無線通信装置と無線通信する無線通信部と、前記無線通信部が形成するビームを制御するビーム制御部と、自装置の周囲を収音した音情報を取得する取得部と、を備え、前記第2無線通信装置は、前記ビーム制御部の制御により前記無線通信部が複数種類のビームそれぞれにより送信した参照信号を受信し、受信した前記参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する通知部を備え、前記第1無線通信装置又は前記第1無線通信装置と接続される制御装置は、前記通知部から通知された前記伝送情報と前記取得部が取得した前記音情報とを用いて前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測部と、前記推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御部とを備える、無線通信システムである。
【0008】
本発明の一態様は、1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置と、前記第1無線通信装置を制御する制御装置とを有する無線通信システムにおける前記制御装置であって、複数種類のビームそれぞれにより前記第1無線通信装置から送信された参照信号を前記第2無線通信装置が受信した際の無線伝送に関する情報を示す伝送情報と前記第1無線通信装置の周囲を収音した音情報とを取得し、取得した前記伝送情報及び前記音情報を用いて前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測部と、前記推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御部と、を備える制御装置である。
【0009】
本発明の一態様は、1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置とを有する無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記第1無線通信装置が、複数種類のビームそれぞれにより無線の参照信号を送信する送信ステップと、自装置の周囲を収音した音情報を取得する取得ステップと、前記第2無線通信装置が、複数種類のビームそれぞれにより前記第1無線通信装置から送信された参照信号を受信し、受信した前記参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する通知ステップと、前記第1無線通信装置又は前記第1無線通信装置と接続される制御装置が、前記通知ステップにおいて通知された前記伝送情報と前記取得ステップにおいて取得された前記音情報とを用いて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の伝搬環境、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する推定予測ステップと、前記第1無線通信装置又は前記制御装置が、前記推定予測ステップにおける推定又は予測の結果に基づいて、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置との間の無線通信を制御する制御ステップと、を有する無線通信方法である。
【0010】
本発明の一態様は、コンピュータを、上述の制御装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、無線通信装置の周囲の見通し環境と見通し外環境の双方に基づいて、無線通信の品質の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による無線通信システムの構成を示す図である。
図2】同実施形態による無線通信装置及び制御装置の機能ブロック図である。
図3】同実施形態による無線通信装置及び制御装置の無線制御を示すフロー図である。
図4】同実施形態による無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図5】同実施形態による制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態では、無線通信装置がビームスイープを行うことにより得られた各ビームにおける受信電力、通信品質、通信距離、受信タイミング、伝搬路情報(CSI:channel state information)等の伝送情報と、無線通信装置が取得した周囲の音の情報とを組み合わせて用い、無線通信装置と通信する対向無線通信装置の将来のエリア内在圏有無や通信品質、伝搬遮蔽、反射環境等の少なくとも一部を推定又は予測し、推定結果又は予測結果を通信品質改善のための制御に活用する。
【0014】
ミリ波などの高周波数帯無線通信システムでは、電波の直進性が強いため、遮蔽の影響を受けやすい。そこで、センシングにより環境を把握して制御を行うことが考えられる。しかしながら、高周波の通信電波や、カメラ、LiDAR(light detection and ranging)などによるセンシングでは、見通し外の把握が困難であり、見通し外の状況に基づく制御の実現が難しい。本実施形態の無線通信システムは、見通し環境のセンシング性能が高い高周波の通信電波等に基づくセンシングと、見通し外の環境把握が可能な音情報に基づくセンシングとを組み合わせて相補的にセンシング性能を向上させ、遮蔽・反射環境や対向無線通信装置の存在についての予測・推定を行う。本実施形態の無線通信システムは、この予測・推定結果に基づいて、無線通信装置のスリープ制御や切り替え制御(ハンドオーバ制御)等の制御を行う。これにより、本実施形態の無線通信システムは、見通し環境と見通し外環境の両方の状況把握に基づく制御が可能となり、無線通信装置のスリープ制御による低消費電力化やハンドオーバ制御の効率化による通信品質向上が期待できる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による無線通信システム1の構成例を示す図である。無線通信システム1は、対向無線通信装置2と、無線通信装置3と、制御装置4とを備える。図1では、1台の対向無線通信装置2と、2台の無線通信装置3とを示しているが、対向無線通信装置2及び無線通信装置3の台数は任意である。対向無線通信装置2と無線通信装置3とは無線により通信する。対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信は、固定遮蔽物5や変動遮蔽物6による遮蔽や反射によって影響を受ける。また、無線通信装置3は、制御装置4と接続される。
【0016】
無線通信装置3は、複数アンテナ素子の位相と振幅との一方又は両方を制御することによりビームフォーミングを行う機能を有する。さらに、無線通信装置3は、ビームフォーミングによって形成するビームを変化させながら掃引するビームスイープを行う機能を有する。無線通信装置3は、ビームスイープ時に各種類のビームにより無線伝送を行った場合の伝送情報を対向無線通信装置2から受信する機能を有する。伝送情報は、各ビームの受信信号強度、信号対雑音電力比、通信距離、伝搬路情報等のうち一以上を含む。さらに、伝送情報は、その受信信号強度、信号対雑音電力比、通信距離又は伝搬路情報が得られたビームの受信タイミングと、ビームのインデックスなどビームを特定する情報との一方又は両方を含む。受信信号強度及び信号対雑音電力比は、通信品質の情報の例である。受信タイミングは、対向無線通信装置2における受信時刻で表されてもよい。ビームスイープにおける各ビームの送信の順序及び時間が予め決められている場合、受信タイミングは受信の順序で表されてもよい。受信タイミングは、無線通信装置3が形成したビームを特定する情報として使用することも可能である。無線通信装置3は、対向無線通信装置2と通信を行う機能に加え、マイク等の音情報を収集可能な機構を有する。無線通信装置3が備えるマイクは一つでも複数でもよく、マイクアレーのような構成でもよい。
【0017】
制御装置4は、対向無線通信装置2からフィードバックされた各種類のビームの伝送情報と、マイク等を用いて収集した音情報とを、無線通信装置3から受信する。制御装置4は、取得したこれら伝送情報及び音情報を用いて、固定遮蔽物5や変動遮蔽物6による遮蔽や反射といった対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の伝搬環境や、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信の将来の通信品質、対向無線通信装置2が将来無線通信装置3の通信エリア内に在圏する確率であるエリア内在圏確率を推定又は予測する機能を有する。エリア内在圏確率は、対向無線通信装置2が将来無線通信装置3の通信エリア内に在圏するか否かのエリア内在圏有無を含む。制御装置4は、この推定又は予測に推定モデルを使用してもよい。推定モデルは、伝送情報に含まれる1以上の情報及び音情報と、推定又は予測される伝搬環境、将来の通信品質、将来のエリア内在圏確率との対応を表す。推定モデルには、機械学習を用いてもよく、線形予測等の予測法を用いてもよい。以下では、推定モデルにより推定又は予測される伝搬環境や将来の通信品質、エリア内在圏確率を表す情報を推定結果情報と記載する。なお、制御装置4は、対向無線通信装置2とその対向無線通信装置2の通信先の無線通信装置3との間の伝送情報に加え、対向無線通信装置2とその対向無線通信装置2の通信先ではない無線通信装置3との間の伝送情報を推定又は予測に用いてもよい。また、制御装置4は、対向無線通信装置2の通信先の無線通信装置3が収集した音情報に加え、対向無線通信装置2の通信先ではない無線通信装置3が収集した音情報を推定又は予測に用いてもよい。また、制御装置4は、対向無線通信装置2の位置情報や過去の履歴などに基づいて、対向無線通信装置2からフィードバックされた伝送情報と無線通信装置3が収集した音情報とに重みづけを行って推定又は予測を行ってもよい。
【0018】
制御装置4は、各種類のビームの伝送情報及び音情報を用いて得られた推定結果情報に基づいて、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信を制御する機能を有する。例えば、制御装置4は、推定結果情報に基づいて、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間のデータ通信に使用するビームを選択し、選択したビームを形成するよう無線通信装置3を制御する。また、例えば、制御装置4は、推定結果情報に基づいて、対向無線通信装置2の接続先の無線通信装置3を切り替えるよう制御する。制御装置4は、推定結果情報を、無線通信装置3のビームフォーミングにおけるビームの指向性制御に活用してもよく、ビームサーチ範囲の削減、無線通信装置3のスリープ制御等に活用してもよい。
【0019】
なお、推定モデルを用いた推定又は予測の機能と、推定結果情報に基づいて対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信を制御する機能との一方又は両方を、無線通信装置3が具備してもよい。また、制御装置4は、無線通信装置3と一体の装置であってもよい。また、制御装置4は、複数の無線通信装置3を協調制御してもよい。
【0020】
伝送情報及び音情報に基づいて、対向無線通信装置2と無線通信装置3との見通し内における固定遮蔽物5の位置推定又は予測に加え、見通し外に存在する変動遮蔽物6の存在把握や移動を予測することにより、見通し内外を含めた環境把握範囲の拡大による推定及び予測精度の向上が期待できる。
【0021】
図2は、本実施形態による無線通信装置3及び制御装置4の機能構成例を示すブロック図である。無線通信装置3は、伝送部31と、信号処理部32と、ビーム制御部33と、送受信部34と、複数のアンテナ素子35と、マイク36と、収集部37とを具備する。
【0022】
伝送部31は、制御装置4や、ネットワーク上の上位装置(図示せず)等との間で信号伝送を行う機能部である。信号処理部32は、無線通信における信号処理を行う機能部である。例えば、信号処理部32は、ネットワーク上の上位装置又は制御装置4から対向無線通信装置2宛ての送信データを、伝送部31を介して受信する。信号処理部32は、対向無線通信装置2宛ての送信データを、各アンテナ素子35から送信する信号に変換してビーム制御部33に出力する。また、信号処理部32は、各アンテナ素子35により受信した信号を合成した受信信号をビーム制御部33から入力し、対向無線通信装置2から送信された信号を受信信号から取得する。信号処理部32は、得られた対向無線通信装置2からの信号を、伝送部31を介してネットワーク上の上位装置又は制御装置4へ出力する。
【0023】
ビーム制御部33は、形成するビームの制御を行う機能部である。送受信部34は、信号の位相と振幅との一方又は両方を制御することによるビームフォーミングや、信号の送受信に関する処理を行う機能部である。例えば、ビーム制御部33は、所定のビーム方向に電波の指向性を形成するように、各アンテナ素子35のウェイトを調整する。無線信号の送信時、ビーム制御部33は、信号処理部32により生成された各アンテナ素子35からの送信信号を送受信部34に出力するとともに、ビームを形成するための各アンテナ素子35のウェイトを指示する。送受信部34は、ビーム制御部33から指示されたウェイトを用いて、各アンテナ素子35から送信する信号の位相と振幅の一方又は両方を調整してビームを形成し、無線信号を送信する。また、無線信号の受信時、ビーム制御部33は、送受信部34にビームを形成するための各アンテナ素子35のウェイトを指示する。送受信部34は、ビーム制御部33から指示されたウェイトを用いて、各アンテナ素子35が受信した無線信号の位相と振幅の一方又は両方を調整する。送受信部34は、調整後の各無線信号を合成して得られた受信信号をビーム制御部33に出力する。ビーム制御部33は、送受信部34から入力した受信信号を、信号処理部32に出力する。
【0024】
収集部37は、マイク36を通して無線通信装置3の周囲の音情報を収集する。収集する音情報は、無線通信装置3の周囲の環境音でもよく、マイク36が収集した音からフィルタなどにより特定の音域に限定して抽出した音でもよく、可聴音でも非可聴音でもよい。また、対向無線通信装置2から定期的に決まった音域やパターンの音を発生させ、収集部37は、それを検知してもよい。また、音情報は、音波自体の強度や周波数スペクトルを示すデータでもよいし、マイクアレーを用いた到来角推定結果等の加工を行った形のデータでもよい。
【0025】
無線通信装置3は、図2に示した構成でもよく、5G NR(New Radio)におけるCU(Central Unit)、DU(Distributed Unit)、及びRU(Radio Unit)のように各装置に信号処理部32が分割された構成でもよく、無線通信装置3や制御装置4等のいずれかの装置に信号処理部32が集約されてもよい。
【0026】
制御装置4は、伝送部41と、信号処理部42と、記憶部43と、推定/予測部44と、制御部45とを具備する。伝送部41は、無線通信装置3や、ネットワーク上の上位装置(図示せず)、別の制御装置4等との間で信号伝送を行う機能部である。信号処理部42は、無線通信に関する信号処理を行う機能部である。信号処理部42は、無線通信装置3が出力した対向無線通信装置2からの送信信号を伝送部41から入力し、入力した送信信号からデータを得る。また、信号処理部42は、対向無線通信装置2へ送信するデータを設定した送信信号を、伝送部41を介して無線通信装置3に送信する。
【0027】
記憶部43は、推定/予測部44の処理に用いられる情報を記憶する機能部である。推定/予測部44の処理に用いられる情報は、対向無線通信装置2からのフィードバック情報や無線通信装置3の収集部37が収集した音情報等を含む。フィードバック情報は、ビームスイープにおける各種類のビーム毎の伝送情報を示す。
【0028】
推定/予測部44は、記憶部43に保持されたフィードバック情報、音情報及び推定モデルを用いて、遮蔽や反射といった対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の伝搬環境や、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信の将来の通信品質、対向無線通信装置2が将来無線通信装置3の通信エリア内に在圏するか否かまたは在圏する確率を表すエリア内在圏確率等を制御の目的に応じて推定又は予測する機能部である。制御部45は、推定/予測部44における推定又は予測結果に基づき、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信を制御する。例えば、制御部45は、無線通信装置3にビームスイープを指示する制御や、対向無線通信装置2が接続する無線通信装置3を切り替える制御、無線通信装置3のスリープ制御等を行う。
【0029】
なお、記憶部43、推定/予測部44及び制御部45の一部又は全てを無線通信装置3が具備してもよい。
【0030】
図3は、本実施形態による無線通信装置3及び制御装置4の無線制御例を示すフロー図である。例えば、複数の無線通信装置3それぞれがステップS11~ステップS13の処理を行い、制御装置4は、無線通信装置3毎にステップS14~ステップS18の処理を行う。
【0031】
まず、無線通信装置3は、ビームスイープを用いて参照信号を送信する(ステップS11)。対向無線通信装置2は、ビームスイープにおいて各種類のビームそれぞれにより受信した参照信号に基づいて、受信信号強度、信号対雑音電力比、受信タイムスタンプ、伝搬路情報、ビームのインデックス等の伝送情報を取得する。受信タイムスタンプは、対向無線通信装置2が参照信号を受信した時刻を示す。対向無線通信装置2の図示しない通知部は、各ビームの伝送情報と、送信タイムスタンプとを設定したフィードバック情報を、無線通信装置3へ送信する(ステップS12)。送信タイムスタンプは、対向無線通信装置2からのフィードバック情報の送信時刻である。無線通信装置3の信号処理部32は、対向無線通信装置2から受信したフィードバック情報を伝送部31に出力する。
【0032】
ステップS11~ステップS12の処理と並行して、無線通信装置3の収集部37は、周辺の音情報を取得する(ステップS13)。収集部37は、取得した音情報を伝送部31に出力する。無線通信装置3の伝送部31は、信号処理部32から受信したフィードバック情報と、収集部37から受信した音情報とを制御装置4に送信する。制御装置4の信号処理部42は、伝送部41が無線通信装置3から受信したフィードバック情報及び音情報を記憶部43に格納する(ステップS14)。
【0033】
続いて、制御装置4の推定/予測部44は、記憶部43に格納されたフィードバック情報及び音情報と、推定モデルとに基づいて、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の遮蔽や反射といった伝搬環境や、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信の将来の通信品質、対向無線通信装置2のエリア内在圏確率を推定又は予測する(ステップS15)。推定モデルには、機械学習が用いられる。例えば、推定モデルは、フィードバック情報の受信タイムスタンプ、送信タイムスタンプ又はビームのインデックスに基づいて時系列又は所定のビーム順に並べた受信信号強度、信号対雑音電力比、伝搬路情報のうち1以上と、音情報が示す時系列の音のデータとを入力とし、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の伝搬環境や、対向無線通信装置2と無線通信装置3との間の無線通信の将来の通信品質を示す数値、対向無線通信装置2のエリア内在圏確率を出力とする。また、運用前や運用中に、推定モデルの機械学習を行うための学習期間を設けてもよい。この場合、制御装置4に、フィードバック情報及び音情報に対応した正解の伝搬環境や将来の通信品質、対向無線通信装置2のエリア内在圏有無を示す教師データが入力される。推定/予測部44は、フィードバック情報及び音情報と教師データとを用いて推定モデルを機械学習する。
【0034】
制御部45は、ステップS15において推定/予測部44により推定又は予測された結果である推定結果情報に基づいて、制御が必要か否かを判断する(ステップS16)。具体的には、例えば、制御部45は、所定時間後に固定遮蔽や変動遮蔽によって対向無線通信装置2と無線通信装置3との間が非見通しとなることが予測される場合、所定時間後の受信信号強度や信号対雑音電力比等が所定の値以下となることが予測される場合、所定時間後の対向無線通信装置2のエリア内在圏確率が所定以下の場合などに制御が必要と判断する。また、制御部45は、対向無線通信装置2が現在接続している無線通信装置3との間における所定時間後の予測の受信信号強度や信号対雑音電力比等と、対向無線通信装置2が他の無線通信装置3に接続した場合の所定時間後の予測の受信信号強度や信号対雑音電力比との差が所定の値を超過した場合などに制御が必要と判断してもよい。
【0035】
制御部45は、制御が必要と判断した場合(ステップS16:YES)、ステップS15において得られた推定結果情報に基づく制御を実施する(ステップS17)。例えば、制御部45は、無線通信装置3が対向無線通信装置2へのデータ通信に使用するビームを選択し、選択したビームを使用するよう対向無線通信装置2に指示する。具体的には、例えば、所定時間後に最も通信品質が高いと予測される方向のビームを選択してもよいし、所定時間後に無線通信装置3から対向無線通信装置2への見通しが確保されると予測される方向のビームを選択してもよい。また、制御部45は、対向無線通信装置2の接続先の無線通信装置3を切り替える制御を行ってもよい。具体的には、例えば、所定時間後に対向無線通信装置2との無線通信の通信品質が最も高いと予測される無線通信装置3を接続対象として切り替えてもよいし、所定時間後に対向無線通信装置2との見通しが確保されると予測される無線通信装置3を接続対象として切り替えてもよい。また、制御部45は、対向無線通信装置2が現在接続している無線通信装置3の通信エリア内に在圏する確率が所定時間後にゼロに近い所定以下となる場合や在圏しないと予測される場合などに、その所定時間後に無線通信装置3をスリープさせてもよい。また、制御部45は、通信品質がしきい値より高いと予測されるビーム方向を含む範囲を無線通信装置3のビームサーチ範囲としてもよい。
【0036】
無線通信装置3又は対向無線通信装置2は、制御装置4の制御部45による制御に従ってデータ通信を行う(ステップS18)。例えば、制御装置4の制御部45が無線通信装置3にデータ通信に使用するビームを指示した場合、無線通信装置3のビーム制御部33は、指示されたビームを形成するように送受信部34のビームを調整する。これにより、無線通信装置3は、制御装置4の制御部45が選択したビームにより対向無線通信装置2と無線通信を行う。また、制御装置4の制御部45は、対向無線通信装置2の接続先を切替える場合、接続切替後の接続先となる無線通信装置3を示す接続切替情報を対向無線通信装置2宛てに送信する。対向無線通信装置2は、無線通信装置3を介して接続切替情報を受信すると、現在接続中の無線通信装置3から、接続切替情報が示す接続先の無線通信装置3に接続を切り替える。あるいは、制御装置4の制御部45は、対向無線通信装置2が現在接続している無線通信装置3と、接続切替後の接続先の無線通信装置3との一方又は両方に接続切替情報を通知してもよい。現在の接続先の無線通信装置3及び接続切替後の接続先の無線通信装置3は協調動作を行って対向無線通信装置2の接続先を切替える。また、制御装置4の制御部45が、無線通信装置3のスリープを指示した場合、無線通信装置3は所定時間スリープ状態となる。また、制御装置4の制御部45が無線通信装置3にビームサーチ範囲を指示した場合、無線通信装置3のビーム制御部33は、指示されたビームサーチ範囲内でビームを形成するように送受信部34のビームを調整する。
【0037】
なお、制御装置4の制御部45は、制御が不要と判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS15において得られた推定結果情報に基づく制御を行わずに、現在のデータ通信を継続する(ステップS18)。ステップS18の処理の後、無線通信システム1は、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0038】
図4は、本実施形態による無線通信システム1の動作例を示すシーケンス図である。図4は、推定結果情報に基づいて対向無線通信装置2の接続先の無線通信装置3を切り替える場合のシーケンス例を示す。ここでは、2台の無線通信装置3を、無線通信装置3-1、3-2と記載する。本シーケンス例では、対向無線通信装置2が、無線通信装置3-1に接続して通信を行っている状態から、推定結果情報に基づき無線通信装置3-2に接続先を切り替えて通信を行う場合を示す。
【0039】
対向無線通信装置2と無線通信装置3-1とが通信している(ステップS21)。具体的には、無線通信装置3-1の伝送部31は、制御装置4又は上位装置から受信した送信データを各アンテナ素子35からの送信信号に変換する。送受信部34は、ビーム制御部33から指示されたウェイトを用いて、各送信信号の位相や振幅を調整してビームを形成し、アンテナ素子35から無線信号を送信する。また、無線通信装置3-1の送受信部34は、各アンテナ素子35が対向無線通信装置2から受信した無線信号の位相や振幅をビーム制御部33から指示されたウェイトを用いて調整し、調整後の各無線信号を合成する。信号処理部32は、対向無線通信装置2が送信した信号を、合成された受信信号から取得する。伝送部31は、信号処理部32が取得した信号を上位装置又は制御装置4へ出力する。
【0040】
制御装置4は、一定の周期又は指示されたタイミングで無線通信装置3-1を経由して対向無線通信装置2に対して測定指示制御信号を送信する(ステップS22)。すなわち、制御装置4の制御部45は、一定の周期又は指示されたタイミングで測定指示制御信号を出力し、信号処理部42は、伝送部41から無線通信装置3-1へ測定指示制御信号を出力する。無線通信装置3-1は、制御装置4から受信した測定指示制御信号を無線により送信する。対向無線通信装置2は、受信した測定指示制御信号に従って、参照信号による測定を開始する。
【0041】
無線通信装置3-1及び無線通信装置3-2のそれぞれは、ビームスイープを行って時間毎にビームを変えながら参照信号を無線により送信する(ステップS23、ステップS24)。この時、図4に示すシーケンス例に記載のように、複数の無線通信装置3間でビームスイープを時間で分けて行ってもよく、無線通信装置3毎に参照信号を乗せる無線の周波数を分けてもよく、複数の無線通信装置3間で直交信号を用いて同時にビームスイープを行ってもよい。ビームスイープにおけるn番目のビームをBeam#nと記載し、Beam#nにより送信される参照信号を参照信号#nと記載する。ただし、nは1以上N以下の整数であり、Nは2以上の整数である。無線通信装置3-1及び3-2それぞれのビーム制御部33は、信号処理部32が生成した参照信号#nを送受信部34に出力し、Beam#nを形成するよう制御する。送受信部34は、アンテナ素子35が形成するBeam#nにより参照信号#nを送信する。
【0042】
対向無線通信装置2は、無線通信装置3-1及び無線通信装置3-2のそれぞれからBeam#1~Beam#Nにより伝送された参照信号#1~参照信号#Nを受信する。対向無線通信装置2は、無線通信装置3-1及び無線通信装置3-2のそれぞれから各Beam#nにより受信した参照信号#nに基づいて、受信信号強度、信号対雑音電力比、受信タイムスタンプ、伝搬路情報等の伝送情報を算出する。対向無線通信装置2は、Beam#1~Beam#Nのそれぞれについて算出した伝送情報と、送信タイムスタンプと、参照信号の送信元の無線通信装置3の装置識別情報と、対向無線通信装置2の装置識別情報とを設定した報告信号を無線通信装置3-1へ送信する(ステップS25)。無線通信装置3-1の送受信部34は、各アンテナ素子35により受信した信号を、ビーム制御部33からの制御に従って合成し、受信信号を生成する。信号処理部32は、対向無線通信装置2が送信した報告信号を受信信号から得る。
【0043】
なお、無線通信装置3-1は、対向無線通信装置2の各ビームに対するフィードバックタイミングを参照信号に設定することにより指定してもよい。対向無線通信装置2は、指定されたフィードバックタイミングで報告信号を送信する。そして、無線通信装置3-1のビーム制御部33は、参照信号送信時のビームスイープと同様に、受信ビームをスイープして報告信号を受信するよう送受信部34を制御する。あるいは、対向無線通信装置2は、各ビームの伝送情報を集約したフィードバック情報を設定した報告信号を、最も受信信号強度が高いビームのフィードバックタイミングで送信してもよい。
【0044】
無線通信装置3-1の伝送部31は、対向無線通信装置2から受信した報告信号に、ビームスイープを行っている際に収集部37が収集した音情報を付加して制御装置4へ伝送する(ステップS26)。制御装置4の信号処理部42は、伝送部41を介して無線通信装置3-1から報告信号を受信する。信号処理部42は、報告信号からフィードバック情報及び音情報と、無線通信装置3-1の装置IDと、対向無線通信装置2の装置IDとを取得し、これらの情報を紐づけて記憶部43に書き込む。装置IDは、各装置を識別する情報である。また、制御装置4の制御部45は、他の無線通信装置3へ指示を送信することにより、他の無線通信装置3からも音情報を取得してもよい。制御部45は、受信した音情報と、他の無線通信装置3の装置IDとを紐づけて記憶部43に書き込む。推定/予測部44は、記憶部43に書き込まれたフィードバック情報及び音情報と、予測モデルとを用いて、対向無線通信装置と各無線通信装置3との間の伝搬環境や、対向無線通信装置2と各無線通信装置3との間の無線通信の将来の通信品質、無線通信装置3のエリア内在圏確率を推定又は予測する(ステップS27)。推定/予測部44は、推定又は予測結果を示す推定結果情報を制御部45に出力する。
【0045】
制御部45は、推定結果情報に基づいて制御が必要と判断した場合、その制御内容を決定する。制御部45は、決定した制御内容に従って無線通信装置3又は対向無線通信装置2を制御するための制御信号を生成し、伝送部41から無線通信装置3へ出力する。ここでは、制御部45は、推定結果情報に基づいて対向無線通信装置2の接続先を無線通信装置3-1から無線通信装置3-2へ切り替えると決定する(ステップS28)。制御部45は、現在の接続先である無線通信装置3-1及び切り替え後の接続先である無線通信装置3-2へ制御信号を送信する(ステップS29)。制御信号には、対向無線通信装置2の装置IDと、切り替え元の無線通信装置3-1の装置IDと、切り替え先の無線通信装置3-2の装置IDとが設定される。無線通信装置3-1は、接続先の切り替えに伴って対向無線通信装置2に送信できていないデータを、切り替え先の無線通信装置3-2へ転送する(ステップS30)。
【0046】
制御装置4の制御部45は、切り替え元の無線通信装置3-1を経由して、切り替え指示制御信号を対向無線通信装置2へ送信する(ステップS31)。切り替え指示制御信号には、切り替え元の無線通信装置3-1の装置ID及び切り替え先の無線通信装置3-2の装置IDが設定される。対向無線通信装置2は、受信した切り替え指示制御信号に従って、無線通信装置3-2への接続切り替え処理を実施する。すなわち、対向無線通信装置2は、切り替え指示制御信号により示される切り替え先の無線通信装置3-2と同期及び接続確立の処理を行う(ステップS32)。無線通信装置3-2は、対向無線通信装置2との接続を確立すると、制御装置4に接続確立を通知し、対向無線通信装置2と制御装置4との間の接続を確立する(ステップS33)。対向無線通信装置2は、接続先を無線通信装置3-2に切り替えた上で、通信を継続することができる(ステップS33)。
【0047】
また、例えば、図4のステップS28において、制御部45は、無線通信装置3-1が対向無線通信装置2へのデータ信号の通信に用いるビームを、Beam#x(xは1以上N以下のいずれかの整数)とすることを決定したとする。制御部45は、Beam#xを指定する制御信号を無線通信装置3-1に送信する。無線通信装置3-1の信号処理部32は、伝送部31を介して受信した制御信号を、ビーム制御部33に出力する。ビーム制御部33は、受信した制御信号に従って、対向無線通信装置2宛ての無線信号を送信する場合に、Beam#xを形成するように送受信部34を制御する。
【0048】
また、例えば、図4のステップS28において、制御部45は、無線通信装置3-i(i=1、2)のビームサーチ範囲を決定したとする。制御部45は、決定したビームサーチ範囲を指示する制御信号を無線通信装置3-iに送信する。無線通信装置3-iのビーム制御部33は、ビームサーチの際に、受信した制御信号により指示されたビームサーチ範囲に含まれる各Beam#xのビームを切り替えて形成するように送受信部34を制御する。
【0049】
また、例えば、図4のステップS28において、制御装置4の制御部45は、無線通信装置3-i(i=1、2)を時刻t1からスリープさせると決定したとする。制御部45は、時刻t1に、スリープを指示する制御信号を無線通信装置3-iに送信する。無線通信装置3-iは、制御信号の受信から所定時間スリープ状態となる。あるいは、制御装置4の制御部45は、無線通信装置3-iに時刻t1からスリープするよう指示する制御信号を送信してもよい。無線通信装置3-iは、受信した制御信号に従って時刻t1から所定時間スリープ状態となる。また、制御装置4の制御部45は、スリープの終了を指示する制御信号を無線通信装置3-iに送信してもよい。
【0050】
なお、ここまでの説明においては無線通信装置3がビームスイープを行い、対向無線通信装置2からのフィードバック情報を用いて制御を行うことを前提に記載してきたが、下りと上りが変わっても同様に制御可能であり、本発明の実施形態に含まれる。つまり、対向無線通信装置2は、ビーム制御部33、送受信部34、記憶部43、推定/予測部44及び制御部45と同様の機能を有する。対向無線通信装置2は、ビームスイープを行い、無線通信装置3からのフィードバック情報及び音情報に基づいて遮蔽や反射といった伝搬環境や将来の通信品質を推定又は予測し、推定又は予測した結果に基づき制御を行ってもよい。
【0051】
なお、制御装置4の推定/予測部44は、推定又は予測対象の対向無線通信装置2(以下、対象対向無線通信装置2と記載)からのフィードバック情報に加え、他の対向無線通信装置2からのフィードバック情報をさらに使用して、無線通信装置3と対象対向無線通信装置2との間の伝搬環境や、無線通信装置3と対象対向無線通信装置2との間の無線通信の将来の通信品質を推定又は予測してもよい。
【0052】
上述した実施形態における制御装置4の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、推定/予測部44及び制御部45の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。また、プログラムは、ネットワークを通して提供されてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0053】
制御装置4をネットワークに接続される複数のコンピュータ装置により実現してもよい。この場合、制御装置4の各機能部を、これら複数のコンピュータ装置のいずれにより実現するかは任意とすることができる。また、同一の機能部を複数のコンピュータ装置により実現してもよい。
【0054】
図5は、制御装置4のハードウェア構成例を示す装置構成図である。制御装置4は、プロセッサ71と、記憶部72と、通信インタフェース73と、ユーザインタフェース74とを備える。プロセッサ71は、演算や制御を行う中央演算装置である。プロセッサ71は、例えば、CPU(central processing unit)やGPU(Graphics Processing Unit)である。プロセッサ71は、記憶部72からプログラムを読み出して実行することにより、推定/予測部44及び制御部45の機能を実現する。記憶部72は、さらに、プロセッサ71が各種プログラムを実行する際のワークエリアなどを有する。通信インタフェース73は、他装置と通信可能に接続するものである。通信インタフェース73は、伝送部41及び信号処理部42を実現する。ユーザインタフェース74は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の入力装置や、ディスプレイなどの表示装置である。ユーザインタフェース74により、人為的な操作が入力される。
【0055】
なお、推定/予測部44及び制御部45の機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0056】
本実施形態によれば、高周波数帯の無線通信システムにおいて無線通信装置の周囲の見通し環境と見通し外環境の両方の状況把握に基づく制御が可能となり、通信品質の改善や接続性の向上を図ることができる。
【0057】
特に高周波数帯においては高いビーム利得を確保するためなどの観点から狭ビームとする傾向にあり、ビームスイープを用いた通信電波センシングによる分解能が高くなることが期待できる。また、無線通信外のセンシングと比較して通信電波センシングで得られるセンシング情報は通信品質との相関が高くなることが期待できる。一方で、電波の直進性が強く遮蔽の影響を受けやすいため、見通し外の環境把握を行うことが困難である。これらの点に着目し、無線通信装置のサイズやコストの増加を抑えつつ見通し環境の把握を高精度で行うことが期待できるビームスイープを用いた通信電波センシングと見通し外の環境把握も期待できる音のセンシングを相補的に組合せて活用することにより、効率的に通信品質の改善を図ることが可能となる。
【0058】
上述した実施形態によれば、無線通信システムは、1以上の第1無線通信装置と、1以上の第2無線通信装置とを有する。例えば、第1無線通信装置は、実施形態の無線通信装置3に対応し、第2無線通信システムは、実施形態の対向無線通信装置2に対応する。第1無線通信装置は、無線通信部と、ビーム制御部と、取得部とを備える。無線通信部は、ビームを形成して第2無線通信装置と無線通信する。例えば、無線通信部は、実施形態の送受信部34に対応する。ビーム制御部は、無線通信部が形成するビームを制御する。取得部は、自装置の周囲を収音した音情報を取得する。第2無線通信装置は、ビーム制御部の制御により無線通信部が複数種類のビームそれぞれにより送信した参照信号を受信し、受信した参照信号の無線伝送に関する情報を示す伝送情報を通知する通知部を備える。第1無線通信装置又は第1無線通信装置と接続される制御装置は、推定予測部と、制御部とを備える。推定予測部は、通知部から通知された伝送情報及び取得部が取得した音情報を用いて第1無線通信装置と第2無線通信装置との間の伝搬環境、第1無線通信装置と第2無線通信装置との間の将来の通信品質、又は、第2無線通信装置が第1無線通信装置の通信エリア内に在圏する確率を推定又は予測する。制御部は、推定予測部による推定又は予測の結果に基づいて、第1無線通信装置と第2無線通信装置との間の無線通信を制御する。例えば、制御部は、推定又は予測の結果に基づいて、形成するビーム、スリープ、又は、ビームサーチ範囲を第1無線通信装置に指示する。あるいは、制御部は、推定又は予測の結果に基づいて、第2無線通信装置が接続する第1無線通信装置の切り替えを指示する。
【0059】
伝送情報は、参照信号を伝送した無線の受信電力、通信品質、通信距離及び伝送路情報のうち一以上と、参照信号の受信タイミング及び参照信号の伝送に用いられたビームの識別情報のうち一以上とを含んでもよい。また、伝搬環境は、第1無線通信装置と第2無線通信装置との間における無線信号の遮蔽又は反射を含んでもよい。
【0060】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…無線通信システム、2…対向無線通信装置、3、3-1、3-2…無線通信装置、4…制御装置、5…固定遮蔽物、6…変動遮蔽物、31…伝送部、32…信号処理部、33…ビーム制御部、34…送受信部、35…アンテナ素子、36…マイク、37…収集部、41…伝送部、42…信号処理部、43…記憶部、44…推定/予測部、45…制御部、71…プロセッサ、72…記憶部、73…通信インタフェース、74…ユーザインタフェース
図1
図2
図3
図4
図5