IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東亜道路工業株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧

特開2024-123444舗装構造体及び舗装構造体の施工方法
<>
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図1
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図2
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図3
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図4
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図5
  • 特開-舗装構造体及び舗装構造体の施工方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123444
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】舗装構造体及び舗装構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/00 20060101AFI20240905BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20240905BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20240905BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240905BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240905BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E01C9/00
E01C7/18
B60M7/00 X
H02J50/70
H02J50/12
H02J50/40
H01F38/14
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030861
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月8日に公開された国土交通省ウェブサイトに掲載された研究報告書。 〔刊行物等〕 令和4年5月20日に発行された自動車技術会2022年春季大会会誌に掲載された研究発表。 〔刊行物等〕 令和4年9月30日に発行されたIEEE Wireless Power Week Conference学会誌に掲載された研究発表。 〔刊行物等〕 令和4年12月9日に公開された48th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society学会誌に掲載された研究発表。
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 長門
(72)【発明者】
【氏名】多田 悟士
(72)【発明者】
【氏名】増戸 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】居村 岳広
(72)【発明者】
【氏名】堀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】塙 昂樹
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AD05
2D051AF01
2D051AG01
2D051AH01
2D051AH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プロセス時間が短く、粘着成分による生産ラインの汚染の心配がなく、長期保管が可能で、リペアが可能であって、耐熱性及び耐薬品性にも優れ、かつ、連結部での厚み変化が少ない、連結技術を提供すること。
【解決手段】移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に埋設してなり、前記非接触給電用コイルが、リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、等、からなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に埋設してなり、
前記非接触給電用コイルが、
リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及びリッツ線と共振コンデンサとフェライトとからなるコイルケースレス・ショート型コイル、からなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体。
【請求項2】
前記コイルユニットの下面と路盤の上面との間に、層厚が20~40mmの漏洩磁界低減層を有する、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項3】
前記漏洩磁界低減層が、アスファルト混合物からなる、請求項2に記載の舗装構造体。
【請求項4】
前記漏洩磁界低減層が、建築用断熱材からなる、請求項2に記載の舗装構造体。
【請求項5】
前記建築用断熱材が、押出成形ポリスチレンフォーム断熱材である、請求項4に記載の舗装構造体。
【請求項6】
前記コイルユニットが、LEDライトを備える、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項7】
前記コイルユニットが、伝送モードの切替手段を備える、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項8】
融雪機能を有する融雪用コイルを舗装表面に設置し、
受電コイルを検知しない場合に、前記融雪用コイルに電流を流すモードを、前記伝送モードに含む、請求項7に記載の舗装構造体。
【請求項9】
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層とが、樹脂と砂を含む接着材料で接着されてなる、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項10】
前記接着材料が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂に、最大粒径2mm以下の細骨材を混ぜ合わせてなる、請求項9に記載の舗装構造体。
【請求項11】
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層の23℃の試験条件における引張り接着強度が0.6MPa以上である、請求項9に記載の舗装構造体。
【請求項12】
前記コイルケースが、エンジニアリングプラスチック又は、エンジニアリングプラスチックと繊維強化プラスチック板とを組み合わせた複合材からなる、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項13】
前記コイルユニットの3点曲げ強度(試験温度23℃)が30MPa以上である、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項14】
前記コイルユニットの上面側で、車輪との接触面に、滑り止め構造を有する、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項15】
前記接触面の縦すべり摩擦係数が、0.45以上である、請求項14に記載の舗装構造体。
【請求項16】
非接触給電用コイルを含むコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に載置し、前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層を、樹脂と砂を含む接着材料で接着する、舗装構造体の施工方法。
【請求項17】
舗装表面に形成した凹部に、前記コイルユニットを載置する、請求項16に記載の舗装構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の走行体が走行する舗装構造体及び舗装構造体の施工方法に関し、特に、走行体への非接触での給電に用いる舗装構造体及び舗装構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EV(電気自動車)の更なる普及に向けて、走行中の移動車両に対し、外部電源と非接触(ワイヤレス)の状態で給電を行う走行中ワイヤレス給電(Dynamic Wireless Power Transfer、以下DWPT)に関する技術開発が進んでいる(特許文献1~3等)。
【0003】
特許文献1、2は給電用コイルを舗装に埋設する技術を開示し、特許文献3は、給電導体を道路等に埋設する技術を開示している。
【0004】
給電用コイルを舗装に埋設する構造においては、移動車両からの走行荷重で給電用コイルが圧縮変形しない構造強度が求められる。給電コイルの埋設深さを大きくとることで、移動車両の走行荷重による給電用コイルの圧縮変形を回避することができるが、給電コイルの埋設深さを大きくとった場合、移動車両側の受電コイルとの離間距離が大きくなるため、給電効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-181546号公報
【特許文献2】特開2015-44422号公報
【特許文献3】特開2017-163798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、給電用コイルを舗装に埋設する構造において、必要な構造強度を確保しつつ、高い給電効率を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
【0008】
[1]
移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に埋設してなり、
前記非接触給電用コイルが、
リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及びリッツ線と共振コンデンサとフェライトからなるコイルケースレス・ショート型コイル、からなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体。
[2]
前記コイルユニットの下面と路盤の上面との間に、層厚が20~40mmの漏洩磁界低減層を有する、[1]に記載の舗装構造体。
[3]
前記漏洩磁界低減層が、アスファルト混合物からなる、[2]に記載の舗装構造体。
[4]
前記漏洩磁界低減層が、建築用断熱材からなる、[2]に記載の舗装構造体。
[5]
前記建築用断熱材が、押出成形ポリスチレンフォーム断熱材である、[4]に記載の舗装構造体。
[6]
前記コイルユニットが、LEDライトを備える、[1]~[5]のいずれかに記載の舗装構造体。
[7]
前記コイルユニットが、伝送モードの切替手段を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の舗装構造体。
[8]
融雪機能を有する融雪用コイルを舗装表面に設置し、
受電コイルを検知しない場合に、前記融雪用コイルに電流を流すモードを、前記伝送モードに含む、[7]に記載の舗装構造体。
[9]
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層が、樹脂と砂とを含む接着材料で接着されてなる、[1]~[8]のいずれかに記載の舗装構造体。
[10]
前記接着材料が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂に、最大粒径2mm以下の細骨材を混ぜ合わせてなる、[9]に記載の舗装構造体。
[11]
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層の23℃の試験条件における引張り接着強度が0.6MPa以上である、[9]又は[10]に記載の舗装構造体。
[12]
前記コイルケースが、エンジニアリングプラスチック又は、エンジニアリングプラスチックと繊維強化プラスチック板とを組み合わせた複合材からなる、[1]~[11]のいずれかに記載の舗装構造体。
[13]
前記コイルユニットの3点曲げ強度(試験温度23℃)が30MPa以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の舗装構造体。
[14]
前記コイルユニットの上面側で、車輪との接触面に、滑り止め構造を有する、[1]に記載の舗装構造体。
[15]
前記接触面の縦すべり摩擦係数が、0.45以上である、[14]に記載の舗装構造体。
【0009】
[16]
非接触給電用コイルを含むコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に載置し、前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層を、樹脂と砂を含む接着材料で接着する、舗装構造体の施工方法。
[17]
舗装表面に形成した凹部に、前記コイルユニットを載置する、[1]~[16]のいずれかに記載の舗装構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0010】
給電用コイルを舗装に埋設する構造において、必要な構造強度を確保しつつ、高い給電効率を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における舗装構造体の概略説明図である。
図2】本発明の一実施形態における舗装構造体の概略説明図である。
図3】コイルユニットをアスファルト混合物層の表層・中間層・基層に埋設した状態の説明図である。
図4図3の各埋設箇所において最大伝送効率及び最適負荷電力を計測した結果を示す図である。
図5】3種類の非接触給電用コイルにつき、伝送距離と最大伝送効率ηを計測した結果を示す図である。
図6】非接触給電用コイルを、接着材料を用いて表層に埋設し、52kNを載荷した際のたわみ量を計測した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の舗装構造体は、移動車両の受電コイル1に非接触で給電を行う非接触給電用コイル2を、樹脂を含む保護部材3で保護したコイルユニット4を、路盤5上のアスファルト混合物層6に埋設してなり、前記非接触給電用コイル2が、リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及びリッツ線と共振コンデンサとフェライトからなるコイルケースレス・ショート型コイル、からなる群から選択される少なくとも何れかである。
DWPTの実用化における課題の一つに、10万~100万個必要とされる非接触給電用コイルの費用が挙げられるが、共振コンデンサとフェライトを共に使用しないコイルであるオープン型コイルを用いることにより、コストを大幅に削減することができる。現在、世界的に主流となっている非接触給電用コイルは、共振コンデンサを使用するショート型コイルであるが、ショート型コイルにおいても、フェライトを使用しない設計や、コイルケースを使用しない設計とすることで、コストを削減することができる。
【0014】
非接触給電用コイル2がコイルケースを使用するものである場合、コイルケースは、エンジニアリングプラスチック又は、エンジニアリングプラスチックと繊維強化プラスチック板を組み合わせた複合材からなる、ことが好ましい。
【0015】
非接触給電用コイル2がコイルケースを使用しないものである場合、リッツ線をアスファルト混合物層6の上に直置きし、アスファルトコンパウンドやMMA樹脂等でリッツ線を保護し、かつ保護用のアスファルト混合物との接着性も向上させることが好ましい。
【0016】
コイルユニット4の3点曲げ強度(試験温度23℃)は30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがさらに好ましい。また保護部材3は、前記コイルケースを構成する部材であるが、舗装構造の強度に近い樹脂を含むことが好ましい。
なお、上記3点曲げ強度は、JISの3点曲げ試験方法により測定した。
保護部材3を構成する樹脂として、ABS樹脂、MMA樹脂やポリカーボネートなどの樹脂(エンジニアリングプラスチック)を例示することができる。
保護部材3は、ABS樹脂、MMA樹脂やポリカーボネートなどの樹脂に、FRP板等を組み合わせた複合構造とすることもできる。前記複合構造とすることで、道路舗装と同等以上の強度を実現することができる。
【0017】
道路の断面は、表面から深部の順に、「表層(アスファルト混合物層6)~中間層(アスファルト混合物層6)~基層(アスファルト混合物層6)~上層路盤(路盤5)~下層路盤(路盤5)~路床~路体」とよばれる各層からなり、このうちアスファルト混合物層6と路盤5を併せた部分が舗装と定義される。
表層、中間層、基層の層厚は、用途に応じて設計されるが、一般に、それぞれ、10~60mm、40~70mm、40~70mmの層厚を有する。
本発明では、これらの複数の層のうち、路面に近いアスファルト混合物層6にコイルユニット4を埋設することで、移動車両の受電コイル1との離間距離を短くして、最大伝送効率ηの向上を実現する。
最大伝送効率ηの向上の観点から、アスファルト混合物層6の表層にコイルユニット4を埋設することが好ましい。表層にコイルユニット4を埋設することで、最大伝送効率ηを95%以上確保することが出来る。
ここで、ワイヤレス給電の最大伝送効率ηは給電コイルから受電コイルに到達する電力で示され、kQの法則により、下記式(1)で示される。
【数1】


上記式(1)においてkは結合係数、QとQは送電側と受電側のQ値を示す。
【0018】
アスファルト混合物層6の表層にコイルユニット4を埋設することにより、得られる効果として、深層埋設が必要な給電コイルに比べ、新規及び修繕時の埋設に必要となる費用が大幅に縮減できることも挙げられる。
例えば、アスファルト混合物層6の表層は、前記のように、一般に、舗装の表面から10~60mmの層厚を有するように形成されるため、アスファルト混合物層6の表層に埋設する場合、コイルユニット4の設置時や供用年数経過後の修繕時は、舗装の表面から10~60mmの範囲で施工を行えばよい。
【0019】
コイルユニット4の埋設方法は限定されないが、例えば、舗装の新設時にコイルユニット4を埋設する場合は、舗装内のトラフにコイルユニット4を埋設することができ、既設の舗装にコイルユニット4を埋設する場合は、舗装表面を切削して形成した凹部にコイルユニット4を埋設することができる。
【0020】
コイルユニット4は、埋設箇所に、樹脂と砂を含む接着材料を用いて接着することが好ましい。樹脂と砂を含む接着材料を用いて接着することで、コイルユニット4を、従来よりも浅い埋設位置となるアスファルト混合物層6に埋設した場合であっても、移動車両からの走行荷重で給電用コイルが圧縮変形しない構造強度を確保することができる。
【0021】
前記接着材料は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂に、最大粒径2mm以下の細骨材を混ぜ合わせてなる接着材料であることが好ましい。
コイルユニット4と前記アスファルト混合物層6の23℃の試験条件における引張り接着強度は0.6MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましく、1.5MPa以上であることがさらに好ましい。
なお、上記引張り接着強度は、建研式引張り接着試験により測定した。
【0022】
コイルユニット4の上面側で、車輪との接触面に、滑り止め構造を設けることもできる。
滑り止め構造の具体的構造は、移動車両のスリップを抑制する作用を奏するものであればよく、特に限定されないが、例えば、砂やガラスビーズなどを混ぜた樹脂による滑り止め材の施工や、コイルケースに溝や表面研磨によって凹凸形状を付与する方法が挙げられる。
滑り止め構造は、すべり摩擦係数0.45以上を確保できる構造であることが好ましい。上記すべり摩擦係数は0.5以上であることがより好ましく、0.55以上であることがさらに好ましい。なお、当該すべり摩擦係数はポータブルスキッドテスターによる測定値の換算により求められるものである。
【0023】
コイルユニット4に、自動運転の誘導線として利用できるLEDライトを備えることもできる。具体的構成は、特に限定されないが、例えば、非接触給電用コイル2の表面に小さなループコイルとLEDライトを繋いだ回路を別に作成し、電磁誘導でLEDライトを光らせる構成が挙げられる。
【0024】
積雪時対応として、融雪機能を有する融雪用コイルを舗装表面に設置するとともに、コイルユニット4に伝送モードの切替手段を備え、前記伝送モードの一つとして、移動車両の受電コイル1検知しない場合には前記融雪用コイルに電流を流す伝送モードを含めることもできる。
【0025】
図2に示すように、前記コイルユニット4の下面と路盤の上面との間に、d(層厚)が20~40mmの漏洩磁界低減層7を設けることが好ましい。
層厚が20~40mmの漏洩磁界低減層7を設けることにより、漏洩磁界を低減し、最大伝送効率を向上することができる。
漏洩磁界低減層7の構成は、漏洩磁界を低減する作用を奏するものであればよく、特に限定されないが、例えば、路盤5上のアスファルト混合物層6を漏洩磁界低減層7として利用する構成、コイルユニット4の下面と路盤の上面との間に、押出成形ポリスチレンフォーム断熱材等からなる建築用断熱材を配置する構成、コイルユニット4の保護部材3の厚みを増して、保護部材3を漏洩磁界低減層7として利用する構成が挙げられる。
【0026】
非接触給電用コイル2への電源供給のための配線方法は特に限定されないが、例えば、中間層(アスファルト混合物層6)以下の層に樹脂性保護管を敷設し、電源ケーブルを樹脂製保護管に挿入し、路側部の接続ボックスにつなげる構成が挙げられる。
【実施例0027】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0028】
図3に示すように、層厚が60mmの表層と、層厚が70mmの中間層と、層厚が70mmの基層で構成されるアスファルト混合物層6の表層・中間層・基層に、非接触給電用コイルとして、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイルを埋設し、最大伝送効率及び最適負荷電力を計測した。計測結果を図4に示す。
【0029】
図4において、コイル6はMMA樹脂を漏洩磁界低減層として20mm適用したショート型コイルを基層に埋設した場合、コイル7はMMA樹脂を漏洩磁界低減層として20mm適用したコイルケースとしたショート型コイルを中間層に埋設した場合、コイル8はショート型コイルを表層の凹部にMMA系樹脂モルタルを用いて接着した場合を各々示す。
図4に示すように、受電コイル1との伝送距離が短くなるほど、最大伝送効率ηが向上する。表層及び中間層に埋設することにより、最大伝送効率ηを95%以上確保することが出来た。
【0030】
非接触給電用コイルとして、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイルで、リッツ線が巻かれたサーキュラーコイル(図5中、ショート型)、リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイルで、前記サーキュラーコイルを2つ横に並べた、いわゆるDDコイル(図5中、ショート型DD)、リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル(図5中オープン型)の3種類を用意し、伝送距離と最大伝送効率ηを計測した結果を図5に示す。
図5に示すように、上記3種何れの非接触給電用コイルを用いた場合も、伝送距離が200mm以下で、最大伝送効率ηを95%以上確保することが出来た。
伝送距離は、埋設時の深さ(埋設時に測定)と、道路の面一から受電コイルまでの長さ(測定)から求めた。
【0031】
コイルユニット4とアスファルト混合物層6とを、樹脂モルタル接着材料を用いて接着した場合の強度増強効果を確認するため、非接触給電用コイルを、接着材料を用いて表層に埋設し、52kNを載荷した際のたわみ量を計測した結果を図6に示す。
図6中、「接着なしCoil 1(リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル)」はコイルケースを、接着材料を使用せずに表層に埋設し、たわみ量を計測した結果であり、「表層オープン型Coil 4(リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル)」は樹脂モルタルを接着材料を使用して表層に埋設し、たわみ量を計測した結果であり、「表層S型Coil 8(リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル)」は樹脂モルタル接着材料を使用して表層に埋設し、たわみ量を計測した結果であり、「As比較(比較対象用のアスファルト舗装)」は非接触給電用コイルを設置していない標準的なアスファルト舗装のたわみ量を計測した結果である。
図6に示すように、アスファルト混合物と給電コイル間にMMA系樹脂モルタル接着材料を使用することで、接着材料を使用しない場合と比べてアスファルト混合物と給電コイルの一体化によって高い構造強度が得られ、載荷点周辺のたわみ(変形量)を小さくすることが出来た。
【符号の説明】
【0032】
1 受電コイル
2 非接触給電用コイル
3 保護部材
4 コイルユニット
5 路盤
6 アスファルト混合物層
7 漏洩磁界低減層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に埋設してなり、
前記アスファルト混合物層中であって、前記コイルユニットと前記路盤との間に、漏洩磁界低減層を有し、
前記非接触給電用コイルが、
リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及び
リッツ線と共振コンデンサとフェライトとからなるコイルケースレス・ショート型コイルからなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体。
【請求項2】
前記漏洩磁界低減層の層厚が20~40mmである、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項3】
前記漏洩磁界低減層が、建築用断熱材からなる、請求項1又は2に記載の舗装構造体。
【請求項4】
前記建築用断熱材が、押出成形ポリスチレンフォーム断熱材である、請求項に記載の舗装構造体。
【請求項5】
前記コイルユニットが、前記非接触給電用コイルの表面に作成された回路に繋がれたLEDライトを有し、
前記LEDライトが、自動運転の誘導線として用いられる、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項6】
前記コイルユニットが、伝送モードの切替手段を備える、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項7】
移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に埋設してなり、
前記コイルユニットが、伝送モードの切替手段を備え、
融雪機能を有する融雪用コイルが、舗装表面に設置され
前記伝送モードが、前記受電コイルを検知しない場合に前記融雪用コイルに電流を流すモードを含み、
前記非接触給電用コイルが、
リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及び
リッツ線と共振コンデンサとフェライトとからなるコイルケースレス・ショート型コイルからなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体。
【請求項8】
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層とが、樹脂と砂を含む接着材料で接着されてなる、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項9】
前記接着材料が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂に、最大粒径2mm以下の細骨材を混ぜ合わせてなる、請求項に記載の舗装構造体。
【請求項10】
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層の23℃の試験条件における引張り接着強度が0.6MPa以上である、請求項に記載の舗装構造体。
【請求項11】
前記コイルケースが、エンジニアリングプラスチック又は、エンジニアリングプラスチックと繊維強化プラスチック板とを組み合わせた複合材からなる、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項12】
前記コイルユニットの3点曲げ強度(試験温度23℃)が30MPa以上である、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項13】
前記コイルユニットの上面側で、車輪との接触面に、滑り止め構造を有する、請求項1に記載の舗装構造体。
【請求項14】
前記接触面の縦すべり摩擦係数が、0.45以上である、請求項13に記載の舗装構造体。
【請求項15】
移動車両の受電コイルに非接触で給電を行う非接触給電用コイルを、樹脂を含む保護部材で保護したコイルユニットを、路盤上のアスファルト混合物層に載置し、
前記アスファルト混合物層中であって、前記コイルユニットと前記路盤との間に、漏洩磁界低減層を設け、
前記非接触給電用コイルが、
リッツ線とコイルケースからなるコンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線からなるコイルケースレス・コンデンサレス・フェライトレス・オープン型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースからなるフェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサからなるコイルケースレス・フェライトレス・ショート型コイル、
リッツ線と共振コンデンサとコイルケースとフェライトからなるショート型コイル、及び
リッツ線と共振コンデンサとフェライトとからなるコイルケースレス・ショート型コイルからなる群から選択される少なくとも何れかである、舗装構造体の施工方法。
【請求項16】
前記コイルユニットと前記アスファルト混合物層を、樹脂と砂を含む接着材料で接着する、請求項15に記載の舗装構造体の施工方法。
【請求項17】
舗装表面に形成した凹部に、前記コイルユニットを載置する、請求項15又は16に記載の舗装構造体の施工方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
図2に示すように、前記コイルユニット4の下面と路盤の上面との間に、d(層厚)が20~40mmの漏洩磁界低減層7を設けることが好ましい。
層厚が20~40mmの漏洩磁界低減層7を設けることにより、漏洩磁界を低減し、最大伝送効率を向上することができる。
漏洩磁界低減層7の構成は、漏洩磁界を低減する作用を奏するものであればよく、特に限定されないが、例えば、コイルユニット4の下面と路盤の上面との間に、押出成形ポリスチレンフォーム断熱材等からなる建築用断熱材を配置する構成、コイルユニット4の保護部材3の厚みを増して、保護部材3を漏洩磁界低減層7として利用する構成が挙げられる。