(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123452
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光路切替装置及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240905BHJP
G01B 9/02018 20220101ALI20240905BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01B9/02018
G02B26/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030880
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高久 正和
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
2H141
【Fターム(参考)】
2F064AA02
2F064CC10
2F064EE01
2F064FF01
2F064GG23
2F064GG38
2F064GG39
2F065AA04
2F065AA09
2F065FF51
2F065GG04
2F065LL35
2F065LL36
2F065LL37
2F065LL46
2F065LL47
2H141MA16
2H141MB41
2H141MC01
2H141MD03
2H141ME09
2H141ME11
2H141ME18
2H141ME19
2H141ME24
2H141ME25
(57)【要約】
【課題】簡便かつ正確に光路の切り替えができる光路切替装置及び測定装置を提供する。
【解決手段】光路切替装置は、第1方向に偏光されて第1軸の方向に進行する光の光路上に配置される第1偏光分離素子と、第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を第1方向から第2方向に切り替える第1波長板と、第1波長板を第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿抜する第1挿抜部と、を備える。第1偏光分離素子は、入射する光の偏光方向が、第1方向の場合、第1軸の方向に透過させ、第1方向と直交する第2方向の場合、第1軸と直交する第2軸の方向に反射させる。第1波長板を光路から退避させると、光が第1軸の方向に出射される。第1波長板を光路を光路に挿入すると、光が第2軸の方向に出射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に偏光されて第1軸の方向に進行する光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、前記第1方向の場合、前記第1軸の方向に透過させ、前記第1方向と直交する第2方向の場合、前記第1軸と直交する第2軸の方向に反射させる第1偏光分離素子と、
前記第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を前記第1方向から前記第2方向に切り替える第1波長板と、
前記第1波長板を前記第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿抜する第1挿抜部と、
を備えた光路切替装置。
【請求項2】
前記第1偏光分離素子を透過する光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、前記第1方向の場合、前記第1軸の方向に透過させ、前記第2方向の場合、前記第2軸の方向に反射させる第2偏光分離素子と、
前記第1偏光分離素子と前記第2偏光分離素子との間の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を前記第1方向から前記第2方向に切り替える第2波長板と、
前記第2波長板を前記第1偏光分離素子と前記第2偏光分離素子との間の光路に挿抜する第2挿抜部と、
前記第2偏光分離素子で前記第2軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光を前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸の方向に反射させる第1反射光学素子と、
を備えた請求項1に記載の光路切替装置。
【請求項3】
前記第1偏光分離素子で前記第2軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、前記第1方向の場合、前記第2軸の方向に透過させ、前記第2方向の場合、前記第1軸の方向に反射させる第3偏光分離素子と、
前記第1偏光分離素子と前記第3偏光分離素子との間の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を前記第2方向から前記第1方向に切り替える第3波長板と、
前記第3波長板を前記第1偏光分離素子と前記第3偏光分離素子との間の光路に挿抜する第3挿抜部と、
前記第3偏光分離素子で前記第1軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光を前記第3軸の方向に反射させ第2反射光学素子と、
を備えた請求項2に記載の光路切替装置。
【請求項4】
前記第1反射光学素子及び前記第2反射光学素子がペンタプリズムである、
請求項3に記載の光路切替装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光路切替装置と、
前記第1方向に偏光した光を前記第1軸の方向に出射して、前記光路切替装置の前記第1偏光分離素子に入射させる光出射部と、
前記光路切替装置から出射される光の光路上に配置され、入射した光を透過光である測定光と反射光である参照光とに分離する第4偏光分離素子と、
前記第4偏光分離素子を透過した光の光路上に配置され、入射した光の傾きを維持して反射させる第3反射光学素子と、
前記第4偏光分離素子と前記第3反射光学素子との間の光路上に配置され、入射した光に所定の傾きを与えて透過させる偏向光学素子と、
前記第4偏光分離素子と前記偏向光学素子との間の光路に配置される1/4波長板と、
前記第4偏光分離素子で反射された光の光路上に配置され、入射した光を再帰反射させる第4反射光学素子と、
前記第4偏光分離素子から出射される前記測定光と前記参照光との合成光を受光する受光部と、
前記受光部の出力に基づいて、前記第3反射光学素子又は前記偏向光学素子の変位量を算出する処理部と、
を備えた測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路切替装置、及び、その光路切替装置を用いた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や測定機などには、xyないしyzの2軸方向に移動可能な移動機構や、xyzの3軸方向に移動可能な移動機構が広く使用されている。このような移動機構は、移動軸の真直度、移動軸間の直角度について、仕様が定められている。このため、製造工程で試験を行い、仕様を満たすことを確認している。
【0003】
また、工作機械や測定機における移動機構の真直度、直角度等を測定する方法として、レーザ光を用いた方法が知られている(たとえば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-068957号公報
【特許文献2】特開2019-200168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、yzの2軸方向に移動可能な移動機構において、各移動軸間の直角度は、次のように測定される。まず、y軸移動させて、各y位置に対するz軸方向の変位量(z軸方向の位置の誤差量)を測定する。次に、z軸移動させて、各z位置に対するy軸方向の変位量(y軸方向の位置の誤差量)を測定する。これにより、各移動軸間の直角度が特定される。
【0006】
レーザ光を用いて測定する場合は、y軸移動させる場合とz軸移動させる場合とで、光軸が直交するように調整される。しかし、この調整作業には、手間が掛かる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡便かつ正確に光路の切り替えができる光路切替装置及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の態様の光路切替装置は、第1方向に偏光されて第1軸の方向に進行する光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、第1方向の場合、第1軸の方向に透過させ、第1方向と直交する第2方向の場合、第1軸と直交する第2軸の方向に反射させる第1偏光分離素子と、第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を第1方向から第2方向に切り替える第1波長板と、第1波長板を第1偏光分離素子に入射する光の光路に挿抜する第1挿抜部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の態様の光路切替装置は、第1の態様の光路切替装置において、第1偏光分離素子を透過する光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、第1方向の場合、第1軸の方向に透過させ、第2方向の場合、第2軸の方向に反射させる第2偏光分離素子と、第1偏光分離素子と第2偏光分離素子との間の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を第1方向から第2方向に切り替える第2波長板と、第2波長板を第1偏光分離素子と第2偏光分離素子との間の光路に挿抜する第2挿抜部と、第2偏光分離素子で第2軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光を第1軸及び第2軸と直交する第3軸の方向に反射させる第1反射光学素子と、を備えることを特徴とする。
【0010】
第3の態様の光路切替装置は、第2の態様の光路切替装置において、第1偏光分離素子で第2軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光の偏光方向が、第1方向の場合、第2軸の方向に透過させ、第2方向の場合、第1軸の方向に反射させる第3偏光分離素子と、第1偏光分離素子と第3偏光分離素子との間の光路に挿入されて、透過する光の偏光方向を第2方向から第1方向に切り替える第3波長板と、第3波長板を第1偏光分離素子と第3偏光分離素子との間の光路に挿抜する第3挿抜部と、第3偏光分離素子で第1軸の方向に反射された光の光路上に配置され、入射する光を第3軸の方向に反射させ第2反射光学素子と、を備えることを特徴する。
【0011】
第4の態様の光路切替装置は、第3の態様の光路切替装置において、第1反射光学素子及び第2反射光学素子がペンタプリズムであることを特徴とする。
【0012】
測定装置の一態様は、第1から4のいずれか一の態様の光路切替装置と、第1方向に偏光した光を第1軸の方向に出射して、光路切替装置の第1偏光分離素子に入射させる光出射部と、光路切替装置から出射される光の光路上に配置され、入射した光を透過光である測定光と反射光である参照光とに分離する第4偏光分離素子と、第4偏光分離素子を透過した光の光路上に配置され、入射した光の傾きを維持して反射させる第3反射光学素子と、第4偏光分離素子と第3反射光学素子との間の光路上に配置され、入射した光に所定の傾きを与えて透過させる偏向光学素子と、第4偏光分離素子と偏向光学素子との間の光路に配置される1/4波長板と、第4偏光分離素子で反射された光の光路上に配置され、入射した光を再帰反射させる第4反射光学素子と、第4偏光分離素子から出射される測定光と参照光との合成光を受光する受光部と、受光部の出力に基づいて、第3反射光学素子又は偏向光学素子の変位量を算出する処理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便かつ正確に光路の切り替えができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】光路切替装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図3】選択する光路と各波長板の挿抜の設定の関係を示す表である。
【
図4】第1光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【
図5】第2光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【
図6】第3光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【
図7】第4光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【
図8】測定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図10】干渉計の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図11】光路切替装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0016】
[1]光路切替装置
[光路切替装置の構成]
図1は、光路切替装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0017】
図1において、x、y、zは、互いに直交する3軸である。本実施の形態では、x軸及びy軸を含む平面を水平面とする。また、x軸及びy軸を含む平面の方向を水平方向とし、z軸の方向を垂直方向とする。y軸は、第1軸の一例である。x軸は、第2軸の一例である。z軸は、第3軸の一例である。
【0018】
本実施の形態の光路切替装置1は、装置に入射する光(入射光)Lの光路を選択的に切り替える装置として構成される。光路を切り替えることにより、光が出射される位置及び方向の切り替えができる。本実施の形態の光路切替装置1は、4つの光路(第1光路~第4光路)を選択的に切り替える装置として構成される。第1光路は、第1出射部P1outからy軸方向に光を出射させる光路である。第2光路は、第2出射部P2outからz軸方向に光を出射させる光路である。第3光路は、第3出射部P3outからx軸方向に光を出射させる光路である。第4光路は、第4出射部P4outからz軸方向に光を出射させる光路である。
【0019】
入射光Lは、所定方向に向けて所定の入射部P0inに入射される。本実施の形態では、y軸方向に向けて入射部P0inに入射される。また、入射光Lは、所定の方向に偏光された光(単一偏光の光)が入射される。一例として、本実施の形態では、水平方向に偏光されたレーザ光が入射される。
【0020】
図1に示すように、光路切替装置1は、第1偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)11、第2偏光ビームスプリッタ12、第3偏光ビームスプリッタ13、第1ペンタプリズム21、第2ペンタプリズム22、第1波長板31、第2波長板32、第3波長板33、第1挿抜部41、第2挿抜部42及び第3挿抜部43等を備える。
【0021】
[第1偏光ビームスプリッタ]
第1偏光ビームスプリッタ11は、入射部P0inに入射される入射光Lの光路上に配置される。より具体的には、入射部P0inからy軸方向に延びる直線上に配置される。第1偏光ビームスプリッタ11は、所定の入射面に入射される光の偏光状態に応じて、透過光と反射光とに分割する。本実施の形態では、水平方向に偏光された光が入射された場合、透過させ、垂直方向に偏光された光が入射された場合、反射させて、透過光と反射光とに分割する。水平方向は、第1方向の一例である。垂直方向は、第2方向の一例である。
【0022】
第1偏光ビームスプリッタ11は、入射面がy軸と直交して配置される(入射する光の光軸と直交して配置される。)。また、分離面(スプリット面)が、y軸に対し、x軸方向に45°傾けられて配置される。よって、反射光は、x軸方向に反射される。
【0023】
第1偏光ビームスプリッタ11には、たとえば、キューブ型の偏光ビームスプリッタが使用される。第1偏光ビームスプリッタ11には、この他、たとえば、プレート型の偏光ビームスプリッタを使用することもできる。第1偏光ビームスプリッタ11は、第1偏光分離素子の一例である。
【0024】
[第2偏光ビームスプリッタ]
第2偏光ビームスプリッタ12は、第1偏光ビームスプリッタ11を透過した光の光路上に配置される。よって、第2偏光ビームスプリッタ12は、y軸方向において、第1偏光ビームスプリッタ11と同軸上(同一直線上)に配置される。第1偏光ビームスプリッタ11と同様に、第2偏光ビームスプリッタ12は、所定の入射面に入射される光の偏光状態に応じて、透過光と反射光とに分割する。本実施の形態では、水平方向に偏光された光が入射された場合、透過させ、垂直方向に偏光された光が入射された場合、反射させて、透過光と反射光とに分割する。
【0025】
第2偏光ビームスプリッタ12は、入射面がy軸と直交して配置される(入射する光の光軸と直交して配置される。)。また、分離面が、y軸に対し、x軸方向に45°傾けられて配置される。よって、反射光は、x軸方向に反射される。
【0026】
第2偏光ビームスプリッタ12には、たとえば、キューブ型の偏光ビームスプリッタが使用される。第2偏光ビームスプリッタ12には、この他、たとえば、プレート型の偏光ビームスプリッタを使用することもできる。第2偏光ビームスプリッタ12は、第2偏光分離素子の一例である。
【0027】
[第3偏光ビームスプリッタ]
第3偏光ビームスプリッタ13は、第1偏光ビームスプリッタ11で反射された光の光路上に配置される。よって、第3偏光ビームスプリッタ13は、x軸方向において、第1偏光ビームスプリッタ11と同軸上(同一直線上)に配置される。第1偏光ビームスプリッタ11及び第2偏光ビームスプリッタ12と同様に、第3偏光ビームスプリッタ13は、所定の入射面に入射される光の偏光状態に応じて、透過光と反射光とに分割する。本実施の形態では、水平方向に偏光された光が入射された場合、透過させ、垂直方向に偏光された光が入射された場合、反射させて、透過光と反射光とに分割する。
【0028】
第3偏光ビームスプリッタ13は、入射面がx軸と直交して配置される(入射する光の光軸と直交して配置される。)。また、分離面が、x軸に対し、y軸方向に45°傾けられて配置される。よって、反射光は、y軸方向に反射される。
【0029】
第3偏光ビームスプリッタ13には、たとえば、キューブ型の偏光ビームスプリッタが使用される。第3偏光ビームスプリッタ13には、この他、たとえば、プレート型の偏光ビームスプリッタを使用することもできる。第3偏光ビームスプリッタ13は、第3偏光分離素子の一例である。
【0030】
[第1ペンタプリズム]
第1ペンタプリズム21は、第2偏光ビームスプリッタ12でx軸方向に反射された光の光路上に配置される。よって、第1ペンタプリズム21は、x軸方向において、第2偏光ビームスプリッタ12と同軸上(同一直線上)に配置される。第1ペンタプリズム21は、所定の入射面に入射された光を2回反射させて、光路を90°偏角させる。本実施の形態では、x軸方向に入射される光をz軸方向に出射させる。第1ペンタプリズム21は、第1反射光学素子の一例である。
【0031】
[第2ペンタプリズム]
第2ペンタプリズム22は、第3偏光ビームスプリッタ13でy軸方向に反射された光の光路上に配置される。よって、第2ペンタプリズム22は、y軸方向において、第3偏光ビームスプリッタ13と同軸上(同一直線上)に配置される。第2ペンタプリズム22は、所定の入射面に入射された光を2回反射させて、光路を90°偏角させる。本実施の形態では、y軸方向に入射される光をz軸方向に出射させる。第2ペンタプリズム22は、第2反射光学素子の一例である。
【0032】
[第1波長板]
第1波長板31は、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する光(入射光)Lの光路(入射部P0inと第1偏光ビームスプリッタ11との間の光路)に挿抜される。挿抜は、第1挿抜部41によって行われる。第1波長板31は、光路に挿入されると、y軸方向において、第1偏光ビームスプリッタ11と同軸上(同一直線上)に配置される。
【0033】
第1波長板31は、1/2波長板(1/2λ板)で構成される。1/2波長板は、直線偏光の偏光方向(偏光方位)を切り替える変える機能(偏光面の向きを切り替える機能)を有する。具体的には、入射される光の偏光方向に対し、その光学軸(高速軸又は低速軸)をθ°傾けると、出射される光の偏光方向が、入射される光の偏光方向に対し2θ°傾く。したがって、たとえば、入射される光の偏光方向に対し、光学軸を45°傾ければ、出射される光の偏光方向を入射される光の偏光方向に対し90°傾けることができる。上記のように、本実施の形態において、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する光(入射光)Lの偏光方向は水平方向である。1/2波長板である第1波長板31は、その光学軸が水平方向に対し45°傾けて配置される。これにより、第1波長板31の挿抜によって、第1偏光ビームスプリッタ11に入射させる光の偏光方向を選択的に切り替えることができる。具体的には、第1波長板31を光路に挿入すると、垂直方向に偏光された光が第1偏光ビームスプリッタ11に入射され、第1波長板31を光路から退避させると、水平方向に偏光された光が第1偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0034】
[第1挿抜部]
図2は、挿抜部の構成の一例を示す図である。
【0035】
図2に示すように、第1挿抜部41は、第1シリンダ41A(たとえば、エアシリンダ)を有し、第1シリンダ41Aで第1波長板31を進退移動させて、第1波長板31を光路に挿抜する。第1シリンダ41Aは、第1波長板31をy軸と直交する方向に進退移動させる。本実施の形態では、第1波長板31をx軸方向に進退移動させる。第1波長板31は、第1シリンダ41Aに駆動されて、光路上の挿入位置WP1inと、光路から退避した退避位置WP1outとの間を移動する。
【0036】
第1挿抜部41の駆動は、図示しない制御装置によって制御される。制御装置は、たとえば、プロセッサ及びメモリを備えたコンピュータで構成される。すなわち、コンピュータが、所定のプログラムを実行することで、制御装置として機能する。
【0037】
[第2波長板]
第2波長板32は、第1偏光ビームスプリッタ11を透過し、第2偏光ビームスプリッタ12に入射する光の光路(第1偏光ビームスプリッタ11と第2偏光ビームスプリッタ12との間の光路)に挿抜される。挿抜は、第2挿抜部42によって行われる。第2波長板32は、光路に挿入されると、y軸方向において、第1偏光ビームスプリッタ11及び第2偏光ビームスプリッタ12と同軸上(同一直線上)に配置される。
【0038】
第2波長板32は、1/2波長板で構成される。第2波長板32は、その光学軸が水平方向に対し45°傾けて配置される。これにより、第2波長板32の挿抜によって、第2偏光ビームスプリッタ12に入射させる光の偏光方向を選択的に切り替えることができる。
【0039】
ここで、上記のように、本実施の形態では、水平方向に偏光された光が、第1偏光ビームスプリッタ11を透過する。したがって、第2波長板32を光路に挿入すると、垂直方向に偏光された光が、第2偏光ビームスプリッタ12に入射される。一方、第2波長板32を光路から退避させると、水平方向に偏光された光が第2偏光ビームスプリッタ12に入射される。
【0040】
[第2挿抜部]
図2に示すように、第2挿抜部42は、第2シリンダ42A(たとえば、エアシリンダ)を有し、第2シリンダ42Aで第2波長板32を進退移動させて、第2波長板32を光路に挿抜する。第2シリンダ42Aは、第2波長板32をy軸と直交する方向に進退移動させる。本実施の形態では、第2波長板32をx軸方向に進退移動させる。第2波長板32は、第2シリンダ42Aに駆動されて、光路上の挿入位置WP2inと、光路から退避した退避位置WP2outとの間を移動する。
【0041】
第2挿抜部42の駆動は、図示しない制御装置によって制御される。
【0042】
[第3波長板]
第3波長板33は、第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射され、第3偏光ビームスプリッタ13に入射する光の光路(第1偏光ビームスプリッタ11と第3偏光ビームスプリッタ13との間の光路)に挿抜される。挿抜は、第3挿抜部43によって行われる。第3波長板33は、光路に挿入されると、x軸方向において、第1偏光ビームスプリッタ11及び第3偏光ビームスプリッタ13と同軸上(同一直線上)に配置される。
【0043】
第3波長板33は、1/2波長板で構成される。第3波長板33は、その光学軸が水平方向に対し45°傾けて配置される。これにより、第3波長板33の挿抜によって、第3偏光ビームスプリッタ13に入射させる光の偏光方向を選択的に切り替えることができる。
【0044】
ここで、上記のように、本実施の形態では、垂直方向に偏光された光が、第1偏光ビームスプリッタ11によってx軸方向に反射される。したがって、第3波長板33を光路に挿入すると、水平方向に偏光された光が、第3偏光ビームスプリッタ13に入射される。一方、第3波長板33を光路から退避させると、垂直方向に偏光された光が第3偏光ビームスプリッタ13に入射される。
【0045】
[第3挿抜部]
図2に示すように、第3挿抜部43は、第3シリンダ(たとえば、エアシリンダ)を有し、第3シリンダ43Aで第3波長板33を進退移動させて、第3波長板33を光路に挿抜する。第3シリンダ43Aは、第3波長板33をy軸と直交する方向に進退移動させる。本実施の形態では、第3波長板33をx軸方向に進退移動させる。第3波長板33は、第3シリンダ43Aに駆動されて、光路上の挿入位置WP3inと、光路から退避した退避位置WP3outとの間を移動する。
【0046】
第3挿抜部43の駆動は、図示しない制御装置によって制御される。
【0047】
[光路切替装置の作用]
以上のように構成される本実施の形態の光路切替装置1は、第1波長板31、第2波長板32及び第3波長板33を所定の組み合わせで光路に挿抜することにより、光路の切り替えが行われる。
【0048】
図3は、選択する光路と各波長板の挿抜の設定の関係を示す表である。
【0049】
第1光路を選択する場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を退避位置に設定する。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。第1光路を選択すると、第1出射部P1outからy軸方向に光が出射される。
【0050】
第2光路を選択する場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を挿入位置に設定する。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。第2光路を選択すると、第2出射部P2outからz軸方向に光が出射される。
【0051】
第3光路を選択する場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を挿入位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。第3光路を選択すると、第3出射部P3outからx軸方向に光が出射される。
【0052】
第4光路を選択する場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を退避位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。第4光路を選択すると、第4出射部P4outからz軸方向に光が出射される。
【0053】
[第1光路]
図4は、第1光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【0054】
上記のように、第1光路を選択した場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を退避位置に設定する。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。一例として、
図4では、第3波長板33を退避位置に設定した場合の例を示している。
【0055】
光(入射光)Lは、入射部P0inに対し、y軸方向に入射される。入射部P0inに入射された光Lは、そのまま第1偏光ビームスプリッタ11に入射される。第1偏光ビームスプリッタ11は、水平方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をそのままy軸方向に透過させる。
【0056】
第1偏光ビームスプリッタ11を透過した光は、そのまま第2偏光ビームスプリッタ12に入射する。第1偏光ビームスプリッタ11と同様に、第2偏光ビームスプリッタ12は、水平方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をそのままy軸方向に透過させる。
【0057】
以上の結果、第1出射部P1outからy軸方向に光が出射される。
【0058】
[第2光路]
図5は、第2光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【0059】
上記のように、第2光路を選択した場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を挿入位置に設定する。一例として、
図5では、第3波長板33を退避位置に設定した場合の例を示している。
【0060】
光(入射光)Lは、入射部P0inに対し、y軸方向に入射される。入射部P0inに入射された光Lは、そのまま第1偏光ビームスプリッタ11に入射される。第1偏光ビームスプリッタ11は、水平方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をそのままy軸方向に透過させる。
【0061】
第1偏光ビームスプリッタ11を透過した光は、第2波長板32を透過して、第2偏光ビームスプリッタ12に入射する。第2波長板32は、入射した光の偏光方向(偏光方位)を90°傾けて出射させる。この結果、第2偏光ビームスプリッタ12に入射する光の偏光方向が、水平方向から垂直方向に切り替わる。
【0062】
第2偏光ビームスプリッタ12は、垂直方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をx軸方向に反射させる。この結果、光の進行方向が、x軸方向に切り替わる。
【0063】
第2偏光ビームスプリッタ12でx軸方向に反射された光は、第1ペンタプリズム21に入射する。第1ペンタプリズム21は、入射された光を2回反射して、z軸方向に出射する。
【0064】
以上の結果、第2出射部P2outからz軸方向に光が出射される。
【0065】
[第3光路]
図6は、第3光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【0066】
上記のように、第3光路を選択した場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を挿入位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。一例として、
図6では、第2波長板32を退避位置に設定した場合の例を示している。
【0067】
光(入射光)Lは、入射部P0inに対し、y軸方向に入射される。入射部P0inに入射された光Lは、第1波長板31を透過して、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する。第1波長板31は、入射した光の偏光方向(偏光方位)を90°傾けて出射させる。この結果、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する光の偏光方向が、水平方向から垂直方向に切り替わる。
【0068】
第1偏光ビームスプリッタ11は、垂直方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をx軸方向に反射させる。この結果、光の進行方向が、x軸方向に切り替わる。
【0069】
第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射された光は、第3波長板33を透過して、第3偏光ビームスプリッタ13に入射する。第3波長板33は、入射した光の偏光方向(偏光方位)を90°傾けて出射させる。この結果、第3偏光ビームスプリッタ13に入射する光の偏光方向が、垂直方向から水平方向に切り替わる。
【0070】
第3偏光ビームスプリッタ13は、水平方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をそのままx軸方向に透過させる。
【0071】
以上の結果、第3出射部P3outからx軸方向に光が出射される。
【0072】
[第4光路]
図7は、第4光路を選択した場合の光の軌跡を示す図である。
【0073】
上記のように、第4光路を選択した場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を退避位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。一例として、
図7では、第2波長板32を退避位置に設定した場合の例を示している。
【0074】
光(入射光)Lは、入射部P0inに対し、y軸方向に入射される。入射部P0inに入射された光Lは、第1波長板31を透過して、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する。第1波長板31は、入射した光の偏光方向(偏光方位)を90°傾けて出射させる。この結果、第1偏光ビームスプリッタ11に入射する光の偏光方向が、水平方向から垂直方向に切り替わる。
【0075】
第1偏光ビームスプリッタ11は、垂直方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をx軸方向に反射させる。この結果、光の進行方向が、x軸方向に切り替わる。
【0076】
第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射された光は、そのまま第3偏光ビームスプリッタ13に入射する。第3偏光ビームスプリッタ13は、垂直方向に偏光された光が入射された場合、入射された光をy軸方向に反射させる。この結果、光の進行方向が、y軸方向に切り替わる。
【0077】
第3偏光ビームスプリッタ13でy軸方向に反射された光は、第2ペンタプリズム22に入射する。第2ペンタプリズム22は、入射された光を2回反射して、z軸方向に出射する。
【0078】
以上の結果、第4出射部P4outからz軸方向に光が出射される。
【0079】
[光路切替装置の効果]
本実施の形態の光路切替装置1によれば、波長板(第1波長板31、第2波長板32及び第3波長板33)の挿抜だけで、簡単に光路を切り替えることができる。また、光量を落とさずに、光路を切り替えることができる。
【0080】
また、光路の曲げられる方向は、偏光ビームスプリッタ(第1偏光ビームスプリッタ11、第2偏光ビームスプリッタ12及び第3偏光ビームスプリッタ13)、及び、ペンタプリズム(第1ペンタプリズム21及び第2ペンタプリズム22)のみで定まるため、いずれの光路においても、正確かつ安定した光路を実現できる。また、各要素の配置の調整も容易である。更に、各要素は、一度調整すれば、その後は、完全に固定できるため、メンテナンスも容易である。
【0081】
また、波長板の挿抜だけで光路を切り替えるため、構成を簡素化できる。また、これにより、低コスト化を実現できる。
【0082】
本実施の形態の光路切替装置1は、干渉計等、光を用いた測定装置に好適である。特に、光の方向を切り替えて測定する場合に有効である。すなわち、簡単かつ正確に光路(光軸)の切り替えができるので、簡単かつ正確に測定を行うことができる。また、光量を落とさずに光路(光軸)を切り替えることができるので、高精度な測定を安定して行うことができる。また、最大測長距離の点においても有利に働く。
【0083】
[2]測定装置
次に、光路切替装置を用いた測定装置について説明する。
【0084】
光を用いた測定装置(たとえば、光の干渉現象を利用して測定する測定装置等)に光路切替装置を使用することで、測定用の光の光路(光軸)を簡単かつ正確に切り替えることができる。
【0085】
ここでは、光の干渉現象を用いて真直度又は直角度を測定する測定装置に本発明を適用した場合を例に説明する。特に、XYZの3軸方向に移動可能な移動機構を備えた装置(たとえば、三次元座標測定機)において、移動機構の真直度又は直角度を測定する場合を例に説明する。
【0086】
[測定装置の構成]
図8は、測定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0087】
本実施の形態の測定装置100は、光(たとえば、レーザ光)の干渉現象を利用して、XYZの3軸方向に移動可能な移動機構の真直度又は直角度を測定する装置として構成される。
図8に示すように、測定装置100は、光源部110、測定部120、干渉計130、信号処理部140及び光路切替装置1等を備える。
【0088】
[光源部]
光源部110は、光源を有し、測定用の光を出射する。一例として、レーザ光を出射する。測定用のレーザ光は、所定の方向に偏光された光(単一偏光の光)である。一例として、水平方向に偏光されたレーザ光が入射される。なお、x軸及びy軸を含む平面の方向を水平方向とし、z軸の方向を垂直方向とする。光源部110は、光出射部の一例である。
【0089】
[測定部]
測定部120は、光源部110から出射される光(所定の方向に偏光されたレーザ光)を用いて、測定対象の真直度又は直角度を測定する。
【0090】
測定部120は、第1測定部120A、第2測定部120B、第3測定部120C、及び、第4測定部120Dを有する。第1測定部120Aは、移動軸をy軸とした場合のz軸方向の垂直変位量を測定する。第2測定部120Bは、移動軸をz軸とした場合のx軸方向の垂直変位量を測定する。第3測定部120Cは、移動軸をx軸とした場合のz軸方向の垂直変位量を測定する。第4測定部120Dは、移動軸をz軸とした場合のy軸方向の垂直変位量を測定する。
【0091】
なお、「移動軸」とは、測定対象として、意図して移動させている軸をいう。以下、移動軸への軸移動の際に、意図せずして変位(位置の誤差)してしまう、移動軸とは垂直方向の軸を「垂直変位軸」とする。また、垂直変位軸の方向の位置の誤差量(変位量)を「垂直変位量」とする。
【0092】
【0093】
上記のように、第1測定部120Aは、移動軸をy軸とした場合のz軸方向の真直度を測定する。すなわち、y軸を移動軸、z軸を垂直変位軸として、位置の誤差(変位量)を測定する。
【0094】
図9に示すように、第1測定部120Aは、偏光ビームスプリッタ121、1/4波長板(1/4λ板)122、偏向プリズム123、反射プリズム124、及び、コーナーキューブ125等を備える。
【0095】
光源部110から出射された光(単一偏光のレーザ光)は、光路切替装置1を経て、偏光ビームスプリッタ121に入射する。入射方向は、移動軸の方向である。第1測定部120Aは、y軸を移動軸とするので、y軸方向に光が入射される。
【0096】
偏光ビームスプリッタ121は、その偏光膜の光軸が、入射光の偏光方向(偏光方位)に対し45°傾いて配置される。この結果、偏光ビームスプリッタ121に入射された光は、透過光と反射光とに二分割される。透過光を測定光、反射光を参照光とする。偏光ビームスプリッタ121は、第4偏光分離素子の一例である。
【0097】
(1)測定光の軌跡
偏光膜を透過した測定光(透過光)は、1/4波長板122を透過後、第1の光路OP1を通って、偏向プリズム123に入射する。測定光は、1/4波長板122を透過することで、直線偏光から円偏光に変換される。
【0098】
偏向プリズム123は、入射した光に所定の傾きを与えて出射させる。傾きを与える方向は、垂直変位軸の方向である。第1測定部120Aは、z軸を垂直変位軸とするので、z軸方向に所定の傾きが与えられる。一例として、約1.3゜の傾きが与えられる。偏向プリズム123は、偏向光学素子の一例である。
【0099】
偏向プリズム123から出射された光は、反射プリズム124に入射する。反射プリズム124は、偏向プリズム123が与えた傾きを保って、入射した光を反射させる。この結果、反射した光は、同一の光路(第1の光路OP1)を通って、偏光ビームスプリッタ121に戻される。反射プリズム124は、第3反射光学素子の一例である。
【0100】
反射プリズム124で反射した光は、第1の光路OP1を戻る過程で偏向プリズム123及び1/4波長板122を通過する。この際、偏向プリズム123を通過することで、傾きが元の状態に戻される。また、1/4波長板122を通過することで、円偏光から直線偏光に戻される。ただし、偏光方向が、往路とは90°切り替わる。すなわち、往路で1/4波長板122に入射したときの偏光方向(偏光ビームスプリッタ121の偏光膜を透過したときの偏光方向)から偏光方向が90°切り替わる。
【0101】
第1の光路OP1を往復した測定光は、偏光方向が90°切り替わっていることから、偏光ビームスプリッタ121の偏光膜で反射される。偏光膜で反射された測定光は、コーナーキューブ125に入射する。コーナーキューブ125は、入射した光を再帰反射する。したがって、コーナーキューブ125に入射された測定光は、再び偏光ビームスプリッタ121に戻される。コーナーキューブ125は、第4反射光学素子の一例である。
【0102】
偏光ビームスプリッタ121に戻された測定光は、再び偏光ビームスプリッタ121の偏光膜で反射される。この後、第1の光路OP1と同様にして、第2の光路OP2を往復し、偏光ビームスプリッタ121に戻される。
【0103】
第2の光路OP2を往復した測定光は、偏光方向が90°切り替わっていることから、偏光ビームスプリッタ121の偏光膜を透過し、第1測定部120Aから出射される。
【0104】
(2)参照光の軌跡
最初に偏光ビームスプリッタ121の偏光膜で反射された反射光である参照光は、第1の光路OP1と同様にして、第3の光路OP3を往復し、偏光ビームスプリッタ121に戻される。
【0105】
第3の光路OP3を往復した参照光は、偏光ビームスプリッタ121の偏光膜で反射され、コーナーキューブ125に入射する。コーナーキューブ125に入射された参照光は、再び偏光ビームスプリッタ121に戻される。
【0106】
偏光ビームスプリッタ121に戻された参照光は、再び偏光ビームスプリッタ121の偏光膜で反射される。この後、第3の光路OP3と同様にして、第4の光路OP4を往復し、偏光ビームスプリッタ121に戻される。
【0107】
第4の光路OP4を往復した参照光は、偏光ビームスプリッタ121の偏光膜を透過し、測定光と共に第1測定部120Aから出射される。
【0108】
第1測定部120Aは、以上のように構成される。測定光及び参照光は、最後には偏向方向の直交した光として合成され、第1測定部120Aから出射される。
【0109】
以上の構成の第1測定部120Aでは、測定光及び参照光が、共に2本ずつ、平行かつ所定の角度(一例として約2.6゜)で拡がった測定系になる。この測定系では、偏向プリズム123又は反射プリズム124が、垂直変位軸の方向(測定光及び参照光が拡がった方向)に移動すると、そこに光路差が生じて、真直度又は直角度が測定される。本実施の形態では、偏向プリズム123を測定対象に取り付けて、その垂直変位軸の方向の移動(垂直変位量)を測定する。
【0110】
本構成によれば、真直度及び直角度の測定における誤差成分の一つである偏向プリズム123のピッチング及びヨーイングの影響を低減できる。
【0111】
第2測定部120B、第3測定部120C及び第4測定部120Dも基本構成は、第1測定部120Aと同じである。移動軸及び垂直変位軸の設定に応じて、各要素が配置される。したがって、第2測定部120B、第3測定部120C及び第4測定部120Dの構成の説明は省略する。
【0112】
[干渉計]
図10は、干渉計の一実施形態を示す概略構成図である。
【0113】
図10に示すように、干渉計130は、ビームスプリッタ131、第1偏光板132A、第2偏光板132B、ミラー133、1/4波長板134、第1フォトディテクタ135A、及び、第2フォトディテクタ135B等を備える。
【0114】
干渉計130には、測定部120から出射された光が、光路切替装置1を介して入射される。上記のように、測定部120から出射される光は、測定光及び参照光が合成された光(合成光)である。ただし、測定部120から出射される測定光及び参照光は、互いに偏向方向が直交しているため、合成されても、光の波形の足し合わせは行われない。
【0115】
ビームスプリッタ131は、いわゆる無偏光ビームスプリッタであり、入射された光を二等分割する。合成光は、ビームスプリッタ131によって、偏光状態及び合成状態を維持しながら二等分割される。
【0116】
ビームスプリッタ131によって二等分割された合成光の一方は、第1偏光板132Aに入射され、他方は、ミラー133及び1/4波長板(1/4λ板)134を介して、第2偏光板132Bに入射される。
【0117】
1/4波長板134は、合成光に含まれる参照光及び測定光の一方の位相を90°遅らせる目的で使用される。本実施の形態では、測定光の位相を90°遅らせる目的で使用される。よって、1/4波長板134を透過することで、合成光は、参照光の位相に対し、測定光の位相が90°遅れた光となる。
【0118】
第1偏光板132A及び第2偏光板132Bは、特定の方向に偏光した光のみを透過させる。第1偏光板132A及び第2偏光板132Bは、共に透過軸を参照光及び測定光の偏光方向(偏向方位)に対し45°傾けて配置される。この結果、第1偏光板132A及び第2偏光板132Bに参照光及び測定光の合成光を入射すると、参照光及び測定光の和が透過する。
【0119】
ここで、第1偏光板132Aには、参照光と測定光との間で位相ずれの生じていない合成光が入射される。このため、第1偏光板132Aからは、参照光と測定光の和が出射される。
【0120】
一方、第2偏光板132Bには、参照光の位相に対し測定光の位相が90°ずれた合成光が入射される。このため、第2偏光板132Bからは、参照光と、90°位相が遅れた測定光との和が出射される。
【0121】
第1偏光板132Aから出射された光は、第1フォトディテクタ135Aで受光され、第2偏光板132Bから出射された光は、第2フォトディテクタ135Bで受光される。第1フォトディテクタ135A及び第2フォトディテクタ135Bは、それぞれ入射した光の強度の電圧を出力する。したがって、第1フォトディテクタ135Aからは、参照光と測定光の和の強度の電圧が出力される。また、第2フォトディテクタ135Bからは、参照光と、90°位相が遅れた測定光との和の強度の電圧が出力される。第1フォトディテクタ135A及び第2フォトディテクタ135Bは、受光部の一例である。
【0122】
[信号処理部]
信号処理部140は、第1フォトディテクタ135A及び第2フォトディテクタ135Bの出力信号(干渉信号)を処理して、測定対象の変位(偏光プリズムの変位)を算出(測定)する。信号処理部140は、処理部の一例である。
【0123】
ここで、第1フォトディテクタ135Aの出力は、参照光と測定光の光路差が、波長の整数倍と一致するときに強度が増し、その中間で強度が低下する。すなわち、第1フォトディテクタ135Aは、光路差に対しcos関数の関係にある電圧を出力する。
【0124】
一方、第2フォトディテクタ135Bの出力は、参照光と測定光の光路差にレーザ光の波長の1/4を加えた距離が、波長の整数倍と一致するときに強度が増し、その中間で強度が低下する。すなわち、光路差に対しsin関数の関係にある電圧を出力する。
【0125】
第1フォトディテクタ135Aの出力であるA相は、第2フォトディテクタ135Bの出力であるB相との位相が90°ずれた正弦波の関係にある信号である。したがって、測定対象の移動方向を判別できる。また、変位は、位相が90°(π/2)ずれたA相とB相の信号を整形して、レーザ光の波長の1/4分割で認識できる。
【0126】
信号処理部140は、インターポレータ(内挿分割器)を含む。光を干渉させて得られるA相とB相の信号は、完全に正弦波であることから、インターポレータに入力して、その位相と比例関係にある測定対象の変位を更に高分解で求めることができる。この検出原理は、温度、気圧、空気の乱れから生じる光路の変化をキャンセルし、繰返し精度が高く安定した測定を実現できる。
【0127】
[光路切替装置]
図11は、光路切替装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0128】
基本構成は、上記実施の形態で説明した光路切替装置1と同じであり、4つの光路(第1光路~第4光路)を選択的に切り替える装置として構成される。
【0129】
光源部110からの光(単一偏光のレーザ光)は、共通の入射部P0inに入射される。光は、y軸方向に入射される。
【0130】
第1光路が選択された場合、共通の入射部P0inに入射された光は、第1出射部P1outからy軸方向に出射される。第1出射部P1outから出射された光は、第1測定部120Aに入射される。また、第1測定部120Aからの戻り光(測定光と参照光の合成光)は、第1入射部P1inに入射され、出射時と同じ光路を通って、共通の出射部P0outから出射される。共通の出射部P0outから出射された光は、干渉計130に入射される。
【0131】
第2光路が選択された場合、共通の入射部P0inに入射された光は、第2出射部P2outからz軸方向に出射される。第2出射部P2outから出射された光は、第2測定部120Bに入射される。また、第2測定部120Bからの戻り光(測定光と参照光の合成光)は、第2入射部P2inに入射され、出射時と同じ光路を通って、共通の出射部P0outから出射される。共通の出射部P0outから出射された光は、干渉計130に入射される。
【0132】
第3光路が選択された場合、共通の入射部P0inに入射された光は、第3出射部P3outからx軸方向に出射される。第3出射部P3outから出射された光は、第3測定部120Cに入射される。また、第3測定部120Cからの戻り光(測定光と参照光の合成光)は、第3入射部P3inに入射され、出射時と同じ光路を通って、共通の出射部P0outから出射される。共通の出射部P0outから出射された光は、干渉計130に入射される。
【0133】
第4光路が選択された場合、共通の入射部P0inに入射された光は、第4出射部P4outからz軸方向に出射される。第4出射部P4outから出射された光は、第4測定部120Dに入射される。また、第4測定部120Dからの戻り光(測定光と参照光の合成光)は、第4入射部P4inに入射され、出射時と同じ光路を通って、共通の出射部P0outから出射される。共通の出射部P0outから出射された光は、干渉計130に入射される。
【0134】
このように、光路を切り替えることにより、光源部110からの光に出射先を切り替えることができる。すなわち、測定に使用する測定部(第1測定部120A~第4測定部120D)を切り替えることができる。
【0135】
第1光路を選択する場合は、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を退避位置に設定する。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。
【0136】
第2光路を選択する場合は、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を挿入位置に設定する。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。
【0137】
第3光路を選択する場合は、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を挿入位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。
【0138】
第4光路を選択する場合は、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を退避位置に設定する。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。
【0139】
[測定装置の作用]
ここでは、接触式の三次元座標測定機の移動機構の真直度、直角度を測定する場合を例に説明する。
【0140】
接触式の三次元座標測定機は、xyzの3軸方向に移動可能なプローブを有し、プローブを測定対象に接触させて、測定対象の三次元座標値を検出する。三次元座標測定機は、一般に、プローブをz軸方向に移動させるz軸移動機構と、z軸移動機構をx軸方向に移動させるx軸移動機構と、x軸移動機構をy軸方向に移動させるy軸移動機構と、を備え、各移動機構を個別に駆動して、プローブをxyzの3軸方向に移動させる。
【0141】
三次元座標測定機の移動機構の真直度、直角度を測定する場合は、たとえば、プローブの装着部に第1測定部120A~第4測定部120Dの偏向プリズム123を取り付けて測定を実施する。
【0142】
ここで、上記のように、第1測定部120Aは、移動軸をy軸とした場合のz軸方向の垂直変位量を測定する。第2測定部120Bは、移動軸をz軸とした場合のx軸方向の垂直変位量を測定する。第3測定部120Cは、移動軸をx軸とした場合のz軸方向の垂直変位量を測定する。第4測定部120Dは、移動軸をz軸とした場合のy軸方向の垂直変位量を測定する。
【0143】
第1測定部120Aは、光路切替装置1から出射される光が、y軸方向に入射し、かつ、偏向プリズム123によって光がz軸方向に拡がるよう、各要素が配置設定される。
【0144】
第2測定部120Bは、光路切替装置1から出射される光が、z軸方向に入射し、かつ、偏向プリズム123によって光がx軸方向に拡がるよう、各要素が配置設定される。
【0145】
第3測定部120Cは、光路切替装置1から出射される光が、x軸方向に入射し、かつ、偏向プリズム123によって光がz軸方向に拡がるよう、各要素が配置設定される。
【0146】
第4測定部120Dは、光路切替装置1から出射される光が、z軸方向に入射し、かつ、偏向プリズム123によって光がy軸方向に拡がるよう、各要素が配置設定される。
【0147】
また、光路切替装置1は、第1出射部P1outから出射される光が、y軸方向に沿って第1測定部120Aに入射するように設定される。また、第2出射部P2outから出射される光が、z軸方向に沿って第2測定部120Bに入射するように設定される。また、第3出射部P3outから出射される光が、x軸方向に沿って第3測定部120Cに入射するように設定される。また、第4出射部P4outから出射される光が、z軸方向に沿って第4測定部120Dに入射するように設定される。
【0148】
以下、xy平面(x軸及びy軸を含む平面:水平面)をデータム面とし、データム面に対するz軸の直角度を測定する場合を例に説明する。
【0149】
(1)y軸方向の直角度の測定
最初に、データムのy軸からの傾きを求める。すなわち、y軸を移動軸とし、z軸を垂直変位軸として、z軸方向の垂直変位量を求める。測定には、第1測定部120Aを使用する。
【0150】
第1測定部120Aを使用する場合、光路切替装置1において、第1光路を選択する。この場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を退避位置に設定する(
図3及び
図4参照)。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。これにより、光源部110からの光が、第1出射部P1outからy軸方向に出射され、第1測定部120Aに入射する。
【0151】
測定対象(本例では、プローブの装着部であって、偏向プリズム123の取り付け部)をy軸移動させ、各y位置におけるz軸方向の垂直変位量Ey-zを測定する。
【0152】
得られた測定データ(y,Ey-z)を処理し、データムのy軸からの傾きθyを求める。具体的には、最小自乗直線近似などにより傾きθyを求める。
【0153】
次に、z軸を移動軸とし、y軸を垂直変位軸として、y軸方向の垂直変位量を求める。測定には、第4測定部120Dを使用する。
【0154】
第4測定部120Dを使用する場合、光路切替装置1において、第4光路を選択する。この場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を退避位置に設定する(
図3及び
図7参照)。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。これにより、光源部110からの光が、第4出射部P4outからz軸方向に出射され、第4測定部120Dに入射する。
【0155】
測定対象をz軸移動させ、各z位置におけるy軸方向の垂直変位量Ez-yを測定する。
【0156】
得られた測定データ(z,Ez-y)に対し、z-y面内でθyだけ回転変換する。回転変換した測定データを(z‘,Ez-y’)とする。すべてのz位置において、Ez-y‘の最大最小差が、z軸におけるy軸方向の直角度(z-y直角度)となる。
【0157】
(2)x軸方向の直角度の測定
y軸方向の直角度の測定と同様に、まず、データムのx軸からの傾きを求める。すなわち、x軸を移動軸とし、z軸を垂直変位軸として、z軸方向の垂直変位量を求める。測定には、第3測定部120Cを使用する。
【0158】
第3測定部120Cを使用する場合、光路切替装置1において、第3光路を選択する。この場合、第1波長板31を挿入位置に設定し、かつ、第3波長板33を挿入位置に設定する(
図3及び
図6参照)。第2波長板32は、いずれの位置に設定してもよい。これにより、光源部110からの光が、第3出射部P3outからx軸方向に出射され、第3測定部120Cに入射する。
【0159】
測定対象をx軸移動させ、各x位置におけるz軸方向の垂直変位量Ex-zを測定する。
【0160】
得られた測定データ(x,Ex-z)を処理し、データムのx軸からの傾きθxを求める。
【0161】
次に、z軸を移動軸とし、x軸を垂直変位軸として、x軸方向の垂直変位量を求める。測定には、第2測定部120Bを使用する。
【0162】
第2測定部120Bを使用する場合、光路切替装置1において、第2光路を選択する。この場合、第2光路を選択する場合、第1波長板31を退避位置に設定し、かつ、第2波長板32を挿入位置に設定する(
図3及び
図5参照)。第3波長板33は、いずれの位置に設定してもよい。これにより、光源部110からの光が、第2出射部P2outからz軸方向に出射され、第2測定部120Bに入射する。
【0163】
測定対象をz軸移動させ、各z位置におけるx軸方向の垂直変位量Ez-xを測定する。
【0164】
得られた測定データ(z,Ez-x)に対し、z-x面内でθxだけ回転変換する。回転変換した測定データを(z‘,Ez-x’)とする。すべてのz位置において、Ez-x‘の最大最小差が、x軸方向における直角度(z-x直角度)となる。
【0165】
データム面(xy平面)に対するz軸の直角度は、z-y直角度及びz-x直角度の自乗和の平方根により求められる。
【0166】
なお、各測定データ(y,Ey-z)、(z,Ez-y)、(x,Ex-z)、(z,Ez-x)の取得は一連の動作で行い、その後に一括して測定データ(y,Ey-z)、(z,Ez-y)、(x,Ex-z)、(z,Ez-x)を処理することにより、効率よく測定を実施できる。
【0167】
以上説明したように、本実施の形態の測定装置100によれば、光路切替装置1を有することにより、簡単に各軸の真直度、直角度を測定できる。すなわち、従来は、移動軸を変えるたびに、光軸を調整し直す必要があったが、本実施の形態の測定装置100によれば、光路切替装置1で光路を切り替えるだけで、簡単に測定対象とする軸を切り替えることができる。
【0168】
また、光路切替装置1は、出荷前の段階で各要素(偏光ビームスプリッタ及びペンタプリズム)の配置を調整でき、その後、完全に固定できるため、測定のたびに光軸の調整を行う従来の構成に比べ、配置による誤差の発生を大幅に抑制できる。
【0169】
更に、各要素の配置の誤差は、出荷前に容易に検証でき(たとえば、真円度計と円筒スコヤを用いる方法など)、その誤差を測定システムにあらかじめ登録しておくことにより、計算により容易に補正できる。
【0170】
たとえば、上記y軸方向の直角度の測定において、出荷前の調整の段階で、第1出射部P1outから出射される光の光軸と、第4出射部P4outから出射される光の光軸との間に、直角からφだけの誤差がある場合、θyに代えて、θy+φを用いて計算すればよい。
【0171】
また、上記のように、光路切替装置1を介して出射される光は、光源部110の光の光量とほぼ等しく、高精度な測定を安定して行うことができる。また、最大測長距離の点においても有利に働く。
【0172】
更に、光路切替装置1から出射される光の方向は、固定された偏光ビームスプリッタ(第1偏光ビームスプリッタ11、第2偏光ビームスプリッタ12及び第3偏光ビームスプリッタ13)によってのみ定まるため、いずれの移動軸の測定においても、安定している。
【0173】
また、垂直変位軸に対し、偏光ビームスプリッタによって垂直に光軸を曲げた場合の測定誤差はcos誤差であり、小さな光軸曲げ誤差であれば、その影響は無視できる。また、垂直変位軸に対し、ペンタプリズム(第1ペンタプリズム21及び第2ペンタプリズム22)によって平行に光軸を曲げた場合の測定誤差もcos誤差であり、小さな光軸曲げ誤差であれば影響は無視できる。このため、配置の調整が容易である。
【0174】
また、上記のように、偏光ビームスプリッタ及びペンタプリズムの配置の誤差は、出荷前に容易に検証でき、トレーサビリティを有している。したがって、誤さ情報を保持することで、測定結果の補正も容易にできる。
【0175】
[変形例]
[光路切替装置の変形例]
(1)2つの光路を切り替える場合
図12は、光路切替装置の他の一例を示す図である。
【0176】
図12に示す光路切替装置1Aは、2つの光路(光路A及び光路B)を選択的に切り替える装置として構成される。光路Aは、第1の出射部PAoutからy軸方向に光を出射させる光路である。光路Bは、第2の出射部PBoutからx軸方向に光を出射させる光路である。
【0177】
入射光Lは、所定の方向に偏光された光(単一偏光の光)であり、y軸方向に向けて入射部P0inに入射される。
【0178】
図12に示すように、光路切替装置1Aは、第1偏光ビームスプリッタ11、第1波長板31、及び、第1挿抜部41等を備える。第1偏光ビームスプリッタ11、第1波長板31、及び、第1挿抜部41の構成は、上記実施の形態の光路切替装置1と同じである。
【0179】
第1波長板31の挿抜によって、光路の切り替えができる。第1波長板31を光路に挿入すると、光路Bに設定され、第1波長板31を光路から退避させると、光路Aに設定される。
【0180】
光路Aを選択した場合(第1波長板31を光路から退避させた場合)、入射光Lは、第1偏光ビームスプリッタ11を透過し、第1の出射部PAoutからy軸方向に出射される。
【0181】
光路Bを選択した場合(第1波長板31を光路に挿入した場合)、入射光Lは、第1波長板31を通過後、第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射され、第2の出射部PBoutからx軸方向に出射される。
【0182】
このように、第1波長板31の挿抜によって、2つの光路A、Bを選択的に切り替えることができる。
【0183】
【0184】
図13に示す光路切替装置1A’は、
図12に示す光路切替装置1Aに対し、更にペンタプリズム23を組み合わせたものである。ペンタプリズム23は、第1偏光ビームスプリッタ11で反射される光の光路上に配置され、入射する光を2回反射させて、所定方向に出射させる。本例では、z軸方向に出射させる。
【0185】
本例の光路切替装置1A’によれば、第1波長板31を光路に挿入すると、入射光Lが第2の出射部PB‘outから出射される。具体的には、入射光Lは、第1波長板31を通過後、第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射され、ペンタプリズム23に入射する。ペンタプリズム23は、入射した光を2回反射させて、第2の出射部PB’outからz軸方向に出射させる。
【0186】
(2)3つの光路を切り替える場合
図14は、光路切替装置の他の一例を示す図である。
【0187】
図14に示す光路切替装置1Bは、3つの光路(光路A、光路B及び光路C)を選択的に切り替える装置として構成される。光路Aは、第1の出射部PAoutからy軸方向に光を出射させる光路である。光路Bは、第2の出射部PBoutからz軸方向に光を出射させる光路である。光路Cは、第3の出射部PCoutからx軸方向に光を出射させる光路である。
【0188】
入射光Lは、所定の方向に偏光された光(単一偏光の光)であり、y軸方向に向けて入射部P0inに入射される。
【0189】
図14に示すように、光路切替装置1Aは、第1偏光ビームスプリッタ11、第2偏光ビームスプリッタ12、第2ペンタプリズム、第1波長板31、第2波長板32、第1挿抜部41、及び、第2挿抜部42等を備える。第1偏光ビームスプリッタ11、第2偏光ビームスプリッタ12、第1ペンタプリズム21、第1波長板31、第2波長板32、第1挿抜部41、及び、第2挿抜部42の構成は、上記実施の形態の光路切替装置1と同じである。
【0190】
第1波長板31及び第2波長板32の挿抜によって、光路の切り替えができる。第1波長板31を光路に挿入すると、光路Bに設定される。また、第1波長板31及び第2波長板32を光路から退避させると、光路Aに設定される。また、第1波長板31を光路から退避させる一方、第2波長板32を光路に挿入すると、光路Cに設定される。
【0191】
光路Aを選択した場合(第1波長板31及び第2波長板32を光路から退避させた場合)、入射光Lは、第1偏光ビームスプリッタ11及び第2偏光ビームスプリッタ12を透過し、第1の出射部PAoutからy軸方向に出射される。
【0192】
光路Bを選択した場合(第1波長板31を光路に挿入した場合)、入射光Lは、第1波長板31を通過後、第1偏光ビームスプリッタ11でx軸方向に反射され、第2の出射部PBoutからx軸方向に出射される。なお、光路Bを選択した場合、第2波長板32の挿抜は任意である。
【0193】
光路Cを選択した場合(第1波長板31を光路から退避させる一方、第2波長板32を光路に挿入した場合)、入射光Lは、第1偏光ビームスプリッタ11を透過し、第2波長板32を介して、第2偏光ビームスプリッタ12に入射する。第2偏光ビームスプリッタ12に入射した光は、その偏光面でX軸方向に反射され、第1ペンタプリズム21に入射する。第1ペンタプリズム21は、入射した光を2回反射させて、第3の出射部PCoutからz軸方向に出射させる。
【0194】
このように、第1波長板31及び第2波長板32の挿抜によって、3つの光路A、B、Cを選択的に切り替えることができる。
【0195】
(3)光路切替装置のその他の変形例
以上のように、光路切替装置は、偏光ビームスプリッタ及び波長板の組み合わせ(必要に応じて更にペンタプリズムの組み合わせ)によって、光路を自由に設定できる。
【0196】
なお、上記実施の形態では、反射光学素子として、ペンタプリズムを使用しているが、反射光学素子は、これに限定されるものではない。この他、ミラーを使用して、光を所定の方向に反射させる構成とすることもできる。
【0197】
また、上記実施の形態では、波長板を光路に挿抜する手段として、シリンダを採用しているが、波長板を光路に挿抜する手段は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ターレット等を利用して、波長板を光路に挿抜する構成とすることもできる。
【0198】
[測定装置]
上記実施の形態では、真直度、直角度を測定する装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。光を用いて測定する測定機に広く適用できる。たとえば、光の干渉を利用した測長機等にも適用できる。
【符号の説明】
【0199】
1…光路切替装置、1A…光路切替装置、1A'…光路切替装置、1B…光路切替装置、11…第1偏光ビームスプリッタ、12…第2偏光ビームスプリッタ、13…第3偏光ビームスプリッタ、21…第1ペンタプリズム、22…第2ペンタプリズム、23…ペンタプリズム、31…第1波長板、32…第2波長板、33…第3波長板、41…第1挿抜部、41A…第1シリンダ、42…第2挿抜部、42A…第2シリンダ、43…第3挿抜部、43A…第3シリンダ、100…測定装置、110…光源部、120…測定部、120A…第1測定部、120B…第2測定部、120C…第3測定部、120D…第4測定部、121…偏光ビームスプリッタ、122…1/4波長板、123…偏向プリズム、124…反射プリズム、125…コーナーキューブ、130…干渉計、131…ビームスプリッタ、132A…第1偏光板、132B…第2偏光板、133…ミラー、134…1/4波長板、135A…第1フォトディテクタ、135B…第2フォトディテクタ、140…信号処理部、L…入射光、P0in…入射部、P0out…出射部、P1in…第1入射部、P1out…第1出射部、P2in…第2入射部、P2out…第2出射部、P3in…第3入射部、P3out…第3出射部、P4in…第4入射部、P4out…第4出射部、PAout…第1の出射部、PBout…第2の出射部、PB'out…第2の出射部、PCout…第3の出射部、WP1in…第1波長板の挿入位置、WP1out…第1波長板の退避位置、WP2in…第2波長板の挿入位置、WP2out…第2波長板の退避位置、WP3in…第3波長板の挿入位置、WP3out…第3波長板の退避位置