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特開2024-123471論文構造解析装置、論文構造解析方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123471
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】論文構造解析装置、論文構造解析方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/279 20200101AFI20240905BHJP
   G06F 40/151 20200101ALI20240905BHJP
   G06F 40/143 20200101ALI20240905BHJP
   G06F 40/258 20200101ALI20240905BHJP
   G06F 16/958 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
G06F40/279
G06F40/151
G06F40/143
G06F40/258
G06F16/958
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030913
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)発行日 予稿集公開 2022年3月7日、発明を発表した日 2022年3月15日(開催日 2022年3月14日~18日) 刊行物 言語処理学会 第28回年次大会(予稿集) https://www.anlp.jp/nlp2022/ (2)公開日 2022年6月13日 刊行物 LREC2022(the 13th Conference on Language Resources and Evaluation) http://www.lrec-conf.org/proceedings/lrec2022/index.html
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】成松 宏美
(72)【発明者】
【氏名】南 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵大
(72)【発明者】
【氏名】小山 康平
【テーマコード(参考)】
5B091
5B109
5B175
【Fターム(参考)】
5B091AA15
5B091AB01
5B091CA01
5B091CA21
5B109NH01
5B109NH06
5B109NH13
5B109NH14
5B109TA11
5B175DA01
5B175FA01
(57)【要約】
【課題】従来よりも高精度に論文の文書構造を解析することができる論文構造解析装置を提供する。
【解決手段】論文構造解析装置は、PDF形式の論文をHTML形式に変換するHTML変換部と、HTML形式に変換された論文の本文から、著者名に付随する括弧記号の挿入の有無、および前記括弧記号が挿入されている場合の前記括弧記号の種類および挿入位置に関する複数の検出パターンを設定して、引用アンカを検出する引用アンカ検出部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDF形式の論文をHTML形式に変換するHTML変換部と、
HTML形式に変換された論文の本文から、著者名に付随する括弧記号の挿入の有無、および前記括弧記号が挿入されている場合の前記括弧記号の種類および挿入位置に関する複数の検出パターンを設定して、引用アンカを検出する引用アンカ検出部を含む
論文構造解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の論文構造解析装置であって、
前記引用アンカに範囲を示す記号が含まれる場合に、前記引用アンカを範囲によって示された番号を列挙する形式に変換する対応付け部を含む
論文構造解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の論文構造解析装置であって、
HTML形式に変換された論文の本文から所定のキーワードを検出し、前記所定のキーワードの直前に括弧付き番号または括弧無しの番号を含む場合に前記括弧付き番号または前記括弧無しの番号を含む行を章の先頭とするか、あるいは前記所定のキーワードのフォントサイズと一致するフォントサイズで表記されている行を章の先頭として、前記論文の本文を章ごとに抽出する章抽出部を含む
論文構造解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の論文構造解析装置であって、
章ごとに抽出された前記論文の末尾の章において行頭に括弧付き番号または括弧無しの番号を含む行が存在する場合に該当する行を各文献情報の先頭として前記末尾の章を文献毎に抽出してGROBIDに入力する引用文献情報抽出部を含む
論文構造解析装置。
【請求項5】
論文構造解析装置が実行する論文構造解析方法であって、
PDF形式の論文をHTML形式に変換するステップと、
HTML形式に変換された論文の本文から、著者名に付随する括弧記号の挿入の有無、および前記括弧記号が挿入されている場合の前記括弧記号の種類および挿入位置に関する複数の検出パターンを設定して、引用アンカを検出するステップを含む
論文構造解析方法。
【請求項6】
コンピュータを請求項1から4の何れかに記載の論文構造解析装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視覚情報で判断される文書構造を考慮して論文の構造を解析する論文構造解析装置、論文構造解析方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PDF形式の論文からの情報抽出に関する従来の技術として例えばGROBIT(非特許文献1)、PDFBOT(非特許文献2)などがある。GROBITは、章タイトル、本文、引用文献情報の抽出、本文中の引用アンカとの対応付けを行うことができ、引用文献情報を高精度に抽出することができる。PDFBOTは、PDF形式の論文をHTML形式に変換することにより、論文の本文のみを抽出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Patrice Lopez, “GROBID”, [online], [令和 5年 1月 30日検索]、インターネット〈 URL:https://github.com/kermitt2/grobid〉
【非特許文献2】Changfeng Yu, Cheng Zhang, Jie Wang, “Extracting Body Text from Academic PDF Documents for Text Mining”, International Conference on Knowledge Discovery and Information Retrieval, 23 October 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GROBITは、本文の途中に図表のテキストが紛れ込む誤認識がしばしば起こる。またPDFBOTは、論文の章タイトル、引用文献の章を全て除去してしまうという課題がある。
【0005】
そこで本開示では、従来よりも高精度に論文の文書構造を解析することができる論文構造解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の論文構造解析装置は、HTML変換部と、引用アンカ検出部を含む。
【0007】
HTML変換部は、PDF形式の論文をHTML形式に変換する。引用アンカ検出部は、HTML形式に変換された論文の本文から、著者名に付随する括弧記号の挿入の有無、および前記括弧記号が挿入されている場合の前記括弧記号の種類および挿入位置に関する複数の検出パターンを設定して、引用アンカを検出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の論文構造解析装置によれば、従来よりも高精度に論文の文書構造を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の論文構造解析装置の機能構成を示すブロック図。
図2】実施例1の論文構造解析装置の動作を示すフローチャート。
図3】典型的な論文の文書構造の例を示す図。
図4】章抽出部の章の先頭を特定する動作の例を示す図。
図5】引用文献の章を文献毎に抽出(分割)した例を示す図。
図6】GROBIDの出力例を示す図。
図7】引用アンカ検出部の検出パターン設定例を示す図。
図8】従来技術と実施例1の装置における章タイトル抽出精度評価実験の結果を示す図。
図9】従来技術と実施例1の装置における本文抽出精度評価実験の結果を示す図。
図10】従来技術と実施例1の装置における引用文献情報抽出精度評価実験の結果を示す図。
図11】コンピュータの機能構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0011】
以下、図1を参照して実施例1の論文構造解析装置の機能構成を説明する。同図に示すように本実施例の論文構造解析装置1は、PDF論文データベース10と、HTML変換部11と、章抽出部12と、本文クリーニング部13と、引用文献情報抽出部14と、引用アンカ検出部15と、対応付け部16と、外部文献データ取得部17と、データセット記憶部18を含む。以下、図2図5を参照して、各構成要件の動作を説明する。
【0012】
<PDF論文データベース10>
PDF論文データベース10には、PDF形式の論文が多数記憶されている。なお、PDF論文データベース10は必須の構成ではなく、例えば論文データをインターネット91から取得する構成としてもよい。
【0013】
<HTML変換部11>
HTML変換部11は、テキストの特徴量を取得するために、PDF形式の論文をHTML形式に変換する(S11)。例えばHTML変換部11は、pdf2htmlEX(参考非特許文献1)を使用することができる。
【0014】
(参考非特許文献1:“pdf2htmlEX”, [online], [令和 5年 1月 31日検索]、インターネット〈 URL:https://github.com/pdf2htmlEX/pdf2htmlEX〉)
HTML変換部11は、HTML変換により、テキストの特徴量(座標、フォント種類・サイズ)を取得する。テキストの特徴量は<div x1 y1 ff1 fs1>text</div>といった形式で表現される。x1, y1は座標、ff1はフォント種類、fs1はフォントサイズを意味する。
【0015】
HTML変換部11は、テキストの特徴量を用いて、論文のレイアウト情報を取得する。論文のレイアウト情報とは、論文の段組み、本文行の始点のx座標、本文のフォントサイズ・種類、本文の行間の情報などである(図3の例を参照)。
【0016】
<章抽出部12>
章抽出部12は、まずHTML形式に変換された論文の本文から、所定のキーワードとなるテキストを取得する(S12)。所定のキーワードは例えば“Introduction”とすれば好適である。この後の処理は、章番号の有無により異なる。章抽出部12は、所定のキーワード(例えば“Introduction”)の直前に章番号、すなわち括弧付き番号または括弧無しの番号を含む場合に括弧付き番号または括弧無しの番号を含む行を章の先頭とする(S12、図4の章番号有りの例を参照)。章番号が無い場合、章抽出部12は、所定のキーワードのフォントサイズと一致するフォントサイズで表記されている行を章の先頭として、論文の本文を章ごとに抽出する(S12、図4の章番号無しの例を参照)。
【0017】
<本文クリーニング部13>
本文クリーニング部13は、非特許文献2のルールベース手法により、ヘッダ・フッタ・脚注、図表キャプション、図、数式を除去し、画像認識(参考非特許文献2)により、TableBank(参考非特許文献3)で学習済みのCNNを利用して、表を検出し、検出範囲を座標に変換して対象範囲を除去する(S13)。
【0018】
(参考非特許文献2:Angela Casado-Garcia, Cesar Dominguez, Jonathan Heras, Eloy Mata, and Vico Pascual. The benefits of close-domain fine-tuning for table detection in document images. In International Workshop on Document Analysis Systems, pp. 199-215. Springer, 2020)
(参考非特許文献3:Minghao Li, Lei Cui, Shaohan Huang, Furu Wei, Ming Zhou, and Zhoujun Li. Table-Bank: Table benchmark for image-based table detection and recognition. In Proceedings of the 12th Language Resources and Evaluation Conference, pp. 1918-1925, Marseille, France, May 2020. European Language Resources Association)
<引用文献情報抽出部14>
引用文献情報抽出部14の処理は、文献番号の有無により異なる。引用文献情報抽出部14は、章ごとに抽出された論文の末尾の章において行頭に括弧付き番号または括弧無しの番号を含む行が存在する場合に該当する行を各文献情報の先頭として末尾の章を文献毎に抽出(分割)してGROBID(非特許文献1)に入力し、GROBIDの出力から引用文献情報を抽出する(S14)。分割は例えば図5に例示するように実行される。一方、引用文献情報抽出部14は、文献番号が無い場合すなわち、章ごとに抽出された論文の末尾の章において行頭に括弧付き番号または括弧無しの番号を含む行が存在しない場合に、分割を行わずに末尾の章(のPDFデータ)をそのままGROBIDに入力し、GROBIDの出力から引用文献情報を抽出する(S14)。GROBIDの出力例を図6に示す。
【0019】
<引用アンカ検出部15>
ステップS15は、参考非特許文献4、参考非特許文献5の正規表現を一部改良して実行される。
【0020】
(参考非特許文献4:Riaz Ahmad and Muhammad Tanvir Afzal. CAD: an algorithm for citation-anchors detection in research papers. Scientometrics, Vol. 117, pp. 1405-1423, 2018.)
(参考非特許文献5:Rakesh Gosangi, Ravneet Arora, Mohsen Gheisarieha, Debanjan Mahata, and Haimin Zhang. On the use of context for predicting citation worthiness of sentences in scholarly articles. In Proceedings of the 2021 Conference of the North American Chapter of the Association for Computational Linguistics: Human Language Technologies, pp. 4539-4545, 2021. Association for Computational Linguistics.)
引用アンカ検出部15は、HTML形式に変換された論文の本文から、著者名に付随する括弧記号の挿入の有無、および括弧記号が挿入されている場合の括弧記号の種類および挿入位置に関する複数の検出パターンを設定して、引用アンカを検出する(S15)。
【0021】
図7のregexの行は、[\(\[]?すなわち、括弧の始まりについて、パーレン(小括弧)の“(”またはブラケット(大括弧)の“[”を許容し(\で表現)、括弧記号がこの位置に有っても無くても良い([]?で表現)ことを示している。括弧の終わりについても[\)\]]?と表現されているように同様に、パーレンの“)”またはブラケットの“]”を許容し、括弧記号がこの位置に有っても無くても良いことを示している。
【0022】
なお、regexの行のauthorは、同図の1行目に定義する著者名であり、additionalは同図の3行目に定義する共著者名であり、yearは、同図の7行目に定義する発表年である。括弧の位置のバリエーションについては、yearの定義である同図7行目に記載されているように、発表年をパーレン(小括弧)、またはブラケット(大括弧)を囲む形式も検出可能である。引用アンカ検出部15は、上述のように検出パターンを追加で設定しているため、例えばsmith 2021, (Smith, 2021), (Smith and Jones, 2021), Smith et al. (2021a), (Smith et al., 2020, 2021a), [Smith et al., 2021; Jones et al., 2020]などの引用アンカを検出することができる。
【0023】
<対応付け部16>
対応付け部16は、引用アンカに範囲を示す記号が含まれる場合に、引用アンカを範囲によって示された番号を列挙する形式に変換する(S16)。例えば対応付け部16は、引用アンカが[1]-[3]であり、範囲を示すエヌダッシュ(ハイフン)が含まれる場合、この引用アンカを番号を列挙する形式、すなわち[1],[2],[3]に変換する。例えば対応付け部16は、引用アンカが[1,3-5]であった場合、この引用アンカを番号を列挙する形式、すなわち[1],[3],[4],[5]に変換する。対応付け部16は、本文中の引用アンカと末尾の引用文献章における対応する文献との対応付けを行う。対応付け部16は、例えば本文中に引用アンカ[1]がある場合には、末尾の引用文献章において[1]から始まる文献情報を引用アンカ[1]と対応付ける。引用アンカに番号が含まれていない場合、対応付け部16は引用アンカに含まれる文字列の全てを含む文献情報を引用アンカと対応付ける。例えば対応付け部は、引用アンカが(Sato, 2021)であった場合、末尾の引用文献章において“Sato”, “2021”の双方を含む文献情報を引用アンカ(Sato, 2021)と対応付ける。
【0024】
従来は、事前に引用アンカと引用文献の欄をリンクさせたPDFを作成することは可能であったものの、そうしたリンクが作られていない論文データに対して、後からリンクを作成することはできなかった。本実施例の論文構造解析装置1は、ステップS16を実行することにより、事後的に引用アンカと文献情報の対応付けを行うことができる。
【0025】
<外部文献データ取得部17>
外部文献データ取得部17は、引用文献のタイトルを外部API(Application Programming Interface、例としてarXiv API)にて検索し、一致する文献があれば取得する(S17)。例えば大文字、小文字を無視+完全一致を条件とすれば好適である。
【0026】
<データセット記憶部18>
データセット記憶部18は、ステップS11,S12,S13,S14,S15,S16により変換され最適化された論文データと、S17により取得された引用文献データを組にして、データセットとして記憶する。
【0027】
<評価実験>
以下、図8-10を参照して、従来技術と実施例1の手法を比較評価した3つの評価実験の結果について述べる。
【0028】
≪評価実験1、2の比較対象≫
第1の比較対象は、Texをソースとした先行研究である(参考非特許文献6、以下Narimatsu et al.とも表記)。
【0029】
(参考非特許文献6:Hiromi Narimatsu, Kohei Koyama, Kohji Dohsaka, Ryuichiro Higashinaka, Yasuhiro Minami, and Hirotoshi Taira. Task definition and integration for scientific-document writing support. In Proceedings of the Second Workshop on Scholarly Document Processing, pp. 18-26, 2021. Association for Computational Linguistics.)
第2の比較対象は、非特許文献1の論文PDF解析ツールGROBIDである(以下、GROBIDとも表記)。
【0030】
≪評価実験1、2の評価データ≫
評価データは、Texをソースとした先行研究でデータセット構築に使用したAxcell(参考非特許文献7)の論文リストから選択した113件である。
【0031】
(参考非特許文献7:Marcin Kardas, Piotr Czapla, Pontus Stenetorp, Sebastian Ruder, Sebastian Riedel, Ross Taylor, and Robert Stojnic. AxCell: Automatic extraction of results from machine learning papers.In Proceedings of the 2020 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing (EMNLP), pp. 8580-8594,2020.)
≪評価実験1:章タイトル抽出精度評価実験の結果≫
図8に示すように、実施例1による手法の章タイトル抽出失敗は3件であった。なお、Narimatsu et al.は、Texフォーマットの論文に含まれる章タイトルのタグを用いる手法であるため、章タイトルの抽出失敗は通常起こりえない。従って、Narimatsu et al.は目標値に相当する。同図に示すように、実施例1による手法はGROBIDよりも高精度であり、目標値であるNarimatsu et al.と同等程度の精度で章タイトルの抽出が可能であることが分かった。
【0032】
≪評価実験2:本文抽出精度評価実験の結果≫
評価実験2では、各手法の本文中の引用アンカをすべて削除した条件、本文中の引用アンカを削除しない条件の2条件で本文抽出精度を評価した。図9に示すように、Word Error Rate (WER)・Sentence Error Rate (SER)ともに、実施例1の手法が最も優れた結果であった。
【0033】
≪評価実験3の比較対象≫
Texをソースとした先行研究(Narimatsu et al.、参考非特許文献6)である。
≪評価実験3の評価データ≫
Texをソースとした先行研究のデータセットに含まれる2786件の論文である。
≪評価実験3:評価方法≫
まず、評価データでデータセットを作成する。次に、引用アンカに対応づけることができた引用文献タイトルをarXiv APIで検索する。最後に、一致する文献がヒットした件数を比較する。ただし、タイトルは完全一致していなければ検索されないものとする。なお、Narimatsu et al.はTexの\cite{}タグやbib,bblファイルを利用できるため、容易に完全な引用文献タイトルを抽出できる。従って、評価実験1と同様Narimatsu et al.は目標値に相当する。実施例1の手法では、タグやファイルのないPDF形式の論文を解析対象としていることに注意する。
≪評価実験3:引用文献情報抽出精度評価実験の結果≫
図10に示すように、実施例1の手法により抽出された引用文献の件数は4225件であり、Texをソースとした先行研究(Narimatsu et al.)により抽出された引用文献の件数4874件の約87%(4225件/4874件)であった。実施例1の手法による引用文献情報の抽出結果のうち、Narimatsu et al.とタイトルが完全一致したものは、4225件中の3591件で約85%であった。従って、実施例1の手法を組み合わせることでTexをソースとするデータセットが改善できる。
【0034】
≪評価結果まとめ≫
実施例1の手法は、本文抽出精度においていずれの先行研究よりも高い性能を示した。また実施例1の手法は、章タイトル抽出精度、引用文献情報抽出精度においてTexをソースとした手法(Narimatsu et al.)に近い性能を示した。
【0035】
<補記>
本開示の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD-ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0036】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0037】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0038】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0039】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本開示の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0040】
上述の各種の処理は、図11に示すコンピュータの記録部10020に、上記方法の各ステップを実行させるプログラムを読み込ませ、制御部10010、入力部10030、出力部10040などに動作させることで実施できる。
【0041】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD-RAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP-ROM(Electrically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0042】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0043】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0044】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11