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特開2024-123502活性エネルギー線硬化型組成物、水系エマルション組成物、コーティング剤組成物、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123502
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物、水系エマルション組成物、コーティング剤組成物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240905BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
C08F290/06
B05D7/24 301F
B05D7/24 301T
B32B27/16 101
C09D5/02
C09D5/00 Z
C09D175/04
C09D133/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030966
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 修平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4D075BB24Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075CA02
4D075CA03
4D075CB06
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB13
4D075DB35
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB43
4D075DB48
4D075EA06
4D075EA10
4D075EA21
4D075EB22
4D075EB38
4D075EC35
4F100AH02A
4F100AK25A
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100CA18A
4F100EH46A
4F100EJ423
4F100EJ543
4F100JB14A
4F100JK12
4F100JK17
4F100JL04
4F100JL11B
4F100JM01A
4F100JN01
4J038CG001
4J038DG001
4J038DG192
4J038JA25
4J038KA04
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA09
4J038PA17
4J038PC08
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB051
4J127BB091
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD471
4J127BE281
4J127BE28Y
4J127BF181
4J127BF18Z
4J127BF611
4J127BF61Y
4J127BG041
4J127BG04Y
4J127BG141
4J127BG14Z
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG27Z
4J127CB371
4J127CC091
4J127CC111
4J127CC161
4J127DA46
4J127EA12
4J127FA08
4J127FA11
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】硬度を保ちながら、低カール性及び屈曲性に優れた塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)と、反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むエマルション(B)とを含み、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が35~190nmである、活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)と、
反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むエマルション(B)と
を含み、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が35~190nmである、
活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径MVと前記エマルション(B)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径MVの比MV/MVが20/80~60/40である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)の固形分の合計質量ASOLIDと前記エマルション(B)の固形分の合計質量BSOLIDの比ASOLID/BSOLIDが1/99~70/30である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が50~190nmである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタンディスパージョン(A1)又は前記アクリルエマルション(A2)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が150nm以下である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤(B1)がポリオキシアルキレン鎖を構造中に有する、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤(B1)がウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
前記エマルション(B)がさらに界面活性剤(B2)(ただし、前記界面活性剤(B1)を除く。)を含み、前記界面活性剤(B2)が下記一般式(1)で表される界面活性剤である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
XO-(Y1O)-(Y2O)-SOZ ・・・(1)
ただし、式(1)中、Xは二重結合を有する官能基であり、Y1及びY2は互いに異なるアルキレン基であり、Zは対イオンであり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。
【請求項9】
さらに光重合開始剤(C)を含む、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む水系エマルション組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含むコーティング剤組成物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された層を少なくとも1層有する積層体。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む水系エマルション組成物であって、
以下の条件で形成した塗膜のJIS K 5600-5-4:1999の方法に準じて750g荷重にて測定される鉛筆硬度がF以上かつJIS K 5600-5-1:1999の方法に準じて円筒形マンドレル屈曲試験にて測定される割れ又は剥がれが生じる最大の径が16mm以下である、水系エマルション組成物。
<塗膜形成条件>
厚み125μmの易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に水系エマルション組成物をバーコーターによって塗布し、100℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀灯にて積算光量が450mJ/cmとなるように紫外線照射して硬化させ、膜厚10μmの塗膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、水系エマルション組成物、コーティング剤組成物、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルジオールやポリエーテルジオール等のジオール化合物、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物及びヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線硬化型樹脂として知られており、木工塗料やプラスチックコーティング剤等の用途に使用されている。
かかるウレタン(メタ)アクリレートは一般的に粘度が高いため、その使用にあたっては有機溶剤や反応性希釈剤により希釈して粘度調整を行った上で塗工し、その後、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化して塗膜を形成するものである。
しかし、上記有機溶剤により希釈する場合には、近年の、大気汚染や作業環境、火災の危険性等に対するVOC規制下において問題となっている。一方、反応性希釈剤により希釈する場合には、低粘度化のために反応性希釈剤を大量に必要とする場合があり、充分な塗膜物性を得にくい等の問題がある。
このような状況下において、近年では、水分散型等の水系化の要望が高まっている。
【0003】
特許文献1では、カルボキシ基及びアルキレングリコール鎖含有ウレタン(メタ)アクリレートを無溶剤下で製造した後、当該ウレタン(メタ)アクリレートのカルボキシ基を中和した後、さらに水を加え乳化する、自己乳化型の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
特許文献2では、多官能アクリレート化合物及び光重合開始剤を、乳化剤の存在下に水系媒体中に分散させてなる、強制乳化型の活性エネルギー線硬化性水性エマルション組成物が提案されている。
【0005】
特許文献3では、モノ又はポリペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤を、反応性界面活性剤の存在下に水分散させてなる、強制乳化型のエマルション被覆材組成物が提案されている。
【0006】
特許文献4では、界面活性剤を2種以上含む活性エネルギー線硬化型組成物であって、界面活性剤の少なくとも1種が、反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)である、活性エネルギー線硬化型組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-152786号公報
【特許文献2】特開2012-149141号公報
【特許文献3】特開平9-137081号公報
【特許文献4】特開2022-074123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の開示技術では、自己乳化型であるがゆえに低粘度のまま高固形分化することが困難であるため、塗膜形成時の乾燥性に難がある。また高温下での液の保存安定性や、凍結融解安定性について考慮されていない。さらには塗膜の耐水性についても深慮されているとは言い難い。
特許文献2の開示技術では、実施例において非反応性乳化剤を用いて強制乳化を行っている。かかる非反応性乳化剤を用いて得られるエマルション組成物は、硬化塗膜とした際に、非反応性乳化剤が遊離状態で存在しているため、耐水性や塗膜硬度の点で不充分である。なお、本文中に反応性乳化剤の例示はあるものの、上記の点については一切考慮されていない。
特許文献3の開示技術では、反応性乳化剤を用いて強制乳化を行っているが、高温下での液の保存安定性について考慮されていない。また硬化塗膜の硬度と屈曲性のバランスについても考慮されていない。
特許文献4の開示技術は、これまでの水系樹脂では困難であった高硬度を達成したものであり、強制乳化型で高固形分かつ低粘度であり、室温及び高温下での液保存安定性や凍結融解安定性に優れ、過酷な沸騰水試験条件下でも塗膜の耐水性に優れ、塗膜硬度及び基材との密着性にも優れた活性エネルギー線硬化型組成物である。
【0009】
しかし、特許文献4の開示技術では、反応性乳化剤を用いて強制乳化を行っているが、硬化塗膜の低硬化収縮性(低カール性)や屈曲性については考慮されていない。硬さだけではなく、低カール性及び屈曲性とのバランスに優れたコーティング剤が市場からは求められている。
【0010】
本発明は、硬度を保ちながら、低カール性及び屈曲性に優れた塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)であり特定範囲の体積平均粒子径を有するものを活性エネルギー線硬化型組成物に配合すると、硬度を保ちながら、低カール性及び屈曲性に優れた塗膜を形成できることを知得し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を含む。
【0012】
[1] ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)と、
反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むエマルション(B)と
を含み、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が35~190nmである、
活性エネルギー線硬化型組成物。
[2] 前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径MVと前記エマルション(B)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径MVの比MV/MVが20/80~60/40である、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[3] 前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)の固形分の合計質量ASOLIDと前記エマルション(B)の固形分の合計質量BSOLIDの比ASOLID/BSOLIDが1/99~70/30である、[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[4] 前記少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が50~190nmである、[1]~[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[5] 前記ポリウレタンディスパージョン(A1)又は前記アクリルエマルション(A2)のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が150nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[6] 前記界面活性剤(B1)がポリオキシアルキレン鎖を構造中に有する、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[7] 前記界面活性剤(B1)がウレタン(メタ)アクリレートである、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[8] 前記エマルション(B)がさらに界面活性剤(B2)(ただし、前記界面活性剤(B1)を除く。)を含み、前記界面活性剤(B2)が下記一般式(1)で表される界面活性剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
XO-(Y1O)-(Y2O)-SOZ ・・・(1)
ただし、式(1)中、Xは二重結合を有する官能基であり、Y1及びY2は互いに異なるアルキレン基であり、Zは対イオンであり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。
[9] さらに光重合開始剤(C)を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む水系エマルション組成物。
[11] [1]~[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含むコーティング剤組成物。
[12] [1]~[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された層を少なくとも1層有する積層体。
[13] [1]~[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む水系エマルション組成物であって、
以下の条件で形成した塗膜のJIS K 5600-5-4:1999の方法に準じて750g荷重にて測定される鉛筆硬度がF以上かつJIS K 5600-5-1:1999の方法に準じて円筒形マンドレル屈曲試験にて測定される割れ又は剥がれが生じる最大の径が16mm以下である、水系エマルション組成物。
<塗膜形成条件>
厚み125μmの易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に水系エマルション組成物をバーコーターによって塗布し、100℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀灯にて積算光量が450mJ/cmとなるように紫外線照射して硬化させ、膜厚10μmの塗膜を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、硬度を保ちながら、低カール性及び屈曲性に優れた塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)と、反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むエマルション(B)とを含み、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積平均粒子径が35~190nmである活性エネルギー線硬化型組成物であり、硬度を保ちながら、低カール性及び屈曲性に優れた塗膜を形成できる。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を含む水系エマルション組成物は、塗料、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、インク、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、粘着剤、接着剤、粘接着剤、版材等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクロイルを、「(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、例えば、JIS K 1557-1:2007に準拠して測定した水酸基価に基づく方法や、高速液体クロマトグラフィーにより測定される。高速液体クロマトグラフィーにおいては、例えば、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT450×1本、ACQUITY APC XT200×1本、ACQUITY APC XT45×2本を4本直列で用いることにより測定される。
質量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による質量平均分子量であり、例えば、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT450×1本、ACQUITY APC XT200×1本、ACQUITY APC XT45×2本を4本直列で用いることにより測定される。
本明細書における数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
ディスパージョンの固形分及びエマルションの固形分は、それぞれ、ディスパージョンから水を除去した残部及びエマルションから水を除去した残部を意味する。なお、固形分を不揮発分という場合がある。
【0016】
BAYHYDROL(バイハイドロール、ベイハイドロール、バイヒドロール)及びバイヒドロール、IMPRANIL(インプラニル)、DISPERCOLL(ディスパーコル、ディスパコール)、並びにDAOTAN(ダオタン)及びダオタンは、Covestro Intellectual Property GmbH & Co. KGの日本国における登録商標である。
SUPERFLEX及びスーパーフレックスは、第一工業製薬株式会社の日本国における登録商標である。
Mowinyl(モウイニル、モビニール)及びモビニールは、ジャパンコーティングレジン株式会社の日本国における登録商標である。
OMNIRAD(オムニラッド)は、IGM Group B.V.の日本国における登録商標である。
【0017】
[活性エネルギー線硬化型組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルション(A)(以下、単に「ディスパージョン又はエマルション(A)」ともいう。)と、反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)(以下、単に「界面活性剤(B1)」ともいう。)を含むエマルション(B)(以下、単に「エマルション(B)」ともいう。)と、を含む活性エネルギー線硬化型組成物である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、強制乳化型の水系エマルション組成物に好適に使用できる。
【0018】
前記ディスパージョン又はエマルション(A)の体積平均粒子径(以下「MV」ともいう。)は、35~190nmである。
前記MVの下限値は35nmであり、50nmが好ましく、60nmがより好ましく、70nmがさらに好ましい。
前記MVの上限値は190nmであり、150nmが好ましく、120nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。
前記MVの範囲は、50~190nmが好ましく、60~190nmがより好ましく、70~190nmがさらに好ましい。
前記MVの範囲は、また、35~150nmが好ましく、35~120nmがより好ましく、35~100nmがさらに好ましい。
【0019】
前記エマルション(B)の体積平均粒子径(以下「MV」ともいう。)は、特に限定されないが、35~190nmの範囲内であることが好ましい。
前記MVの下限値は、特に限定されないが、35nmが好ましく、50nmがより好ましく、60nmがさらに好ましく、70nmがいっそう好ましい。
前記MVの上限値は、特に限定されないが、190nmが好ましく、170nmがより好ましく、150nmがさらに好ましく、130nmがいっそう好ましい。
【0020】
前記MV又は前記MVは、170nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、130nm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
前記MV及び前記MVは、170nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、130nm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
前記MVと前記MVの比MV/MVは、特に限定されないが、20/80~60/40の範囲内であることが好ましく、25/75~55/45の範囲内であることがより好ましく、30/70~50/50の範囲内であることがさらに好ましく、35/65~45/55の範囲内であることがいっそう好ましい。
【0023】
なお、前記ディスパージョン又はエマルション(A)の体積平均粒子径MV及び前記エマルション(B)の体積平均粒子径MVは、レーザー散乱・回折装置(LA950V2,堀場製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径である。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に含まれる前記ディスパージョン又はエマルション(A)の固形分の合計質量(以下、「ASOLID」ともいう。)と前記エマルション(B)の固形分の合計質量(以下「BSOLID」ともいう。)の比ASOLID/BSOLIDは、特に限定されないが、1/99~70/30の範囲内であることが好ましく、5/95~50/50の範囲内であることがより好ましく、10/90~40/60の範囲内であることがさらに好ましく、15/85~35/65の範囲内であることがいっそう好ましく、18/82~30/70の範囲内であることがよりいっそう好ましい。
【0025】
〈ディスパージョン又はエマルション(A)〉
ディスパージョン又はエマルション(A)は、ポリウレタンディスパージョン(A1)及びアクリルエマルション(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のディスパージョン又はエマルションである。
ただし、後述する反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むエマルション(B)に該当するものは、ディスパージョン又はエマルション(A)に該当しない。
【0026】
《ポリウレタンディスパージョン(A1)》
ポリウレタンディスパージョン(A1)は、ウレタン系共重合体(UP)を水に分散させたものである。
【0027】
(ウレタン系共重合体(UP))
ウレタン系共重合体(UP)について説明する。ウレタン系共重合体(UP)とは分子内主鎖にウレタン結合を有する共重合体全般を指す。ただし、本明細書においては、共重合体がアクリル基を有する場合には、ウレタン結合を有していたとしても、後述するアクリル系共重合体(AP)に該当するものとする。ウレタン系共重合体(UP)は、公知のイソシアネート化合物(I)とポリオール(O)とから合成され、末端の構造は限定されない。また親水化剤や鎖延長剤としてポリアミンが用いられることもある。
【0028】
ウレタン系共重合体(UP)の骨格にはポリカーボネート骨格及びポリエステルポリオール骨格の少なくともいずれかを有することが好ましい。ウレタン系共重合体(UP)の骨格にポリカーボネート骨格及びポリエステルポリオール骨格の少なくともいずれかを有することで被着体への濡れ性を維持しながらも塗膜に強靭性と伸びを付与することができ、さらに高温保持力を付与することができる。特に接着力と高温保持力とのバランスの観点からポリエステルポリオール骨格又はポリカーボネートポリオールを有することが好ましく、造膜性の観点からポリエステルポリオール骨格がより好ましい。
【0029】
・イソシアネート化合物(I)
イソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。
前記ジイソシアネート類としては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシ基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが例示される。
イソシアネート化合物(I)としては、上述したイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。
イソシアネート化合物(I)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
・ポリオール(O)
ポリオール(O)は水酸基を複数有する化合物であり、少なくとも一部の構造中に繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
【0031】
ポリオール(O)は公知のものが使用できるが、ウレタン系共重合体(UP)のハンドリングの観点から2官能のポリオール成分を使用することが好ましい。
前記ポリオール成分としては、各種ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールが挙げられるが、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールが好ましい。
これらのポリオールを用いることで、ウレタン系共重合体(UP)は、ポリカーボネート骨格及びポリエステルポリオール骨格の少なくともいずれかを有することができる。
【0032】
ポリオール(O)としてはポリエステルポリオールを使用することが好ましく、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールの共重合物、又はアジピン酸と1,4-ブタンジオールの共重合物を使用することがより好ましい。
【0033】
ポリオール(O)は、酸性基を有するポリオールを含むことが好ましい。
酸性基を有するポリオールは、同一分子内に酸性基と複数の水酸基を有する化合物をいい、酸性基としては例えばカルボキシ基又はスルホン酸基が挙げられる。酸性基を有するポリオールの具体的な例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、及び酒石酸などが挙げられる。イソシアネート化合物(I)との反応性などの観点から、酸性基を有するポリオールとしては2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。酸性基を有するポリオールの酸性基はウレタン系共重合体(UP)に酸価を与える。当該酸価は中和剤にて中和されて、ウレタン系共重合体(UP)の水への分散性を向上させると考えられる。
ウレタン系共重合体(UP)中の酸基を有するポリオールの含有量は、ウレタン系共重合体(UP)の水への分散性を向上する観点から、ポリオール(O)100質量%中、1~10質量%であることが好ましい。
【0034】
親水化剤としてのポリアミンは、例えば同一分子内に酸性基と複数のアミノ基を有する化合物であり、酸性基としては例えばスルホン酸基、スルホネート基、カルボン酸基、およびカルボキシレート基が挙げられる。中でもスルホネート基がより好ましく、スルホン酸ナトリウム基がさらに好ましい。
親水化剤としてのポリアミンの具体的な例としては、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホネート、1,3-プロパンジアミン-β-エタンスルホネート、ジアミノカルボキシレートおよび2,6-ジアミノカルボン酸などが挙げられる。中でも2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホネート、エタンジアミンスルホネート、エタンジアミンブチルスルホネート、1,2-プロパンジアミン-β-エタンスルホネート、1,2-プロパンジアミン-β-タウレート、1,3-プロパンジアミン-β-エタンスルホネート、1,3-プロパンジアミン-β-タウレート、シクロヘキシルアミノプロパンスルホネート(CAPS)、ジアミノカルボン酸ナトリウムおよび2,6-ジアミノヘキサン酸がより好ましく、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0035】
ウレタン系共重合体(UP)の質量平均分子量(Mw)は、公知の手法で調整することができる。具体的には前記イソシアネート化合物(I)に含まれるイソシアネートとポリオール(O)に含まれる水酸基のモル比が1に近くなれば高分子量の共重合体となり、1から離れると低分子量の共重合体となる。
【0036】
ウレタン系共重合体(UP)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、20,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましい。
【0037】
・ウレタン系共重合体(UP)の製造
ウレタン系共重合体(UP)の合成方法としては公知の手法を用いることができ、公知のイソシアネート(I)とポリオール(O)との反応によって合成できる。
イソシアネート(I)とポリオール(O)の反応は溶剤中又は無溶剤にて行われ、錫系化合物などの公知の触媒を使用して行われる。ハンドリングの観点からMEKなどの親水性の溶剤を使用して行われ、後述する水分散化工程の後、ストリッピングされて除去されることが望ましい。
【0038】
ウレタン系共重合体(UP)は水に分散してポリウレタンディスパージョンとする。この為、酸性基を有するポリオール又は親水化剤としてのポリアミンを共重合した後、公知の中和剤を用いて水中に分散された態様が好ましい。
【0039】
・各種添加剤
ポリウレタンディスパージョンには、各種添加剤を添加してもよい。
前記添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤、防腐剤、粘着力調整のための粘着付与剤、可塑剤、充填剤、着色剤、及びシランカップリング剤が例示される。前記粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、フェノール樹脂、ポリテルペン、アセチレン樹脂、石油系炭化水素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、合成ゴム、及び天然ゴムが例示される。
【0040】
・ポリウレタンディスパージョン(A1)の市販品の例
ポリウレタンディスパージョン(A1)は、市販品を使用してもよい。このような市販のポリウレタンディスパージョンとしては、例えばバイヒドロールUH650(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分49.7質量%;体積平均粒子径155nm)、インプラニルDL3040(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分40.1質量%;体積平均粒子径81nm)、ディスパーコルU53(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分39.0質量%;体積平均粒子径85nm)、インプラニルDL2611(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分39.7質量%;体積平均粒子径142nm)インプラニルDLC-F(ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分40.1質量%;体積平均粒子径99nm)、インプラニルDLC-T(ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分35.0質量%;体積平均粒子径66nm)、バイヒドロールUH2606(ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分35.3質量%;体積平均粒子径74nm)、ダオタンTW6466/WA36(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:コベストロ社製;固形分35.6質量%;体積平均粒子径113nm)、スーパーフレックス150HS(ポリエーテル骨格及びポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:第一工業製薬社製;固形分38.6質量%;体積平均粒子径81nm)、スーパーフレックス470(ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン:第一工業製薬社製;固形分38.1質量%;体積平均粒子径145nm)、及びスーパーフレックス210(ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン:第一工業製薬社製;固形分質量35.0%;体積平均粒子径48nm)が例示される。
なお、体積平均粒子径は、散乱強度分布の体積基準での平均値を指す。上記の体積平均粒子径は、レーザー散乱・回折装置(堀場製作所製;LA950V2)を用いて測定された実測値である。
【0041】
《アクリルエマルション(A2)》
アクリルエマルション(A2)は、アクリル系共重合体(AP)を水に分散させたものである。
【0042】
(アクリル系共重合体(AP))
アクリル系共重合体(AP)は、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)の重合体である。
【0043】
アクリル系共重合体(AP)は、乳化重合物であることが好ましく、公知の乳化重合法により製造し、エマルションとして用いることが好ましい。乳化重合は、例えば、乳化剤の存在下で、複数種のエチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物(AM)を乳化重合して得られる。
【0044】
・エチレン性不飽和単量体混合物(AM)
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)は、直鎖又は分岐鎖のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、必要に応じて、1種以上の他の単量体を含むことができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、及びステアリルアクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)としては、炭素数が1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0046】
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)は、ブチルアクリレート(BA)を含むことが好ましく、ブチルアクリレート(BA)と2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)とを含むことがより好ましい。
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、特に限定されないが、80.0~99.5質量%の範囲が好ましく、90.0~99.4質量%の範囲がより好ましく、95.0~99.2質量%の範囲がさらにより好ましい。特に、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)中のブチルアクリレートの含有量が50~90質量%であることが好ましい。
【0047】
他の単量体としては、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、アマイド結合を有するエチレン性不飽和単量体、スチレン系不飽和単量体、及びビニル化合物等が挙げられる。
【0048】
前記カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸等が挙げられる。前記カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、これらの単量体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、エマルションの安定性の観点から、(メタ)アクリル酸がより好ましい。前記カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
エチレン性不飽和単量体混合物(AM)中のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の含有割合は、合成時の凝集物の発生が抑制され、中和後のハンドリングの良好なエマルションが得られやすいことから、0.5~2.0質量%の範囲が好ましい。
【0049】
前記水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、これらの単量体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。前記水酸基を有するエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0050】
前記アマイド結合を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド及びジアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記アマイド結合を有するエチレン性不飽和単量体としては、これらの単量体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。前記アマイド結合を有するエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0051】
前記スチレン系不飽和単量体としては、スチレン;2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、及び4-tert-ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;並びに、α-メチルスチレン及び4-メチル-α-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレンが例示される。前記スチレン系不飽和単量体としては、これらの単量体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。前記スチレン系不飽和単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0052】
上記以外のその他エチレン性不飽和単量体を用いることができる。前記その他エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、及びクロロプレン等が挙げられる。
【0053】
・乳化剤
アクリル系共重合体(AP)の製造に用いる乳化剤としては、公知の反応性乳化剤又は非反応性乳化剤を用いることができる。
【0054】
前記反応性乳化剤としては、例えば、反応性アニオン系乳化剤及び反応性ノニオン系乳化剤が挙げられる。前記反応性アニオン系乳化剤及び前記反応性ノニオン系乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0055】
前記反応性アニオン系乳化剤としては、ノニルフェニル骨格のアニオン系乳化剤、長鎖アルキル骨格のアニオン系乳化剤、及び燐酸エステル骨格のアニオン系乳化剤が例示される。前記反応性アニオン系乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
前記反応性アニオン系乳化剤は市販品を用いてもよい。このような市販品としては、アデカリアソープSE-10N(ADEKA社製)、アクアロンHS-10及びHS-20(いずれも第一工業製薬社製)、アクアロンKH-05及びKH-10(いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSR-10N(ADEKA社製)、KAYAMER PM-1(日本化薬社製)、KAYAMER PM-2(日本化薬社製)、KAYAMER PM-21(日本化薬社製)が例示される。
【0056】
前記反応性ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン高級脂肪酸エステル類、及びグリセリン高級脂肪酸エステル類が例示される。前記反応性ノニオン系乳化剤は、分子の末端あるいは中間部に不飽和二重結合を有し、単量体と共重合可能なものである。前記反応性ノニオン系乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
前記ノニオン系乳化剤は市販品を用いてもよい。このような市販品としては、アデカリアソープNE-10(ADEKA社製)、アクアロンRN-10、RN-20及びRN-50(第一工業製薬社製)、並びにアントックスNA-16(日本乳化剤社製)が例示される。
【0057】
前記非反応性乳化剤としては、例えば、非反応性アニオン系乳化剤及び非反応性ノニオン系乳化剤が挙げられる。前記非反応性アニオン系乳化剤及び前記非反応性ノニオン系乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0058】
前記非反応性アニオン系乳化剤としては、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;並びに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類が例示される。
【0059】
前記非反応性ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;並びに、オレイン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類が例示される。
【0060】
・重合開始剤
アクリル系共重合体(AP)の合成に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;α,α’-アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩などのアゾビス系カチオン塩;2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)などの水溶性の熱分解型重合触媒;並びに、レドックス系重合触媒が例示される。
前記レドックス系重合触媒としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、及びクメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、ロンガリット及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム等の還元剤との組合せ;過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過酸化物と、ロンガリット及び/又はチオ硫酸ナトリウム等との組合せ;並びに、過酸化水素水とアスコルビン酸との組合せが例示される。
【0061】
・連鎖移動剤
アクリル系共重合体(AP)の合成には、アクリル系共重合体(AP)の分子量及び/又は分子量分布を制御するために、メルカプタン系、チオグリコール系、又はβ-メルカプトプロピオン酸等のチオール系化合物の連鎖移動剤を用いることが好ましい。その使用量は、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)100質量部に対して、0.01~1.0質量部の範囲が好ましく、0.01~0.1質量部の範囲がより好ましく、0.01~0.07質量部の範囲がさらに好ましい。連鎖移動剤を適当量使用することで、アクリル系共重合体(AP)の分子量が大きくなりすぎることを抑制し、水分散性を制御することができる。
【0062】
・アクリル系共重合体(AP)の製造
アクリル系共重合体(AP)を含むアクリルエマルション(AE)は、例えば、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)を乳化重合することで得られる。
乳化重合では、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)を、乳化剤及び重合開始剤を用い、水性媒体中で重合する。
【0063】
まず、エチレン性不飽和単量体混合物(AM)(以下、単に「混合溶液」ともいう。)を得る。必要に応じて、前記混合溶液に水及び乳化剤の一部又は全量を加えて混合して、乳化液を得てもよい。
前記混合溶液又はこれを含む乳化液を重合の原料液として用い、重合開始剤の存在下で重合を行う。この際、原料液の全量を反応容器に仕込んで重合を開始してもよいし、原料液の一部を反応容器に仕込んで重合を開始した後に残りの原料液を1回で又は複数回に分けて添加してもよいし、原料液の一部を反応容器に仕込んで重合を開始した後に残りの原料液を連続滴下してもよいし、あらかじめ水の一部又は全量及び必要に応じて乳化剤の一部又は全量を反応容器に仕込んでおき、原料液の全量を連続滴下してもよいが、あらかじめ反応容器に乳化剤の全量及び水の一部又は全量を仕込んでおくことが好ましい。
【0064】
重合開始剤は、あらかじめ全量を反応容器に仕込んでおいてもよいし、昇温後に全量を添加してもよいし、一部を反応容器に仕込んでおき重合を開始した後に残りを1回で又は複数回に分けて添加してもよいし、一部を反応容器に仕込んでおき重合を開始した後に残りを連続滴下してもよいし、全量を連続滴下してもよい。
重合開始剤を分割添加又は連続滴下する場合には、重合開始剤単独で反応容器内に分割添加又は連続滴下してもよいし、原料液と混合した状態で分割添加又は連続滴下してもよい。なお、上記手法により重合開始剤を添加した後、反応率を高める目的で、さらに1回又は2回以上重合開始剤を追加添加してもよい。
【0065】
重合時には、pH調整のため、pH緩衝剤を使用してもよい。
カルボキシ基を有する単量体を使用する場合、得られた共重合体に含まれるカルボキシ基の一部又は全部を、アンモニア、有機アミン、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウム、又は水酸化ナトリウム等の塩基性化合物を用いて中和してもよい。
【0066】
・アクリルエマルション(A2)の市販品の例
アクリルエマルション(A2)は、市販品を使用してもよい。このような市販のアクリルエマルションとしては、モビニール6969D(アクリルエマルション,ジャパンコーティングレジン社製;固形分41.5質量%;体積平均粒子径73nm)、モビニール 899D(アクリルエマルション,ジャパンコーティングレジン社製;固形分46.0質量%;体積平均粒子径109nm)、及びモビニール742A(アクリルエマルション,ジャパンコーティングレジン社製;固形分48.5質量%;体積平均粒子径71nm)が例示される。
【0067】
〈エマルション(B)〉
エマルション(B)は、界面活性剤(B1)を含み、界面活性剤(B1)以外の界面活性剤(B2)をさらに含んでもよい。
【0068】
《界面活性剤(B1)》
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物においては、反応性基を2個以上有する界面活性剤(B1)を含むことにより、小粒径かつ均一な水系エマルション組成物を得ることができる。界面活性剤(B1)は乳化を補佐するだけでなく、乳化後の安定性、特に凍結融解安定性に大きく寄与する。
界面活性剤(B1)は水溶性又は水分散性である。「水溶性」とは、10質量%濃度の水溶液としたときに均一な外観を維持することができることをいう。「水分散性」とは、10質量%濃度の水分散液としたときに粒径(メジアン径)が100nm未満で分散している状態をいう。
粒径(メジアン径)は、レーザー散乱・回折装置(LA950V2,堀場製作所製)を用いて測定される。
【0069】
界面活性剤(B1)が有する反応性基としては、二重結合を有する官能基を例示できる。前記二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基及びアリル基が例示される。界面活性剤(B1)は、(メタ)アクリロイル基及びアリル基の一方又は両方を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基又はアリル基を有することがより好ましい。
界面活性剤(B1)の主鎖構造は、特に限定されないが、ポリオキシアルキレン鎖であることが好ましく、ポリオキシエチレン鎖であることがより好ましい。
界面活性剤(B1)は、分子中に親水性基を有することが好ましい。前記親水性基としては、ノニオン性基が好ましく、ポリオキシアルキレン鎖がより好ましく、ポリオキシエチレン鎖がさらに好ましい。
二重結合を有する官能基を2つ以上有し、主鎖構造ポリビニルアルコール、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0070】
なかでも、水溶性又は水分散性であり、かつ二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合が親水性寄りであることや、分子設計制御のしやすさから好ましい。
これらの条件を満たすウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネート(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)及びポリオキシエチレン基含有化合物(b3)の反応生成物を例示できる。また、ポリイソシアネート(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)、ポリオキシエチレン基含有化合物(b3)、及びカルボキシ基含有ポリオール(b4)の反応生成物であって、カルボキシ基の一部あるいは全部が塩基によって中和されたものも例示できる。
【0071】
ポリイソシアネート(b1)としては、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの三量体化合物又はそれ以上の多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、及び水分散型ポリイソシアネートが例示される。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートを例示できる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネートを例示できる。脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを例示できる。
ポリイソシアネート(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
ポリイソシアネート(b1)としては、脂肪族系ポリイソシアネート又は脂環式系ポリイソシアネートが好ましく、ペンタメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートの三量体化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体化合物、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体化合物、イソホロンジイソシアネート及び水添化キシリレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましく、イソホロンジイソシアネート及び水添化キシリレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種がいっそう好ましい。
【0072】
水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)が有するエチレン性不飽和基は、1個であってもよく、2個であってもよく、3個以上であってもよい。
エチレン性不飽和基を1個有する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートを例示できる。
エチレン性不飽和基を2個有する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレートを例示できる。
エチレン性不飽和基を3個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを例示できる。
水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
【0073】
これらのなかでも、塗膜の硬度を重視する場合は、エチレン性不飽和基を3個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0074】
ポリオキシエチレン基含有化合物(b3)としては、ポリエチレングリコールが例示される。
【0075】
カルボキシ基含有ポリオール(b4)としては、脂肪族のポリヒドロキシカルボン酸が好ましく、分子量100~200のジオールモノカルボン酸又はその中和塩がより好ましく、ジメチロールブタン酸又はジメチロールプロピオン酸がさらに好ましく、ジメチロールブタン酸がいっそう好ましい。カルボキシ基含有ポリオール(b4)由来のカルボキシ基は、一部又は全部が塩基によって中和され、中和塩となることで親水性となる。
【0076】
界面活性剤(B1)の質量平均分子量としては、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。界面活性剤(B1)の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、硬化塗膜が脆くなりにくい。界面活性剤(B1)の質量平均分子量は、50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましい。界面活性剤(B1)の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、適度な粘度となって取り扱いやすく、また硬化塗膜の硬度が向上する。界面活性剤(B1)の質量平均分子量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば500~50,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。
【0077】
界面活性剤(B1)がウレタン(メタ)アクリレートである場合の前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が前記下限値以上であると、硬化塗膜が脆くなりにくい。
界面活性剤(B1)がウレタン(メタ)アクリレートである場合の前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が前記上限値以下であれば、適度な粘度となって取り扱いやすく、また硬化塗膜の硬度が向上する。界面活性剤(B1)の質量平均分子量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば500~50,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましく、2,000~10,000が特に好ましい。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の界面活性剤(B1)の含有量は、ディスパージョン又はエマルション(A)の固形分及びエマルション(B)の固形分の合計100質量%に対して、0.9質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、8.5質量%以上がさらに好ましく、18質量%以上が特に好ましい。界面活性剤(B1)の含有量が前記下限値以上であれば、粒径が小さく、粒径分布がシャープなエマルションとなり、保存安定性、特に凍結融解安定性が向上する。前記界面活性剤(B1)の含有量は、光重合性化合物(A)及び界面活性剤の合計100質量%に対して、59.9質量%以下が好ましく、49質量%以下がより好ましく、38.5質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。界面活性剤(B1)の含有量が前記上限値以下であれば、光重合性化合物(A)由来の物性が充分に発揮されやすく、塗膜の柔軟性や密着性、耐水性が向上する。光重合性化合物(A)及び界面活性剤の合計100質量%に対する前記界面活性剤(B1)の含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.9~59.9質量%が好ましく、4.0~49質量%がより好ましく、8.5~38.5質量%がさらに好ましく、18~25質量%が特に好ましい。
【0079】
《界面活性剤(B2)》
界面活性剤(B2)は、界面活性剤(B1)以外の界面活性剤である。界面活性剤(B2)は、反応性基を1個有する界面活性剤であることが好ましい。エマルション(B)が界面活性剤(B1)からなる粒子に加えて界面活性剤(B2)からなる粒子をさらに含むことで、小粒径かつ均一な水系エマルション組成物が得られやすくなる。
【0080】
界面活性剤(B2)は、二重結合を有する官能基を1つ有する界面活性剤であることが好ましい。前記二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基及びアリル基が例示される。界面活性剤(B2)は、(メタ)アクリロイル基又はアリル基を有することが好ましい。
界面活性剤(B2)は、直鎖構造を有することが好ましく、直鎖のポリオキシアルキレン構造を有することが好ましい。前記直鎖のポリオキシアルキレン鎖のアルキレン基としては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。
界面活性剤(B2)は、かかる直鎖のポリオキシアルキレン構造の両末端のうち、一方が二重結合を有する官能基であり、もう一方が親水性基を有することが好ましい。
前記親水性基としては、イオン性基(カチオン性、アニオン性又は両性)が好ましく、アニオン性基がより好ましく、スルホン酸塩基がさらに好ましい。
【0081】
界面活性剤(B2)としては、より小粒径かつ均一な水系エマルション組成物を得ることができる点から、下記一般式(1)で表される界面活性剤がより好ましい。
XO-(Y1O)-(Y2O)-SOZ ・・・(1)
(ただし、Xは二重結合を有する官能基である。Y1及びY2はそれぞれ独立にアルキレン基であり、かつY1とY2は異なる基である。Zは対イオンである。mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
【0082】
Xの二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基又はアリル基が好ましい。
Y1及びY2としては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。
mは、2以上の整数であることが好ましく、3以上の整数であることがより好ましい。また、mは、30以下の整数であることが好ましく、20以下の整数であることがより好ましく、10以下の整数であることがさらに好ましい。mは、1以上30以下の整数であることが好ましく、1以上20以下の整数であることがより好ましく、2以上20以下の整数であることがさらに好ましく、3以上20以下の整数であることがいっそう好ましく、3以上10以下の整数であることがよりいっそう好ましい。
nは、1以上の整数であることが好ましく、2以上の整数であることがより好ましい。また、nは、30以下の整数であることが好ましく、20以下の整数であることがより好ましく、10以下の整数であることがさらに好ましい。
Zは、NH 又はNaであることが好ましく、NH であることがより好ましい。
【0083】
界面活性剤(B2)としては、(メタ)アクリレート系、アリル系、マレイン酸系、又はイタコン酸系の界面活性剤が例示される。
界面活性剤(B2)として、具体的には、スルホエチルメタクリレートナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートアンモニウム塩、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルマレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメタクリル酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリル酸エステル、及びアリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが例示される。界面活性剤(B2)としては、これらの界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
界面活性剤(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
【0084】
エマルション(B)が界面活性剤(B2)からなる粒子を含む場合の本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の界面活性剤(B2)の含有量は、ディスパージョン又はエマルション(A)の固形分及びエマルション(B)の固形分の合計100質量%に対して、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。界面活性剤(B2)の含有量が前記下限値以上であれば、粒径が小さく、粒径分布がシャープな水系エマルション組成物となりやすく、保存安定性、特に高温下での保存安定性が向上する。前記界面活性剤(B2)の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以下が特に好ましい。界面活性剤(B2)の含有量が前記上限値以下であれば、ディスパージョン又はエマルション(A)由来の物性が十分に発揮されやすく、塗膜の硬度や密着性、耐水性が向上する。前記界面活性剤(B2)の含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.1~20質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましく、1.5~7.0質量%がさらに好ましく、2.0~5.0質量%が特に好ましい。
【0085】
〈光重合開始剤(C)〉
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線を照射した際の硬化を促進する点から、光重合開始剤(C)をさらに含むことが好ましい。また、光重合開始剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
【0086】
光重合開始剤(C)は、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されない。
光重合開始剤(C)としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピレンフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、4’,4’’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、9,10-フェナンスレンキノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドが例示される。光重合開始剤(C)としては、これらの光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0087】
光重合開始剤(C)としては、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがさらに好ましい。
【0088】
光重合開始剤(C)は市販品を使用してもよい。このような市販の光重合開始剤としては、オムニラッド184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,IGM Resins社製)、オムニラッド1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン,IGM Resins社製)、オムニラッド907(2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン,IGM Resins社製)、及びオムニラッドTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド,IGM Resins社製)が例示される。
【0089】
光重合開始剤(C)としては、さらに水系の分散液の組成物としての用途面での機能をより多く発揮させる点から、水溶性又は水分散性をもつ光重合開始剤を使用することが好ましい。かかる光重合開始剤(C)としては、例えば、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメトクロライド(オクテルケミカルズ社製、「Quantacure QTX」)や、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IGM Resins社製、「オムニラッド2959」)等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IGM Resins社製、「オムニラッド2959」)が光重合開始剤(C)として好ましい。
【0090】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を製造する際の光重合開始剤(C)の添加のタイミングは特に限定されず、ディスパージョン又はエマルション(A)に予め添加しておく方法、エマルション(B)に予め添加しておく方法、ディスパージョン又はエマルション(A)とエマルション(B)との混合時に一緒に混合する方法、ディスパージョン又はエマルション(A)とエマルション(B)とを混合した後の組成物に後添加する方法がある。ただし、非水溶性かつ固体の光重合開始剤の場合は、ディスパージョン又はエマルション(A)あるいはエマルション(B)の作製時に予め混合しておくほうが、塗膜外観の点から好ましい。
【0091】
光重合開始剤(C)の使用量は、ディスパージョン又はエマルション(A)の固形分及びエマルション(B)の固形分の合計100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。光重合開始剤(C)の使用量が前記下限値以上であれば、紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化の硬化速度が充分に速くなり、目的とする硬化塗膜が得られやすい。前記光重合開始剤(C)の使用量は、20質量部以下が好ましく、16質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。光重合開始剤(C)の使用量が前記上限値を超えても硬化性は向上せず、前記上限値以下とすることで硬化塗膜が黄変しにくくなる。前記光重合開始剤(C)の使用量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1~20質量部が好ましく、1~16質量部がより好ましく、2~10質量部が特に好ましい。
【0092】
〈任意成分〉
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ディスパージョン又はエマルション(A)、エマルション(B)及び光重合開始剤(C)以外の任意成分をさらに含んでもよい。
前記任意成分としては、表面調整剤(レベリング剤)、UV吸収剤、有機フィラー、無機フィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、粘着性付与剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散されたシリカ、防腐剤、防黴剤、凍結融解安定剤(エチレングリコール等)、造膜剤(ブチルセロソルブ等)、水分散補助のための極性溶剤(N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等)が例示される。これらの任意成分は、ディスパージョン又はエマルション(A)とエマルション(B)との混合時に一緒に混合してもよいし、混合後の組成物に添加してもよい。
【0093】
[水系エマルション組成物]
本発明の水系エマルション組成物は、前述の本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を含む。すなわち、本発明の水系エマルション組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物が水系溶媒に乳化されたエマルション組成物である。
本発明の水系エマルション組成物は、水性溶媒として水を含有することが好ましい。なお、水性溶媒としては、水に限らず、乳化の状態を損なわない範囲で、水に炭素数1~5の低級アルコール等を混合した溶媒であってもよい。
【0094】
水性溶媒の使用量は、水系エマルション組成物の総質量100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。水性溶媒の使用量が前記下限値以上であれば、転相が生じやすく、粘度が充分に低くなりやすい。前記水性溶媒の使用量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。水性溶媒の使用量が前記上限値以下であれば、コーティング時の乾燥負荷が小さくなる。前記水性溶媒の使用量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0095】
本発明の水系エマルション組成物の固形分濃度は、水系エマルション組成物の総質量100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。固形分濃度が前記下限値以上であれば、コーティング時に基材に対してハジキが生じにくく、また乾燥負荷が小さくなる。前記固形分濃度は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。固形分濃度が前記上限値以下であれば、流動性が良好になり、コーティングが容易になる。前記固形分濃度の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば5~80質量%であることがコーティングの作業性の点で好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0096】
本発明の水系エマルション組成物の体積平均粒子径は、35nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることがさらに好ましく、70nm以上であることがいっそう好ましい。前記体積平均粒子径が前記下限値以上であると、エマルション粘度が充分に小さくなり、より取り扱い性に優れる。前記体積平均粒子径は、190nm以下であることが好ましく、170nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、120nm以下であることがいっそう好ましい。前記体積平均粒子径が前記上限値以下であれば、凝集が起こりにくく、より乳化安定性が向上する。前記体積平均粒子径の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば35~190nmが好ましく、50~170nmがより好ましく、60~150nmがさらに好ましく、70~120nmがいっそう好ましい。
なお、体積平均粒子径は、散乱強度分布の体積基準での平均値を指す。体積平均粒子径は、レーザー散乱・回折装置(堀場製作所製;LA950V2)を用いて測定される。
【0097】
本発明の水系エマルション組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、5mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。粘度が前記下限値以上であると、膜厚の制御が容易になる。前記粘度は、20,000mPa・s以下が好ましく、10,000mPa・s以下がより好ましく、5,000mPa・s以下がさらに好ましい。粘度が前記上限値以下であると、取り扱いやすくなり、コーティングの作業性が良好になる。前記粘度の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば5~20,000mPa・sが好ましく、10~10,000mPa・sがより好ましく、20~5,000mPa・sがさらに好ましい。
なお、前記粘度はE型粘度計(100rpm)により測定される。
【0098】
本発明の水系エマルション組成物には、本発明の水系エマルション組成物とは異なる、アクリルエマルションやポリウレタンディスパージョン等の水分散液又は水溶液を配合してもよい。
【0099】
本発明の水系エマルション組成物の液保存安定性の評価は、作製したエマルション組成物を蓋付き遮光容器に加え、25℃、40℃、60℃、5℃のそれぞれの保管温度で5週間静置した際の、1週間毎の液の粒子径測定を行い、評価を行う。
【0100】
〈エマルションの製造方法〉
次に、本発明の水系エマルション組成物の製造方法について説明する。
本発明の水系エマルション組成物は、例えば、ディスパージョン又はエマルション(A)とエマルション(B)とを混合し、撹拌することによって得られる。
【0101】
本発明の水系エマルション組成物は、例えば濃度50質量%のエマルション組成物とし、室温(23℃)で1~2か月静置した後であっても、沈殿は見られず、均一な分散状態を維持することができる。
【0102】
水系エマルション組成物によって以下の条件で形成した塗膜のJIS K 5600-5-4;1999の方法に準じて750g荷重にて測定される鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。前記塗膜の鉛筆硬度が下限値以上であれば、保護コーティング剤、ハードコート用コーティング剤等の各種用途への有用性が高い。
また、水系エマルション組成物によって以下の条件で形成した塗膜のJIS K 5600-5-1:1999の方法に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて測定される割れ又は剥がれが生じる最大の径は、16mm以下であることが好ましく、13mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
<塗膜形成条件>
厚み125μmの易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に水系エマルション組成物をバーコーターによって塗布し、100℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀灯にて積算光量が450mJ/cmとなるように紫外線照射して硬化させ、膜厚10μmの塗膜を形成する。 なお、「易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム」とは、フィルムの片面又は両面が、水性ウレタン樹脂や水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂等のプライマーによって表面改質処理を施されたポリエチレンテレフタレートフィルムを意味する。製品例として、東洋紡社製;コスモシャインA4300、コスモシャインA4360を挙げることができる。
【0103】
[コーティング剤組成物・積層体]
本発明の水系エマルション組成物は、各種基材上に塗膜を形成するための硬化性樹脂組成物(コーティング剤組成物)として使用することができ、各種基材へのトップコート剤やアンカーコート剤等として有用である。例えば、水系エマルション組成物を基材にコーティングし、乾燥させた後、活性エネルギー線を照射することにより塗膜が硬化し、基材上に硬化塗膜を形成することができる。
【0104】
コーティング方法としては、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法を例示できる。
乾燥温度は、通常40~120℃とすることができ、好ましくは50~100℃である。
乾燥時間は、1~20分間とすることができ、好ましくは2~10分間である。
【0105】
活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。これらの中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から、紫外線照射が好ましい。なお、電子線照射を行う場合は、光重合開始剤(C)を用いなくても硬化し得る。
【0106】
紫外線照射により硬化させる方法としては、例えば、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプ等を用いて、通常、100~3000mJ/cm程度照射すればよい。紫外線照射後は、硬化を確実にする点から、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0107】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルション組成物が適用される基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル系樹脂等やその成形品(フィルム、シート、カップ等)、金属、ガラス等が挙げられる。
【0108】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された塗膜の塗膜外観、カール性、屈曲性、鉛筆硬度、透明性、及び黄変度の評価は、次のとおり作製した評価用塗膜サンプルを用いて行う。
活性エネルギー線硬化型エマルション組成物を、厚み125μmの易接着PET(東洋紡社製、「コスモシャインA4360」)上にバーコーターNo.14を用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、100℃で2分間乾燥し、高圧水銀灯ランプ1灯を用いて、18cmの高さから3.4m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成する。
【0109】
塗膜外観は、得られた硬化塗膜の表面状態を観察して評価する。
【0110】
カール性は、易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、10cm×10cmの正方形型に切り出し、平らな台上に静置させた際の、四隅の台上から浮いている距離の平均値を測定することにより評価する。
【0111】
屈曲性は、JIS K 5600-5-1:1999に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて評価を行う。評価用硬化塗膜を試験棒に巻き付けた際に、割れ又は剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定する。
【0112】
鉛筆硬度は、易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、JIS K 5600-5-4:1999の方法に準じて、750g荷重にて鉛筆硬度を測定することにより評価する。
【0113】
透明性は、ヘイズメーター(NDH 4000,日本電色工業社製)を用いて、全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定することにより評価する。
【0114】
黄変度は、色差計(SE 6000,日本電色工業社製)を用いて、b*値を測定することにより評価する。
【0115】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された塗膜の伸度、弾性率及び強度は、次のとおり評価する。
引張試験用硬化塗膜サンプルの作製:活性エネルギー線硬化型エマルション組成物を、重剥離PET上にアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が100μmとなるように塗工し、70℃で30分間乾燥し、高圧水銀灯ランプ1灯を用いて、18cmの高さから3.4m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。ついで、この硬化塗膜をダンベルで打ち抜いて、幅15mm、長さ75mmとなるように短冊状サンプルを作製した後、PETフィルムから硬化塗膜を剥離し、評価用サンプル片とする。
引張試験による伸度、弾性率及び強度の測定:温度23℃かつ湿度50%RH下で、引っ張り試験機(AG-X,島津製作所社製)を用い、JIS K 7127:1999に準拠して、評価用サンプル片の引っ張り試験を行う。引っ張り速度は10mm/minで、塗膜の破断点における伸度、塗膜の伸張変形の変位1~2%の領域における弾性率、及び塗膜の破断点における強度を測定する。
【0116】
以上説明した本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線による硬化前塗膜のタックフリー性、硬化後塗膜の耐スクラッチ性に優れることから、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材、光学フィルムトップコート用のコーティング剤、金属蒸着やスパッタリング膜、ガラス修飾向けのコーティング剤等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。
例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された層を少なくとも一層有する積層体とすることができる。積層体は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物から形成された層以外の他の層を有していてもよい。
【実施例0117】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0118】
〈ディスパージョン又はエマルション(A)〉
《ポリウレタンディスパージョン(A1)》
・ポリウレタンディスパージョン(A1-1):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(バイヒドロール UH650,コベストロ社製;固形分49.7質量%;体積平均粒子径155nm)
・ディスパージョン(A1-2):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(インプラニル DL 3040,コベストロ社製;固形分40.1質量%;体積平均粒子径81nm)
・ディスパージョン(A1-3):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(ディスパーコル U 53,コベストロ社製;固形分39.0質量%;体積平均粒子径85nm)
・ディスパージョン(A1-4):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(インプラニル DL2611,コベストロ社製;固形分39.7質量%;体積平均粒子径142nm)
・ディスパージョン(A1-5):
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン(インプラニル DLC-F,コベストロ社製;固形分40.1質量%;体積平均粒子径99nm)
・ディスパージョン(A1-6):
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン(インプラニル DLC-T,コベストロ社製;固形分35.0質量%;体積平均粒子径66nm)
・ディスパージョン(A1-7):
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン(バイヒドロール UH2606,コベストロ社製;固形分35.3質量%;体積平均粒子径74nm)
・ディスパージョン(A1-8):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(ダオタン TW6466/WA36,コベストロ社製;固形分35.6質量%;体積平均粒子径113nm)
・ディスパージョン(A1-9):
ポリエーテル骨格及びポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(スーパーフレックス 150HS,第一工業製薬社製;固形分38.6質量%;体積平均粒子径81nm)
・ディスパージョン(A1-10):
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタンディスパージョン(スーパーフレックス 470,第一工業製薬社製;固形分38.1質量%;体積平均粒子径145nm)
・ディスパージョン(A1-11):
ポリエステル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(スーパーフレックス 210,第一工業製薬社製;固形分質量35.0%;体積平均粒子径48nm)
・ディスパージョン(A1’-1):
ポリエーテル骨格を有するポリウレタンディスパージョン(インプラニル DL1069,コベストロ社製;固形分50.1質量%;体積平均粒子径198nm)
・ディスパージョン(A1’-2):
ポリウレタンディスパージョン(ダオタン TW1225/40WANEP,オルネクス社;固形分42.5質量%;体積平均粒子径442nm製)
・ポリウレタンディスパージョン(A1’-3):
強制乳化型ポリウレタンエマルション(スーパーフレックス E-2000,第一工業製薬社製;固形分50.5質量%;体積平均粒子径1202nm)
【0119】
《アクリルエマルション(A2)》
・エマルション(A2-1):
アクリルエマルション(モビニール 6969D、ジャパンコーティングレジン社製;固形分41.5質量%;体積平均粒子径73nm)
・エマルション(A2-2):
アクリルエマルション(モビニール 6899D,ジャパンコーティングレジン社製;固形分46.0質量%;体積平均粒子径109nm)
・エマルション(A2-3):
アクリルエマルション(モビニール 742A,ジャパンコーティングレジン社製;固形分48.5質量%;体積平均粒子径71nm)
【0120】
〈エマルション(B)〉
・エマルション(B-1):
調製例1により調製したもの(固形分55.3質量%;体積平均粒子径131nm)
【0121】
[調製例1:エマルション(B-1)の調製]
(1)界面活性剤(B1-1)の調製
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート96.1g(0.432モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:48.0mgKOH/g〕606g(0.519モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.1%以下となった時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:114.0mgKOH/g、水酸基価から計算される質量平均分子量984〕298g(0.302モル)を加え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート(B1-1)を含む組成物を得た(樹脂分濃度:100%、質量平均分子量:3500、粘度:1200mPa・s/60℃)。
得られた組成物は、ウレタンアクリレート系化合物(B1-1)を66.6質量%及びエチレン性不飽和モノマー(ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)を33.4質量%含んでいた。
【0122】
(2)エマルション(B-1)の調製》
円柱型容器に、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物200g、上記のウレタンアクリレート(B1-1)を含む組成物60g、光重合開始剤(オムニラッド184を6g、オムニラッド TPO-Hを2g)を加え撹拌した後、単官能性反応性界面活性剤水溶液(ラテムルPD-104,花王社製;界面活性剤(B2-1)を含む水溶液)50gを加え、ディスパー設備にて加温撹拌しながら精製水を加えていき、消泡剤0.37g及び防腐剤0.25gを添加し、エマルション(B-1)(固形分55.3質量%)を調製した。
【0123】
[実施例1~14、比較例1~4]
<配合液の調製>
表1~2に示す固形分量でディスパージョン/エマルションを混合して活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。具体的には、ディスパージョン/エマルションを蓋付きガラス瓶に秤量し、ローリングミキサーで2時間以上撹拌することで調製を行った。
【0124】
<液物性>
(粒度分布)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物の体積平均粒子径(体積基準平均径)を、レーザー散乱・回折装置(LA950V2,堀場製作所製)を用いて測定した。
(粘度)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物の25℃における粘度を、E型粘度計(100rpm)を用いて測定した。
【0125】
<塗工評価>
(塗膜の作製)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物を、厚み125μmの易接着PET(東洋紡社製、「コスモシャインA4360」)上にバーコーターNo.14を用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、100℃で2分間乾燥し、高圧水銀灯ランプ1灯を用いて、18cmの高さから3.4m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した(評価用塗膜サンプル)。
【0126】
(外観)
得られた硬化塗膜の表面状態を観察し、以下の基準で評価した。
ハジキが見られない・・・「○」又は「〇△」
ハジキがほぼ見られない・・・「△○」又は「△」
ハジキやブツ等の塗膜欠陥が見られる・・・「△×」又は「×」
結果を表1~2に示す。
【0127】
(カール性)
易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、10cm×10cmの正方形型に切り出し、平らな台上に静置させた際の、四隅の台上から浮いている距離の平均値を測定した。
結果を表1~2に示す。
【0128】
(鉛筆硬度)
易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、JIS K 5600-5-4:1999の方法に準じて、750g荷重にて鉛筆硬度を測定した。
結果を表1~2に示す。
【0129】
(屈曲試験)
得られた硬化塗膜について、JIS K 5600-5-1:1999に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行った。評価用硬化塗膜を試験棒に巻き付けた際に、割れ又は剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定した。
結果を表1~2に示す。
【0130】
(光学測定)
〔全光線透過率及びヘイズ〕
上記の評価用塗膜サンプルの透明性についてヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH 4000」)を用いて、全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定し、ヘイズ値に関して下記の通り評価した。
(評価基準)
ヘイズ値が1.0%以下・・・「◎」
ヘイズ値が1.0%超かつ1.5%以下・・・「○」
ヘイズ値が1.5%超かつ2.0%以下・・・「△」
ヘイズ値が2.0%超・・・「×」
結果を表1~2に示す。
【0131】
〔b*値〕
上記の評価用塗膜サンプルの黄変度合いについて、色差計(日本電色工業社製「SE 6000」)を用いて、b*値を測定し、下記の通り評価した。
(評価基準)
b*値が1.0%以下・・・「◎」
b*値が1.0%超かつ1.5%以下・・・「○」
b*値が1.5%超かつ2.0%以下・・・「△」
b*値が2.0%超・・・「×」
結果を表1~2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
比較例2の粘度は沈殿につき測定不可。
【0135】
[実施例15~53]
<配合液の調製>
表3~7に示す固形分量でディスパージョン/エマルションを混合して活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。具体的には、ディスパージョン/エマルションを蓋付きガラス瓶に秤量し、ローリングミキサーで2時間以上撹拌することで調製を行った。
【0136】
<液物性>
(粒度分布)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物の体積平均粒子径(体積基準平均径)を、レーザー散乱・回折装置(LA950V2,堀場製作所製)を用いて測定した。
結果を表4~7に示す。
(粘度)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物の25℃における粘度を、E型粘度計(100rpm)を用いて測定した。
結果を表4~7に示す。
【0137】
<バーコーター塗工評価>
(塗膜の作製)
調製した活性エネルギー線硬化型組成物を、厚み125μmの易接着PET(東洋紡社製、「コスモシャインA4360」)上にバーコーターNo.14を用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、100℃で2分間乾燥し、高圧水銀灯ランプ1灯を用いて、18cmの高さから3.4m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した(評価用塗膜サンプル)。
【0138】
(外観)
得られた硬化塗膜の表面状態を観察し、以下の基準で評価した。
ハジキが見られない・・・「○」又は「〇△」
ハジキがほぼ見られない・・・「△○」又は「△」
ハジキやブツ等の塗膜欠陥が見られる・・・「△×」又は「×」
結果を表4~7に示す。
【0139】
(カール性)
易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、10cm×10cmの正方形型に切り出し、平らな台上に静置させた際の、四隅の台上から浮いている距離の平均値を測定した。
結果を表4~7に示す。
【0140】
(鉛筆硬度)
易接着PET上に塗工された評価用塗膜サンプルを用いて、JIS K 5600-5-4:1999の方法に準じて、750g荷重にて鉛筆硬度を測定した。
結果を表4~7に示す。
【0141】
(屈曲試験)
得られた硬化塗膜について、JIS K 5600-5-1:1999に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行った。評価用硬化塗膜を試験棒に巻き付けた際に、割れ又は剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定した。
結果を表4~7に示す。
【0142】
(光学測定)
〔全光線透過率及びヘイズ〕
上記の評価用塗膜サンプルの透明性についてヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH 4000」)を用いて、全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定し、ヘイズ値に関して下記の通り評価した。
(評価基準)
ヘイズ値が1.0%以下・・・「◎」
ヘイズ値が1.0%超かつ1.5%以下・・・「○」
ヘイズ値が1.5%超かつ2.0%以下・・・「△」
ヘイズ値が2.0%超・・・「×」
結果を表4~7に示す。
【0143】
〔b*値〕
上記の評価用塗膜サンプルの黄変度合いについて、色差計(日本電色工業社製「SE 6000」)を用いて、b*値を測定し、下記の通り評価した。
(評価基準)
◎:b*値が1.0%以下
○:b*値が1.0%超かつ1.5%以下
△:b*値が1.5%超かつ2.0%以下
×:b*値が2.0%超.
結果を表4~7に示す。
【0144】
<アプリケーター塗工評価>
(引張試験用硬化塗膜サンプルの作製)
上記で得られた活性エネルギー線硬化型エマルション組成物を、重剥離PET上にアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が100μmとなるように塗工し、70℃で30分間乾燥し、高圧水銀灯ランプ1灯を用いて、18cmの高さから3.4m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。ついで、この硬化塗膜をダンベルで打ち抜いて、幅15mm、長さ75mmとなるように短冊状サンプルを作製した後、PETフィルムから硬化塗膜を剥離し、評価用サンプル片とした。
【0145】
(引張試験による伸度、ヤング率及び破断強度の測定)
温度23℃かつ湿度50%RH下で、引っ張り試験機(AG-X,島津製作所社製)を用い、JIS K 7127:1999に準拠して、上記評価用サンプル片の引っ張り試験を行った。引っ張り速度は10mm/minで、塗膜の破断点における伸度、塗膜の伸張変形の変位1~2%の領域における弾性率(ヤング率)、及び塗膜の破断点における強度(破断強度)を測定した。
結果を表4~7に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
[実施例2、3、5、7、9]
実施例2、3、5、7、及び9について、活性エネルギー線硬化型組成物の液保存安定性を評価した。
【0152】
<液保存安定性>
作製した活性エネルギー線硬化型組成物を蓋付き遮光容器に加え、25℃、40℃、60℃、5℃のそれぞれの保管温度で5週間静置した際の、1週間毎の液の粒子径測定を行い、下記の基準で評価した。
粒径増大なし・・・「◎」
粒径わずかに増大(100nm未満増)・・・「○」
粒径増大(100nm以上増)・・・「△」
分離沈殿又は粒径1000nm超・・・「×」
結果を表8に示す。
【0153】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、室温及び高温下での保存安定性及び凍結融解安定性に優れるとともに、硬化して形成される塗膜は、硬度と低カール性及び屈曲性とのバランス、並びに光学特性に優れることから、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材、光学フィルムトップコート用のコーティング剤、金属蒸着やスパッタリング膜、ガラス修飾向けのコーティング剤等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。