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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123557
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】給水装置、および、管理ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20240905BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F04D15/00 D
F04D15/00 Z
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031080
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】伏見 航
(72)【発明者】
【氏名】二ノ宮 宏則
(72)【発明者】
【氏名】田村 拡海
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA21
3H020CA05
3H020CA08
3H020DA02
3H020DA04
3H020DA29
3H020EA02
3H020EA03
3H020EA12
3H020EA14
3H020EA17
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA42
3H145CA21
3H145EA20
3H145EA50
3H145FA02
3H145FA16
3H145FA23
3H145FA28
(57)【要約】
【課題】モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる給水装置などを提案する。
【解決手段】給水対象に給水するための給水装置であって、搬送液を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するためのモータと、前記モータを可変速するためのインバータと、前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、前記インバータに指令を送信することにより前記ポンプを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングにおいて、前記ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水対象に給水するための給水装置であって、
搬送液を圧送するポンプと、
前記ポンプを駆動するためのモータと、
前記モータを可変速するためのインバータと、
前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、
前記インバータに指令を送信することにより前記ポンプを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングにおいて、前記ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する、
給水装置。
【請求項2】
前記ポンプの前記規定周波数での駆動は、前記ポンプによって前記給水対象に搬送液を圧送可能な状態で行われる、請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記所定タイミングは、前記ポンプの小水量が検出されているときである、請求項1に記載の給水装置。
【請求項4】
前記給水装置は、複数台のポンプを備え、
前記制御部は、前記複数台のポンプのうち第1ポンプを除いたポンプによって給水対象へ所望水量を給水できると判断したときに、前記第1ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて前記第1ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する、請求項1に記載の給水装置。
【請求項5】
前記インバータは、前記モータの漏洩電流が判定閾値以下である場合には第1のキャリア周波数で当該モータを駆動し、前記モータの漏洩電流が前記判定閾値よりも大きい場合には前記第1のキャリア周波数よりも小さい第2のキャリア周波数で当該モータを駆動する、請求項1から4の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記モータの漏洩電流が判定閾値よりも大きい場合に前記インバータで過電流による異常が生じたときには、前記モータが絶縁抵抗不良を生じていることを報知する、請求項1から4の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項7】
給水装置を管理するための管理ユニットであって、
前記給水装置は、
搬送液を圧送するポンプと、
前記ポンプを駆動するためのモータと、
前記モータを可変速するためのインバータと、
前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、を備え、
前記管理ユニットには、前記零相変流器によって検出される漏洩電流と、前記ポンプの運転情報とが入力され、
前記管理ユニットは、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判定される所定タイミングにおいて、前記ポンプを予め定めた周波数で駆動させるように前記給水装置に指令を送信し、前記ポンプが前記予め定めた周波数で駆動されているときに前記零相変流器によって検出される漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する、
管理ユニット。
【請求項8】
前記管理ユニットは前記給水装置の本体から離れた位置に設けられる、請求項7に記載の管理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置、および、管理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビルまたはマンションなどの建物に水(水道水)を供給するための給水装置が広く使用されている。給水装置としては、1台のポンプを備えた給水装置や並列に接続された複数のポンプを備えた給水装置が知られている。給水装置は、一般に、水を圧送するためのポンプと、ポンプを駆動するためのモータと、モータを可変速制御するためのインバータと、ポンプの運転を制御する制御部と、を備えている。制御部は、一般的に、吐出側圧力や流量などの状態に基づいてポンプを自動運転する。具体的な一例として、制御部は、ポンプの吐出側圧力が所定の目標圧力になるように、インバータに制御指令を送信してポンプを自動運転する。また、制御部は、吐出側圧力および流量等に基づいてポンプの運転および停止を制御する。
【0003】
ポンプを駆動するためのモータは、経年変化で絶縁抵抗が低下することがある。絶縁抵抗不良はモータの故障原因であるため、給水装置のメンテナンス時に、モータとインバータ間の配線を取り外してモータの絶縁抵抗低下・不良の有無を確認することが広く行われている。また、汚水を排出するためのポンプ装置においては、モータの絶縁抵抗を検出する検出部を備えるものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のポンプ装置では、2台のポンプを交互に運転させるものとし、運転ポンプを切り替えるとき、つまり両方のポンプが停止しているときにモータの絶縁抵抗を検出するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-8832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置のように、モータの絶縁抵抗不良をメンテナンス時に限らず常時判定できることが好ましい。しかし、特許文献1に記載の装置では、すべてのモータを停止して、電源とモータ間の電気接続が切断された状態で絶縁抵抗が検出される。給水装置による給水対象への給水はライフラインであり、絶縁抵抗を検出するためにポンプが運転不能となることは好ましくない。モータの絶縁抵抗の状態を常時監視するために、モータとインバータとの間に零相変流器を取り付けることも考えられるが、零相変流器によって検出される漏洩電流はポンプの運転状態によって変動する。つまり、零相変流器によって検出される漏洩電流は、電源電圧・周波数による影響、インバータのPWM電圧・周波数による影響、及び、モータ駆動電圧・周波数による影響などを受け、ポンプの運転状態によってモータの絶縁抵抗不良の判定に影響が生じる。
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる給水装置および管理ユニットを提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、給水対象に給水するための給水装置が提案され、かかる給水装置は、搬送液を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するためのモータと、前記モータを可変速するためのインバータと、前記モータと前記インバータとの間に接続された
零相変流器と、前記インバータに指令を送信することにより前記ポンプを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングにおいて、前記ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。
【0008】
本発明の別の一実施形態によれば、給水装置を管理するための管理ユニットが提案される。前記給水装置は、搬送液を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するためのモータと、前記モータを可変速するためのインバータと、前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、を備える。そして、前記管理ユニットには、前記零相変流器によって検出される漏洩電流と、前記ポンプの運転情報とが入力され、前記管理ユニットは、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判定される所定タイミングにおいて、前記ポンプを予め定めた周波数で駆動させるように前記給水装置に指令を送信し、前記ポンプが前記予め定めた周波数で駆動されているときに前記零相変流器によって検出される漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第1例を示すフローチャートである。
図3】本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第2例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第3例を示すフローチャートである。
図5図3の絶縁抵抗判定制御処理の変形例を示すフローチャートである。
図6図4の絶縁抵抗判定制御処理の変形例を示すフローチャートである。
図7】変形例の給水システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を示す模式図である。この給水装置は主にマンション、オフィスビル、商業施設、又は、学校等の建物(給水対象)に搬送液の一例である水道水を給水するための装置である。図1では、給水装置100が直結給水方式で使用されており、給水装置100の吸込口は、導入管105を介して水道管(水道本管)104に接続されている。ただし、給水装置100は、給水装置100の吸込口が図示しない受水槽を介して水道管104に接続される受水槽方式で使用されてもよい。給水装置100の吐出口には給水管107が接続されており、この給水管107は、各建物の給水栓(例えば蛇口)110に連通している。給水装置100は、水道管104(または受水槽)からの水を増圧し、建物の各給水栓110に水を供給する。
【0012】
給水装置100は、ポンプ12と、このポンプ12を駆動する駆動部としてのモータ13と、モータ13を可変速駆動する周波数変換器としてのインバータ20と、を備えている。
【0013】
ポンプ12の吸込側(上流側)には、逆流防止装置25が設けられている。逆流防止装置25は、給水装置100の吸込口に接続された導入管105に設けられており、給水装置100から水道管104への水の逆流を防止する。逆流防止装置25の上流側には、圧力センサ21が設けられている。圧力センサ21は、ポンプ12の吸込側圧力を測定する
ための圧力測定器である。
【0014】
ポンプ12の吐出側(下流側)には、逆止弁22と、フロースイッチ24と、圧力センサ26と、圧力タンク28と、が設けられている。図1に示す例では、ポンプ12、モータ13、逆止弁22、および、フロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、1組、または3組以上のポンプ12、モータ13、逆止弁22、およびフロースイッチ24が設けられてもよい。複数台のポンプ12を設けることにより、一部のポンプ12が運転不可となった場合には、運転可能な他のポンプ12にて給水を継続し極力断水を避けるようになっている。
【0015】
逆止弁22は、ポンプ12の吐出口に接続された吐出管に設けられており、ポンプ12が停止したときの水の逆流を防止する。逆止弁22の下流側(二次側)には、フロースイッチ24が設けられている。フロースイッチ24は、吐出管を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過少水量(小水量)を検出する流量検出器である。吐出管におけるフロースイッチ24のさらに下流側には、圧力センサ26、及び、圧力タンク28が設けられている。圧力センサ26は、ポンプ12の吐出側圧力(以降、吐出側圧力とは、圧力センサ26にて測定した圧力値を示す。)を測定するための圧力測定器である。圧力タンク28は、ポンプ12が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0016】
インバータ20は、制御部40からの制御指令に基づいてモータ13に流れる電流を制御する。一例として、インバータ20は、ポンプ12の目標回転速度に基づいて指令周波数を算出(例えばPID制御等)し、この指令周波数とモータ13の実際の周波数との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。インバータ20とモータ13との間には、漏洩電流を検出するための零相変流器(ZCT)60が接続されている。具体的な一例として、モータ13は、U相、V相、W相のコイルを有し、インバータ20は、モータ13に三相交流電圧を出力する。零相変流器60は、インバータ20とモータ13とを接続する電力ラインに設けられる。インバータ20は、漏電遮断器91を介して商用電源90に接続されている。
【0017】
給水装置100は、給水動作を制御する制御部40を備えている。本実施形態の制御部40は、記憶部47と、演算部48と、I/O部50と、設定部46と、表示部49と、通信部52と、を備えている。設定部46及び表示部49は、給水装置100の運転パネル51に備えられている。制御部40は、インバータ20を介してポンプ12の駆動を制御する。なお、図1に示す例では、インバータ20と制御部40とは別々に構成されているが、インバータ20と制御部40とは一体型でもよい。
【0018】
設定部46は、外部操作により、給水を行うのに用いられる各種設定値を設定するのに使用される。設定部46において設定された各種設定値は、I/O部50に信号入力され、記憶部47に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部46を介して、停止圧力、始動圧力、最大流量時の吐出側圧力PA、締切運転時の吐出側圧力PB、及び、その他制御に用いられる情報を入力できるようになっている。
【0019】
表示部49は、ユーザーインターフェースとして機能し、記憶部47に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ12の運転状況(運転状態)、ポンプ12の運転または停止、運転周波数(回転数)、電流、吸込側圧力、吐出側圧力、および、給水圧力等を、I/O部50を介して表示する。また、表示部49は、インバータ20など給水装置100に異常が生じているときには、警報ランプの点灯とブザー音とによってユーザーに異常を報知する。給水装置100は、通信部52を介して、携帯端末、PC、サーバなどの外部に報知をしてもよい。
【0020】
記憶部47としては、RAM、ROM等のメモリが使用される。記憶部47には、各種データ、例えば演算部48における演算結果のデータ(運転時間、積算値等)、圧力値(吸込側圧力、吐出側圧力)、設定部46を通じて入力されたデータ、及びI/O部50を通じて入力される、またはI/O部50を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0021】
通信部52は、有線通信または無線通信によって外部端末と通信可能なように構成されている。無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。また、有線通信としては、例えば運転パネル51にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部端末が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,RS232C,RS485等のシリアル通信を用いてもよい。
【0022】
I/O部50としては、ポート等が使用される。I/O部50は、圧力センサ21,26の信号、フロースイッチ24の信号、及び零相変流器60の信号などを取得する回路を有し、取得した信号情報を演算部48に送る。
【0023】
演算部48としては、例えばCPUが使用される。演算部48は、記憶部47に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部50から入力される信号に基づいて、ポンプ12を運転するための各種データの設定、計時、及び、演算等を行う。演算部48からの出力は、I/O部50に入力される。
【0024】
また、I/O部50とインバータ20は、RS422,RS232C,RS485等の通信手段により互いに接続される。I/O部50からインバータ20へは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ20からI/O部50へは、実際の周波数値や電流値、インバータトリップ信号等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。ただし、I/O部50とインバータ20との間で送受信される制御信号としては、上述した通信手段に代えてまたは加えて、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。
【0025】
続いて、制御部40による給水装置100の制御について説明する。ポンプ12が停止している状態で吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部40はポンプ12を始動させる。具体的には、制御部40はモータ13の駆動を開始するようにインバータ20に指令を出す。ポンプ12の運転中は、設定された圧力(設定圧力)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合はポンプ12の回転数と目標圧力制御カーブとを用いて目標圧力(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は設定圧力を目標圧力(SV)とする。また、吐出側圧力を現在圧力(PV)とする。そして、SVとPVの差に基づいて、比例ゲインGp、及び、積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び、微分ゲインGdを用いたPID演算を行い、ポンプ12の指令回転数が設定される。また、制御部40は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行われる。
【0026】
ポンプ12の運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過少水量を検出し、その検出信号を制御部40に送る(小水量状態)。制御部40はこの検出信号を受け、ポンプ12に指令を出して吐出側圧力が所定の停止圧力Pfに達するまでポンプ12の回転数を増加させ、圧力タンク28に蓄圧した後ポンプ12を停止(小水量停止)させる。ポンプ12が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出側圧力が始動圧力Ps以下まで低下しポンプ12が始動する。なお、本実施形態のようにポン
プが複数台ある場合には、始動するポンプ12をローテーションさせ、ポンプ12内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ24を用いずに、モータ13の電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の給水装置100の更に具体的な制御について説明する。本実施形態の給水装置100は、零相変流器60による漏洩電流の検出信号に基づいて、モータ13の絶縁抵抗不良(または絶縁抵抗低下)を判定するように構成されている。図2は、本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第1例を示すフローチャートである。この処理は、一例として、ポンプ12が運転されているときに制御部40によって実行される。以下の説明では、絶縁抵抗を判定するモータ13を「第1モータ」と称し、第1モータによって駆動されるポンプ12を「第1ポンプ」と称する。
【0028】
図2に示す絶縁抵抗判定制御処理では、まず、制御部40は、第1ポンプの小水量が検出されているか否かを判定する(ステップS102)。ここで、図2に示す処理では、「小水量が検出されているとき」は、フロースイッチ24によって小水量が検出されてからポンプ12が停止(小水量停止)するまでの期間を意味する。なお、本処理では、第1ポンプの小水量停止に先立って第1ポンプ以外のポンプは停止させるとよい。第1ポンプの小水量が検出されているときは、ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングの一例に当たる。制御部40は、第1ポンプの小水量が検出されていないときには(S102:No)、第1ポンプの運転を継続して給水対象への給水を行うと判断し、第1ポンプを圧力制御して(ステップS114)、本処理を終了する。この場合には、図2に示す処理が再び実行されるとよい。
【0029】
第1ポンプの小水量が検出されているときには(S102:Yes)、制御部40は、第1ポンプの小水量停止条件が成立しているか否かを判定する(ステップS104)。本実施形態では、圧力タンク28が蓄圧されて吐出側圧力が所定の停止圧力Pfに達すると、制御部40は、小水量停止条件が成立していると判定する。
【0030】
小水量停止条件が成立していないと判定されるときには(S104:No)、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗判定条件が成立しているか否かを判定する(ステップS106)。第1モータの絶縁抵抗判定条件は、前回に第1モータの絶縁抵抗判定をしてからの期間に基づくものとすることができる。一例として、制御部40は、前回に第1モータの絶縁抵抗判定をしてから所定期間(例えば数日、1週間など)が経過しているときには、絶縁抵抗判定条件が成立していると判定する。また、絶縁抵抗判定条件は、前回の絶縁抵抗判定に基づいて定められてもよい。一例として、前回の絶縁抵抗判定において第1モータの絶縁抵抗が低下していると判定されるほど、絶縁抵抗判定条件が成立しやすくなるように条件が定められてもよい。また、絶縁抵抗判定条件は、設定部46などを通じた外部入力によって設定されてもよいし、通信部52を通じた外部からの通信信号によって設定されてもよい。
【0031】
絶縁抵抗判定条件が成立していないときには(S106:No)、制御部40は、再びステップS102の処理を実行する。このときには、ステップS102,S104,S106の処理が繰り返し実行されて、第1ポンプを小水量停止させるための通常時(絶縁抵抗判定を行わないとき)の制御が行われる。そして、圧力タンク28が蓄圧されて第1ポンプの小水量停止条件が成立すると(S104:Yes)、制御部40は、第1ポンプを小水量停止させて(ステップS116)、本処理を終了する。この場合には、第1ポンプが始動されたときに、図2に示す処理が再び実行されるとよい。
【0032】
一方、絶縁抵抗判定条件が成立しているときには(S106:Yes)、制御部40は
、第1ポンプ(第1モータ)を規定周波数で運転させて零相変流器60によって第1モータの漏洩電流を検出する(ステップS110)。規定周波数は、第1モータの絶縁抵抗を判定するために予め定められた周波数であり、一例として、第1ポンプで通常時に給水運転するときよりも低い固定回転数、または、予め定めた変動回転数とすることができる。規定周波数は、設定部46などを通じた外部入力によって設定されてもよい。ここで、零相変流器60によって検出される漏洩電流は、電源電圧・周波数による影響、インバータのPWM電圧・周波数による影響、及び、モータ駆動電圧・周波数による影響を受け、第1ポンプの運転状態によって変動してしまう。このため、零相変流器60によって検出される漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗不良を判定する場合、第1ポンプの運転状態によって異なる結果になり得る。これに対して、本処理では、第1ポンプの小水量が検出されているときに第1モータを規定周波数で運転させることにより、第1モータを安定した条件で運転させて零相変流器60によって漏洩電流を検出することができる。
【0033】
続いて、制御部40は、零相変流器60によって検出された漏洩電流LCが所定の判定用の閾値LCthを超えているか否かを判定する(ステップS112)。閾値LCthは、第1モータを絶縁抵抗不良によって運転禁止、または、運転制限すべきと判断するための閾値であり、第1モータの定格および規定周波数などに基づいて予め定めることができる。閾値LCthは、第1モータの漏洩電流に影響する任意の要因に基づいて定めることができ、一例として、電源電圧、電源周波数、または電源の接地条件(S相接地もしくは中性点接地など)に基づいて定められてもよい。また、閾値LCthは、第1モータの運転時間に基づいて定められてもよい。第1モータの運転時間としては、第1モータが起動されてからの運転時間、および、第1モータの積算運転時間を用いることができる。なお、第1モータの積算運転時間は、第1モータのメンテナンス時にリセットされてもよい。閾値LCthは、設定部46などを通じた外部入力によって設定されてもよいし、通信部52を通じた外部からの通信信号によって設定されてもよい。制御部40は、漏洩電流LCが閾値LCth以下であるときには(S112:No)、ステップS102の処理へ戻る。このときには、第1モータを規定周波数での運転が維持されて小水量停止条件が成立すると(S104:Yes)、第1ポンプが小水量停止される(S116)。または、制御部40は、第1モータが規定周波数で運転されて絶縁抵抗不良を判定するのに十分な時間(判定時間:例えば数秒)が経過すると絶縁抵抗不良判定を完了したと判断してもよい。この場合には、ステップS106で絶縁抵抗判定条件が成立していないと判定されて(S106:No)、第1ポンプを小水量停止させるための通常時の制御が行われる。つまり、本実施形態では、漏洩電流LCが閾値LCth以下のときには、第1モータの絶縁抵抗に問題はないと判断される。
【0034】
一方、制御部40は、漏洩電流LCが判定用の閾値LCthを超えているときには(S112:Yes)、第1モータが絶縁抵抗不良を生じていると判断して、図示しないランプ、ブザー、又は外部への通信などによって第1モータの絶縁抵抗不良を報知する(ステップS120)。給水装置100は、警報ランプの点灯またはブザー音などによって表示部49を通じて報知をしてもよいし、通信部52を通じて携帯端末、PC、サーバなどの外部に報知をしてもよい。また、制御部40は、第1ポンプの運転を禁止または制限して(ステップS120)、本処理を終了する。第1ポンプの運転を禁止した場合、第1ポンプを除いた他のポンプ12によって給水対象への給水が行われるとよい。また、第1ポンプの運転制限としては、一例として、第1ポンプを除いた他のポンプが優先して運転されるものとすることができる。または、インバータ20の第1モータを駆動するキャリア周波数を制限してもよい。換言すれば、インバータ20は、漏洩電流LCが閾値LCth以下である場合には第1のキャリア周波数で第1モータを駆動し、漏洩電流LCが閾値LCthよりも大きい場合には第1キャリア周波数よりも小さい第2のキャリア周波数で第1モータを駆動してもよい。なお、制御部40は、第2のキャリア周波数で第1モータを駆動しているときに、絶縁抵抗判定処理を実行して漏洩電流LCが閾値LCthよりも大き
い場合には、第1ポンプの運転を禁止するものとしてもよい。
【0035】
また、制御部40は、漏洩電流LCが閾値LCthよりも大きいときには、インバータ20など他の装置構成で生じた異常について、第1モータの絶縁抵抗不良による異常が生じていると報知してもよい。一例として、制御部40は、漏洩電流LCが閾値LCthよりも大きい場合にインバータ20で過電流による異常(例えばトリップ)が生じたときには、インバータ20の過電流異常ではなく、第1モータが絶縁抵抗不良を生じていることを報知してもよい。給水装置100は、通信部52を介して、携帯端末、PC、サーバなどの外部に報知をしてもよい。
【0036】
以上説明した第1例の絶縁抵抗判定制御処理によれば、第1ポンプの小水量が検出されているときに、第1ポンプを規定周波数で駆動させて零相変流器60によって漏洩電流が検出される。そして、制御部40は、検出した漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗を判定するので、第1モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0037】
図3は、本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第2例を示すフローチャートである。この処理は、一例として、複数のポンプ12が運転されているときに制御部40によって実行される。
【0038】
図3に示す絶縁抵抗判定制御処理では、まず、制御部40は、第1ポンプの解列条件が成立しているか否かを判定する(ステップS202)。第1ポンプの解列条件は、複数のポンプ12が運転されている状態で第1ポンプを停止させて他のポンプ12の運転を継続する条件である。第1ポンプの解列条件は、一例として、第1ポンプを停止させても運転中のポンプ12によって給水対象に所望水量を給水できると判断されることである。なお、給水装置100による過去の給水対象への給水量(例えば、数日の給水量)を制御部40に記憶しておき、制御部40は、記憶された過去の給水対象への給水量に基づいて、給水対象への所望水量を設定してもよい。一例として、制御部40は、記憶された過去の給水対象への給水量の最大値、または最大値よりも所定量小さい若しくは大きい水量を、給水対象の所望水量とすることができる。こうすれば、給水装置100による給水対象への過去の給水量に基づいて、第1ポンプを解列して給水対象へ所望水量を供給できるか否かをより適切に判定することができる。第1ポンプの解列条件が成立されているときは、第1ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングの一例に当たる。制御部40は、第1ポンプの解列条件が成立していないときには(S202:No)、第1ポンプの運転を継続して給水対象への給水を行うと判断し、第1ポンプを圧力制御して(ステップS214)、本処理を終了する。この場合には、図3に示す処理が再び実行されるとよい。
【0039】
第1ポンプの解列条件が成立しているときには(S202:Yes)、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗判定条件が成立しているか否かを判定する(ステップS206)。この判定は、図2のステップS106の判定と同様に行うことができる。絶縁抵抗判定条件が成立していないときには(S206:No)、制御部40は、第1ポンプを解列させて(ステップS216)、つまり第1ポンプの運転を停止して、本処理を終了する。この場合には、解列したポンプが再び始動されたとき、または、他のポンプ12を第1ポンプとして、図3に示す処理が再び実行されるとよい。
【0040】
絶縁抵抗判定条件が成立しているときには(S206:Yes)、絶縁抵抗不良を判定するための所定の判定時間(例えば数秒)が経過したか否かを判定する(ステップS208)。絶縁抵抗不良を判定するための判定時間が経過していないときには(S208:No)、第1ポンプ(第1モータ)を規定周波数で運転させて零相変流器60によって第1モータの漏洩電流を検出する(ステップS210)。そして、制御部40は、零相変流器
60によって検出された漏洩電流LCが所定の判定用の閾値LCthを超えているか否かを判定する(ステップS212)。ステップS210,S212の処理・判定は、図2のステップS110,112の処理・判定と同様に行うことができる。なお、制御部40は、第1ポンプを規定周波数で運転させているときには、第1ポンプが圧送する水の供給量だけ他の運転中のポンプ12が圧送する水の供給量が減るように、他の運転中のポンプ12を制御してもよい。言い換えれば、制御部40は、第1ポンプを規定周波数で運転しているときには、第1ポンプの運転に応じて他の運転中のポンプ12の運転を補償するように複数のポンプ12を制御してもよい。
【0041】
制御部40は、漏洩電流LCが閾値LCth以下であるときには(S212:No)、ステップS202の処理へ戻る。このときには、判定時間が経過するまで、第1ポンプを規定周波数で運転させて第1モータの絶縁抵抗判定が行われることになる。そして、第1ポンプを規定周波数で運転させて判定時間が経過すると(S208:Yes)、第1ポンプを解列させて(ステップS216)、本処理を終了する。この場合には、第1モータの絶縁抵抗に問題はないと判断され、制御部40により、その後の必要に応じて第1ポンプが始動されることになる。
【0042】
制御部40は、漏洩電流LCが判定用の閾値LCthを超えているときには(S212:Yes)、第1モータが絶縁抵抗不良を生じていると判断する。このときには、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗不良を報知する共に第1ポンプの運転を禁止または制限して(ステップS220)、本処理を終了する。ステップS220の処理は、図2のステップS120と同様に行うことができる。給水装置100は、通信部52を介して、携帯端末、PC、サーバなどの外部に報知をしてもよい。
【0043】
以上説明した第2例の絶縁抵抗判定制御処理によれば、第1ポンプの解列条件が成立しているときに、第1ポンプを規定周波数で駆動させて零相変流器60によって漏洩電流が検出される。そして、制御部40は、検出した漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗を判定するので、第1モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0044】
図4は、本実施形態の制御部によって実行される絶縁抵抗判定制御処理の第3例を示すフローチャートである。この処理は、一例として、給水装置100が起動されているときに制御部40によって繰り返し実行される。
【0045】
図4に示す絶縁抵抗判定制御処理では、まず、制御部40は、第1ポンプが小水量停止中であるか否かを判定する(ステップS302)。つまり、制御部40は、第1ポンプが停止されているか否かを判定する。第1ポンプが小水量停止されているときは、第1ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングの一例に当たる。制御部40は、第1ポンプが小水量停止中ではないときには(S302:No)、第1ポンプを運転させて給水対象への給水を行うと判断し、第1ポンプを圧力制御して(ステップS314)、本処理を終了する。この場合には、図4に示す処理が再び実行されるとよい。
【0046】
第1ポンプが小水量停止中であるときには(S302:Yes)、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗判定条件が成立しているか否かを判定する(ステップS306)。この判定は、図2のステップS106の判定と同様に行うことができる。絶縁抵抗判定条件が成立していないときには(S306:No)、制御部40は、ステップS302の処理へと戻る。この場合には、絶縁抵抗判定条件が成立するまで、または、第1ポンプが始動されるまで、S302,S306の処理が繰り返し実行される。
【0047】
絶縁抵抗判定条件が成立しているときには(S306:Yes)、絶縁抵抗不良を判定するための所定の判定時間(例えば数秒)が経過したか否かを判定する(ステップS30
8)。絶縁抵抗不良を判定するための判定時間が経過していないときには(S308:No)、第1ポンプ(第1モータ)を規定周波数で運転させて零相変流器60によって第1モータの漏洩電流を検出する(ステップS310)。そして、制御部40は、零相変流器60によって検出された漏洩電流LCが所定の判定用の閾値LCthを超えているか否かを判定する(ステップS312)。つまり、制御部40は、絶縁抵抗不良判定条件が成立しているときには、停止中のポンプ12を規定周波数で運転させて、第1モータの漏洩電流を検出する。ステップS310,S312の処理・判定は、第1ポンプを始動させることを除いて、図2のステップS110,112の処理・判定と同様に行うことができる。なお、制御部40は、第1ポンプを規定周波数で運転させているときには、第1ポンプが圧送する水の供給量だけ他の運転中のポンプ12が圧送する水の供給量が減るように、他の運転中のポンプ12を制御してもよい。言い換えれば、制御部40は、第1ポンプを規定周波数で運転しているときには、第1ポンプの運転に応じて他の運転中のポンプ12の運転を補償するように複数のポンプ12を制御してもよい。
【0048】
制御部40は、漏洩電流LCが閾値LCth以下であるときには(S312:No)、ステップS302の処理へ戻る。このときには、判定時間が経過するまで、第1ポンプを規定周波数で運転させて第1モータの絶縁抵抗判定が行われることになる。そして、第1ポンプを規定周波数で運転させて判定時間が経過すると(S308:Yes)、第1ポンプを再び停止させて(ステップS316)、本処理を終了する。この場合には、第1モータの絶縁抵抗に問題はないと判断され、制御部40により、その後の必要に応じて第1ポンプが始動されることになる。
【0049】
制御部40は、漏洩電流LCが判定用の閾値LCthを超えているときには(S312:Yes)、第1モータが絶縁抵抗不良を生じていると判断する。このときには、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗不良を報知する共に第1ポンプの運転を禁止または制限して(ステップS320)、本処理を終了する。ステップS320の処理は、図2のステップS120と同様に行うことができる。給水装置100は、通信部52を介して、携帯端末、PC、サーバなどの外部に報知をしてもよい。
【0050】
以上説明した第3例の絶縁抵抗判定制御処理によれば、第1ポンプが小水量停止中であるときに、第1ポンプを規定周波数で駆動させて零相変流器60によって漏洩電流が検出される。そして、制御部40は、検出した漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗を判定するので、第1モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0051】
<変形例1>
図5は、図3の絶縁抵抗判定制御処理(第2例)の変形例を示すフローチャートである。図5に示す処理は、上記したステップS202,S214の処理を除いて図3に示す処理と同一であり、同一の又は相当するステップには、同一の符号を付して重複した説明を省略する。図5に示す絶縁抵抗判定制御処理では、まず、制御部40は、第1ポンプを含む複数台のポンプが運転中であるか否かを判定する(ステップS402)。第1ポンプが停止状態であるとき、または、第1ポンプのみが運転中であるときには(S402:No)、制御部40は、通常時の制御として運転中のポンプを圧力制御して(ステップS414)、本処理を終了する。この場合は、図5に示す処理が再び実行されるとよい。
【0052】
第1ポンプを含む複数台のポンプが運転中であるときには(S402:Yes)、制御部40は、吐出側圧力が上下限範囲内であるか否かを判定する(ステップS404)。ここで、吐出側圧力が上下限範囲内であるときは、第1ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングの一例に当たる。上下限範囲は、第1ポンプの運転を停止させると共に他のポンプの運転を継続させて給水対象に所望水量を給水できると判断できる範囲として、運転中のポンプの台数などに基づいて予め定めた範囲を用いることができる。
なお、上下限範囲は、設定部46などを通じた外部入力によって設定されてもよいし、通信部52を通じた外部からの通信信号によって設定されてもよい。吐出側圧力が上下限範囲でないときには(S404:No)、制御部40は、通常時の制御として運転中のポンプを圧力制御して(ステップS414)、本処理を終了する。この場合は、図5に示す処理が再び実行されるとよい。
【0053】
そして、吐出側圧力が上下限範囲内であるときには(S404:No)、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗判定条件に応じて(ステップS206)、第1ポンプ(第1モータ)を規定周波数で運転させて第1モータの絶縁抵抗判定を行う(ステップS208~S212)。なお、制御部は、第1モータの絶縁抵抗判定条件が成立していないとき(S206:No)、または、第1モータの漏洩電流LCが閾値LCthを超えることなく判定時間が経過したときには(S208:Yes)、第1ポンプを解列させてもよいし(S216)、他のポンプと共に第1ポンプを運転させて通常時の圧力制御を実行するものとしてもよい。
【0054】
以上説明した変形例の絶縁抵抗判定制御処理によれば、第1ポンプを含む複数台のポンプが運転中であるときに、第1ポンプを規定周波数で駆動させて零相変流器60によって漏洩電流が検出される。そして、制御部40は、検出した漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗を判定するので、第1モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0055】
<変形例2>
図6は、図4の絶縁抵抗判定制御処理(第3例)の変形例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、上記したステップS302の処理を除いて図4に示す処理と同一であり、同一の又は相当するステップには、同一の符号を付して重複した説明を省略する。図6に示す絶縁抵抗判定制御処理では、まず、制御部40は、第1ポンプが待機中であるか否かを判定する・BR>IステップS502)。つまり、制御部40は、第1ポンプが停止されていて他のポンプが運転されている状態であるか否かを判定する。第1ポンプが待機中であるときは、第1ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングの一例に当たる。制御部40は、第1ポンプが待機中ではないときには(S502:No)、第1ポンプを運転させて給水対象への給水を行うと判断し、第1ポンプを圧力制御して(ステップS314)、本処理を終了する。この場合には、図6に示す処理が再び実行されるとよい。
【0056】
そして、第1ポンプが待機中であるときには(S502:Yes)、制御部40は、第1モータの絶縁抵抗判定条件に応じて(ステップS306)、第1ポンプ(第1モータ)を規定周波数で運転させて第1モータの絶縁抵抗判定を行う(ステップS308~S312)。
【0057】
こうした変形例の絶縁抵抗判定制御処理によれば、第1ポンプが待機中であるときに、第1ポンプを規定周波数で駆動させて零相変流器60によって漏洩電流が検出される。そして、制御部40は、検出した漏洩電流に基づいて第1モータの絶縁抵抗を判定するので、第1モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0058】
<変形例3>
図7は、変形例の給水システムの構成の一例を示す図である。変形例の給水システムは、上記した実施形態の給水装置100(100A,100B,100C)と、給水装置100と通信可能な管理装置200と、を備える。管理装置200は、給水装置が備える複数台のポンプを制御するための制御ユニットの一例に当たる。管理装置200は、給水装置100から離れた位置に設けられ、一例として複数の給水装置100を管理する管理者やメンテナンスを行うメンテナンス員等によって使用される。管理装置200は、CPU
、メモリ等を備え、ソフトウェアを用いて所定の機能を実現するマイクロコンピュータにより構成されてもよいし、専用の演算処理を行うハードウェア回路により構成されてもよい。なお、管理装置200は、管理室などに備え付けられた装置であってもよいし、使用者が持ち運び可能な端末であってもよい。また、管理装置200は、単一の装置によって構成されるものに限定されず、一例として互いに離隔して設けられた複数の装置によって構成されてもよい。さらに、管理装置200は、クラウドサーバに構築されてもよく、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせで構築されてもよい。管理装置200は、複数の給水装置100(100A,100B,100C)のそれぞれと通信ができるように構成されている。管理装置200と複数の給水装置100とは、シリアル通信もしくは信号線等の有線、または無線にて通信接続されるとよい。無線通信は、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fi(登録商標)など、任意の方式を採用することができる。また、管理装置200と複数の給水装置100とは、携帯端末などを介して通信するように構成されてもよい。そして、管理装置200には、給水装置100に備えられた零相変流器60(図7では不図示)による漏洩電流の検出信号と、給水装置100のポンプ12の運転情報とが通信により入力される。また、管理装置200には、漏洩電流の検出信号に代えて、または加えて、給水装置100によるモータ13の絶縁抵抗の判定結果が通信により入力されるものとしてもよい。なお、零相変流器60が通信部を有してもよく、管理装置200には、零相変流器60による検出信号が、零相変流器60の通信部から通信により直接入力されるものとしてもよい。
【0059】
こうした管理装置200は、上記した給水装置100の制御部40と共に、または制御部40に代わって、給水装置100の複数台のポンプを制御することができる。管理装置200は、一例として、給水装置100の制御部40に代わって、図2図6の絶縁抵抗判定制御処理を実行することもできる。こうした構成においても、上記した実施形態と同様に、モータ13の絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。また、管理装置200は、第1モータが絶縁抵抗不良を生じていると判断すると、給水装置100に第1ポンプの運転を禁止または制限するように指令を送信し、指令を受けた給水装置100の制御部40が第1ポンプの運転を禁止または制限する(図2のS120等)。これにより、第1モータの絶縁抵抗不良の判定に基づいて、第1ポンプを適切に運転・停止させることができる。
【0060】
以上説明した本実施形態は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、給水対象に給水するための給水装置が提案され、前記給水装置は、搬送液を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するためのモータと、前記モータを可変速するためのインバータと、前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、前記インバータに指令を送信することにより前記ポンプを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判断される所定タイミングにおいて、前記ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。形態1によれば、モータの絶縁抵抗不良を適切に判定することができる。
【0061】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記ポンプの前記規定周波数での駆動は、前記ポンプによって前記給水対象に搬送液を圧送可能な状態で行われる。
【0062】
[形態3]形態3によれば、形態1または2において、前記所定タイミングは、前記ポンプの小水量が検出されているときである。形態3によれば、ポンプの小水量が検出されているときに、モータの絶縁抵抗を判定することができる。
【0063】
[形態4]形態4によれば、形態1から3において、前記給水装置は、複数台のポンプを備え、前記制御部は、前記複数台のポンプのうち第1ポンプを除いたポンプによって給
水対象へ所望水量を給水できると判断したときに、前記第1ポンプを規定周波数で駆動させて前記零相変流器によって漏洩電流を検出し、検出した漏洩電流に基づいて前記第1ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。形態4によれば、第1ポンプを除いたポンプを運転させて給水対象へ給水を行い、第1ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗を判定することができる。
【0064】
[形態5]形態5によれば、形態1から4において、前記インバータは、前記モータの漏洩電流が判定閾値以下である場合には第1のキャリア周波数で当該モータを駆動し、前記モータの漏洩電流が前記判定閾値よりも大きい場合には前記第1のキャリア周波数よりも小さい第2のキャリア周波数で当該モータを駆動する。形態5によれば、モータの絶縁抵抗低下に伴う漏洩電流の増加を抑制することができる。
【0065】
[形態6]形態6によれば、形態1から5において、前記制御部は、前記モータの漏洩電流が判定閾値よりも大きい場合に前記インバータで過電流による異常が生じたときには、前記モータが絶縁抵抗不良を生じていることを報知する。形態6によれば、インバータの過電流異常が、モータの絶縁抵抗不良によって生じていることを認識することができる。
【0066】
[形態7]形態7によれば、給水装置を管理するための管理ユニットが提案され、前記給水装置は、搬送液を圧送するポンプと、前記ポンプを駆動するためのモータと、前記モータを可変速するためのインバータと、前記モータと前記インバータとの間に接続された零相変流器と、を備え、前記管理ユニットには、前記零相変流器によって検出される漏洩電流と、前記ポンプの運転情報とが入力され、前記管理ユニットは、前記ポンプの運転を停止させてもよいと判定される所定タイミングにおいて、前記ポンプを予め定めた周波数で駆動させるように前記給水装置に指令を送信し、前記ポンプが前記予め定めた周波数で駆動されているときに前記零相変流器によって検出される漏洩電流に基づいて当該ポンプを駆動するモータの絶縁抵抗不良を判定する。形態7によれば、形態1と同様の効果を奏することができる。
【0067】
[形態8]形態8によれば、形態7において、前記管理ユニットは前記給水装置の本体から離れた位置に設けられる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0069】
12…ポンプ
13…モータ
20…インバータ
24…フロースイッチ
40…制御部
52…通信部
60…零相変流器
100…給水装置
200…管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7