(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123575
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240905BHJP
H01P 1/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H01P1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031114
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】宮下 大幸
【テーマコード(参考)】
2G084
5J011
【Fターム(参考)】
2G084BB01
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB35
2G084CC06
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD19
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD38
2G084DD40
2G084DD42
2G084DD47
2G084DD55
2G084DD62
2G084DD65
2G084DD66
2G084DD67
2G084EE09
2G084FF07
2G084FF15
2G084FF32
2G084HH02
2G084HH11
2G084HH19
2G084HH20
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH45
5J011FA01
(57)【要約】
【課題】プラズマ源を高効率かつ小型化できるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、処理容器と、供給すべき電磁波を共振させる共振部と、共振部に接続されたスロットアンテナと、スロットアンテナから放射される電磁波を透過させ、処理容器内に電磁波を供給するように構成される透過窓と、を含み、共振部は、内軸と外筒とを有する入力ポートと、内軸と外筒とを有する出力ポートと、入力ポートの内軸と、出力ポートの内軸とを接続し、共振部内に設けられた給電フィンと、入力ポートの外筒、および、出力ポートの外筒と同電位で接続され、給電フィンのフィン間に挿入されるように、共振部内に突出するように設けられたグランドフィンと、を備えるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、
処理容器と、
供給すべき電磁波を共振させる共振部と、
前記共振部に接続されたスロットアンテナと、
前記スロットアンテナから放射される前記電磁波を透過させ、前記処理容器内に前記電磁波を供給するように構成される透過窓と、を含み、
前記共振部は、
内軸と外筒とを有する入力ポートと、
内軸と外筒とを有する出力ポートと、
前記入力ポートの前記内軸と、前記出力ポートの前記内軸とを接続し、前記共振部内に設けられた給電フィンと、
前記入力ポートの前記外筒、および、前記出力ポートの前記外筒と同電位で接続され、前記給電フィンのフィン間に挿入されるように、前記共振部内に突出するように設けられたグランドフィンと、を備えるように構成される、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
さらに、前記給電フィンと前記グランドフィンとの間には、誘電体を有するように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記入力ポートおよび前記出力ポートは、同軸構造である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記給電フィンおよび前記グランドフィンは、それぞれ筒状である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記給電フィンは、マルチポールアンテナである、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
さらに、前記出力ポートの前記スロットアンテナ側に、前記電磁波の位相を調整する位相調整部を有するように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記グランドフィンは、前記給電フィンへの挿入量を変更可能なように形成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
さらに、前記給電フィンと、前記グランドフィンとの間には、誘電体を有するように構成され、
前記グランドフィンは、前記給電フィンへの挿入量が変更される際に、前記誘電体に沿って移動する、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記処理容器は、プラズマ生成室を備え、
前記透過窓は、前記プラズマ生成室内に前記電磁波を供給するように構成される
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記共振部、前記スロットアンテナおよび前記透過窓の組は、前記処理容器に複数設けられる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置において、所定波長のマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、マイクロ波発生装置で発生されたマイクロ波を放射するアンテナと、内管と外管からなる同軸構造を有し、内管の一端にアンテナが取り付けられ、マイクロ波発生装置で発生されたマイクロ波をアンテナへ導く同軸導波管と、誘電体材料からなり、アンテナを保持し、アンテナから放射されたマイクロ波による定在波が形成される共振器と、共振器が配置される開口面を有し、アンテナから共振器を通して放射されたマイクロ波が導かれ、かつ所定の処理ガスが供給され、マイクロ波によって処理ガスが励起されるプラズマ励起用のチャンバとを備えることが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ源を高効率かつ小型化できるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、処理容器と、供給すべき電磁波を共振させる共振部と、共振部に接続されたスロットアンテナと、スロットアンテナから放射される電磁波を透過させ、処理容器内に電磁波を供給するように構成される透過窓と、を含み、共振部は、内軸と外筒とを有する入力ポートと、内軸と外筒とを有する出力ポートと、入力ポートの内軸と、出力ポートの内軸とを接続し、共振部内に設けられた給電フィンと、入力ポートの外筒、および、出力ポートの外筒と同電位で接続され、給電フィンのフィン間に挿入されるように、共振部内に突出するように設けられたグランドフィンと、を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ源を高効率かつ小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における共振部の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の断面図を回転した状態の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における共振部の周波数特性の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本実施形態における共振部の周波数特性の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、参考例における共振部の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、参考例における共振部の周波数特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
プラズマ処理装置では、プラズマ源としてマイクロ波プラズマを用いる場合、モード変換器および整合器等の高周波部品を用いている。これらの高周波部品は、コイルやコンデンサを用いており、構造が複雑になるとともに寸法が大きくなるので、プラズマ源のプラズマ処理装置への組み込みに際して制約となっている。そこで、プラズマ源を高効率かつ小型化することが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理装置1の構成]
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
図1に例示されるプラズマ処理装置1は、例えばRLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置として構成される。
【0011】
プラズマ処理装置1は、装置本体10と、装置本体10を制御する制御部11とを備える。装置本体10は、チャンバ101と、ステージ102と、マイクロ波導入機構103と、ガス供給機構104と、排気機構105とを有する。
【0012】
チャンバ101は、略円筒状に形成されており、チャンバ101の底壁101aの略中央部には開口部110が形成されている。底壁101aには、開口部110と連通し、下方に向けて突出する排気室111が設けられている。チャンバ101の側壁101sには、基板(以下、ウエハともいう。)Wが通過する開口部117が形成されており、開口部117は、ゲートバルブ118によって開閉される。なお、チャンバ101は、処理容器の一例である。
【0013】
ステージ102には、処理対象となる基板Wが載せられる。ステージ102は、略円板状をなしており、AlN等のセラミックスによって形成されている。ステージ102は、排気室111の底部略中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材112により支持されている。ステージ102の外縁部には、ステージ102に載せられた基板Wを囲むようにエッジリング113が設けられている。また、ステージ102の内部には、基板Wを昇降するための昇降ピン(図示せず)がステージ102の上面に対して突没可能に設けられている。
【0014】
さらに、ステージ102の内部には抵抗加熱型のヒータ114が埋め込まれており、ヒータ114はヒータ電源115から給電される電力に応じてステージ102に載せられた基板Wを加熱する。また、ステージ102には、熱電対(図示せず)が挿入されており、熱電対からの信号に基づいて、基板Wの温度を、例えば350~850℃に制御可能となっている。さらに、ステージ102内において、ヒータ114の上方には、基板Wと同程度の大きさの電極116が埋設されており、電極116には、バイアス電源119が電気的に接続されている。バイアス電源119は、予め定められた周波数および大きさのバイアス電力を電極116に供給する。電極116に供給されたバイアス電力により、ステージ102に載せられた基板Wにイオンが引き込まれる。なお、バイアス電源119はプラズマ処理の特性によっては設けられなくてもよい。
【0015】
マイクロ波導入機構103は、チャンバ101の上部に設けられており、アンテナ121と、マイクロ波出力部122と、共振部123とを有する。アンテナ121には、貫通孔である多数のスロット121aが形成されている。マイクロ波出力部122は、マイクロ波を出力する。共振部123は、マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波をアンテナ121に導く。
【0016】
アンテナ121の下方には誘電体で形成された誘電体窓124が設けられている。誘電体窓124は、チャンバ101の上部にリング状に設けられた支持部材132に支持されている。アンテナ121の上には、遅波板126が設けられている。アンテナ121の上にはシールド部材125が設けられている。シールド部材125の内部には、図示しない流路が設けられており、シールド部材125は、流路内を流れる水等の流体によりアンテナ121、誘電体窓124および遅波板126を冷却する。
【0017】
アンテナ121は、例えば表面が銀または金メッキされた銅板またはアルミニウム板等で形成されており、マイクロ波を放射するための複数のスロット121aが予め定められたパターンで配置されている。スロット121aの配置パターンは、マイクロ波が均等に放射されるように適宜設定される。好適なパターンの例としては、T字状に配置された2つのスロット121aを一対として複数対のスロット121aが同心円状に配置されているラジアルラインスロットを挙げることができる。スロット121aの長さや配列間隔は、マイクロ波の実効波長(λg)に応じて適宜決定される。また、スロット121aは、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、スロット121aの配置形態は特に限定されず、同心円状の他、例えば、螺旋状、放射状に配置されてもよい。スロット121aのパターンは、所望のプラズマ密度分布が得られるマイクロ波放射特性となるように、適宜設定される。
【0018】
遅波板126は、石英、セラミックス(Al2O3)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等の真空よりも大きい誘電率を有する誘電体で形成されている。遅波板126は、マイクロ波の波長を真空中より短くしてアンテナ121を小さくする機能を有している。なお、誘電体窓124も同様の誘電体で構成されている。
【0019】
誘電体窓124および遅波板126の厚さは、遅波板126、アンテナ121、誘電体窓124、および、プラズマで形成される等価回路が共振条件を満たすように調整される。遅波板126の厚さを調整することにより、マイクロ波の位相を調整することができる。アンテナ121の接合部が定在波の「腹」になるように遅波板126の厚さを調整することにより、マイクロ波の反射が極小化され、マイクロ波の放射エネルギーを最大とすることができる。また、遅波板126と誘電体窓124を同じ材質とすることにより、マイクロ波の界面反射を防止することができる。
【0020】
マイクロ波出力部122は、マイクロ波発振器を有している。マイクロ波発振器は、マグネトロン型であってもよく、ソリッドステート型であってもよい。マイクロ波発振器によって生成されるマイクロ波の周波数は、例えば300MHz~10GHzの周波数である。一例として、マイクロ波出力部122は、マグネトロン型のマイクロ波発振器により、2.45GHzのマイクロ波を出力する。マイクロ波は、電磁波の一例である。なお、マイクロ波出力部122は、VHF(Very High Frequency)帯からUHF(Ultra High Frequency)帯の電磁波を発振する発振器であってもよい。他の一例として、マイクロ波出力部122は、ソリッドステート型の発振器により、860MHzの電磁波を出力する。
【0021】
共振部123は、入力ポートが導波管127を介してマイクロ波出力部122と接続される。また、共振部123は、出力ポートが給電部128を介してアンテナ121と接続される。共振部123は、チャンバ101内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部122の出力インピーダンスに整合させる。なお、マイクロ波出力部122と給電部128との間において、モード変換機構は共振部123がその機能を有するので省略されている。導波管127は、マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波を共振部123に導く。給電部128は、アンテナ121の中心に接続される。マイクロ波出力部122から出力されたマイクロ波は、共振部123および給電部128を介して遅波板126に伝搬し、遅波板126からアンテナ121のスロット121a、および、誘電体窓124を介してチャンバ101内に放射される。
【0022】
ガス供給機構104は、チャンバ101の内壁に沿ってリング状に設けられたシャワーリング142を有する。シャワーリング142は、内部に設けられたリング状の流路166と、流路166に接続されその内側に開口する多数の吐出口167とを有する。流路166には、配管161を介してガス供給部163が接続されている。ガス供給部163には、複数のガスソースおよび複数の流量制御器が設けられている。一実施形態において、ガス供給部163は、少なくとも1つの処理ガスを、対応するガスソースから対応の流量制御器を介してシャワーリング142に供給するように構成されている。シャワーリング142に供給されたガスは、複数の吐出口167からチャンバ101内に供給される。
【0023】
排気機構105は、排気室111と、排気室111の側壁に設けられた排気管181と、排気管181に接続された排気装置182とを有する。排気装置182は、真空ポンプおよび圧力制御バルブ等を有する。
【0024】
制御部11は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件等を含むレシピが格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、装置本体10の各部を制御する。例えば、制御部11は、成膜処理を行うように、プラズマ処理装置1の各部を制御する。
【0025】
[共振部123の構造]
次に、
図2および
図3を用いて共振部123の詳細について説明する。
図2は、本実施形態における共振部の構成の一例を示す断面図である。
図3は、
図2の断面図を回転した状態の一例を示す斜視図である。
図2および
図3に示すように、共振部123は、筐体201を有する。筐体201は、アルミニウムや銅等の導体で形成される。また、筐体201は、入力ポート202と、出力ポート205とを備える。本実施形態では、マイクロ波出力部122から供給される電磁波の流れ方向を基準として、マイクロ波出力部122側の導波管127に接続される側を入力ポート202とし、アンテナ121側の給電部128に接続される側を出力ポート205として説明する。なお、入力ポート202と出力ポート205とは、接続先を入れ替えても構わない。
【0026】
入力ポート202および出力ポート205は、それぞれ外筒(外側導体)203,206、および、内軸(内側導体)204,207で形成される。つまり、入力ポート202および出力ポート205は、同軸構造である。なお、外筒206は、筐体201の下部と一体化している。筐体201は、外筒203,206と導通しており、入力ポート202に接続される同軸ケーブルや共振部123が設置されるフレーム等を介して、接地されたチャンバ101とともにグランド電位となる。筐体201は、円筒形状であり、円筒の側面210には入力ポート202が形成される。なお、筐体201は、断面が四角の筒形状であってもよい。また、筐体201は、入力ポート202が形成された側の円筒の端部に出力ポート205が形成され、他方の端部208は円筒を閉じるように円盤状に形成される。端部208の中心には、ベアリング217が設けられ、グランドフィン209を上下に動かすための棒状部216を保持している。
【0027】
グランドフィン209は、アルミニウムや銅等の導体で形成される。グランドフィン209は、基部211と、複数のフィン213~215からなるフィン部212と、棒状部216とを有する。基部211には、筐体201内で出力ポート205側に突出するように設けられたフィン部212のフィン213~215が接続される。また、基部211には、端部208側に突出するように設けられた棒状部216が接続される。フィン214は、フィン213の周囲の筐体201内に筒状に突出するように設けられる。フィン215は、フィン214の周囲の筐体201内に筒状に突出するように設けられる。つまり、フィン部212のフィン213~215は、例えば同心円の円柱形状と円筒形状である。なお、フィン部212は、
図2の断面図では、櫛歯状に見える。
【0028】
筐体201の内部には、給電フィン224が設けられる。給電フィン224は、フィン213を囲むように形成されるフィン225と、フィン214を囲むように形成されるフィン226と、フィン215を囲むように形成されるフィン227とを有する。フィン213~215とフィン225~227とは、同軸状に配置される。給電フィン224は、アルミニウムや銅等の導体で形成され、一方を基部221で閉じた円筒形状である。すなわち、給電フィン224は、フィン225~227が基部221で接続された、三重の筒形状のマルチポールアンテナである。なお、給電フィン224は、
図2の断面図では、櫛歯状に見える。基部221は、円盤状であり、出力ポート205側の中心部が凸状となっている。基部221の側面222には、内軸204が接続される。基部221の凸状部分の底面223には、内軸207が接続される。すなわち、入力ポート202の内軸(入力側導体)204と、出力ポート205の内軸(出力側導体)207と、給電フィン224とによって、筐体201から絶縁される給電ライン220が形成される。
【0029】
筐体201と給電ライン220との間には、誘電体228を有する。つまり、フィン213とフィン225との間、フィン225とフィン214との間、フィン214とフィン226との間、フィン226とフィン215との間、および、フィン215とフィン227との間は、誘電体228が配置された状態である。同様に、フィン227と円筒の側面210との間、入力ポート202の外筒203と内軸204との間、および、出力ポート205の外筒206と内軸207との間にも、誘電体228が配置された状態である。なお、フィン225~227の先端部は、誘電体228で覆われており、グランドフィン209が最も下側まで挿入された場合であっても、フィン225~227と接触しないようになっている。誘電体228は、例えば、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)等を用いることができる。なお、誘電体228は、筐体201内のうち、グランドフィン209が最も挿入された状態における、基部211の給電フィン224側の面211aの位置から、端部208の内面までの空間229には、配置されない。つまり、空間229は、グランドフィン209の挿入量を変更する際の移動空間となる。なお、誘電体228は、省略しても構わない。
【0030】
グランドフィン209は、例えば、手動にて筐体201内の空間229において移動可能に形成される。なお、グランドフィン209の棒状部216にリードスクリューを設け、ステッピングモータによりリードスクリューを回転させることで、グランドフィン209を移動可能としてもよい。つまり、グランドフィン209は、給電フィン224への挿入量が変更可能なように形成される。グランドフィン209は、最も挿入された状態におけるフィン213~215の先端部を基準位置(
図2中、「0」の位置)とし、端部208側をプラスとした場合、例えば、A点までの区間231(0mm~+6mm)の範囲で移動可能とすることができる。例えば、
図2に示すグランドフィン209は、最も引き抜かれた+6mmの位置である場合を表している。グランドフィン209が引き抜かれた後には、フィン213~215にそれぞれ対応する溝228a~228cが形成されている。つまり、溝228a~228cには、誘電体228がない状態である。言い換えると、グランドフィン209のフィン213~215は、給電フィン224への挿入量が変更される際に、誘電体228に沿って移動される。このように、グランドフィン209の挿入量を変更して共振空間の寸法を変更することで、共振部123を通過する周波数(共振周波数)を変更することができる。
【0031】
また、
図2のB点からC点までの区間233に対応する空間、つまり、給電フィン224のフィン225~227と、グランドフィン209のフィン213~215とで形成される入り組んだ空間は、定在波領域を形成する。本実施形態では、定在波領域である区間233は、λg/4に近似する長さとなり、λg/2よりも大幅に短く共振部123の寸法を小さくすることができる。なお、フィン213~215の先端部と基部221の上面221aとの間隔である、
図2の「0」の位置からB点までの区間232は、誘電体228の絶縁破壊電圧を考慮して決定される。例えば、区間232は、誘電体228がPTFEである場合、PTFEの絶縁破壊電圧の19kV/mmから20倍程度の安全率を考慮した1kV/mmを用いて決定される。
【0032】
位相調整部230は、出力ポート205の給電部128側において、内軸207を囲むように設けられる。位相調整部230は、共振部123の定在波領域の共振特性を強化、つまり、Q値を高くするものである。つまり、位相調整部230は、電磁波の位相を調整する。位相調整部230は、比誘電率εrが比較的高い(εr≧4)材料、例えば、セラミックス等で構成されることが好ましい。セラミックスとしては、例えば、アルミナ(εr=10)等を用いることができる。
【0033】
[シミュレーション結果]
次に、
図4および
図5を用いて共振部123の周波数特性のシミュレーション結果について説明する。
図4および
図5は、本実施形態における共振部の周波数特性の一例を示すグラフである。
図4に示すグラフ30~34は、チャンバ101内のプラズマ密度が変化して負荷(プラズマ)のインピーダンスが変化した場合における共振部123の周波数特性を電力反射率で表したものである。グラフ30~34は、プラズマの比誘電率κpが、それぞれ30,40,50,60,70である場合の電力反射率の周波数特性を表している。グラフ30~34に示すように、電力反射率が最も小さくなる周波数(共振周波数)は、プラズマ密度が変化しても、概ね840MHz~870MHzの30MHz幅の範囲35に収まっている。また、基準の周波数を860MHzとした場合、860MHzにおける電力反射率の変動は、プラズマ密度が変化しても5%以下に収まっている。これは、共振部123内は共振しているのでインピーダンスが非常に高い状態になっており、負荷であるプラズマのインピーダンスが多少変化しても、その変化による全体のインピーダンスへの影響が少ないためであると考えられる。なお、電力反射率の変動が5%以下であれば、電磁波の出力をロード制御(投入電力から反射電力を減算した電力を一定にする制御)によって制御することで、規定の電力をチャンバ101内に供給することができる。
【0034】
図5に示すグラフ40~46は、共振部123のグランドフィン209の挿入具合を変化させた場合における周波数特性を電力反射率で表したものである。グラフ40~46は、グランドフィン209を最も挿入した0mmの位置から最も引き抜かれた+6mmの位置まで1mm単位で動かした場合の周波数特性である。なお、グラフ40が0mmの位置、グラフ46が+6mmの位置である。グラフ40~46に示すように、共振周波数は、0mmの位置の800MHzから、+6mmの位置の950MHzまで変化している。なお、
図5では、縦軸に電力反射率を用いているので、所望の周波数範囲(700MHz~1GHz)において電力反射率が最も小さい周波数が共振周波数を表している。すなわち、共振部123は、共振空間(定在波領域)の寸法を変更することにより、共振周波数を調整することができる。言い換えると、共振部123は、800MHz~950MHzの範囲で中心周波数(共振周波数)を可変可能なバンドパスフィルタであるともいえる。共振部123は、給電フィン224のようなマルチポールアンテナに複数のフィン213~215を持つグランドフィン209の挿入量を変更することで、共振周波数について、複数の周波数に対応することができる。なお、共振部123の共振周波数の調整後は、グランドフィン209の棒状部216を筐体201に固定することで、共振周波数も固定できる。また、電力反射率が5%以下であれば、電磁波の出力をロード制御によって微調整してもよい。
【0035】
このように、アンテナ121の直上に共振部123を設けることで、プラズマ源を高効率かつ小型化できる。また、共振部123を小型化できるので、複数の共振部123およびアンテナ121をチャンバ101の上面に設ける際にレイアウトの自由度を向上させることができる。さらに、共振部123で負荷のインピーダンスを整合可能なので、別途、コイルやコンデンサを用いた整合器を用いなくてもよい。
【0036】
[参考例との比較]
続いて、
図6および
図7を用いて参考例の共振部との比較について説明する。
図6は、参考例における共振部の構成の一例を示す概略断面図である。
図6に示すプラズマ処理装置300は、チャンバ301内にプラズマ生成室302を有するリモートプラズマ処理装置の参考例である。プラズマ処理装置300は、チャンバ301内に設けられた載置台303上に載置された図示しない基板に対して、プラズマ生成室302から処理空間301sに供給されるプラズマにより処理を行う。なお、チャンバ301内は、排気機構309により排気され、所望の圧力の真空雰囲気となる。プラズマ生成室302には、マイクロ波出力部304から、導波管305および同軸導波管306を介して電磁波(高周波電力)が供給される。導波管305には、スタブ307が設けられ、共振周波数が調整される。プラズマ処理装置300では、D点からE点までの区間308が共振部、つまり定在波領域となる。参考例の定在波領域である区間308の長さは、3λg/4+3λg/4=3λg/2となり、λg/2の3倍の長さとなる。これに対し、本実施形態の定在波領域である区間233の長さは、λg/4に近似する長さであるので、参考例に対して1/6の長さである。すなわち、本実施形態は、参考例に対して共振部の大きさを大幅に小型化することができる。また、定在波領域の長さによって電力損失の大きさ(銅損)が決定するため、本実施形態のように、定在波領域が短いと電力損失を小さくでき、高効率化することができる。なお、本実施形態の共振部123では、λg/4分の線路長での損失を考えればよい。
【0037】
図7は、参考例における共振部の周波数特性の一例を示すグラフである。
図7に示すグラフ50~54は、参考例において、チャンバ301内のプラズマ密度が変化して負荷(プラズマ)のインピーダンスが変化した場合における共振部(区間308)の周波数特性を電力反射率で表したものである。グラフ50~54は、プラズマの比誘電率κpが、それぞれ30,40,50,60,70である場合の電力反射率の周波数特性を表している。グラフ50~54に示すように、電力反射率が最も小さくなる周波数(共振周波数)は、プラズマ密度が変化すると、概ね790MHz~840MHzの50MHz幅の範囲55となっている。
図4に示す本実施形態の共振部123の周波数特性を、
図7の参考例の共振部(区間308)の周波数特性と比較すると、参考例に比べてプラズマ密度の変化に対する共振周波数の変化の幅を小さくできることがわかる。
【0038】
以上、本実施形態によれば、プラズマ処理装置1は、処理容器(チャンバ101)と、供給すべき電磁波を共振させる共振部123と、共振部123に接続されたスロットアンテナ(アンテナ121)と、スロットアンテナから放射される電磁波を透過させ、処理容器内に電磁波を供給するように構成される透過窓(誘電体窓124)と、を含む。共振部123は、入力ポート202と、出力ポート205と、給電フィン224と、グランドフィン209と、を備える。入力ポート202は、内軸204と外筒203とを有する。出力ポート205は、内軸207と外筒206とを有する。給電フィン224は、入力ポート202の内軸204と、出力ポート205の内軸207とを接続し、共振部123内に設けられる。グランドフィン209は、入力ポート202の外筒203、および、出力ポート205の外筒206と同電位で接続され、給電フィン224のフィン間に挿入されるように、共振部123内に突出するように設けられる。その結果、プラズマ源を高効率かつ小型化できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、給電フィン224とグランドフィン209との間には、誘電体228を有する。その結果、共振部123をより小型化することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、入力ポート202および出力ポート205は、同軸構造である。その結果、高出力の高周波電力に対する共振部123を形成できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、給電フィン224およびグランドフィン209は、それぞれ筒状である。その結果、供給する電磁波の周波数において共振させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、給電フィン224は、マルチポールアンテナである。その結果、共振周波数の範囲を広げることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、出力ポート205のスロットアンテナ側に、電磁波の位相を調整する位相調整部230を有する。その結果、共振部123の定在波領域の共振特性を強化することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、グランドフィン209は、給電フィン224への挿入量を変更可能なように形成される。その結果、共振部123を簡易な構造で小型化することができる。また、共振部123の共振周波数を調整することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、給電フィン224と、グランドフィン209との間には、誘電体228を有する。また、グランドフィン209は、給電フィン224への挿入量が変更される際に、誘電体228に沿って移動する。その結果、グランドフィン209が給電フィン224に接触することなく、グランドフィン209を移動させることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、処理容器は、プラズマ生成室を備え、透過窓は、プラズマ生成室内に電磁波を供給するように構成される。その結果、リモートプラズマ処理装置においてもプラズマ源を高効率かつ小型化できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、共振部123、スロットアンテナおよび透過窓の組は、処理容器に複数設けられる。その結果、複数のプラズマ源を有するプラズマ処理装置においてもプラズマ源を高効率かつ小型化できる。
【0048】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0049】
また、上記した実施形態では、チャンバ101内の処理空間で直接プラズマを生成するプラズマ処理装置1を用いて説明したが、これに限定されない。例えば、チャンバ内にプラズマ生成室を有するリモートプラズマ処理装置に適用してもよい。
【0050】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
プラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、
処理容器と、
供給すべき電磁波を共振させる共振部と、
前記共振部に接続されたスロットアンテナと、
前記スロットアンテナから放射される前記電磁波を透過させ、前記処理容器内に前記電磁波を供給するように構成される透過窓と、を含み、
前記共振部は、
内軸と外筒とを有する入力ポートと、
内軸と外筒とを有する出力ポートと、
前記入力ポートの前記内軸と、前記出力ポートの前記内軸とを接続し、前記共振部内に設けられた給電フィンと、
前記入力ポートの前記外筒、および、前記出力ポートの前記外筒と同電位で接続され、前記給電フィンのフィン間に挿入されるように、前記共振部内に突出するように設けられたグランドフィンと、を備えるように構成される、
プラズマ処理装置。
(2)
さらに、前記給電フィンと前記グランドフィンとの間には、誘電体を有するように構成される、
前記(1)に記載のプラズマ処理装置。
(3)
前記入力ポートおよび前記出力ポートは、同軸構造である、
前記(1)又は(2)に記載のプラズマ処理装置。
(4)
前記給電フィンおよび前記グランドフィンは、それぞれ筒状である、
前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(5)
前記給電フィンは、マルチポールアンテナである、
前記(4)に記載のプラズマ処理装置。
(6)
さらに、前記出力ポートの前記スロットアンテナ側に、前記電磁波の位相を調整する位相調整部を有するように構成される、
前記(1)~(5)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(7)
前記グランドフィンは、前記給電フィンへの挿入量を変更可能なように形成される、
前記(1)~(6)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(8)
さらに、前記給電フィンと、前記グランドフィンとの間には、誘電体を有するように構成され、
前記グランドフィンは、前記給電フィンへの挿入量が変更される際に、前記誘電体に沿って移動する、
前記(7)に記載のプラズマ処理装置。
(9)
前記処理容器は、プラズマ生成室を備え、
前記透過窓は、前記プラズマ生成室内に前記電磁波を供給するように構成される
前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(10)
前記共振部、前記スロットアンテナおよび前記透過窓の組は、前記処理容器に複数設けられる、
前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0051】
1 プラズマ処理装置
101 チャンバ
121 アンテナ
123 共振部
124 誘電体窓
202 入力ポート
203,206 外筒
204,207 内軸
205 出力ポート
209 グランドフィン
224 給電フィン
228 誘電体
230 位相調整部