(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123604
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】防曇用塗膜組成物、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240905BHJP
C08G 77/26 20060101ALI20240905BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D183/04
C08G77/26
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031169
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月26日にウェブサイト上で公開した。https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsapm.2c02077#
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000175618
【氏名又は名称】三協化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲爾
(72)【発明者】
【氏名】桂 大詞
(72)【発明者】
【氏名】大下 浄治
(72)【発明者】
【氏名】濱田 崇
(72)【発明者】
【氏名】川島 和彰
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK52A
4F100AL01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CC00A
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ42
4F100EJ48
4F100EJ85
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4F100GB31
4F100GB32
4F100JD15
4F100JK12
4F100JL07A
4J038DL031
4J038DL051
4J038DL081
4J038GA08
4J038JA19
4J038JC32
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA08
4J038NA06
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC03
4J246AA03
4J246AA19
4J246BA120
4J246BA12X
4J246BB020
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4J246BB02X
4J246CA130
4J246CA139
4J246CA13X
4J246CA240
4J246CA249
4J246CA24X
4J246CA770
4J246CA779
4J246CA77X
4J246CB02
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA321
4J246FA421
4J246FA441
4J246GB02
4J246GB04
4J246GC46
4J246GC48
4J246HA23
4J246HA26
4J246HA70
(57)【要約】
【課題】耐加水分解性を示す防曇用塗膜組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるシロキサン単位を有する重合体を含む防曇用塗膜組成物であって、
R1
aR2
bSiO(4-a-b)/2 (1)
R1は水素原子又は1価の有機基、R2は1級、2級又は3級アンモニウム塩構造を有する有機基、aは1又は2、bは0から2のいずれかの整数、a+bは1から3のいずれかの整数であり、
*-R3N+R4R5R6 (2)
R3は炭素数1以上の有機鎖であり、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、*は結合手を表し、1分子中*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるシロキサン単位を有する重合体を含むことを特徴とする、防曇用塗膜組成物。
R
1
aR
2
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式(1)中、
R
1は、水素原子又は1価の有機基であり、
R
2は、下記式(2)で表される1級、2級又は3級アンモニウム塩構造を有する有機基であり、
aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。)
【化1】
(式(2)中、
R
3は炭素数1以上の有機鎖であり、
R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、
*は結合手を表し、1分子中*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。)
【請求項2】
前記式(1)で表されるシロキサン単位と下記式(3)で表されるシロキサン単位とを有する共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の防曇用塗膜組成物。
R7
cR8
dSiO(4-c-d)/2 (3)
(式(3)中、
R7は水素原子又は1価の有機基であり、
R8は炭素数1以上の疎水基であり、
cは0から2のいずれかの整数、dは1又は2であり、c+dは1から3のいずれかの整数である。)
【請求項3】
基材と、基材の少なくとも一面の一部に請求項1又は2に記載の前記防曇用塗膜組成物を備える積層体。
【請求項4】
アミノ基を有し、下記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る重合工程と、
前記重合体を基材の少なくとも一面の一部に塗布し、硬化して塗膜を得る塗膜形成工程と、
前記塗膜形成工程によって得た塗膜に酸を反応させて、前記アミノ基を1級、2級又は3級アンモニウム塩構造へ変換した下記式(2)で表される有機基を有する防曇用塗膜組成物を得る塗膜後イオン化工程と、
を備える積層体の製造方法。
R
1
aR
9
bSiO
(4-a-b)/2 (4)
(式(4)中、
R
1は、水素原子又は1価の有機基であり、
R
9は、アミノ基を有する有機基であり、
aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。)
【化2】
(式(2)中、
R
3は、炭素数1以上の有機鎖であり、
R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、
*は結合手を表し、1分子中*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。)
【請求項5】
アミノ基を有し、下記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る重合工程と、
前記重合体に酸、アルキルハライド又はアラルキルハライドから選択されるいずれか1つを反応させて、前記アミノ基を1級、2級又は3級アンモニウム塩構造へ変換した下記式(2)で表される有機基を有するイオン化重合体を得る塗膜前イオン化工程と、
前記イオン化重合体を基材の少なくとも一面の一部に塗布し、硬化して防曇用塗膜組成物を得る塗膜形成工程と、
を備える積層体の製造方法。
R
1
aR
9
bSiO
(4-a-b)/2 (4)
(式(4)中、
R
1は、水素原子又は1価の有機基であり、
R
9は、アミノ基を有する有機基であり、
aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。)
【化3】
(式(2)中、
R
3は、炭素数1以上の有機鎖であり、
R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、
*は結合手を表し、1分子中、*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。)
【請求項6】
前記重合工程は、
前記式(4)で表されるシロキサン単位及び下記式(3)で表されるシロキサン単位を含む共重合体を得る共重合工程であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の積層体の製造方法。
R7
cR8
dSiO(4-c-d)/2 (3)
(式(3)中、
R7は水素原子又は1価の有機基であり、
R8は炭素数1以上の疎水基であり、
cは0から2のいずれかの整数、dは1又は2であり、c+dは1から3のいずれかの整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防曇用塗膜組成物、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、トラック、バス及び電車等の車両において、省エネルギーの観点から、窓等の部材に結露を起こさせない防曇技術が求められている。防曇技術においては、窓等の部材に吸湿性の膜を形成することにより、結露しようとする水分を膜内に吸収させ、結果として防曇を達成する。
【0003】
硬化エポキシ樹脂やポリビニルアセタール樹脂等の炭素骨格を有するポリマーから構成される従来の吸湿膜は、耐傷付性に劣った。耐傷付性を向上させるために、架橋密度を上げる、フィラーを添加するなどの解決手段を施すと、吸湿性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで本願の発明者等は、ポリシロキサン骨格を有する吸湿膜に着目し、吸湿性及び耐傷付性の両方に優れた吸湿膜を有する積層体及びその製造方法を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される積層体は、親水基含有炭化水素基にアミノ基を導入した場合に更なる吸湿性及び耐傷付性の向上を示した。しかしながら、アミノ基を含むシロキサン防曇材料は、高湿環境下など、水分子の多い環境下では、アミノ基と水分子が反応してOH-が発生し、そのOH-がシロキサン骨格を加水分解して耐傷付性が低下するという問題がある。
【0007】
そこで本開示では、優れた吸湿性及び耐傷付性を示すとともに、耐加水分解性を付与した防曇用塗膜組成物、積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、ここに開示する防曇用塗膜組成物は、下記式(1)で表されるシロキサン単位を有する重合体を含むことを特徴とする。
【0009】
R1
aR2
bSiO(4-a-b)/2 (1)
式(1)中、
R1は、水素原子又は1価の有機基であり、
R2は、下記式(2)で表される1級、2級又は3級アンモニウム塩構造を有する有機基であり、
aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。
【0010】
【0011】
式(2)中、
R3は炭素数1以上の有機鎖であり、
R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、
*は結合手を表し、1分子中*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。
【0012】
アンモニウム塩構造はアミノ基よりも水分子と反応し難く、OH-が発生し難い。本構成によれば、優れた吸湿性及び耐傷付性を保ちつつ、加水分解性を抑制した防曇用塗膜組成物を提供することが可能となる。
【0013】
防曇用塗膜組成物は、好ましくは、前記式(1)で表されるシロキサン単位と下記式(3)で表されるシロキサン単位とを有する共重合体を含む。
【0014】
R7
cR8
dSiO(4-c-d)/2 (3)
式(3)中、
R7は水素原子又は1価の有機基であり、
R8は炭素数1以上の疎水基であり、
cは0から2のいずれかの整数、dは1又は2であり、c+dは1から3のいずれかの整数である。
【0015】
本構成によれば、アンモニウム塩構造を有するシロキサン単位と疎水基を有するシロキサン単位とを含む共重合体とすることにより、膨潤によるクラックの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本開示によると、アンモニウム塩構造を備えるシロキサン単位を有することで、吸湿性及び耐傷付性を保ちつつ、耐加水分解性を向上した防曇用塗膜組成物、積層体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の積層体の第1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本開示の積層体の第2の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0019】
[積層体]
本開示の積層体は、基材及び当該基材の少なくとも一面の一部表面に形成された防曇用塗膜組成物を備える。すなわち、防曇用塗膜組成物は基材の両面又は片面に形成されていてもよいし、基材表面の全面又は部分的に形成されていてもよい。
【0020】
基材は、防曇用塗膜組成物を形成可能な限り、特に限定されない。基材は、例えば、無機材料から構成されていてもよいし、有機材料から構成されていてもよいし、又は無機材料と有機材料との複合材料から構成されていてもよい。
【0021】
無機材料は、特に限定されず、あらゆる無機材料であってもよい。無機材料として、例えば、ガラス、金属、セラミックス等が挙げられる。
【0022】
有機材料は、特に限定されず、あらゆる熱硬化性ポリマー及び/又は熱可塑性ポリマーであってもよい。防曇用塗膜組成物形成時の耐熱性の観点からは通常、熱硬化性ポリマーが使用される。
【0023】
熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂及びそれらの変性物、
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂、
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのポリアクリレート系樹脂、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂、
ポリアセタール(POM)、
ポリフェニレンサルファイド(PPS)、
PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA)、
ポリカーボネート系樹脂(PC)、
ポリウレタン系樹脂、
フッ素系ポリマー樹脂、
液晶ポリマー(LCP)、
及びそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
基材は、防曇用塗膜組成物形成時の焼成に対する耐熱性の観点から、無機材料及び/又は熱硬化性ポリマーから構成されていることが好ましく、無機材料から構成されていることがより好ましい。
【0026】
基材は、防曇用塗膜組成物の硬化収縮に対する機械的強度の観点から、1GPa以上のヤング率を有することが好ましい。基材のヤング率の上限値は特に限定されない。
【0027】
基材は、防曇用塗膜組成物の硬化収縮に対する機械的強度の観点から、基材の厚み/防曇用塗膜組成物の厚み≧10の関係式を満たすことが好ましく、より好ましくは基材の厚み/防曇用塗膜組成物の厚み≧100の関係式を満たす。
【0028】
基材の厚みは通常、100μm以上であり、好ましくは500μm以上、より好ましくは1000μm以上である。基材の厚みの上限値は特に限定されない。基材の厚みは、例えば10cm以下であってもよい。
【0029】
[防曇用塗膜組成物]
本開示の防曇用塗膜組成物は、原料である塗料組成物が基材に対して塗布され、加熱により膜状に硬化されたものである。防曇用塗膜組成物は、吸湿性の塗膜であり、結露しようとする水分を吸収することで基材の曇りを防ぐ。
【0030】
防曇用塗膜組成物の厚みは通常、1μm以上であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。防曇用塗膜組成物の厚みの上限値は特に限定されない。防曇用塗膜組成物の厚みは、例えば1000μm以下であってもよい。
【0031】
本開示の防曇用塗膜組成物は、下記式(1)で表されるシロキサン単位を有する重合体を含む。
【0032】
R1
aR2
bSiO(4-a-b)/2 (1)
式(1)中、aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。
【0033】
式(1)中、R1は、水素原子又は1価の有機基である。有機基としては、炭素数1以上の1価のあらゆる有機基が使用可能である。例えば、有機基として、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基などのアルキル基、
ビニル基、アリル基などのアルケニル基、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、
フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、
ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0034】
式(1)中、R2は、下記式(2)で表される1級、2級又は3級アンモニウム塩構造を備える有機基である。
【0035】
【0036】
式(2)中、*は結合手を表し、1分子中*を有する炭素原子が存在する場合、当該炭素原子がシロキサン骨格のケイ素原子と直接的に結合する。以下の式においても同様である。
【0037】
式(2)中、R3は炭素数1以上の有機鎖であり、あらゆる有機鎖が使用可能である。
【0038】
式(2)中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は芳香族基であり、これらは同一であっても異なってもよく、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよい。シロキサン単位に含まれる有機基を、アミノ基ではなくアンモニウム塩構造とすることで、吸水性と耐傷付性を示すとともに、アミノ基含有シロキサンで問題となっていた加水分解性を抑制した防曇用塗膜組成物を提供することが可能となる。
【0039】
式(2)の1級アンモニウム塩構造の具体例として、以下が挙げられる。下記式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。
【0040】
【0041】
式(2)の2級アンモニウム塩構造の具体例として、以下が挙げられる。下記式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。
【0042】
【0043】
式(2)の3級アンモニウム塩構造の具体例として、以下が挙げられる。
【0044】
【0045】
上記アンモニウム塩構造の対アニオンとして、ハロゲンアニオン、モノアルキル硫酸エステルアニオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン又は、1価若しくは2価の有機カルボン酸から水素イオンを除去したアニオンを用いることが可能である。ハロゲンアニオンとしては、例えば、フッ素アニオン(F-)、塩素アニオン(Cl-)、臭素アニオン(Br-)、及びヨウ素アニオン(I-)を用いることができる。モノアルキル硫酸エステルアニオンとしては、例えば、モノメチル硫酸エステルアニオン、モノエチル硫酸エステルアニオン、及びモノプロピル硫酸エステルアニオン等を用いることができる。スルホン酸イオンとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等を用いることができる。有機カルボン酸は、直鎖状又は分岐状であってもよい。1価の有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、安息香酸、及びサリチル酸等を用いることができる。2価の有機カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸等を用いることができる。
【0046】
本開示の防曇用塗膜組成物は、上記式(1)で表されるアンモニウム塩構造を備えるシロキサン単位と、下記式(3)で表される疎水基を備えるシロキサン単位とを有する共重合体であることが好ましい。
【0047】
R7
cR8
dSiO(4-c-d)/2 (3)
式(3)中、R7は水素原子又は1価の有機基である。有機基としては、上記R1と同様、炭素数1以上の1価のあらゆる有機基が使用可能である。
【0048】
式(3)中、R8は炭素数1以上の疎水基である。疎水基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基などのアルキル基、
フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
【0049】
式(3)中、cは0から2のいずれかの整数、dは1又は2であり、c+dは1から3のいずれかの整数である。
【0050】
本開示の防曇用塗膜組成物は、上記式(1)のシロキサン単位のみでは、吸湿時の膨潤度が大きすぎる場合がある。防曇用塗膜組成物を、疎水基を備える上記式(3)のシロキサン単位との共重合体とすることで、吸湿時の膨潤を適度に抑え、膨潤に起因するクラックを抑制することが可能となる。
【0051】
本明細書中、吸湿性は、防曇用塗膜が液体又は気体の水を吸収し得る特性である。吸湿性は、防曇性を包含する。防曇性は、防曇用塗膜への液体又は気体の水の吸収により、水の結露を防止する特性である。
【0052】
本明細書中、耐傷付性は、硬度が高いことにより傷付き難い特性である。
【0053】
[塗料組成物]
本開示の防曇用塗膜組成物の前駆物質である塗料組成物は、上記式(1)のシロキサン単位を含む重合体及び/又はその誘導体を含む。また、塗料組成物は、疎水基を備える上記式(3)のシロキサン単位と、アンモニウム塩構造を備える上記式(1)のシロキサン単位又はアミノ基を備える後述の式(4)のシロキサン単位を有する共重合体が含まれることが好ましい。また、他のシロキサンやシラン化合物を含んでいてもよい。
【0054】
塗料組成物は通常、溶媒を含んでもよい。溶媒の沸点は、塗工性の観点から、好ましくは60~160℃であり、より好ましくは70~90℃である。溶媒の種類は、溶媒がポリシロキサンの貯蔵に影響を及ぼさない限り特に限定されず、例えば、THF,エタノール、メタノール、IPA等の極性有機溶媒、及び水が挙げられる。溶媒は、溶解性の観点から、少なくとも1種類以上の極性有機溶媒又は水を含むことが好ましい。
【0055】
塗料組成物における溶媒の含有量は特に限定されず、通常は、塗料組成物全量に対する上記シロキサン単位を含む重合体の含有量が5~80質量%、好ましくは10~50質量%となるような量である。
【0056】
塗料組成物は、酸化防止剤、UV吸収剤、IR吸収剤、レベリング剤、無機粒子、有機粒子及び重合開始剤からなる群から選択される1種類以上の添加剤を含んでもよい。
【0057】
[第1の製造方法]
本開示の積層体の第1の製造方法は、アミノ基を備えるシロキサン単位を含む塗料組成物を作製し、その塗料組成物により塗膜を形成した後、酸を反応させて塗膜のアミノ基をアンモニウム塩構造へ変換し、防曇用塗膜組成物を得る方法である。
【0058】
図1に示すように、本開示の積層体の第1の製造方法は、アミノ基を有し、下記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る重合工程S11と、その重合体を基材の少なくとも一面の一部に塗布し、硬化して塗膜を得る塗膜形成工程S12と、塗膜形成工程によって得た塗膜に酸を反応させて、アミノ基を1級、2級又は3級アンモニウム塩構造へ変換した上記式(2)で表される有機基を有する防曇用塗膜組成物を得る塗膜後イオン化工程S13と、を含む。
【0059】
R1
aR9
bSiO(4-a-b)/2 (4)
上記式(4)で表されるシロキサン単位は、上記式(1)で表されるシロキサン単位の前駆体である。上記式(4)で表されるシロキサン単位に酸を反応させると、上記式(1)で表されるアンモニウム塩構造を備えるシロキサン単位となる。
【0060】
式(4)中、R1は、水素原子又は1価の有機基であり、有機基としては、上記式(1)中のR1と同様に、炭素数1以上の1価のあらゆる有機基が使用可能である。
【0061】
式(4)中、R9は、アミノ基を有する有機基である。このアミノ基は、酸によって中和され、アンモニウム塩構造となる。このアミノ基は、中和されることによって、上記式(2)で表され、上記式(5i)~(5viii)、(6i)~(6xi)及び(7i)~(7x)にて例示される、1級、2級又は3級のアンモニウム塩構造へ変換可能な、あらゆるアミノ基を用いることができる。
【0062】
式(4)中、aは0から2のいずれかの整数、bは1又は2であり、a+bは1から3のいずれかの整数である。
【0063】
本開示の積層体の第1の製造方法は、具体的には、まず、重合工程S11において、上記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る。この重合工程S11は、上記式(4)で表されるシロキサン単位と、疎水基を有する上記式(3)で表されるシロキサン単位とを含む共重合体を得る共重合工程であることが好ましい。そして、これらの重合体又は共重合体を含む塗料組成物を作製する。
【0064】
次いで、作製した塗料組成物を、塗膜形成工程S12において基材へ塗布する。塗布方法は、基材表面の少なくとも一部に塗料組成物を付着又は適用できる限り特に限定されず、例えば、フローコート法、ドロップキャスト法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップコート法及びダイコート法等が挙げられる。そして、塗料組成物を塗布した基材を、一旦、乾燥(例えば仮焼き)した後、加熱(例えば焼成)により硬化を行う。硬化は、シロキサン結合の形成反応(すなわち脱水縮合反応)に基づく硬化反応である。
【0065】
加熱温度及び加熱時間は、塗料組成物の硬化が達成される限り特に限定されない。例えば、加熱温度は、120℃以上、特に120~250℃であってもよい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、例えば、150~200℃の場合、0.5~5時間、特に1~3時間であってもよい。
【0066】
次いで、塗膜後イオン化工程S13において、塗膜へ酸を反応させてアミノ基を中和し、アンモニウム塩構造へ変換する。塗膜後イオン化工程S13により、上記式(1)で表されるシロキサン単位を含み、吸湿性を有する防曇用塗膜組成物が得られる。塗膜後イオン化工程S13に用いる酸には、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等を用いることが可能である。塗膜へ酸を反応させる方法は、特に限定されないが、例えば、アルコールや水等に塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等を溶解させた酸性溶液に積層体を浸漬させることが好ましい。酸性溶液に積層体を浸漬させる場合、その浸漬時間は少なくとも1時間であることが好ましい。
【0067】
塗膜を形成した後、アンモニウム塩構造へ変換することにより、塗膜形成工程における加熱によりアンモニウム塩構造が分解されることを防ぎ、吸湿性能が低下するのを防ぐことができる。
【0068】
[第2の製造方法]
本開示の積層体の第2の製造方法は、アンモニウム塩構造を備えるシロキサン単位を含む塗料組成物を作製した後、塗膜を形成して、防曇用塗膜組成物を得る方法である。
【0069】
本開示の積層体の第2の製造方法は、アミノ基を有し、上記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る重合工程S21と、その重合体に酸を反応させて、アミノ基を1級、2級又は3級アンモニウム塩構造へ変換した、上記式(2)で表される有機基を有するイオン化重合体を得る塗膜前イオン化工程S22と、そのイオン化重合体を基材の少なくとも一面の一部に塗布し、硬化して防曇用塗膜組成物を得る塗膜形成工程S23と、を備える。
【0070】
具体的には、まず、重合工程S21において、上記式(4)で表されるシロキサン単位を有する重合体を得る。この重合工程S21は、上記式(4)で表されるシロキサン単位と、アミノ基を有する上記式(3)のシロキサン単位とを含む共重合体を得る共重合工程であることが好ましい。そして、これらの重合体又は共重合体を含む塗料組成物を作製する。
【0071】
次いで、塗膜前イオン化工程S22において、作製した塗料組成物に酸を反応させ、アンモニウム塩構造へ変換した上記式(1)で表されるシロキサン単位を有するイオン化重合体を含む塗料組成物を作製する。塗膜前イオン化工程S22に用いる酸には、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等を用いることが可能である。例えば、アルコールや水等に塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等を溶解させた酸性溶液を塗料組成物に混合することにより、塗料組成物中のアミノ基をアンモニウム塩構造へ変換することができる。
【0072】
また、塗膜前イオン化工程S22においては、アミンに酸を反応させる方法だけでなく、アミンにアルキルハライドあるいはアラルキルハライドを反応させてアンモニウム塩としても良い。
【0073】
塗膜形成工程S23では、イオン化させた塗料組成物を基材へ塗布する。塗布方法は、上記塗膜形成工程S12と同様の方法を用いることができる。そして、塗料組成物を塗布した基材を、一旦、乾燥(例えば仮焼き)した後、加熱(例えば焼成)により硬化を行う。硬化は、シロキサン結合の形成反応(すなわち脱水縮合反応)に基づく硬化反応である。
【0074】
防曇用塗膜組成物には、不可避的不純物が含まれていてもよい。不可避的不純物とは、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物である。不可避的不純物として、例えば、重合工程において残存するモノマーや、塗膜後イオン化工程S13又は塗膜前イオン化工程S22においてイオン化が進行しなかったアミノ基が挙げられる。これらの不可避的不純物は、本開示の発明の効果を損なわない程度で含まれていてもよい。
【0075】
実施例
[実施例1~4]
上記式(1)で表されるアンモニウムイオン構造を備えるシロキサン単位の原料として、[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランを用いた。また、共重合体を生成する場合において、上記式(3)で表される疎水基を備えるシロキサン単位の原料として、メチルトリエトキシシランを用いた。実施例1から4において、メチルトリエトキシシラン及び[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランは、各シロキサン単位の比率がそれぞれ表1に示すm,nの各比率を満たす分量で使用した。例えば、実施例1では、メチルトリエトキシシラン及び[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランを1:2の比率で使用した。実施例2では、メチルトリエトキシシラン及び[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランを1:1の比率で使用した。実施例3及び4では、[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランのみを使用した。なお、表1中、工法のルート1とは、上記第1の製造方法を示し、ルート2とは上記第2の製造方法を示す。
【0076】
【0077】
まず、塗料組成物を、窒素雰囲気下で、以下の方法により作製した。具体的には、まず、所定量の[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランとメチルトリエトキシシランをパスツールピペットでフラスコに添加した。その後、サンプル瓶にエタノール(4.6047g,100mmol)を量りとり、そのおおよそ半分をフラスコに添加した。氷浴中で150rpmにて15分撹拌した。他方、サンプル瓶に蒸留水(0.5411g,30mmol)を量りとり、このサンプル瓶に先ほどの残りのエタノールを添加した。この溶液を、氷浴中、フラスコに5分間かけて添加し、得られたシラン溶液を10分撹拌した。得られたシラン溶液を、窒素雰囲気下、室温で10分撹拌した後、100℃のオイルバス中で5時間撹拌及び加熱還流した。撹拌後、オイルバスから出し、室温に戻るまで放置した。放置後、エタノールと水をエバポレーターにより除去し、粘性液体を得た。
【0078】
実施例1-3では、得られた粘性液体をエタノールにより20重量%で溶解させて塗料組成物を得た。その塗料組成物を用い、第1の製造方法によって積層体を製造した。具体的には、100μmのキューブ型アプリケーターで塗料組成物(20重量%エタノール溶液)を、アルカリ洗浄したガラス基板の一方の面に塗布して膜を作製した。塗料組成物を塗布したガラス基板を、60℃のホットプレートで2時間乾燥させた後、180℃の循環型オーブンに入れ、2時間加熱することで硬化反応を行った。製膜したガラス基板及び塗膜を0.5Mメタノール性塩酸に1時間浸漬させてアミノ基を中和した後、60℃のホットプレート上で1時間乾燥させて防曇用塗膜組成物及びこれを有する積層体を得た。
【0079】
実施例4では、得られた粘性液体を用い、第2の製造方法によって積層体を製造した。具体的には、まず、上記と同様の方法で、[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン(2.6488g,10mmol)を重合し、粘性液体(551mg,3.60mmol)を得た。得られた粘性液体に0.5Mメタノール性塩酸18.0mL(9.00mmol)を加えていくと白色固体が析出し始めた。そのまま、室温で1時間撹拌した。アルカリトラップをつけた真空ポンプで濃縮した後、100℃で2時間、減圧乾燥することで白色固体(809mg,99%)を得た。白色固体0.1gを、0.4gの蒸留水に溶解させ、イオン化した塗料組成物の水溶液を得た。100μmのキューブ型アプリケーターを用いて、イオン化した塗料組成物をガラス基板に製膜した。その後、60℃のホットプレートで2時間乾燥させた後、180℃の循環型オーブンに入れ、2時間加熱することで硬化反応を行った。これにより、防曇用塗膜組成物及びこれを有する積層体を得た。
【0080】
[実施例5]
実施例5では、第2の製造方法によって積層体を製造した。まず、以下の方法で塗料組成物を製造した。窒素雰囲気下で、以下の処理を行った。(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(30mmol,6.6411g)をパスツールピペットでフラスコに添加した。その後、サンプル瓶にエタノール(300mmol,13.821g)を量りとり、そのおおよそ半分をフラスコに添加した。氷浴中で150rpmにて15分撹拌した。他方、サンプル瓶に蒸留水(90mmol,1.6218g)を量りとり、このサンプル瓶に先ほどの残りのエタノールを添加した。この溶液を、氷浴中、フラスコに5分間かけて添加し、得られたシラン溶液を10分撹拌した。シラン溶液の調製工程で得られたシラン溶液を、不活性気体雰囲気下、室温で10分撹拌した後、100℃のオイルバス中で5時間撹拌及び加熱還流した。撹拌後、オイルバスから出し、室温に戻るまで放置した。放置後、エタノールと水をエバポレーターにより除去し、粘性液体を得た。三方コック、還流管、撹拌機を備えた50mL二つ口ナスフラスコに、合成した粘性液体(0.50g)、ベンジルクロリド(1.1g)、超脱水エタノール(7.7g)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で、1時間撹拌した。溶媒を減圧留去、100℃で熱真空することで2級アンモニウム塩であるベンジルクロリド塩を得た。これを20重量%H2O:ブタノール=9:1溶液として2級アンモニウム塩構造を有する重合体を含む塗料組成物を得た。100μmのキューブ型アプリケーターで塗料組成物(20重量%H2O:ブタノー=9:1溶液)を、洗浄したガラス基板に塗布し膜を作製した。60℃(2時間)、180℃(2時間)で焼成することで膜を硬化させ、防曇用塗膜組成物及びこれを有する積層体を得た。
【0081】
[実施例6]
実施例6では、第2の製造方法によって積層体を製造した。まず、以下の方法で塗料組成物を製造した。窒素雰囲気下で、以下の処理を行った。還流管、撹拌機、三方コックを備えた200mL二つ口フラスコに、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(2.0735g,10.00mmol)と超脱水メタノール(3.204g,100.mmol)を撹拌しながら入れ、氷浴下で10分間冷却した。次に水(0.2483g,20.00mmol)を投入した。再び0℃で10分間撹拌した後、混合物をさらに10分間室温で撹拌し、さらに5時間還流した。最後に60℃で溶媒を減圧留去することで粘性液体を得た。粘性液体は20重量%超脱水メタノール溶液として保存した。50mLのナスフラスコにその溶液(20重量%メタノール溶液(2.5g)及び1.2等量の0.5mol/Lメタノール性塩酸(8.7mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒と塩酸除去のため減圧留去し、真空乾燥(2時間、100℃)した後に化合物を得た。得られた化合物を20重量%H2O:ブタノール=9:1に溶解させて、3級アンモニウム塩構造を有する重合体を含む塗料組成物を得た。得られた塗料組成物を上記実施例5と同様の方法でガラス基板に塗布し、焼成して防曇用塗膜組成物及びこれを有する積層体を得た。
【0082】
[比較例1]
比較例1では、原料として[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランを用いた。[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン(2.6488g,10mmol)をパスツールピペットでフラスコに添加した。その後、サンプル瓶にエタノール(4.6047g,100mmol)を量りとり、そのおおよそ半分をフラスコに添加した。氷浴下で150rpmにて15分間撹拌した。他方、サンプル瓶に蒸留水(0.5411g,30mmol)を量りとり、このサンプル瓶に先ほどの残りのエタノールを添加した。この溶液を、氷浴下、フラスコに5分間かけて添加し、得られたシラン溶液を10分間撹拌した。シラン溶液の調製工程で得られたシラン溶液を、窒素雰囲気下、室温で10分間撹拌した後、100℃のオイルバス中で5時間撹拌及び加熱還流した。撹拌後、オイルバスから出し、室温に戻るまで放置した。放置後、エタノールと水をエバポレーターにより除去し、粘性液体を得た。粘性液体をエタノールに溶解させ、エタノール20重量%溶液としてのアミノ基を有する塗料組成物を得た。
【0083】
アミノ基を有する塗料組成物を、100μmのキューブ型アプリケーターを用いて、ガラス基板の一方の面に塗布した。塗料組成物を塗布したガラス基板を、60℃のホットプレートで2時間乾燥させた後、180℃の循環型オーブンに入れ、2時間加熱することで硬化反応を行い、アミノ基を有する防曇用塗膜組成物及びこれを有する積層体を得た。
【0084】
<評価>
[外観]
各積層体における防曇用塗膜組成物の外観を目視にて評価した。実施例1から6及び比較例1の防曇用塗膜組成物はきれいな膜であった。
【0085】
[吸湿性]
各積層体における防曇用塗膜組成物の吸水率を以下の方法により測定した。詳しくは、湿度20%RH環境下で、防曇用塗膜組成物を有するガラス基板(以下、サンプルという)の重量を天秤で測定し、予め測定していたガラス基板のみの重量から、防曇用塗膜組成物の重量を算出した。サンプルを、95%RH(設定温度:30℃)の恒温恒湿環境下で1~2時間保持した後、サンプルの重量変化を天秤で測定し、防曇用塗膜組成物の吸水量とした。防曇用塗膜組成物の重量及び防曇用塗膜組成物の吸水量から、吸水率を算出し、吸水率に基づいて吸湿性の評価を行った。実施例1から6及び比較例1の防曇用塗膜組成物は、いずれも高い吸水率を示した。
【0086】
[鉛筆硬度]
各積層体における防曇用塗膜組成物の鉛筆硬度をJIS K5600に従って求めた。
【0087】
[耐湿試験後の評価]
95%RH(設定温度:40℃)の恒温恒湿環境下で1時間保持した後の各積層体における防曇用塗膜組成物の外観と鉛筆硬度を評価した。[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランのみを原料として用いた実施例3及び実施例4について、第1の製造方法で製造した実施例3では、防曇用塗膜組成物の表面が荒れており、第2の製造方法で製造した実施例4ではクラックが発生した。実施例1から6において、耐湿試験の前後で鉛筆硬度に変化はなかったが、比較例1では耐湿試験後に鉛筆硬度が低下していたため、加水分解性が懸念された。
【0088】
[FTIRによるシロキサン骨格の確認]
実施例3と比較例1の防曇用塗膜組成物について、上記耐湿試験の前後において、FTIRスペクトルを測定し、シロキサン結合由来の吸収帯を確認した。FTIRは、(株)島津製作所製「IR Affinity-1」を用いて測定した。Si-O-Siのピーク(約950cm-1~約1200cm-1)は、実施例3では耐湿試験の前後において全く変化しなかったのに対し、比較例1では耐湿試験の後、特に約1100cm-1のピークがほぼ消失していた。この結果から、比較例1ではシロキサン骨格が加水分解していることが分かった。
【0089】
[総合評価]
各積層体における防曇用塗膜組成物を総合的に評価した。実施例1及び2は、外観及び吸湿性において優れた結果であり、耐加水分解性を備えることから、◎(優れている)とした。実施例3は吸湿性及び耐加水分解性に問題はなかったが耐湿試験後に表面に荒れを生じたため、〇(良い)とした。実施例4は、吸湿性及び耐加水分解性に問題はなかったが耐湿試験後に表面にクラックを生じたため、〇(良い)とした。比較例1は耐湿試験結果及びFTIRの結果から水による加水分解が進行することが判明したため、×(許容できない)とした。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の積層体及びその製造方法は、吸湿性(例えば防曇性及び調湿性)が要求される、あらゆる用途で有用である。
【符号の説明】
【0091】
S11 重合工程
S12 塗膜形成工程
S13 塗膜後イオン化工程
S21 重合工程
S22 塗膜前イオン化工程
S23 塗膜形成工程