(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123607
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】サファイア基板を処理する方法、サファイア基板の上にエピタキシャル薄膜を形成する方法、サファイア基板、エピタキシャル薄膜、及びそれらを備えるデバイス及び装置。
(51)【国際特許分類】
C30B 33/00 20060101AFI20240905BHJP
C30B 29/10 20060101ALI20240905BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C30B33/00
C30B29/10
C30B25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031174
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】フー レーハン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント タン
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077AB02
4G077AB09
4G077BB01
4G077BE15
4G077BE32
4G077BE34
4G077DB02
4G077EA02
4G077EA05
4G077ED05
4G077ED06
4G077EE03
4G077GA05
4G077GA06
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA07
4G077TC06
4G077TK01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サファイア基板の表面を処理する方法を提供する。
【解決手段】方法は、サファイア基板を提供すること;及び前記サファイア基板に対して、水蒸気を含む雰囲気で、熱処理を行うこと;を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板の表面を処理する方法であって、
サファイア基板を提供すること;及び
前記サファイア基板に対して、水蒸気を含む雰囲気で、熱処理を行うこと;
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記熱処理の温度は、1080℃以上、1000℃以上、900℃以上、又は850℃以上である、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記雰囲気は、室温及び大気圧での飽和水蒸気量以上の量の水蒸気を含む、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、C面{0001}を有する、
方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、a軸方向又はm軸方向にオフカット角を有する、
方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法であって
前記表面は、実質的に1°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、1050℃以上である、
方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の方法であって
前記表面は、実質的に2°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、1000℃以上である、
方法。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の方法であって
前記表面は、実質的に4°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、900℃以上である、
方法。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の方法であって
前記表面は、実質的に6°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、850℃以上である、
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、2インチ、3インチ、4インチ以上、5インチ以上、6インチ以上、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチ、10インチ、又は15インチ若しくはそれより大きいサイズを有する、
方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面にエピタキシャル成長を行うこと
を更に備える方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記エピタキシャル成長は、遷移金属ジカルコゲナイド(MX2)又はGaNを成長させることを含む、
方法。
【請求項13】
50%より高い、90%又はそれより高い、95%又はそれより高い、又は96%又はそれより高い、シングルスラブ表面の比率を有するサファイア基板。
【請求項14】
請求項13に記載のサファイア基板であって、
C面を表面として有する、
サファイア基板。
【請求項15】
50%より高い、90%又はそれより高い、95%又はそれより高い、又は96%又はそれより高い、一つの結晶方位の割合を有する、サファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜。
【請求項16】
請求項15に記載のエピタキシャル薄膜であって、
遷移金属ジカルコゲナイド(MX2)又はGaNである、エピタキシャル薄膜。
【請求項17】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法により製造されたサファイア基板;
請求項11又は12に記載の方法により製造されたエピタキシャル薄膜;
請求項13又は14に記載のサファイア基板;及び
請求項15又は16に記載のエピタキシャル薄膜、
の一つ、少なくとも一つ、又は複数を備えるデバイス、装置又はその中間製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サファイア基板を処理する方法、サファイア基板の上にエピタキシャル薄膜を形成する方法、サファイア基板、エピタキシャル薄膜、及びそれらを備えるデバイス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板は、様々な種類のエピタキシャル薄膜の成長に幅広く用いられている。そのようなエピタキシャル薄膜の例は、非限定的に、GaAs,Si,GaNなどの半導体、光デバイス材料から遷移金属ジカルコゲナイドなどの2次元材料まで含む。
【0003】
多くの研究開発は、サファイア基板上の原子ステップの量、エピタキシャル成長の条件などに注目されてきた。一方、サファイア基板の表面の結晶方位のエピタキシャル成長への影響についてはほとんど知られていない。研究レベルでは、サファイアのC面の酸素層には2種類あり、1単原子層のステップテラス構造が、AlNの小傾角粒界の原因であるとし、奇数ステップを有するサファイア表面を用いてALNの小傾角粒界を取り除くこことができるとしている(非特許文献1)。しかし、工業的に、サファイア表面の結晶構造を制御する方法は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yuki Hayashi, Ryan G. Banal, Mitsuru Funato, and Yoichi Kawakami, Heteroepitaxy between wurtzite and corundum materials, Journal of Applied Physics 113, 183523 (2013); https://doi.org/10.1063/1.4804328
【本発明の概要】
【0005】
本開示の一態様によれば、サファイア基板の表面を処理する方法が提供される。一実施形態によれば、当該方法は、サファイア基板に対して、水蒸気を含む雰囲気で、熱処理を行うことを備える。
【0006】
これによれば、例えば、サファイア表面のステップを制御することができる。更には、その表面に高品質の結晶薄膜をエピタキシャル成長させることができる。
【0007】
本開示の別の一態様によれば、処理されたサファイア基板の表面にエピタキシャル成長を行う方法が適用される。
【0008】
本開示の一態様によれば、本開示のある実施形態によって処理されたサファイア基板が提供される。本開示の一態様によれば、サファイア基板に支持されたエピタキシャル薄膜(エピタキシャル薄膜を有するサファイア基板)が提供される。本開示の別の一態様によれば、本開示のある実施形態によってサファイア基板上に形成され、当該サファイア基板が取り外されたエピタキシャル薄膜が提供される。本開示の更なる一態様によれば、本開示のある実施形態によって処理されたサファイア基板及び/又はエピタキシャル薄膜を備えるデバイス、装置又は中間製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】サファイア結晶表面の結晶構造を表す模式図である。
【
図2】従来技術によって処理されたサファイア表面(
図2A~2C)及び本開示の一実施例によって処理されたサファイア表面(
図2D~2F)のAFM像である。
【
図3】従来例(
図3a)と一実施例(
図3b)とによる処理方法によって、サファイア表面上に形成されたフレークの光学顕微鏡写真である。
【
図4】従来例(
図4A)と一実施例(
図4Bと4C)とによる処理方法によって、サファイア表面上に形成されたMoS
2単層膜のAFM像である。
【
図5】一実施例による処理方法によって製造された、単層MoS
2薄膜を表面に有する2インチサファイア基板の写真である(カットオフ角C/A=1°~4°)。
【
図6】一実施例による処理方法によって、サファイア表面上に成長したフレークの光学顕微鏡写真である:MoS
2(
図6a)、WS
2(
図6b),及びWSe
2(
図6c)。
【
図7】
図6に表した光学顕微鏡写真内に存在するフレークにおける、2つの結晶方向の割合を示すグラフである。
【0010】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる、温度、時間、角度、流量、比率(パーセント)等を表す全ての数値は、全ての事例において、用語「約」に修飾されているか否かに関わらず、「約」によって修飾されるものと理解されたい。別途指示のない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲において述べる数値パラメータは、近似値であり、本開示が達成しようとしている所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとする意図ではなく、各数値パラメータは、開示する有効数字の数を考慮して、且つ通常の丸め方法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「含む」及び「備える」は、構成および方法が列挙された要素を含むが他を除外しないことを意味することを意図している。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。したがって、方法および組成物、構成は、追加の工程および構成要素を「含む」ことができる。
【0013】
<サファイアの結晶構造>
α-Al2O3の結晶構造は、一般に六方晶とされる。同結晶は、空間群R-3cに分類され、c軸[0001]は3回回転対称を有し、同結晶は、Schoenflies記法ではC3に分類され、すなわち三方晶である。
【0014】
単位格子は、c軸方向に6つの酸素層を有する。その酸素層は、上記の結晶構造分類から分かるように、(11-20)面に対して互いに鏡面対象である2種類の層(スラブAとスラブB)に分類される(
図1A及びBを参照。)。6つの酸素層の間隔は、c
0を単位格子のc軸方向の大きさとして、c
0/6=1.299nm/6~0.217nmである(以降、単に「0.2nm」と記載する場合がある。)。各スラブ(スラブA又はスラブB)の間隔は、この倍であり、約0.4nmである。
【0015】
したがって、サファイア結晶がC面を表面として有する場合、その最表面はスラブA及びスラブBで構成される。[11―20]方向に傾斜している場合の表面構造を、表面がスラブAとスラブBで構成された場合(以降「ダブルスラブ」と呼ぶ場合がある。)と、表面がスラブA及びBの一方のみで構成された場合(以降「シングルスラブ」と呼ぶ場合がある。)とで、模式的にそれぞれ
図1C及び
図1Dに示す。
図1Dは、一例として最表面をスラブAと記載しているが、スラブBであってもよい。ダブルスラブの典型的なステップ高さは、0.2nm又は(2n+1)×0.2nm(以降「奇数スラブステップ」と呼ぶ場合がある。)で表すことができる。他方、シングルスラブの典型的なステップ高さは、0.4nm又は2n×0.2nm(以降「偶数スラブステップ」と呼ぶ場合がある。)で表すことができる。
【0016】
シングルスラブで構成された表面(「シングルスラブ表面」)は、主に偶数スラブステップを有し、1つの結晶方位のエピタキシャル成長を可能にする。これに対し、ダブルスラブで構成された表面(「ダブルスラブ表面」)は、奇数スラブステップを多く有し、2つの結晶方位のエピタキシャル成長を許容する。本明細書で用いる「ダブルスラブ表面」は、奇数スラブステップの存在を排除するものではない。
【0017】
本開示の一つの目的は、サファイア基板上に、シングルスラブ表面をより広く提供することである。また本開示の一つの目的は、より多いシングルスラブ表面を有するサファイア基板を提供することである。本開示の更なる一つの目的は、そのようなサファイア基板上に成長した薄膜、及びその薄膜を有するサファイア基板、及びそれらの製造方法を提供することである。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、サファイア基板の表面を処理する方法が提供される。当該方法は、サファイア基板に対して、水蒸気を含む雰囲気で、熱処理を行うことを備える。
【0019】
このサファイア基板の表面は、多くの偶数スラブステップ及び/又は多くの又は大きなシングルスラブ表面を有し、例えば、高品質のエピタキシャル薄膜を効率的に成長させることができる。
【0020】
<サファイア基板>
本明細書で使用される用語「サファイア」は、一般に、主にAl2O3からなる単結晶コランダムをさす。いくつかの実施形態では、「サファイア」は、鉄、チタン、ヴァナディウム、クロムなどの不純物を含んでいてもよい。「サファイア」は、ルビーを除外するものではない。いくつかの実施形態では、「サファイア」は、不純物を含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態では、「サファイア」は、単結晶α(アルファ)-Al2O3をさす。いくつかの実施形態では、「サファイア」は人工サファイアであってもよい。
【0021】
本明細書で使用される「サファイア基板」は、一般に、実質的にサファイアからなり、平面(表面)を有する部材を意味する。「サファイア基板」は、平板の形状を有していてもよい。「サファイア基板」は、ウェーハに形成されていてもよい。「サファイア基板」は「サファイアウェーハ」であってもよい。「サファイア基板」は、基本的に円形のウェーハであってもよく、正方形又は長方形の四角形のウェーハであってもよく、その他の平面形状を有していてもよい。
【0022】
「サファイア基板」は、いわゆる「プライムクオリティ」「エピタキシャルクオリティ」と呼ばれるグレードの基板であってもよい。一般に、これらは極めてよい平坦度を有する。
【0023】
「サファイア基板」のサイズは、1インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチ、10インチ、15インチ、25mm、50mm、75mm、100mm、125mm、150mm、175mm、200mm、225mm、250mmのいずれか、又はそれ以上であってもよい。このサイズは、工業的に一般的に使用されており、円形基板の直径であってもよい。四角形のサファイア基板のサイズの例は、非限定的に、5mm×5mm、10mm×10mm、10mm×15mm,15mm×20mmなどを含む。
【0024】
「サファイア基板」の表面の結晶方位の例は、非限定的に、C面(0001)、A面(11-20)、M面(10-10)、R面(1-102)、N面(11―23)、及びV面(22-43)を含む。
【0025】
「サファイア基板」の表面は、上記の結晶面からカットオフ角を有していてもよい。カットオフ角の方向は、限定されない。カットオフ角の例は、非限定的に、0°(カットオフ角なし)、0.1°、0.2°、0.3°、0.4°、0.5°、0.6°、0.7°、0.8°、0.9°、1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°などを含む。
【0026】
上記記載したサファイア基板に関連するサイズ及び角度の数値は、工業的に、製造誤差、測定誤差を有していてもよく、正確に上記の値として解釈されるべきでない。一般にウェーハの平坦度は、種々の不規則性(反り、歪み、表面粗さ)を含んでいる。本開示では、種々の数値は、工業的な意味で解釈することができる。
【0027】
四角形のサファイア基板のサイズの例は、非限定的に、5mm×5mm、10mm×10mm、10mm×15mm、15mm×20mmなどを含む。
【0028】
<熱処理>
「サファイア基板」を熱処理(アニール又はアニーリングともいう。)することは、一般に、サファイア基板を、常温より高い温度で維持することを備える。一般の又は特別に製造された熱処理炉を用いることができる。
【0029】
熱処理の温度は、800℃(摂氏)、850℃、860℃、870℃、880℃、890℃、900℃、910℃、920℃、930℃、940℃、950℃、960℃、970℃、980℃、990℃、1000℃、1010℃、1020℃、1030℃、1040℃、1050℃、1060℃、1070℃、1080℃、1090℃、1100℃、1150℃、1200℃などのいずれか、又はそれより高くてもよい。
【0030】
熱処理の温度は、1800℃(摂氏)、1750℃、1700℃、1650℃、1600℃、1550℃、1500℃、1450℃、1400℃、1350℃、1300℃、1250℃、1200℃、1150℃、1100℃、1090℃、1080℃、1070℃、1060℃、1050℃、1040℃、1030℃、1020℃、1010℃、1000℃、990℃、980℃、970℃、960℃、950℃、940℃、930℃、920℃、910℃、900℃、などのいずれか、又はそれより低くてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面がC面である場合、以下のような条件を設定してもよい:
オフカット角 熱処理温度
1° 1050℃以上 (例えば1050℃)
2° 1000℃以上 (例えば1000℃)
4° 900℃以上 (例えば900℃)
6° 850℃以上 (例えば850℃)
【0032】
いくつかの実施形態では、温度は、サファイア基板のそのものの温度を測定してもよい。例えば、温度は、サファイア基板の一部に、サーモカップルなど温度計を接触させて計測してもよい。温度は、サファイア基板に対して非接触に測定してもよい。いくつかの実施形態では、温度は、サファイア基板以外の部材の温度を測定してもよい。例えば、ファーナスの一部の温度を測定してもよい。例えば、サファイア基板の雰囲気、キャリアガス及び水蒸気のいずれか一つ又は複数の温度を測定してもよい。サファイア基板以外の部材の温度に基づいて、サファイア基板の温度を計算し又は推測してもよい。
【0033】
例えば、熱処理の時間は、10分、15分、20分、30分、40分、45分、50分、60分(1時間)、90分、2時間、3時間、4時間、5時間のいずれか、又はそれより長くてもよい。例えば、熱処理の時間は、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間(60分)、50分、45分、40分、30分のいずれか、又はそれより短くてもよい。
【0034】
<水蒸気処理>
いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気は、水蒸気を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気は、室温及び大気圧での飽和水蒸気量又はそれより多い水蒸気を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気は、30℃及び大気圧での飽和水蒸気量又はそれより多い水蒸気を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気は、熱処理温度での飽和水蒸気量を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気は、熱処理温度での飽和水蒸気量より少ない水蒸気を含んでいてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、熱処理中の雰囲気が含有する水蒸気の量、又は熱処理空間に導入する水蒸気の量は、サファイア基板の表面積に応じて設定されてもよい。
【0036】
水蒸気は、種々の方法で、発生させ、又は雰囲気に混合させることができる。例えば、水蒸気は、サファイア基板が配置されている空間(例えば、ファーナスのサファイア基板の熱処理空間)内で、液体の水を熱することで発生させてもよい。例えば、水蒸気は、液体の水に雰囲気ガスを通すことで発生させてもよい。水蒸気は、過熱蒸気発生装置を用いて発生させてもよい。
【0037】
<<本開示によるサファイア基板>>
本開示では、サファイア基板が提供される。本開示のいくつかの実施形態に係るサファイア基板は、従来のサファイア基板又は従来の方法で製造されたサファイア基板に比べて、より多くの2n×0.2nmのステップ(偶数スラブステップ)又はより広いシングルスラブ面を備えている。
【0038】
いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面の少なくとも1つのAFM領域で、所定の割合以上のステップが偶数スラブステップであってもよい。いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも9つ、又は少なくとも17個のAFM領域で、所定の割合以上のステップが偶数スラブステップであってもよい。所定の割合は、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%などのいずれか、又はそれより大きくてもよい。
【0039】
1つのAFMの観察領域は、300nm×300nm、400nm×400nm、500nm×500nm、600nm×600nm、700nm×700nm、800nm×800nm、900nm×900nm、1μm×1μm、2μm×2μm、3μm×3μm、4μm×4μm、5μm×5μm、6μm×6μm、7μm×7μm、8μm×8μm、9μm×9μm、10μm×10μmなどの値、又はそれより大きくてもよい。上記の観察領域の縦横のサイズの数字は、面積を変えずに変更してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面は、微小角入射広角X線散乱法(GIWAXS)を用いて評価してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、サファイア基板の上にエピタキシャル成長させた材料の性質を評価することで、サファイア基板のクオリティ又は特性を評価してもよい。
【0042】
例えば、本開示のいずれかの実施形態で準備されたサファイア基板の上に、所定の材料をフレーク成長させ、そのフレークの結晶方位を分析してもよい。例えば、サファイアC面にMoS2などの遷移金属ジカルコゲナイドのフレークを成長させ、そのフレークを評価してもよい。フレークの評価は、AFM、電子顕微鏡法、光学顕微鏡法、LEED、などを用いて行うことができる。成長されたフレークを、結晶方位で分類してもよい。分類された結晶方位の分布から、サファイア基板を評価してもよい。例えば、フレークの向きが、サファイアC面のスラブに対応して、2種類存在する。いくつかの実施形態では、観測されたすべてのフレークの内、1種類の方位のフレークは、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%などのいずれか、又はそれより大きくてもよい。
【0043】
<<サファイア基板上のエピタキシャル成長>>
本開示はまた、サファイア基板上へのエピタキシャル成長の方法、及びエピタキシャル薄膜を有するサファイア基板を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、サファイア基板上に、半導体材料がエピタキシャルに成長される。本開示で使用される用語「半導体材料」は、半導体そのものに限らず、半導体業界又は製造過程で使用されている材料の総称である。いくつかの実施形態では、サファイア基板上に、いわゆる2次元材料が成長される。用語「2次元材料」は、一般に、2次元的な結晶構造を有する薄膜物質をさし、単層材料と交換可能に用いられる。「2次元材料」の例は、非限定的に、グラフェン、グラフィン、シリセン、ゲルマネンなどの単元素材料;窒化ホウ素、遷移金属ジカルコゲナイドなどの化合物材料を含む。
【0045】
エピタキシャル薄膜の材料の例は、非限定的に、
遷移金属ジカルコゲナイド;
グラフェン;
IV族半導体(炭素(C)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge));
ダイヤモンド;
III-V族半導体(GaN、GaAs、InP、InGaAlPなど);
ペロブスカイト;
LiNbO3などのSAWデバイス材料;
Ga2O3などのワイドバンドギャップ材料;
InO、ZnO2、AlN、
などを含む。
【0046】
遷移金属ジカルコゲナイドは、MX2で表現され、ここで、M及びXは以下の通りである:
M=モリブデン(Mo)、タングステン(W)などを含む遷移金属元素;及び
X=硫黄(S),セレニウム(Se),テルリウム(Te)、ポロニウム(Po)、及びリヴェルモリウム(Lv)からなるカルコゲン(第16族)元素。
いくつかの実施形態では、遷移金属ジカルコゲナイドの例は、非限定的に、MoS2,WS2,及びWSe2を含む。
【0047】
エピタキシャル成長の手法の例は、
分子線エピタキシャル法(MBE)、などの蒸発堆積;
イオンビームスパッタリング(IBS)、パルスレーザ堆積(PLD)、ECRスパッタリングなどのスパッタ堆積;
などを含む物理蒸着法(PVD)、
熱CVD、有機金属気相堆積法(MOCVD)、プラズマCVD、原子層堆積(AVD)、などを含む化学蒸着法(CVD)
などを含む。
【0048】
<<実施例>>
以下いくつかの実施例について説明する。
【0049】
<サファイア基板>
いくつかのカットオフ角の2インチC面のサファイア基板(Crystalwise Technology社)を用いた。これを、ダイヤモンドワイヤを用いて約2cm角に切断した。本実施例では、特にウェット洗浄はしなかった。いくつかの実施形態では、水蒸気処理の前又は後にウェット及び/又はウェット洗浄をしてもよい。
【0050】
<水蒸気熱処理>
そのサンプルを、熱処理した。熱処理には、1インチ、3インチ及びそれ以上のサイズの水平円環型ホットウォール装置(Thermo Fisher社)を用いた。熱処理領域内のチューブの内部に、同サンプルを配置した。同じチューブ内で、熱処理外の領域で、液体の水を約30℃に温めた。25%O2/Arのキャリアガスを、10sccmの流量、約10Torrから約760Torrの気圧で導入し、水蒸気を混合させた。水蒸気を含むキャリアガスは、チューブ内を移動し、所定温度に熱せられたサンプルの表面に到達した。熱処理の時間は、典型的に2時間から6時間であった。
【0051】
比較例又は従来例として、水蒸気を使わない熱処理を行った。この「従来熱処理」では、水蒸気を意図的に発生させず、他の条件は同じであった。
【0052】
<エピタキシャル成長>
例として、複数の遷移金属ジカルコゲナイドを、サファイア基板の上にエピタキシャル成長させた。具体的には、MoS2,WS2,及びWSe2のフィルム、又は単層フレーク(サファイア基板の表面を100%未満で覆い、離散的な島が成長した状態)を、サファイア基板の上に、通常のCVD法により、1インチ、3インチ及びそれ以上のサイズの水平円環型ホットウォール装置(Thermo Fisher社)内で成長させた。前駆体として、MoO3(Sigma-Aldrich社、99.9%)、WO3(Sigma-Aldrich社、99.9%)、S(Sigma-Aldrich社、99.9%)、Se(Sigma-Aldrich社、99.9%)を用いた。これらのカルコゲンパウダ、金属酸化物パウダ及びサファイア基板を、炉内の、異なる加熱領域、すなわち上流、中心、及び下流の位置にそれぞれ分けて配置した。中心加熱領域は、MoO3には800℃で、及びWO3には900℃で、それぞれ加熱した。上流加熱領域は、Sには140℃で、及びSeには270℃で、それぞれ加熱した。下流加熱領域は、サファイア基板のために所定の温度で加熱した。キャリアガスとして、10~20%H2/Arを用いた。気圧は、下流加熱領域で30Torrとなるように設定した。蒸発した各種の前駆体が、キャリアガスによってサファイア基板に運ばれ、その上で反応することで遷移金属ジカルコゲナイドがエピタキシャル成長した。エピタキシャル成長の時間は、全面成長の場合は15分、フレーク成長の場合は5分であった。その後、基板は常温まで自然冷却した。
【0053】
<AFM>
原子間力顕微鏡(AFM)像は、AFM装置(Dimension Icon,Bruker社)を用いてタッピングモードで取得した。ばね定数5Nm-1を有するプローブ(TAP150A、Veeco社)を用いた。
【0054】
<実施例1:MoS
2>
本実施例では、複数のカットオフ角を有するC面のサファイア基板を用いた。カットオフ角は、A方向に1°、2°、及び4°であった。従来熱処理と水蒸気熱処理とを行い、それぞれにMoS
2のフレークを成長させた。
図2に、それらのAFM像を表す。
図2A~Cは、従来熱処理の場合のAFM像を、
図2D~Fは、水蒸気熱処理の場合のAFM像を、それぞれ表す。
図2A及びDはカットオフ角C/A~1°の場合のAFM像を、
図2B及びEはカットオフ角C/A~2°の場合のAFM像を、
図2C及びFはカットオフ角C/A~4°の場合のAFM像を、それぞれ表す。いずれでも、カットオフ角に対応するサファイアの周期的なテラス又はステップ(AFM像中の縦線)と、その上にエピタキシャル成長したMoS
2の三角形のフレークとが確認された。
【0055】
<従来加熱処理の場合のAFM>
図2A~Cで見られるサファイアC面のステップの高さは、約0.4nm~約2.2nmまで0.2nmを最小単位として、多岐に富んでいた。言い換えれば、0.2nmの偶数倍(2nx0.2nm)のステップ高さも、0.2nmの奇数倍(2n+1)x0.2nm)のステップ高さも観察された。他のAFMでは、(2×3+1)×1.2nmなども観察された(未図示)。このように、発明者が観察した限り、従来熱処理後のサファイア基板の表面は、シングルスラブステップとダブルスラブステップとを多く含み、多くのダブルスラブ表面を有していた。
【0056】
さらに、テラスのエッジは、真っすぐではなく、多くの場合不規則的又はジグザグな形状および周期を有していた。このようなテラスエッジの特徴は、エピタキシャル成長の質に影響すると言われている。
【0057】
サファイア基板上に成長したMoS2フレークは、2つの方向で存在していた。カットオフ方向(図の左右方向)の両方の方向にフレークが成長していたことが観察された。これは、エピタキシャル成長前のサファイア基板の表面が多くのダブルスラブ表面を有していたことに起因している。
【0058】
すなわち、従来熱処理後のサファイア基板の表面は、スラブAとBとが交互に又はそれらの両方の結晶表面を有している。これにより、MoS2のエピタキシャルフレークが2つの方向で成長した。
【0059】
<水蒸気熱処理の場合のAFM>
図2D~Fで見られるサファイアC面のステップの高さは、主に約2n×0.2nmであった。
図2D及び
図2Eでのステップの高さは、約0.4nmであった。他方、カットオフ角の大きい
図2Fでのステップの高さは、約0.8nm(=(2×2)×0.2nm)であった。発明者が観察した限り、水蒸気熱処理後のサファイア基板の表面は、ほとんどの場合、約2n×0.2nm、すなわちダブルスラブステップ(偶数スラブステップ)とシングルスラブ表面で構成されていた。
【0060】
さらに、テラスのエッジの形状は、ほぼ真っすぐであり、多くの場合規則的な形状又は周期を有していた。
【0061】
サファイア基板上に成長したMoS2フレークは、1つの方向のみを有していた。カットオフ方向(図の左右方向)の一方の方向のみでフレークが成長したことが観察された。
【0062】
<光学顕微鏡観察>
同様のフレークの形状は、光学顕微鏡でも観察された(
図3a及びb)。従来熱処理の場合、MoS
2フレークは、2つの方向で存在していた(
図3a)。水蒸気熱処理の場合、MoS
2フレークは、一つの方向のみで存在していた(
図3b)。
【0063】
すなわち、水蒸気熱処理後のサファイア基板の表面は、スラブAとBとの一方のみの結晶表面を有している。これにより、MoS2のエピタキシャルフレークが1つの方向のみで成長した。
【0064】
いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面のスラブの特徴(2種類か主に1種類か、その比率など)は、断面TEMを用いて評価することができる。いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面のスラブの特徴は、AFMを用いて評価することができる。いくつかの実施形態では、サファイア基板の表面のスラブの特徴は、GIWAXSを用いて評価することができる。
【0065】
<連続膜のAFM>
従来熱処理の場合と水蒸気熱処理の場合とで、MoS
2の堆積量を増やし、連続的なMoS
2単層膜を形成した。そのAFM像を
図4に示す。
【0066】
従来熱処理の場合、MoS
2単層膜には、多数の結晶粒界が存在した(
図4A)。これは、2つの結晶方位が存在していることを示唆している。すなわち、エピタキシャル成長前のサファイア基板は、多くのシングルスラブ表面を有していた。水蒸気熱処理の場合、MoS
2単層膜には、100μm×100μmの観察領域で結晶粒界は全く観察されなかった(
図4B)。更に1mm×1mmの観察領域でも結晶粒界は全く観察されなかった(
図4C)
【0067】
<実施例2:ウェーハスケールでのMoS
2単層膜の形成>
一方向の結晶方位を有する単層MoS
2薄膜は、大きい面積のサファイア基板表面に形成することができる。本実施例では、2インチのカットオフ角C/A=1°~4°のサファイア基板の表面全面に、単層MoS
2薄膜を形成した。サファイア基板の前処理及び単層MoS
2薄膜の成長の条件は、実施例1と同じであった。
図5に、それらの単層MoS
2薄膜を有するサファイア基板の写真を示す。
【0068】
いずれも、上下左右の5か所で1mm×1mmのAFM観察を行い、結晶粒界は全く確認されなかった。更には、上下左右の5か所で1mm×1mmに対して、第二次高調波発生(SHG)を用いて評価を行い、結晶粒界は全く確認されなかった。
【0069】
<実施例3:複数種類のXM2単層膜の形成>
MoS2に加え、WS2,WSe2の単層膜を、2n×0.2nmのステップ高さを有するサファイア基板上に成長させた。
【0070】
図6に、フレーク成長させた各材料:MoS
2(
図6a)、WS
2(
図6b),及びWSe
2(
図6c)の光学顕微鏡写真を表す。いずれも、ほぼ全てのフレークが同一方向の結晶方位を有していた。
【0071】
図7に、
図6に表した光学顕微鏡写真内に存在するフレークにおける、2つの結晶方向の割合を示す。微量の第二方向のフレークは見られたものの、観察されたフレークの97.8%(MoS
2)、98.8%(WS
2)及び96.6%(WSe
2)が同一方向の結晶方位を有していた。150μm×100μmの視野の光学顕微鏡観察において、少なくとも96%のフレークは、同一方向の結晶方位を有していた。いくつかの実施形態では、サファイア基板は、その表面に成長させたMX
2フレークの少なくとも96%又は96%以上が同一方向の結晶方位を有するような表面特性又は特徴を有していてもよい。いくつかの実施形態では、処理後のサファイア基板上にエピタキシャル成長させたMX
2単層膜は、その面積の少なくとも96%又は96%以上が同一方向の結晶方位を有する。
【0072】
これらの結果は、シングルスラブ表面を、ダブルスラブ表面に比してより多く又はより効率的に形成できることを示している。例えば、本開示の方法で形成されたサファイア基板上のシングルスラブ表面又はダブルスラブステップの割合、及び/又はその上に成長されたエピタキシャル薄膜の1つの結晶方位の割合が、50%より大きい。いくつかの実施形態では、その割合は、50%より大きくてもよい。その割合は、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%など又はそれより高くなり得る。例えば、上記実験結果は、少なくとも、MX2エピタキシャル薄膜の同割合は、96%、97%、98%、99%など又はそれより高くなり得ることを示している。ただ、他のプロセス、アプリケーションの要求によっては、より低い割合であってもよい。
【0073】
本開示のサファイア基板の処理方法によれば、サファイア基板のサイズにかかわらず、又は小面積だけでなく大面積のサファイア基板に、より多くのシングルスラブ表面を形成することができる。さらには、同方法は、大面積の高品質エピタキシャル成長を可能にする。
【0074】
成長された薄膜は、サファイア基板から取り外しても、別の基板又はサポートに転移してもよい。本開示によれば、上記のような結晶特性を有するフリースタンディング薄膜が提供される。
【0075】
本開示の処理後サファイア基板、エピタキシャル薄膜を有するサファイア基板、及び/又はエピタキシャル薄膜は、様々なアプリケーションに用いることができる。アプリケーションの非限定的な例は、電子デバイス、光デバイス、熱デバイス、バイオデバイスなどを含む。ここでいう「デバイス」は、一つのコンポーネントであってもよく、最終製品であってもよく、それらの製造過程で発生する中間製品であってもよい。
【0076】
本開示は以下の実施形態も提供する:
A001
サファイア基板の表面を処理する方法であって、
サファイア基板を提供すること;及び
前記サファイア基板に対して、水蒸気を含む雰囲気で、熱処理を行うこと;
を備える方法。
A011
A001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記熱処理の温度は、1080℃以上である、
方法。
A012
A001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記熱処理の温度は、1000℃以上である、
方法。
A013
A011、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記熱処理の温度は、900℃以上である、
方法。
A014
A011、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記熱処理の温度は、850℃以上である、
方法。
A021
A001からA014のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記雰囲気は、室温及び大気圧での飽和水蒸気量以上の量の水蒸気を含む、
方法。
A022
A001からA014のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記雰囲気は、30℃及び大気圧での飽和水蒸気量以上の量の水蒸気を含む、
方法。
A031
A001からA022いずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記熱処理の前記雰囲気は、キャリアガスを含む、
方法。
A032
A031、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記雰囲気ガスは、希ガス含む;
前記雰囲気ガスは、Arを含む;
前記雰囲気ガスは、ArとO2を含む;又は
前記雰囲気ガスは、実質的にArとO2とからなる混合ガスである、
方法。
A033
A031又はA032、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記雰囲気ガスは、O2を含む、
方法。
A041
A001に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、C面{0001}を有する、
方法。
A042
A041に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、a軸方向にオフカット角を有する、
方法。
A043
A041に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、m軸方向にオフカット角を有する、
方法。
A045
A001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板の前記表面は、m面{10-10}を有する、
方法。
A051
A041、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって
前記表面は、実質的に1°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、1050℃以上である、
方法。
A052
A041、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって
前記表面は、実質的に2°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、1000℃以上である、
方法。
A053
A041、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって
前記表面は、実質的に4°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、900℃以上である、
方法。
A054
A041、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって
前記表面は、実質的に6°以上のオフカット角を有し、
前記熱処理の温度は、850℃以上である、
方法。
A061
A001からA053のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、2インチ以上のサイズを有する、
方法。
A062
A061、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、3インチ以上のサイズを有する、
方法。
A063
A062、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、4インチ以上のサイズを有する、
方法。
A064
A063、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、6インチ以上のサイズを有する、
方法。
A065
A064、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、8インチ以上のサイズを有する、
方法。
A066
A065、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、10インチ以上のサイズを有する、
方法。
A067
A066、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記サファイア基板は、12インチ以上のサイズを有する、
方法。
B001
エピタキシャル基板を製造する方法であって、
A001からA066のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法で製造された前記サファイア基板を提供すること;及び
前記サファイア基板の前記表面にエピタキシャル成長を行うこと
を備える方法。
B002
B001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記エピタキシャル成長は、化学気相体積(CVD)法、分子線エピタキシャル法(MBE)法、及びパルスレーザ堆積(PLD)のいずれかである、
方法。
B011
B001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記エピタキシャル成長は、遷移金属ジカルコゲナイドを成長させることを含む、
方法。
B012
B011、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記遷移金属ジカルコゲナイドは、MX2、
M=遷移金属であり、
X=S,Se,及びTeからなる群から選択される
からなる群から選択される、
方法。
B013
B011又はB012、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記遷移金属ジカルコゲナイドは、MoS2、WS2及びWSe2からなる群から選択される、
方法。
B021
B001、又はいずれかの実施形態に記載の方法であって、
前記エピタキシャル成長は、GaNを成長させることを含む、
方法。
C001
50%より高い、シングルスラブ表面の比率を有するサファイア基板。
C002
90%又はそれより高い、シングルスラブ表面の比率を有するサファイア基板。
C003
95%又はそれより高い、シングルスラブ表面の比率を有するサファイア基板。
C004
96%又はそれより高い、シングルスラブ表面の比率を有するサファイア基板。
C011
C001からC004のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の、
C面を表面として有する、
サファイア基板。
D001
50%より高い、一つの結晶方位の割合を有する、サファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜。
D002
90%又はそれより高い、一つの結晶方位の割合を有する、サファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜。
D003
95%又はそれより高い、一つの結晶方位の割合を有する、サファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜。
D004
96%又はそれより高い、一つの結晶方位の割合を有する、サファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜。
D011
C001からD004のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載のサファイア基板上に成長されたエピタキシャル薄膜であって、
遷移金属カルコゲナイド(MX2)である、エピタキシャル薄膜。
D012
D011に記載の、又はいずれかの実施形態に記載のエピタキシャル薄膜であって、
前記遷移金属カルコゲナイド(MX2)は、MoS2、WS2及びWSe2からなる群から選択される、
エピタキシャル薄膜。
E001
A001からA067のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法により製造されたサファイア基板;
B001からB021のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載の方法により製造されたエピタキシャル薄膜;
C001からC011のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載のサファイア基板;及び
D001からD011のいずれか一項、又はいずれかの実施形態に記載のエピタキシャル薄膜;
の一方、少なくとも一つ、又は複数を備えるデバイス、装置又はその中間製品。
E002
E001、又はいずれかの実施形態に記載のデバイス、装置又はその中間製品であって、
前記デバイスは、電子デバイス、光デバイス、熱デバイス、及び/又はバイオデバイスである、
デバイス、装置又はその中間製品。
【0077】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明が、明細書内で提供される特定の例によって限定されることは意図されていない。本発明は、前述の明細書を参照して説明されてきたが、本明細書の実施形態の説明および図解は、限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換を思いつくであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書に記載された特定の描写、構成または相対的比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような代替、変更、変形、または同等物もカバーするものとすることが企図されている。本願の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図されている。