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特開2024-123630アルコール含有粘性組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123630
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】アルコール含有粘性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20240905BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240905BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L33/02
C08K5/05
C08F220/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031209
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 友佳
(72)【発明者】
【氏名】中川 真智子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG011
4J002EC026
4J002FD026
4J002FD331
4J002GB00
4J002GC00
4J002HA03
4J100AE71Q
4J100AE71R
4J100AE71T
4J100AJ02P
4J100AL05Q
4J100AL05S
4J100AL05T
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA06
4J100DA09
4J100DA62
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100GC26
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA61
(57)【要約】
【課題】比較的高粘度であり、且つ均一な、アルコール含有粘性組成物を容易に調製可能な方法の提供。
【解決手段】(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び(b)アルキルアルコールを含有する粘性組成物の製造方法であって、前記(a)重合体を、25℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び
(b)アルキルアルコール
を含有する粘性組成物の製造方法であって、
前記(a)重合体を、25℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、
方法。
【請求項2】
前記(a)重合体が
(A) 以下の(A-0)、(A-1)、及び(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体:
(A-0)次の(i)を重合させて得られる重合体
(A-1)次の(i)及び(ii)を重合させて得られる共重合体
(A-2)次の(i)、(ii)、及び(iii)を重合させて得られる共重合体
(i)(メタ)アクリル酸100質量部
(ii)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物1質量部以下
(iii)アルキル基の炭素数が10~30である(メタ)アクリル酸アルキルエステル5質量部以下
である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘性組成物が、(a)重合体量を0.5~25質量%含有する粘性組成物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘性組成物が、前記(a)重合体を0.5~25質量%、前記(b)アルキルアルコールを60.75質量%超99.5質量%以下、含有する粘性組成物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキルアルコール含有溶媒が、アルキルアルコールを82~100質量%含有する溶媒である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
(b)アルキルアルコールが、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖状アルキルアルコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び
(b)アルキルアルコール
を含有する粘性組成物の製造方法であって、
前記(a)重合体を、30℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粘性組成物が、
その温度を25℃として測定した粘度をX(mPa・s)とし、
(a)重合体を溶解させるアルキルアルコール含有溶媒の温度を25℃とする以外は同様にして調製した粘性組成物を、25℃で測定した粘度をY(mPa・s)としたとき、
X/Yが1より大きくなる粘性組成物である、
請求項1又は7に記載の方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法で製造された、粘性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルコール含有粘性組成物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール含有粘性組成物は様々な分野で広く利用されている。例えば、消毒用(特に手足消毒用)組成物や化粧品組成物、害虫忌避剤組成物など、幅広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-088679号公報
【特許文献2】特開2007-217348号公報
【特許文献3】特開2012-131734号公報
【特許文献4】特開2013-249271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用される分野や用途によっては、比較的高い粘度のアルコール含有粘性組成物が求められる。また、実際の製品においては、そこまで高い粘度を求められない場合であっても、原料として比較的高粘度のアルコール含有粘性組成物を利用したいというニーズも存在する。
【0005】
そこで、本発明者らは、比較的高粘度であり、且つ均一な、アルコール含有粘性組成物を調製可能な方法について検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、粘性剤として特定の重合体を用い、さらに、当該特定の重合体を比較的高温のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させて調製したアルコール含有粘性組成物は、溶解時の温度から室温へと戻したとしても、比較的高い粘度を有することを見いだし、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び
(b)アルキルアルコール
を含有する粘性組成物の製造方法であって、
前記(a)重合体を、25℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、
方法。
項2.
前記(a)重合体が
(A) 以下の(A-0)、(A-1)、及び(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体:
(A-0)次の(i)を重合させて得られる重合体
(A-1)次の(i)及び(ii)を重合させて得られる共重合体
(A-2)次の(i)、(ii)、及び(iii)を重合させて得られる共重合体
(i)(メタ)アクリル酸100質量部
(ii)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物1質量部以下
(iii)アルキル基の炭素数が10~30である(メタ)アクリル酸アルキルエステル5質量部以下
である、
項1に記載の方法。
項3.
前記粘性組成物が、(a)重合体量を0.5~25質量%含有する粘性組成物である、項1又は2に記載の方法。
項4.
前記粘性組成物が、前記(a)重合体を0.5~25質量%、前記(b)アルキルアルコールを60.75質量%超99.5質量%以下、含有する粘性組成物である、項3に記載の方法。
項5.
前記アルキルアルコール含有溶媒が、アルキルアルコールを82~100質量%含有する溶媒である、
項1~4のいずれかに記載の方法。
項6.
(b)アルキルアルコールが、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖状アルキルアルコールである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
項7.
(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び
(b)アルキルアルコール
を含有する粘性組成物の製造方法であって、
前記(a)重合体を、30℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、
項1~6のいずれかに記載の方法。
項8.
前記粘性組成物が、
その温度を25℃として測定した粘度をX(mPa・s)とし、
(a)重合体を溶解させるアルキルアルコール含有溶媒の温度を25℃とする以外は同様にして調製した粘性組成物を、25℃で測定した粘度をY(mPa・s)としたとき、
X/Yが1より大きくなる粘性組成物である、
項1~7のいずれかに記載の方法。
項9.
請求項1~8のいずれかに記載の方法で製造された、粘性組成物。
【発明の効果】
【0008】
比較的高粘度であり、且つ均一な、アルコール含有粘性組成物を容易に調製可能な方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、アルキルアルコール含有粘性組成物の製造方法や、当該方法により製造されたアルキルアルコール含有粘性組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含されるアルキルアルコール含有粘性組成物の製造方法は、(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体、及び(b)アルキルアルコールを含有する粘性組成物の製造方法であって、前記(a)重合体を、25℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む、方法である。当該製造方法を、本開示の製造方法ということがある。また、本開示の製造方法により製造されるアルキルアルコール含有粘性組成物を、本開示の粘性組成物ということがある。
【0011】
(a)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体としては、以下の(A-0)、(A-1)、及び(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。
【0012】
(A-0)次の(i)を重合させて得られる重合体
(A-1)次の(i)及び(ii)を重合させて得られる共重合体
(A-2)次の(i)、(ii)、及び(iii)を重合させて得られる共重合体
(i)(メタ)アクリル酸100質量部
(ii)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物1質量部以下
(iii)アルキル基の炭素数が10~30である(メタ)アクリル酸アルキルエステル5質量部以下
【0013】
本開示の粘性組成物における、(a)の重合体の含有量は、0.5~25質量%であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、1~20質量%であることがより好ましい。
【0014】
(a)の重合体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記(A-0)の重合体、(A-1)の共重合体、及び(A-2)の共重合体を、それぞれ重合体(A-0)、重合体(A-1)、重合体(A-2)ということがある。なお、前記の通り、(a)の重合体は、重合体(A-0)、重合体(A-1)、及び重合体(A-2)も含め、(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体であり、よってカルボキシル基含有水溶性重合体である。特に断らない限り、(a)の重合体が含有するカルボキシル基が中和されていない化合物(未中和化合物)、または、当該重合体が含有するカルボキシル基の一部、もしくは、全てが中和されている化合物(中和化合物)も包含する。
【0016】
なお、本明細書において、重合体(A-1)及び重合体(A-2)は、(メタ)アクリル酸とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(架橋剤)とが重合している化合物(言い換えれば、(メタ)アクリル酸がエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物で架橋されている化合物)を包含する概念である。よって、重合体(A-1)及び重合体(A-2)は、(メタ)アクリル酸に加え、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物をも重合している化合物(言い換えれば、(メタ)アクリル酸重合体が当該化合物で架橋されている化合物)を包含する。
【0017】
上記(ii)の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、1質量部以下であり0.01~1.0質量部が好ましく、0.01~0.7質量部がより好ましい。
【0018】
上記(iii)の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、5質量部以下であり、0.01~5質量部が好ましく、0.01~4質量部がより好ましい。
【0019】
上記(ii)としては、例えばペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記の通り、(ii)は架橋剤として働き得る化合物である。(ii)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記(iii)は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が10~30である高級アルコールとのエステルである。当該アルキル基の炭素数は、例えば12~30、14~28、16~26、又は18~24であることがより好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70や共栄社化学製のライトエステルL等の市販品を用いてもよい。
【0021】
(a)の重合体は、上記の通り、(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体であり、従ってモノマーとして(メタ)アクリル酸を用いて得られる重合体である。重合体(A-0)は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸とメタクリル酸の共重合体を包含する。また、重合体(A-1)及び(A-2)は、少なくとも(メタ)アクリル酸とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られる。これらの重合は、ラジカル重合開始剤の存在下に重合溶媒中で行われることが好ましい。(i)のみ、(i)と(ii)、又は(i)と(ii)と(iii)、を重合する方法としては、これらをラジカル重合開始剤の存在下に重合溶媒中で重合させる方法が好ましく挙げられる。以下、より詳細に説明する。
【0022】
前記ラジカル重合開始剤としては、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビスメチルイソブチレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記ラジカル重合開始剤の使用量としては、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.01~0.45質量部が好ましく、0.01~0.4質量部がより好ましい。
【0024】
重合体(A-0)、(A-1)、及び(A-2)のいずれも、例えば沈殿重合や逆相懸濁重合により好ましく調製することができる。またさらに、沈殿重合を、ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤が配合された重合溶媒中で行ってもよい。
【0025】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体、及びポリオキシエチレンヒマシ油等が好ましく挙げられる。
【0026】
多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物が好ましく挙げられる。また、ここでの多価アルコール脂肪酸としては、炭素数14~24の飽和若しくは不飽和の多価(特に2価)アルコール脂肪酸が好ましく、より具体的には、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソオレイン酸等が好ましく挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物における、ポリオキシエチレンの酸化エチレン平均付加モル数としては、20~100程度、又は30~70程度が挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物として特に好ましいものとして、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0027】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの付加モル数が2~10程度のものが好ましく、2~5程度のものがさらに好ましい。
【0028】
ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体とは、言い換えれば、ポリヒドロキシ脂肪酸とポリオキシエチレンとからなる共重合体とも言える。ポリヒドロキシ脂肪酸の脂肪酸としては、炭素数14~22程度の脂肪酸が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が好ましく挙げられ、ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸等が好ましく挙げられ、特にヒドロキシステアリン酸が好ましい。ヒドロキシステアリン酸としては、12-ヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。ポリヒドロキシ脂肪酸としては、ポリヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体としては、12-ヒドロキシステアリン酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体が特に好ましい。
【0029】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~7.5質量部がより好ましい。
【0031】
また、前記重合溶媒としては、(i)、(ii)、及び(iii)を溶解し、かつ得られる重合体を溶解しない溶媒であることが好ましい。このような重合溶媒の具体例としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等が挙げられる。これらの重合溶媒の中でも、品質が安定しており入手が容易であるという観点から、好ましくは、エチレンジクロライド、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、酢酸エチルが挙げられる。これらの重合溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記重合溶媒の使用量としては、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、200~10000質量部が好ましく、300~2000質量部がより好ましい。重合溶媒を上記範囲内で使用することにより、重合反応が進行しても、重合体が凝集するのを好ましく抑制して均一に撹拌させ、且つ重合反応をより効率的に進行させることが可能になる。
【0033】
また、上記重合反応を行う際の雰囲気については、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0034】
上記重合反応を行う際の反応温度は、50~90℃が好ましく、55~75℃がより好ましい。このような反応温度で重合反応を行うことにより、反応溶液の粘度上昇を好ましく抑制し、反応制御をより容易にすることができる。
【0035】
上記重合反応を行う際の反応時間は、通常、2~10時間である。
【0036】
反応終了後は、反応溶液を80~120℃に加熱し、重合溶媒を除去することにより微粉末の重合体を単離することができる。
【0037】
(b)アルキルアルコールとしては、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖状アルキルアルコールが好ましく挙げられる。中でも、1価又は2価のアルキルアルコールであることが好ましい。より具体的には、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、及びペンチレングリコールが好ましく、特にエタノール、n-プロパノール、イソプロパノールが好ましい。また、アルコールとしては、グリセリン、2-フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びフルフリルアルコール等も好ましく用いることができる。アルコールは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、本開示の粘性組成物における(b)アルキルアルコールの含有量は、60.75質量%超99.5質量%以下であることが好ましく、61~99.5質量%であることがより好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量%であってもよい。例えば当該範囲は70~98質量%であってもよい。
【0039】
特に限定される訳では無いが、本開示の粘性組成物のpHは、好ましくは7未満であり、より好ましくは2~6.9である。当該範囲の上限または下限は例えば2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、又は6.8であってもよい。例えば、当該範囲は2.5~5.5であることが好ましい。なお、当該pHは、25℃においてpHメーターで測定した値(25℃において、水溶液のpH測定と同じ要領でpHメーターで測定を行ったときの表示値)である。
【0040】
本開示の製造方法は、前記の通り、(a)の重合体を、25℃以上のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させることを含む。特に限定される訳では無いが、当該アルキルアルコール含有溶媒は、アルキルアルコールを82~100質量%含有する溶媒であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量%であってもよい。例えば当該範囲は83~99質量%であってもよい。
【0041】
また、(a)の重合体を溶解させるアルキルアルコール含有溶媒の温度は、前記の通り25℃以上であり、25℃より高い温度であることが好ましく、26、27、28、又は29℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。また、当該温度の上限は特に限定はされないが、(a)の重合体が熱により融けない温度であることが望ましい。例えば、(a)の重合体を溶解させるアルキルアルコール含有溶媒の温度は、25~80℃程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、又は79℃であってもよい。例えば当該範囲は26~79℃であってもよく、また例えば30~70℃であってもよく、好ましい。
【0042】
(a)の重合体を溶解させるアルキルアルコール含有溶媒の温度を、上記の温度とすることにより、調製された粘性組成物は、溶解時の温度から室温へと戻したとしても、比較的高い粘度を有することから、好ましく様々な用途に用いることができる。
【0043】
このように調製された、本開示の粘性組成物のなかでも、(a)の重合体を25℃より高い温度のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させて調製されるものが好ましく、特に、次のようにして算出される粘度変化倍率が1より大きいものがより好ましく、1.1以上のものがさらに好ましい。また、当該粘度変化倍率の上限は特に限定はされないが、例えば10が挙げられる。当該範囲(1以上10以下)の上限又は下限は、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、又は9.9であってもよい。例えば当該範囲は1.1~9.5であってもよい。
【0044】
[粘度変化倍率]
本開示の粘性組成物の粘度X(mPa・s)=(a)の重合体を25℃より高い温度のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させて調製した粘性組成物を、25℃に冷却して測定した粘度、
比較用粘性組成物の粘度Y(mPa・s)=粘度X測定時と同量の(a)の重合体を、粘度X測定時と同量且つ同組成の25℃のアルキルアルコール含有溶媒に溶解させて調製した粘性組成物を、25℃で測定した粘度、
としたとき、
粘度変化倍率=X/Y
とする。
【0045】
また、本開示の粘性組成物の中でも、波長425nmの光の透過率が、蒸留水を100%としたとき、10%以上であるものが好ましく、15、20、25、30、35、40、45、又は50%以上であるものがより好ましく、55、60、65、又は70%以上であるものがさらに好ましい。当該透過率は、分光光度計により測定される。
【0046】
本開示の粘性組成物は、効果を損なわない範囲において、上述した成分以外の成分を含有してもよい。このようなその他成分としては、例えば外用組成物分野において用いられる各種成分が挙げられる。
【0047】
本開示の粘性組成物は、粘度が1000mPa・s以上のものが好ましく、1000~150000mPa・s程度のものがより好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000,45000、50000、55000、60000、65000、70000、75000、80000、85000、90000、95000、100000、110000、120000、130000、又は140000mPa・sであってもよい。例えば当該範囲は1500~140000mPa・sであってもよく、また例えば2000~60000mPa・sであってもよい。
【0048】
なお、本明細書において、組成物の粘度は、BrookField社製の粘度計(型番:DV1MRVTJ0)を用い、回転速度を毎分20回転として、1分後の25℃において測定された値である。
【0049】
本開示の粘性組成物は、例えば、接着剤、粘着剤、結着剤(バインダー)、摩擦低減剤、皮膜形成剤、洗浄剤、研磨用液剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、消毒剤、防虫剤/芳香剤等の揮発製剤、凍結防止剤、固体若しくは液体燃料、着火剤、外用組成物(例えば外用医薬品や化粧品)等として、用いることができる。また例えば、各種塗工液(塗料、インク等)、各種シート状物(化粧用パック剤、化粧用ゲルシート、医療用ゲルシート、保湿ゲルシート、各種パッド等)、ハウスクリーニング剤、塗膜はくり剤等として用いることができる。化粧品としては頭髪用化粧品も包含し、より具体的には例えば、収れん化粧水、清感剤、制汗剤、整髪料、香水、ネイル製品、日焼け止め、ピーリングジェル等として用いることができる。また、例えば建築材料、ガス分離膜、医療用デバイスや診断薬等の調製、製造のためにも好ましく用いることができる。またあるいは、外用組成物としても好ましく用いることができる。
【0050】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0051】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0052】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0053】
(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体の調製
[製造例1]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸45g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.13g、n-ヘキサン150g及び2,2’-アゾビスメチルイソブチレート0.153gを入れ、反応液を調製した。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器の上部空間、原料及び溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を60~65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、n-ヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、(メタ)アクリル酸系水溶性重合体であるアクリル酸の重合体42gを得た。以下当該重合体を製造例1ポリマーと表記することがある。
【0054】
[製造例2]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸45g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.27g、n-ヘキサン150g及び2,2’-アゾビスメチルイソブチレート0.153gを入れ、反応液を調製した。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器の上部空間、原料及び溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を60~65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、n-ヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、(メタ)アクリル酸系水溶性重合体であるアクリル酸の重合体42gを得た。以下当該重合体を製造例2ポリマーと表記することがある。
【0055】
[製造例3]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸30g、メタクリル酸ラウリル(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルL) 1.25g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.17g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.210g、及びノルマルヘキサン140.5gを仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を55~60℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、nヘキサンを留去し、さらに110℃、10mmHgの条件で、7時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体28gを得た。以下当該共重合体を製造例3ポリマーと表記することがある。
【0056】
[製造例4]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸40g、ブレンマーVMA-70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)0.4g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.19g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.116g、及びノルマルヘキサン230.9gを仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60~65℃まで加熱した。その後、3時間60~65℃に保持した。60~65℃で1時間程度、保持した時点で、ノルマルヘキサン2.0gに12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)1.6gを溶解させたものを、反応容器に投入した。その後、生成したスラリーを100℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに115℃、10mmHgの条件で、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体39gを得た。以下当該共重合体を製造例4ポリマーと表記することがある。
【0057】
粘性組成物の調製
製造例ポリマー1~4あるいはポリアクリル酸(PAA)を増粘用ポリマーとして用いて、以下のようにして粘性組成物を調製した。なお、アルキルアルコールとして、イソプロパノール(IPA)又はn-プロパノールを用いた。
【0058】
(実施例1~3、比較例1~3)
直径7.5cmの平板羽根を有する撹拌機、冷却管を備えた容量200mlの三つ口筒形セパラブルフラスコにアルキルアルコール82gを仕込んだ。室温で溶液を300rpmで撹拌しながらフラスコをウォーターバスに浸し、ウォーターバスの温度を設定温度になるように調整した(設定温度が室温以下の場合には、温度調整のため、必要に応じてウォーターバスに氷を投入した)。設定温度に達してから10分経過後、粉体ロートを用いて増粘用ポリマー8gを投入した。粉体ロートに付着した増粘用ポリマーを、アルキルアルコール10gを用いて共洗いした後、設定温度±3℃を保持しながら300rpmで3時間撹拌し、粘性組成物を調製した。
【0059】
(実施例4~12、比較例4~11)
直径7.5cmの平板羽根を有する撹拌機、冷却管を備えた容量200mlの三つ口筒形セパラブルフラスコにアルキルアルコール85gを仕込んだ。室温で溶液を300rpmで撹拌しながらフラスコをウォーターバスに浸し、ウォーターバスの温度が設定温度になるように調整した(設定温度が室温以下の場合には、温度調整のため、必要に応じてウォーターバスに氷を投入した)。設定温度に達してから10分経過後、粉体ロートを用いて増粘用ポリマー5gを投入した。粉体ロートに付着した増粘用ポリマーを、アルキルアルコール10gを用いて共洗いした後、設定温度±3℃を保持しながら300rpmで3時間撹拌し、粘性組成物を調製した。
【0060】
なお、いずれの実施例及び比較例の粘性組成物調製方法においても、前述の通り、前記設定温度とはウォーターバスの温度ではあるが、ウォーターバスが設定温度に達してから10分経過してから増粘用ポリマーを添加し、さらに適切に撹拌しながら3時間かけて増粘用ポリマーを溶解させていることから、当該設定温度は増粘用ポリマーを溶解させる時のアルキルアルコールの温度を反映しているといえる。
【0061】
得られた各粘性組成物について、25℃に冷却又は調整して、以下のようにして粘度及び透過度を測定した。なお、粘性組成物の冷却には恒温水槽を用いた。また、各実施例及び比較例において、設定温度を25℃とした以外は同様にして粘性組成物を調製し、その粘度も同様にして測定した。
【0062】
(粘度測定方法)
調製した粘性組成物を50mlの遠沈管に入れ、遠心分離機(国産株式会社製、卓上遠心機 H-36)にて脱気した。25℃の恒温水槽に30分以上浸してからB型粘度計(BrookField社製、型番:DV1MRVTJ0)を用い、回転速度を毎分20回転として、1分後の25℃における粘度を測定した。測定に使用したローターは、40000mPa・s未満の場合はローターNo.6、40000mPa・s以上の場合はNo.7とした。
【0063】
(透過度測定方法)
透過率の測定には、島津製作所社製の分光光度計(型番:UV-1850)を用いた。まず試料(各粘性組成物)をUV測定用のセル(光路長1cm)に入れ、コクサン製の卓上遠心機(型番:H-36)にて毎分1500回転で2分間の操作により脱気した。脱気が完了していない場合は卓上遠心機にて同様の操作を行い、泡が試料上部から抜けることを確認した。その後、試料を分光光度計にセットし、測定波長を425nmとして透過率を測定した。なお、蒸留水を透過率100%になるように校正した。
【0064】
結果を表1にまとめて示す。なお、表1に記載の各設定温度で調製した粘性組成物の粘度と、設定温度を25℃で調製した粘性組成物の粘度との比(粘度変化倍率)についても、表1にあわせて示す。
【0065】
【表1】