(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123678
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法、培養方法及び養殖方法
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A01G33/02 101Z
A01G33/02 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031289
(22)【出願日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (公開1) 集会名 2022年度水圏統合科学プログラム卒論発表会 開催日 令和5年 2月15日 (公開2) 刊行物 2022年度水圏統合科学プログラム卒論発表会発表要旨集 発行日 令和5年 2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】596133201
【氏名又は名称】松田産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亜記
(72)【発明者】
【氏名】木下 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】三上 裕
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026AA01
2B026AC03
2B026FB02
(57)【要約】
【課題】珪藻等の雑藻の増殖を十分に抑制しつつ、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法、培養方法及び養殖方法を提供することを課題とする。
【解決手段】紅藻類アマノリ属の葉状体を脱水乾燥処理する工程と、前記脱水乾燥処理後の葉状体を冷凍する工程を含む、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅藻類アマノリ属の葉状体を脱水乾燥処理する工程と、前記脱水乾燥処理後の葉状体を冷凍する工程を含む、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法。
【請求項2】
前記脱水乾燥処理する工程において、前記葉状体を水分率30重量%以下まで脱水、乾燥する、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記冷凍する工程における温度が-35℃以上-7℃以下である、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記冷凍する工程における冷凍期間が1ヶ月以上6ヶ月未満である、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項5】
冷凍した葉状体を解凍する工程と、解凍した葉状体を細断する工程を含む、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の処理方法により得られた単胞子を培養する工程を含む、紅藻類アマノリ属の培養方法。
【請求項7】
請求項6に記載の培養方法により得られた葉状体を養殖する工程を含む、紅藻類アマノリ属の養殖方法。
【請求項8】
前記養殖する工程が陸上養殖である、請求項7に記載の紅藻類アマノリ属の養殖方法。
【請求項9】
前記養殖する工程が海上養殖である、請求項7に記載の紅藻類アマノリ属の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法、培養方法及び養殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻は、細胞内に含まれる光合成色素の組成の違いにより、緑藻類(アオサ、アオノリなど)、褐藻類(コンブ、ワカメなど)、紅藻類(ノリ、テングサなど)、に大きく分類することができる。なかでも、スサビノリやアサクサノリを含む紅藻類のアマノリ属は、板海苔(乾物)の原料として、その養殖が盛んに行われ、現在は、スサビノリの養殖が一般的であり、アサクサノリは、絶滅危惧種に指定されている。
【0003】
アマノリ属は、配偶体である葉状体と胞子体である糸状体の間で世代交代する生活環を持つことが知られている。冬に生育する葉状体は、受精により果胞子を形成する。果胞子は貝殻に穿孔して糸状体へと成長し、秋になると殻胞子を形成する。殻胞子は減数分裂を行い、生育して葉状体となる。また、生育した葉状体は果胞子のほか単胞子を形成することもでき、単胞子は発芽すると糸状体を経ずに葉状体へ成長することで無性的に増殖する。食用としては葉状体が利用される。
【0004】
近年、国産ノリの養殖生産量は減少傾向にある。その要因の一つとして、地球温暖化による海水温上昇が挙げられている。ノリは10月ごろに陸上又は海上で採苗され、水温の下がる11月下旬ごろから海上養殖を行うが、海水温の上昇により、採苗時期や海上養殖の開始時期に遅れが生じ、漁期が短縮している。
【0005】
また、珪藻等の植物プランクトンの発生により海水中の窒素等の栄養塩濃度が低下すると、ノリが光合成色素を十分に作り出すことができず、ノリの色落ちが発生する。加えて、珪藻はノリに付着することで光合成を直接的に阻害する。
【0006】
このように海上における養殖は、海上の自然条件や漁期等の問題を受けることから、これらの影響を受けない陸上養殖が検討されている。例えば、特許文献1には、海洋の条件に左右されることなく海苔の養殖が可能な陸上における海苔の養殖方法について開示があり、陸上養殖の利点として、海水を循環利用するので施した肥料の無駄が少ないこと、赤潮などの自然条件の悪化を人為的に避けることができること、が開示されている。
【0007】
特許文献2には、アマノリ属の葉状体から、単胞子や果胞子等の単細胞を積極的に放出させる方法が記載されている。具体的には、葉状体を高温で処理するか、長時間にわたって光を照射するとともに、酸処理又はアルカリ処理をすることにより、胞子の放出を促進させることが記載されている。
特許文献3は、アオノリの人工採苗方法を開示している。アオノリの母藻から胞子を放出させる際に、小さく切断するか、あるいは冷却保存した後に常温の塩水に入れることで胞子の放出を促進させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60-192530号公報
【特許文献2】特開2008-125422号公報
【特許文献3】特開平9-224511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のアマノリ属の養殖では、有性生殖によって形成される糸状体を経て葉状体を得ており、増殖日数が長かった。本発明者らは、単胞子を積極的に放出させることにより、糸状体を経ることなく葉状体を得ることで、増殖にかかる期間を短くすることを検討した。また、生育に大きな影響のある珪藻等の雑藻の増殖を抑制することも同時に検討した。
すなわち、本発明は、珪藻等の雑藻の増殖を十分に抑制しつつ、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法、培養方法及び養殖方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意検討した結果、アマノリ属の葉状体を所定の期間冷凍することにより、珪藻等の雑藻の増殖を十分に抑制しつつ、単胞子を放出させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は以下のものを含む。
[1] 紅藻類アマノリ属の葉状体を脱水乾燥処理する工程と、前記脱水乾燥処理後の葉状体を冷凍する工程を含む、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法。
[2] 前記脱水乾燥処理する工程において、前記葉状体を水分率30重量%以下まで脱水、乾燥する、[1]に記載の処理方法。
[3] 前記冷凍する工程における温度が-35℃以上-7℃以下である、[1]又は[2]に記載の処理方法。
[4] 前記冷凍する工程における冷凍期間が1ヶ月以上6ヶ月未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の処理方法。
[5] 冷凍した葉状体を解凍する工程と、解凍した葉状体を細断する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の処理方法。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の処理方法により得られた単胞子を培養する工程を含む、紅藻類アマノリ属の培養方法。
[7] [6]に記載の培養方法により得られた葉状体を養殖する工程を含む、紅藻類アマノリ属の養殖方法。
[8] 前記養殖する工程が陸上養殖である、[7]に記載の紅藻類アマノリ属の養殖方法。
[9] 前記養殖する工程が海上養殖である、[7]に記載の紅藻類アマノリ属の養殖方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、珪藻等の雑藻の増殖を十分に抑制しつつ、アマノリ属から単胞子を放出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。なお、本明細書において、数値範囲の下限値及び上限値を分けて記載する場合、当該数値範囲は、それらのうち任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせることができる。
【0014】
(紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法)
本発明の一実施形態は、紅藻類アマノリ属の葉状体を脱水乾燥処理する工程と、前記脱水乾燥処理後の葉状体を冷凍する工程を含む、紅藻類アマノリ属から単胞子を放出させる処理方法である。
葉状体を脱水乾燥処理後に冷凍保存すると、珪藻等が死滅する一方、葉状体は生存するため、珪藻等により生育を阻害されることなく、アマノリ属を生育させることができる。また、冷凍することが環境刺激となり、葉状体からの単胞子の放出が促進されると考えられる。特に、野外のノリ葉状体には珪藻の付着が多いため、そのままでは胞子のような生殖細胞の培養には適していないが、本実施形態に係る方法によれば、野外のノリ葉状体から単胞子を放出させ、培養することができる。
また、本発明は複雑な工程を必要とせず、廃液が生じないため、特許文献2に記載された方法に比べて環境負荷が少なく、安価に実施することができる。さらに、葉状体を所定期間冷凍して保管できるため、所望の時期に単胞子を得ることができる。
【0015】
本実施形態における紅藻類アマノリ属(Neopyropia)の種は一般にウシケノリ科の中で葉状の配偶体を持つ種であればこの属に限定されず、ポルフィラ属(Porphyra)、アマノリ属(Neopyropia)、ウップルイノリ属(Pyropia)、オニアマノリ属(Neoporphyra)又はミナミアマノリ属(Phycocalidia)であってよい。アマノリ属の例として、スサビノリ(Neopyropia yezoensis)、アサクサノリ(Neopyropia tenera)、オニアマノリ(Neoporphyra dentata)、イチマツノリ(Neoporphyra seriata)、カイガラアマノリ(Neopyropia tenuipedalis)、マルバアマノリ(Phycocalidia suborbiculata)、マルバアサクサノリ(Neopyropia kuniedae)、ウップルイノリ(Pyropia pseudolinearis)、ハイタンアマノリ(Neoporphyra haitanensis)等が挙げられる。
【0016】
紅藻類アマノリ属の葉状体を脱水乾燥処理する工程において、脱水乾燥処理を行う方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、海水等から取り出した葉状体を大気中で所定の時間放置することで脱水、乾燥することができる。また、常温での送風乾燥、減圧乾燥等を組み合わせてもよい。
【0017】
脱水乾燥処理後の水分率は特に限定されないが、通常100重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。下限は特に限定されないが、通常20重量%以上である。水分率は、以下の式(Watanabe et al.)により算出した絶対水分量(AWC)の値を用いることができる。
AWC(%)=(Wt-Wd)/(W0-Wd)×100
上式中、Wtは水分量を求める試料の重量、W0は表面水分を拭き取った初期重量、Wdはオーブンで60℃24h追加乾燥した後の重量を示す。
なお、水分計を用いることで絶対水分量と同様の測定値を簡便に得ることもできる。
脱水乾燥処理の期間は特に限定されず、水分率が所望の値になるように行えばよい。
【0018】
脱水乾燥処理を行うことで、冷凍時の氷結晶の成長を抑制し、氷結晶により細胞が傷つくことを抑制できる。これにより、葉状体の生存率を向上させることができる。
【0019】
脱水乾燥処理を行った葉状体はその後冷凍する。冷凍する温度は好ましくは-7℃以下であり、より好ましくは-15℃以下であり、-18℃以下であってよく、-20℃以下であってよい。冷凍する温度が高すぎると、細胞内に液体が残存し、生化学反応が進行し、細胞が死滅するおそれがある。また、温度を十分に低くすることで、氷結晶が成長しやすい-2℃~-6℃付近の状態となる時間を短くすることができ、生存率を向上させることができる。また、ノリの生存率を維持する観点から、冷凍する温度は-35℃以上が好ましく、-30℃以上がより好ましい。
【0020】
冷凍期間は特に限定されないが、1ヶ月以上が好ましい。また、必要に応じて2ヶ月以
上又は4ヶ月以上とすることもできる。1ヶ月以上冷凍することで、珪藻等の雑藻を十分に除去することができる。また、長期間冷凍することで、葉状体から放出される単胞子の割合が増加することが期待できる。一方、冷凍期間は、葉状体の生存率を維持するために、1年以下が好ましく、6ヶ月未満がより好ましく、4ヶ月以下がさらに好ましい。
【0021】
本実施形態の処理方法は、冷凍した葉状体を解凍する工程を有してもよい。葉状体を解凍する方法は特に限定されず、常温の大気中で放置する方法、18℃の海水中に放置する方法等が挙げられる。
【0022】
本実施形態の処理方法は、解凍した葉状体を細断する工程をさらに有してもよい。細断する方法は特に限定されず、ミキサー等を用いることができる。
細断された葉状体の大きさは、特に限定されないが、2cm角以下、0.8mm角以下を挙げることができる。ミキサーを用いる場合、葉状体と葉状体の2倍量以上の海水を用い、数十秒から数分動作させることで、断片の大きさを1mm以下等の所望の大きさとすることができる。
【0023】
本実施形態の処理方法は、細断した葉状体から胞子を放出させる工程をさらに有してもよい。細断した葉状体は、海水に浸漬すると単胞子や果胞子といった胞子を放出する。
上記海水は、天然海水又は人工海水であってよく、これらに通常用いられ得る添加剤を加えたものであってよい。人工海水とは、海水の組成を模して人工的に調製された液体をいい、水道水等の水に塩、pH調整剤等を添加することにより調製することができる。また、市販品を用いることもできる。
上記添加剤としては、塩、ミネラル、アミノ酸、リン、窒素、pH調整剤等が挙げられる。
【0024】
上記海水の温度は特に限定されないが、通常-1.8℃以上25℃以下であり、0℃以上25℃以下であってよい。特に、葉状体育成期の水温である5℃以上20℃以下が好ましい。
【0025】
(紅藻類アマノリ属の培養方法)
本発明の別の実施形態は、前記処理方法により得られた単胞子を培養する工程を含む、紅藻類アマノリ属の培養方法である。上述のとおり、単胞子を培養することで、糸状体を経ずに葉状体の幼芽を得ることができる。
前記処理方法により得られた単胞子は、海水を用いて培養することができる。培養する工程において用いる海水は、細断した葉状体から胞子を放出させる前記工程で用いるものと同様のものが挙げられるが、細断した葉状体から胞子を放出させる前記工程と同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0026】
単胞子を培養する際の光の照射条件は特に限定されないが、明期と暗期を交互に繰り返してよい。照度の例として、明期における水中での葉状体付近の光の光量子束密度を60μmol・m-2・s-1以上、100μmol・m-2・s-1以下とすることが挙げられる。光量子束密度を上記範囲とすることで、雑藻の過剰な増殖を抑制しながら、ノリの光合成に必要な光量を照射することができる。なお、暗期においては、光量子束密度を10μmol・m-2・s-1未満とすることが好ましい。これにより、不必要な雑藻の増殖を抑えることができる。
【0027】
また、明期と暗期を交互に繰り返す際の各明期時間と各暗期時間の比率を、(明期時間):(暗期時間)=1:1.4~1:5.0とすることができる。照射時間を上記範囲とすることで、雑藻の過剰な増殖を抑制しながら、ノリの光合成に必要な光量を照射することができる。
ここで、各明期時間と各暗期時間の比率を、1日(24時間)当たりの各時間に換算すると、(明期時間):(暗期時間)=1:1.4は、明期10時間、暗期14時間、に相当し、(明期時間):(暗期時間)=1:5.0は、明期4時間、暗期20時間、に相当する。但し、本実施形態において、特に24時間周期とする必要はない。
【0028】
(紅藻類アマノリ属の養殖方法)
本発明の別の実施形態は、上記培養方法により得られた葉状体を養殖する工程を含む、紅藻類アマノリ属の養殖方法である。葉状体を養殖する工程は、上記培養方法によって得た葉状体の幼芽を成葉まで生育させることを含む。
養殖する工程は、陸上養殖及び海上養殖のいずれの方式をとってもよい。
陸上養殖する際の海水、光の照射条件は、単胞子の培養方法における条件と同様のものが挙げられる。また、単胞子の培養から条件を変えることなく、連続的に養殖を行ってもよい。
海上養殖は、上記培養方法によって得た葉状体の幼芽を海上にて生育させることを意味する。
【実施例0029】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
<試験方法>
福山市内海町で採取した養殖ノリ(スサビノリ)を使用した。ノリに付着した水分を拭き取った後、15℃インキュベータで乾燥し、水分率30重量%以下まで脱水・乾燥した。乾燥したノリを家庭用冷凍庫に入れ、0ヶ月、1ヶ月又は4ヶ月冷凍した。
その後、葉状体を解凍し、ミキサーで細断した。その後の培養には0.8mm以下のノリを使用した。細断ノリ1枚を12穴プレートの各セルに収容し、静置培養した。培養条件を表1に示す。表1の条件は「アマノリ養殖品種の特性」(独立行政法人水産総合研究センター 西海区水産研究所、2014)に従って決定した。
【0031】
静置培養開始から定期的に各セルを観察し、各日数における全胞子数を計測したものを表2に示す。
また、静置培養開始10日目に観察した胞子がその時点で発芽し葉状体となっていれば単胞子、糸状体となっていれば果胞子としてカウントしたものを表3に示す。なお、表2の全胞子数は、その時点で発芽しておらず単胞子と果胞子のいずれか不明であるものも含む。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
<結果>
表2に示される通り、比較例1では胞子の放出を確認したが、胞子の累計数は試験日数10日以降減少した。したがって、少なくとも一部の葉状体が枯死したと考えられた。珪藻類の増殖が確認され、胞子の発芽に悪影響を与えていることが示唆された。また、表3に示されるように、単胞子放出数は少なく、放出された胞子の多くが果胞子であった。
【0036】
表2に示される通り、実施例1では継続的に胞子の放出が観測された。また、表3に示される通り、単胞子及び果胞子の放出数が比較例1に比べて増加した。葉状体も全数が生存した。また、珪藻類の増殖は確認できなかった。したがって、冷凍が単胞子の発芽や生存率上昇に寄与していると考えられる。
【0037】
実施例2は実施例1と比較して単胞子及び果胞子が減少し、半数の葉状体が枯死したものの、果胞子に対する単胞子の割合が顕著に増加した。比較例1と比較しても、単胞子の放出数及び割合が顕著に増加した。すなわち、長期間の冷凍により、単胞子を選択的に放出させることができると考えられる。
また、実施例2では珪藻類の増殖は確認できず、冷凍により除去された可能性が高い。
本発明の一実施形態に係る処理方法により放出させた単胞子は、成葉の葉状体まで生育させると、収穫して板海苔等の食品や飼料等に加工することができる。また、成葉の一部を前記処理方法に供することで連続的に養殖することができる。