(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123686
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】圧迫板、マンモグラフィ装置、及び画像撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/04 20060101AFI20240905BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20240905BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B6/04 309B
A61B8/00
A61B6/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031301
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】延山 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 將高
(72)【発明者】
【氏名】谷内 光史
【テーマコード(参考)】
4C093
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093DA06
4C093ED21
4C601DD08
4C601EE11
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】圧迫板の胸壁面の位置を移動させることなく、X線撮影を可能としつつ、胸壁側の超音波検査を行うことができる圧迫板、マンモグラフィ装置、及び画像撮影システムを提供する。
【解決手段】圧迫板20は、被検者の胸壁に対向する壁面部21と、壁面部21につながる底面部22と、を備え、壁面部21の少なくとも一部が、底面部22から延在する低剛性部21Aである。低剛性部21Aは、剛性が圧迫板20の他の部分の剛性よりも低い。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、
被検者の胸壁に対向する壁面部と、
前記壁面部につながる底面部と、
を備え、
前記壁面部の少なくとも一部が、前記底面部から延在する低剛性部であって、剛性が前記圧迫板の他の部分の剛性よりも低い前記低剛性部である
圧迫板。
【請求項2】
前記低剛性部は、弾性変形可能な部材で構成され、
変形前の前記低剛性部は、前記マンモグラフィ装置が備える撮影部の端面と、当該撮影部の有効撮影領域との間にあり、
変形後の前記低剛性部の少なくとも一部は、前記撮影部の端面より前記被検者側に移動可能とする
請求項1に記載の圧迫板。
【請求項3】
前記低剛性部は、前記底面部の一部を含む
請求項1に記載の圧迫板。
【請求項4】
前記被検者と超音波プローブとの間に介在させるための中間部材を更に備え、
前記中間部材は、前記壁面部における、前記被検者の胸壁に対向する胸壁面、及び、当該胸壁面の反対側の面の少なくとも一方に設けられている
請求項1に記載の圧迫板。
【請求項5】
マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、
被検者の胸壁に対向する壁面部を備え、
前記壁面部の一部が開口している
圧迫板。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の圧迫板を備えたマンモグラフィ装置。
【請求項7】
超音波プローブを備えた超音波画像撮影装置と、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の圧迫板を備えたマンモグラフィ装置と、
を含む画像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧迫板、マンモグラフィ装置、及び画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線源から被検者の乳房に向けて放射線を照射させ、乳房を透過した放射線を放射線検出器により検出することにより放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マンモグラフィ装置による撮影において、被検者を圧迫した状態で画像の撮影を行うための圧迫板が記載されている。この圧迫板は、各壁部に設けられたスリットの内部に支持本体の材料よりも柔らかい材料で形成された間隙部材が設けられている。
【0004】
また、被検者の乳房に沿って超音波プローブを走査することで、乳房を超音波で走査することにより乳房の超音波画像を撮影する超音波画像撮影装置が知られている。
【0005】
上記の乳房の放射線画像と超音波画像を比較して、腫瘍の有無を検出する場合がある。特に、被検者の胸壁側に腫瘍、石灰化等の疑いがあることが多く、胸壁までを含めて超音波の検査漏れがないようにすることが求められる。
【0006】
しかし、圧迫の有無により乳房の形状が変わるため、マンモグラフィと超音波とで腫瘍の位置を比較することは難しい。このため、圧迫板上に超音波プローブをマウントし、圧迫した状態で超音波検査を行う方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法では、圧迫板の胸壁面、つまり、被検者の胸壁に対向する面の位置は、被検者の胸壁側をなるべく広くX線で撮影できる位置になっている。しかし、この位置では、圧迫板上の超音波プローブを被検者の胸壁に密着させることができないため、胸壁の超音波検査を行うことが困難である。また、例えば、圧迫板の外から被検者に対して超音波プローブを密着させようとしても十分なスペースがないため胸壁の超音波検査を行うことはできない。
【0009】
一方、超音波プローブの胸壁へのアクセス性を向上させるために、圧迫板の胸壁面の位置を現在位置よりも被検者の胸壁側へ移動させることが考えられる。しかし、圧迫板を移動させると被検者が撮影台に密着できなくなり、結果としてマンモグラフィ装置の撮影範囲が小さくなってしまう。
【0010】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、圧迫板の胸壁面の位置を移動させることなく、X線撮影を可能としつつ、胸壁側の超音波検査を行うことができる圧迫板、マンモグラフィ装置、及び画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本開示の第1態様の圧迫板は、マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、被検者の胸壁に対向する壁面部と、前記壁面部につながる底面部と、を備え、前記壁面部の少なくとも一部が、前記底面部から延在する低剛性部であって、剛性が前記圧迫板の他の部分の剛性よりも低い前記低剛性部である。
【0012】
本開示の第2態様の圧迫板は、第1態様に係る圧迫板において、前記低剛性部が、弾性変形可能な部材で構成され、変形前の前記低剛性部は、前記マンモグラフィ装置が備える撮影部の端面と、当該撮影部の有効撮影領域との間にあり、変形後の前記低剛性部の少なくとも一部は、前記撮影部の端面より前記被検者側に移動可能とする。
【0013】
本開示の第3態様の圧迫板は、第1態様に係る圧迫板において、前記低剛性部が、前記底面部の一部を含む。
【0014】
本開示の第4態様の圧迫板は、第1態様に係る圧迫板において、前記被検者と超音波プローブとの間に介在させるための中間部材を更に備え、前記中間部材は、前記壁面部における、前記被検者の胸壁に対向する胸壁面、及び、当該胸壁面の反対側の面の少なくとも一方に設けられている。
【0015】
上記目的を達成するために本開示の第5態様の圧迫板は、マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、被検者の胸壁に対向する壁面部を備え、前記壁面部の一部が開口している。
【0016】
上記目的を達成するために本開示の第6態様のマンモグラフィ装置は、第1態様~第5態様の何れか1態様に係る圧迫板を備える。
【0017】
上記目的を達成するために本開示の第7態様の画像撮影システムは、超音波プローブを備えた超音波画像撮影装置と、第1態様~第5態様の何れか1態様に係る圧迫板を備えたマンモグラフィ装置と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、圧迫板の胸壁面の位置を移動させることなく、X線撮影を可能としつつ、胸壁側の超音波検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る画像撮影システムの一例を示す図である。
【
図2】圧迫ユニットの構成の一例を示す側面図である。
【
図3A】第1の実施形態に係る圧迫板の外観の一例を示す斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示す圧迫板をIIIB-IIIB線に沿って中央で切断した状態を示す断面図である。
【
図4B】低剛性部を外した状態の圧迫板の一例を示す斜視図である。
【
図5A】第1の実施形態に係る圧迫板及び超音波プローブの外観の一例を示す斜視図である。
【
図5B】
図5Aに示す圧迫板の壁面部周辺を示す部分断面図である。
【
図5C】
図5Aに示す圧迫板の低剛性部を超音波プローブにより押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図6A】被検者の頭上から見た圧迫板及び超音波プローブの状態を示す図である。
【
図6B】
図6Aに示す超音波プローブにより低剛性部を押圧した状態を示す部分拡大図である。
【
図7A】被検者の乳房を側方から圧迫板で圧迫した状態を示す図である。
【
図7B】
図7Aに示す超音波プローブにより圧迫板の低剛性部を押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図8A】変形前の低剛性部の状態の一例を模式的に示す図である。
【
図8B】変形後の低剛性部の状態の一例を模式的に示す図である。
【
図9A】第2の実施形態に係る圧迫板の外観の一例を示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aに示す圧迫板の壁面部周辺を示す部分断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る圧迫板の壁面部周辺を示す部分断面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る圧迫板の外観の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態は本発明を限定するものではない。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る画像撮影システム100の一例を示す図である。本実施形態に係る画像撮影システム100は、マンモグラフィ装置10と、超音波画像撮影装置60と、を備えている。なお、
図1において、奥行き方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0022】
本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、被検者の乳房を被写体として、乳房に放射線R(例えば、X線)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子(車椅子を含む)等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房を撮影する装置であってもよい。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、圧迫板20、放射線検出器30、放射線照射部36、撮影台40、アーム部42、基台44、軸部45、及び圧迫ユニット46を備える。撮影台40は、撮影部の一例である。
【0024】
放射線検出器30は、被検者の乳房を通過した放射線Rを検出する。放射線検出器30は、撮影台40の内部に配置されている。本実施形態に係るマンモグラフィ装置10では、撮影を行う場合、撮影台40の撮影面40A上には、被検者の乳房が医師及び技師等のユーザによってポジショニングされる。被検者の乳房が接する撮影面40A等は、放射線Rの透過性や強度の観点から、例えば、カーボン等で形成されている。
【0025】
放射線検出器30は、被検者の乳房及び撮影台40を透過した放射線Rを検出し、検出した放射線Rに基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像を表す画像データを出力する。放射線検出器30の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0026】
放射線照射部36は、放射線源36Rを備えている。放射線照射部36は、撮影台40及び圧迫ユニット46と共にアーム部42に設けられている。なお、マンモグラフィ装置10は、アーム部42と、基台44と、軸部45と、を備えている。アーム部42は、基台44によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持される。軸部45は、アーム部42を基台44に連結する。また、圧迫ユニット46と、アーム部42とは、軸部45を回転軸として、別々に、基台44に対して相対的に回転可能となっている。本実施形態では、軸部45、アーム部42、及び圧迫ユニット46にそれぞれギア(図示省略)が設けられ、このギア同士の噛合状態及び非噛合状態を切替えることにより、アーム部42及び圧迫ユニット46の各々が軸部45に連結される。軸部45に連結されたアーム部42及び圧迫ユニット46の一方または両方が、軸部45と一体に回転する。
【0027】
図2は、圧迫ユニット46の構成の一例を示す側面図である。なお、
図2は、
図1の逆方向から見たときの圧迫ユニット46の側面図を示す。
【0028】
図2に示すように、圧迫板駆動部32、圧迫力検出センサ33、及び圧迫板20は、圧迫ユニット46に設けられている。圧迫ユニット46内には、モータ31及びボールネジ38を含む圧迫板駆動部32と、圧迫力検出センサ33と、が備えられている。圧迫力検出センサ33は、圧迫板20により乳房全体を圧迫する圧迫力の反力を検出することにより、圧迫力を検出する機能を有する。
【0029】
本実施形態に係る圧迫板20は、圧迫部材であり、圧迫板駆動部32により上下方向(Z軸方向)に移動し、撮影台40との間で被検者の乳房を圧迫する。
図1に示すように、圧迫板20の移動方向について、また、乳房を圧迫する方向、換言すると、撮影面40Aに近付く方向を「圧迫方向」といい、乳房への圧迫を解除する方向、換言すると、放射線照射部36に近付く方向を「圧迫解除方向」という。
【0030】
圧迫板20は、乳房の圧迫において位置合わせや圧迫状態の確認を行うために光学的に透明であることが好ましく、また、放射線Rの透過性に優れた材料によって形成される。さらに、圧迫板20は、超音波画像撮影装置60の超音波プローブ50から送信される超音波を伝播し易い材料により形成されていることが望ましい。圧迫板20の材質としては、例えば、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、アクリル、及びポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることができる。特に、ポリメチルペンテンは、剛性が低く伸縮性及び可撓性に優れると共に、超音波の反射率に影響する音響インピーダンスと超音波の減衰に影響する減衰係数とにおいて適した値を有するので、圧迫板20の材質として適している。
【0031】
なお、圧迫板20は、乳房全体を圧迫するものに限らず、乳房の一部を圧迫するものであってもよい。換言すると、乳房よりも小さい圧迫板20でもよい。このような圧迫板20としては、例えば、病変が存在する領域のみの放射線画像を撮影する、いわゆるスポット撮影に用いられる圧迫板20が知られている。
【0032】
一方、超音波画像撮影装置60は、超音波プローブ50を有し、ユーザによって、被検者の乳房を被写体とした超音波画像を撮影する装置である。
【0033】
超音波プローブ50は、ユーザによって、圧迫板20の面20F(
図1参照、被検者の乳房に接する側と反対側の面)に沿って移動され、乳房を超音波で走査することにより乳房の超音波画像を取得する。
【0034】
超音波プローブ50は、1次元状、又は、2次元状に配列された複数の超音波トランスデューサを備える。各々の超音波トランスデューサは、印加される駆動信号に基づいて超音波を送信すると共に、超音波エコーを受信することにより受信信号を出力する。
【0035】
複数の超音波トランスデューサの各々は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子により構成される。振動子の電極に、パルス状又は連続波の駆動信号を送って電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮によって、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、それらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力され、点線で示すケーブルを介して、超音波画像撮影装置60の本体に入力される。
【0036】
ところで、マンモグラフィ装置10によるX線撮影に適した位置に圧迫板20を配置した場合、超音波プローブ50を被検者の胸壁に密着させることができない。このため、胸壁の超音波検査を行うことは困難である。
【0037】
本実施形態に係る圧迫板20は、一例として、
図3A及び
図3Bに示すように、圧迫板20の底面から胸壁面にかけて変形可能な部分を有する。これにより、超音波検査の際に超音波プローブ50で押圧した部分だけをX線撮影の位置から被検者の胸壁側に移動させることができる。このため、超音波プローブ50を被検者の胸壁に密着させて超音波検査を行うことができる。
【0038】
図3Aは、第1の実施形態に係る圧迫板20の外観の一例を示す斜視図である。
図3Bは、
図3Aに示す圧迫板20をIIIB-IIIB線に沿って中央で切断した状態を示す断面図である。
【0039】
図3A及び
図3Bに示すように、本実施形態に係る圧迫板20は、被検者の胸壁に対向する壁面部21と、壁面部21につながる底面部22と、を備える。壁面部21の一部が、底面部22から延在する低剛性部21Aである。低剛性部21Aは、剛性が圧迫板20の他の部分の剛性よりも低く、超音波プローブ50の押圧によって変形可能な部分である。低剛性部21Aは、例えば、底面部22の一部を含んでいる。なお、壁面部21の被検者の胸壁に対向する面が胸壁面S1とされる。
【0040】
底面部22の周囲には側壁部23、24、25が設けられている。つまり、圧迫板20は、底面部22の周囲に壁面部21、側壁部23、24、25が設けられ、上部が開口した箱状の部材とされる。超音波プローブ50は、圧迫板20の上部開口からアクセスが可能とされる。なお、側壁部23、24、25を設けない構造としてもよい。
【0041】
低剛性部21Aは、底面部22の一部から連続的に延在している。このため、被検者の胸壁近傍で関心度合いの高い部分を超音波検査する際に、低剛性部21Aの継ぎ目に起因するアーチファクトを低減することができる。
【0042】
図4Aは、低剛性部21Aの一例を示す斜視図である。
図4Bは、低剛性部21Aを外した状態の圧迫板20の一例を示す斜視図である。
【0043】
図4Aに示す低剛性部21Aは、
図4Bに示す圧迫板20の開口Opに合わせて固定される。固定方法は、特に限定されるものではないが、十分な強度を確保できる方法が望ましい。低剛性部21Aは、弾性変形可能な部材で構成される。低剛性部21Aの材質としては、例えば、シリコン、ウレタン、NBR(ニトリルゴム)等のゴム部材、あるいは、エラストマ、発泡ウレタン、発泡アクリル、発泡ポリエチレン等の発泡フォームが用いられる。一方、圧迫板20の他の部分は、上述したように、例えば、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、アクリル、及びポリエチレンテレフタレート等の樹脂で構成される。つまり、低剛性部21Aの剛性は、圧迫板20の他の部分の剛性よりも低い。
【0044】
図5Aは、第1の実施形態に係る圧迫板20及び超音波プローブ50の外観の一例を示す斜視図である。
図5Bは、
図5Aに示す圧迫板20の壁面部周辺を示す部分断面図である。
図5Cは、
図5Aに示す圧迫板20の低剛性部21Aを超音波プローブ50により押圧した状態を示す部分断面図である。
【0045】
図5CのX部に示すように、ユーザが超音波プローブ50により低剛性部21Aを押圧すると、押圧した部分が伸び、超音波プローブ50が低剛性部21Aを介して被検者の胸壁に密着し、胸壁の超音波検査が可能となる。
【0046】
図6Aは、被検者の頭上から見た圧迫板20及び超音波プローブ50の状態を示す図である。
図6Bは、
図6Aに示す超音波プローブ50により低剛性部21Aを押圧した状態を示す部分拡大図である。
【0047】
図6Aに示すように、被検者の胸壁に対して、圧迫板20の壁面部21を押し当て、圧迫板20と撮影台40との間に被検者の乳房Wを配置し、圧迫板20で乳房Wを圧迫した状態とする。
【0048】
図6Bに示すように、超音波プローブ50で低剛性部21Aを押圧しない状態では、低剛性部21Aは位置P1にあり、被検者の胸壁は位置P1に応じた位置となる。X線撮影はこの位置P1で行われる。一方、超音波プローブ50で低剛性部21Aを押圧した状態では、低剛性部21Aは位置P1から伸びて位置P2となり、被検者の胸壁は位置P2に応じた位置となる。超音波検査はこの位置P2で行われるため、位置P1と比べて、胸壁を圧迫した状態で超音波検査を行うことができる。
【0049】
図7Aは、被検者の乳房Wを側方から圧迫板20で圧迫した状態を示す図である。
図7Bは、
図7Aに示す超音波プローブ50により圧迫板の低剛性部を押圧した状態を示す部分断面図である。
【0050】
図7A及び
図7Bに示すように、被検者の乳房Wを側方から圧迫板20で圧迫することも可能である。つまり、圧迫板20の壁面部21を被検者の胸壁に対して略直交する向き、つまり、底面部22を被検者の胸壁に押し当てる向きにして超音波撮影することも可能である。
【0051】
図8Aは、変形前の低剛性部21Aの状態の一例を模式的に示す図である。
図8Bは、変形後の低剛性部21Aの状態の一例を模式的に示す図である。
【0052】
変形前の低剛性部21Aは、
図8Aに示すように、マンモグラフィ装置10が備える撮影台40の端面E1と、撮影台40の有効撮影領域R1との間にある。一方、変形後の低剛性部21Aの少なくとも一部は、
図8Bに示すように、撮影台40の端面E1より被検者側に移動可能とする。
【0053】
X線撮影においては、圧迫板20の低剛性部21A(つまり、壁面部21)は、
図8Aに示すように、有効撮影領域R1の外側で、かつ、端面E1の内側が最適位置とされる。一方、超音波撮影においては、
図8Bに示すように、低剛性部21Aを端面E1よりも被検者側へ移動させる。このように低剛性部21Aの位置を部分的に移動させることにより、X線撮影のときはより広い領域をX線撮影することが可能とされ、超音波撮影のときは被検者の胸壁を圧迫した状態で撮影することが可能とされる。
【0054】
このように本実施形態によれば、圧迫板の胸壁面の少なくとも一部が変形可能であるため、超音波検査の際に超音波プローブで押圧した部分だけをX線撮影の位置から被検者の胸壁側に移動させることができる。このため、超音波プローブを被検者の胸壁に密着させて超音波検査を行うことができる。
【0055】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、圧迫板の壁面部全体を低剛性部として構成する形態について説明する。
【0056】
図9Aは、第2の実施形態に係る圧迫板20Aの外観の一例を示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aに示す圧迫板20Aの壁面部周辺を示す部分断面図である。
【0057】
図9A及び
図9Bに示すように、本実施形態に係る圧迫板20Aは、壁面部21の全体が低剛性部21Bとして構成されている。つまり、低剛性部21Bは、底面部22から延在して壁面部21の全体を構成している。なお、本実施形態においても、低剛性部21Bは、底面部22の一部を含むようにしてもよい。
【0058】
このように本実施形態によれば、圧迫板の胸壁面全体が変形可能とされる。これにより、より広い範囲で超音波検査を行うことができる。
【0059】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、圧迫板の壁面部にゲルシート等の中間部材を設ける形態について説明する。
【0060】
図10は、第3の実施形態に係る圧迫板20Bの壁面部周辺を示す部分断面図である。
【0061】
図10に示すように、本実施形態に係る圧迫板20Bは、被検者の乳房Wと超音波プローブ50との間に介在させるための中間部材51、52を備えるようにしてもよい。中間部材51、52は、壁面部21(低剛性部21B又は低剛性部21A)における、胸壁面S1、及び、胸壁面S1の反対側の面である反対面S2の少なくとも一方に設けられる。
図11の例では、胸壁面S1及び反対面S2の両方に設けられているが、いずれか一方の面だけでもよい。
【0062】
中間部材51、52には、例えば、ゲル状(又はゼリー状)の音響マッチング材が収納されたゲルシート等が用いられる。ここでいう音響マッチング材とは、低剛性部21Bと超音波プローブ50との間の空間を満たすと共に、被検者と低剛性部21Bとの間の空間を満たし、被検者と音響的に結合させる部材である。音響マッチング材は、被検者、低剛性部21B、及び超音波プローブ50に音響インピーダンスが近い材料であることが好ましい。中間部材51を設けることにより、被検者の乳房Wと圧迫板20Bとの密着性を向上させることができる。一方、中間部材52を設けることにより、圧迫板20Bと超音波プローブ50との密着性を向上させることができる。
【0063】
このように本実施形態によれば、圧迫板の壁面部にゲルシート等の中間部材が設けられる。これにより、被検者の乳房と圧迫板との密着性、あるいは、圧迫板と超音波プローブとの密着性を向上させることができる。
【0064】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、圧迫板の壁面部の一部を開口とする形態について説明する。
【0065】
図11は、第4の実施形態に係る圧迫板20Cの外観の一例を示す斜視図である。
【0066】
図11に示すように、本実施形態に係る圧迫板20Cは、壁面部21を備え、壁面部21の一部が開口している。つまり、壁面部21の一部に開口Opが設けられている。また、底面部22の一部も開口とし、壁面部21の一部と底面部22の一部により開口Opを構成してもよい。
【0067】
本実施形態に係る圧迫板20Cは、上述の低剛性部21Aに代えて、開口Opを設けることにより、超音波プローブ50を直接被検者の乳房Wに密着させることができる。低剛性部21Aを介さないため、胸壁まで含めたより精密な超音波検査を行うことができる。
【0068】
このように本実施形態によれば、圧迫板の壁面部に低剛性部に代えて開口が設けられる。このため、超音波プローブを直接被検者の乳房に密着させることができる。
【0069】
その他、上記各実施形態で説明した圧迫板20、マンモグラフィ装置10、及び画像撮影システム100の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
【0070】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0071】
(付記1)
マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、
被検者の胸壁に対向する壁面部と、
前記壁面部につながる底面部と、
を備え、
前記壁面部の少なくとも一部が、前記底面部から延在する低剛性部であって、剛性が前記圧迫板の他の部分の剛性よりも低い前記低剛性部である
圧迫板。
(付記2)
前記低剛性部は、弾性変形可能な部材で構成され、
変形前の前記低剛性部は、前記マンモグラフィ装置が備える撮影部の端面と、当該撮影部の有効撮影領域との間にあり、
変形後の前記低剛性部の少なくとも一部は、前記撮影部の端面より前記被検者側に移動可能とする
付記1に記載の圧迫板。
(付記3)
前記低剛性部は、前記底面部の一部を含む
付記1又は付記2に記載の圧迫板。
(付記4)
前記被検者と超音波プローブとの間に介在させるための中間部材を更に備え、
前記中間部材は、前記壁面部における、前記被検者の胸壁に対向する胸壁面、及び、当該胸壁面の反対側の面の少なくとも一方に設けられている
付記1~付記3の何れか1に記載の圧迫板。
(付記5)
マンモグラフィ装置に用いる圧迫板であって、
被検者の胸壁に対向する壁面部を備え、
前記壁面部の一部が開口している
圧迫板。
(付記6)
付記1~付記5の何れか1に記載の圧迫板を備えたマンモグラフィ装置。
(付記7)
超音波プローブを備えた超音波画像撮影装置と、
付記1~付記5の何れか1に記載の圧迫板を備えたマンモグラフィ装置と、
を含む画像撮影システム。
【符号の説明】
【0072】
10 マンモグラフィ装置
20、20A~20C 圧迫板、20F 面
21 壁面部、21A、21B 低剛性部
22 底面部
23、24、25 側壁部
30 放射線検出器
31 モータ
32 圧迫板駆動部
33 圧迫力検出センサ
36 放射線照射部、36R 放射線源
38 ボールネジ
40 撮影台、40A 撮影面
42 アーム部
44 基台
45 軸部
46 圧迫ユニット
50 超音波プローブ
51、52 中間部材
60 超音波画像撮影装置
100 画像撮影システム
S1 胸壁面
S2 反対面
Op 開口
E1 端面
R1 有効撮影領域