(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123700
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031323
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】春原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 里駆
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 駿
(72)【発明者】
【氏名】安藤 さくら
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA07
5F131CA33
5F131CA42
5F131EB11
5F131EB12
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反りを低減可能な基板固定装置を提供する。
【解決手段】基板固定装置1は、ベースプレート10と、ベースプレート10上に設けられた発熱部30と、発熱部30上に設けられた金属層40と、金属層40上に設けられた静電チャック60と、を有する。金属層40は、基板固定装置1の反りを低減するためにベースプレート10と同じ材料から構成されている。また、発熱部30は、絶縁層31及び絶縁層31に内蔵された発熱体32を備える。静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性をより向上するために、金属層40の厚さは、発熱体32の厚さの5倍以上であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた金属層と、
前記金属層上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記金属層は、前記ベースプレートと同じ材料から構成されている、基板固定装置。
【請求項2】
前記発熱部は、絶縁層、及び前記絶縁層に内蔵された発熱体、を備え、
前記金属層の厚さは、前記発熱体の厚さの5倍以上である、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記金属層の厚さは、前記発熱体の厚さの10倍以上である、請求項2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記金属層の厚さは、100μm以上1000μm以下である、請求項2又は3に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記絶縁層の前記静電チャック側の面の全体に直接設けられている、請求項2又は3に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記ベースプレートから前記静電チャックまでを貫通する貫通孔が設けられ、
前記金属層は、前記貫通孔に対応する位置に開口部を有する、請求項5に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記金属層の側面は、外部に露出している、請求項6に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。
【0003】
このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックにより、吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0004】
基板固定装置の一例として、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものが挙げられる。この基板固定装置において、発熱体は、例えば、静電チャックに隣接して設けられた絶縁層に内蔵されている。また、発熱体の発する熱を均一化するために、発熱体よりも静電チャック側に銅等からなる金属層が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構造の基板固定装置において、反りが問題となる場合があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、反りを低減可能な基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本基板固定装置は、ベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、前記発熱部上に設けられた金属層と、前記金属層上に設けられた静電チャックと、を有し、前記金属層は、前記ベースプレートと同じ材料から構成されている。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、反りを低減可能な基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その3)である。
【
図5】温度の均一性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、
図1(a)は全体の断面図、
図1(b)は部分断面図である。
図1を参照するに、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、発熱部30と、金属層40と、接着層50と、静電チャック60とを有している。
【0013】
ベースプレート10は、発熱部30や静電チャック60を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20mm以上50mm以下程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウム、銅、チタン等の金属から形成することができる。これらの中でも、安価で加工しやすいアルミニウムを用いることが好ましい。
【0014】
ベースプレート10は、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック60上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0015】
ベースプレート10の内部に、水路15が設けられてもよい。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続される。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック60上に吸着されたウェハを冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電チャック60上に吸着されたウェハを冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0016】
発熱部30は、ベースプレート10上に設けられている。発熱部30は、例えば、接着層20を介して、ベースプレート10に固着されている。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、2mm程度とすることができる。接着層20の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20は、複数の接着層が積層した積層構造としてもよい。例えば、接着層20を熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、金属製のベースプレートとの熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0017】
発熱部30は、絶縁層31、及び絶縁層31に内蔵された発熱体32を備えている。発熱体32の周囲は、絶縁層31に被覆され、外部から保護されている。
【0018】
絶縁層31としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層31の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。又、絶縁層31の厚さは100~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0019】
発熱体32は、基板固定装置1の外部から電圧を印加することで発熱し、後述の基体61の載置面61aが所定の温度となるように加熱する。発熱体32は、例えば、基体61の載置面61aの温度を250℃~300℃程度まで加熱することができる。発熱体32の材料としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等を用いることができる。発熱体32は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。
【0020】
なお、発熱体32と絶縁層31との高温下での密着性を向上するため、発熱体32の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体32の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体32の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0021】
金属層40は、発熱部30上に設けられている。金属層40は、ベースプレート10と同じ材料から構成されている。金属層40は、例えば、アルミニウム、銅、チタン等の金属から形成することができる。金属層40をベースプレート10と同じ材料から構成することにより、基板固定装置1の反りを低減することができる。金属層40の厚さは、ベースプレート10の厚さよりも薄いが、反りを低減する観点から、金属層40の厚さはベースプレート10の厚さの1/200以上であることが好ましい。
【0022】
金属層40は、発熱体32の発する熱を均一化して拡散する(不均一な発熱状態の緩和を行う)層である。金属層40は、絶縁層31の静電チャック60側の面の全体に直接設けることが好ましい。これにより、発熱体32の厚さ方向のばらつき等により発熱ムラが発生した場合でも、静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性を向上することができる。金属層40の側面は、基板固定装置1の外部に露出してもよい。
【0023】
金属層40の厚さは、発熱体32の厚さの5倍以上であることが好ましい。これにより、静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性をより向上することができる。金属層40の厚さは、発熱体32の厚さの10倍以上であることがより好ましい。これにより、静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性をさらに向上することができる。
【0024】
金属層40の厚さは、例えば、100μm以上とすることができる。金属層40の厚さは、200μm以上とすることが好ましい。金属層40の厚さは、500μm以上とすることがより好ましい。金属層40が厚いほど、静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性を向上することができる。一方、金属層40が厚すぎると、基板固定装置1の全体が厚くなり過ぎるため、金属層40の厚さは、1000μm以下とすることが好ましい。なお、発熱体32は、配線形成性の観点から、厚く形成することが困難であるため、100μm以下とすることが好ましい。発熱体32の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下とすることができる。
【0025】
なお、
図1(b)に示すように、基板固定装置1において、ベースプレート10から静電チャック60までを貫通する貫通孔1xが設けられる場合がある。貫通孔1xは、例えば、リフトピン孔やガス孔等である。この場合、金属層40は、貫通孔1xに対応する位置に開口部40xを有する。貫通孔1x及び開口部40xは、例えば、載置面61a側から視て円形である。この場合、開口部40xの開口径は、貫通孔1xの孔径より大きくてもよいが、貫通孔1xの孔径と同一であることが好ましい。これにより、絶縁層31の上面と金属層40の下面との接触面積を拡大し、静電チャック60の載置面61aにおける温度の均一性を向上することができる。
【0026】
静電チャック60は、金属層40上に設けられている。静電チャック60は、例えば、接着層50を介して、金属層40に固着されている。接着層50としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層50の厚さは、例えば、2mm程度とすることができる。接着層50の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層50は、複数の接着層が積層した積層構造としてもよい。例えば、接着層50を熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、金属製のベースプレートとの熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0027】
静電チャック60は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック60の平面形状は、例えば、円形とすることができる。静電チャック60の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチ程度とすることができる。静電チャック60は、基体61と、静電電極62とを有している。静電チャック60は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック60は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0028】
基体61は誘電体であり、基体61としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体61の厚さは、例えば、1~10mm程度、基体61の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度とすることができる。
【0029】
静電電極62は、薄膜電極であり、基体61に内蔵されている。静電電極62は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック60の基体61の載置面61a上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極62に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極62は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極62の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0030】
[基板固定装置の製造方法]
図2~
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。
図2~
図4を参照しながら、基板固定装置1の製造工程について説明する。
【0031】
まず、
図2(a)に示す工程では、予め水路15等を形成したベースプレート10を準備し、ベースプレート10上に接着層20(未硬化)を形成する。接着層20の材料や厚さは、前述のとおりである。
【0032】
次に、
図2(b)に示す工程では、ベースプレート10に接着層20を介して絶縁樹脂フィルム311をラミネートして接着層20を硬化させる。絶縁樹脂フィルム311は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム311は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311は接着層20上に仮固定される。
【0033】
絶縁樹脂フィルム311としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁樹脂フィルム311にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁樹脂フィルム311のガラス転移温度は250℃以上とすることが好ましい。又、熱伝導性能を高める(熱伝導速度を速める)観点から、絶縁樹脂フィルム311の厚さは60μm以下とすることが好ましく、絶縁樹脂フィルム311の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0034】
次に、
図2(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に金属箔321を配置する。金属箔321は最終的に発熱体32となる層であるため、金属箔321の材料は、既に例示した発熱体32の材料と同様である。金属箔321の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、100μm以下とすることが好ましい。金属箔321は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311上に仮固定される。
【0035】
なお、絶縁樹脂フィルム311上に配置する前に、金属箔321の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)を粗化しておくことが好ましい。もちろん、金属箔321の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、金属箔321の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0036】
又、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の必要な領域を選択的に粗化することができる。そこで、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の全領域に対して粗化を行う必要はなく、最低限、発熱体32として残す領域に対して粗化を行えば足りる(つまり、エッチングで除去される領域に対してまで粗化を行う必要はない)。
【0037】
次に、
図3(a)に示す工程では、金属箔321をパターニングし、発熱体32を形成する。発熱体32は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。具体的には、例えば、金属箔321上の全面にレジストを形成し、レジストを露光及び現像し、発熱体32として残す部分のみを被覆するレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンに被覆されていない部分の金属箔321をエッチングにより除去する。例えば、金属箔321の材料が銅である場合には、金属箔321を除去するエッチング液としては、塩化第二銅エッチング液や塩化第二鉄エッチング液等を用いることができる。
【0038】
その後、レジストパターンを剥離液により剥離することにより、絶縁樹脂フィルム311の所定位置に発熱体32が形成される(フォトリソグラフィ法)。フォトリソグラフィ法により発熱体32を形成することにより、発熱体32の幅方向の寸法のばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、エッチングにより形成された発熱体32の断面形状は、例えば、略台形状とすることができる。この場合、絶縁樹脂フィルム312に接する面と、その反対面との配線幅の差は、例えば、10~50μm程度とすることができる。発熱体32の断面形状をシンプルな略台形状とすることにより、発熱分布を改善することができる。
【0039】
次に、
図3(b)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311に、発熱体32を被覆する絶縁樹脂フィルム312をラミネートする。絶縁樹脂フィルム312は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム312の材料は、例えば、絶縁樹脂フィルム311と同様とすることができる。但し、絶縁樹脂フィルム312の厚さは、発熱体32を被覆できる範囲内で適宜決定することができ、必ずしも絶縁樹脂フィルム311と同じ厚さにする必要はない。
【0040】
次に、
図3(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311及び312をベースプレート10側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム311及び312を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、絶縁樹脂フィルム311及び312が一体化して絶縁層31となり、発熱体32の周囲が絶縁層31に被覆された発熱部30が形成され、発熱部30の絶縁層31とベースプレート10とが接着層20を介して接合される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム311及び312、並びに接着層20の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。
【0041】
なお、絶縁樹脂フィルム311及び312、並びに接着層20をベースプレート10側に押圧しながら加熱硬化させることにより、発熱体32の有無の影響による絶縁層31の上面(ベースプレート10と接しない側の面)の凹凸を低減して平坦化することができる。絶縁層31の上面の凹凸は、7μm以下とすることが好ましい。絶縁層31の上面の凹凸を7μm以下とすることにより、次工程で絶縁層31と金属層40との間に気泡を巻き込むことを防止できる。
【0042】
次に、
図4(a)に示す工程では、絶縁層31上に金属層40を形成する。金属層40の材料や厚さは、前述のとおりである。金属層40は、例えば、金属板または金属箔を絶縁層31の上面に貼り付けることで形成できる。金属層40は、印刷法、めっき法、スパッタ法等により、絶縁層31の上面に形成してもよい。なお、必要に応じ、金属層40に開口部40xを設けることができる。
【0043】
次に、
図4(b)に示す工程では、金属層40上に接着層50(未硬化)を形成する。接着層50の材料や厚さは、前述のとおりである。その後、接着層50上に、基体61に静電電極62を内蔵する静電チャック60を配置し、接着層50を硬化させる。これにより、基板固定装置1が完成する。なお、静電チャック60は、例えば、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により作製することができる。接着層50との密着性を向上するために、静電チャック60の下面にブラスト処理等を施し、粗化してもよい。
【0044】
なお、
図2~
図4に示した基板固定装置1の製造方法は一例であり、基板固定装置1は、他の製造方法により作製してもよい。
【0045】
次に、発明者らによる温度の均一性に関する検討結果について説明する。発明者らは、
図1に示す基板固定装置の構造において、発熱体の厚さに対する金属層の厚さの比率を変えた場合の、基体の載置面の温度の均一性について、3条件でシミュレーションを行った。具体的には、発熱体の厚さを50μmとし、発熱体の厚さに対する金属層の厚さを0倍(すなわち金属層を設けない)、5倍、及び10倍としたときの、基体の載置面の温度の均一性についてシミュレーションを行った。なお、ベースプレート及び金属層の材料としては、アルミニウムを想定した。
【0046】
図5は、温度の均一性のシミュレーション結果を示す図である。また、表1は、
図5のデータをまとめたものである。
【0047】
【表1】
図5において、横軸は基体の載置面に温度測定点を均一配置したときにおける目標温度との差を示しており、縦軸は密度を示している(すべてを足すと100になる)。
【0048】
図5及び表1において、0倍と5倍とを比較すると、5倍の方が目標温度に対する温度分布のレンジが狭くなることが確認できる。すなわち、金属層を設けることで基体の載置面の温度の均一性が向上することが確認できる。
【0049】
また、
図5及び表1において、5倍と10倍とを比較すると、10倍の方が目標温度に対する温度分布のレンジが狭くなることが確認できる。すなわち、発熱体の厚さに対する金属層の厚さを厚くするほど、基体の載置面の温度の均一性が向上することが確認できる。
【0050】
図5及び表1の解析結果から、リファレンスの条件1(金属層なし)の温度分布レンジと比較して、条件2(金属板5倍厚さ)の温度分布のレンジは44%程度小さくなっていることが分かる。また、リファレンスの条件1の温度分布レンジと比較して、条件3(金属板10倍厚さ)の温度分布のレンジは59%程度小さくなっていることが分かる。
【0051】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0052】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 基板固定装置
1x 貫通孔
10 ベースプレート
15 水路
15a 冷却水導入部
15b 冷却水排出部
20,50 接着層
30 発熱部
31 絶縁層
32 発熱体
40 金属層
40x 開口部
60 静電チャック
61 基体
61a 載置面
62 静電電極
311,312 絶縁樹脂フィルム
321 金属箔