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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123710
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】排紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/30 20060101AFI20240905BHJP
   B65H 31/24 20060101ALI20240905BHJP
   B65H 29/48 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B65H31/30
B65H31/24
B65H29/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031342
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏太
【テーマコード(参考)】
3F054
3F106
【Fターム(参考)】
3F054AA01
3F054AC01
3F054BA04
3F054BC02
3F054BC04
3F054BC09
3F054BD01
3F054BF00
3F054BG11
3F054BJ02
3F054BJ04
3F054DA01
3F106LA01
3F106LB01
(57)【要約】
【課題】車椅子を使用しているユーザーが排紙トレイ上の用紙を容易に取り出すことができる排紙装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】排紙装置たるプリントポスト2は、画像形成処理などの所定の処理が施された用紙Pが排出される排紙トレイが上下方向に4段設けられている。各排紙トレイ7~10は、ユーザーが装置にアクセスする側である装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持されている。また、各排紙トレイ7~10は、装置の前側にスライドして排紙トレイを前側に延長する延長部材46を備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理が施された用紙を排紙トレイに排出する排紙装置において、
前記排紙トレイは、ユーザーが装置にアクセスする側である装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持され、
前記排紙トレイは、装置の前側にスライドして前記排紙トレイを前記前側に延長する延長部材を備えることを特徴とする排紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排紙装置において、
前記延長部材は、前記排紙トレイ上の用紙の落下を防止する落下抑制部を有することを特徴とする排紙装置。
【請求項3】
請求項1に記載の排紙装置において、
前記延長部材は、前記排紙トレイ上の用紙を前記前側へ搬送する搬送部材を有することを特徴とする排紙装置。
【請求項4】
請求項1に記載の排紙装置において、
前記排紙トレイを電動で回動させることを特徴とする排紙装置。
【請求項5】
請求項1に記載の排紙装置において、
複数の排紙トレイが、上下方向に並べて配置されており、
複数の排紙トレイのうち、少なくとも最上位に位置する排紙トレイが、装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持され、前記延長部材を備えることを特徴とする排紙装置。
【請求項6】
請求項1に記載の排紙装置において、
前記排紙トレイの回動の支点が、装置の前後方向中央よりも後側に位置することを特徴とする排紙装置。
【請求項7】
用紙に対して画像を形成する画像形成手段と、
画像が形成された用紙を排紙する排紙装置とを備えた画像形成装置において、
前記排紙装置として、請求項1に記載の排紙装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記排紙装置は、画像形成手段の上部に位置することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排紙装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の処理が施された用紙を排紙トレイに排出する排紙装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記排紙装置として、ユーザーが装置にアクセスする側である装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持された排紙トレイを備えたものが記載されている。排紙トレイに排紙された用紙を取り出すときは、前側が下降するように排紙トレイを回動させ上記傾斜姿勢を取らせる旨が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車椅子を使用しているユーザーは、立っている人に比べて、低い姿勢となる。そのため、排紙装置が画像形成装置本体の上部に取り付けられるなどして、排紙トレイが高い位置に位置する場合、排紙トレイを回動させて前側を降下させただけでは、
車椅子を使用しているユーザーが排紙トレイ上の用紙を容易に取り出すことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、所定の処理が施された用紙を排紙トレイに排出する排紙装置において、前記排紙トレイは、ユーザーが装置にアクセスする側である装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持され、前記排紙トレイは、装置の前側にスライドして前記排紙トレイを前記前側に延長する延長部材を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車椅子を使用しているユーザーが排紙トレイ上の用紙を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の画像形成装置の正面図。
図2】プリントポストの概略外観図。
図3】プリントポストの概略構成図。
図4】従来装置の不具合について説明する図。
図5】本実施形態のプリントポストの要部を示す正面図。
図6】回動機構の概略構成図。
図7】延長部材のスライドについて説明する図。
図8】椅子を使用しているユーザーが、車椅子に座った状態で、第四排紙トレイから用紙を取り出す様子を説明する図。
図9】変形例1の概略構成図。
図10】変形例2の概略構成図。
図11】変形例3の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0009】
以下、本発明を、排紙装置を備えた画像形成装置に適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置100の正面図である。なお、以下の説明では、装置の前後方向をX方向、装置の左右方向をY方向、装置の上下方向をZ方向として説明する。
図1に示す画像形成装置100は、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を併有しており、パソコン等の外部装置からの入力データを基にフルカラー画像やモノクロ画像を用紙に記録出力することができる。
【0010】
画像形成装置100は、給紙部60、画像形成部1および排紙装置たるプリントポスト2を備えている。プリントポスト2は、画像形成部1の上面に設けられている。プリントポスト2を、着脱可能に取り付けられる増設ユニットとして用いてもよい。
【0011】
給紙部60は、例えばそれぞれカット状の記録紙を収納する複数段の給紙カセット60a~60dと、それらのうち任意の給紙カセットから記録紙をピックアップして給紙する複数組の給紙ローラとを備える。また、給紙部60は、給紙ローラのいずれかから給紙された記録紙を画像形成部1の所定の画像形成位置まで搬送する各種ローラ等を含む給紙経路を有している。
【0012】
画像形成部1は、例えば露光ユニットと、複数の感光体ドラムと、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のトナーを用いる現像装置と、転写ベルト、二次転写部および定着部等とを備えている。
【0013】
画像形成部1は、パソコン等の外部装置から入力された画像データに基づき、例えば、露光ユニットにより各色の感光体ドラムを露光して各感光体ドラム上に静電潜像を形成し、現像装置の各色の現像ユニットで各感光体ドラムの潜像上にトナーを供給して現像する。また、画像形成部1は、各色の感光体ドラム上のトナー像を転写ベルトに一次転写し、二次転写部で用紙上に重ねて二次転写した後、定着部により用紙上のトナー像を加熱および加圧して定着させ、カラー画像を形成できるようになっている。以上のような電子写真方式の画像形成部1に代えインクジェット方式などの他の記録方式を採用した画像形成部を用いてもよい。
【0014】
プリントポスト2は,4段の排紙トレイ7~10と反転トレイ5を備えている。各排紙トレイ7~10は,上下方向に所定の間隔を空けて並べて設けられている。本実施形態では、4段の排紙トレイを設けているが、3段以下であってもよいし、5段以上であってもよい。プリントポスト2は,例えば、ユーザごとのシートの排出に用いられる。反転トレイ5は、両面印刷時に、片面に画像が形成された用紙をスイッチバックして、画像形成部1の反転経路へ搬送するためのものである。
【0015】
用紙の排出先として、プリントポスト2の排紙トレイが指定されているときは、画像が形成された用紙は、プリントポスト2へ搬送され、指定された排紙トレイに排出される。一方、排出先が指定されていない場合や、画像形成部1の上部に設けられた排紙部が指定されている場合は、画像が形成された用紙は、画像形成部1の上部に設けられた排紙部に排出される。
【0016】
図2は、プリントポスト2の概略外観図である。
図2に示すように、各排紙トレイ7~10には、それぞれ紙有無センサ32、33、34、35が設けられている。プリントポスト2の前側側面には、各排紙トレイ7~10に対応する4つの紙有無LED36~39が、上下方向(Z方向)に所定の間隔を開けて設けられている。紙有無センサが用紙を検知すると、その紙有無センサが設けられた排紙トレイに対応する紙有無LEDが点灯し、どの排紙トレイに用紙が排紙されたかわかるようになっている。
【0017】
図3は、プリントポスト2の概略構成図である。
プリントポスト2は、上下方向(Z方向)に延びる排紙経路6と、反転経路4とを有している。排紙経路6は、画像形成部1の用紙排出接続経路3bに接続され、反転経路4は、画像形成部1の用紙反転接続経路3aに接続されている。
【0018】
排紙経路6には、下搬送ローラ対11、中搬送ローラ対12、上搬送ローラ対13が配設されている。また、排紙経路6には、用紙を検出する入口センサ21、搬送下センサ22、搬送上センサ23が配設されている。プリントポスト2で紙詰まりが発生したときは、排紙経路6のどの部分に用紙があるかを入口センサ21、搬送下センサ22および搬送上センサ23の用紙検出結果から把握し、ユーザーに対してシートが詰まっているありかを知らせる。
【0019】
また、プリントポスト2は、最下位に配置された第一排紙トレイ7に用紙を排出する第一排紙ローラ対17、下から2番目に配置された第二排紙トレイ8に用紙を排出する第二排紙ローラ対18を有している。また、下から3番目に配置された第三排紙トレイ9に用紙を排出する第三排紙ローラ対19、最上位に配置された第四排紙トレイ10に用紙を排出する第四排紙ローラ対20を備えている。
【0020】
また、プリントポスト2は、排紙経路6を搬送されてきた用紙を、第一排紙ローラ対17へ案内するための第一分岐爪14、排紙経路6を搬送されてきた用紙を、第二排紙ローラ対18へ案内するための第二分岐爪15を有している。また、プリントポスト2は、第三排紙ローラ対19へ案内するための第三分岐爪16を有している。
【0021】
各排紙トレイ7~10には、排紙された用紙の満杯状態を検知する機構が設けられている。満杯状態を検知する機構は、満杯検知フィラー24~27と、満杯検知フィラーを検出するセンサ28~31とで構成されている。
【0022】
各満杯検知フィラー24~27は、回転自在にプリントポスト2に設けられており、排紙トレイに積載された用紙の枚数が所定量となると、満杯検知フィラーの先端が、排紙トレイに積載された用紙の束の最上位の用紙に接触する。この状態から、用紙がさらに排紙トレイに排出されていくと、満杯検知フィラーが図中時計回りに回動する。そして、排紙トレイが満杯状態となると、センサがフィラーを検知し、満杯状態であることが検出される。満杯状態を検出したときは、満杯状態が検出された排紙トレイへの用紙の排紙を停止し、ユーザーに排紙トレイの用紙を取り出すように指示を出す。ユーザーへの指示方法としては、例えば、画像形成部1の操作パネルに、排紙トレイの用紙を取り出すように表示を行うことが挙げられる。
【0023】
例えば、用紙の排出先として、プリントポスト2の第四排紙トレイ10が指定されているときは、ソレノイドなどの駆動源によって画像形成部1の反転分岐爪3を図に示す位置に位置させ、画像が形成された用紙を排紙経路6へ搬送する。
【0024】
また、搬送モータの回動によって下搬送ローラ対11、中搬送ローラ対12および上搬送ローラ対13を回転駆動する。そして、入口センサ21が用紙を検出したら、排紙モータを回転駆動させて、第一~第四排紙ローラ対を回転駆動し、指定された第四排紙トレイ10に用紙を排紙する。
【0025】
指定された用紙の排出先が、第三排紙トレイ9の場合は、ソレノイドなどの駆動源によって第三分岐爪16を図中反時計回りに回動させ、排紙経路6をふさいで用紙を第三排紙ローラ対19へ案内する姿勢にする。指定された用紙の排出先が、第二排紙トレイ8の場合は、第二分岐爪15を用紙を第二排紙ローラ対18へ案内する姿勢にし、指定された用紙の排出先が、第一排紙トレイ7の場合は、第一分岐爪14を用紙を第一排紙ローラ対17へ案内する姿勢にする。
【0026】
両面印刷の場合は、ソレノイドなどの駆動源によって画像形成部1の反転分岐爪3を図中反時計に回動させ、反転分岐爪3を、用紙排出接続経路3bをふさいで用紙を反転経路4へ案内する姿勢にさせる。
【0027】
片面に画像が形成された用紙は、反転分岐爪3により反転経路4へ案内され、画像形成部1内の搬送ローラ対で用紙の後端側を挟持した状態で、反転トレイ5へ用紙の先端側だけ排出する。その後、用紙の後端側を挟持した搬送ローラ対を逆回転させ、用紙をスイッチバックして、用紙を画像形成部1内の再搬送経路へ搬送し、画像形成部1で用紙の第二面(裏面)に画像を形成する。そして、両面に画像が形成された用紙は、上述と同様にして、指定された排紙トレイへ搬送される。
【0028】
図4は、従来装置の不具合について説明する図である。
図4に示すように、プリントポスト2が画像形成部1の上部に配置される構成においては、プリントポスト2の排紙トレイの位置が高くなる。その結果、車椅子を使用しているユーザーが、車椅子に座った低い姿勢で、プリントポスト2の排紙トレイにアクセスするのが困難となり、プリントポストの排紙トレイから用紙を取り出すのが困難であった。特に、最上段の第四排紙トレイ10に排紙された用紙を取り出すのは、困難であった。また、車椅子を使用しているユーザーに限らず、身長の低いユーザーや、腕を上げられない等、腕に障害があるユーザーにとっても高い位置に位置するプリントポスト2の排紙トレイからの用紙の取り出しが困難な場合もある。
【0029】
特許文献1には、排紙トレイから用紙を取り出すとき、排紙トレイの手前側が下方に位置するよう排紙トレイを傾けて、排紙トレイの用紙を取り出しやすくするものが記載されている。しかし、排紙トレイを傾けただけでは、排紙トレイの用紙を十分に下側に位置させることができず、依然として、車椅子に座った状態で、排紙トレイの用紙を取り出し難かった。
【0030】
そこで、本実施形態では、排紙トレイの手前側が下方に位置するよう排紙トレイを傾き可能とし、さらに、排紙トレイに手前側にスライド可能な延長部材を設け、排紙トレイを手前側に延長できるようにした。以下、本実施形態の特徴部について、図面を用いて説明する。
【0031】
図5は、本実施形態のプリントポスト2の要部を示す正面図である。
図5に示すように、各排紙トレイ7~10には、延長部材46がユーザーが装置にアクセスする側である手前側にスライド可能に収納されている。また、プリントポスト2の前側側面の下部には、各排紙トレイに対応する4つの操作レバー41が設けられている。操作レバー41は具体的には画像形成部1と排紙トレイのうち最下部の排紙トレイ7との間の位置、好ましくは排紙トレイ7とその下部の反転トレイ5との間に4つの操作レバー41が設けられている。4つの操作レバー41の並びは水平にしてあり、各々の操作レバー付近の下側には各々の排紙トレイ7、8、9、10に対応する排紙トレイが特定できる文字表記がしてある。なお操作レバー41の並びを垂直にして、下側から上側に並ぶ排紙トレイ7、8、9、10に対応するように下側から上側に操作レバー41を並べてもよい。ユーザーが操作レバー41を操作することで、操作した操作レバーに対応する排紙トレイが、Y軸回りに回動し、排紙トレイの手前側が下に位置するように傾く。
【0032】
図6は、排紙トレイを回動させる回動機構の概略構成図である。図6(a)は、排紙トレイが装置の前後方向(X方向)に傾斜していない状態を示しており、図6(b)は、排紙トレイが装置の前後方向(X方向)に傾斜した状態を示している。なお、以下の説明では、第四排紙トレイ10について説明するが、他の排紙トレイについても同様である。
【0033】
第四排紙トレイ10の排紙方向上流側端部の前後方向中央には、回動の中心となる中心軸42が設けられている。操作レバーには、リンク部材41aの一端が接続されており、リンク部材41aの他端は、駆動プーリ43に接続されている。この駆動プーリ43と中心軸42には、タイミングベルト44が張架されている。
【0034】
図6(b)に示すように、第四排紙トレイ10の用紙を取り出すとき、ユーザーは、第四排紙トレイ10に対応する操作レバー41を下側に押し込む。操作レバー41を押し込むと、リンク部材41aが持ち上がり、駆動プーリ43が、図中反時計回りに回動する。この駆動プーリ43の回転により、タイミングベルト44が図中反時計回りに回動し、排紙トレイ10の中心軸42が図中反時計回りに回動する。その結果、第四排紙トレイ10が、中心軸42とともに図中反時計回りに回動し、手前側が下側に位置するように、第四排紙トレイ10が傾く。第四排紙トレイ10を傾斜させたとき、ひとつ下段の第三排紙トレイ9の手前側端部に第四排紙トレイ10が突き当たらない回動量となるように、操作レバー41の押し込み量が調整されている。
なお、操作レバー41を押し込んだ位置で留めるストッパを設け、排紙トレイが、手前側が下側に位置する傾斜姿勢を維持するようにするのが好ましい。
【0035】
なお、回動機構の構成は、上述した構成に限られない。例えば、排紙トレイの後側に回動機構を接続して、操作レバーを操作することで、排紙トレイの後側を持ち上げ、排紙トレイを傾斜させる構成でもよい。また、排紙トレイの手前側に回動機構を接続して、操作レバーを操作することで、排紙トレイの手前側を押し下げ排紙トレイを傾斜させる構成でもよい。
【0036】
図7は、延長部材46のスライドについて、説明する図である。
図7(a)は、第四排紙トレイ10が前後方向(X方向)に傾く前の状態を示しており、図7(b)は、第四排紙トレイ10が前後方向に傾いた状態を示している。
図7(a)に示すように、第四排紙トレイ10が前後方向に傾いていないときは、延長部材46は排紙トレイ10の内部に収納されている。
【0037】
ユーザーが第四排紙トレイ10に対応する操作レバー41を操作して、手前側が下方に位置するように第四排紙トレイ10を前後方向に傾斜させると、図7(b)に示すように、延長部材46が自重で手前側にスライドする。その結果、第四排紙トレイ10から延長部材46が引き出される。また、第四排紙トレイ10を前後方向に傾斜させることで、第四排紙トレイ10上の用紙Pが自重により手前側へ移動し、第四排紙トレイ10から引き出された延長部材46へ移動する。
【0038】
図8は、車椅子を使用しているユーザーが、車椅子に座った状態で、第四排紙トレイ10から用紙を取り出す様子を説明する図である。
図8に示すように、第四排紙トレイ10の手前側が下方に位置するように傾斜させ、延長部材46が手前側に引き出され、引き出された延長部材46に用紙Pが移動することで、延長部材46がない場合に比べて、用紙Pを下側に位置させることができる。これにより、車椅子に座った状態でも、第四排紙トレイ10に排紙された用紙Pに容易にアクセスすることができ、第四排紙トレイ10から用紙を取り出しやすくできる。
【0039】
また、図6に示したように、排紙トレイの回動の支点が、前後方向の中央にあることで、排紙トレイを回動させたときに、排紙トレイの手前側を下降させることができる。これにより、排紙トレイの回動の支点が前側にある場合に比べて、排紙トレイの前側をより下方に位置させることができ、車椅子利用者が容易に排紙トレイの用紙を取り出すことができる。
なお、図6に示す構成では、排紙トレイの回動の支点が、前後方向の中央にあるが、回動の支点は、少なくとも中央よりも後側に設けることで、排紙トレイを回動させたときに、排紙トレイの手前側を下降させることができる。
【0040】
第四排紙トレイ10から用紙Pを取り出した後は、延長部材46を第四排紙トレイ10に押し入れ、延長部材46を第四排紙トレイ10に収納した状態で、操作レバー41を持ち上げる。これにより、第四排紙トレイ10は、手前側が上昇するように回動し、図6(a)、図7(a)に示した姿勢に戻す。
【0041】
なお、電動により引き出された延長部材46を排紙トレイに戻すようにしてもよい。これにより、排紙トレイを図7(a)に示す姿勢に戻すときに、延長部材46を排紙トレイ内の押し入れる作業を不要でき、用紙取り出し後の作業を簡素化することができる。また、延長部材46の排紙トレイからの引き出しも電動で行うようにしてもよい。延長部材46の引き出しを電動で行うことで、確実に排紙トレイから延長部材46を引き出すことができる。
【0042】
また、操作レバー41の操作で、排紙トレイの回動と、延長部材のスライド(引き出し/押し入れ)とを行うようにしてもよい。かかる構成でも、排紙トレイを図7(a)に示す姿勢に戻すときに、延長部材46を排紙トレイ内の押し入れる作業を不要でき、用紙取り出し後の作業を簡素化することができる。また、排紙トレイを図7(b)の姿勢にしたとき、確実に排紙トレイから延長部材46を引き出すことができる。
【0043】
次に、変形例について説明する。
【0044】
[変形例1]
図9は、変形例1の概略構成図である。図9(a)は、第四排紙トレイ10が前後方向(X方向)に傾く前の状態を示しており、図9(b)は、第四排紙トレイ10が前後方向に傾いた状態を示している。なお、第四排紙トレイ10を例にして説明するが、第一~第三排紙トレイ7、8、9についても、以下に説明する変形例1の構成を採用できる。
【0045】
図9に示すように、この変形例1では、延長部材46の手前側端部に延長部材46の用紙載置面から上方に延び出した落下抑制部46aが設けられている。
操作レバー41(図6参照)を操作して、手前側が下方に位置するように第四排紙トレイ10を傾斜させ、図9(b)に示すように第四排紙トレイ上を手前側へ移動してきた用紙は、落下抑制部46aに突き当たる。これにより、用紙の手前側の移動が、落下抑制部46aにより規制され、用紙が延長部材46から落下するのを抑制できる。
【0046】
落下抑制部46aの構成としては、図9に示す構成に限られない。例えば、延長部材の用紙載置面の手前側端部に、落下抑制部として、用紙との摩擦係数が大きな滑り止めシートを貼り付け、滑り止めシートで、用紙の手前側の移動を止めて用紙の落下を抑制してもよい。図9に示す構成では、用紙を取り出すとき、用紙を持ち上げて落下抑制部を乗り越えさせる必要があるが、落下抑制部として滑り止めシートを用いることで、用紙を持ち上げずに取り出すことができる。これにより、車椅子に座った状態で、延長部材上の用紙が手の届く範囲で高い位置にあっても、容易に取り出すことができるというメリットがある。一方、落下抑制部を図9に示す構成とすることで、滑り止めシートの場合に比べて、良好に用紙の落下を抑制できるというメリットがある。
【0047】
[変形例2]
図10は、変形例2の概略構成図である。図10(a)は、第四排紙トレイ10が前後方向(X方向)に傾く前の状態を示しており、図10(b)は、第四排紙トレイ10が前後方向に傾いた状態を示している。なお、この変形例2についても、第四排紙トレイ10を例にして説明するが、第一~第三排紙トレイ7、8、9についても、以下に説明する変形例2の構成を採用できる。
【0048】
この変形例2は、延長部材46の後側に用紙を手前側に搬送する搬送部材として2つの搬送コロ49,50を設けたものである。これら搬送コロ49,50は、延長部材46に回転自在に支持されている。これら搬送コロ49,50は、第四排紙トレイを傾斜させたときに自重により手前側へ移動する用紙に従動回転する。これにより、延長部材46上を用紙が手前側へ移動する際に、静電気により延長部材46の用紙載置面に張り付くの抑制できる。これにより、用紙の手前側端部を、延長部材の手前側端部まで良好に移動させることができる。
【0049】
この変形例2では、各搬送コロ49,50は、用紙に従動回転する構成であるが、モータ等を用いて回転駆動させてもよい。また、この変形例2では、延長部材の用紙排紙方向上流側と下流側とに搬送コロを設けているが、用紙排紙方向下流側の搬送コロ49は、無くてもよい。しかし、用紙排紙方向下流側にも搬送コロ49を設けることで、用紙排紙方向に長い大サイズ用紙を良好に手前側へ移動させることができ、好ましい。
【0050】
[変形例3]
図11は、変形例3の概略構成図である。図11(a)は、排紙トレイが装置の前後方向(X方向)に傾斜していない状態を示しており、図11(b)は、排紙トレイが装置の前後方向(X方向)に傾斜した状態を示している。なお、この変形例3についても、第四排紙トレイ10を例にして説明するが、第一~第三排紙トレイ7、8、9についても、以下に説明する変形例3の構成を採用できる。
【0051】
図11に示すように、変形例3は、排紙トレイの回動を電動で行うようにしたものである。この変形例3では、モータ47のモータ軸に取り付けられた連結部材47aの回転中心から所定の距離離れた位置にリンク部材41aの一端が取り付けられている。また、この変形例3では、プリントポスト2の前側側面の下部には、操作レバー41に替えて、排紙トレイに対応する4つのボタン48が配設されている。
【0052】
ユーザーが排紙トレイに対応するボタン48を押すと、モータ47が回転駆動し、連結部材47aを、半回転させる。すると、リンク部材41aが図11(a)の状態から上方に移動し、駆動プーリ43が図中反時計回りに回動し、タイミングベルト44を介して第四排紙トレイの中心軸42が反時計回りに回動する。これにより、第四排紙トレイの手前側が下方に位置するように、第四排紙トレイ10が傾斜する。
第四排紙トレイ10が傾斜した状態で、ボタン48を押すと図11(b)に示す状態から、モータ47が半回転し、図11(a)に示す状態となる。
【0053】
なお、この変形例3では、モータ47を用いてリンク部材41aを上下動させているが、ソレノイドを用いてリンク部材41aを上下動させてもよい。また、例えば、Wi-Fi(登録商標)や、Bluetooth(登録商標)等の無線通信装置を設け、スマートフォン等を用いて遠隔操作でモータ47を駆動するようにしてもよい。
【0054】
操作レバーを用いて手動で排紙トレイを回動させる構成では、排紙トレイに大量の用紙が積載されている場合、操作レバー41の押し込み力が大きくなるおそれがあり、ユーザービリティーの低下につながるおそれがある。これに対し、変形例3では、排紙トレイに大量の用紙が積載されている場合でも、容易に排紙トレイを回動させることができ、ユーザービリティーの低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、すべての排紙トレイを回動可能に構成し、延長部材46を設けた構成にしているが、排紙トレイの高さに応じて、適宜構成すればよい。例えば、最上段の第四排紙トレイに関しては、回動可能にし、延長部材46を設けた構成とし、中段の第二、第三排紙トレイに関しては、延長部材は設けず、回動可能な構成のみとする。そして、最下段の第一排紙トレイについては、延長部材を設けず回動もしない構成としてもよい。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0057】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
画像形成処理などの所定の処理が施された用紙を排紙トレイに排出するプリントポスト2などの排紙装置において、排紙トレイは、ユーザーが装置にアクセスする側である装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持され、排紙トレイは、装置の前側にスライドして排紙トレイを前記前側に延長する延長部材46を備える。
これによれば、排紙トレイ上の用紙を取り出すとき、排紙トレイを、装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢にし、延長部材を装置の前側にスライドして、排紙トレイを前側下方に延長する。排紙トレイが上記傾斜姿勢を取ることで、排紙トレイ上の用紙は、自重により装置の前側の延長部材へ移動する。延長部材を有することで、延長部材がないものに比べて、排紙された用紙をより下方に位置させることができる。これにより、延長部材がないものに比べて、車椅子を使用しているユーザーが、容易に排紙トレイ上の用紙を取り出すことができる。
【0058】
(態様2)
態様1において、延長部材46は、排紙トレイ上の用紙の落下を防止する落下抑制部46aを有する。
これによれば、変形例1で説明したように、手前側が下方に位置するように排紙トレイを傾斜させることで手前側へ移動してきた用紙が、延長部材の手前側から落下するのを落下抑制部46aにより抑制することができる。
【0059】
(態様3)
態様1または2において、延長部材46は、排紙トレイ上の用紙を前側へ搬送する搬送コロ49,50などの搬送部材を有する。
これによれば、変形例2で説明したように、手前側が下方に位置するように排紙トレイを傾斜させることで延長部材へ移動してきた用紙を搬送コロ49、50などの搬送部材によって良好に延長部材の手前側まで搬送することができる。
【0060】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、排紙トレイを電動で回動させる。
これによれば、変形例3で説明したように、手動で排紙トレイを回動させる場合に比べて、排紙トレイに大量の用紙が積載されている場合でも、容易に排紙トレイを回動させることができる。これにより、ユーザービリティーの低下を抑制することができる。
【0061】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、複数の排紙トレイが、上下方向に並べて配置されており、複数の排紙トレイのうち、少なくとも最上位に位置する排紙トレイが、装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取りうるように回動可能に支持され、延長部材を備える。
これによれば、車椅子に座った状態で、最上位の排紙トレイに排紙された用紙を取り出すことが可能となる。
【0062】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、排紙トレイの回動の支点が、装置の前後方向中央よりも後側に位置する。
これによれば、装置の前側が装置の後側よりも下方に位置する傾斜姿勢を取ったとき、排紙トレイの前側を、傾斜姿勢を取る前に比べて、下方に位置することができ延長部材をより下方に位置させることができる。これにより、車椅子に座った状態で、排紙トレイの用紙を容易に取り出すことができる
【0063】
(態様7)
用紙に対して画像を形成する画像形成部1などの画像形成手段と、画像が形成された用紙を排紙するプリントポスト2などの排紙装置とを備えた画像形成装置において、排紙装置として、態様1乃至6いずれかの排紙装置を用いた。
これによれば、車椅子に座った状態で、画像が形成された用紙を取り出すことができる。
【0064】
(態様8)
態様7において、プリントポスト2などの排紙装置は、画像形成部1などの画像形成手段の上部に位置する。
これによれば、画像形成部1などの画像形成手段の上部にプリントポスト2などの排紙装置が配置されることで、排紙装置の排紙トレイの位置が高くなる。しかし、態様1の構成を排紙装置が備えているので、このように排紙装置の排紙トレイの位置が高い位置にあっても、車椅子に座った状態で、排紙装置の排紙トレイに排紙された用紙を取り出すことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 :画像形成部(画像形成手段)
2 :プリントポスト(排紙装置)
3 :反転分岐爪
3a :用紙反転接続経路
3b :用紙排出接続経路
4 :反転経路
5 :反転トレイ
6 :排紙経路
7 :第一排紙トレイ
8 :第二排紙トレイ
9 :第三排紙トレイ
10 :第四排紙トレイ
11 :下搬送ローラ対
12 :中搬送ローラ対
13 :上搬送ローラ対
14 :第一分岐爪
15 :第二分岐爪
16 :第三分岐爪
17 :第一排紙ローラ対
18 :第二排紙ローラ対
19 :第三排紙ローラ対
20 :第四排紙ローラ対
21 :入口センサ
22 :搬送下センサ
23 :搬送上センサ
41 :操作レバー
41a :リンク部材
42 :中心軸
43 :駆動プーリ
44 :タイミングベルト
46 :延長部材
46a :落下抑制部
47 :モータ
47a :連結部材
48 :ボタン
49 :搬送コロ
50 :搬送コロ
100 :画像形成装置
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2000-355458号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11