(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123779
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】導電積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20240905BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240905BHJP
【FI】
B32B7/025
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031449
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 智和
【テーマコード(参考)】
4F100
5H770
【Fターム(参考)】
4F100AB17
4F100AK53
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100DB01A
4F100DB01B
4F100DB01C
4F100GB48
4F100JG01
4F100JG01A
4F100JG01C
4F100JG04
4F100JG04B
4F100YY00A
5H770AA05
5H770QA12
5H770QA16
(57)【要約】
【課題】部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な導電積層体を提供する。
【解決手段】導電積層体は、第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層と、をこの順に備え、前記第1の導電層の周端が前記第2の導電層の周端よりも内側にある領域を有し、前記領域において前記第1の導電層の端面から前記第1の導電層の外側面の一部までを覆うように前記絶縁層がさらに延在する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層と、をこの順に備え、
前記第1の導電層の周端が前記第2の導電層の周端よりも内側にある領域を有し、前記領域において前記第1の導電層の端面から前記第1の導電層の外側面の一部までを覆うように前記絶縁層がさらに延在する、導電積層体。
【請求項2】
前記領域における前記第1の導電層の端部から、前記第1の導電層の外側面における前記絶縁層が存在する端部までの長さが0.1mm以上である、請求項1に記載の導電積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車等においては、従来のエンジンに加えて電気駆動システムが搭載されている。この電気駆動システムでは、バッテリから供給される直流電力をインバータ装置によって交流電力に変換し、モーター等に電力供給している。
【0003】
インバータ装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を含むスイッチングモジュールと、スイッチング素子を制御するスイッチング制御回路と、バッテリからスイッチング素子に供給される直流電力を平滑化する平滑用コンデンサを備え、さらにスイッチングモジュールと平滑用コンデンサとを電気的に接続する一対の導電層を備える。
【0004】
ハイブリッド電気自動車等のインバータ装置はIGBT等のスイッチング素子により高速のオンオフ制御を行うが、回路基板及び配線のインダクタンスが大きいと、スイッチング素子のオンオフの際にサージ電圧が発生し、スイッチング素子の誤作動、破損等を引き起こすことがあるため、サージ電圧の低減によるスイッチング素子の誤作動及び破損防止が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1では、高誘電体を一対のバスバー間に介在させることにより、スナバ回路となるコンデンサを構成している。このスナバ回路を設けることにより、スイッチング動作時にスイッチング素子に印加されるサージ電圧が吸収され、スイッチング素子の破壊が抑制できるとされている。
また、特許文献2には、一対のバスバー間に高誘電体を介在させるための製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-319665号公報
【特許文献2】特許第4905254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インダクタンスの低減には、配線となる一対の導電層間の距離(ギャップ)を短くすることが有効である。しかしながら、狭ギャップ化すると部分放電が起こりやすく、導電層間が十分に絶縁されない場合がある。特に、導電層間の電位差が大きいと部分放電がより起こりやすくなる。
【0008】
そこで、本開示は、部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な導電積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の導電積層体は以下の形態を含む。
<1> 第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層と、をこの順に備え、
前記第1の導電層の周端が前記第2の導電層の周端よりも内側にある領域を有し、前記領域において前記第1の導電層の端面から前記第1の導電層の外側面の一部までを覆うように前記絶縁層がさらに延在する、導電積層体。
<2> 前記領域における前記第1の導電層の端部から、前記第1の導電層の外側面における前記絶縁層が存在する端部までの長さが0.1mm以上である、<1>に記載の導電積層体。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、部分放電や沿面放電の発生を効果的に抑制することが可能な導電積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の導電積層体の一例における所定の端部を含む一部分の概略平面図である。
【
図3】(A)(B)はトランスファー成形による導電積層体の製造方法を説明するための概略断面図であり、(B)は(A)において絶縁層20の端面を厚み方向で傾斜させる場合の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図4】実施例1~6及び比較例1~3の導電積層体における、距離Aに対する最大電界強度の関係を示すグラフである。
【
図5】実施例1~6及び比較例1~3の導電積層体における、長さBに対する最大電界強度の関係を示すグラフである。
【
図6】実施例1~6及び比較例1~3の導電積層体における、高さCに対する最大電界強度の関係を示すグラフである。
【
図7】実施例7~10及び比較例1の導電積層体における、長さBに対する最大電界強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明表した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0013】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい
また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。各図において、同一又は相当箇所については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[導電積層体]
本開示の導電積層体は、第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層と、をこの順に備え、前記第1の導電層の周端が前記第2の導電層の周端よりも内側にある領域を有し、前記領域において前記第1の導電層の端面から前記第1の導電層の外側面の一部までを覆うように前記絶縁層がさらに延在する。
【0015】
図1は、本開示の導電積層体の一例における所定の端部を含む一部分の概略平面図である。
図1に示されるように、第1の導電層10側から見た平面図において、部分的に第1の導電層10と絶縁層20とが開口している。この開口部は、第2の導電層12と平滑用コンデンサ等の給電素子、IGBT等のスイッチング素子との間でワイヤボンディング、リボンボンディング等の超音波接合、スポット溶接、レーザー溶接、TIG溶接等の金属溶接を行うことが可能な領域(「配線接続領域」ともいう)となる。配線接続領域を設けることで、第1の導電層10と第2の導電層12とは同じ面側から(
図1の場合には第1の導電層10側の上面から)配線接続することが可能となる。
【0016】
図2は、
図1のA-A断面を示す概略断面図である。
図2に示されるように、第1の導電層10と第2の導電層12とは対向して設けられ、第1の導電層10と第2の導電層12との間隙に絶縁層20が設けられている。さらに本開示の導電積層体では、開口部において、第1の導電層10の端面から第1の導電層10の外側面の一部までを覆うように絶縁層20がさらに延在する。
【0017】
開口部では第1の導電層10の端部は絶縁層20で覆われているため、第1の導電層10側から見た
図1の平面図では、下層の絶縁層20が縁取り状に見えている。
ここで、導電層からの部分放電は、第1の導電層10の端部(第1の導電層10の端部のなかでも角部)から多く発生することが明らかとなった。導電層の端部、特に角部に電界が集中するためと考えられる。そこで、第1の導電層10の角部を含む端部を絶縁層20で覆うことにより、部分放電の発生を効果的に抑制している。角部としては、第2の導電層12に対向する内側面の角部と、第1の導電層10の外側面の角部Xとが存在するが、第1の導電層10の外側面の角部Xを含めて第1の導電層10の外側面の一部までを絶縁層20で覆うことが部分放電の抑制に極めて効果があることを確認している。
【0018】
本開示の導電積層体では部分放電の発生が抑制されることから、第1の導電層10と第2の導電層12との対向する間隙距離Hを短くすることが可能であり、導電積層体のコンパクト化を図りつつインダクタンスの低減を図ることができる。
【0019】
開口部における第1の導電層10の端部X(角部X)から、第1の導電層10の外側面における絶縁層20が存在する端部Yまでの長さBは、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であってもよい。長さBの上限は特に制限されないが、材料コスト等を鑑みれば必要以上に長くしなくてもよく、例えば、5mm以下であってもよい。
【0020】
また、第1の導電層10の端面から面方向に外側に延びる絶縁層20の端部までの距離Aを長くすることでも部分放電の発生を抑えることができるが、この方法では導電積層体のサイズが面方向に大きくなり、コンパクト化されない。これに対して、本開示の導電積層体のように、角部Xを含めて第1の導電層10の外側面の一部までを絶縁層20で覆うと、距離Aを短くしても部分放電を効果的に抑えることができ、導電積層体のコンパクト化が図られる。
【0021】
距離Aは0.1mm以上であることが好ましい。また、コンパクト化の観点からは距離Aはなるべく短いことが好ましく、例えば、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましく、3mm以下であることが特に好ましく、1.5mm以下であることが極めて好ましく、1mm以下であることが最も好ましい。
【0022】
第1の導電層10の外側面上の絶縁層20の高さCは特に制限されないが、例えば、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であってもよい。高さCの上限は特に制限されないが、材料コストの低減、コンパクト化等を鑑みれば必要以上に高くしなくてもよく、例えば、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。
【0023】
第1の導電層10と第2の導電層12との対向する間隙距離H(絶縁層20の厚さHに相当)は、第1の導電層10及び第2の導電層12の厚さよりも薄いことが好ましい。距離H(厚さH)を抑えることで、第1の導電層10及び第2の導電層12への大電流化を確保しつつ、全体としての厚さを抑えてコンパクト化を図ることもできる。
また、配線接続領域の間隔S、Tは、ワイヤボンディング、リボンボンディング等の数により設計可能であるため、特に限定されない。
【0024】
図1及び
図2では、第1の導電層10の端部が開口部を有しつつ絶縁層20で被覆され、第2の導電層12がその開口部から配線接続可能な形態を示しているが、第1の導電層10と第2の導電層12とを入れ替えた構成であってもよい。
【0025】
また、
図1及び
図2では、所定の端部を図示しているが、他の端部においても同様の構成を有していてもよい。あるいは、他の端部では、第1の導電層10と第2の導電層12とが入れ替えた構成であってもよい。つまり、所定の端部では第1の導電層10の端部が開口部を有しているため、第1の導電層10及び第2の導電層12がともに第1の導電層10側の面(
図1では上面側)から配線接続され、他の端部では第2の導電層12の端部が開口部を有して第2の導電層10側の面(
図1では下面側)から第1の導電層10及び第2の導電層12がともに配線接続されてもよい。
【0026】
第1の導電層10及び第2の導電層12は、金属板であってもよい。金属板の材質としては、銅、表面をニッケルメッキした銅、アルミニウム等が挙げられるが、特に限定されない。金属板は平板であり、部分的に屈曲部を有していてもよい。所定の端部における金属板の端部は、厚み方向において傾斜していてもよい。
【0027】
第1の導電層10及び第2の導電層12は一対のバスバーであってもよい。第1の導電層はPバスバーであってもNバスバーであってもよく、その対となる第2の導電層は第1の導電層とは逆のNバスバーであってもPバスバーであってもよい。その場合、第1の導電層と第2の導電層の電流は逆方向に流れる為に磁界が打ち消し合い、インダクタンスが低減する。
【0028】
絶縁層20は絶縁性を有すればいずれでもよく、樹脂を含むことが好ましい。樹脂は熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。耐熱性を高める観点からは熱硬化性樹脂であることが好ましい。樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等が挙げられる。樹脂としては、熱膨張係数が第1の導電層10及び第2の導電層12の熱膨張係数になるべく近くなるように選定することが好ましい。
【0029】
絶縁層20は、無機フィラー、織布又は不織布等を含んでもよい。絶縁層20が無機フィラー、織布又は不織布等を含むことで強度が上昇する。織布及び不織布は、無機材料で構成されていても有機材料で構成されていてもよい。絶縁層20が無機フィラー、無機の織布又は無機の不織布を含む場合、絶縁層20の熱膨張係数を第1の導電層10及び第2の導電層12の熱膨張係数に近づけることが可能となる。
【0030】
無機フィラーはいずれであってもよく、シリカフィラー、アルミナフィラー等が挙げられる。織布又は不織布としてはガラス繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等を含む不織布が挙げられる。これらは各種樹脂を含侵させた
プリプレグとして用いることもできる。
【0031】
所定の端部における絶縁層20の端部は、
図2に示すように厚み方向において傾斜していてもよく、傾斜していなくてもよい。
【0032】
<導電積層体の製造方法>
導電積層体の製造方法は上記構成を形成することが可能であればいずれであってもよく、圧縮成形、トランスファー成形等の方法が挙げられる。トランスファー成形では、2枚の金属板の間に樹脂を注入する。圧縮成形では樹脂板を予め準備し、第1の導電層及び第2の導電層を構成する2枚の金属板の間に樹脂板を配置し、加熱圧着する。
【0033】
トランスファー成形で用いる金型は第1の金型30と第2の金型31で構成され、第1の金型30には
図3(B)に示すように、第1の導電層10の端部の外側面上に長さBかつ高さCの大きさの絶縁部が形成されるように空間Dが設けられている。また、第2の金型31には第2の導電層12の厚みに対応する凹部を設け、この凹部に金属板12を配置し、金属板12の端部Zから所定の間隔Sまでの領域を第1の金型30に密着させ、保持する。
【0034】
次に、金属板10,12の間に樹脂材料をトランスファー法により注入する。このとき空間Dにも樹脂が行き渡るように注入することで、金属板10の端部が樹脂で覆われる。他方、金属板12の端部Zは間隔Sまでの領域は第1の金型30に密着しているため、間隔Sの部分は樹脂で被覆されない。
【0035】
樹脂材料は樹脂を含み、さらに無機フィラーを含んでもよい。注入した樹脂材料が熱硬化性樹脂を含む場合には、さらに加熱して硬化させる。
【0036】
図3(B)に示すように、絶縁層20の端面が厚み方向において傾斜するよう、金型30の絶縁層20の端部を成形する面を傾斜させてもよい。これにより金型からの引き抜きが行いやすくなる場合がある。
【0037】
<適用>
導電積層体は、例えば、インバータ装置に適用することができる。インバータ装置は、スイッチング素子を含むスイッチングモジュールと、スイッチング素子を制御するスイッチング制御回路と、スイッチング素子に供給される直流電力を平滑化する平滑用コンデンサと、スイッチングモジュールと平滑用コンデンサとを電気的に接続する本開示の導電積層体とを備える。また、スイッチングモジュール内部に用いられる配線として、本開示の導電積層体を組み込むこともできる。スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられる。
【実施例0038】
以下、本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
絶縁層形成組成物としてエポキシ樹脂組成物を用い、第1の導電層及び第2の導電層として、厚さ1.0mmの銅板を用い、2枚の銅板の間隔Hを0.25mmとし、
図2に示す導電積層体における距離A、長さB、高さCを、実験計画法:L9直交表に基づき、表1の実施例1~6及び比較例1~3に示すように変えた。
【0040】
上記の実施例1~6及び比較例1~3、さらに長さB及び高さCがともに0である比較例4及び5の導電積層体の最大電界強度を電界解析シミュレーションにより計算した。具体的には、第1の導電層、及び第2の導電層に電位差を与え、第2の導電層、絶縁層及び空気が同時に接している部分(三重点)の最大電界強度1と、第1の導電層、絶縁層及び空気が同時に接している部分(三重点)の最大電界強度2を、算術平均したものを、その条件の最大電界強度とした。
【0041】
【0042】
表1に示すように、長さBが存在する実施例1~6は、長さBがゼロの比較例1~5に比べて最大電界強度の低減が著しく図られていることがわかる。
【0043】
ここで、実施例1~6及び比較例1~3について、距離Aが1mmである比較例1及び実施例1、2における最大電界強度の平均値、距離Aが2mmである比較例2及び実施例3、4における最大電界強度の平均値、距離Aが3mmである比較例3及び実施例5、6における最大電界強度の平均値、をそれぞれ求めた。これらの値に基づいて、
図4には、距離Aに対する最大電界強度の関係を示す。同様にして、長さBに対する最大電界強度の関係を示すグラフを
図5に示し、高さCに対する最大電界強度の関係を示すグラフを
図6に示す。
【0044】
図4~6の比較で明らかなように、距離A及び高さCに比べて、長さBは最大電界強度に大きく影響を与えていることがわかる。距離A、長さB及び高さCのなかでは、高さCが最大電界強度の低減の寄与が小さいことがわかる。
【0045】
そこで、長さBについてより詳細に検討するため、距離A及び高さCの数値を固定し、長さBを0~1mmの間で変えた導電積層体について最大電界強度を求めた。その結果を表2に示す。なお、距離A及び高さCは、表1において最も小さい値である1mm及び0.5mmとし、より厳しい条件としている。
【0046】
【0047】
表2の結果に基づく、長さBに対する最大電界強度の関係を示すグラフを
図7に示す。
図7に示すように、長さBが0.1mmであっても最大電界強度の低減効果は十分発揮され、0.5mm以上では最大電界強度は同程度まで低減する。