(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123790
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】青色フィルムを使用した用紙の透過光検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01N21/84 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031464
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 音寧
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭子
(72)【発明者】
【氏名】石下 英子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】藤野 由佳理
(72)【発明者】
【氏名】工藤 とみ江
(72)【発明者】
【氏名】高田 啓子
(72)【発明者】
【氏名】上村 結穂
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA34
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB07
2G051CB02
(57)【要約】
【課題】 すき入れが施された用紙において、すき入れの品質検査と黄色状の異物を含む欠点の検出を同時に行うことを可能とした検査方法を提供する。
【解決手段】 すき入れが施された用紙の一方の面に光源からの光を青色フィルムを介して照射し、他方の面から目視ですき入れの品質検査及び用紙の黄色状欠点部の有無を検査する方法であって、光源の単位時間当たりの光量を2.0~2.5lm(ルーメン)、検査テーブル上の照度を60~431lx(ルクス)とし、光源と用紙の間に青色フィルムを配置することで、すき入れの品質検査と、用紙における黄色状欠点部の濃淡と黄色状欠点部のない部分の濃淡が異なるか否かを判別する検査を同時に行う、青色フィルムを使用した用紙の透過光検査方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
すき入れが施された用紙の一方の面に光源からの光を青色フィルムを介して照射し、他方の面から目視で前記すき入れの品質検査及び前記用紙の黄色状欠点部の有無を検査する方法であって、
前記光源の単位時間当たりの光量を2.0~2.5lm(ルーメン)、検査テーブル上の照度を60~431lx(ルクス)とし、前記光源と前記用紙の間に前記青色フィルムを配置することで、前記すき入れの品質検査と、前記用紙における前記黄色状欠点部の濃淡と前記黄色状欠点部のない部分の濃淡が異なるか否かを判別する検査を同時に行うことを特徴とする、青色フィルムを使用した用紙の透過光検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙に含まれている異物及び欠陥を検出する用紙検査方法において、特に、厚さ及び密度が部分的に変化した地合むらを有する紙及びすき入れが施された紙などの異物を含む欠点を抽出するために使用する用紙の透過光検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抄紙機で抄造したすき入れが施された用紙は、断裁工程において規定の大きさの枚葉紙に断裁される。枚葉紙に断裁された用紙は、所定枚数を用紙積載ブロックとして管理された後、異物及び欠陥等の欠点のある用紙を抽出排除するために外観検査と、ライトテーブル検査が行われる。
【0003】
欠点とは、用紙における損紙となる要因のことであり、すき入れの有無、異物、欠陥、破れ、しわがある。異物とは、紙層内及び表面に存在するごみ、ちり、樹脂状異物(樹脂状の小片)等であり、欠陥とは、パルプの製造及び抄紙工程等、紙本来の製造工程において形成される、紙料のもつれ、紙層形成不良等、検査工程以前での取り扱いの汚れ、折れ、破れ等である。
【0004】
ライトテーブル検査では、用紙寸法枠が書かれた透明フィルムをガラステーブルの上に固定し、下方から蛍光灯及びLED等の光源で照らすライトテーブル(検査台)を用い、検査人が用紙積載ブロックから用紙を一枚ずつガラステーブルに乗せ、用紙のちり、破れ、すき入れの有無等の欠点を見つける検査を行っている。
【0005】
銀行券、パスポート等の貴重製品においては、偽造防止のため、すき入れを採用している場合が多いことから、欠点を見つける検査に加えて、すき入れが鮮明に視認できるか等の品質検査も行う必要がある。さらに、欠点の大きさ及び色味は、製造工程及び紙料によっても異なる。したがって、ライトテーブルの光源の色味を自由に変更できることが、欠点の検出には求められている。
【0006】
色味と輝度を変化させることが可能なライトテーブルとしては、筐体本体の上壁が、検査対象物を載せるための透光性シートにより構成されるとともに、筐体本体の内部には、透光性シートに平行な導光板と、導光板の端面の入射部に向けて光を照射する複数の発光ダイオードと、発光ダイオードに電流を供給する電源回路とが配置された欠陥検査用ライトテーブルであって、導光板は、拡散剤が均一に分散させられている光散乱導光板であり、発光ダイオードは、その発する光の波長が、赤、青、緑又は赤、青、黄のいずれかの三種類以上を有しており、電源回路は、発光ダイオードの波長ごとにそれぞれ設けられたことを特徴とする欠陥検査用ライトテーブルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】コニカミノルタジャパン株式会社,“色色雑学”,[online],コニカミノルタジャパン株式会社,[2022年10月17日検索],インターネット<URL:https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/index.html>
【非特許文献2】ビデオジェット・エックスライト株式会社,“17.色差について”,[online],ビデオジェット・エックスライト株式会社,[2022年10月17日検索],インターネット<URL:https://www.xrite.co.jp/colorknowledge-blog/436-17.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、欠点の大きさ及び色味に合わせてライトテーブルの光源の色味を変更した後、検査を行う必要がある。例えば、すき入れが施された用紙を検査する場合、すき入れはライトテーブルの光量が大きい(輝度を上げる)方が、すき入れを明瞭に検査することができる。欠点である異物が黄色状の場合、すき入れの品質検査を行う時に輝度を上げれば、すき入れは明瞭に検査できるが、黄色状の異物は用紙の色と同化してしまい、検査精度が低下することから、改善の余地がある。
【0010】
本発明は、前述した課題の解決を目的としたものであり、すき入れが施された用紙において、すき入れの品質検査と黄色状の異物を含む欠点の検出を同時に行うことを可能とした検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の青色フィルムを使用した用紙の透過光検査方法は、すき入れが施された用紙の一方の面に光源からの光を青色フィルムを介して照射し、他方の面から目視ですき入れの品質検査及び用紙の黄色状欠点部の有無を検査する方法であって、光源の単位時間当たりの光量を2.0~2.5lm(ルーメン)、ライトテーブル上の照度60~431lx(ルクス)とし、光源と用紙の間に青色フィルムを配置することで、すき入れの品質検査と、用紙における黄色状欠点部の濃淡と黄色状欠点部のない部分の濃淡が異なるか否かを判別する検査を同時に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の用紙の検査方法は、光源の単位時間当たりの光量を2.0~2.5lm(ルーメン)、ライトテーブル上の照度60~431lx(ルクス)、さらに青色フィルムを配置することで、肉眼ですき入れと黄色状の異物を含む欠点の両方が明確に視認可能となる。よって、すき入れの品質検査と用紙における欠点部の検出を同時に行うことが可能となり、検査人の身体的・精神的負担が軽減され、これに起因するヒューマンエラー等の潜在リスクが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明におけるライトテーブル1の一例を示す図。
【
図2】本発明におけるライトテーブル台3の構成を示す模式図。
【
図3】非特許文献1において示されたL*a*b*の色調図。
【
図4】本発明における各色のフィルムを通して未済紙6の黄色状欠点部以外の部分を測定した数値を中心とした色調図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0015】
図1は、本発明におけるライトテーブル1の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すようにライトテーブル1は、未済紙置き場2、ライトテーブル台3、フレーム4、正紙置き場5及び損紙置き場(図示せず)を有する。
【0017】
未済紙置き場2は、未済紙6が所定枚数積載された用紙積載ブロック7を載せるための置き場である。未済紙6とは、用紙検査を行っていない状態である、一枚ずつの用紙のことである。
【0018】
フレーム4の内側に設置されたライトテーブル台3は、検査人が、未済紙置き場2に置かれた用紙積載ブロック7から、一枚ずつ、すき入れが施された未済紙6を手で取り出し、目視で用紙検査を行う作業台である。
【0019】
正紙置き場5は、用紙検査時に正紙基準を満たしている用紙を積載するための置き場である。
【0020】
損紙置き場(図示せず)は、正紙基準を満たさなかった用紙を積載するための置き場であり、ライトテーブル1の前方に設置されている。
【0021】
図2は、ライトテーブル台3の構成を示す模式図である。
【0022】
ライトテーブル台3は、LEDパネル3-1と拡散板3-2、青色フィルム3-3、光透過性板3-4から構成されている。また、拡散板3-2、青色フィルム3-3及び光透過性板3-4は、それぞれ距離がなく、常時接触している状態である。
【0023】
LEDパネル3-1は、光ムラが起きない、光量調整が可能なLED素子が複数配置されたパネルであり、検査する用紙である未済紙6を下から照射した透過光により、用紙の欠点を抽出する作用を有している。LEDパネル3-1の光量調整については、LEDパネル3-1に繋げた調光器を使用し、光量調整を行う。LEDパネル3-1は、拡散板3-2と約15cmの距離がある。
【0024】
用紙の欠点とは、すき入れの有無、異物、欠陥、破れ、しわのことであり、異物とは、未済紙6の紙層内及び表面に存在するごみ、ちり、樹脂状異物(樹脂状の小片)等であり、欠陥とは、パルプの製造及び抄紙工程等、紙本来の製造工程において形成される、紙料のもつれ、紙層形成不良等、検査工程以前での取り扱いの汚れ、折れ、破れ等である。以下、未済紙6における欠点が存在する箇所を「欠点部」という。
【0025】
拡散板3-2は、乳白色の樹脂板などで構成されており、光源3-2から発する光を乱反射させながら透過して、青色フィルム3-3、光透過性板3-4に入射する作用を有している。
【0026】
青色フィルム3-3は、ポリエチレン製の薄膜でセルロース等の透明物質に感光剤を塗布したものであり、光を通す青系色の板で構成され、未済紙6の黄色状の異物等を含む欠点とすき入れを視認することができ、光透過性板3-4に青色の光を入射する作用を有している。なお、本発明において黄色状の異物は、以下「黄色状欠点部」という。
【0027】
光透過性板3-4は、光を通し、透明又は半透明な硬い板で構成されており、用紙検査時に未済紙6を載置する作用を有している。なお、用紙積載ブロック7から、すき入れが施された未済紙6を一枚ずつ手で取り出し、目視での用紙検査を行うことから、用紙をスムーズに移動させることができる、静電気の起きにくい材質が好ましい。
【0028】
本発明の用紙検査方法の特徴点は2点ある。1点目は、透過光及び青色フィルム3-3を用いる点であり、2点目はライトテーブル台3からの光量を特定の照度に調整する点である。これら2点の特徴点があることで、すき入れの品質検査と従来の欠点に加え、黄色状欠点部についても同時に検出することが可能となった。
【0029】
まず、1点目の透過光及び青色フィルム3-3を用いる理由について説明する。検査人が目視で用紙の欠点であるすき入れの品質検査と黄色状欠点部を検査する場合、欠点の有無は、未済紙6における欠点とその周囲との色の差である「色差」により、検査人が官能検査で判断している。しかしながら、色は人によって見え方に差が出てしまうという問題があり、さらには同じ検査対象物でも透過光と反射光では色の見え方が異なる。
【0030】
一般的に、すき入れが施された用紙を検査する場合、すき入れは透過光で検査し、黄色状の異物は反射光で検査を行う2回検査となる。そのため、作業時間がかかり、さらには検査人への作業負荷も高くなる。そこで、本発明においては、透過光及び青色フィルム3-3を用いることで、1回の検査ですき入れの品質検査と黄色状欠点部を検査可能としたことを特徴とする。
【0031】
色の測定にはCIE L*a*b*等色空間を用いる。CIE L*a*b*等色空間における色は、分光光度計(SpectroEye(GretagMacbeth社)で測定する。測定条件として、D65光源の下、観測視野10°にて白色標準として絶対白色を用いて、内蔵フィルタを使用しない条件で測定する。
【0032】
色の差である「色差」の測定には、色彩色差計(CR-400(コニカミノルタジャパン株式会社製))を用いる。透過光と反射光での黄色状の異物とその周囲との色差を求めるため、L*a*b*を測定し、反射光で見えやすくなる根拠として、次の数式1で色差を求める。
【0033】
【0034】
本発明における色差は、CIE 1976L*a*b*表色系のΔEで定義する。CIE 1976L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JISZ8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE 1976L*a*b*表色系での色差は、数式1に示すように、二色のL*の差、a*の差、及びb*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。
【0035】
色の評価は、印刷物の色をL*a*b*等色空間で捉え、比較対象物間の色差を色の変化の判断基準として判定する。一般的な色差の評価例では、非特許文献2の色差の数値の意味に定義されている通り、ΔE=1程度とは、2つの色を横に隙間なく並べて見比べた時に違いが判別できるレベルであり、ΔE=2~3程度とは、2つの色を隙間を有して並べて見比べた時に違いが分かるレベルであり、ΔE=5程度とは、2つの色を交互に見比べた時違いが分かるレベルである。よって、本発明においては、色差を目視による色の変化を判断する基準とし、ΔEが2.0以下であれば視覚上等色に認識できるものとする。
【0036】
未済紙6における、色差を計算した結果、反射光での測定においては、黄色状の異物のない箇所と、黄色状欠点部の有る箇所の色差が3.09であった。また、透過光での測定においては、未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所の色差が1.52であった。透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所との色差が1.52であるのに対し、反射光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所の色差が3.09と数値が高いことから、透過光で黄色状欠点部を視認するよりも、反射光で黄色状欠点部を視認することの方が容易に確認できる。
【0037】
しかしながら、反射光で黄色状欠点部を検査した場合、すき入れの品質検査を同時に検査することができない。よって、本発明においては、透過光で黄色状欠点部を検査可能とするために、青色フィルム3-3を用いることを特徴とする。詳細については後述するが、青色フィルム3-3を用いることで、透過光下において、未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所の色差が2.0を超える数値となり、肉眼で検査可能となる。
【0038】
次に、青色フィルム3-3と、比較例として赤色フィルムと緑色フィルムを、
図2に示したライトテーブル台3の光透過性板3-4の下に入れて透過光検査を行った結果の根拠を示す。上記結果の裏付けを行うため、数式1に示した測定方法を用いて、ランダムに採取した10枚の未済紙6に対して、各フィルムを使用した透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所に対するL*a*b*の測定を行った。測定結果は、表1から表6の通りである。
【0039】
表1は、未済紙6に対して、青色フィルム3-3の透過光検査を黄色状欠点部のない箇所に対して行った結果である。
【0040】
【0041】
表2は、未済紙6に対して、青色フィルム3-3の透過光検査を黄色状欠点部のある箇所に対して行った結果である。
【0042】
【0043】
表3は、未済紙6に対して、赤色フィルムの透過光検査を黄色状欠点部のない箇所に対して行った結果である。
【0044】
【0045】
表4は、未済紙6に対して、赤色フィルムの透過光検査を黄色状欠点部のある箇所に対して行った結果である。
【0046】
【0047】
表5は、未済紙6に対して、緑色フィルムの透過光検査を黄色状欠点部のない箇所に対して行った結果である。
【0048】
【0049】
表6は、未済紙6に対して、緑色フィルムの透過光検査を黄色状欠点部のある箇所に対して行った結果である。
【0050】
【0051】
この測定結果数値をもとに、数式1を用いて、透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所との色差を求めた。なお、数式1において、L*、a*及びb*は、表1から表6の平均値を用いて算出した計算結果と、フィルムを挿入していない状態で透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所との色差1.52を含めた結果が、表7の通りである。
【0052】
【0053】
透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所とをくらべて最も数値が高く色差がある場合、黄色状欠点部が視認しやすい。よって、青色フィルム3-3を入れた時の色差が一番高いことから、本発明では、透過光及び青色フィルム3-3を用いて用紙検査を行うこととした。
【0054】
これらの結果を基に、比較した対象物の色の明るさ及び鮮やかさの違いを一目見て分かるように、
図3に示す、非特許文献1において示されたL*a*b*の色調図を使用して説明する。
【0055】
まず、色調図を作成するために、非特許文献1において示された、次の数式2、数式3及び数式4を用いて、各色のフィルムを用いた透過光での未済紙6における黄色状欠点部のない箇所と、黄色状欠点部のある箇所の明度差(ΔL*)と彩度(ΔC*)を求めた。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
数式2から数式4において、C*は彩度、a*及びb*は、表1から表6の平均値を用いて算出した計算結果である。
【0060】
一例として、青色フィルム3-3の透過光検査における、C*、a*及びb*について説明する。表2に示した、「平均値」に示すa*の値「-0.39」とb*の値「1.91」とは、未済紙6に対する青色フィルム3-3の透過光検査を、黄色状欠点部のある箇所に対して行った結果である。
【0061】
次に、数式1を使用してC*を算出した後、算出した値を使用して、数式2及び数式4で算出した明度差(ΔL*)と彩度(ΔC*)の評価結果は、次の表8の通りである。さらに、求めた明度差(ΔL*)と彩度(ΔC*)から、各色のフィルムを通して未済紙6を測定した数値を中心(基準)とし、
図4に示す色調図を作成した。
【0062】
図4において、Rは赤色フィルムを入れて黄色状欠点部を見た時の数値であり、Gは緑色フィルムを入れて黄色状欠点部を見た時の数値であり、Bは青色フィルム3-3を入れて黄色状欠点部を見た時の数値である。
図2に示すように、青色フィルム3-3を入れて黄色状欠点部を見た時の数値がグラフの中心座標(0.0,0.0)から最も離れていることから、青色フィルム3-3が、色が濃く鮮やかで視認しやすく、用紙検査がしやすい。
【0063】
以上の理由から、本発明の用紙検査方法においては、1点目の特徴点として、透過光及び青色フィルム3-3を用いることが有利であることを確認した。
【0064】
次に、2点目の特徴である、ライトテーブル台3からの光量を特定の照度に調整する理由について説明する。
【0065】
本発明においては、ライトテーブル台3からの単位時間当たりの光量を2.0~2.5lm(ルーメン)、ライトテーブル1上の照度を60~431lx(ルクス)とすることを特徴とする。なお、照度の調整は、調光器を用いてLEDパネル3-1の光量を調整することで行う。
【0066】
表8は、本発明のライトテーブル台3に青色フィルム3-3を入れた時の光量(ルーメン)に対する欠点検査結果を示す表である。本発明におけるルーメンとは、前述のとおりライトテーブル台3からの単位時間当たりの光量(「光束」と称することもある。)を数値化したものであるが、実際に用紙検査を行う際の光は、ライトテーブル台3からの光量を表8に示すルーメンに調整した後、ライトテーブル台3の上における未済紙6が照らされる、明るさlx(ルクス)となる。ここで、表8の光量であるlm(ルーメン)をlx(ルクス)に置き換えると、ライトテーブル台3からの光量である2.0~2.5lm(ルーメン)は、60~431lx(ルクス)となる。なお、未済紙6へのlx(ルクス)は、照度計(武蔵野電気(株)製 MLPC-3010D-1)を使用して未済紙6の四隅及び中央を3回ずつ測定した値の上限値及び下限値である。以下、本発明については、光量をlm(ルーメン)を基に説明する。
【0067】
【0068】
表8においては、複数の検査人が同じ条件下で目視により用紙検査した結果である。表内における、欠点項目の○とは、検査人が欠点を視認できると評価した結果を示し、欠点項目の△とは、検査人が欠点を視認しづらいと評価した結果を示す。また、目への負担の〇とは、目がチカチカしてしまい、用紙検査を行っていくうえで、目への負担が高い状態を示し、目への負担×については、用紙検査を行っていくうえで、目への負担がなく、快適に用紙検査作業を進めることが可能な状態を示す。
【0069】
ライトテーブル台3からの光量を2.6~4.0lmとした場合、すき入れ、異物、破れ、しわなどの欠点を視認することができたが、黄色状欠点部については、視認しづらい状況であった。また、検査人が受ける照度が室内照度よりも高くなることから、かなり眩しく、直視していられない状況であった。
【0070】
ライトテーブル台3からの光量を2.0~2.5lmとした場合、眩しさが低減され、たことで、すき入れ、異物、破れ、しわ、黄色状欠点部、すべての欠点を視認することが可能となった。
【0071】
ライトテーブル台3からの光量を2.0lm未満とした場合、暗くなりすぎてしまい、すき入れ、異物、破れ、しわ、黄色状欠点部すべての欠点の視認がしづらかった。
【符号の説明】
【0072】
1 ライトテーブル
2 未済紙置き場
3 ライトテーブル台
3-1 LEDパネル
3-2 拡散板
3-3 青色フィルム
3-4 光透過性板
4 フレーム
5 正紙置き場
6 未済紙
7 用紙積載ブロック