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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123826
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/04 20060101AFI20240905BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240905BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240905BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B49/12
B24B7/04 A
B24B47/22
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031557
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 哲一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA02
3C034CA22
3C034CB03
3C034DD10
3C034DD20
3C043BA04
3C043BA09
3C043BA12
3C043CC04
3C043CC12
3C043DD06
3C043DD14
5F057AA05
5F057AA19
5F057AA53
5F057BA11
5F057BB01
5F057BB03
5F057BB11
5F057CA14
5F057CA25
5F057DA08
5F057DA11
5F057DA38
5F057EB16
5F057EB18
5F057FA13
5F057FA32
5F057FA33
5F057FA34
5F057FA37
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB11
5F057GB13
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】複数の研削砥石と被加工物とが実際に接触したタイミングからの両者が接触したと判定されるまでの遅滞を短くすることが可能な被加工物の研削方法を提供する。
【解決手段】非接触式厚さ測定ユニットから被加工物に向けて測定光を照射することによって得られる反射光の強度変化を参照して、複数の研削砥石と被加工物とが接触したか否かを判定する。ここで、この反射光の強度は、被加工物の被研削面の粗さに依存する。また、この被研削面の粗さは、複数の研削砥石と被加工物とが接触した直後かつ研削負荷がそれほど大きくなる前においても変化する。そのため、反射光の強度変化を参照する場合には、複数の研削砥石と被加工物とが実際に接触したタイミングからの両者が接触したと判定されるまでの遅滞を短くすることが可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面において保持した状態で該保持面の中心を通る直線を中心として回転可能なチャックテーブルと、
環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有する研削ホイールが先端部に装着されているスピンドルと、
該保持面において保持された該被加工物に向けて測定光を照射することによって得られる反射光のスペクトルを参照して該被加工物の厚さを測定可能な非接触式厚さ測定ユニットと、
を備えた研削装置において該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該保持面において該被加工物を保持した該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させながら、該非接触式厚さ測定ユニットから該被加工物に向けて該測定光が照射された状態で該複数の研削砥石と該被加工物とが接触したと判定されるまで、該チャックテーブルと該スピンドルとを所定の速度で接近させる接近ステップと、
該接近ステップの後に、該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させたまま、該複数の研削砥石が該被加工物を研削することによって該非接触式厚さ測定ユニットが測定する該被加工物の厚さが所定の厚さに至るまで、該チャックテーブルと該スピンドルとを該所定の速度よりも遅い速度範囲に含まれる速度で接近させる研削ステップと、を備え、
該複数の研削砥石と該被加工物とが接触したか否かは、該反射光の強度変化を参照して判定される被加工物の研削方法。
【請求項2】
該接近ステップの前に、被研削面が該研削ステップの後の該被研削面よりも粗くなるように該被加工物を研削する事前研削ステップをさらに備え、
該接近ステップにおいては、該反射光の強度が高くなるように変化する請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置において被加工物を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハ等の被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
また、被加工物は、製造されるチップの小型化等を目的として、その分割に先立って研削装置において研削されることがある。この研削装置は、例えば、被加工物を保持面において保持した状態で保持面の中心を通る直線を中心として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有する研削ホイールが先端部に装着されているスピンドルと、を備える。
【0004】
また、研削装置においては、被加工物が所望の厚さになったタイミングで研削を終了できるように、チャックテーブルの保持面において保持された被加工物の厚さを測定するための非接触式厚さ測定ユニットが設けられていることがある。この非接触式厚さ測定ユニットは、例えば、被加工物に向けて測定光を照射することによって得られる反射光のスペクトルを参照して被加工物の厚さを測定する。
【0005】
具体的には、このような研削装置においては、以下のように被加工物が研削される。まず、複数の研削砥石とチャックテーブルの保持面において保持された被加工物とがマージンを介して離隔するように両者の位置を調整する。そして、チャックテーブルとスピンドルとの双方を回転させながら、チャックテーブルとスピンドルとを接近させる。
【0006】
これにより、複数の研削砥石が被加工物に接触して被加工物が研削される。また、この研削、すなわち、チャックテーブルとスピンドルとの双方を回転させながらの両者の接近は、非接触式厚さ測定ユニットによって測定される被加工物の厚さが所定の厚さに至るまで継続される。
【0007】
ここで、複数の研削砥石が被加工物に接触するまでの期間、すなわち、エアカットが行われる期間は、無駄であり、短いことが好ましい。そのため、この期間においては、チャックテーブルとスピンドルとを接近させる速度、いわゆる、研削送り速度が速い方が好ましい。
【0008】
他方、被加工物が研削されている最中の研削送り速度が速いと、研削負荷が大きくなり、複数の研削砥石、被加工物及び/又はスピンドルが破損するおそれがある。そこで、このような研削装置において被加工物を研削する際には、複数の研削砥石が被加工物に接触するタイミングで研削送り速度が変更されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-101451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数の研削砥石が被加工物に接触したか否かは、例えば、以下のパラメータの変化を参照して判定されている。具体的には、当該パラメータとしては、スピンドルを回転させるためのモータに供給される電流の値と、チャックテーブル及び/又はスピンドルの回転速度と、チャックテーブル及び/又はスピンドルに加わる研削荷重と、が挙げられる。
【0011】
ただし、これらのパラメータは、被加工物が少し研削されて研削負荷が大きくなってから変化し始めることが多い。そのため、これらのパラメータを参照して複数の研削砥石が被加工物に接触したか否かが判定される場合には、両者が実際に接触したタイミングよりも当該判定が遅滞する。
【0012】
そして、この場合には、上述したように、複数の研削砥石、被加工物及び/又はスピンドルが破損するおそれがある。この点に鑑み、本発明の目的は、複数の研削砥石と被加工物とが実際に接触したタイミングからの両者が接触したと判定されるまでの遅滞を短くすることが可能な被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、被加工物を保持面において保持した状態で該保持面の中心を通る直線を中心として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有する研削ホイールが先端部に装着されているスピンドルと、該保持面において保持された該被加工物に向けて測定光を照射することによって得られる反射光のスペクトルを参照して該被加工物の厚さを測定可能な非接触式厚さ測定ユニットと、を備えた研削装置において該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該保持面において該被加工物を保持した該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させながら、該非接触式厚さ測定ユニットから該被加工物に向けて該測定光が照射された状態で該複数の研削砥石と該被加工物とが接触したと判定されるまで、該チャックテーブルと該スピンドルとを所定の速度で接近させる接近ステップと、該接近ステップの後に、該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させたまま、該複数の研削砥石が該被加工物を研削することによって該非接触式厚さ測定ユニットが測定する該被加工物の厚さが所定の厚さに至るまで、該チャックテーブルと該スピンドルとを該所定の速度よりも遅い速度範囲に含まれる速度で接近させる研削ステップと、を備え、該複数の研削砥石と該被加工物とが接触したか否かは、該反射光の強度変化を参照して判定される被加工物の研削方法が提供される。
【0014】
本発明の被加工物の研削方法は、該接近ステップの前に、被研削面が該研削ステップの後の該被研削面よりも粗くなるように該被加工物を研削する事前研削ステップをさらに備え、該接近ステップにおいては、該反射光の強度が高くなるように変化することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、非接触式厚さ測定ユニットから被加工物に向けて測定光を照射することによって得られる反射光の強度変化を参照して、複数の研削砥石と被加工物とが接触したか否かが判定される。
【0016】
ここで、この反射光の強度は、被加工物の被研削面の粗さに依存する。具体的には、被研削面が粗ければ、非接触式厚さ測定ユニットから被加工物に向けて照射される測定光が被研削面において乱反射して反射光の強度が低くなる。他方、被研削面が平坦であれば、この乱反射が抑制されて反射光の強度が高くなる。
【0017】
また、この被研削面の粗さは、複数の研削砥石と被加工物とが接触した直後かつ研削負荷がそれほど大きくなる前においても変化する。そのため、反射光の強度変化を参照する場合には、上述したパラメータを参照する場合と比較して、複数の研削砥石と被加工物とが実際に接触したタイミングからの両者が接触したと判定されるまでの遅滞を短くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、チャックテーブル及びチャックテーブルに接続されている構成要素を模式的に示す図である。
図4図4は、スピンドルの先端部等を模式的に示す一部断面側面図である。
図5図5は、分光干渉式厚さ測定器及び分光干渉式厚さ測定器に接続されている構成要素を模式的に示す図である。
図6図6は、研削装置において被加工物を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図7図7は、調整ステップの様子を模式的に示す図である。
図8図8は、接近ステップの様子を模式的に示す図である。
図9図9は、研削ステップの様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図1においては、研削装置の一部の構成要素が機能ブロックで示されている。また、図1に示されるX軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0020】
図1に示される研削装置2は、各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。この基台4の前端部の上面には、一対のカセット載置領域6a,6bが設けられている。そして、各カセット載置領域6a,6bの上には、それぞれがZ軸方向において互いに離隔した状態で複数の被加工物を収容可能なカセット8a,8bが載置される。
【0021】
すなわち、各カセット8a,8bには、それぞれにおいて被加工物を収容可能な複数段の収容領域が設けられている。図2は、カセット8a,8bに収容される被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。図2に示される被加工物11は、例えば、円状の表面11a及び裏面11bを有し、シリコン(Si)等の半導体材料を母材とするウェーハである。
【0022】
この被加工物11は格子状に設定される複数の分割予定ライン13によって複数の領域に区画されており、各領域の表面11a側にはIC等のデバイス15が形成されている。また、被加工物11は、このデバイス15を覆うように設けられたフィルム状のテープを含んでもよい。このテープは、デバイス15が形成されているウェーハの直径と概ね等しい直径を有し、例えば、樹脂からなる。
【0023】
そして、このテープは、被加工物11の裏面11b側を研削する際に表面11a側に加わる衝撃を緩和してデバイス15を保護する。なお、被加工物11の材質、形状、構造及び大きさ等に制限はない。例えば、被加工物11は、シリコン以外の半導体材料、セラミックス、樹脂又は金属を母材として含んでもよい。
【0024】
また、図1に示されるように、カセット載置領域6a,6bの後方には窪み4aが形成されており、この窪み4aの内側には搬送ユニット10が設けられている。この搬送ユニット10は、研削前の被加工物11をカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(元の収容領域)から搬出し、また、研削後の被加工物11を、例えば、元の収容領域に搬入する際に利用される。
【0025】
具体的には、搬送ユニット10は、例えば、複数の関節とロボットハンドとを有する。そして、この搬送ユニット10においては、ロボットハンドの一面側の空間に吸引力を作用させることによって被加工物11を吸引して保持すること、及び、当該空間の圧力を常圧にすることによって被加工物11をロボットハンドの一面から分離させることが可能である。
【0026】
さらに、ロボットハンドの基端部には、Z軸方向に直交する方向に沿った直線を回転軸としてロボットハンドを回転させるためのモータが接続されている。そして、搬送ユニット10においては、このモータを動作させることによって、被加工物11を保持するロボットハンドを反転させること、すなわち、被加工物11の上下を反転させることが可能である。
【0027】
また、窪み4aの斜め後方には、被加工物11の位置を調整するための位置調整機構12が設けられている。この位置調整機構12は、円盤状の位置調整用テーブルと位置調整用テーブルの周囲に配置された複数のピンとを含む。そして、搬送ユニット10によってカセット8a,8bから搬出された被加工物11は、この位置調整用テーブルに搬入されて、その中心が所定の位置に合わせられる。
【0028】
具体的には、被加工物11は、その裏面11bが上を向くように位置調整用テーブルに搬入される。そして、位置調整用テーブルの径方向に沿って複数のピンが位置調整用テーブルに接近する。これにより、複数のピンが被加工物11の側面に接触して被加工物11を僅かに移動させる。その結果、被加工物11の中心が所定の位置に合わせられる。
【0029】
また、位置調整機構12の側方には、被加工物11を保持して後方に搬送する搬送ユニット14が設けられている。この搬送ユニット14は、例えば、Z軸方向に沿って延在する支持軸と、この支持軸の上端部に基端部が固定され、かつ、Z軸方向と直交する方向に沿って延在するアームと、このアームの先端部の下側に固定されている吸引パッドと、を有する。
【0030】
そして、この搬送ユニット14においては、吸引パッド近傍の空間に吸引力を作用させることによって被加工物11を吸引して保持すること、及び、当該空間の圧力を常圧にすることによって被加工物11を吸引パッドから分離させることが可能である。
【0031】
さらに、搬送ユニット14の支持軸は、モータに接続されている。そして、このモータを動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸が回転する、すなわち、支持軸を中心として吸引パッドが旋回する。
【0032】
また、搬送ユニット14の支持軸は、例えば、ボールねじ式の移動機構(不図示)に連結されている。そして、この移動機構を動作させると、Z軸方向に沿って支持軸、アーム及び吸引パッドが移動する、すなわち、支持軸、アーム及び吸引パッドが昇降する。
【0033】
例えば、搬送ユニット14は、以下の順序で被加工物11を保持して後方に搬送する。まず、位置調整機構12において中心が所定の位置に合わせられた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドを被加工物11の裏面(上面)11bに接触させるように支持軸を下降させる。
【0034】
次いで、吸引パッドによって被加工物11の裏面(上面)11b側を吸引して保持する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が後方へと搬送される。
【0035】
搬送ユニット14の後方には、ターンテーブル16が設けられている。このターンテーブル16は、モータに接続されている。そして、このモータを動作させると、ターンテーブル16の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてターンテーブル16が回転する。
【0036】
また、ターンテーブル16には、ターンテーブル16の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で3個の円盤状のテーブルベース(不図示)が設けられている。さらに、各テーブルベースの上部には、ベアリング等を介して、交換可能な態様でチャックテーブル18a,18b、18cが装着されている。
【0037】
図3は、各チャックテーブル18a,18b、18c及び各チャックテーブル18a,18b、18cと接続する構成要素を模式的に示す図である。なお、各チャックテーブル18a,18b、18cと接続する構成要素は、図3等において機能ブロックで示されている。
【0038】
各チャックテーブル18a,18b、18cは、例えば、セラミックス等からなる円盤状の枠体20を有する。この枠体20は、円盤状の底壁20aと、この底壁20aの外周部から立設する円筒状の側壁20bと、を有する。すなわち、枠体20の上面側には、底壁20a及び側壁20bによって画定される円盤状の凹部が形成されている。
【0039】
そして、この凹部には、多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板22が固定されている。なお、枠体20の側壁20bの外径は被加工物11の直径よりも僅かに大きく、その内径(ポーラス板22の直径)は被加工物11の直径よりも僅かに小さい。
【0040】
また、枠体20の側壁20bの上面及びポーラス板22の上面は、円錐の側面に相当する形状に構成されており、被加工物11を保持するための保持面として機能する。また、底壁20aには、凹部の底面において開口し、かつ、底壁20aを貫通する流路20cが形成されている。
【0041】
そして、この流路20cは、バルブ24aを介して吸引源26aに接続され、かつ、バルブ24bを介してエア供給源26bに接続されている。なお、吸引源26aは、例えば、エジェクタ等を含む。また、エア供給源26bは、例えば、高圧エアを貯蔵するためのタンクと、タンクから供給される気体に混入した異物を取り除くためのフィルタと、タンクから供給される気体の圧力を調整するためのレギュレータと、を含む。
【0042】
さらに、各チャックテーブル18a,18b、18cは、回転機構(不図示)に接続されている。この回転機構は、例えば、モータ及びプーリ等を含む。そして、この回転機構が動作すると、それぞれの保持面の中心を通る直線を回転軸として各チャックテーブル18a,18b、18cが回転する。
【0043】
また、各チャックテーブル18a,18b、18cは、テーブルベースを介して傾き調整機構(不図示)に接続されている。この傾き調整機構は、例えば、各チャックテーブル18a,18b、18cの周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で配置されている2つの可動軸及び1つの固定軸を含む。
【0044】
そして、2つの可動軸の少なくとも一方がテーブルベース及び各チャックテーブル18a,18b、18cを部分的に昇降させると、各チャックテーブル18a,18b、18cの回転軸の傾きが調整される。
【0045】
なお、各チャックテーブル18a,18b、18cがテーブルベースに装着された状態でターンテーブル16を回転させると、ターンテーブル16の周方向に沿って、ターンテーブル16とともにテーブルベース及びチャックテーブル18a,18b、18cが移動する。
【0046】
これにより、各チャックテーブル18a,18b、18cを、例えば、搬送ユニット14に隣接する搬入搬出位置Aと、搬入搬出位置Aの斜め後方の粗研削位置Bと、粗研削位置Bの側方の仕上げ研削位置Cと、に順番に位置付けることができる(図1参照)。
【0047】
そして、搬入搬出位置Aに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)には、搬送ユニット14によって後方へと搬送された被加工物11が搬入される。被加工物11のチャックテーブル18aへの搬入は、例えば、以下の順序で行われる。
【0048】
まず、搬送ユニット14の吸引パッドによって裏面(上面)11b側が吸引されて保持された被加工物11をチャックテーブル18aの保持面に接近させるように、搬送ユニット14の支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドと被加工物11とを分離する。これにより、被加工物11がチャックテーブル18aに搬入される。
【0049】
次いで、被加工物11の表面(下面)11a側がチャックテーブル18aに吸引されて保持されるように、吸引源26aを動作させ、かつ、バルブ24aを開状態にする。次いで、この被加工物11を保持するチャックテーブル18aを粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。
【0050】
粗研削位置B及び仕上げ研削位置Cのそれぞれの後方には、柱状の支持構造30a,30bが設けられている。各支持構造30a,30bの前面側には、移動機構32が設けられている。この移動機構32は、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール34を備える。さらに、一対のガイドレール34には、移動プレート36がスライド可能な態様で取り付けられている。
【0051】
また、移動プレート36の後面側にはボールねじのナット(不図示)が固定されており、このナットにはZ軸方向に沿って延在するねじ軸38が回転可能な態様で連結されている。また、このナットは、ねじ軸38の回転に応じてねじ軸38の表面を転がる多数のボールを収容する。
【0052】
さらに、ねじ軸38の一端部(上端部)には、モータ40が接続されている。そして、モータ40によってねじ軸38を回転させると、多数のボールがナット内を循環してナットとともに移動プレート36がZ軸方向に沿って移動する。
【0053】
また、移動プレート36の前面(表面)には、研削ユニット42が設けられている。この研削ユニット42は、移動プレート36に固定されるスピンドルハウジング44を有する。さらに、スピンドルハウジング44には、Z軸方向(第1方向)に沿って延在するスピンドル(図1においては不図示)が回転可能な態様で収容されている。
【0054】
図4は、このスピンドルの先端部(下端部)等を模式的に示す一部断面側面図である。このスピンドル46の先端部はスピンドルハウジング44の下端面から露出しており、この下端部には円盤状のマウント48が固定されている。
【0055】
そして、粗研削位置B側の研削ユニット42においては、マウント48を介して、スピンドル46の先端部に粗研削用の研削ホイール50aが装着されている。同様に、仕上げ研削位置C側の研削ユニット42においては、マウント48を介して、スピンドル46の先端部に仕上げ研削用の研削ホイール50bが装着されている。
【0056】
各研削ホイール50a,50bは、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属からなる環状のホイール基台52を含む。また、ホイール基台52の下面には、ホイール基台52の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で複数の研削砥石54が固定されている。
【0057】
そして、複数の研削砥石54のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等の結合剤と、この結合剤に分散されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。なお、仕上げ研削用の研削ホイール50bが備える研削砥石54に含まれる砥粒の平均粒径は、粗研削用の研削ホイール50aが備える研削砥石54に含まれる砥粒の平均粒径よりも小さい。
【0058】
また、各研削ホイール50a,50bの近傍には、研削液供給ユニット56が設けられている。この研削液供給ユニット56は、例えば、平面視において各研削ホイール50a,50bの内側に位置するノズル58と、このノズル58に純水等の液体(研削液)を供給するポンプ(不図示)と、を有する。
【0059】
そして、このポンプが動作すると、粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)において保持された被加工物11の裏面(上面)11bにノズル58から研削液が供給される。また、研削液供給ユニット56においては、ノズル58に換えて、又は、ノズル58に加えて、各研削ホイール50a,50bに形成されている流路を介して研削液が供給されてもよい。
【0060】
また、スピンドル46の基端部(上端部)には、モータ60が接続されている(図1参照)。そして、このモータ60を動作させると、スピンドル46とともにマウント48及び各研削ホイール50a,50bがZ軸方向に沿った直線を回転軸として回転する。
【0061】
粗研削位置Bの側方には、接触式厚さ測定ユニット62が設けられている。この接触式厚さ測定ユニット62は、一対の測定子を有し、各測定子が接触する位置の高さを測定可能である。また、接触式厚さ測定ユニット62は、一対の測定子が接触する位置の高さの差を測定可能である。
【0062】
例えば、粗研削位置Bに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)の保持面において保持された被加工物11の裏面(上面)11bと当該保持面とに一対の測定子を接触させる場合には、両者の差、すなわち、被加工物11の厚さを測定できる。
【0063】
そのため、研削装置2においては、チャックテーブル18aの保持面において保持された被加工物11の厚さを接触式厚さ測定ユニット62によって測定しながら、被加工物11の裏面(上面)11b側を粗研削することが可能である。
【0064】
仕上げ研削位置Cの側方には、非接触式厚さ測定ユニット64が設けられている。図5は、この非接触式厚さ測定ユニット64及び非接触式厚さ測定ユニット64に接続されている構成要素を模式的に示す図である。
【0065】
この非接触式厚さ測定ユニット64は、仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)の保持面と対向可能な対物面64aを含む。そして、非接触式厚さ測定ユニット64は、この保持面において保持された被加工物11の厚さを測定可能である。
【0066】
具体的には、非接触式厚さ測定ユニット64は、対物面64aから被加工物11に向けて投光する投光部と、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bのそれぞれによって反射された光を対物面64aにおいて受光する受光部と、を有する。
【0067】
そして、非接触式厚さ測定ユニット64は、被加工物11の表面(下面)11aによって反射された光と裏面(上面)11bによって反射された光とが互いに干渉して得られるスペクトルを参照して被加工物11の厚さを測定する。
【0068】
そのため、研削装置2においては、チャックテーブル18aの保持面において保持された被加工物11の厚さを非接触式厚さ測定ユニット64によって測定しながら、被加工物11の裏面(上面)11b側を仕上げ研削することが可能である。なお、このような研削の一例については後述する。
【0069】
さらに、非接触式厚さ測定ユニット64は、その対物面64aから直下に向けて純水を噴射するための噴射部を含んでもよい。そして、被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削する際に噴射部から純水を噴射する場合には、研削によって生じる研削屑が対物面64aと被加工物11との間に進入しにくくなる。
【0070】
これにより、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bから対物面64aに向かう反射光が研削屑によって遮断される蓋然性を低減することができる。その結果、この場合には、非接触式厚さ測定ユニット64による当該測定の精度の低下を抑制することが可能である。
【0071】
また、非接触式厚さ測定ユニット64は、アーム66の先端部に設けられている。このアーム66は、Z軸方向と直交する方向に沿って延在し、その基端部が、Z軸方向に沿って延在する支持軸68の上端部に固定されている。また、支持軸68の下端部は、モータ70に接続されている。
【0072】
そして、このモータ70を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸68が回転する、すなわち、支持軸68を中心として非接触式厚さ測定ユニット64が旋回する。また、支持軸68及びモータ70は、移動機構72に接続されている。この移動機構72は、モータ70の側部に表面側が固定されている移動プレート72aを有する。
【0073】
移動プレート72aの裏面側には、多数のボールを収容するナット72bが固定されている。そして、このナット72bには、Z軸方向に沿って延在するねじ軸72cが螺合されている。また、ねじ軸72cは、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール(不図示)の間に設けられており、この一対のガイドレールの表面側にはスライド可能な態様で移動プレート72aが取り付けられている。
【0074】
さらに、ねじ軸72cの基端部(下端部)には、モータ72dが接続されている。そして、モータ72dによってねじ軸72cを回転させると、多数のボールがナット72b内を循環してナット72bとともに移動プレート72a及び非接触式厚さ測定ユニット64等がZ軸方向に沿って移動する。
【0075】
被加工物11の粗研削及び仕上げ研削が完了すると、この被加工物11を保持するチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)を搬入搬出位置Aに位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。また、このチャックテーブル18aが搬入搬出位置Aに位置付けられれば、その枠体20に形成されている流路20cの圧力を常圧にする。
【0076】
具体的には、まず、この流路20cに接続されている吸引源26aの動作を停止させ、かつ、バルブ24aを閉状態とするとともに、エア供給源26bを動作させ、かつ、バルブ24bを開状態にする。これにより、被加工物11がチャックテーブル18aによって吸引されずに、単にチャックテーブル18aに置かれた状態になる。
【0077】
搬入搬出位置Aの前方、かつ、搬送ユニット14の側方には、被加工物11を保持して前方に搬送する搬送ユニット74が設けられている(図1参照)。この搬送ユニット74は、例えば、搬送ユニット14と同様の構造を有し、以下の順序で被加工物11を保持して前方に搬送する。
【0078】
まず、被加工物11を保持するチャックテーブル18aに置かれた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドを被加工物11の裏面(上面)11bに接触させるように支持軸を下降させる。
【0079】
次いで、吸引パッドによって被加工物11の裏面(上面)11b側を吸引して保持する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が前方へと搬送される。
【0080】
搬送ユニット74の側方には、被加工物11を洗浄するための洗浄装置76が設けられている。この洗浄装置76は、例えば、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するためのスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された被加工物11の裏面(上面)11b側に純水等の液体(洗浄液)を供給するノズルを含む洗浄ユニットと、を備える。
【0081】
なお、このスピンナテーブルは、図1に示される各チャックテーブル18a,18b,18cと同様の構造を有し、また、モータ等に接続されている。そして、このモータを動作させると、スピンナテーブルの上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンナテーブルが回転する。
【0082】
そして、スピンナテーブルには、搬送ユニット74によって前方へと搬送された被加工物11が搬入される。例えば、被加工物11のスピンナテーブルへの搬入は、以下の順序で行われる。まず、搬送ユニット74の吸引パッドによって保持された被加工物11がスピンナテーブルの直上に位置付けられるように支持軸を回転させる。
【0083】
次いで、被加工物11をスピンナテーブルの保持面に接近させるように、搬送ユニット74の支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドと被加工物11とを分離する。これにより、被加工物11がスピンナテーブルに搬入される。
【0084】
この洗浄装置76においては、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するスピンナテーブルを回転させながら被加工物11の裏面(上面)11bに洗浄ユニットから洗浄液を供給することによって被加工物11が洗浄される。
【0085】
そして、洗浄装置76における被加工物11の洗浄が完了すると、搬送ユニット10が洗浄装置76からカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(例えば、元の収容領域)に被加工物11を搬入する。
【0086】
上述した研削装置2の構成要素は、研削装置2に内蔵されたコントローラ78によって制御される。このコントローラ78は、プロセッサ78aとメモリ78bとを含む。なお、プロセッサ78aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。
【0087】
また、メモリ78bは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリとによって構成される。
【0088】
そして、メモリ78bは、プロセッサ78aにおいて用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、このメモリ78bには、被加工物11の裏面(上面)11b側の仕上げ研削に先立って行われるエアカットの際の研削送り速度(前者の研削送り速度)と、この仕上げ研削の際の研削送り速度(後者の研削送り速度)と、が記憶されている。
【0089】
なお、前者の研削送り速度は、後述する接近ステップS2における研削ホイール50bの下降速度であり、例えば、4μm~30μm、好ましくは6μm~25μm、より好ましくは8μm~20μmである。また、後者の研削送り速度は、後述する研削ステップS4における研削ホイール50bの下降速度であり、例えば、0.1μm~6.0μm、好ましくは0.1μm~3.0μm、より好ましくは0.1μm~1.5μmである。さらに、後者の研削送り速度は、後述する研削ステップS4の最中に変化してもよい。
【0090】
また、プロセッサ78aは、例えば、非接触式厚さ測定ユニット64を利用して複数の研削砥石54と被加工物11との接触を判定するとともに被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削するためのプログラムをメモリ78bから読みだして実行するように研削装置2の構成要素を制御する。
【0091】
図6は、研削装置2において被加工物11を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、複数の研削砥石54とチャックテーブル18aの保持面において保持された被加工物11とがマージンを介して離隔するように両者の位置を調整する(調整ステップS1)。
【0092】
図7は、調整ステップS1の様子を模式的に示す図である。この調整ステップS1においては、まず、チャックテーブル18aを搬入搬出位置Aに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。
【0093】
次いで、その裏面11bが上を向いた状態の被加工物11をカセット8a,8bからチャックテーブル18aに搬送するように、プロセッサ78aが搬送ユニット10,14等を制御する。次いで、チャックテーブル18aの保持面において被加工物11が保持されるように、プロセッサ78aが吸引源26aを動作させ、かつ、バルブ24aを開状態にする。
【0094】
次いで、チャックテーブル18aを仕上げ研削位置Cに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。次いで、被加工物11の直上に非接触式厚さ測定ユニット64が位置付けられるように、プロセッサ78aがモータ70を制御する。
【0095】
次いで、チャックテーブル18aから所定の距離の範囲に対物面64aが位置付けられるように、プロセッサ78aが移動機構72(具体的には、モータ72d)を制御する。次いで、研削ホイール50bの複数の研削砥石54と被加工物11とがマージンMを介して離隔するように、プロセッサ78aが移動機構32(具体的には、モータ40)を制御する。
【0096】
調整ステップS1の後には、チャックテーブル18aとスピンドル46とを所定の速度で接近させる(接近ステップS2)。図8は、接近ステップS2の様子を模式的に示す図である。この接近ステップS2においては、まず、チャックテーブル18a及び研削ホイール50bの双方を回転させるように、プロセッサ78aがチャックテーブル18aに接続されている回転機構とモータ60とを制御する。
【0097】
次いで、チャックテーブル18a及びスピンドル46との双方を回転させたまま、所定の速度V1で研削ホイール50bを下降させ、かつ、被加工物11の裏面11bに研削液GLが供給されるように、プロセッサ78aが移動機構32(具体的には、モータ40)及び研削液供給ユニット56を制御する。
【0098】
また、このような研削ホイール50bの下降中には、対物面64aから被加工物11に向けて測定光が照射されるようにプロセッサ78aが非接触式厚さ測定ユニット64を制御する。そして、この測定光の一部は、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bのそれぞれにおいて反射されて、対物面64aにおいて受光される。
【0099】
ここで、対物面64aにおいて受光される反射光RLの強度は、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bのそれぞれの粗さに依存する。また、裏面(上面)11bにおいては、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触した直後に凹凸が緩和され又は新たに凹凸が形成されて、その粗さが変化する。
【0100】
そして、プロセッサ78aは、対物面64aにおいて受光された反射光RLの強度変化を参照して、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触したか否かを判定する。例えば、反射光RLの強度が初期の値から2倍~20倍又は1/2倍~1/20倍になれば、プロセッサ78aは、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触したと判定する。
【0101】
そして、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触していないと判定されれば(ステップS3:NO)、接近ステップS2が継続される。他方、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触したと判定されれば(ステップS3:YES)、被加工物11が研削されるように、チャックテーブル18とスピンドル46とを所定の速度V1よりも遅い速度範囲に含まれる速度で接近させる(研削ステップS4)。
【0102】
図9は、研削ステップS4の様子を模式的に示す図である。この研削ステップS4においては、チャックテーブル18a及びスピンドル46との双方を回転させ、かつ、被加工物11の裏面11bに研削液GLを供給したまま、所定の速度V1よりも遅い速度V2で研削ホイール50bを下降させるように、プロセッサ78aが移動機構32(具体的には、モータ40)を制御する。
【0103】
また、このような研削ホイール50bの下降中には、被加工物11の厚さを測定するようにプロセッサ78aが非接触式厚さ測定ユニット64を制御する。そして、非接触式厚さ測定ユニット64が測定する被加工物11の厚さが所定の厚さに至らなければ(ステップS5:NO)、研削ステップS4が継続される。他方、非接触式厚さ測定ユニット64が測定する被加工物11の厚さが所定の厚さに至れば(ステップS5:YES)、被加工物11の研削が完了する。
【0104】
図6に示される被加工物の研削方法においては、非接触式厚さ測定ユニット64から被加工物11に向けて測定光を照射することによって得られる反射光の強度変化を参照して、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触したか否かが判定される。
【0105】
ここで、この反射光の強度は、被加工物11の被研削面である裏面(上面)11bの粗さに依存する。具体的には、被研削面が粗ければ、非接触式厚さ測定ユニット64から被加工物11に向けて照射される測定光が裏面(上面)11bにおいて乱反射して反射光の強度が低くなる。他方、裏面(上面)11aが平坦であれば、この乱反射が抑制されて反射光の強度が高くなる。
【0106】
また、被加工物11の裏面(上面)11aの粗さは、複数の研削砥石54と被加工物11とが接触した直後かつ研削負荷がそれほど大きくなる前においても変化する。そのため、反射光の強度変化を参照する場合には、複数の研削砥石54と被加工物11とが実際に接触したタイミングからの両者が接触したと判定されるまでの遅滞を短くすることが可能である。
【0107】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、研削ホイール50bを利用した被加工物11の裏面(上面)11b側の仕上げ研削に先立って、研削ホイール50aを利用した被加工物11の裏面(上面)11b側の粗研削が実施されてもよい。
【0108】
換言すると、本発明においては、接近ステップS2に先立って、被加工物11の被研削面となる裏面(上面)11bが研削ステップS4の後の裏面(上面)11bよりも粗くなるように被加工物11を研削する事前研削ステップが実施されてもよい。そして、この事前研削ステップの後に実施される接近ステップS2においては、非接触式厚さ測定ユニット64の対物面64aにおいて受光される反射光の強度が高くなるように変化する。
【0109】
また、本発明においては、インゴットから切り出されたウェーハ、いわゆる、ベアウェーハが被加工物として利用されてもよい。このベアウェーハの表面及び裏面のそれぞれは、一般的に、非常に粗い。そのため、ベアウェーハが被加工物として利用される場合には、接近ステップS2において非接触式厚さ測定ユニット64の対物面64aで受光される反射光の強度が高くなるように変化する。
【0110】
また、本発明においては、表面及び裏面のそれぞれが鏡面仕上げされたミラーウェーハが被加工物として利用されてもよい。このミラーウェーハの表面及び裏面のそれぞれは、一般的に、平坦である。そのため、ミラーウェーハが被加工物として利用される場合、接近ステップS2において非接触式厚さ測定ユニット64の対物面64aで受光される反射光の強度が低くなるように変化する。
【0111】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0112】
2 :研削装置
4 :基台(4a:窪み)
6a,6b:カセット載置領域
8a,8b:カセット
10:搬送ユニット
11:被加工物(11a:表面、11b:裏面)
12:位置調整機構
13:分割予定ライン
14:搬送ユニット
15:デバイス
16:ターンテーブル
17:第2被加工物
18a,18b,18c:チャックテーブル
19:厚い被加工物(19a:表面、19b:裏面)
21:薄い被加工物(21a:表面、21b:裏面)
20:枠体(20a:底壁、20b:側壁、20c:流路)
22:ポーラス板
24a,24b:バルブ
26a:吸引源
26b:エア供給源
30a,30b:支持構造
32:移動機構
34:ガイドレール
36:移動プレート
38:ねじ軸
40:モータ
42:研削ユニット
44:スピンドルハウジング
46:スピンドル
48:マウント
50a,50b:研削ホイール
52:ホイール基台
54:研削砥石
56:研削液供給ユニット
58:ノズル
60:モータ
62:接触式位置測定ユニット
64:非接触式厚さ測定ユニット(64a:対物面)
66:アーム
68:支持軸
70:モータ
72:移動機構
(72a:移動プレート、72b:ナット、72c:ねじ軸、72d:モータ)
70:モータ
72:移動機構
74:搬送ユニット
76:洗浄装置
78:コントローラ(78a:プロセッサ、78b:メモリ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9