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特開2024-123900非球状アルミナ粒子、非球状アルミナ粒子の製造方法、前記アルミナ粒子を用いたエポキシ樹脂組成物、及び、半導体装置
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  • 特開-非球状アルミナ粒子、非球状アルミナ粒子の製造方法、前記アルミナ粒子を用いたエポキシ樹脂組成物、及び、半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123900
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】非球状アルミナ粒子、非球状アルミナ粒子の製造方法、前記アルミナ粒子を用いたエポキシ樹脂組成物、及び、半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/02 20220101AFI20240905BHJP
   C01F 7/442 20220101ALI20240905BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C01F7/02
C01F7/442
C08L63/00 C
C08K3/22
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031696
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
(72)【発明者】
【氏名】糸谷 一男
(72)【発明者】
【氏名】前川 文彦
【テーマコード(参考)】
4G076
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076AB06
4G076BA38
4G076BA43
4G076BA46
4G076BB01
4G076BB05
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA34
4G076CA36
4G076DA02
4G076DA20
4G076FA02
4J002CD001
4J002CD051
4J002DE146
4J002FD016
4J002FD206
4J002GQ05
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB12
4M109EC06
(57)【要約】
【課題】本発明は、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高純度の非球状アルミナ粒子、前記非球状アルミナ粒子の製造方法、前記非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物により得られ、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性の硬化物、半導体封止材、及び、半導体装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、平均粒子径が、0.1から100μmであり、ウラン含有量が、8ppb以下であり、α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状アルミナ粒子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が、0.1~100μmであり、
ウラン含有量が、8ppb以下であり、
α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状アルミナ粒子。
【請求項2】
前記α結晶構造に起因する複数の面の数が、8、12、及び、14からなる群より選択される少なくとも1種の非球状アルミナ粒子を含む請求項1に記載の非球状アルミナ粒子。
【請求項3】
溶出性アルカリ金属イオンおよび溶出性塩化物イオンの含有量が、各10ppm以下である請求項1に記載の非球状アルミナ粒子。
【請求項4】
α結晶化率が、90%以上である請求項1に記載の非球状アルミナ粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の非球状アルミナ粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成した後に、アルカリ洗浄、酸洗浄、及び、湿式解砕をする工程を含み、
前記アルミニウム化合物と、前記モリブデン化合物中のモリブデンとのモル比(モリブデン/アルミニウム)が、0.03~3.0である非球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項6】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記(D)無機充填材が、請求項1~4のいずれか1項に記載の非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物中に、前記非球状アルミナ粒子を50質量%以上含有する請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物により得られる硬化物。
【請求項9】
α線カウンターを用いて測定したα線量が、0.0020counts/cm・h以下である請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を含む半導体封止材。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体封止材を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球状アルミナ粒子、非球状アルミナ粒子の製造方法、エポキシ樹脂組成物、硬化物、半導体封止材、及び、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器の小型軽量化、高性能化が求められ、これに伴い半導体デバイスの高集積化、大容量化が進んでいる。このため、機器の構成部材に生じる発熱量が増大しており、機器の放熱機能の向上が求められている。
【0003】
これまで、高い放熱性を必要とする部材には、主に金属材料やセラミックス材料が用いられてきたが、電気・電子部品の小型化に適合する上で金属材料やセラミックス材料は、軽量性や成形加工性の面で難があり、樹脂材料への代替が進みつつある。樹脂材料に高熱伝導性を付与する方法として、例えば、樹脂に無機フィラーとして熱伝導性フィラーを配合する方法が知られている。
【0004】
前記熱伝導性フィラーとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。アルミナは、安価であり、樹脂充填性や化学安定性に優れているため、熱伝導性フィラーとして、幅広く使用されている。また、アルミナには、α、β、γ、δ、θ等の各種の結晶形態があるが、α結晶形態のアルミナの熱伝導性が最も高いことが知られている。
【0005】
また、メモリー半導体用封止材では、原料に含まれるウランによるα線量の低い材料が要求されている。α線量が高い材料を用いると、メモリーにおける誤作動(エラー)が誘因される課題が認められ、低ウランのシリカフィラーが使用されるが、シリカ自体の熱伝導率が低く、前記低ウランのシリカフィラーの熱伝導効率が十分ではなかった(特許文献1)。
【0006】
また、シリカフィラーの代わりに、アルミナフィラーを使用することで真球度を高くすることができ、耐湿性の向上が図られている(特許文献2)。しかし、真球度が高くなることで、熱伝導率の更なる向上が図れないのが現状である。
【0007】
なお、熱伝導効率の向上を図るため、球状ではなく、不定型のアルミナフィラーを使用した場合であっても、前記アルミナフィラーが不純物を多く含むことで、耐久性に悪影響するなどの課題を抱えている(特許文献3)。
【0008】
また、低ウランのアルミナフィラーの開発も進んでいるが、火炎法や一般的な固相法を使用して、アルミナフィラーを製造すると、多結晶で結晶化率の低いアルミナフィラーが得られるにとどまり、熱伝導効率も十分なものが得られていないのが、現状である。さらに、原料に含まれるウランが全ての製品に移行するため、低ウランの水酸化アルミニウムを使用する必要があるが、このような水酸化アルミニウムは高価であるため、原料コストが高いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5983085号
【特許文献2】特開2017-110146号公報
【特許文献3】特開2017-41633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、大容量で高集積化されたメモリー半導体封止材に適した高熱伝導性、低α線放射性、高純度の非球状アルミナ粒子、及び、前記非球状アルミナ粒子の製造方法、前記非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物により得られ、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性の硬化物、半導体封止材、及び、半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の平均粒子径を有し、ウラン含有量が特定量以下であり、α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状アルミナ粒子を用いることにより、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性の硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を示す。
【0013】
(1)平均粒子径が、0.1~100μmであり、ウラン含有量が、8ppb以下であり、α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状アルミナ粒子。
【0014】
(2)前記α結晶構造に起因する複数の面の数が、8、12、及び、14からなる群より選択される少なくとも1種の非球状アルミナ粒子を含む上記(1)に記載の非球状アルミナ粒子。
【0015】
(3)溶出性アルカリ金属イオンおよび溶出性塩化物イオンの含有量が、各10ppm以下である上記(1)又は(2)に記載の非球状アルミナ粒子。
【0016】
(4)α結晶化率が、90%以上である上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の非球状アルミナ粒子。
【0017】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の非球状アルミナ粒子の製造方法であって、モリブデン化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成した後に、アルカリ洗浄、酸洗浄、及び、湿式解砕をする工程を含み、前記アルミニウム化合物と、前記モリブデン化合物中のモリブデンとのモル比(モリブデン/アルミニウム)が、0.03~3.0である非球状アルミナ粒子の製造方法。
【0018】
(6)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記(D)無機充填材が、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物。
【0019】
(7)前記エポキシ樹脂組成物中に、前記非球状アルミナ粒子を50質量%以上含有する上記(6)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0020】
(8)上記(6)又は(7)に記載のエポキシ樹脂組成物により得られる硬化物。
【0021】
(9)α線カウンターを用いて測定したα線量が、0.0020counts/cm・h以下である上記(8)に記載の硬化物。
【0022】
(10)上記(8)又は(9)に記載の硬化物を含む半導体封止材。
【0023】
(11)上記(10)に記載の半導体封止材を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非球状アルミナ粒子は、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高純度であることで、前記非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物により得られる硬化物は、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高耐久性に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1のアルミナ粒子のSEM画像である。
図2】実施例2のアルミナ粒子のSEM画像である。
図3】実施例3のアルミナ粒子のSEM画像である。
図4】実施例4のアルミナ粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0027】
[非球状アルミナ粒子]
本発明は、平均粒子径が、0.1~100μmであり、ウラン含有量が、8ppb以下であり、α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状アルミナ粒子に関する。前記非球状アルミナ粒子は、α結晶構造に起因する複数の面を有する非球状の粒子であるため、高熱伝導性を発揮でき、ウラン含有量が少ないため、低α放射線性、及び、高純度であり、有用である。
【0028】
前記の非球状アルミナ粒子の平均粒子径が、0.1~100μmであり、0.5~20μmが好ましく、1~7μmがより好ましい。前記平均粒子怪が前記範囲内であることにより、狭い配線の隙間にも容易に流れ込むことが可能な半導体封止材を得ることができ、好ましい態様となる。
【0029】
前記非球状アルミナ粒子のウラン含有量が、8ppb以下であり、5ppb以下が好ましく、2ppb以下がより好ましい。前記ウラン含有量が前記範囲内であることにより、α線発生量の少ない高純度のアルミナ粒子となり、前記非球状アルミナ粒子を用いることによりメモリー半導体のエラーを引き起こさないα線発生レベルの硬化物が得られ、好ましい態様となる。
【0030】
前記非球状アルミナ粒子が、α結晶構造に起因する複数の面を有することにより、従来の低ウランアルミナ粒子であれば、球状または不定形のアルミナ粒子であるため、アルミナ粒子同士が点で接触することになり、熱伝導効率に劣る結果となるが、ここでの複数の面構造を有する非球状アルミナ粒子を使用することで、アルミナ粒子同士の接触が面で接触することになり、熱伝導効率に優れ、好ましい態様となる。
更に、前記非球状アルミナ粒子が、α結晶構造に起因する複数の面を有することは、アルミナ粒子が単結晶であることを示しており、従来の低ウランアルミナ粒子であれば、球状又は不定形であることは即ち多結晶であり、粒子内でのフォノン伝搬が散乱し、粒子自体の熱伝導率が劣るのに対し、単結晶粒子であることで、粒子自体の熱伝導率に優れ、好ましい。
【0031】
前記非球状アルミナ粒子は、前記α結晶構造に起因する複数の面の数が、8、12、及び、14からなる群より選択される少なくとも1種の非球状アルミナ粒子を含むことが好ましく、12、又は、14であることがより好ましく、14であることが更に好ましい。前記α結晶構造に起因する複数の面の数が、前記面数を有するものを含むことで、多面体形状となり、前記非球状アルミナ粒子同士が面で接触することができ、熱伝導効率に優れ、好ましい態様となる。
【0032】
前記非球状アルミナ粒子は、溶出性アルカリ金属イオン及び溶出性塩化物イオンの含有量が、各10ppm以下であるであることが好ましく、8ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることが更に好ましい。前記溶出性アルカリ金属イオン及び溶出性塩化物イオンの各含有量が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の硬化阻害や封止材に使用した際の銅マイグレーションなどの不具合を抑制でき、好ましい態様となる。なお、前記溶出性アルカリ金属イオンや、前記溶出性塩化物イオンが存在すると、例えば、エポキシ樹脂組成物を用いて硬化物を製造する際に、前記溶出性アルカリ金属イオンや、前記溶出性塩化物イオンなどイオンが遊離して、硬化阻害が生じたり、半導体封止材の樹脂マトリックスに、イオンが遊離して、銅電極のイオン化を促進して、銅イオンのマイグレーション(短絡の原因)を起こす原因となるため、前記範囲内であることが有用となる。
【0033】
なお、前記溶出性アルカリ金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。
【0034】
また、前記溶出性アルカリ金属イオン及び溶出性塩化物イオンなどの溶出性不純物の合計の含有量としては、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。前記合計の含有量が、20ppm以下であると、アルミナ表面から樹脂などのマトリックスへのイオン成分の拡散が抑制され、前記アルミナ粒子を使用して得られる硬化物の耐久性が向上するため、好ましい。
【0035】
前記非球状アルミナ粒子は、α結晶化率が、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。前記α結晶化率が、前記範囲内であることにより、前記非球状アルミナ粒子の高熱伝導化にとって有利となり、好ましい。
【0036】
本発明は、前記非球状アルミナ粒子の製造方法であって、モリブデン化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成した後に、アルカリ洗浄、酸洗浄、及び、湿式解砕する工程を含み、前記アルミニウム化合物と、前記モリブデン化合物中のモリブデンとのモル比(モリブデン/アルミニウム)が、0.03~3.0である非球状アルミナ粒子の製造方法に関する。
前記製造方法において、モリブデン化合物の存在下で、アルミニウム化合物が焼成工程を経ることで、前記アルミニウム化合物中に含まれるウランがモリブデン化合物中に溶出し、更にアルカリ洗浄、酸洗浄工程を経ることにより、ウランが溶解したモリブデン化合物を除去することで、ウラン含有量の低減が図れ、溶出性アルカリ金属イオン及び溶出性塩化物イオンなどの溶出性不純物を除去することができる。
また、湿式解砕工程を経ることで、焼結や凝集により生じた二次粒子が一次粒子に解されることで、エポキシ樹脂などを含有するエポキシ樹脂組成物中で、分散・充填されやすい形態となり、かつ、表面不純物除去を促進することで、前記非球状アルミナ粒子を製造でき、有用である。
更に、酸洗浄やアルカリ洗浄の前、あるいは、それらと同時に湿式解砕を行うことで、洗浄すべきアルミナ粒子の表面を露わとし、酸洗浄、アルカリ洗浄を効率よく行うことができ、好ましい態様となる。
【0037】
前記アルミニウム化合物と、前記モリブデン化合物中のモリブデンとのモル比(モリブデン/アルミニウム)が、0.03~3.0であることが好ましく、0.05~1.5であることがより好ましく、0.08~1.0であることが更に好ましい。前記モル比が、前記範囲内であることにより、高いα結晶化率を有し、形状の整った多面体形状の粒子を、経済的に得ることができ、好ましい。
【0038】
[非球状アルミナ粒子の製造方法]
前記非球状アルミナ粒子の製造方法としては、モリブデン化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成した後に、アルカリ洗浄、酸洗浄、及び、湿式解砕する工程を含むものである。
【0039】
[焼成工程]
本発明における焼成工程は、モリブデン化合物(さらには、カリウム化合物)の存在下で、ウラン含有のアルミニウム化合物を焼成する工程である。モリブデン化合物存在下で、アルミニウム化合物を焼成することで、前記アルミニウム化合物中に含まれるウランがモリブデン化合物中に溶出され、アルミニウム化合物中のウラン含有量を低減することができ、同時に、モリブデン化合物存在下で、結晶成長することで、結晶性の高いアルミナ単結晶粒子を得ることができ、更に、前記アルミナ単結晶粒子は、多面体形状を形成するため、熱伝導性に優れ、有用である。
【0040】
(モリブデン化合物)
前記モリブデン化合物としては、特に制限されないが、金属モリブデン、酸化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アンモニウム、HPMo1240、HSiMo1240等のモリブデン化合物が挙げられる。なお、前記モリブデン化合物は、異性体を含むものである。例えば、酸化モリブデンは、二酸化モリブデン(IV)(MoO)であっても、三酸化モリブデン(VI)(MoO)であってもよい。また、モリブデン酸カリウムは、KMo3n+1の構造式を有し、nは1であっても、2であっても、3であってもよい。これらのうち、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウムであることが好ましく、三酸化モリブデンであることがより好ましい。前記モリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(カリウム化合物)
また、前記モリブデン化合物に加えて、カリウム化合物を併用することもできる。前記カリウム化合物としては、特に制限されないが、塩化カリウム、亜塩素カリウム、塩素酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、酸化カリウム、臭化カリウム、臭素酸カリウム、水酸化カリウム、珪酸カリウム、燐酸カリウム、燐酸水素カリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸カリウム等が挙げられる。なお、前記カリウム化合物は、前記モリブデン化合物と同様に、異性体を含むものである。これらのうち、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることが好ましく、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることがより好ましい。前記カリウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(アルミニウム化合物)
前記アルミニウム化合物としては、熱処理によりアルミナ粒子になるものであれば特に限定されず、例えば、金属アルミニウム、硫化アルミニウム、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移アルミナ(γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナなど)、α-アルミナ、2種以上の結晶相を有する混合アルミナ等が挙げられる。これらのうち、遷移アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびこれらの水和物を用いることが好ましく、焼成工程で有害ガスを発生しない点で、遷移アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、水酸化アルミニウムを用いることがより好ましい。前記アルミニウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記アルミニウム化合物は、市販品を使用しても、自ら調製してもよい。
【0044】
焼成温度は、特に制限されないが、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることがより好ましく、900~2000℃であることがさらに好ましく、950~1600℃であることが特に好ましく、950~1200℃であることが最も好ましい。前記焼成温度が700℃以上であると、アルミニウム化合物などに含まれるウランがモリブデン化合物中に溶出し、アルミナ粒子中のウラン含有量の低減を図ることができ、好ましい。
【0045】
焼成時におけるモリブデン化合物(更には、カリウム化合物)、およびアルミニウム化合物等の状態は、特に限定されず、これらが混合されていればよい。混合方法としては、粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機やミキサー等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合等が挙げられる。この際、得られる混合物は、乾式状態、湿式状態のいずれであってもよいが、コストの観点から乾式状態であることが好ましい。
【0046】
焼成時間についても、特に制限されないが、0.1~1000時間であることが好ましく、非球状アルミナ粒子の形成を効率的に行う観点から、1~100時間であることがより好ましい。前記焼成の時間が0.1時間以上であると、平均粒子径が0.1~100μmの非球状アルミナ粒子を得ることができるため好ましい。一方、焼成時間が1000時間以内であると、製造コストを低く抑えられることから好ましい。
【0047】
焼成の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、空気や酸素のような含酸素雰囲気、窒素やアルゴンのような不活性雰囲気であることが好ましく、安全性や炉の耐久性の観点から、腐食性を有さない含酸素雰囲気、窒素雰囲気であることがより好ましく、コストの観点から、空気雰囲気であることがさらに好ましい。
【0048】
焼成時の圧力については、特に制限されず、常圧下であっても、加圧下であっても、減圧下であってもよい。また、加熱手段としては、特に制限されないが、焼成炉を用いることが好ましい。この際使用されうる焼成炉としては、トンネル炉、ローラーハース炉、ロータリーキルン、マッフル炉等が挙げられる。
【0049】
[アルカリ洗浄工程]
アルカリ洗浄工程は、焼成工程で得られたアルミナ粒子の表面不純物のうち、アルカリで溶解する成分を除去する目的で実施され、アルミナ粒子とアルカリ水溶液と接触させる工程である。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水などが挙げられ、特に制限はなく、2種以上のアルカリの混合水溶液を用いても構わない。僅かなアルカリ金属の残存が問題になる用途での製造であれば、アンモニア水を用いることが好ましい。一方、廃水処理や臭気対策のコストが問題になる場合は、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ水溶液の濃度としては、特に制限はないが、アルミナ粒子との接触時にpHが9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
アルミナ粒子とアルカリ水溶液との接触方法としては、例えば、アルカリ水溶液中にアルミナ粒子を投入し、攪拌する方法があるが、特に制限はない。
接触時間は、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
接触時の温度に制限はないが、加温することで、接触時間を低減できる。
アルミナ粒子と接触させたアルカリ水溶液には不純物が溶解しているため、デカンテーションや、フィルタープレスによるろ過、或いは、遠心分離などで分離することができる。
【0050】
[酸洗浄工程]
酸洗浄工程は、焼成工程で得られたアルミナ粒子の表面不純物のうち、酸で溶解する成分を除去する目的で実施され、アルミナ粒子と酸水溶液と接触させる工程である。
酸水溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸などの水溶液が挙げられ、特に制限はないが、工業規模で経済的に実施する場合は硫酸を用いることが好ましい。
酸水溶液の濃度としては、特に制限はないが、アルミナ粒子との接触時にpHが2以下であることが好ましく、1以下であることが更に好ましい。
アルミナ粒子と酸水溶液との接触方法としては、例えば、酸水溶液中にアルミナ粒子を投入し、攪拌する方法があるが、特に制限はない。
接触時間は、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
接触時の温度に制限はないが、加温することで接触時間を低減できる。
アルミナと接触させた酸水溶液には不純物が溶解しているため、デカンテーションや、フィルタープレスによるろ過、或いは、遠心分離などで分離することができる。
【0051】
[湿式解砕工程]
湿式解砕工程は、焼成工程で得られるアルミナ粒子の焼結や凝集を解すと共に、表面不純物除去を促進するために行う。
具体的には、水の中にアルミナ粒子を投入してスラリー化し、スラリーを湿式解砕機にかける。焼成工程で得られるアルミナ粒子が大きな塊になっている場合は、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ピンミルなどの乾式解砕機で予め乾式解砕してからスラリー化することが好ましい。
スラリーの濃度としては、特に制限はないが、濃度が高すぎると粘度が高くなり、湿式解砕作用が働かなくなり、一方で、濃度が低すぎると効率が低下するため、スラリー粘度が100mPa・sを超えない範囲でできるだけ濃度を高くすることが好ましい。
使用する水は、イオン交換水や蒸留水が使用可能であるが、更に、前記アルカリ洗浄工程で使用するアルカリ、又は、前記酸洗浄工程で使用する酸を溶解しておくことで、アルカリ洗浄工程と湿式解砕工程、又は、酸洗浄工程と湿式解砕工程を同時に行うことができて効率的である。
使用する湿式解砕機としては、ボールミル、ビーズミル、ディスクミル、湿式ジェットミル、ディスパーなどを挙げることができる。アルミナ粒子が小さいほどボールミルやビーズミルなど強力な湿式解砕機が適しており、一方、アルミナ粒子が大きいほど衝撃力で割れやすいため、ディスパーなどマイルドな湿式解砕機が適しており、粒子の大きさによって適宜選択する。
【0052】
[粗粒除去工程]
湿式解砕で解れなかった粒子(凝集により生じた二次粒子)や、焼成工程で異常成長してしまった粗大粒子などを除去するため、アルミナ粒子のスラリーを、振動篩、ターボスクリーナー、スラリースクリーナーなどの篩機や、液体サイクロンなどの遠心分離機にかけることで、粗粒を除去することが好ましい。
【0053】
[通水洗浄工程]
アルカリ洗浄、酸洗浄、湿式解砕の後、スラリーの水相に溶解している不純物を除去する目的で、通水洗浄をすることが好ましい。
具体的には、フィルタープレス、ベルトフィルター、ヌッチェ、桐山ロートなどのろ過装置・器具でスラリーをろ過してアルミナ粒子のウェットケーキを形成し、イオン交換水をウェットケーキに通水する。
通水方法は、フィルタープレスの場合は水圧による押し込み、ベルトフィルター、ヌッチェ、桐山ロートは減圧による吸い込みなどが挙げられ、特に制限はない。
通水は、ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで行うことが、不純物除去の観点から好ましい。
【0054】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記(D)無機充填材が、前記非球状アルミナ粒子を含むエポキシ樹脂組成物に関する。前記エポキシ樹脂組成物により得られる硬化物は、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性を具備することができ、好ましい。
【0055】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)を含むことが好ましい。前記(A)成分は、エポキシ樹脂組成物の調製時の流動性が良好となり、密着性に優れた硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物を調製することができ、有用である。
【0056】
前記(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格およびジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。前記エポキシ樹脂は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
これらの中でも、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)等が耐熱性に優れる硬化物が得られる点から特に好ましい。
【0058】
前記(A)成分のエポキシ当量は、100~400g/eqであることが好ましく、120~300g/eqであることがより好ましく、150~250g/eqであることが更に好ましい。ここでのエポキシ当量の測定は、JIS K7236に基づいて測定されるものである。
【0059】
[(B)硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(B)硬化剤(以下、「(B)成分」という場合がある。)を含むことが好ましい。
【0060】
前記(B)成分としては、例えば、フェノール樹脂、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、シアネートエステル化合物、不飽和二重結合含有置換基を有する化合物、ジエン系ポリマーなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記フェノール樹脂として、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0062】
前記アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0063】
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0064】
前記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0065】
前記シアネートエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0066】
前記不飽和二重結合含有置換基を有する化合物としては、例えば、分子中に2個以上の不飽和結合含有置換基を有する化合物であれば特に限定されないが、前記不飽和結合含有置換基として、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、スチリルメチル基などを有する化合物が挙げられる。
【0067】
前記ジエン系ポリマーとしては、例えば、極性基により変性されていない非変性ジエン系ポリマーが挙げられる。ここで、極性基とは、誘電特性に影響を及ぼす官能基であり、例えば、フェノール基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。前記ジエン系ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、1,2-ポリブタジエンや1,4-ポリブタジエン等を用いることができる。
【0068】
前記ジエン系ポリマーとして、ポリマー鎖中のブタジエン単位の50%以上が1,2-結合であるブタジエンのホモポリマー及びその誘導体を用いることもできる。
【0069】
前記エポキシ樹脂を含有する前記(A)成分の使用量に対する前記(B)成分の使用量としては、前記(A)成分のエポキシ当量と前記(B)成分の活性水素当量の比(エポキシ当量/活性水素当量)が、0.7~1.3であることがより好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。前記(エポキシ当量/活性水素当量)が前記範囲外であると、得られる硬化物が、硬化不良を生じる恐れがある。
【0070】
[(C)硬化促進剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)硬化促進剤(以下、「(C)成分」という場合がある。)を含むことが好ましい。前記エポキシ樹脂組成物が、前記(C)成分を含むことで、硬化物を得る際の硬化時間が短くなり、好ましい。
【0071】
前記硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。なお、前記硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
前記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
【0073】
前記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(4-ジメチルアミノピリジン、DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0074】
前記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0075】
前記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
【0076】
前記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0077】
前記硬化促進剤のうち、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤を用いることが硬化性の観点から好ましく、絶縁信頼性の観点から、リン系硬化促進剤が特に好ましい。
【0078】
前記硬化促進剤の使用量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤の混合物の合計量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の使用量が前記範囲内にあると、硬化性、及び、絶縁信頼性に優れ、好ましい。
【0079】
[(D)無機充填材]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(D)無機充填材(以下、「(D)成分」という場合がある。)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記(D)無機充填材が、前記非球状アルミナ粒子を含むことが好ましい。前記エポキシ樹脂組成物が、前記非球状アルミナ粒子を含むことで、得られる硬化物が、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性を発揮でき、有用となる。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂組成物中に、前記非球状アルミナ粒子を50質量%以上含有することが好ましく、50~85質量%含有することがより好ましく、55~80質量%含有することが更に好ましい。前記非球状アルミナ粒子を前記範囲内で含有することにより、成形性と熱伝導を両立でき、好ましい。
【0081】
前記(D)成分は、本発明の特性を損なわない範囲内であれば、前記非球状アルミナ粒子以外の無機充填材を含むことができる。前記非球状アルミナ粒子以外の無機充填材としては、例えば、前記非球状アルミナ粒子以外のアルミナ、シリカ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。なお、前記無機充填材は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
また、前記(D)成分は、前記非球状アルミナ粒子を含めて、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用でき、中でも、シラン系カップリング剤が好ましい。
前記シラン系カップリング剤の具体例としては、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4エポキシシンクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシリメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお、前記表面処理剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
前記無機充填材の使用量は、前記(A)成分と前記(B)成分との混合物の合計量100質量部に対して、100~2000質量部であることが好ましく、400~1800質量部であることがより好ましい。前記無機充填材の使用量が、前記範囲内にあると、前記無機充填剤に含まれる前記非球状アルミナ粒子により、高熱伝導性、低α線放射性、及び、高耐久性に優れ、好ましい。
【0084】
また、本発明の特性を損なわない範囲であれば、前記無機充填材に加えて、有機充填材を配合することができる。前記有機充填材としては、例えば、ポリアミド粒子等が挙げられる。
【0085】
[溶媒]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無溶剤で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、エポキシ樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。
【0086】
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記溶媒の使用量としては、前記エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶媒の使用量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の使用量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
【0088】
[その他添加剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、離型剤、顔料、着色剤、乳化剤、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の種々の添加剤を配合することができる。
【0089】
[混合]
前記エポキシ樹脂組成物は、非球状アルミナ粒子と、前記(A)成分、さらにその他の原料成分を混合することにより得られる。その混合方法に特に限定はなく、公知慣用の方法により、混合される。
【0090】
[硬化物]
本発明は、前記エポキシ樹脂組成物により得られる硬化物に関する。前記硬化物は、前記エポキシ樹脂組成物を用いて得られるため、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高耐久性に優れ、有用である。特に、前記非球状アルミナ粒子を使用した硬化物であるため、熱伝導性が向上し、半導体チップなどから発生した熱を効率的に放散できるため、半導体封止材用途に好適に用いることができる。
【0091】
前記エポキシ樹脂組成物を硬化反応させた硬化物を得る方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、150~250℃であり、加熱時間としては、1~10時間であることが好ましい。
【0092】
本発明の硬化物は、α線カウンターを用いて測定したα線量が、0.0020counts/cm・h以下であることが好ましく、0.0010counts/cm・h以下であることがより好ましい。前記α線量が、前記範囲内にあることにより、例えば、メモリー半導体封止材として使用した際に、メモリー半導体の誤作動(エラー)の発生を抑制し、制御安定性に優れた半導体装置を得ることができ、三次元実装のアンダーフィル材として使用した際に、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止でき、好ましい。
【0093】
本発明の硬化物は、その熱伝導率が、0.5W/(m・K))以上であることが好ましく、0.8W/(m・K))以上であることがより好ましい。前記熱伝導率が、前記範囲内にあることにより、封止した半導体メモリ等で発生した熱を効率的にヒートシンクへ流すことができ、好ましい。
【0094】
<半導体封止材>
本発明は、前記硬化物を含む半導体封止材に関する。前記エポキシ樹脂組成物を用いて得られる半導体封止材は、前記エポキシ樹脂を含有することで、得られる硬化物は、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高耐久性を具備することができ、好ましい。
【0095】
前記半導体封止材を得る方法としては、前記エポキシ樹脂組成物に、更に任意成分である添加剤を必要に応じて加え、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法などが挙げられる。
【0096】
<半導体装置>
本発明は、前記半導体封止材を含む半導体装置に関する。前記エポキシ樹脂組成物を用いた硬化物を含む半導体封止材を含む半導体装置は、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高耐久性を具備することができ、好ましい。
【0097】
前記半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに150~250℃で、1~10時間の間で加熱硬化する方法が挙げられる。
【0098】
<その他の用途>
本発明の硬化物は、高熱伝導性、低α放射線性、及び、高耐久性などに優れることから、半導体封止材や半導体装置だけでなく、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂など、各種用途にも好適に使用可能であり、用途においては、これらに限定されるものではない。
【実施例0099】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。また、実施例中、特に言及のない場合は質量換算である。
【0100】
[実施例1]
(アルミナ粒子の調製)
水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、B153)516gと三酸化モリブデン(日本無機化学工業社製、三酸化モリブデン)84gを小型ヘンシェルミキサーで混合した(モリブデン/アルミニウムのモル比=0.088)。この混合物をアルミナ匣鉢に入れて、マッフル炉にて1000℃で2.5時間焼成した。
焼成物の塊をロールクラッシャーで1mm以下に粗解砕した後、1Lの脱イオン水に懸濁させ、10%塩酸を滴下してpH1とし、5mmジルコニアボールをメディアとするボールミルで1時間解砕することで、酸洗浄と湿式解砕を同時に実施した。
得られたスラリーを20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7とし、目開き10μmの篩を備えたスラリースクリーナーで処理して10μm以上の粒子を除去した後、更に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11とし、1時間攪拌してアルカリ洗浄を実施した。
アルカリ洗浄後のスラリーに10%塩酸を滴下してpH7としてから、桐山ロートにセットしたNo.5Cの濾紙で減圧濾過した。
次いで、減圧しながら、濾紙上のウェットケーキに脱イオン水2Lをゆっくり通水洗浄し、最後の濾液の導電率は8μS/cmであった。通水洗浄したウェットケーキを150℃の乾燥機で乾燥した後、乳鉢で解砕してアルミナ粒子1を285g得た。
【0101】
[実施例2]
(アルミナ粒子の調製)
γ-アルミナ(CHALCO社製、AO9999)350gと三酸化モリブデン(日本無機化学工業社製、三酸化モリブデン)140gと炭酸カリウム(AGC社製、一般工業用)70gをヘンシェルミキサーで混合した(モリブデン/アルミニウムのモル比=0.14)。この混合物をアルミナ匣鉢に入れて1100℃で10時間焼成した。
焼成物の塊をピンミルで1mm以下に粗解砕した後、1Lの脱イオン水に懸濁させ、20%水酸化カリウム水溶液を滴下してpH11とし、10mmアルミナボールをメディアとするボールミルで30分解砕することで、アルカリ洗浄と湿式解砕を同時に実施した。
得られたスラリーを30分静置後デカンテーションで水相の800mLを除去し、次いで800mLの脱イオン水を加えた。そして、20%硫酸でpH7に調整し、目開き45μmの振動篩を通して45μm以上の粒子を除去した後、更に20%硫酸でpH1とし、1時間攪拌して酸洗浄を実施した。
酸洗浄後のスラリーに20%硫酸を滴下してpH8とした後、桐山ロートにセットしたNo.5Cの濾紙で減圧濾過した。
減圧しながら、濾紙上のウェットケーキに脱イオン水2Lをゆっくり通水洗浄し、最後の濾液の導電率は9μS/cm以下であった。
通水洗浄したウェットケーキを150℃の乾燥機で乾燥した後、乳鉢で解砕してアルミナ粒子2を300g得た。
【0102】
[実施例3]
(アルミナ粒子の調製)
ベーマイト(大明化学社製、ベーマイト粉C20)412gとモリブデン酸カリウム(富士フイルム和光社製、試薬)589gと酸化イットリウム(日本イットリウム社製、YT3S)1.8gをヘンシェルミキサーで混合した(モリブデン/アルミニウムのモル比=0.36)。この混合物をアルミナ匣鉢に入れて1050℃で20時間焼成した。
焼成物の塊をロールクラッシャーで1mm以下に粗解砕した後、5Lの脱イオン水に懸濁させ、20%硫酸を滴下してpH2とし、20mmアルミナボールをメディアとするボールミルで30分解砕することで、酸洗浄と湿式解砕を同時に実施した。
得られたスラリーを30分静置後デカンテーションで水相の4Lを除去し、次いで4Lの脱イオン水を加えた。そして、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、目開き100μmの篩を通して100μm以上の粒子を除去した後、更に20%水酸化ナトリウム水溶液でpH11とし、1時間攪拌してアルカリ洗浄を実施した。
アルカリ洗浄後のスラリーに20%硫酸を滴下してpH7.5とした後、桐山ロートにセットしたNo.5Cの濾紙で減圧濾過した。
減圧しながら、濾紙上のウェットケーキに脱イオン水5Lをゆっくり通水洗浄し、最後の濾液の導電率は5μS/cm以下であった。
通水洗浄したウェットケーキを150℃の乾燥機で乾燥した後、乳鉢で解砕してアルミナ粒子3を305g得た。
【0103】
[実施例4]
(アルミナ粒子の調製)
γ-アルミナ(CHALCO社製、AO9999)350gと三酸化モリブデン(日本無機化学工業社製、三酸化モリブデン)950gと塩化カリウム(関東化学社製、試薬)946gをヘンシェルミキサーで混合した(モリブデン/アルミニウムのモル比=0.96)。この混合物をアルミナ匣鉢に入れて1050℃で30時間焼成した。
焼成物の塊をピンミルで1mm以下に粗解砕した後、10Lの脱イオン水に懸濁させ、20%水酸化カリウム水溶液を滴下してpH11とし、ディスパーで1時間解砕することで、アルカリ洗浄と湿式解砕を同時に実施した。
得られたスラリーを10分静置後デカンテーションで水相の8Lを除去し、次いで8Lの脱イオン水を加えた。そして、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、目開き200μmの振動篩を通して200μm以上の粒子を除去した後、更に20%硫酸でpH1とし、1時間攪拌して酸洗浄を実施した。
酸洗浄後のスラリーに20%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH8とした後、ヌッチェにセットしたNo.2の濾紙で減圧濾過した。
減圧しながら、濾紙上のウェットケーキに脱イオン水10Lをゆっくり通水洗浄し、最後の濾液の導電率は4μS/cmであった。
通水洗浄したウェットケーキを150℃の乾燥機で乾燥した後、乳鉢で解砕してアルミナ粒子4を305g得た。
【0104】
[比較例1]
(アルミナ粒子の調製)
アルカリ洗浄を実施しない事以外は、実施例1と同様の方法にてアルミナ粒子5を303g得た。通水洗浄し、最後の濾液の導電率は10μS/cmであった。
【0105】
[比較例2]
(市販のアルミナ粒子)
市販の球状のアルミナ粒子6(日鉄ケミカルズ&マテリアルズ社製、商品名、AZ4-75)を使用した。
【0106】
[比較例3]
(アルミナ粒子の調製)
酸洗浄を実施しない事以外は、実施例1と同様の方法にてアルミナ粒子7を308g得た。通水洗浄の最後の濾液の導電率は10μS/cmであった。
【0107】
(アルミナ粒子の評価)
アルミナ粒子1~7につき、形状、平均粒子径、α結晶化率、溶出性アルカリ金属イオン及び溶出性塩化物イオンの含有量、ウラン含有量は、表1の通りであった。
【0108】
[実施例5]
(硬化物の調製)
得られたアルミナ粒子1を、まず、表2の組成の欄に示す(A)エポキシ樹脂、(D)無機充填材(前記無機充填剤は、使用するアルミナ粒子を100質量%含有する。)、カップリング剤、及び、分散剤と共に配合し、プラネタリーミキサー及び三本ロールの順にて、混合を行った。
次いで、上記の混合物に、(B)硬化剤、及び、(C)硬化促進剤を加え、プラネタリーミキサーを用いて、再度、撹拌、混合して、液状のエポキシ樹脂組成物を製造した。
このエポキシ樹脂組成物を130℃で1時間加熱した後、180℃で3時間加熱して、硬化させて硬化物を得た。また、この硬化物について、評価結果を表3に示した。
【0109】
<単結晶の確認>
走査型電子顕微鏡観察(SEM)(JEOL社製、装置名:JCM7000)写真で、結晶構造を反映した多面体構造を有する粒子であることを目視で確認し、単結晶であるか、否かを判断した。
【0110】
<α結晶に由来する面の確認>
走査型電子顕微鏡(SEM)により多面体形状の観察を行った。具体的には、JEOL社製JCM7000を用いて、多面体形状の観察を行った。より詳細には、サンプルの任意の視野からの複数SEM画像により得られたイメージを観察した。そして、無作為に選出した50個のアルミナ粒子の観察結果に対し、個数基準で60%以上の粒子の形状を、そのサンプルが有する形状と判断した。
【0111】
<平均粒子径>
得られたアルミナ粒子0.05gを0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液50gに混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間分散し、レーザー光散乱回折法粒度測定機(マイクロトラックベル社製、MT3300EXII)を用いて粒度分布の測定を行い、平均粒子径(μm)を算出した。
【0112】
<α結晶化率>
リガク社製X線回折測定装置UltimaIVを用いて、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード2.0度/分、スキャン範囲5~70度、ステップ0.02度の条件で粉末X線回折パターンを測定した。次いで、解析ソフトウェアのリガク製PDXL2を用いて、結晶相の同定、および、参照強度比法(RIR)法によるα-アルミナ相の定量を行い、α-アルミナ含有量をα結晶化率(%)とした。
【0113】
<溶出性不純物(溶出イオン)>
90℃の熱水に10時間浸漬した後、上澄みを採取して、下記条件にてイオンクロマト分析し、溶出イオンの含有量(ppm)を測定した。
装置:ThermoFisher社製、DionexIntegrionHPIC
<陰イオン測定条件>
分離カラム:IonpacAS12A
溶離液:2.7mmol/L NaCO/0.3mmol/L NaHCO
溶離液流量:1.5mL/min
<陽イオン測定条件>
分離カラム:IonpacCS12A
溶離液:20mmol/L メタンスルホン酸
溶離液流量:1.0mL/min
【0114】
<ウラン含有量の測定>
得られたアルミナ粒子と硫酸(1+1)をテフロン(登録商標)製分解容器に入れ、215℃のオーブンに入れて加圧酸分解した。放冷後、超純水で定容して、アジレント・テクノロジー製誘導結合プラズマ質量分析装置Agilent8800型にて定量分析を行い、ウラン含有量(ppb)を測定した。
【0115】
<α線カウンターによるα線量の測定>
コンプレッション成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間2分で、上記で得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、硬化物である試験片(140mm×120mm、厚さ0.2mm)を成形した。
得られた試験片6枚を並べて、試験サンプルとし(表面積の合計1008cm)、この試験サンプルを用いて低レベルα線測定装置(住友化学工業(株)製、LACS-4000M、印加電圧1.9KV、PR-10ガス(アルゴン:メタン=9:1)100m/分、有効計数時間88h)で、試験片のα線量を測定(counts/cm・h)した。
【0116】
<熱伝導率の測定>
上記得られた硬化物から、9.8mm×9.8mm×1.0mm厚の正方形の板状の試験片を切り出した。
この試験片にグラファイトスプレーを噴射し、キセノンフラッシュアナライザーを用いて、熱拡散率a(cm/s)を測定した。
また、アルキメデス法により、上記試験片の25℃における密度ρ(g/cm)を測定した。
さらに、DSC法により、上記試験片の比熱c(J/(g・K))を測定した。
そして、上記の熱拡散率a(cm/s)に密度ρ(g/cm)及び比熱c(J/(g・K))を乗じることにより、上記試験片の厚さ方向の熱伝導率k(W/(m・K))を求めた。
熱伝導率k(W/(m・K))=密度ρ(g/cm)×熱拡散率a(cm/s)×比熱c(J/(g・K))
【0117】
上記硬化物のα線カウンターのα線量、及び、熱伝導率の結果については、表3に示した。
【0118】
[実施例6~10、及び、比較例4~6]
(硬化物の調製)
得られたアルミナ粒子2~7を用いて、実施例5と同様の方法にて、表2の組成に基づき、それぞれのエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。また、これらの硬化物について、評価結果を表3に示した。なお、実施例5と同様、使用する無機充填剤は、それぞれ使用するアルミナ粒子を100質量%含有する(アルミナ粒子を混合する場合も同様)。
【0119】
なお、表2中の原料については、以下に詳細を説明した。
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、DIC社製、EXA-830LVP(製品名)、エポキシ当量161g/eq
硬化剤:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、日本化薬社製、カヤハードA-A(製品名)、活性水素当量:63g/eq
カップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
上記表1の評価結果より、実施例1~4において、所望の非球状アルミナ粒子を得ることができた。また、上記表3の評価結果より、実施例5~10において、α線量が低く抑えられ、熱伝導率に優れた硬化物を得られることが確認できた。
【0124】
一方、上記表1の評価結果より、比較例1~3においては、ウラン含有量が十分に低く、かつ、非球状アルミナ粒子を得ることができなかった。また、上記表3の評価結果より、比較例4~6において、所望の特性を、全てを満足するものは得られなかった。
図1
図2
図3
図4