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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123941
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】垂直分離型撮像素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/339 20060101AFI20240905BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240905BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L29/76 301D
H01L27/146 C
H10K39/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031787
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA14
4M118CA22
4M118CA27
4M118CB14
4M118CB20
4M118EA14
4M118FB03
4M118FB13
4M118GA09
4M118GD20
4M118HA23
4M118HA25
4M118HA26
(57)【要約】
【課題】 撮像素子の特性や耐久性の良好性を維持しつつ、各分離層で得られた情報毎にフォーカスずれのない撮像が可能な垂直分離型撮像素子を提供する。
【解決手段】 基板51、52、53上に、信号の読出し処理を行う信号読出し回路部11、21、31と、有機膜(112、122、132)を画素電極(116、126、136)および対向電極(114、124、134)により挟持してなる有機光電変換膜部12、22、32とを積層してなる、所定の波長域の光情報を取得する撮像素子部10、20、30を複数個積層してなる垂直分離型撮像素子200であって、撮像素子部10、20、30同士の間に、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置してなる光学像伝達層17、27を介在させてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、信号の読出し処理を行う信号読出し回路部と、有機膜を画素電極および対向電極により挟持してなる有機光電変換膜部とを積層してなる、所定の波長域の光情報を取得する撮像素子部を複数個積層してなる垂直分離型撮像素子において、
前記撮像素子部同士の間に、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置してなる光学像伝達層を介在させてなることを特徴とする垂直分離型撮像素子。
【請求項2】
前記光学像伝達層の厚みtが下式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の垂直分離型撮像素子。
1μm ≦ t ≦ 3mm (1)
【請求項3】
前記光学像伝達層の前記光ファイバーを構成する材料が、石英、多成分ガラス、プラスチック、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂の中から選択される材料であることを特徴とする請求項1に記載の垂直分離型撮像素子。
【請求項4】
前記光学像伝達層の前記光ファイバーの径dが下式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の垂直分離型撮像素子。
0.4μm ≦ d ≦ 50μm (2)
【請求項5】
3原色光の各々に対応する3つの前記撮像素子部を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の垂直分離型撮像素子。
【請求項6】
前記基板が、0.1mm以下の厚みとされたポリイミド膜からなることを特徴とする請求項1に記載の垂直分離型撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直分離型撮像素子に関し、詳しくは、積層された複数の撮像素子部の各々が薄膜トランジスタ(TFT)を備えた垂直分離型撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現行のカメラにおいて、カラー画像を取得する手法としては、RGBの各色光毎に設けた3枚の撮像素子からの各出力を合成してカラー画像を取得する3板式と、RGBの各色光毎に感度を有する3種の画素を備えた1枚の撮像素子の出力を用いてカラー画像を取得する単板式の2つの方式が知られている。
上記3板式は、入射した光を色分解プリズムによって3原色光、すなわち赤(R)、緑(G)、青(B)の光に色分離し、この分離された各色光を、対応する各撮像素子に照射し、各々の撮像素子により得られた各色光の像を取得する。このため、入射光を効率よく利用でき、高画質な撮像が可能であるが、その一方で、色分解プリズムが必要であり小型化が困難である。
【0003】
他方、上記単板式は、1つの撮像素子の各画素にRGBのカラーフィルタを順次配置して色分離を行う。そのため、小型化が可能である反面、入射光のうち特定の波長域の光以外を吸収するカラーフィルタを用いているため、3板式に比べて光の利用効率が低く、画質の低下は避けられない。このように、3板式と単板式の方式には一長一短があるため、撮像素子の高画質化と小型化を両立させ得る撮像素子が望まれていた。
【0004】
そこで、撮像素子の高画質化と小型化の両立を目的として、R光、G光、B光それぞれにのみ感度をもつ有機光電変換膜(有機膜)と、光透過型の薄膜トランジスタ(TFT)を搭載した信号読出し回路とを交互に積層した構造により光の進行方向に色分離を行い、1枚の撮像素子を用いて全画素でRGBすべての情報を取得し得る垂直色分離型の有機撮像素子が、種々提案されている。
【0005】
具体的には、例えば1枚のガラス基板上に3層の有機膜およびTFTを用いた信号読出し回路を交互に直接積層したもの(下記特許文献1)や、ガラス基板上にTFTを用いた信号読出し回路と有機膜を成膜した素子を3枚積層したもの(下記特許文献2)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-67075号公報
【特許文献2】特開2005-51115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2のように個別の基板上に読出し回路と有機膜を形成する場合、RGB各色に対応する光電変換部同士の間に、読出し回路や基板、さらには層間絶縁膜が挿入されているため、光電変換部同士の距離が離れてしまう。このため、撮像レンズにより撮像素子に結像させた光学像において、色ごとにフォーカスがずれてしまい、RGB全ての画像で同時にピントを合わせることが難しいという問題が発生していた。このフォーカスずれの問題は、撮像素子の画素が微細化するにしたがって顕在化してくる。
【0008】
一方、上記特許文献1のように、垂直色分離型の各撮像素子を1枚の基板上に積層することによって各色用の光電変換部同士を接近させることが可能となるが、その場合、有機膜の上に読出し回路を直接形成することになるので、読出し回路を形成する際に高温で加熱すると読出し回路の下部に位置する有機膜がダメージを受ける可能性がある。したがって、読出し回路は、どうしても低温加熱により形成せざるを得ず、撮像素子の特性や耐久性の点で、より優れたものを形成したいという要求があった。
上記では、各分離層で得られた情報が3原色光に対応するものを想定しているが、例えば、赤外光や紫外光等を含む波長帯域中から、複数の所定の波長帯域の情報を得、それらの情報を合成して目的とする像を得る撮像素子の場合も、同様の課題を有していた。
【0009】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、撮像素子の特性や耐久性の良好性を維持しつつ、各分離層で得られた情報毎にフォーカスずれのない撮像が可能な垂直分離型撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するため、本発明の垂直分離型撮像素子は以下のような構成とされている。
すなわち、本発明の垂直分離型撮像素子は、
基板上に、信号の読出し処理を行う信号読出し回路部と、有機膜を画素電極および対向電極により挟持してなる有機光電変換膜部とを積層してなる、所定の波長域の光情報を取得する撮像素子部を複数個積層してなる垂直分離型撮像素子において、
前記撮像素子部同士の間に、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置してなる光学像伝達層を介在させてなることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記光学像伝達層の厚みtが下式(1)を満足することが好ましい。
1μm ≦ t ≦ 3mm (1)
また、前記光学像伝達層の前記光ファイバーを構成する材料が、石英、多成分ガラス、プラスチック、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂の中から選択される材料であることが好ましい。
【0012】
また、前記光学像伝達層の前記光ファイバーの径dが下式(2)を満足することが好ましい。
0.4μm ≦ d ≦ 50μm (2)
また、上記垂直分離型撮像素子は、3原色光の各々に対応する3つの前記撮像素子部を積層してなることが好ましい。
また、前記基板は、0.1mm以下の厚みとされたポリイミド膜からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の垂直分離型撮像素子によれば、積層された撮像素子部同士の間に、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置してなる光学像伝達層を配設しているため、上方に位置する撮像素子部から出力された光学像は、そのまま下方に位置する撮像素子部へ入力される。すなわち、撮像素子部間では光の拡散を防止することができ、光学像伝達層の存在によっても、光学像のボケを防止することができる。これにより各撮像素子から得られた各情報を合成した画像は、各情報間でフォーカスずれが抑制されたものとすることができる。
【0014】
また、撮像素子部同士の間に光学像伝達層が介在しているので、各撮像素子の基板を薄く形成しても、上部層の読出し回路の作成時に下部層の有機膜がダメージを受ける虞がなく、読出し回路を、高温により形成することができ、撮像素子の特性や耐久性を、より優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る垂直分離型撮像素子の層構成の概念を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る垂直分離型撮像素子の光学像伝達層の概念を示す図である。
図3図1に示す垂直分離型撮像素子における1つの撮像素子部の層構成をより具体的に示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る垂直分離型撮像素子のTFTの概略構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る垂直分離型撮像素子の製造方法における各製造工程((A)~(E))を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る垂直分離型撮像素子について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る垂直分離型撮像素子の層構成の概念を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る垂直分離型撮像素子200は、第1の撮像素子部10、第2の撮像素子部20および第3の撮像素子部30、をこの順に積層し、第1の撮像素子部10と第2の撮像素子部20の間に第1光学像伝達層17を、第2の撮像素子部20と第3の撮像素子部30の間に第2光学像伝達層27を配設したものである。
【0017】
図1に示すように、第1の撮像素子部10は、下方から順に、第1基板51、第1信号読出し回路部11、および第1有機光電変換膜部12を積層してなる。同様に、第2の撮像素子部20は、下方から順に、第2基板52、第2信号読出し回路部21、および第2有機光電変換膜部22を積層してなり、第3の撮像素子部30は、下方から順に、第3基板53、第3信号読出し回路部31、および第3有機光電変換膜部32を積層してなる。
【0018】
ここで、上方から入射した可視光のうち、まず第3波長域の光(例えば青色領域の光)が第3の撮像素子部30により取得され、残りの波長域の光のうち、第2波長域の光(例えば緑色領域の光)が第2の撮像素子部20により取得され、最後に残った光である第1波長域の光(例えば赤色領域の光)が第1撮像素子部10により取得される。
【0019】
また、上記第1光学像伝達層17および上記第2光学像伝達層27は、上方に位置する撮像素子部を透過し、出力された光学像を、ボケの無いそのままの光学像の状態で直下に位置する撮像素子部に入力せしめるとともに、上方に位置する撮像素子部の読出し回路部の形成過程で発生する高熱が、直下に位置する撮像素子部の有機光電変換膜部にダメージを与えるのを防止する保護層としても機能する。
【0020】
これら光学像伝達層17、27は、光透過性の高い光学材料で形成されている。すなわち、光学像伝達層17、27は、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置してなり、図2に示すように、第2光学像伝達層27は上方に位置する第3の撮像素子部30から出力された光学像を、そのまま下方に位置する第2の撮像素子部20へ入力するように機能し、第1光学像伝達層17は上方に位置する第2の撮像素子部20から出力された光学像を、そのまま下方に位置する第1の撮像素子部10へ入力するように機能する。
これにより、撮像素子部10、20、30間では光の拡散を防止することができ、光学像伝達層17、27の厚みによっても、光学像にボケが生じることがなく、各撮像素子から得られた各情報を合成した画像は、各情報間でのフォーカスずれを抑制されたものとすることができる。
【0021】
光学像伝達層17、27は、光の減衰量を少なくするために前述したように光透過性の高い光学材料で光ファイバーを形成することが好ましい。例えば、石英、多成分ガラス、プラスチック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂から選択されるものを用いることが好ましい。
【0022】
また、光学像伝達層17、27の厚みtは、下記条件式(1)を満足することが好ましい。
1μm ≦ t ≦ 3mm (1)
上式(1)の下限値を1μmとしたのは、可視光の波長より若干大きな値に設定するためである。また、上限値を3mmとしたのは、通常のファイバープレートの厚みが3mm程度であることを考慮したものである。
【0023】
上記光ファイバーの径dは、撮像素子10、20、30の画素サイズより小さいことが望ましい。例えば、撮像素子の画素サイズ程度である50μm以下とすることが好ましい。ただし、光伝達には波長程度以上の光ファイバー径が好ましいことから、可視光域の撮像に対しては0.4μm以上であることが好ましい。
すなわち、下式(2)を満足することが好ましい。
0.4μm ≦ d ≦ 50μm (2)
【0024】
各撮像素子部10、20、30は、各々が、略同様の層構成とされているので、ここでは、代表例として、第1の撮像素子部10の具体的な層構成を図3を用いて説明する(第2の撮像素子部20と第3の撮像素子部30の具体的な層構成は図示を省略)。この第1の撮像素子部10は、前述したように、第1基板51上に、第1信号読出し回路部11および第1有機光電変換膜部12を順に積層してなるものである。
第1信号読出し回路部11は、外部回路に信号を出力する配線部111aと、この配線部111aに接続されたTFT111bからなる。また、第1有機光電変換膜部12は、第1有機膜112を第1画素電極116と第1対向電極114により挟持するように構成される。
【0025】
同様にして、第2の撮像素子部20は、前述したように、第2基板52上に、第2信号読出し回路部21および第2有機光電変換膜部22を順に積層してなるものである。
より具体的には、第2信号読出し回路部21は、外部回路に信号を出力する配線部121aと、この配線部121aに接続されたTFT121bからなる。また、第2有機光電変換膜部22は、第2有機膜122を第2画素電極126と第2対向電極124により挟持するように構成される。
また、第3の撮像素子部30も、前述したように、第3基板53上に、第3信号読出し回路部31および第3有機光電変換膜部32を順に積層してなるものである。
より具体的には、第3信号読出し回路部31は、外部回路に信号を出力する配線部131aと、この配線部131aに接続されたTFT131bからなる。また、第3有機光電変換膜部32は、第3有機膜132を第3画素電極136と第3対向電極134により挟持するように構成される。
【0026】
本実施形態に係る垂直分離型撮像素子200は、上述したように構成されていることから、上方から入射した光のうち、第3の撮像素子部30の第3有機膜132において第3波長域の光(例えば青色光)のみが吸収され、第3画素電極136および第3対向電極134間に印加された所定の電圧によって光電変換され、第3信号読出し回路部31において第3波長域の光情報(光学像)が読み出される。なお、その余の第1波長域および第2波長域の光は第2光学像伝達層27を透過して第2の撮像素子部20に到達する。
第2の撮像素子部20では、第2有機膜122において第2波長域の光(例えば緑色光)のみが吸収され、第2画素電極126および第2対向電極124間に印加された所定の電圧によって光電変換され、第2信号読出し回路部21において第2波長域の光情報(光学像)が読み出される。なお、第1波長域の光は第1光学像伝達層17を透過して第1の撮像素子部10に到達する。
最後に、第1有機膜112において第1波長域の光(例えば赤色光)が吸収され、第1画素電極116および第1対向電極114間に印加された所定の電圧によって光電変換され、第1信号読出し回路部11において第1波長域の光情報(光学像)が読み出される。
【0027】
このように、各有機膜112、122、132で吸収された各波長域の光は光電変換され、その強度に応じた電荷が、対応する画素電極116、126、136に移動し、対応するTFT111b、121b、131bで読み出され、配線111a、121a、131aを通じて外部の回路に出力されることになる。
【0028】
したがって、各撮像素子部10、20、30の各画素電極116、126、136が占める領域に照射された光が信号値に寄与することになる。
ただし、各有機膜112、122、132、および各対向電極114、124、134は素子の全領域に亘って、すなわち、TFT111b、121b、131bの上方にも積層される。
【0029】
図4は、上記第1の撮像素子部10におけるTFT111bの構成を示す断面図である。なお、上記第2の撮像素子部20および上記第3の撮像素子部30におけるTFT121b、131bも略同様の層構成とされているので、ここでは、代表例として、TFT111bの具体的な層構成のみを図示して説明し、TFT121b、131bの具体的な層構成は図示および説明を省略する。
図4に示すように、TFT111bは、基板51上に、ゲート電極302、ゲート絶縁膜303、半導体層304、ソース電極306a・ドレイン電極306b、および保護膜307を、この順で積層して構成される。
【0030】
また、上述したように、TFT111bは、対応する画素電極116と電気的に接続されており、光電変換により画素電極116に移動した電荷がTFT111bに入力されるように構成されている。
なお、ここでは、画素電極116に移動した電荷が、1画素あたり1つのTFT(選択用トランジスタ)111bのソース電極306aまたはドレイン電極306bに入力される回路を想定しているが、1画素あたり複数のトランジスタを含む回路としてもよい。
【0031】
以下、上述した各部材についての補足的な説明を行う。
まず、上記第1~第3の各撮像素子部10、20、30は、光の入射方向から見て矩形状をなしており、各有機膜112、122、132の構成材料のうち、赤色光のみに感度を有する有機材料(上記例においては、第1有機膜112の構成材料)としては、例えば、フタロシアニン誘導体やナフタロシアニン誘導体が挙げられ、緑色光のみに感度を有する有機材料(上記例においては、第2有機膜122の構成材料)としては、例えば、キナクリドン誘導体やペリレン誘導体が挙げられ、青色光のみに感度を有する有機材料(上記例においては、第3有機膜132の構成材料)としては、例えば、クマリン誘導体やポルフィリン誘導体が挙げられる。
【0032】
また、上記第1~第3画素電極116、126、136(特に、第2~第3の画素電極126、136)と、第1~第3の対向電極114、124、134は、光透過性を有する材料とする。光透過性を有する材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等が挙げられる。その他にも、光の透過率を高くすることができる程度に、厚みが十分に薄い(10nm以下が望ましい)アルミニウム、銀、金等の金属材料を用いることもできる。
【0033】
また、第1~第3の信号読出し回路部11、21、31に用いられるTFT111b、121b、131bは、光透過性を有する半導体材料からなるものとすることが好ましい。このような半導体材料としては、酸化亜鉛(ZnO)やアモルファス酸化物半導体であるインジウム・ガリウム・酸化亜鉛(InGaZnO)等が挙げられる。
【0034】
また、第1~第3基板51、52、53の構成材料としては、光を透過するために透明性が高い材料(特に、第2~第3基板52、53)であることが好ましい。
また、これら基板51、52、53の厚みとしては、光学像伝達層17、27に到達するまでの光拡散を抑えるために0.1mm以下に薄く形成することが好ましく、この光拡散抑制効果をさらに向上させるためには10μm以下に形成することが好ましい。
【0035】
これら基板51、52、53の材質としては、ガラス、酸化シリコン、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、プラスチックフィルム、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
なお、上記説明においては、撮像素子の1画素のみを示して説明しているが、本実施形態の垂直分離型撮像素子はアレイ状に配列された多数の画素を備えて構成されている。
【0036】
次に図5を用いて、本実施形態に係る垂直分離型撮像素子200を製造する各工程について説明する。この図5においては、簡便のため、垂直分離型撮像素子200の1画素を作成する様子を示しているが、実際の垂直分離型撮像素子200の作成においては、このような画素をアレイ状に配列してなる画素群を同時に作成することになる。
なお、各工程は真空加熱蒸着法、スパッタ法、CVD法等を用いて成膜する。
【0037】
まず、第1基板51上に配線部111aおよび第1画素電極116を形成し(図5(A))、続いてTFT111bを形成する(図5(B))。
次に、第1画素電極116およびTFT111bの上部に第1有機膜112を積層する(図5(C))。
次に、第1対向電極114を積層する(図5(D))。
これにより第1の撮像素子部10を形成する工程が終了する。
【0038】
同様にして、第2の撮像素子部20および第3の撮像素子部30を作成した後、これら3つの撮像素子部10、20、30を光学像伝達層17、27を介して光学的に接続する。すなわち、第1の撮像素子部10と第2の撮像素子部20の間には第1光学像伝達層17を介在させ、第2の撮像素子部20と第3の撮像素子部30の間には第2光学像伝達層27を介在させる(図5(E))。
この接続時において、光学像のボケが生じないように光学像伝達層17、27と各撮像素子部10、20、30は可能な限り接近させて接続することが好ましい。
なお、光学伝達層17、27は、前述したように、上下方向に延びる光ファイバーを横方向に2次元的に密接配置して(面内に光ファイバーを束ねるようにして)形成される。
【0039】
また、最後に、最上層として、図示しない保護膜を積層しておくことが好ましい。
このようにして、図1に示す、垂直分離型撮像素子200の作成が完了する。
なお、第1の撮像素子部10は赤色光取得用として、第2の撮像素子部20は緑色光取得用として、第3の撮像素子部30は青色光取得用として、形成することが好ましい。
【0040】
(変更態様)
本発明の垂直分離型撮像素子は、上記実施形態のものに限られるものではなくその他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、他の層を上記実施形態の層間に挟むようにすることも可能である。例えば、各有機膜112、122、132と各対向電極114、124、134の間に無機バッファ層を配設してもよい。無機バッファ層を配設することにより、各有機膜112、122、132の表面を各無機バッファ層で覆うことができるため、各有機膜112、122、132の劣化を抑制することができる。
また、各有機膜112、122、132は、各々特定の波長域の光を吸収し、他の波長域の光を透過することが求められるが、有機材料を単独で用いてもよく、また2種類以上の有機膜材料を混合または積層して用いることも可能である。
【0041】
また、上記実施形態のものでは、下方から、赤色光に対応する第1有機膜を備えた第1の撮像素子部、緑色光に対応する第2有機膜を備えた第2の撮像素子部、および青色光に対応する第3有機膜を備えた第3の撮像素子部を、この順に積層するようにしているが、各色光に対応する有機膜を備えた撮像素子部の積層順はこれに限られものではなく、他の順番で積層することも可能である。
また、光を下方から入射するように構成することも可能である。
【0042】
また、基板上に光電変換部と信号読出し回路部を積層してなる撮像素子部は、2つ、または4つ以上の所定数設けて、積層するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、RGBの3原色光を各々変換する撮像素子部を備えているが、赤外光や紫外光等の非可視光を含めた波長域範囲で、複数個の所定波長域の光を各々取得する撮像素子部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10、20、30 撮像素子部
11、21、31 信号読出し回路部
12、22、32 有機光電変換膜部
17、27 光学像伝達層
51、52、53 基板
111a、121a、131a 配線部
111b、121b、131b TFT
112、122、132 有機膜
114、124、134 対向電極
116、126、136 画素電極
200 垂直分離型撮像素子
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁膜
304 半導体層
306a ソース電極
306b ドレイン電極
307 保護膜
図1
図2
図3
図4
図5