(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123943
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031790
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和昌
(72)【発明者】
【氏名】若杉 慶
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 誠人
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CA02
3B211CC01
3B211CC03
3B211CE02
3B211CE03
(57)【要約】
【課題】飛沫防止性及び通気性の両方を向上できるマスクを提供する。
【解決手段】マスク(1)は、着用者の上下方向に対応する縦方向(Y)と、着用者の左右方向に対応する横方向(X)と、着用者の少なくとも口を覆う通気性のマスク本体部(10)と、を備える。マスク本体部は、複数のシート層(20)と、シート層同士を接合した接合部(30)と、を有する。接合部は、マスク本体部の外縁部に設けられた外縁接合部(31)を有する。シート層同士の間には、少なくともシート層の平面方向に延び、空気の通路となる通気路(50)が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の上下方向に対応する縦方向と、
前記着用者の左右方向に対応する横方向と、
前記着用者の少なくとも口を覆う通気性のマスク本体部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体部は、複数のシート層と、前記シート層同士を接合した接合部と、を有しており、
前記接合部は、前記マスク本体部の外縁部に設けられた外縁接合部を有し、
前記シート層同士の間には、少なくとも前記シート層の平面方向に延び、空気の通路となる通気路が設けられており、
前記マスク本体部の外縁部には、前記通気路における空気の出入口となる通気開口が設けられている、マスク。
【請求項2】
前記マスク本体部の外縁に沿う方向における前記通気開口の長さは、5mm以上である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心よりも下側に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記通気路の両端に配置された通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心を挟んで配置されている、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記通気路の両端に配置された通気開口は、前記マスクの前記横方向の中心を挟んで配置されている、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項6】
前記接合部は、前記マスク本体部の前記横方向の中央において前記シート層同士を接合した中央接合部を有しており、
前記通気開口は、前記横方向において前記中央接合部を挟んだ両側にそれぞれ配置されている、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項7】
前記マスクは、前記マスク本体部の前記横方向の両側部それぞれに連なる一対の耳掛け部を有し、
前記マスク本体部と前記耳掛け部は、前記縦方向に延びる耳掛け接合部を介して接合されており、
前記通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心を挟んで一対で配置され、
前記一対の通気開口は、前記耳掛け接合部と前記中央接合部の間に配置されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
前記中央接合部と前記耳掛け接合部の前記横方向の距離は、変化している、請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記接合部は、前記マスク本体部の前記横方向の中央において前記シート層同士を接合した中央接合部を有し、
前記中央接合部の前記縦方向の端部は、前記中央接合部の前記縦方向の中央部よりも内方向に湾曲する曲線部を有する、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項10】
前記シート層は、前記接合部以外の領域において互いに接合されていない、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項11】
前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有し、
前記マスク本体部は、着用者の鼻に前記マスク本体部をフィットさせるノーズフィット部材を有し、
前記ノーズフィット部材は、前記第1シート層と前記第2シート層のうち前記第1シート層に接合されている、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項12】
前記通気路は、前記第1シート層と前記第2シート層の間に設けられている、請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
前記シート層のうち、少なくとも一枚のシート層は、帯電加工されたSMS不織布である、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項14】
前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有し、
前記第1シート層の通気抵抗値は、0.60kPa・s/m以下であり、
前記第1シート層は、帯電加工されており、
前記第1シート層のバクテリア飛沫捕集効率(BFE)は、95%以上である、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項15】
前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有し、
前記第2シート層は、撥水性を有しており、
前記第2シート層の厚みは、0.45mm以上であり、
前記第2シート層の坪量は、65g/m2以上である、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項16】
前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、前記第1シート層と前記第2シート層の間に位置する第3シート層と、を有し、
前記第1シート層の通気性は、第2シート層の通気性よりも高く、
前記第3シート層は、不織布である、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、着用者の少なくとも鼻と口とを覆う通気性のマスク本体部と、マスク本体部の両側部それぞれに接合された帯状の耳掛け部と、を備えるマスクが開示されている。マスク本体部は、複数のシート層が積層されて構成されている。当該マスクによれば、複数のシート層によって着用者の口及び鼻を覆うことができ、飛沫防止性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3108216号公報
【特許文献2】実用新案登録第3239655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のマスクででは、シート層同士がシート層の外縁近傍において互いに接合されている。そのため、シート層同士が一体化し、複数のシート層によるフィルター効果によって飛沫防止性を向上できる。その一方で、複数シート層を空気が通過しなければならないため、通気性を高め難いことがあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、飛沫防止性及び通気性の両方を向上できるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係るマスクは、着用者の上下方向に対応する縦方向と、前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記着用者の少なくとも口を覆う通気性のマスク本体部と、を備える。前記マスク本体部は、複数のシート層と、前記シート層同士を接合した接合部と、を有する。前記接合部は、前記マスク本体部の外縁部に設けられた外縁接合部を有する。前記シート層同士の間には、少なくとも前記シート層の平面方向に延び、空気の通路となる通気路が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマスクの折り畳み状態の側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るマスクの展開状態の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すA-A線に沿った模式断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るマスクの展開状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係るマスクの折り畳み状態の側面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るマスクの展開状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1に係る発明は、着用者の上下方向に対応する縦方向と、前記着用者の左右方向に対応する横方向と、前記着用者の少なくとも口を覆う通気性のマスク本体部と、を備えるマスクである。前記マスク本体部は、複数のシート層と、前記シート層同士を接合した接合部と、を有する。前記接合部は、前記マスク本体部の外縁部に設けられた外縁接合部を有する。前記シート層同士の間には、少なくとも前記シート層の平面方向に延び、空気の通路となる通気路が設けられている。マスク本体部が複数のシート層を備えるため、当該複数のシート層によって飛沫防止性を向上できる。また、外縁接合部によってシート層同士を接合しており、シート層同士が一体化したフィルター効果を発揮し、防塵性、血液バリア性を向上できる。マスク本体部を構成するシート層同士の間に、平面方向に延びる空気の通路となる通気路が設けられている。通気路の通気開口は、マスク本体部の外縁部に設けられている。通気開口は、マスク本体部の外縁部に形成されており、マスク本体部の外縁の近くに設けられている。そのため、通気開口を介して通気路の空気が流出入し易く、マスク本体部の通気性を向上できる。よって、本実施形態のマスクによれは、飛沫防止性及び通気性の両方を向上できる。
【0009】
好ましい態様によれば、態様2に係る発明は、態様1に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記マスク本体部の外縁に沿う方向における前記通気開口の長さは、5mm以上であってよい。通気開口の長さは、5mm以上であることにより、通気開口を介して通気路の空気が流出入し易く、マスク本体部の通気性を好適に向上できる。
【0010】
好ましい態様によれば、態様3に係る発明は、態様1又は2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心よりも下側に配置されている。本態様によれば、マスクの前記縦方向の中心よりも下側に配置された通気開口によって、マスクの下側に向けて呼気を誘導できる。呼気を下側に導くことにより、マスクの上側に誘導させる呼気を低減し、眼鏡が曇ることや目の乾燥を抑制できる。
【0011】
好ましい態様によれば、態様4に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記通気路の両端に配置された通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心を挟んで配置されている。本態様によれば、通気開口がマスクの縦方向の中心に対する上側と下側の両方に形成され、通気路が上下方向(縦方向)に延びる形状となる。装着時に上下方向に通気を通し、マスク本体部の通気性を確保できる。
【0012】
好ましい態様によれば、態様5に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記通気路の両端に配置された通気開口は、前記マスクの前記横方向の中心を挟んで配置されている。本態様によれば、通気開口が、マスクの横方向の中心に対する左側と右側の両方に形成され、通気路が横方向に延びる形状となる。装着時に横方向に通気を通し、マスク本体部の通気性を確保できる。
【0013】
好ましい態様によれば、態様6に係る発明は、態様1から態様5のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記接合部は、前記マスク本体部の前記横方向の中央において前記シート層同士を接合した中央接合部を有している。前記通気開口は、前記横方向において前記中央接合部を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。本態様によれば、中央接合部を挟んだ両側にそれぞれ通気開口が配置されているため、マスク本体部の左右両側において通気性を向上できる。マスク本体部の左右両側で偏りなく通気性を向上させることで、マスク本体部全体として広い面積で空気が通り、マスク本体部の通気性を向上できる。
【0014】
好ましい態様によれば、態様7に係る発明は、態様6に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記マスクは、前記マスク本体部の前記横方向の両側部それぞれに連なる一対の耳掛け部を有する。前記マスク本体部と前記耳掛け部は、前記縦方向に延びる耳掛け接合部を介して接合されている。前記通気開口は、前記マスクの前記縦方向の中心を挟んで一対で配置されている。前記一対の通気開口は、前記耳掛け接合部と前記中央接合部の間に配置されている。本態様によれば、通気路及び耳掛け接合部は、共に縦方向に延びているため、耳掛け接合部又は中央接合部に当たった空気を、縦方向Yの外側に導き、通気開口を介して出し入れできる。
【0015】
好ましい態様によれば、態様8に係る発明は、態様1から態様7のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記中央接合部と前記耳掛け接合部の前記横方向の距離は、変化している。本態様によれば、中央接合部と耳掛け接合部の距離が変化しているため、縦方向に延びる通気路を通過する過程で、空気が中央接合部又は耳掛け接合部に当たり、対流し易くなる。よって、通気路内の空気全体をマスク本体部の内外へ出し入れできる。
【0016】
好ましい態様によれば、態様9に係る発明は、態様1から態様8のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記接合部は、前記マスク本体部の前記横方向の中央において前記シート層同士を接合した中央接合部を有する。前記中央接合部の前記縦方向の端部は、前記中央接合部の前記縦方向の中央部よりも内方向に湾曲する曲線部を有する。中央接合部が曲線部を有することにより、マスク本体部が装着時に口元を覆うように湾曲し易い。マスク本体部が湾曲することで、シート層同士が離間しやすくなり、通気路を形成し易くなり、マスク本体部の通気性を向上できる。
【0017】
好ましい態様によれば、態様10に係る発明は、態様1から態様9のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記シート層は、前記接合部以外の領域において互いに接合されていない。シート層間が接合されていない部分は、通気路として機能することができ、本態様によれば、通気路を広く確保でき、マスク本体部の通気性を向上できる。
【0018】
好ましい態様によれば、態様11に係る発明は、態様1から態様10のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有する。前記マスク本体部は、着用者の鼻に前記マスク本体部をフィットさせるノーズフィット部材を有する。前記ノーズフィット部材は、前記第1シート層と前記第2シート層のうち前記第1シート層に接合されている。本態様によれば、ノーズフィット部材を介して第1シート層を密着させることで、第1シート層と第2シート層の間に距離ができやすい。シート層間の距離ができることで、シート層間の空気の流れが生じ易く、マスク本体部の通気性を向上できる。
【0019】
好ましい態様によれば、態様12に係る発明は、態様1から態様11のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。通気路は、前記第1シート層と前記第2シート層の間に設けられている。本態様によれば、ノーズフィット部材を介して第1シート層を密着させることで、第1シート層と第2シート層の間に距離ができやすい。第1シート層と第2シート層の間の通気路が形成され易く、マスク本体部の通気性を向上できる。
【0020】
好ましい態様によれば、態様13に係る発明は、態様1から態様12のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記シート層のうち、少なくとも一枚のシート層は、帯電加工されたSMS不織布である。本態様によれば、シート層が帯電加工されているため、粉塵の捕集効率を高め、防塵性を高めることができる。また、SMS不織布は、スパンボンド層と、スパンボンド層間に配置されたメルトブローン層と、を有する。メルトブローン層は、比較的繊維密度が細かく、医療用のマスクにおける血液バリア性をより高めることができる。しかし、メルトブローン層は、破断強度が低く毛羽立ち易い。SMS不織布によれば、メルトブローン層がスパンボンド層間にあるため、破断や毛羽立ちを防ぎつつ血液バリア性を高めることができる。
【0021】
好ましい態様によれば、態様14に係る発明は、態様1から態様13のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有する。前記第1シート層の通気抵抗値は、0.60kPa・s/m以下である。前記第1シート層は、帯電加工されている。前記第1シート層のバクテリア飛沫捕集効率(BFE)は、95%以上である。第1シート層が通気性と捕集性に優れたシートであり、着用者の呼気及び着用者が吸う外気の防塵性、血液バリア性を高めつつ、通気性を得る効果をより発揮できる。更に、通気路が設けられているため、第1シート層自体の通気性を向上させる効果と、通気路によってマスク本体部の通気性を向上させる効果と、の相乗効果によって通気性をより高めることができる。
【0022】
好ましい態様によれば、態様15に係る発明は、態様1から態様14のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、を有する。前記第2シート層は、撥水性を有している。前記第2シート層の厚みは、0.45mm以上である。前記第2シート層の坪量は、65g/m2以上である。このような第2シート層によれば、マスク内部に滲入する血液を抑制したり、第2シート層を通過する血液を抑制したりして、血液バリア性をより高めることができる。
【0023】
好ましい態様によれば、態様16に係る発明は、態様1から態様15のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記複数のシート層は、第1シート層と、前記第1シート層よりも外方向に位置する第2シート層と、前記第1シート層と前記第2シート層の間に位置する第3シート層と、を有する。前記第1シート層の通気性は、第2シート層の通気性よりも高い。前記第3シート層は、不織布である。本態様によれば、第3シート層を有するため、マスク本体部の厚み及び坪量がより大きくなり、粉塵の捕集効率及び血液バリア性を高めることができる。また、着用者側に位置する第1シート層の通気性が比較的高いため、第1シート層自体の通気性を向上させる効果と、通気路によってマスク本体部の通気性を向上させる効果と、の相乗効果によって通気性をより高めることができる。
【0024】
(2)第1実施形態に係るマスク
以下、図面を参照して、第1実施形態にマスク1について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
図1は、第1実施形態に係るマスクの折り畳み状態の側面図である。
図2は、第1実施形態に係るマスクの展開状態の斜視図である。
図3は、
図2に示すA-A線に沿った模式断面図である。マスク1は、使い捨てのものであってよいし、繰り返し使用されるものであってもよい。マスク1は、飛沫、花粉、粉塵、血液等から着用者を保護するために着用されてよい。
【0025】
マスク1は、着用者の顔面と向かい合う内方向Z1、その反対面である外方向Z2、着用者の上下方向に対応する縦方向Y、及び着用者の左右方向に対応する横方向Xを有する。マスク1は、マスク本体部10と、一対の耳掛け部40と、を有してよい。内方向Z1は、マスクの内面側に向かう方向であり、外方向Z2は、マスクの外面側に向かう方向である。マスク本体部10は、着用者の少なくとも口を覆うように構成されている。マスク本体部10は、少なくとも着用者の口を覆うように構成されており、鼻及び口の両方を覆うように構成されてよい。マスク本体部10の少なくとも一部は、通気性を有する。マスク本体部10は、複数のシート層20と、シート層20同士を接合した接合部30と、を有する。シート層20は、第1シート層21と、第1シート層21よりも外方向に位置する第2シート層と、を有してよい。第1シート層21は、マスク1の内面を構成するシート層であってよく、第2シート層22は、マスクの外面を構成するシート層であってよい。
【0026】
接合部30は、少なくともシート層20同士を接合していればよく、シート層20と共に他の部材(例えば、耳掛け部40)を接合してもよい。また、接合部30は、少なくとも2枚のシート層20同士を接合していればよく、3層以上のシート層20を有する形態にあっては、2層のシート層20を接合し、残りのシート層を接合していなくてもよい。接合部30は、熱又は超音波で溶着する方法や接着剤で接合する方法などで形成されてよい。接合部30は、マスク本体部10の外縁部に設けられた外縁接合部31を有する。ここで、マスク本体部10の外縁は、マスク本体部10の平面視における外縁であり、外縁部は、外縁から10mmの範囲の部分である。外縁接合部31によってシート層20同士が接合されているため、シート層20同士の位置ずれを抑制できるとともに、防塵性を向上できる。接合部がマスク本体部10の外縁部に設けられている(外縁接合部を有する)ため、マスク本体部の外縁部におけるシート層同士のめくれを抑制するとともに、マスク本体部の外縁部における防塵性を高めることができる。なお、外縁接合部31は、マスク本体部10の外縁に沿って形成されてよいが、マスク本体部10の外縁の全域に形成されていない。すなわち、マスク本体部10の外縁部の一部には、外縁に沿って伸びる非接合部(外縁接合部31が形成されていない部分)が設けられてよい。非接合部は、後述する通気開口51を構成する。
【0027】
なお、外縁接合部31が複数の点状の接合部によって構成されている形態において、各接合部間の間隔が5mm未満の場合には、接合部間の間隔は、実質的に非接合部を構成せず、外縁接合部31を構成するものとする。外縁接合部31が複数の点状の接合部によって構成されている形態において、各接合部間の間隔が5mm以上の場合には、接合部間の間隔は、非接合部を構成する。なお、本実施形態の接合部30は、マスク本体部10の横方向Xの中央に設けられた中央接合部32であり、中央接合部32のうち、マスク本体部10の外縁部に位置する部分は、外縁接合部31を構成する。変形例において、中央接合部32と外縁接合部31が別々に設けられてもよい。
【0028】
接合部30は、マスク本体部10の横方向Xの中央においてシート層20同士を接合した中央接合部32を有してよい。中央接合部32は、マスク本体部10の縦方向Yに連続して設けられてよい。中央接合部32は、
図1に示す折り畳み状態において縦方向Yに湾曲してよい。より詳細には、
図1に示す折り畳み状態において中央接合部32の縦方向Yの中央は、中央接合部32の縦方向の端部よりも横方向Xの外側に向かって突出しており、横方向Xに向かって凸状の略曲線の形状である。そのため、マスク本体部10は、
図2に示す展開状態(着用者が着用する状態)において、着用者の顔面に対して凹面となる立体形状(立体構造)を形成することができる。なお、変形例において、展開状態で平らなマスク本体部10(例えば、第3実施形態に係るマスク)は、中央接合部32を備えず、横方向Xの中央に縦方向Yに延びる中央折り目が形成されていてもよい。
【0029】
耳掛け部40は、マスク本体部10の横方向Xの両側部それぞれに連なっている。マスク本体部10と別体で形成されてもよいし、マスク本体部10と一体化されていてもよい。本実施形態の耳掛け部40は、マスク本体部10と別体で形成されており、マスク本体部10の両側部に耳掛け接合部25を介して接合されている。耳掛け部40は、切欠き41が形成されており、当該切欠き41が着用時に着用者の耳に掛けられる。切欠き41は、耳掛け部の外縁から延びる線状のスリットであってもよいし、耳掛け部の外縁と離間して設けられたくり抜きであってもよい。耳掛け部40は、マスク本体部10の内方向Z1に接合されていてもよいし、マスク本体部10の外方向Z2に接合されていてもよい。耳掛け接合部25は、縦方向Yに延びてよい。耳掛け接合部25は、縦方向Yに間隔を空けて複数形成されてもよいし、縦方向Yに連続して形成されてよい。耳掛け部40は、帯状であってよい。本実施形態における帯状とは、一定幅を有する形状であり、例えば、5mm以上の幅を有する形状である。また、帯状は、幅方向の寸法が厚み方向の寸法よりも長い形状であってよい。耳掛け部40が帯状であるため、耳に対する当たりが和らぎ装着感を向上できる。また、耳掛け部40は、横方向Xに伸長可能であってよく、マスク本体部10を構成するシート層20よりも高い伸長性を有してよい。
【0030】
次いで、マスク1の飛沫防止性及び通気性の両方を向上させるための構成について詳細に説明する。マスク本体部10は、複数のシート層20を有している。マスク本体部10が複数のシート層20を備えるため、当該複数のシート層20によって飛沫防止性を向上できる。外縁接合部31は、マスク本体部10の外縁部に設けられている。外縁接合部31によってシート層20同士を接合し、シート層20同士が一体化したフィルター効果を発揮し、防塵性、血液バリア性を向上できる。また、シート層20同士の間には、少なくともシート層20の平面方向に延び、空気の通路となる通気路50が設けられている。通気路50は、シート層20同士が接合されていない部分によって構成されている。通気路50の通気開口51は、マスク本体部10の外縁部に設けられている。通気開口51は、通気路50の端部に設けられ、通気路50の空気の出入口となる。通気開口51は、マスク本体部10の外縁部に形成されており、マスク本体部10の外縁の近くに設けられている。そのため、通気開口51を介して通気路50の空気が流出入し易く、マスク本体部10の通気性を向上できる。よって、本実施形態のマスク1によれは、飛沫防止性及び通気性の両方を向上できる。
【0031】
マスク本体部10の外縁に沿う方向における通気開口51の長さは、5mm以上であってよい。外縁に沿う方向における通気開口51の長さとは、外縁接合部31間の間隔が横方向Xに延びる形態にあっては、外縁接合部31間の間隔(通気開口)の横方向Xの長さであり、外縁接合部31間の間隔が縦方向Yに延びる形態にあっては、外縁接合部31間の間隔(通気開口)の縦方向Yの長さである。本実施形態の通気開口51は、耳掛け接合部25と中央接合部32との間に形成されており、横方向Xに延びている。よって、通気開口51の外縁に沿う長さは、通気開口51の横方向の長さである。通気開口の長さは、5mm以上であることにより、通気開口を介して通気路50の空気が流出入し易く、マスク本体部10の通気性を好適に向上できる。好適には、通気開口51の長さは、10mm以上であってよく、より好適には、通気開口の長さは、20mm以上であってよい。
【0032】
通気開口51は、1個であってもよいが、好適には、複数であってよい。通気開口51が複数設けられていることにより、通気路50の空気の入口と出口が形成され、空気の流出入を促進できる。少なくとも一つの通気開口51は、マスク1の縦方向Yの中心よりも下側に配置されてよい。マスク1の縦方向Yの中心よりも下側に配置された通気開口51によって、マスク1の下側に向けて呼気を誘導できる。呼気を下側に導くことにより、マスク1の上側に誘導させる呼気を低減し、眼鏡が曇ることや目の乾燥を抑制できる。本実施形態の通気開口51は、マスク1の縦方向Yの中心よりも下側の下通気開口512と、マスク1の縦方向Yの中心よりも上側の上通気開口511と、を有している。当該構成によれば、マスク本体部10の縦方向Yの全体に亘って通気性を向上し易い。また、変形例において、通気開口51は、下通気開口512のみが設けられていてもよい。当該形態によれば、マスク1の上側に誘導させる呼気を低減し、眼鏡が曇ることや目の乾燥を効果的に抑制できる。
【0033】
通気路50は、縦方向Yに延びており、当該通気路50の両端に位置する通気開口51は、マスク1の縦方向Yの中心を挟んで配置されてよい。すなわち、通気開口51は、同一の通気路50の開口を構成する上通気開口511と下通気開口512を有し、上通気開口511は、マスク1の縦方向Yの中心よりも上側に配置され、下通気開口512は、マスク1の縦方向Yの中心よりも下側に配置されている。本態様によれば、通気開口51が、マスク1の縦方向Yの中心に対する上側と下側の両方に形成され、通気路50が上下方向(縦方向)に延びる形状となる。装着時に上下方向に通気を通し、マスク本体部10の通気性を確保できる。なお、本実施形態における縦方向Yに延びる構成は、縦方向Yに対して平行な構成のみならず、縦方向Yに対して45度以下で傾斜する構成も含むものである。また、本実施形態における横方向Xに延びる構成は、横方向Xに対して平行な構成のみならず、横方向Xに対して45度未満で傾斜する構成も含むものである。
【0034】
通気開口51は、横方向Xにおいて中央接合部32を挟んだ両側にそれぞれ配置されてよい。より詳細には、中央接合部32に対する横方向Xの一方側には、第1通気路501と、第1通気路501の上通気開口511と、第1通気路501の下通気開口512と、が設けられ、中央接合部32に対する横方向Xの他方側には、第2通気路502と、第2通気路502の上通気開口511と、第2通気路502の下通気開口512と、が設けられてよい。本態様によれば、中央接合部32を挟んだ両側にそれぞれ通気開口51が配置されているため、マスク本体部10の左右両側において通気性を向上できる。マスク本体部10の左右両側で偏りなく通気性を向上させることで、マスク本体部全体として広い面積で空気が通るので、マスク内部の圧力が下がり、マスク本体部の通気性が向上する。なお、中央接合部32を備えずに、中央折り目が形成された形態にあっては、横方向Xにおいて中央接合部32を挟んだ両側にそれぞれ通気開口51が配置されてよい。当該形態によっても、マスク本体部10の左右両側において通気性を向上できる。
【0035】
マスク1の縦方向Yの中心を挟んで一対で配置された通気開口51は、耳掛け接合部25と中央接合部32の間に配置されてよい。耳掛け接合部25は、マスク本体部10の横方向Xの一方側と、マスク本体部10の横方向Xの他方側と、にそれぞれ設けられている。横方向Xの一方側の耳掛け接合部25と中央接合部32の間に、第1通気路501と、第1通気路501の上通気開口511と、第1通気路501の下通気開口512と、が設けられており、横方向Xの他方側の耳掛け接合部25と中央接合部32の間に、第2通気路502と、第2通気路502の上通気開口511と、第2通気路502の下通気開口512と、が設けられている。本態様によれば、中央接合部32と耳掛け接合部25の間に通気路50を設けることができる。通気路50及び耳掛け接合部25は、共に縦方向Yに延びているため、耳掛け接合部25又は中央接合部32に当たった空気を、縦方向Yの外側に導き、通気開口51を介してより出し入れし易い。
【0036】
本実施形態のように、耳掛け接合部25が縦方向Yに延びて複数設けられ、当該複数の耳掛け接合部25が横方向Xに間隔を空けて配置された形態にあっては、耳掛け接合部25と耳掛け接合部25の間においてシート層20同士が接合されていない部分は、通気路50を構成してよい。マスク本体部10の外側部は、着用時に頬に沿って丸みを帯びて変形し易い。当該マスク本体部10の外側部が変形した際に、シート層20同士が離間しやすく、通気路50を介してマスク本体部10の通気性を向上できる。
【0037】
中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向Xの距離は、変化してよい。本態様によれば、中央接合部32と耳掛け接合部25の距離が変化しているため、縦方向Yに延びる通気路50を通過する過程で、空気が中央接合部32又は耳掛け接合部25に当たり、対流し易くなる。よって、通気路50内の空気全体をマスク本体部10の内外へ出し入れできる。本実施形態では、
図1に示すように、マスク1の縦方向Yの中心部における中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向Xの距離は、マスク1の縦方向Yの上端部における中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向Xの距離よりも長く、マスク1の縦方向Yの下端部における中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向Xの距離よりも長くてよい。また、マスク1の縦方向Yの上端部における中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向Xの距離は、マスク1の縦方向Yの下端部における中央接合部32と耳掛け接合部25の横方向の距離と異なってよい。
【0038】
中央接合部32の縦方向Yの端部は、中央接合部32の縦方向Yの中央部よりも内方向に湾曲する曲線部を有してよい。曲線部は、マスクの着用状態(展開状態)において内方向Z1に湾曲していればよい。本実施形態では、
図1に示す折り畳み状態において、中央接合部32の縦方向Yの端部は、中央接合部32の縦方向Yの中央部よりも横方向Xの外側に湾曲している。そして、マスク1を展開した状態で、中央接合部32の縦方向Yの端部は、中央接合部32の縦方向Yの中央部よりも内方向Z1に位置し、マスク本体部10が口を覆うようなカップ形状となる。中央接合部32が曲線部を有することにより、マスク本体部が装着時に口元を覆うように湾曲し易い。マスク本体部が湾曲することで、シート層20同士が離間しやすくなり、通気路を形成し易くなり、マスク本体部10の通気性を向上できる。
【0039】
シート層20は、接合部30以外の領域において互いに接合されてなくてよい。すなわち、シート層20は、中央接合部32及び外縁接合部31以外の領域で接合されてなくてよく、耳掛け接合部25を有する形態にあっては、シート層20は、耳掛け接合部25、中央接合部32及び外縁接合部31以外の領域で接合されていなくてよい。シート層20間が接合されていない部分は、通気路50として機能することができ、本態様によれば、通気路50を広く確保でき、マスク本体部の通気性をより向上できる。
【0040】
複数のシート層20は、同じ材質のシートによって構成されてもよいし、異なる材質のシート材によって構成されてもよい。シート層のうち、少なくとも一枚のシート層は、帯電加工をしたSMS不織布であってよい。シート層20が帯電加工されているため、粉塵の捕集性を高め、防塵性を高めることができる。また、SMS不織布は、スパンボンド層と、スパンボンド層間に配置されたメルトブローン層と、を有する。メルトブローン層は、比較的繊維密度が細かく、医療用のマスクにおける血液バリア性をより高めることができる。しかし、メルトブローン層は、破断強度が低く毛羽立ち易い。SMS不織布によれば、メルトブローン層がスパンボンド層間にあるため、破断や毛羽立ちを防ぎつつ血液バリア性を高めることができる。好適には、後述の第1シート層21及び第2シート層22は、SMS不織布であってよい。または、第1シート層21及び第2シート層22は、ポイントボンド不織布であってもよい。
【0041】
好適には、第1シート層21は、通気性及び捕集効率が高いことが好ましい。より詳細には、第1シート層21は、帯電加工されていることが好ましい。着用者の呼気及び着用者が吸う外気は、第1シート層21と第2シート層22の間の通気路50を通り、かつ第1シート層21を通過する。そのため、第1シート層21に帯電加工を施し、第1シート層21の粉塵の捕集性を高めることが好ましい。好適には、第1シート層21の通気抵抗値は、0.60kPa・s/m以下であり、第1シート層21は、帯電加工されており、第1シート層21のバクテリア飛沫捕集効率(BFE)は、95%以上であってよい。このように構成された第1シート層21は、通気性と捕集性に優れたシートであり、着用者の呼気及び着用者が吸う外気の防塵性、血液バリア性を高めつつ、通気性を得る効果をより発揮できる。更に、通気路50が設けられているため、第1シート層21自体の通気性を向上させる効果と、通気路によってマスク本体部10の通気性を向上させる効果と、の相乗効果によって通気性をより高めることができる。
【0042】
好適には、第2シート層22は、血液バリア性が高いことが好ましい。より詳細には、第2シート層22は、SMS不織布によって構成されてもよい。SMS不織布に含まれるメルトブローン層は、比較的繊維密度が細かく、血液バリア性をより高めることができる。第2シート層22の厚みは、0.45mm以上であってよく、第2シート層22の坪量は、65g/m2以上であってよい。当該厚み及び坪量を有することにより、第2シート層22を血液が通過し難く、血液バリア性をより高めることができる。第2シート層22は、撥水性を有してよい。マスク外側からの血液の滲入を抑制できる。また、第2シート層22も捕集効率が高くてよく、帯電加工されてよい。マスクの外方向に位置する第2シート層22における粉塵の捕集性を高め、マスク内に導かれる粉塵を低減できる。
【0043】
また、シート層20は、マスク1の内面を構成する第1シート層21と、マスク1の外面を構成する第2シート層22と、に加えて、第1シート層21と第2シート層22の間に配置された第3シート層(図示せず)を有してよい。第3シート層を設けることにより、マスク本体部10の厚み及び坪量がより大きくなり、捕集効率及び血液バリア性をより高めることができる。通気路50は、第1シート層21と第2シート層22の間に設けられていればよく、第3シート層を有する形態にあっては、第1シート層21と第3シート層の間、及び第2シート層22と第3シート層の間の少なくとも一方に設けられてよい。例えば、第1シート層21と第3シート層は、接合部30及び耳掛け接合部25以外の領域で接合されてなく、第1シート層21と第3シート層の間に通気路が形成され、第2シート層22と第3シート層は、第1シート層と第3シート層よりも広い面積の接合部(例えば、全面に亘って)で接合されていてもよい。当該構成によれば、マスク1の外方向Z2からの血液等の滲入を抑制しつつ、マスク1の内方向Z1における通気性を向上できる。また、他の形態において、第1シート層21と第3シート層は、接合部及び耳掛け接合部25以外の領域で接合されてなく、第2シート層22と第3シート層も、接合部及び耳掛け接合部25以外の領域で接合されてなく、両シート層間にそれぞれ通気路が形成されていてもよい。当該構成によれば、マスク本体部10の通気性をより向上できる。
【0044】
第3シート層は、不織布によって構成されてよい。不織布からなる第3シート層によれば、繊維間の空隙によって捕集効率及びバリア性をより高めることができる。好適には、第3シート層は、エアスルー不織布であってよい。エアスルー不織布は、比較的親水性及び拡散性が高く、第3シート層に到達した血液が分散し、マスク本体部10の全体としての血液バリア性をより向上できる。または、第3シート層は、メルトブローン不織布であってよい。
【0045】
第1シート層21の通気性は、第2シート層22の通気性よりも高くてよい。当該通気性の比較は、通気抵抗値によって比較できる。着用者側に位置する第1シート層21の通気性が比較的高いため、第1シート層21自体の通気性を向上させる効果と、通気路50によってマスク本体部10の通気性を向上させる効果と、の相乗効果によって通気性をより高めることができる。シート層20は、通気性を有する不織布又は織布、及び通気性が低い(又は非通気性)シート(例えば、フィルム)によって構成されてよい。ただし、マスク本体部10の少なくとも一部は、通気性を備える必要があるため、少なくとも一部のシート層20は、通気性を有する。好適には、マスク本体部10の内面を構成するシート層(本実施の形態における第1シート層21)は、通気性を有してよい。当該構成によれば、マスク本体部10の内面の通気性を確保し、空気の吸出入を確保できる。より好適には、通気路50よりも内方向に配置されたシート層は、通気性を有してよい。当該構成によれば、通気路50よりも内方向に位置するシート層を介して空気の流出入を確保するとともに、当該流出入した空気を、通気路50を介してマスク本体部10内外に出し入れすることができ、マスク本体部10の通気性をより高めることができる。通気路50よりも外方向に配置されたシート層は、通気性を有していなくてもよいが、全てのシート層20が通気性を有していることにより、マスク本体部10の通気性をより高めることができる。
【0046】
好適なシート層の構成としては、例えば、第1シート層21の坪量及び第2シート層22の坪量は、65g/m2以上であってよく、好適には、第1シート層21の坪量及び第2シート層22の坪量は、70g/m2以上であってよい。また、第1シート層21は、帯電加工されており、第2シート層22は、帯電加工されていなくてよい。第1シート層21の通気抵抗値及び第2シート層22の通気抵抗値は、それぞれ0.60kPa・s/m以下であってよい。また、第1シート層21と第2シート層22を重ねた状態の通気抵抗値は、1.10kPa・s/m以下であってよい。また、第1シート層21の厚み及び第2シート層22の厚みは、それぞれ0.45mm以上であってよい。第3シート層の坪量は、第1シート層21の坪量及び第2シート層22の坪量よりも低くてよく、好適には、30g/m2以上であってよい。また、マスク1の呼気抵抗値は、6.5Pa以下であってよく、好適には、6.0Pa以下であってよい。
【0047】
ここで、捕集効率、通気抵抗値及び呼気抵抗値は、以下の方法で測定される。
<捕集効率>
測定環境を、気温20℃、湿度60%とする。
(1)測定対象のマスク本体部10の任意の場所から円形状に試料を切り出す。その試料は、直径100mmの円形の部分(測定対象領域)を含み、その円形の部分の周囲に少なくとも5mm以上の幅の余剰部分を更に含む。例えば、直径120mmの円形の試料である。ただし、直径100mmの円形の部分(測定対象領域)よりも外側の余剰部分は測定対象ではないので、エンボス部や融着部が存在してもよい。各シート層の値を測定する場合は、各シート層に分解する。
(2)マスク性能試験機AP-9000型(柴田科学株式会社製)において、試験機の専用の平板の治具(測定範囲100mmφ)に試料を取り付ける。
(3)NaCl:0.06~0.1μmφの粒子が0.5mg/m3の濃度に調整された気体(例示:空気)を含む空間において、試料を介してその気体を30L/minの流量で吸引し、試料を通過する前の気体の粒子濃度及び圧力と、通過した後の気体の粒子濃度を測定する。
(4)それらの測定値に基づいて、粒子濃度の差から1分間の捕集効率を算出する。捕集効率は捕集性能の指標であり、高いほど捕集性能が高いことを示す。なお、測定対象領域が直径100mmの円形となる試料を切り出せない小さなマスク本体部の場合には、測定対象領域が直径50mmの円形となる試料を切り出すものとする。
<呼気抵抗値>
測定環境を、気温20℃、湿度60%とする。
(1)測定対象のマスクを準備する。
(2)マスク性能試験機AP-9000型(柴田科学株式会社製)において、試験機の専用の人頭型治具にマスクを取り付ける。なお、人頭型治具はAP-9000型に付属のものであり、寸法の詳細は、航空医学実験隊 "航空自衛隊員の身体測定値 ー装備品等設計のための人間工学的資料ー”(1972)による。(口元から測定器まで空気孔が伸びており、その直径は50mmである。)
(3)NaCl:0.06~0.1μmφの粒子が0.5mg/m3の濃度に調整された気体(例示:空気)を含む空間において、試料を介してその気体を30L/minの流量で吸引し、試料を通過する前の気体の圧力と、通過した後の気体の圧力とを測定する。
(4)それらの測定値に基づいて圧力の差から圧力損失、すなわち呼気抵抗値を算出する。呼気抵抗値は通気性能の指標であり、低いほど通気性能が高いことを示す。すなわち、呼気抵抗値は、人頭に取り付けた状態の通気性を指標する値である。
<通気抵抗値>
測定環境を、気温20℃、湿度60%とする。
(1)測定対象のマスクを準備し、マスク本体部を分解し、測定対象のシート層に分ける。
(2)マスク性能試験機AP-9000型(柴田科学株式会社製)において、試験機の専用の平板の治具(測定範囲100mmφ)に試料を取り付ける。
(3)NaCl:0.06~0.1μmφの粒子が0.5mg/m3の濃度に調整された気体(例示:空気)を含む空間において、試料を介してその気体を30L/minの流量で吸引し、試料を通過する前の気体の圧力と、通過した後の気体の圧力とを測定する。
(4)それらの測定値に基づいて圧力の差から圧力損失、すなわち通気抵抗値を算出する。通気抵抗値は通気性能の指標であり、低いほど通気性能が高いことを示す。すなわち、通気抵抗値は、平板に取り付けた状態の通気性を指標する値である。
【0048】
(3)第2実施形態に係るマスク
次いで、
図4を参照して、第2実施形態に係るマスク1Xについて説明する。
図4は、第2実施形態に係るマスク1Xの展開状態の斜視図である。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。第2実施形態に係るマスク1Xのマスク本体部10は、ノーズフィット部材60を有する。ノーズフィット部材60は、第1シート層21と第2シート層22のうち、第1シート層21に接合されている。すなわち、ノーズフィット部材60は、第1シート層21に接合され、第2シート層22に接合されていない。当該構成によれば、ノーズフィット部材60を介して第1シート層21を密着させることで、第1シート層21と第2シート層22の間に距離ができやすい。シート層間の距離ができることで、シート層間の空気の流れが生じ易く、マスク本体部10の通気性を向上できる。通気路50は、第1シート層21と第2シート層22の間に設けられてよい。当該構成によれば、ノーズフィット部材60を介して第1シート層21を密着させることで、第1シート層21と第2シート層22の間に距離ができやすい。第1シート層21と第2シート層22の間の通気路が形成され易く、マスク本体部10の通気性を向上できる。好適には、ノーズフィット部材60の少なくとも一部は、厚み方向において通気路50と重なって配置されてよい。当該構成によれば、第1シート層21がノーズフィット部材60を介して肌に密着することで、通気路の径を大きく形成できる。
【0049】
第2実施形態のマスク1Xは、マスク本体部10の上端部と下端部に外縁接合部31が設けられている。外縁接合部31は、マスク本体部10の横方向Xの中心を挟んだ両側に配置されている。左右の外縁接合部31間の領域は、第1シート層21と第2シート層22が接合されていない領域であり、通気路50の通気開口51を構成する。上通気開口511は、マスク本体部10の上端部に設けられた外縁接合部31間に設けられており、マスク本体部10の横方向Xの中心を跨がっている。上通気開口511の近傍(例えば、20mmの範囲内)にノーズフィット部材60が設けられている。下通気開口512は、マスク本体部10の下端部に設けられた外縁接合部31間に設けられており、マスク本体部10の横方向Xの中心を跨がっている。このようなマスク1Xによれば、口及び鼻の近くに配置されるマスク本体部10の横方向Xの中心部における通気性を高め、装着感を向上できる。
【0050】
(4)第3実施形態に係るマスク
次いで、
図5及び
図6を参照して、第3実施形態に係るマスク1Yについて説明する。
図5は、第3実施形態に係るマスク1Yの折り畳み状態の側面図である。
図6は、第3実施形態に係るマスクの展開状態の斜視図である。第3実施形態のマスク1Yは、折り畳み状態において、マスク本体部10が横方向Xの中心で折り畳まれてなく、耳掛け部40がマスク本体部10に対して重なるように折り畳まれている。マスク本体部10は、横方向Xに延びる襞が複数形成され、着用時に縦方向Yに展開可能に構成されていている。接合部30としての外縁接合部31は、マスク本体部10の外縁に沿って形成されている。マスク本体部10の横方向Xの外側部には、縦方向Yの一定範囲(5mm以上)に亘って外縁接合部31が設けられていない非接合部が形成されている。非接合部は、通気開口51を構成している。通気開口51は、横方向Xに延びる通気路50の両端に配置されており、マスク本体部10の横方向Xの中心を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。当該構成によれば、通気開口が、マスクの横方向Xの中心に対する左側と右側の両方に形成され、通気路が横方向に延びる形状となる。装着時に横方向Xに通気を通し、マスク本体部10の通気性を確保できる。
【0051】
(5)その他の実施形態
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。例えば、マスクは、縦方向Yに延びる通気路50と、横方向Xに延びる通気路と、のいずれかのみを有していてもよいし、縦方向Yに延びる通気路と横方向Xに延びる通気路の両方を有していてもよい。また、マスクは、ウイルスや花粉から守る防塵用のマスクであってもよいし、高い血液バリア性を有するため、医療用のマスクであってもよい。
【0052】
(6)実施例
次いで、実施例1から実施例3、及び比較例1から比較例6に係るマスクを用いて、通気開口の有無による血液バリア性及び呼気抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。各サンプルの試験条件は、マスク本体部10の構成以外について同じである。実施例1、比較例1及び比較例2は、同一の材質のシート層によって構成されており、外縁接合部31の構成が異なっている。また、実施例2、比較例3及び比較例4は、同一の材質のシート層によって構成されており、外縁接合部31の構成が異なっている。実施例3、比較例5及び比較例6は、同一の材質のシート層によって構成されており、外縁接合部31の構成が異なっている。実施例1、実施例2及び実施例3のマスクは、通気開口51が設けられている。通気開口51は、上通気開口511と下通気開口512を有し、縦方向Yに延びる通気路50が形成されている。比較例1、比較例3、及び比較例5に係るマスクは、通気路50が形成されてなく、シート層20同士は、全面で接合されていないが、マスク本体部10の外縁の全周に沿って設けられた外縁接合部31によって接合されている。比較例2、比較例4及び比較例6に係るマスクは、通気路50が形成されてなく、シート層同士は、全面で貼り合わされている。呼気抵抗値は、上述の方法に基づいて測定した。血液バリア性は、JIS T 9001・ASTM F1862の試験方法によって測定し、医療用マスクの品質基準におけるクラス1、クラス2、クラス3のいずれかに分類した。クラス3は、最も血液バリア性が高く、クラス1は、血液バリア性が最も低い。
【表1】
【0053】
通気性については、通気開口を設けることにより、向上することがわかった。具体的には、同じ材質のシート層を有する実施例1、比較例1及び比較例2において比較すると、実施例1が最も呼気抵抗値が低く、通気性が高くなっていることがわかる。同様に、同じ材質のシート層を有する実施例2、比較例3及び比較例4において比較しても、実施例2が最も呼気抵抗値が低く、マスク本体部の通気性が高くなっていることがわかる。同様に、同じ材質のシート層を有する実施例3、比較例5及び比較例6において比較しても、実施例3が最も呼気抵抗値が低く、マスク本体部の通気性が高くなっていることがわかる。
当該結果により、通気路50及び通気開口51の存在によって、マスク本体部10の通気性が高くなっていることがわかる。血液バリア性については、同じ材質のシート層を有するサンプルで比較すると、シート層全面で貼り合わされている比較例2、比較例4及び比較例6が低くなっている。一方、シート層同士が全面に貼り合わされていない実施例1から実施例3、比較例1、比較例3及び比較例5では、血液バリア性が高くなっている。当該結果により、シート層同士が全面に亘って貼り合わされていない形態は、シート層間に空気の層が形成され、空気の層の存在によって血液が厚み方向に通過し難くなり、高い血液バリア性を得られることがわかった。
【0054】
また、実施例2、比較例3及び比較例4のマスク本体は、実施例1、比較例1及び比較例2と比較して、第3シート層が追加されている。第3シート層を追加することにより、呼気抵抗値は、下がる、すなわち、通気性が低くなるが、血液バリア性は、高くなることがわかる。よって、マスクの用途、例えば、医療用等に応じて、第3シート層の配置を変更することで、所望の通気性及び血液バリア性を有するマスクを得ることができる。
【0055】
次いで、実施例1及び実施例2に係るシート層の通気抵抗値を測定した結果を表2に示す。第1シート層(SMS不織布 坪量70/m
2 帯電加工あり)の通気抵抗値は、0.598kPa・s/mであり、0.60kPa・s/m以下である。また、第1シート層(SMS不織布 坪量70/m
2 帯電加工あり)と第2シート層(SMS不織布 坪量70/m
2 帯電加工なし)を積層したシート層の通気抵抗値は、1.094kPa・s/mであり、1.10kPa・s/m以下である。上述のように、実施例1及び実施例2のいずれのマスクにおいても、好適な通気性を得られることがわかっており、第1シート層21の通気抵抗値及は、0.60kPa・s/m以下であってよく、第1シート層21と第2シート層22を重ねた状態の通気抵抗値は、1.10kPa・s/m以下であってよいことがわかる。
【表2】
【符号の説明】
【0056】
1、1X、1Y :マスク
10 :マスク本体部
20 :シート層
30 :接合部
31 :外縁接合部
40 :耳掛け部
50 :通気路
51 :通気開口
X :横方向
Y :縦方向
Z1 :内方向
Z2 :外方向