(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123963
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】通信システム、制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20240905BHJP
H04W 88/12 20090101ALI20240905BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W88/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031814
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕史
(72)【発明者】
【氏名】山本 高至
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067CC21
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】通信品質を向上させ、消費電力を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置と、無線通信装置を制御する制御装置とを含む通信システムであって、制御装置は、無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、エリア内に対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来においてエリア内に対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置と、前記無線通信装置を制御する制御装置とを含む通信システムであって、
前記制御装置は、
前記無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、
前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、
を備えた通信システム。
【請求項2】
前記推定予測部は、音情報に前記対向無線通信装置が発する非可聴音が含まれる場合に前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在すると推定する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記推定予測部は、音情報と、前記音情報が収集された時に前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在していたか否かを示す存在情報とをセットとしたデータを用いて強化学習された学習モデルを用いて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かの推定する請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記推定予測部は、マイクアレイによって収集された遮蔽物が発した音を含む音情報から遮蔽物の方向を推定し、推定された方向と、遮蔽物の位置と、信号対雑音比とをセットとしたデータを用いて強化学習された学習モデルを用いて、前記エリア内での遮蔽環境を推定する請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記推定予測部による推定結果が前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在しないことを示す場合、または予測結果が将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在しないことを示す場合には、前記無線通信装置の消費電力を抑制させる請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、
前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、
を備えた制御装置。
【請求項7】
対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測ステップと、
前記推定予測ステップによる推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御ステップと、
を備えた制御方法。
【請求項8】
制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、
前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、
して機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信システム、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5G等のシステムにおいてはミリ波帯の高周波数帯が使用されており、6G等の将来の無線通信システムにおいて更なる高速・大容量化を実現していくために、より広い帯域幅を確保可能な更なる高周波数帯の使用が想定されている(非特許文献1参照)。高周波数帯は伝搬損失が大きく、直進性が高くて透過性も低いため遮蔽による通信品質の劣化の影響が顕著となる(非特許文献2参照)。
【0003】
通信品質の劣化を回避する手段として、センシングにより周囲の環境を把握して制御することが考えられる。センシングの手段としてはビームスイープ時に取得可能な受信電力等の情報を用いることやカメラを用いること(非特許文献3参照)が提案されており、見通し通信路の遮蔽による通信品質低下を回避できる可能性が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社NTTドコモ,“ドコモ6Gホワイトペーパー4.0版”,Nov. 2021.
【非特許文献2】3GPP TR38.901 V16.0.0: “Study on channel model for frequencies from 0.5 to 100GHz (Release 16),” Oct. 2019.
【非特許文献3】Y. Koda, K. Nakashima, K. Yamamoto, T. Nishio, and M. Morikura, “Handover management for mmWave networks with proactive performance prediction using camera images and deep reinforcement learning,” IEEE Trans. Cogn. Commun. Netw., vol. 6, no. 2, Feb. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミリ波などの高周波数帯無線通信システムでは電波の直進性が強く遮蔽の影響を受けやすいため、センシングにより環境を把握して制御を行うことが考えられる。しかしながら、高周波の通信電波、カメラ、LiDARなどによるセンシングは見通し外の把握が困難であり、見通し外の状況に基づく制御の実現が難しい。そのため、通信品質の向上が困難であった。また遮蔽により通信できない場合には、通信装置をスリープ状態で動作させるなど、通信装置の消費電力を抑制した方がよいが、見通し外の状況の把握が困難なため、効率的にスリープ制御を行うことができなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、通信品質を向上させ、消費電力を抑制可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置と、前記無線通信装置を制御する制御装置とを含む通信システムであって、前記制御装置は、前記無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、を備えた通信システムである。
【0008】
本発明の一態様は、対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部と、を備えた制御装置である。
【0009】
本発明の一態様は、対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測ステップと、前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御ステップと、を備えた制御方法である。
【0010】
本発明の一態様は、制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、対向無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置がカバーするエリア内から収集された音情報にもとづいて、前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを推定するとともに、将来において前記エリア内に前記対向無線通信装置が存在するか否かを予測する推定予測部と、前記推定予測部による推定結果、または予測結果に応じて、前記無線通信装置の消費電力を抑制する制御を行う制御部として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信品質を向上させ、消費電力を抑制可能な技術を提供する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】制御装置と無線通信装置との構成例を示す図である。
【
図4】制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係る通信システム10の全体構成を示す図である。通信システム10は、制御装置100、および無線通信装置200-1、200-2で構成される。以下の説明において、無線通信装置200-1、200-2のそれぞれを特に区別しない場合には、無線通信装置200と表現する。また、
図1において、無線通信装置200は、2つ示されているが、1つ、または3つ以上であってもよい。さらに、無線通信装置200は、遮蔽物に設置されているが、これは一例であり、鉄塔やビルの屋上、電柱など、高所に設置されることや、都市部の地下街や地下鉄駅構内などに設置されていてもよい。
【0014】
制御装置100は、無線通信装置200を制御する。制御装置100は、eCPRI(Common Public Radio Interface)を用いるなどして無線通信装置200に信号を送信する。特に本実施形態では、通信に係る制御の他に、無線通信装置200の消費電力に関する制御を行う。無線通信装置200は、制御装置100の制御にしたがうとともに、スマートフォンなどの対向無線通信装置300と通信を行う。無線通信装置200は、光信号をO/E(Optical-to-Electrical)変換して元の無線信号を取り出す。また、無線通信装置200は、ビームフォーミング技術などを用いて対向無線通信装置300と通信する。
【0015】
無線通信装置200は、無線通信装置200がカバーするエリア内から音情報を収集可能なマイク等を備える。収集された音情報は、制御装置100に送信される。制御装置100は、受信した音情報にもとづいて制御を行う。
【0016】
図2は、制御装置100による制御例を示す図である。無線通信装置200は、無線通信装置200を所持するユーザの移動(
図2では右方向に移動)に伴い、無線通信装置200-1からの信号は遮蔽物によって遮られる。そのため、制御装置100は、無線通信装置200にスイープの指示(対向無線通信装置300-2と通信する指示)を出す制御を行う。
【0017】
図3は、制御装置100と無線通信装置200との構成例を示す図である。
図3において、制御装置100は、推定予測部110、制御部120、伝送部130、記憶部140、および信号処理部150で構成される。伝送部130は制御部120の制御によって、ネットワーク上の上位装置や無線通信装置200と通信を行う。また、伝送部130は、受信した信号を信号処理部150に出力したり、信号処理部150から入力された信号を上位装置や無線通信装置200に送信する。信号処理部150は、制御部120の制御によって、伝送部130が送受信した信号に係る信号処理を行う。また、信号処理部150は、無線通信装置200から受信した音情報を記憶部140に出力する。
【0018】
記憶部140は、信号処理部150から入力された音情報に加え、学習モデル141、142を記憶する。学習モデル141は、音情報と、音情報が収集された時にエリア内に対向無線通信装置300が存在していたか否かを示す存在情報とをセットとしたデータを用いて強化学習された学習モデルである。学習モデル142は、後述するマイクアレイによって収集された遮蔽物が発した音を含む音情報から遮蔽物の方向を推定し、推定された方向と、遮蔽物の位置と、信号対雑音比とをセットとしたデータを用いて強化学習された学習モデルである。
【0019】
推定予測部110は、記憶部140に記憶された音情報にもとづいて、各無線通信装置200のエリア内に対向無線通信装置300が存在するか否かを推定するとともに、将来においてエリア内に対向無線通信装置300が存在するか否かを予測する。具体的に、推定予測部110は、音情報に対向無線通信装置300が発する非可聴音が含まれる場合にエリア内に対向無線通信装置300が存在すると推定する。推定予測部110は、学習モデル141を用いて、エリア内に対向無線通信装置300が存在するか否かを推定する。学習モデル141は、音情報から、現時点または将来において対向無線通信装置300がエリア内に存在するか否かを出力する学習モデルである。将来において対向無線通信装置300がエリア内に存在する場合には、対向無線通信装置300がエリア内に存在するまでの現時点から経過時間も出力する。
【0020】
推定予測部110は、エリア内での遮蔽環境を推定する。ここで、遮蔽環境とは、例えば無線通信装置200から遮蔽物までの方向および距離を示す情報である。さらに、推定予測部110は、学習モデル142を用いて、将来の通信品質を予測する。ここでの通信品質とは、例えば数10ms~数100ms先の受信SNRや受信電力である。したがって、学習モデル142は、音情報から、現時点または将来における数10ms~数100ms先の受信SNRや受信電力を出力する学習モデルである。将来における通信品質は、時系列データ(例えば、1分後の通信品質、2分後の通信品質、…)として出力される。
【0021】
推定予測部110は、推定結果および予測結果を制御部120に出力する。制御部120は、制御装置100全体を制御する。制御部120は、
図2で示したように、対向無線通信装置300に接続する無線通信装置300を切り替える。特に、本実施形態では、制御部120は、推定予測部110による推定結果、または予測結果に応じて、無線通信装置200の消費電力を抑制する制御を行う。具体的に、制御部120は、推定予測部110による推定結果がエリア内に対向無線通信装置300が存在しないことを示す場合、または予測結果が将来においてエリア内に対向無線通信装置300が存在しないことを示す場合には、無線通信装置200の消費電力を抑制させる。消費電力の抑制は、例えばスリープ機能により実現される。本実施形態では、制御装置100は、無線通信装置200にスリープ状態に移行させる指示を行う。これにより、無線通信装置200は、スリープ状態に移行する。スリープ状態から通常状態への移行も制御装置100から無線通信装置200への指示(復帰指示)により行われる。なお、消費電力の抑制には、消費電力が0wであることも含む。すなわち、無線通信装置200の電源をオフにすることも消費電力の抑制である。
【0022】
無線通信装置200は、伝送部210、送受信部220、制御部230、収集部240、信号処理部250、マイク260、およびアンテナ部270を備える。伝送部210は、制御部230の制御によって、制御装置100と通信を行う。また、伝送部210は、収集部240から入力された音情報を制御装置100に送信する。伝送部210は制御装置100から受信した信号を信号処理部250に出力し、また信号処理部250が出力した信号を制御装置100に送信する。信号処理部250は、伝送部210から受信した信号に対して処理を行い、送受信部220に出力する。
【0023】
信号処理部250は、送受信部220から入力された信号に対して処理を行い、伝送部210に出力する。送受信部220は、信号の位相および/または振幅を制御したビームフォーミングや信号の送受信に係る処理を行う。送受信部220は、信号処理部250から入力された信号をアンテナ部270を介して無線信号として対向無線通信装置300に送信する。また、送受信部220は、アンテナ部270が受信した信号を信号処理部250に出力する。
【0024】
収集部240は、マイク260により収音された音情報を収集し、伝送部210に出力する。マイク260は、無線通信装置200がカバーするエリア内を含む音を収集する。マイク260は、収集した音を示す音情報を収集部240に出力する。なお、マイク260は、マイクアレイであってもよい。制御装置100は、マイク260により得られた音情報から、音源の方向を推定できる。また、音情報には音源からの音と、音源が遮蔽物により跳ね返ってくる音も含まれる。また、音情報は、音波自体の強度や周波数スペクトルを示すデータでもよいし、マイクアレイを用いた到来角推定結果等の加工を行った形のデータでもよい。
【0025】
このような音情報を解析することで、対向無線通信装置300の方向や遮蔽物の方向が推定可能となる。なお、収集する音は周囲の環境音でもよいし、フィルタなどにより特定の音域の音に限定してもよく、可聴音でも非可聴音でもよい。また、対向無線通信装置300は、定期的に決まった音域やパターンの音を発生させ、制御装置100は、その音を検知してもよい。
【0026】
制御部230は、無線通信装置200全体を制御する。制御部230は、制御装置100からの指示により無線通信装置200の上述したスイープ制御などを行う。
【0027】
なお、無線通信装置200は
図3に示される構成や、その他5G NR(New Radio)におけるCU(Central Unit)、DU(Distributed Unit)、及びRU(Radio Unit)のように信号処理部が装置として分割されるような構成でもよい。さらに、
図3では、推定予測部110や学習モデル141、142が制御装置100に設けられているが、推定予測部110や学習モデル141、142を無線通信装置200に設けてもよい。
【0028】
図4は、制御装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、無線通信装置200が対向無線通信装置300と通信をしている状態で開始される処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
図4において、制御装置100は、通信中または通信可能な対向無線通信装置300があるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101では、接続中の対向無線通信装置300がある場合、および接続可能な対向無線通信装置300がある場合に肯定判定される。したがって、接続中であった対向無線通信装置300と切断した場合は否定判定される。
【0030】
ステップS101において、接続中または接続可能な対向無線通信装置300がある場合には(ステップS101:YES)、制御装置100は、対向無線通信装置300と通信を継続し、または通信を開始して(ステップS107)、ステップS101に戻る。ステップS101において、接続中の対向無線通信装置300がなく、かつ接続可能な対向無線通信装置300がない場合には(ステップS101:NO)、制御装置100は、無線通信装置200に対し、スリープ状態への移行を指示することで、無線通信装置200をスリープ状態に移行させる(ステップS102)。
【0031】
制御装置100は、無線通信装置200から音情報を収集する(ステップS103)。制御装置100は、収集された音情報から、学習モデル141、142を用いて、推定および予測を行う(ステップS104)。具体的には、上述したように、制御装置100は、エリア内に対向無線通信装置300が存在するか否かを推定し、将来においてエリア内に対向無線通信装置300が存在するか否かを予測する。
【0032】
制御装置100は、推定および予測の結果、現時点または将来において対向無線通信装置300がエリア内に存在するか否かを判定する(ステップS105)。制御装置100は、推定および予測の結果、現時点においても、かつ将来においても対向無線通信装置300がエリア内に存在しないと判定された場合には(ステップS105:NO)、ステップS103に戻り、音情報の収集を継続する。
【0033】
制御装置100は、現時点において対向無線通信装置300がエリア内に存在すると判定した場合には(ステップS105:YES)、直ちに無線通信装置200に復帰指示を行うことで、無線通信装置200を通常状態に移行させる(ステップS106)。一方、制御装置100は、将来において対向無線通信装置300がエリア内に存在すると判定した場合には(ステップS105:YES)、学習モデル141が出力した経過時間が経過したタイミングで無線通信装置200に復帰指示を行うことで、無線通信装置200を通常状態に移行させる(ステップS106)。その後、無線通信装置200に通信を開始させ(ステップS107)、ステップS101に戻る。
上述したステップS105においては、対向無線通信装置300の移動速度やスリープ状態から通常状態への復帰に要する処理時間などを加味して制御してもよい。
【0034】
本実施形態では、音情報のみによって制御する実施形態を示したが、これに限るものではない。音情報だけでなく、その他のセンシング情報と組み合わせて、見通し外における状況を基にした制御と見通し内における状況を基にした制御を分担して行う構成でもよい。また、上述した推定又は予測に基づく制御として、接続する無線通信装置の切り替えだけでなく、ビームフォーミングによるビームの指向性制御に活用したり、ビームサーチ範囲の削減に活用してもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信品質を向上可能な技術を提供することである。また、本実施形態によれば、高周波数帯の通信システムにおいて見通し外の状況把握に基づく制御が可能となり、無線通信装置のスリープ制御による低消費電力化やハンドオーバ制御の効率化による通信品質向上が期待できる。
【0036】
上述した制御装置100および無線通信装置200が実行する各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
10…通信システム、100…制御装置、110…推定予測部、120…制御部、130…伝送部、140…記憶部、141…学習モデル、142…学習モデル、150…信号処理部、200、200-1、200-2…無線通信装置、210…伝送部、220…送受信部、230…制御部、240…収集部、250…信号処理部、260…マイク、270…アンテナ部、300…対向無線通信装置