(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123971
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240905BHJP
A61B 1/12 20060101ALI20240905BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240905BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/12 541
G02B23/24 B
G02B23/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031828
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】濃香 元基
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 卓郎
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA12
2H040GA03
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF35
4C161FF40
4C161LL02
4C161PP07
4C161PP15
(57)【要約】
【課題】先端部本体の放熱性を高めることが可能な内視鏡を提供する。
【解決手段】鏡筒86と撮像ユニット92とを有する撮像装置84と、鏡筒86が挿入される挿入孔70を有する先端部本体48と、先端部本体48の基端面82から延出して設けられた延設部120と、を備え、撮像装置84は、挿入孔70に鏡筒86が挿入された状態において、先端部本体48の基端面82から露出した露出部122を有し、延設部120は、少なくとも撮像装置84の露出部122に対向した位置に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と撮像ユニットとを有する撮像装置と、
少なくとも前記鏡筒が挿入される挿入孔を有する先端部本体と、
前記先端部本体の基端から延出して設けられた延設部と、
を備え、
前記撮像装置は、前記挿入孔に前記鏡筒が挿入された状態において、前記先端部本体の基端から露出した露出部を有し、
前記延設部は、少なくとも前記撮像装置の前記露出部に対向した位置に配置される、
内視鏡。
【請求項2】
前記撮像装置と前記延設部との間には、熱伝導性を有する充填剤が充填される、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記充填剤は、グリスに熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性充填剤配合グリスである、
請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記撮像ユニットは、撮像素子と基板とを有し、
前記延設部は、前記基板に対向される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記先端部本体の基端側に外挿され、湾曲部の先端部を構成する先端リングを有し、
前記先端リングの少なくとも前記延設部が位置する外周を含む円周に熱導伝性を有する放熱シートが配置される、
請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記放熱シートは、前記先端部本体の軸方向において、前記延設部が位置する範囲に配置される、
請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記先端部本体は、前記挿入孔と連設された、前記撮像ユニットを配置する配置空間を有する、
請求項5に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記放熱シートは、前記先端部本体の軸方向において、前記配置空間と前記延設部とが位置する範囲に配置される、
請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記延設部は、前記先端部本体の周方向において、前記撮像装置の前記露出部に対向した位置にのみ配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に係り、特に挿入部の先端側に撮像装置を備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入される内視鏡挿入部の先端側には、先端部本体が設けられており、この先端部本体には、鏡胴と撮影ユニットを有する撮像装置が設けられている。
【0003】
このような構成の内視鏡においては、撮像ユニットを構成する撮像素子と撮像素子の基板に実装された電子部品(以下、電子部品を含めて基板と言う。)が発熱する。このため、上記の熱を外部に放熱する放熱構造を備えることが良好な画像(高画質の画像)を得るために必要となる。
【0004】
特許文献1には、先端部の各内蔵物の周囲に高熱伝導性樹脂を盛り付けて第1高熱伝導性樹脂を形成し、第1高熱伝導性樹脂の外周に高熱伝導性樹脂を盛り付けて第2高熱伝導性樹脂を形成した放熱構造を有する内視鏡が開示されている。
【0005】
特許文献2には、対物レンズのレンズ枠の基部に熱伝導性の高い筒状のスペーサを介して固体撮像素子を固定した放熱構造を有する内視鏡が開示されている。
【0006】
特許文献3には、イメージセンサと先端部を構成する金具との間に熱導伝性材料を介在させた放熱構造を有する内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-200397号公報
【特許文献2】特開平11-32985号公報
【特許文献3】実開昭61-42513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の撮像装置(特に撮像素子)は高性能化されている。このような高性能の撮像装置によれば、1秒間に撮影可能な静止画像の枚数を増加することが可能であり、且つ、高精細(高画質)画像を得ることができる。
【0009】
しかしながら、このような高性能の撮像装置を内視鏡に搭載した場合、撮像装置の発熱温度も従前のものよりも高くなる傾向にあるので、撮像装置で発熱した熱をより効果的に放熱することが要求される。なお、特許文献1乃至3に開示された内視鏡は、上記の高性能の撮像装置の放熱に関して考慮されていないため、撮像装置の熱が先端部本体の内部に籠る場合があり、この場合、撮像素子の動作不良を招く虞がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、先端部本体の放熱性を高めることが可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内視鏡は、上記の目的を達成するために、鏡筒と撮像ユニットとを有する撮像装置と、少なくとも鏡筒が挿入される挿入孔を有する先端部本体と、先端部本体の基端から延出して設けられた延設部と、を備え、撮像装置は、挿入孔に鏡筒が挿入された状態において、先端部本体の基端から露出した露出部を有し、延設部は、少なくとも撮像装置の露出部に対向した位置に配置される。
【0012】
本発明の一形態によれば、撮像装置と延設部との間には、熱伝導性を有する充填剤が充填されることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態によれば、充填剤は、グリスに熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性充填剤配合グリスであることが好ましい。
【0014】
本発明の一形態によれば、撮像ユニットは、撮像素子と基板とを有し、延設部は、基板に対向されることが好ましい。
【0015】
本発明の一形態によれば、先端部本体の基端側に外挿され、湾曲部の先端部を構成する先端リングを有し、先端リングの少なくとも延設部が位置する外周を含む円周に熱導伝性を有する放熱シートが配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の一形態によれば、放熱シートは、先端部本体の軸方向において、延設部が位置する範囲に配置されることが好ましい。
【0017】
本発明の一形態によれば、先端部本体は、挿入孔と連設された、撮像ユニットを配置する配置空間を有することが好ましい。
【0018】
本発明の一形態によれば、放熱シートは、先端部本体の軸方向において、配置空間と延設部とが位置する範囲に配置されることが好ましい。
【0019】
本発明の一形態によれば、延設部は、先端部本体の周方向において、撮像装置の露出部に対向した位置にのみ配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、先端部本体の放熱性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】先端硬質部を先端側から見た先端硬質部の要部拡大斜視図である。
【
図4】先端部本体を基端側から見た先端部本体の斜視図である。
【
図5】変形例における先端硬質部の長手軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る内視鏡の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態の内視鏡10の全体構成図である。
図1に示すように、内視鏡10は、施術者が把持する手元操作部12と、手元操作部12に基端部が接続されて体腔内に挿入される細長状の挿入部14とを備える。
【0024】
手元操作部12には、ユニバーサルケーブル16の基端部が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端部にはコネクタ18が設けられる。コネクタ18は、光源装置20に接続され、これによって後述する照明窓22、24(
図2参照)に光源装置20からの照明光が送られる。また、光源装置20は、プロセッサユニット28と電気的に接続される。コネクタ18は、光源装置20を介してプロセッサユニット28と電気的に接続される。光源装置20とコネクタ18とは、制御信号及び画像信号を光通信により送受信できる。光源装置20は、コネクタ18を介して光通信で送受信した制御信号等をプロセッサユニット28に伝送する。光源装置20は、コネクタ18を介して内視鏡10を駆動するための電力を無線で供給する。
【0025】
手元操作部12には、施術者によって操作される送気送水ボタン30と、吸引ボタン32と、シャッターボタン34とが並設されるとともに、一対のアングルノブ36、38が回動可能に設けられる。また、手元操作部12の先端側には、鉗子等の処置具を挿入するための鉗子挿入部40が設けられる。
【0026】
挿入部14は、挿入部14の挿入方向に沿った長手軸Aを有する。また、挿入部14は、手元操作部12の基端部から先端部に向けて軟性部42と、湾曲部44と、先端硬質部46とが連結されて構成される。湾曲部44は、手元操作部12のアングルノブ36、38を回動操作することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端硬質部46を所望の方向に向けることができる。
【0027】
図2は、先端硬質部46を先端側から見た先端硬質部46の要部拡大斜視図である。
図3は、先端硬質部46の断面図であって、
図1に示した挿入部14の長手軸Aに沿った断面図である。
【0028】
図2に示すように、先端硬質部46の先端面47には、観察窓56と、照明窓22、24と、送気送水ノズル60と、ウォータージェット口62と、鉗子口64とが設けられる。
【0029】
この先端硬質部46は、
図3に示すように、挿入部14の先端側に設けられた先端部本体48と、キャップ50と、から構成されている。先端部本体48は、例えばステンレス等の金属によって略円柱状に構成されて、長手軸Aに沿った中心軸A-Bを有する。また、キャップ50は、樹脂製であり、先端部本体48の先端面52に装着される。キャップ50の先端面54には、観察窓56、照明窓22、24、送気送水ノズル60、ウォータージェット口62及び鉗子口64に対応した複数の貫通孔が形成されている。
【0030】
なお、不図示であるが、先端部本体48は、筒状の外皮チューブに被覆され、この外皮チューブの先端部は、紐状の固定部材によって先端部本体48に固定される。また、この固定部材は、接着剤によって外皮チューブに接着される。
【0031】
図4は、先端部本体48を基端側から見た先端部本体48の斜視図である。
【0032】
図4に示すように、先端部本体48には、円形の挿入孔70、72、74、76、78、80が先端部本体48の基端面82に開口して形成される。これらの挿入孔70乃至80は、先端部本体48の基端面82から先端部本体48の先端面52に向けて形成された貫通孔である。
【0033】
先端部本体48の挿入孔70は、キャップ50の貫通孔58に対向される。この挿入孔70には、
図3の如く、撮像装置84を構成する鏡筒86が挿入される。鏡筒86の内部の先端側には観察窓56が固定される。鏡筒86の内部において観察窓56の基端側には、複数のレンズからなる光学系部材88が固定される。このように構成された鏡筒86は、先端部本体48の基端側から中心軸A-Bに沿って挿入孔70に挿入され、鏡筒86の先端部がキャップ50の貫通孔58に嵌入されることにより挿入孔70に固定される。なお、先端部本体48及び挿入孔70は、本発明の先端部本体及び挿入孔の一例である。
【0034】
また、
図3及び
図4に示すように、先端部本体48は、挿入孔70の基端側に挿入孔70と連接された配置空間90を有する。配置空間90には、撮像装置84を構成する撮像ユニット92が配置される。撮像ユニット92は、鏡筒86の基端部に連結されて構成されている。撮像ユニット92は、一例として、プリズム94と、撮像素子96と、基板98とを有している。なお、撮像装置84、鏡筒86、配置空間90及び撮像ユニット92は、本発明の撮像装置、鏡胴、配置空間及び撮像ユニットの一例である。
【0035】
図3に示すように、基板98には、フレキシブルケーブル100の先端部が接続される。フレキシブルケーブル100の基端部には信号線102が接続される。信号線102は、挿入部14と、手元操作部12と、ユニバーサルケーブル16とに挿通されてコネクタ18まで延設され、光源装置20に接続される。
【0036】
したがって、観察窓56から取り込まれた観察像は、鏡筒86の光学系部材88とプリズム94を介して撮像素子96の受光面に結像される。撮像素子96の受光面に結像された観察像は、撮像素子96によって電気信号に変換された後、信号線102を介してプロセッサユニット28に出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサユニット28に接続されたモニタ104に観察画像が表示される。なお、撮像素子96としては、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることができる。
【0037】
先端部本体48の挿入孔72、74は、挿入孔70の左右両側に形成される。挿入孔72、74は、キャップ50に形成された照明窓22、24用の2つの貫通孔(不図示)に対向して配置される。これらの挿入孔72、74には、ライトガイド(不図示)の先端部が挿入される。ライトガイドの基端部は、挿入部14と、手元操作部12と、ユニバーサルケーブル16とに挿通されてコネクタ18まで延設される。したがって、コネクタ18が光源装置20に接続されると、光源装置20からの照明光がライトガイドを介して照明窓22、24に伝送され、照明窓22、24から前方に照射される。
【0038】
先端部本体48の挿入孔76は、挿入孔72の下方に形成される。挿入孔76は、キャップ50に形成された送気送水ノズル60用の貫通孔(不図示)に対向して配置される。この挿入孔76には、送気送水チューブ(不図示)の先端部が挿入される。送気送水チューブの基端部は、挿入部14と手元操作部12に挿通され、送気送水ボタン30によって開閉操作されるバルブ(不図示)に連通される。このバルブは、コネクタ18に備えられた送気送水コネクタ(不図示)にチューブ(不図示)を介して接続される。送気送水コネクタには送気送水装置(不図示)が接続され、この送気送水装置からエア又は液体が上記のチューブを介してバルブに供給される。したがって、送気送水ボタン30を操作してバルブを開放することにより、送気送水ノズル60からエア又は液体を観察窓56に向けて噴射することができる。
【0039】
先端部本体48の挿入孔78は、挿入孔76の下方に形成される。挿入孔78は、キャップ50に形成されたウォータージェット口62用の貫通孔(不図示)に対向して配置される。この挿入孔78には、送水チューブ(不図示)の先端部が挿入される。送水チューブの基端部は、挿入部14と、手元操作部12と、ユニバーサルケーブル16とに挿通され、コネクタ18に備えられた送水コネクタ(不図示)に接続される。送水コネクタにはスイッチを有する送水装置(不図示)が接続される。スイッチによって送水装置を駆動することにより、送水装置から液体が送水チューブを介してウォータージェット口62に供給される。これにより、ウォータージェット口62から被検査部に向けて液体を直接噴射することができる。
【0040】
先端部本体48の挿入孔80は、中心軸A-Bの下方であって、配置空間90の斜め下方に形成される。この挿入孔80は、キャップ50に形成された鉗子口64用の貫通孔(不図示)に対向して配置される。この挿入孔80には、鉗子パイプ(不図示)の先端部が挿入される。鉗子パイプの基端部には、処置具挿通用チューブ(不図示)の先端部が接続される。処置具挿通用チューブの基端部は、挿入部14の内部に挿通され、手元操作部12の内部に設けられた分岐部を介して鉗子挿入部40に連通されている。よって、鉗子挿入部40から、鉗子又は高周波メス等の処置具が挿入されると、処置具は、処置具挿通用チューブと鉗子パイプを介して鉗子口64から導出される。
【0041】
また、上記の分岐部は、吸引チャンネルを介して吸引ボタン32の操作により開閉される吸引バルブ(不図示)に連通され、更にこの吸引バルブは、コネクタ18に備えられた吸引コネクタ(不図示)にチューブ(不図示)を介して接続される。したがって、吸引コネクタに吸引ポンプ(不図示)を接続し、吸引ボタン32を操作して吸引バルブを開放することにより、鉗子口64から残渣又は汚物等を、鉗子パイプ、処置具挿通用チューブ及び吸引チャンネルを介して吸引することができる。
【0042】
次に、実施形態の内視鏡10における放熱構造について説明する。
【0043】
図3及び
図4に示すように、先端部本体48は、延設部120を有する。延設部120は、先端部本体48の基端面82から延出して設けられている。具体的には、延設部120は、基端面82の外周部において挿入部14の基端側に延出して設けられている。
【0044】
撮像装置84は、鏡筒86が挿入孔70に挿入された状態において、先端部本体48の基端面82から露出した露出部122を有している。延設部120は、中心軸A-Bに対し露出部122よりも外側に配置され、且つ、中心軸A-Bに直交する径方向において露出部122に対向した位置に配置される。なお、延設部120は、本発明の延設部の一例である。
【0045】
ここで、露出部122とは、撮像ユニット92が配置空間90に配置された状態において、撮像ユニット92のうち先端部本体48の基端面82よりも挿入部14の基端側に配置された部分である。本例においては、撮像ユニット92を構成する基板98のうち基端面82から挿入部14の基端側に配置された部分が露出部122となっている。換言すれば、中心軸A-B方向における基板98の先端と基端との間の略中央部98Aから基端側に延びた一部分(以下、基板基端側部分と言う。)98Bが露出部122となっている。なお、露出部122は、本発明の露出部の一例である。また、以下の説明では、露出部122を基板基端側部分98Bと称して説明する場合もある。
【0046】
したがって、本例の延設部120は、撮像装置84の露出部122(すなわち、基板基端側部分98B)に対向して配置される。また、延設部120は、先端部本体48の周方向において、基板基端側部分98Bに対向した位置にのみ配置される。
【0047】
図3に示すように、撮像装置84と延設部120との間には、熱伝導性を有する充填剤124が充填される。充填剤124として、本例では、シリコーングリスにアルミナ粉末等の熱伝導性充填剤を配合したグリスが使用される。なお、充填剤124及びグリスは、本発明の充填剤及び熱伝導性充填剤配合グリスの一例である。
【0048】
先端部本体48は、充填剤124を充填するための貫通孔126を有する。貫通孔126は、先端部本体48の外周面と配置空間90とを連通する孔である。貫通孔126から注入された充填剤124は、先端部本体48と基板98との間の隙間(具体的には、配置空間90を形成する内壁128と基板98(基板基端側部分98Bを除く)との間の隙間、及び延設部120と基板基端側部分98Bとの間の隙間)に充填される。
【0049】
図3に示すように、先端部本体48の基端側には、湾曲部44(
図1参照)の先端部を構成する先端リング130が外挿される。先端リング130の外周面には、放熱シート132が配置される。放熱シート132は、先端リング130の少なくとも延設部120が位置する外周を含む円周に配置される。
【0050】
具体的には、放熱シート132は、先端部本体48の中心軸A-B方向において、配置空間90と延設部120とが位置する範囲に配置(巻回)される。本例では、先端部本体48に形成された配置空間90に熱発生源である基板98を配置する形態なので、放熱シート132は、延設部120が位置する外周のみでなく、基板98全体の熱を効果的に放熱するために配置空間90と延設部120とが位置する範囲に配置されている。
【0051】
放熱シート132として、本例では、グラファイトシートが適用される。グラファイトシートは、柔軟性と放熱性を兼ね備えた薄い黒鉛シートであり、高い熱伝導率を有する。なお、放熱シート132は、本発明の放熱シートの一例である。
【0052】
次に、実施形態の内視鏡10の効果について説明する。
【0053】
実施形態の内視鏡10によれば、先端部本体48の基端面82から延出した延設部120を露出部122(基板基端側部分98B)に対向した位置に配置した放熱構造を有するので、基板98のうち露出部122で発生した熱を延設部120によって効果的に受け取ることが可能となる。これにより、露出部122で発生した熱は、露出部122の近傍で籠ることなく、延設部120から先端部本体48全体(延設部120を含む)に伝わって拡散され、先端部本体48全体から放熱される。したがって、先端部本体48の放熱性を高めることができる。
【0054】
また、実施形態の内視鏡10によれば、撮像装置84と延設部120との間に、熱伝導性を有する充填剤124が充填されているので、基板98全体(基板基端側部分98Bを含む)で発生した熱を先端部本体48全体に効果的に伝えることが可能となる。
【0055】
また、実施形態の内視鏡10によれば、先端リング130の少なくとも延設部120が位置する外周に放熱シート132が配置されるので、延設部120で受け取った露出部122の熱を、放熱シート132で拡散することができる。放熱シート132で拡散された熱は、内視鏡10の構造物を経由して、さらに湾曲部44から軟性部42等に拡散されて放出される。これにより、露出部122の熱をより効果的に放熱することができる。
【0056】
また、上記の放熱シート132は、先端部本体48の中心軸A-B方向において、配置空間90と延設部120とが位置する範囲に配置されていることが好ましい。先端部本体48(延設部120を含む)で拡散された基板98の熱は、放熱シート132で拡散され、上記のルート(内視鏡の構造物、湾曲部44、軟性部42)を経て放出される。これにより、基板98全体の熱を効果的に放熱することができる。
【0057】
したがって、実施形態の内視鏡10によれば、基板98で発生した熱を内視鏡10の外部に効果的に放熱することができるので、発熱温度の高い高性能な撮像装置であっても搭載することができる。
【0058】
以下、本発明の内視鏡の変形例について説明する。
【0059】
図5は、変形例における先端硬質部150の長手軸Aに沿った断面図である。なお、
図5に示す先端硬質部150を説明するにあたり、上記実施形態の先端硬質部46と同一若しくは類似する部材については、同一の符号を付して説明する。
【0060】
図5に示した変形例と上記実施形態との相違点は、上記実施形態では、先端硬質部46の先端部本体48が撮像ユニット92を配置するための空間として配置空間90を有するものであるのに対し、
図5に示した変形例では、先端硬質部150の先端部本体152が撮像ユニット92を配置するための空間を有していない点である。
【0061】
図5に示すように、変形例の先端部本体152は、
図3に示した先端部本体48と比較して、撮像ユニット92を配置するための空間を有していない分だけ、中心軸A-B方向における長さが短く構成されている。先端部本体152の基端面154からは延設部156が延設されている。延設部156は、上記実施形態における延設部120(
図3参照)と比較して、撮像ユニット92を配置するための空間を有していない分だけ、中心軸A-B方向における長さが長く構成されている。
【0062】
撮像装置84は、挿入孔70に鏡筒86が挿入された状態において、先端部本体152の基端面154から露出した露出部158を有している。延設部156は、露出部158に対向した位置に配置される。なお、変形例の先端部本体152では、露出部158は、先端部本体152の基端面154から露出した撮像ユニット92に相当する。
【0063】
また、先端部本体152は、基板98と延設部156との間に充填剤124が充填されている。
【0064】
また、放熱シート132が、先端リング130の少なくとも延設部156が位置する外周を含む円周に配置される。具体的には、放熱シート132は、先端部本体48の中心軸A-B方向において、延設部156が位置する範囲に配置される。
【0065】
このように構成された変形例においても、上記実施形態と同様に、基板98で発生した熱を充填剤124、延設部156及び放熱シート132を利用して内視鏡10の外部に効果的に放熱することができる。
【0066】
なお、実施形態では、先端部本体48の周方向において、延設部120を露出部122に対向した位置にのみ配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、延設部120は、少なくとも露出部122に対向した位置に配置されていればよい。例えば、先端部本体48の基端面82を基端側から見た場合、先端部本体48の周方向において、延設部120の長さを露出部122の長さよりも長めに構成してもよい。
【0067】
また、実施形態では、充填剤124を使用する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、充填剤124を使用することなく、基板98と先端部本体48(配置空間90の内壁128と延設部120)とを互いに接触又は近接して配置してもよい。これにより、基板98で発生した熱を先端部本体48に伝えることが可能となる。但し、基板98で発熱した熱を先端部本体48に効果的に伝える観点からみれば、充填剤124を使用することが好ましい。
【0068】
以上、実施形態に係る内視鏡について説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 内視鏡
12 手元操作部
14 挿入部
16 ユニバーサルケーブル
18 コネクタ
20 光源装置
22 照明窓
24 照明窓
28 プロセッサユニット
30 送気送水ボタン
32 吸引ボタン
34 シャッターボタン
36 アングルノブ
38 アングルノブ
40 鉗子挿入部
42 軟性部
44 湾曲部
46 先端硬質部
47 先端面
48 先端部本体
50 キャップ
52 先端面
54 先端面
56 観察窓
58 貫通孔
60 送気送水ノズル
62 ウォータージェット口
64 鉗子口
70 挿入孔
72 挿入孔
74 挿入孔
76 挿入孔
78 挿入孔
80 挿入孔
82 基端面
84 撮像装置
86 鏡筒
88 光学系部材
90 配置空間
92 撮像ユニット
94 プリズム
96 撮像素子
98 基板
98A 略中央部
98B 基板基端側部分
100 フレキシブルケーブル
102 信号線
104 モニタ
120 延設部
122 露出部
124 充填剤
126 貫通孔
130 先端リング
132 放熱シート
150 先端硬質部
152 先端部本体
154 基端面
156 延設部
158 露出部