(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123984
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】肌色改善のための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20240905BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031846
(22)【出願日】2023-03-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」委託研究、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】外川 直之
(72)【発明者】
【氏名】山田 良一
(72)【発明者】
【氏名】内田 典芳
(72)【発明者】
【氏名】青木 由典
(72)【発明者】
【氏名】末廣 祥平
(72)【発明者】
【氏名】西平 順
(72)【発明者】
【氏名】勝山 豊代
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 茜
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD86
4B018ME14
4B117LC04
4B117LK21
(57)【要約】
【課題】ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含む組成物の、肌に対する新規な用途の提供。
【解決手段】ワイツマニア・コアギュランスを含む、肌色改善のための組成物を提供する。本開示に係る組成物は、肌の明るさを明るくする効果を奏する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含む、肌色改善のための組成物。
【請求項2】
肌色改善が、分光測色によるL*値の増加を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
肌色改善は、分光測色によるa*値及び/又はb*値の変化を含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ワイツマニア・コアギュランスの1日適用量が生菌数で1-20億cfu(colony formation unit)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ワイツマニア・コアギュランスがSANK70258株、P-22株、lilac-01株、SIM-7 DSM14043株、C101株、NBRC12583株、GBI-1株、GBI-20株、GBI-30株、GBI-40株又はこれらの菌株由来の変異株である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
食品である、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
飲料である、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
サプリメントである、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含む、肌色改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肌色改善のための組成物に関する。より詳しくは、ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)(シノニム:バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans))を含む、肌色改善のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労、健康状態及び栄養状態などを生菌の経口摂取によって改善しようとする試みがなされている。例えば、特許文献1には、ラクトバチルス属菌を含んでなる美容組成物が開示されている。この美容組成物は、皮膚水分蒸散量の増加抑制作用、皮膚バリア機能の向上作用、皮膚水分含量の維持または改善作用、皮膚皮脂量の維持または改善作用、皮膚弾力の維持または改善作用、皮膚色度の維持または改善作用を有するとされている。このうち、皮膚色度は、肌の発赤及び黒化の指標として紅斑値及びメラニン値を測定している。紅斑とは皮膚に現れる赤色の斑であり、メラニンは皮膚基底層の色素細胞(メラノサイト)により産生される黒色ないし褐色の重合体であるから、特許文献1の皮膚色度は具体的には赤色又は黒色ないし褐色の「色味の情報」を有するものである。
【0003】
また、特許文献2には、乳酸菌及びセラミドを有効成分として含有する美容食品が開示されている。この美容食品は、美肌・美容効果が期待できるとされており、同効果には、肌のハリ、ツヤ、潤い(しっとり感)を与えること、化粧のノリを良くすること、ニキビ・吹き出物などの肌荒れを軽減すること、シミ・ソバカスを目立ち難くする美白作用などが含まれるとされている。また、この美容食品は、顔色の改善などの健康促進効果も期待できるとされている。ツヤは、光が当たった肌がつややかに見えることをいう。顔色は、一般的に、健康状態との関係で視覚的な印象を表す場合に用いられており、特に「顔色が悪い」は健康状態の不良が顔の表面及び色の不規則性に表出されて光と輝きを欠いた印象を表す。ツヤ及び顔色は、主観的な印象の評価であり、客観的な測定値によって規定され得るものではない。
【0004】
ワイツマニア・コアギュランスSANK70258(シノニム:バチルス・コアギュランスSANK70258)は、1949年に緑麦芽から分離された、高い乳酸生成力を有する有胞子性乳酸菌である。ワイツマニア・コアギュランスSANK70258を配合した食品用製剤(商品名:ラクリス)が、1966年から50年以上にわたって販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-179601号公報
【特許文献2】特開2004-254632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、ワイツマニア・コアギュランスを含む組成物の、肌に対する新規な用途を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本開示は、以下の[1]-[33]を提供する。
【0008】
[1] ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含む、肌色の改善のために用いられる組成物。
[2] 肌色改善が、分光測色によるL*値の増加を含む、[1]の組成物。
[3] 摂取後遅くとも8週までにL*値が増加する、[2]の組成物。
[4] 摂取開始時(0週)に比して摂取後8週で少なくとも0.5%以上L*値が増加する、[3]の組成物。
[5] 肌色改善は、分光測色によるa*値及び/又はb*値の変化を含まない、[1]-[4]のいずれかの組成物。
[6] ワイツマニア・コアギュランスの1日適用量が生菌数で1-20億cfu(colony formation unit)である、[1]-[5]のいずれかの組成物。
[7] ワイツマニア・コアギュランスがSANK70258株、P-22株、lilac-01株、SIM-7 DSM14043株、C101株、NBRC12583株、GBI-1株、GBI-20株、GBI-30株、GBI-40株又はこれらの菌株由来の変異株である、[1]-[6]のいずれかの組成物。
[8] 賦形剤を含む、[1]-[7]の組成物。
[9] 経口投与される、[1]-[8]の組成物。
[10] 食品である、[9]の組成物。
[11] 飲料である、[9]の組成物。
[12] サプリメントである、[9]の組成物。
【0009】
[13] ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を有効成分とする、肌色改善剤。
[14] 肌色改善が、分光測色によるL*値の増加を含む、[13]の肌色改善剤。
[15] 摂取後遅くとも8週までにL*値が増加する、[14]の肌色改善剤。
[16] 摂取開始時(0週)に比して摂取後8週で少なくとも0.5%以上L*値が増加する、[15]の肌色改善剤。
[17] 肌色改善は、分光測色によるa*値及び/又はb*値の変化を含まない、[13]-[16]のいずれかの肌色改善剤。
[18] ワイツマニア・コアギュランスの1日適用量が生菌数で1-20億cfu(colony formation unit)である、[13]-[17]のいずれかの肌色改善剤。
[19] ワイツマニア・コアギュランスがSANK70258株、P-22株、lilac-01株、SIM-7 DSM14043株、C101株、NBRC12583株、GBI-1株、GBI-20株、GBI-30株、GBI-40株又はこれらの菌株由来の変異株である、[13]-[18]のいずれかの肌色改善剤。
[20] 経口投与される、[13]-[19]の肌色改善剤。
[21] [20]の肌色改善剤を含む、食品。
[22] [20]の肌色改善剤を含む、飲料。
[23] [20]の肌色改善剤を含む、サプリメント。
【0010】
[24] ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含む組成物を対象に経口投与する手順を含む、肌色の改善方法。
[25] 肌色改善が、分光測色によるL*値の増加を含む、[24]の方法。
[26] 遅くとも摂取後8週までにL*値が増加する、[25]の方法。
[27] 摂取開始時(0週)に比して摂取後8週で少なくとも0.5%以上L*値が増加する、[26]の方法。
[28] 肌色改善は、分光測色によるa*値及び/又はb*値の変化を含まない、[24]-[27]のいずれかの方法。
[29] ワイツマニア・コアギュランスの1日適用量が生菌数で1-20億cfu(colony formation unit)である、[24]-[28]のいずれかの方法。
[30] ワイツマニア・コアギュランスがSANK70258株、P-22株、lilac-01株、SIM-7 DSM14043株、C101株、NBRC12583株、GBI-1株、GBI-20株、GBI-30株、GBI-40株又はこれらの菌株由来の変異株である、[24]-[29]のいずれかの方法。
[31] 前記組成物が食品である、[24]-[30]のいずれかの方法。
[32] 前記組成物が飲料である、[24]-[30]のいずれかの方法。
[33] 前記組成物がサプリメントである、[24]-[30]のいずれかの方法。
【0011】
本開示において、「肌色改善」とは、特に肌の「明るさ」の改善を意味する。「肌色改善」は、好ましくは、肌の「赤味」及び/又は「黄味」の変化を伴わない。
肌の「明るさ」、「赤味」及び「黄味」は、肌表面の分光測色によりそれぞれL*値、a*値及びb*値として測定され得る。L*値、a*値及びb*値は、CIE(国際照明委員会)により定義されている。
L*は、明度(明るい・暗い)を表し、色味の情報を有さない。L*=0は全く光が反射しない、光を完全に吸収する物体の明度である。L*=100は完全拡散反射の白の明度を表す。
a*は、緑から赤にかけての色味の強さを表す。a*=0は緑でもなく赤でもない色味で、-(マイナス)の値は緑味を、+(プラス)は赤味の色を表す。
b*は、青から黄にかけての色味の強さを表す。b*=0は青でもなく黄でもない色味で、-(マイナス)の値は青味を、+(プラス)は黄味の強さを表す。
したがって、「肌色改善」とは、より具体的には、分光測色によるL*値の増加を意味する。「肌色改善」は、好ましくは、a*値及び/又はb*値の変化を伴わない。
肌の「明るさ」は、色味の情報を有さない点で「色度」(特許文献1参照)及び「顔色」(特許文献2参照)とは異なるものである。また、肌の「明るさ」は客観的な測定値である点で、主観的な印象の評価である「顔色」「ツヤ」及び「透明感」とは異なるものである。
さらに、肌の「明るさ」は、「透明感」とは必ずしも相関しない。「透明感」は、皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態と定義され、「顔色」と同様に視覚的な印象を表す。「透明感」には、彩度、色相角度、等方性(肌のキメに偏りがないこと)等が複合的に寄与している。
【0012】
「生菌」には、栄養細胞及び胞子が含まれる。ワイツマニア・コアギュランスの胞子は耐熱性、耐酸性及び耐糖性に優れ、生菌は胃酸で死滅せずに生きたまま腸に到達できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、ワイツマニア・コアギュランスを含む組成物の、肌に対する新規な用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】被験食品と対照食品の摂取8週後に糞便の有機酸量とpHを測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本開示の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
本開示に係る組成物は、ワイツマニア・コアギュランス(Weizmannia coagulans)を含み、対象に適用されて肌色の改善効果を示す。また、本開示に係る肌色改善剤は、有効成分としてワイツマニア・コアギュランスを含む。肌色の改善効果は、特に肌の明るさの改善であってよい。肌色の改善効果は、特に顔の肌にみられるものであってよい。
【0017】
ワイツマニア・コアギュランスは、有胞子性乳酸菌に属する乳酸菌であり、乾燥状態、熱及び酸に非常に強く、経口投与された場合でも胃酸や胆汁で死滅せずに腸に到達し、腸内で発芽して栄養細胞の状態となり、さらに増殖して乳酸を産生する。これらの特徴を有することから、ワイツマニア・コアギュランスはラクトバチルス属菌に比べて高耐性であり、比較的少量の投与であっても十分な効果を奏することが期待できる。
【0018】
ワイツマニア・コアギュランスとしては、ワイツマニア・コアギュランスのSANK70258株、P-22株、lilac-01株、SIM-7 DSM14043株、C101株、NBRC12583株、GBI-1株、GBI-20株、GBI-30株、GBI-40株等が挙げられ、中でもワイツマニア・コアギュランスのSANK70258株が供給の安定性、入手の容易性の点から好ましい。また、肌色改善効果を有するものであれば、これらの菌株由来の変異株であってよい。
【0019】
ワイツマニア・コアギュランスは、市販のものを用いることができる(例えば、三菱ケミカルフーズ株式会社「ラクリス-S」、「ラクリス-S顆粒」、「ラクリス-15」、及び「飼料用ラクリス-10」、並びにKerry Inc.社、SABINSA社、アテリオバイオ、UNIQUEBIOTECH、アサヒバイオサイクル社等の製品が挙げられる)。これらを適当な培地において適宜培養して用いてもよい。本開示においては、これらを胞子の状態で、あるいは胞子と栄養細胞の混合物の状態で用いることができる。
【0020】
肌の明るさは、分光測色計を用いてL*値を測定することにより評価できる。測定部位は特に限定されないが、肌色改善効果が特に期待される顔の肌(例えば頬や目尻)とされることが好ましい。
本開示に係る肌色改善のための組成物及び肌色改善剤(以下「本開示に係る組成物等」ともいう)の経口摂取により、L*値の増加を認め、肌の明るさが向上する。
L*値の増加は、摂取後遅くとも8週までに認められ得る。ただし、適用量の増減に応じて、組成物の摂取後にL*値の増加が認められるまでの期間は変化し得る。
L*値の増加は、例えば摂取開始時(0週)に比して摂取後8週で少なくとも0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上であり得る。ただし、適用量の増減に応じて、L*値の増加幅は変化し得る。
【0021】
本開示に係る組成物等による肌色の改善効果は、好ましくは、肌の赤味及び/又は黄味の有意な変化を伴わない。
肌の赤味及び黄味は、分光測色計を用いてa*値及びb*値を測定することにより評価できる。
本開示に係る組成物等の摂取開始後のa*値及びb*値の変化は、±3%以内、±1.5%以内であり得る。
【0022】
本開示に係る組成物等は、ワイツマニア・コアギュランス以外の菌を含んでもよい。その他の菌の例としては、乳酸菌、酪酸産生菌、ビフィズス菌、納豆菌、麹菌、酵母等が挙げられる。乳酸菌の例としては、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属の菌が挙げられる。
【0023】
ラクトバチルス属の菌の例としては、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobaillus gaceli)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantrum)などが挙げられる。
ラクトコッカス属の菌の例としては、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantrum)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、ラクトコッカス・ラフフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)などが挙げられる。
ワイツマニア・コアギュランス以外の菌が含まれる場合、菌全量に対するワイツマニア・コアギュランスの割合は通常1重量%以上であり、10重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることが好ましく、通常100重量%以下である。
【0024】
本開示に係る組成物等は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの塩類;リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリンなどのアミノ酸;タンニン酸などの有機酸;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、アスコルビン酸などのビタミン類を含有してもよい。
【0025】
本開示に係る組成物等には、必要に応じて、安定剤、賦形剤、pH調整剤等が含まれても構わない。安定剤としては、無水ケイ酸などが挙げられ、賦形剤としては、コーン、小麦、大豆、マイロ等の穀類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖等の糖類、大豆かす、コーングルテンミール、ごま油かす、コーンファームミール、なたね油かす、蒸留穀物残渣等の植物性油かす類、ふすま、米ぬか、脱脂米ぬか、コーングルテンフィード等の糟糠類、魚粉等の動物性素材、ヤシ油、ラード、コーンオイル等の植物性油脂、コーンスターチ、ポテトスターチ等の澱粉類、炭酸カルシウム等のミネラル類、ビタミンE等のビタミン類、デキストリン、コーンスチーブリカー、パプリカ抽出物、アルファルファミールなどが挙げられる。
【0026】
本開示に係る組成物は、経口摂取/投与されるものであることが好ましく、具体的な経口組成物として食品、飲料及びサプリメントの形態をとることができる。本開示に係る肌色改善剤も、経口摂取/投与のため、食品、飲料及びサプリメント中に添加され得る。
【0027】
本開示における「食品」は、健康食品、機能性食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)、健康補助食品、栄養補助食品を含む。また、食品の形状は、固形、液状又はペースト状等、適宜選択することができる。
【0028】
本開示における「飲料」は、清涼飲料水、乳飲料、アルコール飲料を含む。
【0029】
本開示における「サプリメント」はどのような形状であってもよく、錠剤、顆粒剤、散剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、乳剤等であってよい。また、胃酸から保護し、腸において作用させるため、異なるpHに対する溶解性に差異のある腸溶剤としてもよい。
【0030】
ワイツマニア・コアギュランスの適用量は、1日あたり生菌数で1×107コロニー形成単位(colony formation unit:cfu)以上、好ましくは1×108cfu以上であり、上限は5×1010cfuが好ましい。より具体的には、ワイツマニア・コアギュランスの適用量は、1日あたり生菌数で、1×108cfu-2×109cfu程度とされる。
【0031】
本開示に係る組成物等中のワイツマニア・コアギュランスは、上述の適用量に応じて適宜設定され得るが、例えば1.0×106cfu/g以上1.0×1011cfu/g以下、好ましくは1.0×107cfu/g以上1.0×1010cfu/g以下である。
【0032】
ワイツマニア・コアギュランスの摂取/投与の期間は、特に限定されないが肌色改善効果を得るための目安として、4週間以上、好ましくは8週間以上、より好ましくは12週間以上とされ、摂取期間に上限はない。
【実施例0033】
[実施例1]
ワイツマニア・コアギュランスの摂取による肌の明るさの変化について以下の試験を行った。
【0034】
試験手法
プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間法
試験食品
被験食品(ワイツマニア・コアギュランス+デキストリン)又は対照食品(デキストリン)。
ワイツマニア・コアギュランスは三菱ケミカル株式会社「ラクリス-15」を用い、生菌数10億cfu/日で摂取した。
デキストリンは松谷化学工業株式会社「パインデックス#1」を用い、3.84mg/日で摂取した。
被験者
健常成人女性(年齢30歳以上65歳未満)、被験食品40名(中止・脱落・除外1名、有効データ数39名)、対照食品40名(中止・脱落・除外4名、有効データ数36名)。
摂取期間
8週間
【0035】
肌の明るさ・色(赤味、黄味)の測定
測定機器は、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ社)を用いた。
測定部位は、目尻とした。
摂取開始前(0週)、摂取4週後及び8週後に2回ずつ測定を行って、L*値、a*値及びb*値を取得し、2回の測定値の平均値を算出した(表1)。L*値は肌の明るさ、a*値は赤味、b*値は黄味を示す。L*値は数値が大きいほど肌の明るさが明るいことを示す。
また、摂取開始前(0週)から摂取4週後まで又は摂取8週後までの変化量を算出し、ΔL*値、Δa*値及びΔb*値とした(表2)。
検定は、表1での試験群内の比較では、対応ありのt検定を行い、有意差が認められた箇所には「*」を記した。表2での試験群間の比較では、対応無しのt検定を行い、p値を示すとともに、有意差が認められた箇所に「*」を示した。
【0036】
【0037】
【0038】
L*値(明るさ)は、被験食品群において、摂取開始時(0週)に比べ、摂取後8週で有意に増加した(表1)。一方、対照食品群においては、b*値(黄味)が、摂取開始時(0週)に比べ、摂取後4週及び8週で有意に低下した。
【0039】
ΔL*値(明るさの変化量)は、被験食品群において、対照食品群に比べ摂取後8週で有意に増加した(表2)。一方、対照食品群においては、Δb*値(黄味の変化量)が、被験食品群に比べ、摂取後8週で有意に低下した。
【0040】
これらの結果より、ワイツマニア・コアギュランスの摂取によって肌の色が明るくなる効果が確認された。また、ワイツマニア・コアギュランスの摂取は、肌の赤味及び黄味には変化を与えないことが確認できた。
【0041】
糞便の有機酸量とpHの測定
摂取8週後に糞便中の酪酸、短鎖脂肪酸及び有機酸総和量を、以下のようにして測定した。
はじめに糞便を滅菌した薬匙で充分に混合後、300 mgを1.5 mL容マイクロチューブに秤量して採取し、0.6 mLの蒸留水を加えて懸濁し、0.09 mLの12 %過塩素酸を加えてさらに懸濁後、氷上で 10分間静置した。遠心分離(15,000×g, 10 min、4℃)を行い、タンパク質を沈澱させた。上清を0.45 μmのコスモナイスフィルター W(水系)で濾過し、減圧下で抜気して炭酸ガスを除去した。処理後のサンプル5μlを分析に供した。
【0042】
有機酸濃度分析には、イオン排除HPLCを用いた。測定項目は、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、n 酪酸、イソ吉草酸、n 吉草酸とした。分析法は Tsukaha ra et al. (2014) に準拠した(Tsukahara, T., Matsukawa, N., Tomonaga, S., Inoue, R., Ushida, K., Ochiai, K. (2014) High sensitivity detection of short chain fatty acids in porcine ileal, cecal, portal and abdominal blood by gas chromatography mass spectrometry. Anim. Sci. J. 85: 494 498.)
【0043】
また、糞便を滅菌した薬匙で充分に混合、300 mgを1.5 mL容マイクロチューブに秤量して採取し、0.6 mLの蒸留水を加えて懸濁してサンプルとし、pHメータ(ホリバ twin pH B212)を用いて pHを測定した。
【0044】
糞便pHと酪酸、短鎖脂肪酸、有機酸総和との相関関係を検証した。酪酸は、酪酸(n-butyric acid)及びイソ酪酸の合計量とした。短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸(吉草酸とイソ吉草酸の合計)の合計量とした。有機酸総和量は、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸の合計量とした。
【0045】
結果を
図1、表3に示す。被験食品群では、酪酸、短鎖脂肪酸及び有機酸総和量のそれぞれの変化量と、pHの変化量との間で負の相関が認められた。一方、対照食品群では相関はみられなかった。ワイツマニア・コアギュランスの摂取によって腸内のpH変化と有機酸量変化との間に負の相関が生じたことが、肌の色が明るくなる効果に寄与している可能性が考えられた。
【0046】