IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ UBE三菱セメント株式会社の特許一覧

特開2024-124058塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法
<>
  • 特開-塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法 図1
  • 特開-塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法 図2
  • 特開-塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法 図3
  • 特開-塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法 図4
  • 特開-塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124058
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/60 20060101AFI20240905BHJP
   C04B 7/43 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C04B7/60
C04B7/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031967
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
(72)【発明者】
【氏名】藤永 祐太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥介
(57)【要約】
【課題】抽気されたガスの冷却に伴うコーチングの発生を抑制する。
【解決手段】本開示の一側面に係る塩素バイパス設備は、セメント原料を焼成するセメントキルンからの排ガスの一部を抽気する抽気口と、前記抽気口から抽気された抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で前記抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を前記抽気ガスから分離して、分級後ガスを得る分級部と、前記分級後ガスが流通する流路の途中において、前記流路内を旋回するように冷却用ガスを前記流路内に導入する冷却ガス導入部と、前記流路のうちの前記冷却ガス導入部よりも上流に位置する領域を形成する保温ダクトの下流側の端部を加熱する加熱部と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を焼成するセメントキルンからの排ガスの一部を抽気する抽気口と、
前記抽気口から抽気された抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で前記抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を前記抽気ガスから分離して、分級後ガスを得る分級部と、
前記分級後ガスが流通する流路の途中において、前記流路内を旋回するように冷却用ガスを前記流路内に導入する冷却ガス導入部と、
前記流路のうちの前記冷却ガス導入部よりも上流に位置する領域を形成する保温ダクトの下流側の端部を加熱する加熱部と、を備える、塩素バイパス設備。
【請求項2】
前記加熱部は、棒状に形成されたヒータを含み、
前記ヒータは、前記ヒータの一部が前記端部から露出した状態で、前記端部に含まれる耐火物内に埋め込まれている、請求項1に記載の塩素バイパス設備。
【請求項3】
前記ヒータは、発熱部と非発熱部とを含み、
前記発熱部が、前記耐火物内に埋め込まれており、前記非発熱部が、前記端部から露出している、請求項2に記載の塩素バイパス設備。
【請求項4】
前記加熱部は、前記端部に含まれる耐火物内に埋め込まれた2以上のヒータを含み、
前記2以上のヒータは、所定方向に沿って並んで配置されており、
前記2以上のヒータのうちの互いに隣り合うヒータ同士の間には、前記耐火物を補強する部材が設けられている、請求項1に記載の塩素バイパス設備。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の塩素バイパス設備と、
前記セメントキルンと、を備える、セメントクリンカの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の製造装置を用いてセメントクリンカを製造する、セメントクリンカの製造方法。
【請求項7】
セメント原料を焼成するセメントキルンからの排ガスの一部を抽気する抽気工程と、
前記抽気工程において抽気された抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で前記抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を前記抽気ガスから分離して、分級後ガスを得る分級工程と、
前記分級後ガスが流通する流路の途中において、前記流路内を旋回するように冷却用ガスを前記流路内に導入する冷却工程と、
前記流路のうちの前記冷却用ガスが導入される箇所よりも上流に位置する領域を形成する保温ダクトの下流側の端部を加熱する加熱工程と、を含む、塩素バイパス設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカの製造装置では、各種廃棄物を原料及び燃料として用いることの取り組みが進められている。このような事情から、セメントキルンに持ち込まれる塩素量は増加する傾向にある。多くのセメントクリンカ製造装置にはセメントキルン内の塩素を低減するために塩素バイパス設備が設置されており、この塩素バイパス設備で抽気された抽気ガスから効率的に塩素を除去する技術が検討されている。特許文献1では、キルン排ガス流路から抽気した抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で抽気ガスから粗粉を分離し、その後、600℃以下に冷却して塩素バイパスダストを分離する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-55900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、抽気されたガスの冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用な塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]セメント原料を焼成するセメントキルンからの排ガスの一部を抽気する抽気口と、前記抽気口から抽気された抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で前記抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を前記抽気ガスから分離して、分級後ガスを得る分級部と、前記分級後ガスが流通する流路の途中において、前記流路内を旋回するように冷却用ガスを前記流路内に導入する冷却ガス導入部と、前記流路のうちの前記冷却ガス導入部よりも上流に位置する領域を形成する保温ダクトの下流側の端部を加熱する加熱部と、を備える、塩素バイパス設備。
【0006】
[2]前記加熱部は、棒状に形成されたヒータを含み、前記ヒータは、前記ヒータの一部が前記端部から露出した状態で、前記端部に含まれる耐火物内に埋め込まれている、上記[1]に記載の塩素バイパス設備。
【0007】
[3]前記ヒータは、発熱部と非発熱部とを含み、前記発熱部が、前記耐火物内に埋め込まれており、前記非発熱部が、前記端部から露出している、上記[2]に記載の塩素バイパス設備。
【0008】
[4]前記加熱部は、前記端部に含まれる耐火物内に埋め込まれた2以上のヒータを含み、前記2以上のヒータは、所定方向に沿って並んで配置されており、前記2以上のヒータのうちの互いに隣り合うヒータ同士の間には、前記耐火物を補強する部材が設けられている、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の塩素バイパス設備。
【0009】
[5]上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の塩素バイパス設備と、前記セメントキルンと、を備える、セメントクリンカの製造装置。
【0010】
[6]上記[5]に記載の製造装置を用いてセメントクリンカを製造する、セメントクリンカの製造方法。
【0011】
[7]セメント原料を焼成するセメントキルンからの排ガスの一部を抽気する抽気工程と、前記抽気工程において抽気された抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で前記抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を前記抽気ガスから分離して、分級後ガスを得る分級工程と、前記分級後ガスが流通する流路の途中において、前記流路内を旋回するように冷却用ガスを前記流路内に導入する冷却工程と、前記流路のうちの前記冷却用ガスが導入される箇所よりも上流に位置する領域を形成する保温ダクトの下流側の端部を加熱する加熱工程と、を含む、塩素バイパス設備の運転方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、抽気されたガスの冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用な塩素バイパス設備、セメントクリンカの製造装置、セメントクリンカの製造方法、及び塩素バイパス設備の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、セメントクリンカの製造装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、塩素バイパス設備のシステム構成の一例を示す模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、ダクトの一部を拡大して示す模式図である。
図4図4は、加熱部の一例を示す模式図である。
図5図5は、熱流体シミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。一部の図面には、XYZ直交座標系が示される。以下の説明では、Z軸が上下方向に対応し、X軸及びY軸が水平方向に対応する。
【0015】
[セメントクリンカの製造装置]
図1には、一実施形態に係るセメントクリンカの製造装置が模式的に示されている。図1に示される製造装置1(セメントクリンカの製造装置)は、セメント原料を焼成してセメントクリンカを製造する装置である。製造装置1は、プレヒータ10と、セメントキルン20と、クリンカクーラ30と、塩素バイパス設備50と、を備える。
【0016】
プレヒータ10は、セメント原料を予熱する装置である。プレヒータ10は、セメント原料の予熱に加えて、セメント原料を仮焼してもよい。プレヒータ10は、例えば、サイクロンC1,C2,C3,C4と、仮焼炉12と、を有する。プレヒータ10では、セメントキルン20からの排ガス(以下、「キルン排ガス」という。)が、仮焼炉12、サイクロンC4、サイクロンC3、サイクロンC2、及びサイクロンC1を流通する。プレヒータ10では、サイクロンC1とサイクロンC2との接続部に対して、セメント原料が導入される。
【0017】
プレヒータ10に導入されたセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、仮焼炉12、及びサイクロンC4を流通しつつ、キルン排ガス等との熱交換により加熱されて、セメントキルン20の窯尻22に導入される。プレヒータ10は、セメントキルン20の窯尻22と仮焼炉12とを接続するライジングダクト14を有する。仮焼炉12には、ライジングダクト14を介してキルン排ガスが導入される。キルン排ガスには、セメントキルン20での燃焼排ガスが含まれる。仮焼炉12には、キルン排ガスに加えて熱エネルギー原料が導入され、仮焼炉12は、セメント原料を仮焼する。
【0018】
セメントキルン20は、セメント原料を焼成してセメントクリンカを生成する装置である。セメントキルン20は、プレヒータ10で予熱及び仮焼された後のセメント原料を焼成してもよい。セメントキルン20は、バーナ24と、本体部26とを有する。バーナ24は、本体部26のうちの窯尻22とは反対側の端部に設けられている。本体部26は、円筒状に形成されており、その中心軸まわりに回転可能に設けられている。セメントキルン20は、ロータリキルンとも称される。
【0019】
本体部26内において、バーナ24の燃焼によってセメント原料が焼成される。セメントキルン20は、セメント原料から得られたセメントクリンカをクリンカクーラ30に排出する。クリンカクーラ30は、セメントクリンカを冷却する装置である。クリンカクーラ30によって冷却された後のセメントクリンカが、製造装置1から排出される。
【0020】
(塩素バイパス設備)
塩素バイパス設備50は、セメントキルン20で発生するキルン排ガスの一部を抽気して、製造装置1内の塩素分等の揮発成分をダストとして回収する設備(装置)である。製造装置1において、塩素バイパス設備50が設置されることで、製造装置1内の塩素分を低減することができる。塩素バイパス設備50は、例えば、ライジングダクト14に接続されている。この場合、塩素バイパス設備50は、ライジングダクト14からキルン排ガスを抽気する。
【0021】
図2には、塩素バイパス設備50のシステム構成の一例が模式的に示されている。塩素バイパス設備50は、例えば、抽気口52と、ダクト54と、分級部60と、ダクト62と、冷却ガス導入部70と、冷却部92と、回収部94と、吸引部96と、ダスト処理部98と、を備える。以下の説明では、ガスの流れを基準にして「上流」及び「下流」の用語を用いる。抽気口52から抽気された後のガスは、上流から下流に向かって流れる。また、塩素バイパス設備50において抽気された直後のガス(抽気後に何ら処理が施されていないガス)を「ガスG1」と称する。
【0022】
抽気口52は、キルン排ガスの一部を抽気する開口である。抽気口52は、ライジングダクト14に設けられてもよい。なお、抽気口52は、ライジングダクト14に代えて、又は加えて、窯尻22に設けられてもよく、窯尻22とライジングダクト14との間(境界部分)に設けられてもよい。ダクト54は、その一端に抽気口52が形成され、抽気口52から抽気されて得られるガスG1(抽気ガス)を分級部60まで流通させる管である。ダクト54は、抽気プローブとも称される。
【0023】
ガスG1は、原料ダスト、並びにKCl及びNaCl等の揮発した塩素分を含む。ガスG1に含有される原料ダストには、原料ダストの粗粉と、粗粉よりも小さい粒径を有する微粉とが含まれる。ガスG1は、770℃以上の温度を有する。ガスG1の温度は、1000℃~1100℃程度であってもよい。ガスG1は、ダクト54を流通して、分級部60に導入される。
【0024】
分級部60は、ガスG1の温度を770℃以上に維持した状態で、ガスG1に含まれる原料ダストの粗粉をガスG1から分離して、分離された後のガスを得る装置である。分級部60は、例えば、ガスG1を旋回させつつ、ガスG1から原料ダストの粗粉を分離するサイクロンである。分級部60において原料ダストの粗粉が分離された後のガス(以下、「ガスG2」と表記する)は、原料ダストの微粉を含む。
【0025】
原料ダストの粗粉の粒径は、18μm以上であってもよい。原料ダストの粗粉の粒径は、好ましくは16μm以上であってもよく、さらに好ましくは14μm以上であってよい。原料ダストの微粉の粒径は、上述の粗粉の粒径よりも小さい。原料ダスト(クリンカダスト)の塩素濃度は粒径によって異なっており、原料ダストの粗粉では、微粉に比べて塩素濃度が低い。そのため、分級部60において、塩素濃度の低い原料ダストの粗粉を分離し、分離した原料ダストの粗粉をセメントキルン20に戻すことで、セメントキルン20への塩素の導入量を低減しつつ、塩素バイパス設備50において処理すべきダストの量の増加を抑制することができる。
【0026】
分級部60においてガスG1から分離される原料ダストの粗粉の表面にKCl及びNaCl等の揮発した塩素分が析出することを抑制する観点から、分級部60において原料ダストの粗粉を分離する際のガスG1の温度は、好ましくは820℃以上、より好ましくは860℃以上に維持される。分級部60の出口におけるガスG2(分級後ガス)が、上記温度を有することが好ましい。ガスG2は十分に高い温度を有しているため、ガスG2内において、KCl及びNaCl等の塩素分は気相状態で含まれている。
【0027】
図1に示されるように、塩素バイパス設備50は、循環ライン58を備える。循環ライン58は、分級部60においてガスG1から分離された原料ダストの粗粉をセメントキルン20の窯尻22まで運搬して窯尻22に戻す装置である。抽気口52から抽気された原料ダストの粗粉を窯尻22に戻すことによって、ガスG1に含まれる原料ダストの粗粉をセメントクリンカの製造に用いることができる。なお、循環ライン58は、窯尻22に代えて、又は加えて、原料ダストの粗粉を、ライジングダクト14、仮焼炉12、及び、セメントキルン20の本体部26のうちの1箇所以上に戻してもよい。
【0028】
図2に戻り、ダクト62は、分級部60で得られるガスG2を冷却部92まで流通させる管である。ダクト62は、ガスG2を流通させるための流路Fを形成する(図3(a)を参照)。冷却ガス導入部70は、ガスG2が流通する流路Fの途中において、流路F内を旋回するように冷却用ガスGcをダクト62の流路F内に導入する部分である。流路Fを流通するガスG2は、冷却ガス導入部70から導入される冷却用ガスGcによって冷却される。
【0029】
ここで、ダクト62が形成する流路Fのうちの、冷却用ガスGcが導入される箇所よりも上流の領域を「流路FH」と表記し、冷却用ガスGcが導入される箇所を含み、当該箇所よりも下流の領域を「流路FL」と表記する。流路FHでは、770℃以上に維持されたガスG2が流通するので、ダクト62のうちの流路FHを形成する部分が保温ダクト64(保温部)として構成される。流路FHを形成する保温ダクト64は、ガスG2の温度が770℃以上に維持されるように形成されている。保温ダクト64は、断熱材を含んでもよい。流路FH(又は保温ダクト64)の断面は、横長の長方形であってもよい。
【0030】
流路FLでは、ガスG2に対して冷却用ガスGcが混合されるので、ダクト62のうちの流路FLを形成する部分が冷却ダクト66(冷却部)として構成される。流路FL(又は冷却ダクト66)の断面は、円形であってもよい。流路FLの断面積は、流路FHの断面積よりも大きくてもよい。図3(b)には、図3(a)におけるIIIB-IIIB線で切断した際の断面図が模式的に示されている。
【0031】
冷却ガス導入部70では、流路FLに冷却用ガスGcの流路Fcが接続され、冷却用ガスGcが、流路FLにおいて冷却ダクト66の内周面に沿って旋回するように流路FL内に導入される。これにより、流路FLにおいて、冷却用ガスGcの旋回流が形成され、その旋回流は、流路FLの外周部においてエアーカーテンとして機能する。流路FLを形成する冷却ダクト66の内周面に沿って冷却用ガスGcの旋回流が形成されることで、ガスG2が冷却されることに起因して発生し得るコーチング(塩素分が凝縮されたもの)が、冷却ダクト66の内周面に形成されることを抑制できる。
【0032】
冷却ガス導入部70において、ガスG2は冷却用ガスGcと混合されて冷却される。ガスG2と冷却用ガスGcとの混合によって得られる混合ガスの温度は、設備の耐熱性の観点から、600℃以下であってもよく、500℃以下であってもよい。冷却用ガスGcは、常温の空気であってもよく、工場等で発生する排気ガスを含むガスであってもよい。冷却ガス導入部70は、流路FLに対する冷却用ガスGcの導入方向(風向)を変更することが可能な調節部材を有してもよい。冷却ガス導入部70は、導入方向に代えて、又は加えて、冷却用ガスGcの導入量(流量)を変更することが可能な調節部材を有してもよい。
【0033】
図2に示されるように、冷却ガス導入部70から導入された冷却用ガスGcとガスG2とが混合された混合ガスは、冷却部92に導入される。すなわち、ダクト62(冷却ダクト66)の下流に位置する端部は、冷却部92に接続されている。冷却部92は、冷却用ガスGcとガスG2とが混合された混合ガスを冷却する装置である。冷却部92は、水冷式又は空冷式の熱交換器であってもよい。冷却部92は、例えば、冷却用ガスGcとガスG2とが混合して得られる混合ガスを、260℃未満、好ましくは200℃未満に冷却する。
【0034】
冷却部92によって冷却された後のガスは、回収部94に導入される。回収部94は、ガスに含まれるクリンカダスト(塩素バイパスダスト)を当該ガスから回収する装置である。回収部94は、バグフィルタであってもよく、湿式スクラバ等の湿式集塵器であってもよい。吸引部96は、冷却用ガスGcとガスG2とが混合されて得られる混合ガスを吸引する装置である。吸引部96は、シロッコファン及びターボファン等の通常の吸引ファンであってもよい。ダスト処理部98は、回収部94において回収されたクリンカダストに対して水洗処理を行う。ダスト処理部98で水洗処理が行われた後のクリンカダストは、セメント組成物に配合されてもよく、セメント原料として用いられてもよい。
【0035】
上述したように、ダクト62は、冷却ガス導入部70からの冷却用ガスGcの導入箇所を基準にして、保温ダクト64と冷却ダクト66とに区画される。ここで、図3(a)に示されるように、保温ダクト64の下流に位置する端部を「端部64a」と表記する。端部64aが形成する開口64bにおいて、冷却用ガスGcが導入されることに起因して、塩素分のコーチングが形成される可能性があることの知見が得られた。また、開口64bに形成されたコーチングにより、開口64bが閉塞してしまうおそれがあることの知見が得られた。
【0036】
具体的には、以下の知見が得られた。冷却用ガスGcに起因して端部64aが冷却されるため、端部64aの温度が800℃よりも低い温度まで低下し得る。これにより、端部64aが形成する開口64bにガスG2が接触した際に、ガスG2の温度が低下して、KLC及びNaCl等の揮発した塩素分が析出又は原料ダストの微粉が析出され得る。この塩素分の析出(凝縮)によって、クリンカダストが生成され、そのクリンカダストが開口64bを形成する内壁面に付着して、コーチングが発生し得る。
【0037】
塩素バイパス設備50では、開口64bでのコーチングの発生を抑制するために、端部64aを加熱するための手段が設けられる。塩素バイパス設備50は、加熱部80を備える。加熱部80は、流路FHを形成する保温ダクト64の下流側の端部である端部64aを加熱する部分である。加熱部80は、端部64aを770℃以上、好ましくは800℃以上に加熱する。端部64aは、上流側の他の領域に比べて、外方に向けて突出するようにフランジ状に形成されてもよい。図4には、図3(a)におけるIV-IV線に沿った断面が模式的に示されている。なお、図4では、断面であることを示すハッチングは省略されている。
【0038】
端部64aが形成する開口64bでのガスG2の流通方向から見て、端部64aの形状は、四角形であってもよい。図4に示される例においては、開口64bでのガスG2の流通方向は、X軸方向である。端部64aにおいて、中央部分に開口64bが形成されている。端部64aの少なくとも一部は、耐火物によって形成されている。端部64aの全体が、耐火物によって形成されてもよい。端部64aは、1種類の耐火物、又は複数種の耐火物によって形成されてもよい。端部64aにおける耐火物の材質は、例えば、SiCキャスタブル(不定形耐火物)である。端部64aにおける耐火物の材質として、SiCキャスタブルよりも熱伝導率が低い断熱キャスタブルが採用されてもよい。加熱部80に含まれる部材の少なくとも一部が、端部64aにおける耐火物内に埋め込まれてもよい。
【0039】
加熱部80は、棒状に形成された1以上のヒータを含んでもよい。加熱部80は、2以上の棒状のヒータを含んでもよい。棒状のヒータは、例えば、その一方の端部にリード線が接続され、ニクロム線等の発熱体と、発熱体を覆う金属製のパイプとを含む。棒状のヒータは、自身の表面での発熱最高温度が800℃以上の既製品であってもよい。棒状のヒータは、棒ヒータ、ヒータ棒、又はカートリッジヒータとも称される。以下、加熱部80が2以上の棒状のヒータを含む場合について説明する。
【0040】
加熱部80は、例えば、4本のヒータ81uと、4本のヒータ81dと、2本のヒータ81rと、2本のヒータ81lと、を含む。ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81lは、棒状に形成されたヒータである。ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81lは、互いに同種のヒータであってもよく、発熱最高温度等の仕様が異なる2種類以上のヒータであってもよい。
【0041】
4本のヒータ81uは、開口64bよりも上方に配置されている。4本のヒータ81uそれぞれは、その延在方向が上下方向に沿うように配置されている。4本のヒータ81uは、開口64bでのガスG2の流通方向及び各ヒータ81uの延在方向に交差する方向(例えば、直交する方向:Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。4本のヒータ81dは、開口64bよりも下方に配置されている。
【0042】
4本のヒータ81dそれぞれは、その延在方向が上下方向に沿うように配置されている。4本のヒータ81dは、開口64bでのガスG2の流通方向及び各ヒータ81dの延在方向に交差する方向(例えば、直交する方向:Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。図4に示される断面において、開口64bの中心を通り、水平な仮想ラインに関して、4本のヒータ81uと4本のヒータ81dとが線対称に設けられてもよい。
【0043】
2本のヒータ81rは、開口64bでのガスG2の流通方向において下流から上流を見たときに、開口64bよりも右側に配置されている。2本のヒータ81rそれぞれは、その延在方向が水平方向(左右方向)に沿うように配置されている。2本のヒータ81rは、開口64bでのガスG2の流通方向及び各ヒータ81rの延在方向に交差する方向(例えば、直交する方向:Z軸方向)に沿って、並んで配置されている。
【0044】
2本のヒータ81lは、開口64bでのガスG2の流通方向において下流から上流を見たときに、開口64bよりも左側に配置されている。2本のヒータ81lそれぞれは、その延在方向が水平方向(左右方向)に沿うように配置されている。2本のヒータ81lは、開口64bでのガスG2の流通方向及び各ヒータ81lの延在方向に交差する方向(例えば、直交する方向:Z軸方向)に沿って、並んで配置されている。図4に示される断面において、開口64bの中心を通り、鉛直な仮想ラインに関して、2本のヒータ81rと2本のヒータ81lとが線対称に設けられてもよい。
【0045】
ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81dそれぞれは、自身の一部が端部64aから露出した状態で、端部64aに含まれる耐火物内に埋め込まれている。ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81dそれぞれでは、リード線が接続される端部が、端部64a内に埋め込まれることなく、端部64aから露出していてもよい。
【0046】
ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81dそれぞれは、発熱部82と、非発熱部84と、を含む。発熱部82は、ヒータへの電力の供給に応じて、温度が上昇する部分である。非発熱部84は、ヒータへ電力が供給されても、温度が上昇しない部分である。発熱部82は、例えば、ヒータのうちのリード線が接続される端部とは反対側の端部を起点として、ヒータ本体の1/2以上の領域を占める部分である。非発熱部84は、ヒータ本体のうちの発熱部82以外の部分である。ヒータ81u、ヒータ81d、ヒータ81r、及びヒータ81dそれぞれでは、非発熱部84の一部が端部64aから露出しており、非発熱部84の残りの一部と発熱部82の全体が、端部64a内に埋め込まれている。発熱部82の少なくとも一部は、端部64aにおける耐火物に埋め込まれている。
【0047】
加熱部80に含まれる各ヒータは、1以上のコンピュータで構成される制御部によって制御されてもよい。加熱部80は、端部64aの温度を計測する温度センサを有してもよく、温度センサは、温度の計測値を示す情報を上記制御部に出力してもよい。上記制御部は、温度の計測値に基づいて、端部64aの温度が目標温度に近づくように、各ヒータの温度(例えば、発熱体へ流す電流値)を調節してもよい。
【0048】
端部64a内には、耐火物を補強する1以上の補強部材88が設けられている。補強部材88は、例えば、端部64aにおける耐火物を別の部材に固定するための部材であり、補強部材88が設けられることで、耐火物の脱落が抑制される。補強部材88は、例えば、アンカースタッドである。補強部材88としてのアンカースタッドは、ステンレス製であってもよい。補強部材88は、Y型、V型、L型、又はボルト・ナット型のアンカースタッドであってもよい。
【0049】
端部64a内には、複数の補強部材88が設けられてもよく、複数の補強部材88の少なくとも一部は、互いに隣り合うヒータ同士の間に配置されていてもよい。図4に示される例では、水平方向において互いに隣り合うヒータ81u同士の間に補強部材88が配置され、水平方向において互いに隣り合うヒータ81d同士の間に補強部材88が配置されている。また、上下方向において互いに隣り合うヒータ81r同士の間に補強部材88が配置され、上下方向において互いに隣り合うヒータ81l同士の間に補強部材88が配置されている。一部の互いに隣り合うヒータ同士の間には、補強部材88が配置されていない。
【0050】
(熱流体シミュレーション結果)
続いて、図5を参照しながら、加熱部80の有無による端部64aの温度の違いを、熱流体シミュレーションを用いて評価した結果について説明する。図5における「(a)」は、加熱部80を設けない場合の熱流体シミュレーション結果(温度分布)を示しており、「(b)」は、加熱部80を設けた場合の熱流体シミュレーション結果(温度)を示している。熱流体解析のソフトウェアとして「ANSYS FLUENT 2022R1」を使用して、図5に示されるシミュレーション結果を得た。
【0051】
また、下記に示す条件でシミュレーションを行った。
・保温ダクト64の材料(熱伝導率):
SiC煉瓦(13.7W/mK)、断熱煉瓦(0.5W/mK)、断熱ボード(0.16W/mK)
・冷却ダクト66の材料(熱伝導率):SS400(58.5W/mK)
・冷却用ガスGcの温度:39℃
・冷却用ガスGcの流量:1.5kNm3/h
・平面視での冷却用ガスGcの導入方向:ガスG2の流通方向と直交する方向
・ガスG2の温度:920℃
・ガスG2の流量:1.98kNm3/h
・ダクト62の外の温度:30℃
・ヒータ81u,81dの温度:900℃
・ガスG2からダクト62内面への熱伝達係数:39.8W/m2K
・ダクト62外面から大気への熱伝達係数:10.0W/m2K
【0052】
図5に示されるシミュレーション結果において、加熱部80を設けない場合、「A」で指す部分の温度が650℃以下であった。一方、加熱部80を設けた場合(加熱部80により端部64aを加熱した場合)、「A」で指す部分の温度が770℃以上であった。以上のシミュレーション結果から、端部64aに加熱部80(ヒータ)を設けることで、端部64aの開口64bを形成する壁部分の温度を770℃以上に維持でき、その壁部分において、塩素分の凝縮が発生し難くなっていることがわかる。
【0053】
[セメントクリンカの製造方法]
続いて、セメントクリンカの製造方法の一例として、製造装置1において実行されるセメントクリンカの製造過程について説明する。製造装置1において実行される製造過程は、例えば、予熱仮焼工程と、焼成工程と、クリンカ冷却工程と、回収工程と、を含む。これらの工程は、少なくとも部分的に重複した期間において、それぞれ実行される。予熱仮焼工程は、プレヒータ10において、セメントキルン20からのキルン排ガス等を含む高温のガスにより、セメント原料を予熱及び仮焼する工程である。
【0054】
焼成工程は、セメントキルン20において、バーナ24からの燃焼ガスにより、セメント原料の焼成を行う工程である。クリンカ冷却工程は、クリンカクーラ30において、セメントキルン20で生成されたセメントクリンカを冷却する工程である。回収工程は、塩素バイパス設備50において、キルン排ガスの一部を抽気して、製造装置1内の塩素分等の揮発成分をダストとして回収する工程である。回収工程では塩素バイパス設備50が運転されるので、回収工程は、塩素バイパス設備の運転方法でもある。
【0055】
(塩素バイパス設備の運転方法)
塩素バイパス設備50を運転する方法(塩素バイパス設備の運転方法)は、抽気工程と、分級工程と、ガス冷却工程(冷却工程)と、加熱工程と、循環工程と、処理工程と、を含む。これらの工程は、少なくとも部分的に重複した期間において、それぞれ実行される。抽気工程は、セメントキルン20からの排ガスの一部を抽気口52から抽気して、抽気ガスであるガスG1を得る工程である。分級工程は、分級部60を用いて、ガスG1の温度を770℃以上に維持した状態で、ガスG1に含まれる原料ダストの粗粉をガスG1から分離してガスG2を得る工程である。
【0056】
ガス冷却工程は、ガスG2が流通する流路Fの途中において、流路F内を旋回するように冷却用ガスGcを流路F内に導入する工程である。冷却用ガスGcが流路F内に導入されることで、ガスG2と冷却用ガスGcとが混合されて、ガスG2が冷却される。加熱工程は、流路Fのうちの冷却用ガスGcが導入される箇所よりも上流に位置する領域(流路FH)を形成する保温ダクト64の端部64aを加熱する工程である。加熱工程では、端部64aが770℃以上に加熱される。加熱工程では、例えば、端部64aに含まれる耐火物内に埋め込まれた1以上のヒータによって、端部64aが加熱される。
【0057】
循環工程は、分級工程で得られた原料ダストの粗粉を、循環ライン58を介してセメントキルン20に戻す工程である。処理工程は、回収部94により、ガスG2と冷却用ガスGcとが混合された混合ガスからクリンカダストを回収し、ダスト処理部98において、そのクリンカダストに対して水洗処理を行う工程である。
【0058】
[変形例]
以上に説明した加熱部80は一例であり、加熱部80は、保温ダクト64の端部64aを加熱することができる限り、どのように構成されていてもよい。冷却ガス導入部70は、流路F内に冷却用ガスGcの旋回流を形成するように冷却用ガスGcを導入する限り、どのように構成されていてもよい。図4に示される複数のヒータの本数及び配置は一例であり、適宜変更可能である。
【0059】
以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。
【0060】
[本開示のまとめ]
以上に説明した塩素バイパス設備50は、セメント原料を焼成するセメントキルン20からの排ガスの一部を抽気する抽気口52と、抽気口52から抽気された抽気ガス(G1)の温度を770℃以上に維持した状態で抽気ガス(G1)に含まれる原料ダストの粗粉を抽気ガス(G1)から分離して、分級後ガス(G2)を得る分級部60と、分級後ガス(G2)が流通する流路Fの途中において、流路F内を旋回するように冷却用ガスGcを流路F内に導入する冷却ガス導入部70と、流路Fのうちの冷却ガス導入部70よりも上流に位置する領域(流路FH)を形成する保温ダクト64の下流側の端部64aを加熱する加熱部80と、を備える。
【0061】
塩素バイパス設備では、セメントキルン20からの排ガスを抽気して得られる抽気ガスに由来するガスを冷却するために、当該ガスが流通するダクトの途中に、冷却用ガスが導入される場合がある。この場合、上述したように、上記ダクトのうちの冷却用ガスの導入箇所よりも上流に位置する部分が保温部を構成し、保温部よりも下流に位置する部分が冷却部を構成する。そして、保温部のうちの下流に位置する端部では、冷却用ガスにより温度が低下する。上記端部の温度の低下に起因して、上記端部において抽気ガスに由来するガスが冷却されて、塩素分の凝縮によりコーチングが発生し得る。これにより、抽気ガスに由来するガスが流通する流路が閉塞されてしまうおそれがある。
これに対して、上記塩素バイパス設備50では、保温ダクト64の下流側の端部64aを加熱する加熱部80が設けられている。そのため、流路F内に導入された冷却用ガスGcに起因して、端部64aの温度が低下し難い。従って、塩素バイパス設備50は、抽気されたガス(G1,G2)の冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用である。
【0062】
以上に説明した塩素バイパス設備50において、加熱部80は、棒状に形成されたヒータ81u,81d,81r,81lを含んでもよい。ヒータ81u,81d,81r,81lは、ヒータ81u,81d,81r,81lの一部が端部64aから露出した状態で、端部64aに含まれる耐火物内に埋め込まれていてもよい。この場合、耐火物を含む端部64aを効率的に加熱することができると共に、ヒータの一部を露出されることで、ヒータのメンテナンス、又はヒータへの電気配線が簡素化される。
【0063】
以上に説明した塩素バイパス設備50において、ヒータ81u,81d,81r,81lは、発熱部82と非発熱部84とを含んでもよい。発熱部82が、上記耐火物内に埋め込まれており、非発熱部84が、端部64aから露出していてもよい。この場合、耐火物を含む端部64aを効率的に加熱しつつ、ヒータの一部が端部64aから露出していても、その露出している部分が発熱しないので、作業員の安全が図られる。また、ヒータの温度を制御する場合において、発熱部82が露出することに起因して、温度の調節ができなくなる可能性があるが、その懸念を抑制できる。
【0064】
以上に説明した塩素バイパス設備50において、加熱部80は、端部64aに含まれる耐火物内に埋め込まれた2以上のヒータ81uを含んでもよい。2以上のヒータ81uは、所定方向に沿って並んで配置されていてもよい。2以上のヒータ81uのうちの互いに隣り合うヒータ同士の間には、上記耐火物を補強する部材(補強部材88)が設けられていてもよい。
【0065】
以上に説明した製造装置1は、塩素バイパス設備50と、セメントキルン20と、を備える。この製造装置1は、塩素バイパス設備50を備えるので、抽気されたガス(G1,G2)の冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用である。
【0066】
以上に説明したセメントクリンカの製造方法は、製造装置1を用いてセメントクリンカを製造する方法である。この製造方法では、塩素バイパス設備50を備えた製造装置1が用いられるので、抽気されたガス(G1,G2)の冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用である。
【0067】
以上に説明した塩素バイパス設備50の運転方法は、セメント原料を焼成するセメントキルン20からの排ガスの一部を抽気する抽気工程と、抽気工程において抽気された抽気ガス(G1)の温度を770℃以上に維持した状態で抽気ガス(G1)に含まれる原料ダストの粗粉を抽気ガス(G1)から分離して、分級後ガス(G2)を得る分級工程と、分級後ガス(G2)が流通する流路Fの途中において、流路F内を旋回するように冷却用ガスGcを流路F内に導入する冷却工程と、流路Fのうちの冷却用ガスGcが導入される箇所よりも上流に位置する領域(流路FH)を形成する保温ダクト64の下流側の端部64aを加熱する加熱工程と、を含む。この運転方法は、上記塩素バイパス設備50と同様に、抽気されたガス(G1,G2)の冷却に伴うコーチングの発生を抑制するのに有用である。
【符号の説明】
【0068】
1…セメントクリンカの製造装置、10…プレヒータ、12…仮焼炉、14…ライジングダクト、20…セメントキルン、50…塩素バイパス設備、60…分級部、F,FH,FL…流路、62…ダクト、64…保温ダクト、64a…端部、66…冷却ダクト、70…冷却ガス導入部、80…加熱部、81u,81d,81r,81l…ヒータ、82…発熱部、84…非発熱部、G1,G2…ガス、Gc…冷却用ガス。
図1
図2
図3
図4
図5